( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)は童話を読むそうです ( ・∀・)と薬草〜

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第一話 - 第二話 - 第三話 - 第四話 - 第五話 - 最終話

1 名前: 海賊(岩手県)[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 22:21:13.41 ID:mX0W+3KF0
暗い空間。
僕はポケットに入っていたライターを取り出し、着火する。
その明かりで全貌を現す。

僕はどうやら建物の中の通路にいるようだ。
人の気配は全くと言っていいほどない。
僕は静かに足を進めた。

音は僕の足音だけ。
僕が止まると自然に音が消える。
音のない世界は怖い。
これほど音というものが日常に侵略していたのか。


2 名前: 海賊(岩手県)[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 22:22:50.42 ID:mX0W+3KF0
くだらないことを考えるのをやめ、再び足を進める。
しばらく歩いていると一つの大きな扉が視界に入ってきた。
静かに、その扉を押す。


キィ―――――――


扉が開く。
そこは多目的ホールのような広さの部屋。
椅子がたくさん並べてあり、多くの人が座っていた。


3 名前: 海賊(岩手県)[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 22:24:14.86 ID:mX0W+3KF0
( ^ω^)「ようこそだお」

「ッ!?」

突然現れた老人。
その老人の姿が僕を二度驚かせた。
黒いフード。右手に杖。左手にこの部屋唯一の灯りの燭台。
その姿は魔女を彷彿させていた。

( ^ω^)「君が最後の客人だお。そこの椅子に座るといいお」

老人の指先にある椅子。
僕はおとなしくその椅子に座った。

老人はその姿を認めると前にある大きな椅子に座り、本を広げる。

( ^ω^)「皆よく来たお。今日は童話を読むお」

そういうと老人はパラパラとページをめくる。

( ^ω^)「今から読む六つの童話。楽しんでくれお」

老人は静かに、口を開く。


4 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:26:18.92 ID:mX0W+3KF0
( ・∀・)と薬草


周りは瓦礫の山になりかけている民家。
その姿は滑稽でもはや家として機能しているとは思えない。
いや、実際にしていないのだろう。人が住んでいないのだから。
その瓦礫の民家の中心に、一つの大きい城が構えてあった。

その古城の中に人の気配はない。
いや、まだ城門を抜けたところにいるのだから断言するべきじゃないかもしれない。
城の中は荒れに荒れていた。
テーブル、イス、壁に掛けられている絵、グラス・・・全てが壊れ、朽ちており地に落ちていた。
この城で何があったのか。常識的に考えて戦争と認識するのが普通であろう。
それくらい酷い惨状であった。


5 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:28:23.19 ID:mX0W+3KF0
一通り探索した後、二階へ上がる。
二階も同じように物という物が破壊しつくされていた。
しかし、一つだけ違う点があった。
何もされていない・・・綺麗な部屋があったのだ。
今までは部屋の扉も無残に壊されていたのにその部屋だけ。
その部屋だけ何事も無かったように存在していた。


――――――扉を開ける。
頭で理解した時には既に開けていた。無意識のうちに。
この部屋にはなにか魅せられるものがあるのだろうか。
そこには、老人がいた。


7 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:30:36.26 ID:mX0W+3KF0
/ ,' 3「ほっほっほ、珍しいコトもあるもんじゃ」


老人は椅子に座っており、静かにこちらを向いていた。


/ ,' 3「客人なんて何年ぶりかのぅ…」


『あなたは――――――』


/ ,' 3「わしは・・・わしはこの城の主じゃ」


老人は続ける。


8 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:32:20.13 ID:mX0W+3KF0
/ ,' 3「さて、君は何者なんじゃ?この城に踏み込むのだから相当な物好きなんじゃろう」


『私は、しがない探検家です』


/ ,' 3「しがない探検家か。まぁいいや。久しぶりに人が来てくれたのだから」


老人は椅子に座ったまま背伸びをすると大きな声で叫んだ。


/ ,' 3「お〜〜〜い!客人に茶を出せ〜〜〜〜!」

扉が開く。
そこには美しい女性がいた。
髪は黒いことから東洋の女性なのだろうか。
その女性に私は目を奪われていた。


9 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:34:54.21 ID:mX0W+3KF0
川 ゚ -゚)「………」


手にはコップが握られており、湯気がたっている。


『ご老人、この女性は――――?』


/ ,' 3「こいつか?こいつはクーといってな、わしの妻なんじゃ」


美しい。
私は初めて一目惚れというものをしていた。


10 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:37:01.53 ID:mX0W+3KF0
『失礼ですが、ご老人の名前は?』


/ ,' 3「わしか?わしの名前は・・・なんじゃったかなぁ。しばらく名を呼んでもらってないからなぁ」


老人は頭を抱え、悩んでいる。


/ ,' 3「あぁそうじゃ。モララー。モララー・カシャールじゃ」


その名前を聞いて驚いた。
たしかその人物は、その主の城は・・・


『何十年前かにVIP軍に滅ぼされていたはず』


11 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:39:50.97 ID:mX0W+3KF0
そうだ。たしかにそうだ。
あのVIP軍が全勢力をもって滅ぼし、地図から消された小さな国だ。
あのVIPがそこまでして滅ぼしたのだから世界中は驚き、その国に同情した。
しかし、なぜそこまでして滅ぼしたのか世界は知らなかった。VIP以外。
私はそんなところに来てしまったのか。


/ ,' 3「そうじゃ。あっというまの出来事じゃった」


老人は小さな、掻き消されるような声で喋る。
その眼は彼方をみているようであった。


/ ,' 3「この国には、不老不死になれるという魔法の薬草があった」


そこからの老人の話はこうであった。


12 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:42:45.02 ID:mX0W+3KF0
不老不死になれるという魔法の薬草。
この滅ぼされた国の最重要機密であったその薬草。
当然民はその薬草の存在を知らなく、城にいる一握りの王族しか知り得ないことであった。
しかしある日、その情報が漏れる。よりによってあのVIP国に。
VIP国とはこの世界において最強であり、事実上全ての国を統括していた。
そのVIP国が全勢力を持ってこの国に攻めてきたのだ。魔法の薬草のために。
日が落ちるまでには制圧され、残るは城のみとなった。
VIP軍は城に潜入する。そこで彼等が眼をしたのは魔法の薬草を持ったこの国の王であった。
王は出せる声を全て出し、こう叫んだ。


『この薬草は何千年に一つしか咲かない薬草だ。今この国にある薬草はこれ一つ。私の言いたいことがわかるか?』


兵士はその薬草の前に進むことができなかった。
魔法の薬草は輝きを放ち、来る者を拒んでいた。


14 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:44:35.05 ID:mX0W+3KF0
『貴様らが手に入れる前に…私が…』


王が口にしようとしたとき、妻…女王が草を奪い、それを食べた。


『お…お前…!!!』


『あなたが…永遠にこの世を生きる屍になるなんて…私には耐えられません…』


『だがそれだとお前が……!!』


『私のことはどうでもいいのです。あなたさえ無事なら』


15 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:46:35.69 ID:mX0W+3KF0
その女王は不老不死になった。
そこからは鬼神の如く活躍し、VIP軍を壊滅寸前に持ち込んだ。
何をしても死なない。剣で切り裂いても、矢で打ち抜いても。
たちまち回復し、肌も元に戻り、内蔵の損傷も全てがもとにもどった。
その姿を見たVIP軍は大層驚き、自国へ逃げ帰っていった。
それからしばらくして、女王はたちまち感情を失くしていった。
不老不死と引き換える代償が感情であったのだ。


/ ,' 3「その女王というのが・・・こいつじゃ」


川 ゚ -゚)「………」


美しい。
この美貌を何十年何百年、いや何千年保てるというのか。
なんて素晴らしいのだ。


16 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:48:58.58 ID:mX0W+3KF0
/ ,' 3「あともう少しで・・・不老不死の薬草が咲く。わしも不老不死になってこいつと永遠を供にするつもりじゃ」


『なぜ、そのことを私に?』


/ ,' 3「お前が・・・若い頃の私に似ているからかもしれない」


『……』


私は、落ちている錆びた剣を手にした。


19 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:51:18.91 ID:mX0W+3KF0
/ ,' 3「…どうした?」


『私が、私がこの女性と永遠を過ごします』


/ ,' 3「なにを…言っておる?」


『そのまんまです』


剣を掲げ、そのまま振り下ろす。
老人は頭から裂かれ、いや、砕かれ死んだ。


21 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:54:16.31 ID:mX0W+3KF0
『・・・・・・・・・』


その部屋にある苗木をみる。
その苗木は老人の血が染込み、咲いた。
血のように綺麗な赤い花であった。

『――――――――これが…』


その花を切り、口にする。


『――――――――ッ!!??』


身体が熱い。
蒸発してしまいそうなくらい熱かった。
しかし、確信した。
私は不老不死になれたことを。


22 名前: 海賊(岩手県)[] 投稿日:2007/03/25(日) 22:56:51.95 ID:mX0W+3KF0
部屋の隅にいる女性、クーに対し喋る。


( ・∀・)「さぁ、永遠を供にしようじゃないか」

クーは一筋の涙を流していた。無表情で。
大丈夫、そのうちこの感情も無くなる。
それまでの我慢だ。
クーの手をとり、大広間へ行く。
踊るために。


( ・∀・)「なんて…なんて美しいのだあなたは」


川 ゚ -゚)「………」


二人は今日も踊っている。
明日も、明後日も、一週間後も、一ヵ月後も、一年後も、数十年後も。
永遠に。




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