( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ブーンが初恋の夢を見たようです(^ω^ ) 一気読み〜

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1 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:08:20.66 ID:n766GXUk0
久々に初恋の人の夢を見た。
夢が覚める前までにあったはずの全てのリアルが
全てひっくるめて夢だったと言うのが酷く笑えた。
――けれど夢見として見れば最高だった。
フラッシュバックのように鮮やかに思い出せられる、たしかあれは――

       ブーンが初恋の夢を見たようです(^ω^ )



3 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:09:06.15 ID:n766GXUk0
《第一話 音楽室と掃除時間》
高校一年の一学期。僕の掃除担当は音楽室だった。
先生がこない事が災いしてか、掃除時間のこの場所はピアノが得意な彼女の独壇場で。
(゜∀゜)「ツン、ピアノピアノ!」
(´∀`)「何か弾いて欲しいモナ」
川゚-゚) 「最近の曲で弾けるのあるか?」
(^ω^ )「…………(お前ら掃除しろよ)」
そう言いつつ箒動かして
耳だけはピアノの方に集中させる僕。
ξ゚听)ξ「あー……うん、一応」
押しに弱い外面ツンは毎回毎回この時間になるとピアノの前に立たされ何かしらの曲を弾かされる。
本人も嫌がっている節は見えないんでそのままでいいとも思うけど。
(゜∀゜)「弾いて弾いて!」
(´∀`)「頼むモナ」
( ;゚ω゚)「……(こっ、これはVIP先生……!)」
川゚-゚) 「何だろうか、それは」
(´・ω・`)「しらないな……」
( ^ω^)「……(一体どういうセレクト基準だお)」

4 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:09:45.95 ID:n766GXUk0

ξ゚听)ξ「あははは……やっぱり知らないわよね」

(゜∀゜)「次々! 何か別の!」
(´∀`)「頼むモナ」
('A`) 「急かすなよ。あ、ツン。何か別の奴頼むわ」
(´・ω・`)「ドクオ、人の事言えた義理じゃないよね」
ξ゚听)ξ「あ、うん……」
(  ^ω^)「……(知らないけど……いい曲なのはわかるお)」
('A`) 「VIP STAR?」
ξ゚听)ξ「うん、正解」
(´∀`)「すごいモナwww 本当にVIPSTARだモナww」
(゜∀゜)「じゃあ次お願い!」



5 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:10:01.83 ID:n766GXUk0

…………
そんな風に掃除時間は毎日過ぎていった。
お互いが関与し合わない時間。
それでもツンの演奏を一番深く聴いているのは僕だろうと自負していた。
小学校からの腐れ縁だったツンとも、
中学高校と上がってからはどうにも疎遠になり初めていた。
(まあ、それを言うならクーも同じなんだけど。ドクオは本当に腐れ縁)
ツンと話す事も少なくなった。
メールする回数も少なくなった。
そして中間あたりでどうにか頑張っていた僕の成績は落ちた。
……これは関係ないお。
そして中学高校と上がっても、僕はツンのことを好きであり続けていた。




6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:10:20.78 ID:n766GXUk0
《第二話 ハローハルシオンデイズ》
オープンハイスクールがあるとかで
『まあきったねぇ校舎だけど見栄え位はよくしとこうぜ!』
という目的で大清掃の日。
ξ゚听)ξ「……ちょっと、ブーン」
(  ^ω^)「……お?」
いつもと変わらず音楽室で1人真面目(なのかどうかは定かではないけれど)に
清掃に励んでいた僕に声が掛けられた。

はいはいどーせパシリでお?

半ば諦めながら振り向けば――
ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、
ベッドの中で自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。

「大丈夫だよグレゴール・ザムザそれは悪い蟲じゃない」

…………っていやいや、何だお。別の物語だお。
勢いあまって別の物語だお。
軌道修正。


8 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:10:44.11 ID:n766GXUk0
(  ^ω^)「ツン? って何で1人何だお」

いつもツンに群がってる取り巻きはどうした。

ξ゚听)ξ「え? あー、クーは窓拭き用のクレンザー取りに、
ドクオはそれがもうここにあったってことをクーに伝えに、
モナー君はあると思われていた窓拭き用のクレンザーの中身が普通の水であることをドクオに伝えに、
長岡君はさらにもう一本窓拭き用のクレンザーがあり、
それがちゃんとしたものであったことをモナー君に伝えに行ったわ
で、ショボン君はスポンジがないことを全員に報告に。これでいい?」

何その嫌スパイラル。

(  ^ω^)「大きなカブかお……」
ξ゚听)ξ「あははっ! 確かに現状はそうとも思えわね。さて、貸しなさいよ」
ツンが僕の方へ寄って来た。
そして箒を寄越せと手を差し伸べてくる。
(  ^ω^)「……これは僕の仕事だお」
ξ゚听)ξ「別にいいじゃない。いつもちゃんとした掃除できてないし」
(  ^ω^)「そうだおね。いっつもいっっも……ああ!」
ξ゚听)ξ「な、何よ」

9 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:11:13.27 ID:n766GXUk0
(  ^ω^)「ピアノ! ツン、ピアノ弾いて欲しいお!」

あ、行き成り何言ってんだお僕は。
あーあ、引いてる。引いてるお。
ツンちゃんドン引きしたっちゃだお。

ξ゚听)ξ「何を言い出すかと思えば」
そーっすね。
(  ^ω^)「いや……言ってみはかったんだお」
どもってるし。
噛んでるし。最悪だ僕。
ξ゚听)ξ「……ブーン、私のピアノなんか聞いてないかと思ってた」
(  ^ω^)「い、いやいやいやいや! 聴いてたお!?
 ブーンはいっっもちゃんとツンのピアノ聴いてたお!?」
ξ゚听)ξ「……ふーん」
……あっれー? なんだこの反応。
(  ^ω^)「だから! 今日も弾いて欲しいんだお!」
勢いってすごいね。
本当凄い。勢い万歳。
ξ゚听)ξ「別にいいけど。……あ、これまだ練習中なんだから、失敗しても馬鹿にしないでよ?」
(  ^ω^)「全然おっけーっす!」

10 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:11:35.43 ID:n766GXUk0
ピアノの方へ彼女が寄って行く。
ついでに僕もそれについて行く。

ギィ、と。彼女が座ったピアノ椅子が軋んだ。

ξ゚听)ξ「…………」
(  ^ω^)「…………」
廊下から音がする。いつも消えていた音だ。
いつもピアノの音にかき消されていた音。
掃除時間にかかる、音の割れたワルツ、校舎に溢れるのは忙しない喧騒。
そんな中で鍵盤にツンが手を置く。そして演奏が始まった。
所所詰まる伴奏に、早走りになるメロディ。
ああ、じれったいなぁ、もう。なんて苦笑いしながら、僕はピアノの脇に立つ。
そして見渡す音楽室。
ああ、いつも僕はあの辺りに立ってたのか、なんて。

ξ゚-゚)ξ「……って、あれ? んー?」

彼女の旋律が完全に止まった。
いつもじゃこんな事ははっきり言って無い。
彼女のピアノ演奏が止まることは無かった。けれど。

11 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:12:01.72 ID:n766GXUk0
(  ^ω^)「ここ、ファ、じゃないかお?」
ξ゚听)ξ「え? ……ああ、そっか。ありがとうブーン」
この一瞬一瞬が僕はどうももどかしくそれでいて限りなく幸福で。
ああそうだ。いつもは彼女のピアノ演奏が止まる事はなかった。
そして僕がツンとこんな風に関る事だって、なかったんだ。
西日が西向きの窓に降り注いで、オレンジ色した柱を作る。
空中に舞うほこりがキラキラと輝くのは中々綺麗な光景だった。
ξ゚听)ξ「久しぶりね……こんな風に喋るの」
いつのまにかツンが弾く曲が変わっていた。
その事にまず驚いて、次に声を掛けられた事に驚いて、
うお。なんて間の抜けた返答を返してしまう。
ξ゚听)ξ「ったく……変わってないわね、ブーン」
(  ^ω^)「そうかお?」
ξ゚听)ξ「ええ、昔からアンタはそう」
(  ^ω^)「それはどういう意味で?」
ξ゚听)ξ「顔もそうだけどまず動作が子供っぽい」 (  ^ω^)「う」
ξ゚听)ξ「それでいて格好を付けたがるそして失敗する」
(  ^ω^)「ぐ」
ξ゚听)ξ「今みたいに」
(  ^ω^)「……ぬぬぬぬぬ……お?」
いやいや、格好を付けたつもりはないのだけれど。

12 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:12:21.77 ID:n766GXUk0
ξ*゚听)ξ「一丁前に黄昏るなって事よ!」

(  ゜ω゜)「ぐほぉっ」
見られてたのかお。

ξ゚听)ξ「……さて。リベンジ!」
(  ^ω^)「へ?」
そう言うなりツンは一旦手を止めて、
もう一度最初に弾いた曲を弾き始めた。
(  ^ω^)「……それ、何て曲?」
ξ゚听)ξ「《ハルシオン・デイズ》。ギリシャ語で平穏無事な生活」
(  ^ω^)「……へえ」
素直に感嘆する。
ツンはよく知ってるお、そう言うこと。
ξ゚听)ξ「ま……まあね」
ツンの顔が赤かったのは、例の西日の所為だろうか。
もしかしたら、そうじゃなかったのかもしれない。
いや、そうじゃなかったら、いいな。

13 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:12:41.05 ID:n766GXUk0

その一件があってから、僕とツンはたまに会話するようになった。
それでも一緒にご飯を食べるだとか、
ξ゚听)ξ「お母さんが作りすぎただけなんだから……!」
と言って弁当渡してくれるとか、

一緒に登下校するだとか、
ξ゚听)ξ「……その……一緒に帰らない?」
と言って中央玄関で彼女が待っていただとか、

それなんてギャルゲ的な展開には恵まれず、
到って平穏な『ハルシオンデイズ』で。

まあ現実なんてこんなもんだろうと僕は打算した。

メールも少しはするようになった。
そして嫌いだったいんげんをちょっと食べれるようになった。
……これはさらに関係ないお。
自分でも恥かしくなるくらいに僕はツンに惹かれていた。




14 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:12:59.04 ID:n766GXUk0
《第三話 ハローハルシオンデイズ2》
ツンは雨の日が好きだったとか、
前髪を気にするとき上目遣いになる癖だとか、

ふで箱は僕が中三の時にあげたものをまだ使ってくれていただとか、
自転車に乗ることがあまり得意でなかったことだとか、

理科が得意だったとか、
炭酸系の飲み物はダメだったとか、

とりとめもない事が僕の横を通り過ぎてはまた向かってきて。

そしてまた、僕の意識は浮上(あるいは、また沈んだのかも知れない)して、鮮明な夢が僕を迎える。

15 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:13:13.85 ID:n766GXUk0

失恋のきっかけは案外簡単なものだった。
ツンが他県の国立大学に受験して、そして通った。合格したんだ。
そしてツンの合格を喜ぶ友人と、ツンの真直ぐな目を見た時だった。
あっけない。そう思う。
まあ現実なんてこんなもんだろうと僕は打算した。
漠然と、ああツンは未来を見据えて歩いているのだろうと確信して、僕とツンの遠さに絶望した。
それは何も僕らは丁度対角線で教室の端にいるとか言う物理的なものではなく、
心理的な、未来的な、結果的な。色々の要素を敷き詰めたもので。
そして自然とツンは、彼女は僕から離れていくのだろうと理解した。

そしてそれが4ヶ月後、現実に起っただけの話。

《ハルシオンデイズ》と言う薄皮一枚で結ばれていた僕たちが
「進学」と言う転機を機に切れただけ。
ただ、それだけ。
そしてここで僕の夢はお終い。
目を覚ませばとりとめもない《ハルシオンデイズ》が僕を出迎えてくれる。
ああ、そう言えば、この言葉にはもう一つ意味があって、
それは僕自身が体験してから知ったんだけど――――


16 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:13:32.65 ID:n766GXUk0
《最終話 グッバイハルシオンデイズ》


(  -ω-)「…………っ……ふおおおお……ふぬあ゛」
やばい。
仕事休みの日だからと言って寝すぎた。
部屋の時計を見ればもう2時を過ぎていた。

睡眠薬使った割には頭は明瞭としている。

(  ^ω^)「…………」
とにかく熱い。そう思った。
確か昨日の天気予報では
「明日は梅雨明け初日の真夏日になる」と言っていたっけ。
窓全開の割りには風は吹いてこないし、昔馴染みの扇風機はぶっ壊れるし……
ろくなもんじゃないお、まったく。

(  ^ω^)「ハルシオンデイズ」
平穏無事な日々。

そして

17 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:13:48.02 ID:n766GXUk0

(  ^ω^)「睡眠薬を投与する日々かお……」

ツン、あの時君はこっちの方の意味を知っていただろうか?

僕はその後3年経ってから我身で知ったよ。
やっと入社できた会社も結構悪条件でさ。
睡眠薬に頼ってばかりで、最悪なハルシオンデイズさ。

(  ^ω^)「ハロー」

立ち上がって、網戸を開ける。
そして机の上に置いてあった睡眠薬を手にとって。

(  ^ω^)「グッバイ……!」

そのまま全力投球で投げ捨てる。

19 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:14:55.09 ID:n766GXUk0

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
                        |
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     |        |        |   |
     |        |     |   |
     |        |( ^ω^)つ ミ |
     |        |/ ⊃  ノ |   |   睡眠薬
        ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄    |   
                        |

21 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/10(土) 13:15:22.18 ID:n766GXUk0
網戸を閉める時に見上げた夏の空は、輪郭のはっきりとした入道雲と
目まいを起しそうになる程に青い空だった。

ああ、今日はこんなに空が青いならスクーターかっ飛ばしてドライブにでも行こうかな。
きっと気持ちいいはずだ。行き先は――ま、何とかなるだろう。

(  ^ω^)「ハロー、アンドグッバイ。マイハルジオンデイズ」


多分、君の夢を見ることはもうないだろう。



                ブーンが初恋の夢を見たようです(^ω^ )
                ― 完 ―        ツン編へ続く!




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