( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンが半年病のようです 第5話〜

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32 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:08:36.93 ID:f6unWRrT0

( ^ω^)「今日は自分の意識についてですお。」

ブーンは話す内容を前もって考えておいた。
考えていたというより日記に書いた疑問を話すようになっていた。

川 ゚ -゚)「ほう、それはどういうことかな?」

( ^ω^)「死がせまってきてよく考えるんですお。
      僕が死んだら意識はどこに行くのかって
      パソコンのデータを消すようにまったくなくなるのか
      それともどこかに残るのかって。」

川 ゚ -゚)「ふむそうだな。私は、まったくなくなると思うんだがな。
     やっぱり人間も一種の機械と考えるとブーン君が言ったみたいに
     データを消したときのようにまったくなくなってしまうと考えるな。」

( ^ω^)「そうですかお。」

ブーンは少し悲しそうな顔をする。


33 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:09:35.52 ID:f6unWRrT0

そしてクーが続ける。

川 ゚ -゚)「だがな、こうも考えるよ。
     私は意識というものは自分は何者だと考えるところにあると思う。
     確かに死んだらブーン君の意識はなくなるだろう。
     しかし、もしどこかで誰かが自分は何者だろうって考えたらそれは
     ブーン君になるんじゃないかな。」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

川 ゚ -゚)「例えば二人の少年がいたとしよう。
     太郎君が自分は何者だろうと考え、次郎君は考えなかった。
     このとき太郎君が死ねば太郎君は存在しない。
     だけど、次郎君も自分は何者だろうと考え始めたら
     それは太郎君と同じになるんじゃないのかなって。」



34 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:11:36.93 ID:f6unWRrT0

ブーンはよくわからない顔をしている。

川 ゚ -゚)「つまり、自分は何者だろうと考えたら
     その考えを持つものは皆同じ存在になると考えているんだ。
     同じ時間、同じ考え、同じ疑問を持っているんだからな。
     答えがあるかわからないが探しているならば道は一緒のはずだろう。」

ブーンは話に聞き入った。そんな考え方もあるんだなと。
そして確信する、やっぱり自分はクーのことが好きなんだと。

( ^ω^)「僕は自分は何者だろうと考えているお。
      クーさんもそう考えているなら同じ存在ってことかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな、そうなる。自分は何者だろうって考えた瞬間
     新しい意識ができるからな。その意識が共通だったら同じ存在だろう。
     このことを考えた瞬間、私は君でそして一つの存在になる。
     本当にそうかはわからないが、同じ空間を生きているならば
     その生きている人の数だけ意識があるわけだからな。」



35 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:12:34.81 ID:f6unWRrT0

こんな会話を繰り返しているとブーンは安心する。
自分が死んでも意識を受け継ぐ人がいると思えるから。
クーは自分の考えを言っているだけだがそれでもブーンはそれに救われていた。
またクーも、自分の話を理解しようとするブーンに興味を抱いていた。

川 ゚ -゚)「ブーン君は珍しいな。私の話を理解しようとするものは
     半年病患者の中にはいなかったのに。」

そう言うとブーンは照れた。
クーのことが好きだから理解しようとしているのに
その下心と思えるものを褒められたのだから。
もっとクーを知りたいブーンは質問した。

( ^ω^)「そうですかお。
なんで半年病患者には理解しようとする人が
いなかったんですかお?」



37 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:15:59.99 ID:f6unWRrT0

話そうかどうか少し迷い、ブーンなら大丈夫だろうと思い話し始める。

川 ゚ -゚)「そうだな、これは偏見のように思うんだがやっぱり
     死の恐怖が関係していると思う。
     誰だって恐怖からは逃げたい。ましてや死だ。
     宣告された恐怖から考える余裕がなくなるだろう。
     そうなると、わかりやすく都合のいい解釈を求めると思うんだ。」


38 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:19:00.89 ID:f6unWRrT0

( ^ω^)「例えば?」

ブーンはさらに深く聞こうとする。

川 ゚ -゚)「実際に統計があるんだが、この国の半年病患者のうち40%が新興宗教に入っているんだ。
    ただその宗教ではお金を払って壷だの掛け軸だのを買えば
    天国へいけると言われるんだ。
    この国で暮らしていればお金で買えるものがほとんどだと誰もが思っている。
    そしてお金さえ払えばなんでもできると考えているんだな。
    その結果、お金さえ払えば天国へいけると思い込み大金をつぎ込むんだ。
    大金をかけて安心したいんだろうな。これで大丈夫って。
それまでの経験上からお金を払うという行為を信じてるんだろうな。
    もっとも、患者自体が少ないからこのことは問題視されてはいないけどな。」



39 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:19:54.47 ID:f6unWRrT0

言い終え時計を見る。

川 ゚ -゚)「おっと、そろそろ時間だ私はもう帰ろう。」

クーはいつも話が盛り上がったところで帰る。
ただブーンは引き止めることはしない。
もし帰る理由を聞いてそれが夕飯の時間だからと言われたら
落ち込むからだ。
自分は夕飯以下なのかと思ってしまうから。

クーが帰った後、今日聞いたことを日記にまとめ自分の意見を書き入れた。
そこであることに気づいた。
まだクーが何でカウンセラーになったのか聞いていなかった。
忘れないように書きとめ今度聞いてみようと思った。
しかし、それが後日ブーンにとって辛い体験となる。


95 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:50:23.33 ID:Dx4RVTjx0

ブーンが死ぬ何日か前ついに飛行機が完成した。
しかし、プロペラは力の伝達効率が悪くまだ製作を繰り返している。
ただ、グライダーのように自動車で引っ張り飛ばすことは可能だった。
そこで、せめてブーンに少しでも空を飛ばしてやろうと考えたドクオとショボンが
軽トラックを借りてきて広い場所で飛ばそうと企画していた。



96 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:54:31.43 ID:Dx4RVTjx0

三人が集まりのある日、ドクオとショボンが朝早くからガレージに集合し
飛行機を分解していた。

(´・ω・`)「ねえねえドックン、これどうやってはずすの?」

飛行機を作るのに必要な計算をしていたショボンは
いまいち実作業になれていなかった。
一方ドクオは図面を描くことを担当していたので構造は熟知している。

('A`) 「ここは先にこのボルトはずすんだよ。
    気をつけろよ、強度が弱い部分もあるからな。」

そう言いながら分解を進める二人。
それでも二人は浮き浮きしていた。
自分たちが作った飛行機が初めて空を飛ぶ。
その瞬間を今日見れるのだと。
こんなふうに目標に向かっていくのは初めてだった。
だからこそ余計に楽しくなっていた。
分解をしながらドクオはそう考えていた。


97 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:57:06.22 ID:Dx4RVTjx0

('A`) 「しっかしブーンのやつしっかり作ってんな。
    寸法値がかなりの精度だぞこれ。」

寸法値通りに自作するのは根気のいる作業だ。
工学系の二人にはその苦労がよくわかっていた。
それは、そこまでブーンが空に憧れていたということだ。
ただ、ドクオには心配もあった。
この飛行機、飛ばないんじゃないかなと。
確かにブーンの夢は感動を与えることだった。
でも、空を飛びたいに決まっている。
そんなことはよくわかっていた。
ブーンを空に飛ばしてやりたい。しかし失敗したらもうほとんど時間がない。



98 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 16:04:59.38 ID:Dx4RVTjx0

('A`) 「なあショボン、これ本当に飛ぶかな?」

ドクオは不安を口にし、ショボンと共有しようとする。
だがショボンは不安な素振りはまったく見せず言った。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。計算上は30〜40キロほどで飛べるよ。」

確かに何度も計算した。シミュレーションもやった。
それでもドクオは心配だった。
ショボンから、もしかしたら飛べないかもしれないねと聞きたかった。
そうすれば、ブーンを飛ばせなかったとき自分一人でなく
二人の責任になると思ったから。
しかしドクオはそのことに気づいてなかった。
ただただ不安だった。
ブーンから責められるんじゃないかなと。

('A`) 「そうか、でも不安なんだよ。
    ブーンを飛ばせなかったら、あいつどんな顔するかなって。」

まだ同意を求めるドクオ。
それはしょうがないことに思えた。
人が一人死ぬ。
それも一緒にやってきた友達が。
わかっていたことだ。
今まで抑えてきたのにその瞬間が迫るとやはり現実なんだなと実感する。


99 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:00:15.17 ID:Dx4RVTjx0

(´・ω・`)「飛べなかったらそれはそれでしょうがないじゃん。
     ブーンは僕たちを責めないよ。僕たちは三人でやってきたんだ。
     計算をしたのは僕、図面を描いたのはドクオ、作ったのはブーン。
     でも、どれも三人で納得しながらやってきたじゃない。」

一人がずっとその作業をやってきたわけじゃない。
お互いを手伝い合い、意見を言い合い作ってきた。
ショボンはそのことの意味をよく知っていた。
失敗しても連帯責任だからと甘えるわけじゃない。
そんなショボンの言葉にドクオは少し不安が柔らいだ。

('A`) 「そうだな、飛べなかったらやり直すだけだ。
    直し終わったとき、そのときブーンはいないかもしれないけどな。」


100 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:03:03.89 ID:Dx4RVTjx0

その日は晴天。雲がぷかりぷかりと浮かぶ綺麗な空だった。
ブーンが集合時間にやってきた。
分解作業はもう終わっている。
軽トラに積み込み早くも運転席に乗っている二人。

('A`) 「よお。今日はこいつをテスト飛行させに行くぞ。」

ブーンがガレージに入ってくるなり予定を伝えるドクオ。
しかしブーンは軽トラと分解された飛行機を見てすぐ理解する。

( ^ω^)「まじかお、今日いくのかお。」

ブーンにはテスト飛行のことを伝えていなかったのでびっくりする。
だがすぐに満面の笑みに変わった。
これからすることへの期待。
三人が半年近くかけて作ったものの成果を試す期待。
いい笑顔だった。
目の下のくまと、死の不安に怯え表情をのぞけば。


101 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:09:32.20 ID:Dx4RVTjx0

(´・ω・`)「ほら早く乗って。荷台しか空いてないけど。」

('A`) 「特等席だぜ、わざわざ真ん中に機体の座席を置いたんだ。」

ショボンとドクオが急かす。かなり楽しみのようだ。
ブーンが荷台に積んである飛行機の座席部分に座る。
これから空を飛ぶという期待に胸を膨らませ。
しかし、そこでブーンが二人にあるお願いをする。

( ^ω^)「ごめん、ちょっと待ってほしいお。
      空を飛ぶとこクーさんにも見せたいお。」

ブーンはガレージによく顔を出していたクーにも見せたいと思った。
また、空を飛ぶかっこいいと思える姿を見てもらいたかった。
別に急ぐわけでもない。今日は一日晴れの予報だ。
二人がブーンを急かしていたのはただ早く飛ばしてみたいから。


102 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:10:29.18 ID:Dx4RVTjx0

ブーンがクーの携帯に電話をかけ了解をとる。
クーがくるまでに一時間ほどかかるようだ。
ドクオがその間にドンキヘ行って
映画に出てくるような飛行服を買おうと言う。
安っぽいものでも雰囲気は大事だ。
三人はドンキに行きそれっぽい服とそれっぽい帽子を買った。
ついでにとバイク用だがゴーグルも買った。
ほかにもいろいろ買いガレージへと戻っていった。

ガレージの外にクーが立っていた。

川 ゚ -゚)「おはよう、ついに飛ばすんだな。」

簡単な挨拶を済ませ軽トラに乗り込む四人。
ショボンがドンキで買ったステッカーを軽トラに貼る。
そのステッカーはこう書かれていた。
最大積載量夢いっぱい。
荷台に飛行機とブーンとクーを乗せ出発していく。
ショボンがクーと席を替わろうとするがドクオがそれを察知し止める。



103 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:14:31.79 ID:Dx4RVTjx0

道路を走っているときブーンはご機嫌で飛行機の座席に座っていた。
それだけでも空を飛んでいる気がした。
交差点を曲がる度にブーンは子共みたいなことを言っている。

( ^ω^)「右旋回だお、次は左旋回。ブーン
      敵機発見、赤信号を破壊だお。ダッダッダッダ。」

まるで飛行機の模型を持って走り回る子共のようだった。
そんなブーンを見てクーが笑っている。
それに気づいて我にかえるブーン。
照れくさいのか、それとも恥ずかしいのか
弁解がましくクーに話す。

(;^ω^)「いやこれは、男の子ならみんなやるお。
      ていうかやりたくなるお。ねえドクオ、ショボン。」



104 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:18:31.12 ID:Dx4RVTjx0

ブーンが車内にいる二人に話しかける。
だが二人は聞こえないふりをして黙っている。
耳を真っ赤にし俯いているブーンにクーが声をかける。

川 ゚ ー゚)「面白そうだな、ちょっと私にも代わってくれないか。」

笑いながらクーが言う。
ブーンは席を代わりはじめる。
ここに座れば絶対にやりたくなるはずだと思ったから。

信号待ちのわずかな時間に席を交替する。
信号が青になってからけいと軽トラが進みだす。
クーが飛行機の座席に座っている。
だがブーンのやったようにはしゃぐことはない。



106 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:21:54.11 ID:Dx4RVTjx0

川 ゚ -゚)「なかなかいいもんだな。空を飛ぶってのはこんな感じなのかな。」

素直な感想を述べる。
とても冷静だ。ブーンはさっきの行動を思い返し赤面した。
だが、クーにも先ほどやったことを薦めた。
そうすればもっと空を飛んでる気持ちになれると言って。
それに頷きクーが声をあげる。

川 ゚ -゚)「右旋回だ、次はターン。
     私から逃げられると思うなよ。
     それ信号機破壊だ。」



107 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:23:03.44 ID:Dx4RVTjx0

映画で見た台詞を真似る。
クーの声はまだまだ続く。

川 ゚ -゚)「このヘナチョコが。
     帰ってママにキスしてもらいな。」

クーが自分の世界に入り込む。
それを見てブーンが笑う。
その笑い声でクーが現実に帰ってきた。

川 ゚ -゚)「悪くないな。確かに臨場感が増したよ。」

ブーンが自分の気持ちをわかってくれたと思い笑う。

川 ゚ -゚)「なんで笑う。
     ブーン君がやれと言ったんじゃないか。
     そんなに笑ったら恥ずかしいじゃないか。」

その一言で車内の二人も笑い出す。
さっきまで大声で叫んでいた者と同一人物とは思えないギャップに。




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