1 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:15:25.47 ID:W8fZlT2d0
はじまるよー
2 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:19:02.27 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・殿が死んじゃったお・・・」
VIP藩主、耳無しモナの輔博之('ー`)が死んだのはついこないだ。
江戸でえらいことやらかして、切腹したと聞いた。
( ^ω^)「殿・・・なんでやらかしちゃったんだお・・・」
4 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:21:42.22 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「はあ・・・藩も取り潰しになっちゃったし、どうしたもんかお・・・」
( ´∀`)「ブーン!ブーンはおらぬか!」
( ^ω^)「あ、はいはい、なんですお。モナーさま」
モナの輔が長子、モナ次郎勝成であった。御年14。
5 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:22:41.15 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「あのな、藩がなくなったな?」
( ^ω^)「はい、そうですお」
( ´∀`)「なぜじゃ?」
( ^ω^)「・・・殿様がやらかしたからですお」
( ´∀`)「なにをじゃ?」
6 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:24:28.19 ID:W8fZlT2d0
なにを・・・
それは知らされていなかった。
「モナの輔儀、城内にて尋常ならざる振る舞いにおよび、切腹申し付けられたり。
翌日見事果たしたり」
これが江戸からの報告の全てであった。
( ^ω^)「それは・・・わからないですお」
8 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:25:56.98 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「ブーンよ、それではいかぬ。それではいかぬぞ」
( ^ω^)「と申されますと?」
( ´∀`)「わしはな、父上から『好奇心、それイカス』と教わったのじゃ」
( ^ω^)「はあ」
( ´∀`)「だから、わからないことはとことん追究するのじゃ」
9 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:27:52.68 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「そうは申されましても、真実は闇の中にございますお
いまさら何がおこったのかは判り申さぬお」
( ´∀`)「江戸いこう」
しまった。
ブーンは後悔した。
この若君にはこれがあった。
10 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:29:16.34 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「父上はこうも申されていた。『現場百回』と」
( ^ω^)「(言ってた・・・)」
( ´∀`)「この件における現場とは、江戸城じゃな?」
( ^ω^)「・・・そうですお」
( ´∀`)「ならば江戸城じゃ。行こう」
11 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:32:36.88 ID:W8fZlT2d0
VIP藩は三河の小国である
肥沃ではあるものの、山の多い土地は耕作に向かず、
藩主モナの輔の発案のもと、さまざまな副産品を売ることで
財政は成り立っていた。
利発な藩主であった、と思う。
また領民を愛されていた。
その一粒種の、無邪気な願い・・・。
江戸へ・・・。
12 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:34:14.15 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・困難ですお」
( ´∀`)「不可能か?」
ブーンはなんともうれしくなった。
モナの輔と同じ物言いであった。
( ^ω^)「・・可能ですお!」
( ´∀`)「ならば支度せい!40秒で支度せい!」
( ^ω^)「わかり・・いや、半刻はくださいお!」
18 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:46:19.00 ID:W8fZlT2d0
腰に佩びたり脇差二振り、ブーンは迅さで剣を振る
重き刀はブーンに合わぬ、迅きこと迅きこと剣の道
速さを旨とする剣の使い手、ブーンならではの二本脇差は
城下で知らぬものはなかったが、道中のその姿は
刀を持てぬ貧乏侍の姿に見えた
( ´∀`)「やはりお前に刀は似合わぬのう」
19 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:48:56.84 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「この方が刃の身が厚くこしらえられますお」
( ´∀`)「うん、そうじゃそうじゃ。お前にはそれがよい」
着いたは岡崎
神君の国
20 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:51:16.27 ID:W8fZlT2d0
岡崎は東海道の要所らしく活気溢れ、
また神君の国としての誇りがあった
味噌が香るのは岡崎ならではであった
( ´∀`)「腹が減ったのう」
( ^ω^)「なにか召されますかお」
一軒の飯屋に入った二人である
21 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:52:59.27 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「店主、なにか食わせ」
店主「へえへえ・・こりゃあかわいいお侍さまですな
当地の味噌はご賞味くださいましたかな?」
( ´∀`)「食うたことがない。では味噌をくれ」
店主「へえへえ、ではシジミ汁を」
22 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:54:27.56 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「これは・・!ハフハフ!ズリュ!ズババー!」
( ´∀`)「ひどい音を立てるのう・・・」
( ^ω^)「ジョビジョバ!ジョバー!」
( ´∀`)「・・・」
( ^ω^)「・・・ああ!ごちそうさまだお!」
( ´∀`)「・・・おぬし、作法はどうした」
23 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:55:44.07 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「こういうところのメシは作法を無視して食べるのが・・」
( ´∀`)「黙れ。お前は侍であろうが」
( ^ω^)「は・・。は・・?それはそうですが・・・」
( ´∀`)「主人に恥をかかせるな」
( ^ω^)「はあ・・・」
24 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:57:30.82 ID:W8fZlT2d0
おやぁ?
なにかおかしい。
藩はお取り潰しになったのだ。
モナーは既に君主世子ではなく、ブーンも家来ではない。
モナーの江戸行きに同行しているのは、あくまで前藩主への忠義から・・
( ^ω^)「あの・・・若君、状況を説明しますお」
26 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 11:59:30.74 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・これこれこういうわけで、いまのブーンはモナ様の家来にはござらんお
だから『主人に恥をかかせる』ということにはなりませんお」
( ´∀`)「・・・いいたい事はそれだけか」
( ^ω^)「はあ・・・」
( ´∀`)「・・・」
( ´∀`)「忠義を知らぬ畜生め。もうよい、どこなりと行け」
27 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:01:19.61 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「え・・・」
( ´∀`)「店主!馳走になった!美味であったぞ!支払いはこのマヌケ顔がいたす!」
店主「へぇ、またのお越しをー」
店主は奥へ行ってなにやら下ごしらえしている
気がつけば、他の客もいない
ひとり残されたブーンである
( ^ω^)「・・・・・えええええ!??」
28 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:04:39.97 ID:W8fZlT2d0
その日の夜、ブーンは近くの酒場で飲んでいた
( ^ω^)「・・・!なんだおあの態度は!ブーンは善意から同行つかまつったにすぎぬお!
なんで偉そうに!やってられるかお!」
猪口のヘリに塩をつけた「ソルティ犬」でガンガンやるブーンである。
( ^ω^)「ふざけんなお!ひとりじゃなにもできぬくせに!
どこぞでのたれ死ね!アホ若!」
酒は飲んでも飲まれるな。
飲まれたブーンはそのまま眠りについた
29 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:07:12.89 ID:W8fZlT2d0
翌朝
ブーンは痛む頭を抱えつつ、飲み屋の二階から降りてきた
( ^ω^)「いてて・・・飲みすぎたお・・・ぅおえぷ」
('A`)「ちょ、お侍さん!戻すなら裏の川でやっとくれよ!」
( ^ω^)「ああ、ああ、すまんこ。可能ならそうするお・・・ぅおえぽ」
('A`)「おい!裏に行けって!・・・・・あ〜あ〜・・・」
30 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:09:02.50 ID:W8fZlT2d0
酒屋の下働きのドクオに背負われ、ブーンは店の裏に寝転がった
ドクオはブーンの吐瀉物を片付けている。('A`)こんな顔で。
( ^ω^)「・・・せせらぎが気持ちいいお・・・」
頭半分を川につけたまま、ブーンは言った
そこに船がきた
そしてぶつかった
31 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:10:32.70 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「うごえっ!?」
船頭「あれっ?なにかある?・・・あ、人だ。」
( ^ω^)「・・・いっ・・・・・・・たい・・お!!」
船頭「だめだよそんなところに頭出してちゃあ。死ぬよ」
ボチャン
32 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:11:59.88 ID:W8fZlT2d0
何かが船から落ちる音がした
続いてバッシャバシャと暴れる音
そして、・・・わっぷ・・・たす・・・わっぷ・・・たすけ・・・、と声にならぬ声
( ^ω^)「・・ぅおえ・・・・え?」
聞き覚えのある声にブーンは頭を持ち上げた
33 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:14:29.24 ID:W8fZlT2d0
そこに見えたのは( ´Д`)こんな顔。
反射でざぶんと飛び込んだブーンは、( ´Д`)こんな顔を助けて
岸へ運んだ
( ´Д`)「げえっふ!はあはあ!・・・おお、かたじけなし・・助けていただいて・・・!?」
( ^ω^)「・・・なにしてるんですお」
(#´∀`)「なんだ畜生か。おまえの知ったことではないわ」
34 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:16:09.48 ID:W8fZlT2d0
船頭「こぉら!お前は助けていただいて礼も言えんのか!?」
(#´∀`)「・・・」
船頭「・・・そんなやつは船にのせられんぞ」
(#´∀`)「・・・お侍さん、お助けいただきかたじけのう申すシネ」
35 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:17:22.60 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・いえ、あの、どういたしまして・・・だお」
船頭「じゃ、お侍さん、失礼しますよ」
ギィ〜コ ギィ〜コ・・・・
船は行ってしまった。
若君を乗せて。
( ^ω^)「なんなんだお・・・」
36 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:21:55.95 ID:W8fZlT2d0
それから二日、ブーンは飲み屋の二階にい続けた。
('A`)は困った顔だったが、ブーンがあまりに必死に頼むので
ついつい部屋を貸してしまった
( ^ω^)「必ずもう一度あの船が通るはずだお。せめて事情を聞くお」
それが前藩主への
( ^ω^)「せめてもの忠義だお・・・」
37 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:23:34.00 ID:W8fZlT2d0
三日目の朝、ついにブーンははるか彼方に船をみつけた
いそいで二階から降り、川岸にて船を待つが
待てども船は来ない
不審に思っていると、遠くから声がした
「船頭・・!逃げよ!」
モナーの声である
38 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:25:41.46 ID:W8fZlT2d0
神速をもって聞こえたブーンである。
一歩で犬に追いつき、二歩で馬に並ぶと言われたその脚は
何に遠慮することなく、川岸を駆けた。
⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブンブン!ブーン!
(#´∀`)「きさまら、なにやつじゃ!」
39 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:27:42.60 ID:W8fZlT2d0
賊「荷を渡せ。殺しはせぬ」
( ´∀`)「なんで荷を渡さねばならぬ!おぬしらのモノではなかろう!」
賊「論を待たず。渡すか死ぬかだぞ」
( ´∀`)「渡しては死ぬも同然じゃ!失せい!」
賊「哀れ若者。ならば死を」
文学がかった賊である
40 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:30:50.58 ID:W8fZlT2d0
(#´∀`)「死ぬかボケェ!!」
(#^ω^)「死なすかボケェ!!!」
ブーン参上、迅きこと迅きこと稲妻のごとし
舞う草 飛ぶしぶき 血風吹き荒れる
倒れる賊に逃げる賊 いずれ劣らぬ悪人面を
討ちて尽くさん VIP霧崎流
41 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:32:50.94 ID:W8fZlT2d0
川面はゆれる 船頭は無事
息も整い、二人は顔を見合わせる・・・
( ´∀`)「何しにきた畜生」
( ^ω^)「助けを求める声がいたしましたゆえ・・」
( ´∀`)「助けなど求めておらぬ」
そういわれれば求められた覚えもない
42 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:34:54.06 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「し、しかし、若君の危機でした」
( ´∀`)「だからどうした。家来ではあるまい」
( ^ω^)「目の前の人を助けて、なぜそのように言われねばならぬのです」
( ´∀`)「目の前でもなかったろう」
( ^ω^)「・・・わ、わたしが若君を助けてなにが悪いのです!!」
43 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:36:52.89 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「・・礼が欲しいか?」
礼?そうだ、助けたのだ。
頭のひとつも下げてもらわねば、ワリに合わぬ
そうだ・・そうだ・・・
( ^ω^)「・・・」
しかしなんだこの充足感は
礼が要るのか?いま満ち足りているのに
若君が助かった
それだけで満ち足りているのに・・!
45 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:38:51.17 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「要りませぬお」
( ´∀`)「そうか、ではさらばじゃ」
船頭のもとへ寄り、優しい声をかけるモナーをブーンは見ていた
( ^ω^)「(さらば、と言われた・・・)」
( ;ω;)
46 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:40:13.40 ID:W8fZlT2d0
なぜだ。
どこへでも行けと言われてブーンは怒った
さらばと言われてブーンは泣いた
「若君に見捨てられた・・・」
その想いが、ブーンの涙となってこぼれようとした
48 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:41:30.15 ID:W8fZlT2d0
( ;ω;)
↓
( ^ω^)
ブーンは船頭に近寄り、手早く傷を確かめ、手当てをした。
幸いかすり傷である
モナーはそれを見ていた
49 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:43:31.90 ID:W8fZlT2d0
そしてブーン散らばった荷を船に積めなおした
重い荷も多い
力仕事であった
いつのまにかモナーが近くに来ていた
( ´∀`)「・・・大儀であった。誉めてとらす」
50 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:44:51.18 ID:W8fZlT2d0
もったいのうござりまする
いや、みごとな働きであったぞ
いえ、腕も鈍りました
稲妻のようであったぞ
おそれいります
…まこと、稲妻のようであったぞ
51 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:46:12.19 ID:W8fZlT2d0
若様・・・何卒、なにとぞ江戸までの道に、それがしを同道させ・・
ブーン、ついてこい
・・え?
江戸まで行く。ついてこい
御意に
53 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:48:54.94 ID:W8fZlT2d0
忠義とは・・・忠義とはなんであったか・・・
モナの輔さまに抱いていた思いは、あれはなんであったか・・・
いま思えば、あれは立派な叔父を誇るがごとき心持であったか・・・
モナの輔さま・・・
それがしは、モナーさまに忠義をつくしまする
最期まで、モナーさまの味方でい尽くしまする!
54 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:50:03.79 ID:W8fZlT2d0
岡崎の飯屋にはどこでも味噌が香る
旅人はだれでもそれを食らう
ほら、今日もふたり、侍が飯屋に入る・・・
56 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:57:08.35 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「それで、なぜ船にのっていたんですお?」
( ´∀`)「江戸に行く金がなかったのじゃ」
ああ、それで金を稼いで江戸に行こうと・・・
( ´∀`)「船なら海路で江戸へ行けよう?」
( ^ω^)「え。」
57 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 12:59:28.84 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「隙を見て船頭から船を奪って江戸へ向かおうと思っていたのじゃが
なかなか隙のない船頭でのう。というか、働いたあとのメシがうまくてのう。
つい奪う気になれなんだ」
( ^ω^)「・・あの小船では江戸にはいけませぬお」
( ´∀`)「不可能か?」
( ^ω^)「確率の低い運任せにございますお」
( ´∀`)「そうか、では陸路を行こう」
( ^ω^)「それが理性的かとおもいますお」
58 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:02:00.84 ID:W8fZlT2d0
とことこと歩く二人をの手にはダンゴ
食べたくなったらその場にしゃがむ
だって立ち食いは作法違いだから
( ^ω^)「めんどくさいお」
( ´∀`)「黙れよ」
59 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:04:53.61 ID:W8fZlT2d0
歩いて休み 休んで歩く
そうやって次の宿場へ、次の宿場へ
夜は宿でぐっすり 宿がなければ野宿
慣れない旅も、二人なら楽し
( ´∀`)「そういえばの、あの岡崎の船じゃが」
60 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:06:27.67 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「なんか、見たことないものをたくさん積んでおったぞ」
( ^ω^)「見たことないものってなんですお?」
( ´∀`)「見たことないんじゃ。説明もできぬ」
( ^ω^)「はぁ・・・」
( ´∀`)「そうよのう・・・。なんか変な剣があった。細身の」
61 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:08:00.67 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「細身の剣ですかお?」
( ´∀`)「そうじゃ。とてもじゃないが、あれでは斬れぬだろうのう」
( ^ω^)「斬れぬ剣、ですかお?確かに変なものですお」
( ´∀`)「そうじゃろう。わは、わはは」
( ^ω^)「そういえば、こんな話を聞いたことがありますお」
62 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:10:12.28 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「イスパニヤという国の剣は細いんだそうですお
細い剣で、斬るのではなく突くのだそうでござりまする」
( ´∀`)「突いたら抜けぬのではないか?」
( ^ω^)「そこは修練によって、引き抜く技術を身に付けるのだそうですお」
( ´∀`)「斬る突くよりも引き抜くことが大変そうじゃの」
( ^ω^)「は、まことおかしな剣と剣術でございますお」
待てよ・・?
63 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:12:09.80 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「あの・・・ひょっとしてそれ、イスパニヤの剣だったのではないですかお?」
( ´∀`)「ばかものー。そんなもの、禁輸品じゃろうが」
( ^ω^)「そ、そりゃそうですお」
( ´∀`)「ブーンはばかじゃのう」
( ^ω^)「いじめないでくださいお」
64 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:14:54.37 ID:W8fZlT2d0
夜、床についてもブーンは目が冴えていた
( ^ω^)「(でもそういえば、あの荷は不自然だったお。
中身はカチャカチャチャリンと聞いたことのない音がしてたお)」
不審といえば賊もであった。
妙に文学がかった口調、まっすぐな太刀筋、気がつけば倒れたものまで
きれいにいなくなっていた。
( ^ω^)「なんか・・・気になるお・・・」
65 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:18:41.98 ID:W8fZlT2d0
某所
「なに?間違いないという話ではなかったのか?」
「は、内偵には間違いはございませんでしたが、邪魔が入った様子で」
「それで証拠は」
「ございません」
「・・・岡崎にそんな剛の者がおったか?」
「こころあたりもございませぬ」
「ふむ・・・まあよい、よくねぎらえよ。手を抜いた上での失敗でもあるまい」
「は」
・・・・・・・・・・・
67 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:23:15.09 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「さ、今日も歩くぞ」
( ^ω^)「はいですお」
てくてく
( ´∀`)「疲れたぞ」
( ^ω^)「はいですお」
68 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:24:50.50 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「なんかこう・・・疲れが溜まってきたのう・・・」
( ^ω^)「歩き詰めですから」
( ´∀`)「なんかほれ、ないのか、名物」
( ^ω^)「は、ちょっと聞いてきますお」
( ^ω^)「あ、おーい、そこの農業従事者」
('A`)「なんですかお侍さん変な呼び方して」
70 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:26:45.56 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「すまんこ。それでお百姓、尋ねたき儀あり。ていうか、お前飲み屋の・・・」
('A`)「はぁ・・あれから店が潰れましたんで、こっちで土をいじっております」
( ^ω^)「えらく移動がはやいのう・・・ブーンたちよりはやいではないか・・・」
('A`)「それで、なにを聞きたいんで?」
( ^ω^)「名物」
72 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:28:17.98 ID:W8fZlT2d0
('A`)「ここらですとアレですな。とろろ汁」
( ^ω^)「とろろ汁!疲れた体に最適ではないか!」
('A`)「へえ、みんな好んで食べますよ」
( ^ω^)「・・・お前、ずいぶんくわしいお。なんか他にも教えてくれお」
('A`)「そうですねえ・・・」
74 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:32:45.49 ID:W8fZlT2d0
ここは鞠子(まりこ)の宿。
もう少しで駿府。
駿府には神君の植えたみかんの木がある
75 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:33:53.34 ID:W8fZlT2d0
そのみかんの木には言い伝えがある・・・
なんと、バレンシアオレンジであるという・・・
まことしやかに囁かれる噂
76 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:35:44.11 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「バレンシアとはなんだお?バテレンと関係あるのかお?」
('A`)「あるっちゃああるし、ないっちゃあないですな」
( ^ω^)「はっきりいえお」
('A`)「名前は似ているだけですよ。関係はありません。
ただ、バレンシアというのはイスパニヤの地方の名だそうです」
( ^ω^)「イスパニヤ・・・」
77 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:37:19.84 ID:W8fZlT2d0
('A`)「で、イスパニヤのバテレンがいま、世界を荒らしまくっております」
( ^ω^)「そうなのかお?」
('A`)「へえ。」
( ^ω^)「なんでそんなこと知ってるお?」
('A`)「へえ、流れ者ですから」
( ^ω^)「・・・そういうもんかお」
('A`)「そんなもんです」
78 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:38:56.40 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「おおブーン!名物はあったか!?」
( ^ω^)「この先の丁字屋という店で出すとろろ汁が名物だそうですお!」
( ´∀`)「でかした!ゆくぞ!」
( ^ω^)「は」
てくてく・・・
79 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:42:26.14 ID:W8fZlT2d0
丁字屋
モナーとブーンは困っていた。
出されたとろろ汁をすすり、メシを口に運ぼうとしたところ、
店の者に怒られた。
「そうじゃなくて、メシにとろろをかけて食うんですよ。」
( ´∀`)「・・・」
( ^ω^)「・・・」
( ´∀`)「・・・そんなことしたら、ずるずると音が出るではないか」
( ^ω^)「でますお」
80 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:43:42.44 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「お前など、ずるずるでは済まぬぞ」
( ^ω^)「恥ずかしながら」
( ´∀`)「ズベブランチャ・ズロゾゾローくらいの音は出すじゃろう」
( ^ω^)「だしますお」
( ´∀`)「・・・店、出るか」
( ^ω^)「ええええエエエエエエえええ!!!!!!!!??????」
81 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:45:33.54 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「出しませんお!音だしませんお!だからたべましょうお!!」
( ´∀`)「心意気は買うが、音を出さぬというのも無理じゃろう」
( ^ω^)「でも!でも、これうまそうですお!これ!」
( ´∀`)「むう・・・・・・そうじゃ」
( ^ω^)「なんですかお!」
( ´∀`)「お前は、箸で食え」
82 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 13:47:33.30 ID:W8fZlT2d0
モナーは四半刻ほどでたいらげた。
ず、ず、ず、と音を気にしながらの食事であったが、
その顔は( ´∀`)こんな感じで満足そうだったという
ブーンは平らげるのにゆうに一刻はかけた
箸で、食いきった
( ^ω^)「食った気がしないですお・・・」
91 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:19:28.12 ID:W8fZlT2d0
鞠子でとろろを独特な方法で堪能し、二人は駿府へついた
頃もよし、まずは宿を確保した
( ^ω^)「ふー、一息つけますお」
( ´∀`)「おお、今日はなんか脚も楽じゃ」
( ^ω^)「とろろのせいですかおw」
( ´∀`)「さもありなん。うまいメシじゃったもの」
92 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:20:57.44 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「うまかったですかお・・・」
( ´∀`)「む、まあなんじゃ。どこにでもあるようなうまさじゃった」
( ^ω^)「・・・」
( ´∀`)「・・忘れろ」
( ^ω^)「は・・・」
93 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:22:01.81 ID:W8fZlT2d0
とろろのせいで元気になったのがひとつ
とろろをやはりズルズルと食べたかったのがひとつ
二つの理由で、ブーンはモナーが寝付いた後
町へくりだした
( ^ω^)「鞠子とは近所だから、きっととろろ屋もあるお!」
95 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:23:27.04 ID:W8fZlT2d0
岡場所、飲み屋街、武家屋敷・・・
さまよえどとろろ屋はみつからず
いつの間にか、ブーンは駿府城のあたりへ来ていた
( ^ω^)「そういえば、昼の貧相な百姓が何か言ってたお。みかんの木がなんとか・・・」
96 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:25:35.72 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・ひと目みておくかお」
⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン
ダッ!
お堀を飛び越えて城壁へへばりつくブーンであった
打ち首モノである
98 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:27:39.80 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「えいおえいお、よじよじ、えいおえいお・・・」
城壁を登りきったブーンは、そのまま城壁の上を歩いた。
歩きながら、城壁の内側を見ていた。
( ^ω^)「みかん、みかんと・・・」
バカである
99 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:29:03.83 ID:W8fZlT2d0
侍「ねむ・・・・ん・・・ん!?」
マヌケ面が堂々と城壁の上を歩いている
侍「え・・・・・・おいそこの不審者あああ!!!」
( ^ω^)「なにっ!?不審者がいるのかお!?」
バカである
100 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:30:58.03 ID:W8fZlT2d0
周りを探すが不審者は見当たらない
( ^ω^)「恐れ多くも神君が幼少期を過ごされたこの駿府城に不審者など・・・!!」
わらわらと人が集まってくる。
手には武器
( ^ω^)「・・・・・・」
( ^ω^)「しまったお」
101 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:33:12.61 ID:W8fZlT2d0
神速をもって聞こえたブーンである。
一歩で犬に追いつき、二歩で馬に・・・とにかく逃げた。
城壁の上をブンブン走り、武士を振り切ったと見るや暗がりに飛び込んだ。
ただ、暗がりは城壁の内にあった
( ^ω^)「また!またもしまったお!ああ、外に出ればよかったお!」
102 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:35:05.55 ID:W8fZlT2d0
すぐに人があつまってくる!
どうする!どうする!?
と焦るも、なぜか人が集まる気配もなし。
遠くにざわざわと聞こえるのみである
( ^ω^)「・・・どうしたんだお」
103 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:36:40.62 ID:W8fZlT2d0
バカなのでざわざわの正体を確かめようと、足音たてずに近づいてみる
城の北、なんの変哲もないところに、武士たちは集まっていた
その武士の輪の中心に、一本の木があった
105 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:39:29.80 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「あれは・・・あれが?」
不審者が現れたときに、追うより先に守るべきものがあるとすれば
城主の身である。
しかし、ここの武士たちは城主の代わりに木を、みかんの木をまもっている。
( ^ω^)「・・・なんだおこの城・・・」
ブーンはひっそりと身を翻した。
106 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:40:29.99 ID:W8fZlT2d0
暗がりを選んで町を走り、宿に戻れば一安心であった
とにかくブーンは寝た。
バカだから。
翌朝、たたき起こされるまで寝た。
108 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:44:03.02 ID:W8fZlT2d0
「御用改めである!」
家屋全体に響くその声は、当然モナーにもきこえた
( ´∀`)「うごっ!? ・・・え、なんじゃ?御用あらため?」
( ^ω^)「おーっ・・・おーっ・・・おーっ・・・」
( ´∀`)「珍妙な寝息を立ててよく寝ておるのう・・・おい、起きろ」
( ^ω^)「おーっ・・・は。おやモナーさま、ずいぶんお早いですな」
( ´∀`)「む、なんか御用改めとか下で叫んでおるでな。目覚めてもうた」
109 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:46:43.29 ID:W8fZlT2d0
( ;^ω^)「ごごごご、御用改めですかお!?」
( ´∀`)「なんじゃ・・・?・・・心当たりがあるのか?」
( ^ω^)「いささか」
( ´∀`)「あほうめ。夕べか。」
( ^ω^)「はいですお」
( ´∀`)「・・・もうよい、寝ておれ」
110 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:48:46.75 ID:W8fZlT2d0
一人で階下へ降りるモナー
それを心配そうにみているブーン
顔を出すなと怒られるブーン
すまんこ、と布団の中でつぶやくブーン
モナー、一世一代の大芝居の始まりである
111 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:53:47.39 ID:W8fZlT2d0
モナーはにこにこと玄関へ
そこに集うはいかつい武士
番頭さん、どうしたんです
はいそれが、御用改めとかで
御用改め、はあ、いったいどんなヤツをお探しで?
それははあ、いまから伺うところでして・・・
「身が軽く、おそらくは他国の者。刀は佩びておらぬ。心当たりはないか?」
はあはあ、ありますとも。それは私のツレでしょう。
112 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:55:52.48 ID:W8fZlT2d0
「なに!?部屋へ案内せい!」
は、ではご案内いたします
と、と、と、階段を上る
ここでございます
ガラッ「御用改めである!」
( ^ω^)「え?」
113 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 14:58:19.84 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「(なななな、なに案内してんの若君!!??)」
こやつではございませんか?
「顔を見たものはおらぬでな、おいそこの寝てるお前、ちょっと立て」
( ^ω^)「(ええええええ!!!??)」
立て、文太。
( ^ω^)「(文太じゃないですお!ていうか、なに?売られるのかお!?)」
ガクガクブルブル、ブーンは呼吸もままならない
115 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:02:08.37 ID:W8fZlT2d0
立たぬか文太。
( ;^ω^)「(立たた立た立てませんお!昨日は帰ってきてそのまま寝ましたお!
脇差だって枕の下に入ったままですお!まままくらひっくり返されたら、
脇差二本ですお!モロに不審者ですお!!)」
ふむ・・・やはり立てぬようですな
「ぬ、どういうことだ?」
116 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:05:24.26 ID:W8fZlT2d0
実は昨日、宿についてから急に熱を出しまして。
ようやく汗がでてきましたが、まだ寒気を感じるとかで震えております
( ^ω^)「ガ・・・ガクガクブルブル・・・」
「む、確かに震えておるな。汗もひどい」
お武家様、その身軽なヤツがいつ何をしましたので?
「昨夜遅くだ。しかし・・・この汗の具合からすると、昨夜こやつは・・」
臥しておりました
「であろう。演技で出る汗と震えではない」
117 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:07:03.38 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「(演技じゃないからだお・・・)」
「しかもこやつ、ぶよぶよとしてとても身軽とは思えん」
お武家様、それはひどいですな。身内で一番の身軽者ですぞ。
「いや、こいつではない。こいつ・・・太りすぎだ」
嵐は去った
118 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:08:03.96 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・・・・」
( ´∀`)「・・・・・・」
( ^ω^)「なんで事前にひとこと・・」
( ´∀`)「お前に演技はできぬ」
( ^ω^)「・・・」
( ´∀`)「できぬわ」
119 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:09:37.05 ID:W8fZlT2d0
二年ほど前
モナ次郎の剣術を家来に見せたことがあった
12歳の腕前である。たいしたものではない
しかし家臣はみな一様に誉めた
そんななか
( ^ω^)「その・・・あの・・・なかなか・・・この・・・」
世辞の言えぬバカがいた
120 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 15:10:50.30 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「お前に演技はできぬよ。知っておる」
(#^ω^)「・・・」
できるもん、きっとできるもん。
心でつぶやくブーンであった。
130 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:14:45.75 ID:W8fZlT2d0
さっさと静岡を発ち、ちょっと寄り道して三保へ
松原をざくざく歩き、絶景に声を出す
( ´∀`)「おおおおおお!!」
( ^ω^)「おおおっおっおっ!!」
( ´∀`)「すごいのう、ブーン!あれ富士か!?」
( ^ω^)「きっとそうですお!うわ、すげえ!」
( ´∀`)「おおお!!」
132 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:16:43.23 ID:W8fZlT2d0
VIP藩にも山はある
富士によく似た新速山はVIP富士とも呼ばれる
( ´∀`)「ちちうえ!山でござりまする!」
「うんうん、そうじゃのう」
( ´∀`)「美しゅうございまする!」
「うんうん・・・モナ次郎、山は何故美しいか、わかるか?」
133 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:18:28.72 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「大きくて・・・動かぬから!」
「喋らぬからだ」
/^o^\フッジッサーン
( ´д`)「ほんとです・・・想像したら気味悪いです」
「そうであろう」
134 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:19:51.92 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「父上・・・」
( ^ω^)「まっ!こと!よき景色ですお!」
( ´∀`)「・・・そうじゃのう」
( ^ω^)「ブーン!ブーン!」
( ´∀`)「お前、はしゃぎすぎじゃw」
135 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:21:38.70 ID:W8fZlT2d0
歩いて休んで 休んで歩いて
とうとう東海道の難所 箱根である
( ^ω^)「ここを超えれば江戸はすぐですお」
( ´∀`)「む、頑張っていこうかのう」
てくてく・・・
136 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:23:18.54 ID:W8fZlT2d0
てくてく・・・
てく・・・てく・・・
てく・・・・・・てく・・・・・・
( ´∀`)「声だしていくのじゃ!」
( ^ω^)「トローリー!」
( ´∀`)「トローリー!オー!」
137 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:25:55.44 ID:W8fZlT2d0
某所
「駿府に曲者が現れたと?」
「は」
「何者じゃ・・・岡崎の件との関わりは・・?」
「身軽、という点で共通しております。いずれにおいても足の極端に速い者が目撃されております」
「ふむ・・・関わりがあると見るのが妥当じゃろうな」
「は」
「怠るな。」
「は」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
139 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:28:24.58 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「こ、この辺で今夜は休みませんかお?」
( ´∀`)「あほう。こんなところで寝たら死ぬるぞ」
( ^ω^)「ならせめて、どこかの空き家でも探して休みませんかお・・・」
( ´∀`)「・・・」
ブーンの体系(ぶよんぶよん)ではここが限界か・・・
( ´∀`)「やむなし!雨露しのげる場所をさがす」
( ^ω^)「おー・・・!」
140 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:31:44.87 ID:W8fZlT2d0
道を少し外れたところに廃寺を見つけた一行は、
倒れるように屋内に入った
( ´∀`)「ふう、疲れたのう」
( ^ω^)「まっこと・・・」
火をおこし、味噌と米で粥をつくる
疲れた体に滋味が染みる
142 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:35:33.12 ID:W8fZlT2d0
腹がいっぱいになり、横になったまま二人は取り留めのない話をした
その中にはモナーが知っている話も知らない話もあったが
それはブーンも同様であった
( ^ω^)「ぜった石見さまのお嬢様はブーンに気があったんですお」
( ´∀`)「そりゃお前の勘違いじゃ。気があったのはお前の友、やる夫にじゃ」
(#^ω^)「やる夫がモテるわけないですお!」
( ´∀`)「お前が知らぬだけじゃ。ケラケラ」
143 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:38:11.17 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「そんな・・・絶対に気があるとおもって、すんごくエロい恋文を届けちゃったお・・・」
( ´∀`)「それじゃ。その恋文がまわりまわってわしのところまで来たのじゃ」
( ^ω^)「うえええええ!?」
( ´∀`)「石見の娘が石見に相談しての、石見は家老に、家老はわしに・・・
もっとも、途中で相談事ではなく笑い話になっていたがの」
( ^ω^)「マジでござりまするか!!!!うおおおおおお!」
( ´∀`)「ケラケラ」
( ^ω^)「うおおおお! おもての方、用があれば入ってこられよ」
144 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:40:38.62 ID:W8fZlT2d0
モナーは気づいていなかった ブーンもさっきまで気づいていなかった
しかし今、寺の外に誰かいる
( ^ω^)「なにもとって食うつもりはござらぬお。入ってこられよ」
「……では失礼致します」
旅姿の男が一人、女が一人入ってきた
145 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:43:47.49 ID:W8fZlT2d0
(,,゚Д゚)「お邪魔になるかと思い、立ち去ろうか思案していたところでした
お声をかけていただき恐れいります」
ξ゚听)ξ「悪いわね。すこし休ませてもらうわ」
(,,゚Д゚)「これ、口のきき方に気をつけなさい。こちらはお武家様だぞ」
ξ゚听)ξ「あらごめんなさい。でもこれ以外の喋り方をしらなくて」
( ´∀`)「構わぬよ。まあ火に当たりなされ」
148 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:48:21.76 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「上りかお?くだりかお?」
(,,゚Д゚)「くだりでございます。京まで酒の買い付けに行く途中でございます」
( ^ω^)「じゃあ酒屋さんかお」
(,,゚Д゚)「左様で」
( ^ω^)「いまは持ってないかお?」
(,,゚Д゚)「あいにく道中は・・・」
150 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:52:45.51 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「いまちょうど酒が欲しくなる様な話を聞いたところだったんだお
なければしょうがないお。粥くうかお?」
(,,゚Д゚)「恐れ入ります。頂戴いたします」
粥からは湯気がほのかにのぼり、旅人の体を芯から癒す
ξ゚听)ξ「あらおいしい!・・・この味噌、岡崎の?」
( ^ω^)「八丁みそだお」
151 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:57:03.04 ID:W8fZlT2d0
(,,゚Д゚)「岡崎・・・お武家様方はあちらからお越しで?」
( ^ω^)「そうだお。VIP藩から・・」
( ´∀`)「・・ほど近いところからな。剣の師匠が江戸で道場を開いたとかで
祝いに参るところなのじゃ」
( ^ω^)「?」
( ´∀`)「わしらは劣等生じゃが、師匠は腕利きであるぞ」
(,,゚Д゚)「はあ、そのお師匠様のお名前は?」
( ´∀`)「新城八女奈斎」
153 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 16:58:49.36 ID:W8fZlT2d0
ξ゚听)ξ「しんしろ、やめなさい?知らないわねえ」
( ´∀`)「・・・口を慎め女」
(,,゚Д゚)「こ、これは失礼を!ツン、詫びぬか!」
( ´∀`)「不愉快じゃ。我らはもう発つ。あとはお前等が休め
行くぞ内藤!」
( ^ω^)「え、え?は、はいですお」
154 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:00:50.74 ID:W8fZlT2d0
てく・・・てく・・・
下り坂とはいえ、疲れた脚には優しくない
風も出てきた 先ほどのことが悔やまれる
( ^ω^)「なにかありましたかお?」
( ´∀`)「やつら、岡崎が目的地じゃ」
( ^ω^)「は?」
( ´∀`)「この時期に酒の買い付けに出る酒屋はおらぬ」
155 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:04:50.46 ID:W8fZlT2d0
確かに買い付けに出るには二月ほど早い
( ^ω^)「でも岡崎というのは?」
( ´∀`)「新城八女奈斎は京の剣術家じゃ。それを知らぬ」
( ^ω^)「はあ」
( ´∀`)「味噌に食いついた」
( ^ω^)「はあ」
( ´∀`)「だからじゃ」
156 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:06:09.09 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「ああ、そうですか・・・」
それで、なぜ寺を出てきたんですか?
それを聞くのがためらわれるブーンであった。
夜明けも近い
てく・・・てく・・・
158 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:09:11.87 ID:W8fZlT2d0
ξ゚听)ξ「・・・なによあれ」
(,,゚Д゚)「ふむ・・・腹に二物はお互い様か」
ξ゚听)ξ「え?」
(,,゚Д゚)「名乗ったとおりの者ではあるまいよ」
この廃寺は彼らの旅の定宿である
表の宿には泊まれぬ事情が、彼らにはあった
囲炉裏の薪が、ぱちりとはじけた
(,,゚Д゚)「あのデブ・・・怖いな」
159 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:14:49.59 ID:W8fZlT2d0
江戸
世界最大の都市
神君家康によってこの都市は渦巻状に面積を広げる運命を課せられていた
人口増加を見越し、それに対応する土地開発も予定に組み込まれた都市である
( ´∀`)「話には聞いていたが・・・でかいのう」
( ^ω^)「向こう側が見えませぬお」
160 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:16:48.23 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「まずは腹ごしらえかの」
( ^ω^)「名物ですな!おまかせくだされ!」
( ´∀`)「いや、あれ、あれ見ろ」
( ^ω^)「は?」
そこには一軒の飯屋 何人もの男が出入りしている
( ´∀`)「繁盛しているようではないか。うまいに違いない」
161 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:19:03.11 ID:W8fZlT2d0
('A`)「えらっしぇー」
( ^ω^)「・・・」
開けっ放しの戸をくぐると、中は光も十分にささぬ、昼なお薄暗い
しかし何人もの女中が忙しく働き、活気はあった
( ´∀`)「おいブーン、あれを頼め。あの品書きの右から二番目」
( ^ω^)「・・・え?あ、はい。えーと、とせうけください」
162 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:21:16.81 ID:W8fZlT2d0
('A`)「へい!とせうけ二つね!」
( ´∀`)「あれ!?」
('A`)「うちは他所からの客も多いもんでね、いちいち訂正してらんねえんだ」
( ^ω^)「なんなんですかお」
( ´∀`)「いや、なんでもない」
どじょう汁がふたつ 二人の前に置かれた
164 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:27:50.31 ID:W8fZlT2d0
平らげて外に出る
ブーンは「とりあえずVIP藩の江戸屋敷があったところへ行こう」とのモナーの案を留め置き
店の近くで時間を潰した
午後の日差しは二人の脚に降り注ぎ、まるで力を分け与えてくれるようだった
飯屋の出入りが少なくなり、のれんが片付けられるとブーンは店へ入った
( ^ω^)「店主。なぜまたここに?」
165 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:29:33.73 ID:W8fZlT2d0
('A`)「へえ、土いじりにも飽きましたんで、ちょっくら江戸で一旗あげようかと」
( ^ω^)「・・・深くは聞かないお。なんか情報ないかお」
('A`)「情報、といいますと?」
忙しく手を動かしながら、貧相な顔('A`)の男はブーンの相手をする
166 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:32:05.82 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「流れ者は何でも知ってるって言ったお」
('A`)「いいましたかね」
( ^ω^)「我らが何者か知っているかお?」
('A`)「知りやせんやそんなこと」
( ^ω^)「じゃあお前は何者だお」
('A`)「深くは聞かないんじゃなかったんですかい?」
167 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:34:43.62 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「・・・」
ともかくこれまで、助けられてはいても、この貧相な男('A`)に
迷惑はかけられていない。
意を決して聞いてみた
( ^ω^)「元VIP藩の江戸詰めの人間を探しているお」
表ではモナーが脚を温めている
168 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:38:10.39 ID:W8fZlT2d0
('A`)「VIP藩・・・お取り潰しになったVIP藩ですか?」
( ^ω^)「そうだお」
('A`)「・・・無用心ですよ内藤様」
忙しく動いていた('A`)の手が止まっている
170 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:43:36.88 ID:W8fZlT2d0
駿府
(,,゚Д゚)「ふむ・・・それでその男は?」
「取り逃がしましてございます」
ξ゚听)ξ「なにをやっていたの・・・まったく」
「それが・・・情報が錯綜しておりまして・・・
人相の暗い男だったとの証言がある一方、
太った稲妻のような男であったとの証言もあり・・・」
(,,゚Д゚)「二班に分けたか」
「は・・・」
(,,゚Д゚)「(うつけが・・)」
172 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 17:58:42.18 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「やはり知っているのかお」
('A`)「無用心だと言っているんですよ。VIP藩の名など出せば
お上が警戒します」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「理由のわからぬ藩取り潰し・・・
そしてその藩士が江戸へ・・・跡継ぎを連れて」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「いいですか。談判など お や め な さ い」
173 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:01:01.95 ID:W8fZlT2d0
岡崎
(,,゚Д゚)「それで、邪魔した男と言うのは?」
「あたかも疾風、あたかも雷迅、人とは思えぬ迅さでありました」
ξ゚听)ξ「またあんたは、めんどくさい物言いをするわね」
「さりとてぶよぶよ、ぶよぶよでございました」
(,,゚Д゚)「ぶよぶよ・・・?」
174 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:03:35.94 ID:W8fZlT2d0
( ´∀`)「不愉快じゃ。我らはもう発つ。あとはお前等が休め
行くぞ内藤!」
(,,゚Д゚)「・・・!内藤!内藤蔵ノ介!あのデブだ!」
二人は江戸へ駆けた
175 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:06:53.98 ID:W8fZlT2d0
ブーンは憤慨して店をでた
ひなたぼっこポワワ(*´∀`*)ポワワの真っ最中のモナーのところへ行くと
参りましょう、と手を引いて大股で歩き出した
どうしたと問うモナーの言葉に返事もせず
('A`)「うまく動いてくれるといいが・・・」
176 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:09:51.13 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「ぽけぇ・・・」
( ´∀`)「ぽけぇ・・・」
江戸について五日がすぎた
方々歩いてVIP藩士を探したが、どこにもいなかった
元江戸屋敷はしっかり封鎖され、取引のあった商家も何も知らず
岡場所では「藩の名を出して遊ぶ方なんていらっしゃいませんよ」と言われた
177 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:12:33.71 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「あとは吉原くらいしか・・・」
( ´∀`)「ムダじゃろう。うちの藩士に金はない」
宿屋の二階、日差しが妙にあたたかい六畳間で
ふたりはぽけぇとしていた
( ^ω^)「でも吉原くらいしか・・・」
( ´∀`)「行きたければ外から匂いでも嗅いで戻って来い」
( ^ω^)「匂いだけではなんとも・・・」
178 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:14:09.89 ID:W8fZlT2d0
なんとなくごろんごろんとしてみると、
浮いた埃が日差しを反射して
それを見ていると・・・
( ^ω^)「若君・・・やる気でないっすお」
( ´∀`)「やる気だせぇ」
180 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:17:43.94 ID:W8fZlT2d0
何か知っていると思ったVIP藩士には会えず
モナの輔の死の真相は不明
あてもなくこの部屋にいても、情報が転がり込んでくるわけもなく・・・
( ´∀`)「やむなし。ブーン」
( ^ω^)「はいですお」
( ´∀`)「直談判じゃ」
181 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:22:33.74 ID:W8fZlT2d0
月のない夜である
目的からすれば、絶好である
ただ、目的が
( ^ω^)「本当に忍び込むんですかお」
( ´∀`)「他の方法がわからん」
( ^ω^)「しかも若君を背負って」
( ´∀`)「わしはお前の様に身軽ではない」
182 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:26:04.52 ID:W8fZlT2d0
江戸城、人影はなし
しかし全ての方向からなにかに見つめられているような圧迫感
しかしブーンの気持ちは決まっていた
モナ次郎が望むのなら、そしてそれに役立てるのなら、
体も、技も、全て使うつもりでいた
( ^ω^)「(とはいえ・・・)」
( ´∀`)「ゆくぞ、ブーン」
( ^ω^)「(これは成功しないんじゃないのかお?)・・・・は!」
183 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:29:57.04 ID:W8fZlT2d0
月がない上にさらに陰を選んで静かに動く
足音はない
見つかるはずはない
いけるはず・・・
道の向うに、江戸城が見えた
184 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:31:33.41 ID:W8fZlT2d0
( ^ω^)「セッ!」
=( ^ω^)
三( ^ω^)
三三⊂二二二( ^ω^)二⊃
( ^ω^)「と、飛びますお!」
( ´∀`)「行けブーン!」
185 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:33:35.48 ID:W8fZlT2d0
∧∧
( ´∀ ⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
( | /
ヽ ( ノ
ノ>ノ
レレ
186 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:34:18.50 ID:W8fZlT2d0
∧∧
( ´∀ ⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
( | /
ヽ ( ノ
ノ>ノ
レレ
187 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:35:23.52 ID:W8fZlT2d0
∧∧
( ´д ⌒ヽ
⊂二二二( ゚ ω゚)二⊃
( | /
ヽ ( ノ
ノ>ノ
レレ
188 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:38:44.38 ID:W8fZlT2d0
/
/
/
ビダァァン /
/
∧∧ /
( ´д ⌒ヽ /
/ ( ゚ ω゚) /
( | \ / /
ヽ ( \二つ
ノ>ノ /
レレ /
191 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:40:06.81 ID:W8fZlT2d0
( ゚ ω゚)「・・・・・」
( ´∀`)「さすがじゃ」
( ゚ ω゚)「死ぬかと思いましたお・・・」
( ´∀`)「いや、さすがじゃ」
お褒めに預かり・・・
( ^ω^)「いきますお!」
192 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:42:12.34 ID:W8fZlT2d0
「透明人間でも飼ってるの?」
ブーンの江戸城の印象である
( ^ω^)「・・・めちゃくちゃ見られてるお・・・」
しかしどこにも人影はなし
( ^ω^)「怖・・・」
195 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:46:29.34 ID:W8fZlT2d0
ブーンには実戦の経験がある
それはこれまで、ブーンの自信の源の一つであった
足がすくまない、という自信が自慢の迅さから迷いを取り除いていた
しかしこの場において、実戦の経験に意味があるのか・・・
( ´∀`)「ゆけ」
背中の重みだけがブーンを突き動かす
196 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:49:41.31 ID:W8fZlT2d0
見上げるは天守閣
シッ シッ シッ
ブーンの走る足音である
ブーンはせめて、視線を感じない方向へと走っていた
いやな汗が胸を湿らせる
( ^ω^)「どこか・・・入り口は・・・」
197 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:51:49.08 ID:W8fZlT2d0
見つめあう視線のレーザービームを避けるように走る先に
ブーンは小さな戸を見つけた
おそらくは勝手場、武士以外の居場所
あそこなら・・・
( ^ω^)「入れるかもしれないお!」
シッ シッ シッ
198 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:53:39.14 ID:W8fZlT2d0
自分に集まる視線を掻い潜るように、ブーンは迅さを増し
目的の戸へと疾走した
( ´∀`)「あそこか?」
( ^ω^)「あそこならおそらくは・・!」
(,,゚Д゚)「ィア!!」
199 名前:靴下右[] 投稿日:2006/12/09(土) 18:57:09.00 ID:Q0mtIIiY0
ギコの振り下ろす手からかろうじて逃げられたのは
直前に加速していたからに他ならない
それほど虚を突かれた一撃であった
( ;^ω^)「ひあ!うええ!?人、人いたの?ここ!」
(,,゚Д゚)「いるさ、お前が勝手場を狙うのは当然だからな!」
( ´∀`)「降ろせブーン!」
200 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:00:37.78 ID:Q0mtIIiY0
( ^ω^)「降ろ・・は、ちょ、今はまってくださいお!」
(,,゚Д゚)「ふっ!」
何か飛んだ!
そう思ったときにはブーンは走っている
(,,゚Д゚)「まったくVIPの連中は!ィア!」
逃げた先にはギコの手が振り下ろされる
足元に小さな爆発を起こしたかのように、ブーンは加速する
201 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:04:45.19 ID:Q0mtIIiY0
( ´∀`)「よい!飛び降りる!」
( ^ω^)「危険ですお!」
( ´∀`)「構わぬ!」
モナーは背負われたまま、二人を結び付けている縄をほどく
( ;^ω^)「今は危険でs・・・うわ!」
何かが飛来する感覚を得て、ブーンは急角度で曲がる
モナーが弾かれたように飛び出す
202 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:07:23.02 ID:Q0mtIIiY0
( ´Д`)「いでででで!!擦った!擦った!」
( ^ω^)「若君!とにかく・・・隠れて!」
( ´∀`)「断る!」
モナーはたったかたったかと、勝手口に向かって走った
( ^ω^)「ええ!?」
(,,゚Д゚)「ふっ!」
203 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:09:24.26 ID:Q0mtIIiY0
血の気が引いた
(,,゚Д゚)の飛ばしたモノは、確実にモナーを狙っている
そしてその飛ぶ速度は、ブーンより速い
守れない
( ^ω^)「承知!!」
204 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:16:00.62 ID:Q0mtIIiY0
ブーンは・・・ブーンは若君を守る!
若君の・・・望みを・・・叶える!
(,,゚Д゚)「・・っ」
含み針だろうか
なにかの弾のようなものだろうか
いずれにせよ、急激に息を吐き出したのなら
動きが
( ^ω^)「忠烈つかまつる」
止まる
205 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:18:19.76 ID:Q0mtIIiY0
若君!
うん?ブーンか?
4・・・5・・・5匹も・・・
ひき?なにがじゃ?
辛抱されよ!
なにをじゃ?・・いで、いでっ!いでえ!
206 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:20:40.10 ID:Q0mtIIiY0
(,,゚Д゚)が吐き出していたのは見たこともない小さな甲虫であった
それは高速で対象に食い込み、すぐに消化酵素を吐き出す
強力な、強力な消化酵素であった
傷口がどろどろだお!
怖いこと言うなお前・・・
ブーンは甲虫がめり込んだ部分を、周りの肉ごとえぐりとった
207 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:23:58.73 ID:Q0mtIIiY0
勝手場の火種に服をくべる
その赤い光の中、えぐる傷から流れる血は黒く見える
( ;ω;)「若君!若君!助けるお!」
涙を流しながら主君に刃を突き立てるブーンの
背後に人影が
208 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:28:38.49 ID:Q0mtIIiY0
('A`)「派手にやりましたね・・・ギコの死体を見る日がくるとは・・・」
( ;ω;)「!?」
('A`)「大丈夫、ここに見張りが殺到することはありません
他でもっと大きな騒動がおきてますから」
( ;ω;)「若君が・・・!」
('A`)「これ、差し上げます。甲虫の毒を中和できます。傷は治りませんが・・」
ひったくるように薬を受け取り、どろどろの傷に塗ってみる
どろどろの組織が、固まってゆく・・・
209 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:34:18.43 ID:Q0mtIIiY0
( ^ω^)「若君!」
たすかる!たすかる!たすかる!
ブーンはモナーを背負い、勝手口から外に出た
確かに誰もいない ('A`)もいない
それでも死角を選んで、ブーンは外へ駆けてゆく・・・
( ´д`)「直談判しにきたのになあ・・・」
背中でモナーはつぶやいた
210 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:36:46.06 ID:Q0mtIIiY0
十日後、奇妙な客がブーンたちのいる宿へ訪れた
ξ゚听)ξ「・・・邪魔するわよ」
遠慮のない仕草でふすまを開けた女に、ブーンは見覚えがあった
( ^ω^)「・・・なにしにきたんだお」
傍らにはモナーが寝ている
211 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:42:02.51 ID:Q0mtIIiY0
ξ゚听)ξ「誤解をしてたの」
( ^ω^)「何を言うのかわからないけど、意味があるとは思えないお
若様が大怪我した。それが全てだお」
( ´∀`)「ブーン、聞いてやろう」
いつの間に起きていたのか
( ´∀`)「城に忍び込んでおいて怪我の責任をなすりつけるのは
スジが通らぬぞ」
女はぎこちなく座り、手をついて頭を下げた
そして頭をあげ、言い切った
ξ゚听)ξ「VIP藩主 耳無しモナの輔博之は抜け荷をしておりました」
212 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:44:38.20 ID:Q0mtIIiY0
( ´Д`)「・・・!?」
( ^ω^)「え・・・密輸?」
ξ゚听)ξ「左様です」
それがばれて、切腹になったのだという。
( ´д`)「得心ゆかぬ。ならばなぜ罪が明らかにされなんだか」
ξ゚听)ξ「抜け荷はVIP藩のみにとどまりませぬ」
215 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:51:09.68 ID:Q0mtIIiY0
他藩の抜け荷がより深く潜行してしまうことを警戒した幕府は
切腹の理由を明らかにしなかった
( ^ω^)「あの殿様が・・・抜け荷とは・・・」
( ´∀`)「いやブーン、わしはわかる・・・
耕作に使える土地がわが藩には少ない・・
領民を植えさせぬための副産物事業と
同じことであったろう・・・法度であること以外は」
ξ゚听)ξ「幕府は南蛮との貿易により、その思想に侵される藩がでることを
危惧しております。
また、石高減少による収入減も・・・」
( ´∀`)「イスパニヤは・・・それほどなのか?」
ξ゚听)ξ「は」
216 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:54:39.07 ID:Q0mtIIiY0
( ´∀`)「ふむ・・・」
( ^ω^)「イスパニヤがどうしましたかお?」
( ´∀`)「お前に説明してもわかるまいて」
(#^ω^)「(わかるもん!わかるもん!)」
バテレンは上陸の足がかりとして貿易をなすという
そしていつの間にか、植民地化、奴隷化へと落とされる・・・
ξ゚听)ξ「神君以来の悩みの種です」
217 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:58:04.07 ID:Q0mtIIiY0
( ´∀`)「しかし・・・わが藩の特産物は好評だったのだがのう・・・
抜け荷に手を出すほど困窮していたとは・・・」
( ^ω^)「わが藩特産のイベリコ豚の生ハムは鍋によし、肴に良しですお」
ξ゚听)ξ「それ、抜け荷です」
( ^ω^)( ´Д`)「!?」
( ´Д`)「え・・・?イベリコの木になる身を塩漬けにしたものじゃぞ・・?わが藩の・・・」
( ;^ω^)「若君、この女もしやウソを・・・」
ξ゚听)ξ「あれは豚肉です」
218 名前:プレゼントはCcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 19:59:19.29 ID:Q0mtIIiY0
濃厚だとは思っていた
味わいも、どの木の実にも似ていなかった・・・
しかし
( ´Д`)「まさか抜け荷だったとは・・・」
( ^ω^)「まったく気づきませんでしたお・・・」
219 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:01:18.58 ID:Q0mtIIiY0
ξ゚ー゚)ξ「・・・ハァ・・・ふふっ」
( ´Д`)「いやしかし」
( ^ω^)「なれどあれは」
ξ゚听)ξ「もう一つ教えてあげます。('A`)のことです」
( ^ω^)「あ、あいつには礼も言わないといけないんだお」
221 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:05:45.18 ID:Q0mtIIiY0
ξ゚听)ξ「言いたければ止めませんが、あれは他藩の忍びです」
( ^ω^)「あー・・・そんな感じはするお」
( ´∀`)「わし、会ったことないんじゃが」
抜け荷の締め付けが厳しくなった昨今、抜け荷による収益を諦めて
海外の種子のみ密輸し、それを栽培する藩が増えてきたと女は説明した
222 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:08:46.25 ID:Q0mtIIiY0
ξ゚听)ξ「('A`)が江戸城に忍び込んだのは、その種子を得るためです
城には応酬した抜け荷が、サンプルとして保管してありますので」
( ^ω^)「じゃあ駿府城のときは・・・」
ξ゚听)ξ「バレンシアの種ですね。そうでしょう」
( ´∀`)「・・・」
( ´∀`)「少々疲れた。女、貴重な話を聞かせてもらった
下がって良いぞ」
223 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:09:54.15 ID:Q0mtIIiY0
ただ、父の死の理由を知りたかった
そして知ったのは、日ノ本の国が置かれている状況と
父の犯罪の事実だった
( ´∀`)「・・ままならぬのう」
224 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:11:59.13 ID:Q0mtIIiY0
( ^ω^)「若君・・・」
( ´∀`)「ときにブーン、(,,゚Д゚)との斬り合いじゃがの・・」
身を盾にするそぶりも見せずに、(,,゚Д゚)に斬りかかったブーン
( ^ω^)「・・・」
( ´∀`)「・・・」
( ^ω^)「お褒めの言葉、かたじけのうござりまするお」
225 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:15:23.56 ID:Q0mtIIiY0
( ´∀`)「なんじゃ、まだ何も言っておらぬぞ」
( ^ω^)「お褒めいただけるものと確信しておりますお」
( ´∀`)「なんじゃつまらぬのう
てっきり『若君を見捨てて敵に斬りかかって申し訳・・』とか
いうと思ったのに」
( ^ω^)「この内藤蔵ノ介武運、若君に忠烈申し上げまするお」
( ´∀`)「つまらぬわ、あほう」
226 名前:プレゼントはFcup[] 投稿日:2006/12/09(土) 20:22:51.66 ID:Q0mtIIiY0
六畳間には埃が浮かび 日差しはゆるく輝いて
( ´∀`)「しかし種泥棒と間違われるとはのう」
二本脇差腰に佩び 傷の若君の傍らを
( ^ω^)「三河に帰りますかお」
てくてく歩くてく歩く
( ´ー`)「・・・」
( ´∀`)「いや、このまま北に行こう」
( ^ω^)「えっ?」
( ^ω^)の忠臣蔵 完
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一気読み
その壱 -
その弐 -
その参
-
その四 -
その伍 -
その六
-
その七 -
その完