88 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:40:01.11 ID:NmNm5LDm0
第十話『奇計法』
様々なニュースサイトが前日の事件について報道していた。
再び魔女を倒した、これは市民にとっては喜ばしいばかりのニュースだった。
見るに耐えない下世話がつらつらと並べられていた。
魔女が負けたんだ、人間に。
( ´_ゝ`)「モナーに続いてプギャーもやられたか……粋がってはいたものの、
流石にやられないと思っていたがな……」
(´< _`)「大方強さに酔いしれた所を突かれたんだろう。
ただそれでもプギャーを倒せる相手がいるんだ、モナーといい相当な人間がいるな」
(*゚ー゚)「プギャーは何だかんだでそれなりの使い手だからね。
私達もあんまり油断していると痛い目を見るかもね」
( ´_ゝ`)「ま、アイツはいなくなってせいせいするよ……
いつ裏切るかとヒヤヒヤしながらってのはどうも気が落ち着かない」
ヤレヤレと言いながら男は素早い速度でタイピングを続ける。
パソコンの中でブラウザは十数個も開かれていた。
その殆どが魔女に対する下賎な扱いばかりだったが。
(´< _`)「時に兄者、思うのだが……相手に魔女がいるとは考えられないか?」
89 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:41:50.56 ID:NmNm5LDm0
(*゚ー゚)「いくらなんでもそれはないでしょう?
魔女同士が出会ったら気付くからね。
そういう報告が無いって事はいないってことよ」
(´< _`)「む、そうなのだが……」
( ´_ゝ`)「しぃの言うとおりだ、考えすぎだぞ弟者よ」
(*゚ー゚)「いずれにしても、相手に未知で隠然な人物がいることは確かそうね」
そう言いながら兄者と呼ばれた男はひたすらにノートパソコンをタイピングしていた。
既に相手のデータは奪っている、討伐隊の構成人数から個人データまで。
新人を足して4人、ジョルジュとクーに残り二人は元ニートときたから面白いものだ。
( ´_ゝ`)(おそらく現在討伐隊を牛耳っているのはジョルジュと言う男になるのだろうな)
今までの魔女もこの男に殺されたのではと想定していた。
ξ#゚听)ξ「……」
そんな中、ツンは一人その場で佇んでいた。
勝手に動いた挙句、人間ごときに引けをとって負けてきた。
そして話題にも出されず……居場所がなかった。
事実ツンは魔女としてはきわめて弱い、特にここの者達が際立って強いのだから尚更だ。
90 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:43:32.42 ID:NmNm5LDm0
(,,゚Д゚)「あー、まったく一気に変化がくると厄介だな……」
そこに、携帯電話を片手にもう一人魔女が登場する。
(*゚ー゚)「ギコ、電話は大丈夫なの?」
(,,゚Д゚)「ああ、それよりも討伐隊がこちらに向かってきているそうだ」
こんな情報をどこから仕入れてくるのか、一体誰と電話していたのか。
それらは魔女同士でもタブーとなっていた。
ただ、これらの情報は何より信頼できる、それだけは確かだった。
( ´_ゝ`)「……ほう、それでどうするんだ? 全員で一気にカタをつけるのか?」
(,,゚Д゚)「それでもいいがな」
ξ゚听)ξ「待って!」
話する中、ツンが声を上げた。
ξ゚听)ξ「私に……相手させて欲しいの」
92 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:45:13.10 ID:NmNm5LDm0
ツンの発言に、兄者と弟者はため息をついた。
昨日人間一人に引きをとった人物が突然何を言い出すんだと。
モナーにプギャーまでが死んだ中、それ以下の人物に任せれるわけがない。
(,,゚Д゚)「いいじゃないか、任せてやろう」
( ´_ゝ`)(´< _`)「!!」
(,,゚Д゚)「はっきり言ってこのまま人間一人相手出来ないようでは役不足だ。
このまま黙過し続けるわけにもいかん、だったらここで克服してみろよ」
ξ゚听)ξ「ギコ!」
(,,゚Д゚)「その代わり……ここで相手を倒せないようならオレらが殺すぞゴルァ。
後が無いことだけ自覚して挑め」
ξ;゚听)ξ「……」
ツンは頭を縦に振った。
このギコの意見には皆同意した、いずれ足手まといになっては困る。
最年少魔女、といってもこれ以上甘やかしてはいけない。
ここで勝ってもらわなければ、ここで成長してもらわなくては。
(,,゚Д゚)(ショボンは今回は出ない筈だ、ならば……余程の事が無い限り大丈夫だろう)
95 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:47:13.14 ID:NmNm5LDm0
ドクオ達は人気の少ない昼の街中を車でとばし、順調に目的の倉庫へと向かっていた。
人気が少ないといってもそれなりの往来はある、どうしてこの街の夜がああも静かなのかと聞き返したくなるほどに。
これほど沢山のビルが立ち並ぶというのに、真っ暗な夜の町を見てしまっては当然の疑問なのだろうが。
討伐隊は相変わらずしっかりと装備を固めていた、ドクオも今回は拳銃を携えている。
そう、自分の身は自分で守れという事だ。
一般人は到底縁の無い『拳銃』だが、彼は相変わらず無表情で受け取った。
川 ゚ -゚)「チャンスがあれば、躊躇するな」
クーが念入りにこう言うが、ドクオはさっぱりとした様子で答えた。
('A`)「心配ないですよ、大丈夫です」
その答えが逆に怖くもあったが。
そして今は車の中で、魔女勢とどう戦闘するのかを話し合っていた。
正攻法では勝てないに決まっている、どう工夫し、どう魔女に対抗するのか。
もっともジョルジュとクーが経験を活かし、二人で討議しているだけのようなものだったが。
( ゚∀゚)「魔女は……だからこそ……」
川 ゚ -゚)「いや、そこは……それも可笑しいか、しかし……」
二人が淡々と会話している時、突然ドクオが思い立ったかのように発言した。
98 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:48:55.30 ID:NmNm5LDm0
('A`)「俺に……アイデアがあるんですが」
今までまったく協力的でなく、味方かどうかとすら思ってしまうほど
無関心だった彼の、突然の発言に二人はギョッとした。
期待半分だ、車内は一転して沈黙となった。
川;゚ -゚)「……」
( ゚∀゚)「……聞こうか、言ってくれ」
ドクオが鬼才である事は、二人も薄々感ずいていた。
ニートをしているのは望んでなのだろう、彼はその上でしっかりと確立された芯を持っていた。
一方何事に対しても無関心という、また一風変わった性質も持ち合わせていたが。
そんな彼が、自分から言葉を出した。
何かに興味があったのだろう、それを知る由は無いが。
('A`)「VIP倉庫はもう古い、廃屋でしたよね。それを利用して……」
そして数分後、ドクオに感心する二人の姿があった。
( ゚∀゚)「それは……いけるかもしれないな」
川 ゚ -゚)「賛同する、それでいこう」
100 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:50:36.46 ID:NmNm5LDm0
ドクオのアイデアをベースとし、更に作戦を練る。
もっともこの時は、またジョルジュとクーだけの話し合いに戻っていたが。
( ゚∀゚)(……それにしても、魔女の特性を知ったばかりだというのに……大した奴だ)
目的地に着く頃には、作戦はある程度固まった状態に仕上がっていた。
VIP倉庫からは少し離れて車を止め、3人は車から降りる。
辺りは不気味なほど静まり返っていた。
今日は風も無いのか、海際だというのに波も穏やかだ。
( ゚∀゚)「さて……」
ジョルジュは改めて自分の装備を確認した。
クーも同じように自分の体に手を当て、武器の所持を確認する。
( ゚∀゚)「……しかしドクオ、オマエどうしてニートなんてしてるんだ?」
('A`)「世の中が理不尽で」
( ゚∀゚)「世の中なんてそんなもんだろ?」
101 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [役不足 誤用申し訳ないです] 投稿日:2006/11/19(日) 22:52:17.06 ID:NmNm5LDm0
ジョルジュの些細な疑問は、簡潔な答えで返って来て終わってしまう。
そもそもその話題に長く費やす時間など当然無いのだが。
川 ゚ -゚)「それでは行くか……」
( ゚∀゚)「だな」
二人は銃を手に持つとその場にドクオを残し、倉庫の入り口へと歩を進めた。
残されたドクオは一人、ポケットからライターを取り出した。
車の中に常備されていたタバコも一緒に手にすると、興味本位で口に咥え、着火する。
('A`)「……がっ、ごほっ!!」
そして直後にむせた、彼に喫煙は向かなかったようだ。
('A`)「気持ち悪……ごほっ!」
そして彼は二人をちゃんと見送る事もせず、車へと戻って行った。
102 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:54:05.50 ID:NmNm5LDm0
倉庫の中は薄暗く、無造作に巨大な木製ブロックが積み上げられている質素な場所だった。
木造の古めかしい倉庫では、壁板の間から陽が入り込むのみ、今日は曇りだから尚更暗いのだろう。
とても人が住めるような所ではない。
随分な歓迎だ。
ξ゚听)ξ「いらしゃい」
その目の前にいたのは、昨晩にジョルジュが出会った少女だった。
しかし油断はできない、辺りをキョロキョロと見回す。
ξ゚听)ξ「安心して、私一人だから」
( ゚∀゚)「敵を信用しろっつってもな……何より女子供を相手するのは苦手なんだ」
ξ#゚听)ξ「……奇麗事並べて、そういうのが一番ムカつくわっ!
それより昨日の一人はどうしたの?
まさかもう仲間割れで殺された?」
川 ゚ -゚)「仲間割れ? 大丈夫だ、誤解は解けて今はゆっくりとしているよ」
ξ゚听)ξ「誤解?」
105 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:56:29.29 ID:NmNm5LDm0
互いに会話が食い違う。
いや、今はもうそんな事どうでもいいのだ。
必要なのは、この場で戦いどちらが生き残るかという事だ。
ξ゚听)ξ「アナタ達を倒してから確認する事にするわ」
( ゚∀゚)「それじゃ、戦うか?」
ジョルジュが腰に備えた銃を両手に持つ。
流れるような動作で銃を相手に構えようとしたが、その場に相手はいない。
強烈なダッシュで逃げたのだ。
(;゚∀゚)(ち、早速見失うか……)
薄暗い倉庫、木造の幾つものブロックが障害として立ち並ぶ。
この場で素早く動く相手を捕捉するのは並大抵のことではない。
神経をすまし、目を動かして集中する。
ξ;゚听)ξ(さて……私もどう戦うか……ね)
ツンは自身の肉体の増強はひどく苦手だ。
同時、女であり子供である自分は元々の筋力も無い。
接近した状態での銃弾を避け切られる自信は無かった。
108 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:58:01.81 ID:NmNm5LDm0
とりあえず銃に焦点を絞り、離れた状態で一発一発慎重に避け続けるしかない。
銃の火薬の爆発力を高めて銃を暴発させてもいいが、それも自分は苦手だ。
失敗したら通常よりもさらに速くなった弾丸が自分に向かって飛んでくる……リスクが高すぎる。
ξ;゚听)ξ『反射神経の増強、集中力の増強』
長期戦となるだろうのに集中力を増強する事はかなり諸刃となる。
しかしそれでも……早い内に何とか対抗策を思いつきたい一心だった。
ジョルジュとクーは銃を両手に構えた。
いつ、どこに、誰(ツン意外も潜んでいる事を仮定して)が姿を表しても瞬時に発砲できるように。
(;゚∀゚)「……」
川;゚ -゚)「……」
僅かな音が響いた。
魔女の足音だ。
ただジョルジュもクーも分かっている、ダメだ。
闇雲に銃を撃っても意味は無い。
109 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:00:02.56 ID:NmNm5LDm0
それを見抜いているかのように足音はあからさまに鳴る。
神経が磨り減っていく……まだか、まだ相手は攻めてこないのか?
一体いつ相手は攻めてくるんだ?
クーは痺れを切らし、威嚇に一発だけ発砲するが、銃声だけが鳴り響くだけだった。
また僅かな足音が響いてくる。
挑発している。
明らかに挑発している。
(;゚∀゚)(大丈夫だ……うまく時間を稼げれば……)
川;゚ -゚)(銃弾は限られている、うまく使わないと……)
互いに時間を使っての静かな戦いとなった……。
111 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:02:03.79 ID:NmNm5LDm0
魔女の動きは直線的だ。
だからこそダッシュをした音が聞こえれば、その方向へ打てばいい。
そうすれば相手がこちらに向かって来ていても大丈夫だ、
むしろダッシュした相手の正面から弾丸が向かってくる、一歩間違えれば魔女とて避けれるものでは無いだろう。
ジョルジュがこうも魔女と渡り合えた大きな理由には、常人離れした反射神経と反射行動にある。
瞬間的な行動の素早さは魔女にも引けをとらないほどに優れていた。
だからこそ、魔女と同等とまでいかずとも渡り合える事くらいは出来るのだ。
魔女と戦う事が出来る、それだけで彼も十分人間離れした、超人だった。
牽制合戦は十数分が経ったか、そろそろのはずだが……いい加減ジョルジュとクーの精神力がもたなくなってくる。
銃弾も残りは少ない、とはいえ油断をしてはいけない、勝負は一瞬で終わるのだから。
ツンもそんな二人の疲労を感じ取ってか、少しづつ威嚇を仕掛け始めていた。
113 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:03:55.90 ID:NmNm5LDm0
大きな音が響く。
間違いない、相手が衝撃を増幅してこちらに突撃してきたのだろう。
即座にその方向を向く。
違う、そんな自分たちの後ろでもう一度壁を蹴る音がする。
一度目のダッシュはフェイク、そのダッシュに反応した自分たちの裏をとったのだ。
後ろを向く暇は無い。
ジョルジュとクーは威嚇の意味も込めて揃って後ろに発砲した。
だが残念ながら、相手はこちらに向かって来ていなかったようだ。
二度目のダッシュもフェイク、これで銃弾がまた2発消えた。
(;゚∀゚)(クー、残りは何発だ?)
川;゚ -゚)(私はもう残り1発だ……相手も積極的にこちらを威嚇している、まずいな……)
(;゚∀゚)(ドクオ……まだか!?)
二人は精神的に限界が近いのは当然、何よりも残りの弾数がほぼ底をついた。
彼らはドクオの奇策が一刻も早く成功することに祈るしかなかった。
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