147 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:02:26.67 ID:wfNok9gr0
二十話『紅楼夢』
相手の拳が顔面にヒットし、骨格の変形する生々しい音、顎節のずれる音が直に響いた。
首顎が強烈に動かされ、脳が瞬間的にシェイクされる。
視界は一瞬でブラックアウトした。
攻撃されてから壁に飛ばされるまで、まるで宇宙遊泳しているようだった。
「痛い」と知覚する余裕も無い、その割に異常なほど長く時間を感じる。
走馬灯が流れるのはこういう時なのだろう、皮肉にもそんなくだらない事を考えただけで終わった。
壁に肩から直撃した瞬間に、遂に痛みを感じた。
肩、首、そしてスローモーションになった世界で痛みの信号が体を走り抜けていく。
壁が崩れた、その破片一つ一つを感じられるほど敏感に衝撃を感じた。
……死んでいない、それが救いか。
男は目眩を覚えながらも、瓦礫をどけて起き上がった。
150 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:04:43.27 ID:wfNok9gr0
(´< _`;メ)「オマエ、……何が……」
クラクラとし、立ち上がってすぐに再び腰を下ろす。
あれだけ瞬間的に脳が振られたのだ、今しばらく回復までは時間がかかる。
先刻の攻撃は何があったんだ、まるで脳信号が体に行き渡っていないような、
そんな無防備でどうしようもない瞬間に攻撃をされた。
(メ´・ω・`)「残念だったね、僕の渾身の一撃……
しっかりと味わってもらえたようで嬉しい限りだよ」
拳を振りぬいた恰好で彼は答えた。
今、ここで完璧にショボンは優勢に立った。
ブーンが引き金を引くと、火薬は本来からは考えられないほどの爆発を起こした。
ブーンとてそのあまりの威力に、銃を手放して尻餅をつく。
腕が痺れ、それは体全体に伝わって脳天に雷が落ちたような衝撃が走った。
152 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:06:50.22 ID:wfNok9gr0
そして……血を流して死んだ魔女が一体。
( _ゝ )「……!!」
言葉を発する事も無かった。
ツンを押さえ付けていた腕が放れ……兄者は倒れた。
当たり所が悪かった、偶然とはいえ目のすぐ下を打ち抜かれ、絶命した。
ブーンの手から離れた銃は、その形を留めたまま宙を舞い、乾いた音と供に地面に落ちた。
兄者の体はもう動かない、即死だ。
(;^ω^)「お……お……」
ブーンは喜んでいいのか悲しむべきなのかが分からず、ただ唖然としていた。
相手を『殺した』という真実、葛藤。
川;゚ -゚)(ブーン、撃ったか……)
154 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:08:58.81 ID:wfNok9gr0
殺せるとも思っていなかった。
銃が爆発する、もしくは相手が避けるのを承知で撃ったのに……そんないい訳ばかりが出てくる。
どうして殺したんだと、どうして殺せたんだと。
(;^ω^)「お、つ、ツン……!」
考えをすべて排除し、とりあえずツンに近寄る。
ツンもどことなく信じられないという表情を浮かべているが、現実をすぐに受け止めた。
ξ゚听)ξ「ブーン、ありがとう」
(;^ω^)「お……」
お礼を言われるのも何か違う気がして、ブーンは返答に詰まった。
そんな彼を、更に後ろからクーが評する。
川 ゚ -゚)「ああ、助かった。ありがとう」
勝ったんだ。
自分たちは魔女相手に勝利したんだ。
155 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:11:04.96 ID:wfNok9gr0
(´< _`;メ)「バカな……兄者、どうして……」
弟者はワナワナと震え、現実を受け止められずにいた。
どうして、何が原因で。
どうしてあの兄者が。
(メ´・ω・`)「兄者は、ブーンの撃った銃の爆発威力を増強させた、それは分かるかい?」
ショボンが言っても弟者は反応しない。
ヤレヤレといった様子でショボンは続けた。
(メ´・ω・`)「ブーンが銃を撃った時、僕はブーンの勇気も増強させていた」
(´< _`;メ)「!!」
(メ´・ω・`)「そして兄者が銃の爆発を強めた瞬間、同時に僕は銃やネジの硬度から摩擦力を高めた。
更に兄者の油断や驚きを強めた」
ξ゚听)ξ「ちなみに私も兄者の油断を増強させたわよ。
銃は見えないけど、私を抑えつけている兄者は知覚できるからね」
完全に油断しきった兄者へ、暴発する事無く兆速で跳んでくる弾丸。
様々な事が脳裏を過ぎった事だろう、しかし油断しきっていた彼が
避けるという選択肢に辿り付くには時間が無さ過ぎた。
そして為す術なく銃弾は兄者を貫通したのだ。
158 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:13:10.16 ID:wfNok9gr0
(メ´・ω・`)「そして同時に僕はキミの油断や驚きも増強させていた。
(油断をより強めるために、怒りや悔しさという感情の類もね)
兄者が死んで突然増強が無くなり困惑するキミを、僕が返り討ちにしたわけだ。
肉体強化、衝撃強化……めいっぱい強めたつもりだよ?」
語り終えると、弟者はようやくショボンの方を向いた。
カタカタと歯を鳴らしながら喋る。
(´< _`;メ)「そんな事が……一度にそこまで複数の……バカな……」
(メ´・ω・`)「ああ、ちなみに僕の反射神経や集中力なんかも当然強めていたよ?
信じる信じないは勝手だ、ただこれが結果だよ」
逝去した兄者、拳の直撃を受けてボロボロの弟者。
(メ´・ω・`)「悪いね、一度に複数の強化を行うのは得意分野なんだ」
(´< _`;メ)「だからって……そんな……」
弟者も魔女の中ではかなりの使い手だ。
それでも一度に増強できる数など、せいぜい五つを超える程度が限界だろう。
ショボンは一度に……十をも軽く超える数の強化をやってのけたのだ。
162 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:15:27.36 ID:wfNok9gr0
(メ´・ω・`)(それにしても、あの一撃で倒れてくれないなんてね……タフな相手だ)
優勢に立ったとはいえ、ショボンにとっても限界は近かった。
幾度と受けた痛烈な攻撃、その防御のためにずっと体や集中力は強化し続けていた。
そして先の一撃は、本当に全身全霊を込めた一発だった。
相手がある程度防御をしても倒せると思っていたが……甘く見ていたようだ。
(メ´・ω・`)「さてと……とりあえず、こちらも勝負を決めようか」
出来る限り余裕あるように見せ、構えるショボン。
戸惑いながらも、舌打ちをして弟者も構えた。
(メ´・ω・`)「……いくよ?」
(´< _`;メ)「くっ……」
弟者のすぐ前に移動するショボン。
そのまま弟者に蹴りをするが、相手も黙っていない。
すっと避けると拳を返してくる。
(メ´・ω・`)(……くっ、やはり素でもかなり強い……!!)
弟者の攻撃を何とか守ると、一旦退がる。
163 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:17:34.24 ID:wfNok9gr0
ショボンの移動スピード、攻撃、そして同じように弟者のスピードや攻撃。
それらに今までの力強さは無かった。
それでも双方供に突出した強さを持っていたが。
(メ´・ω・`)(持久戦になれば互いに辛い……が、持久戦にならざるをえないね。
それにしてもここまで来てこの強化具合とは……敵ながら天晴れだね)
(´< _`;メ)(兄者の支援が無いとはいえ、俺とタイマンが張れるとは……
やはり相当だな、この男。
何よりタイマンならいいが、相手にはツンという要素もある。
……分が悪いといわざるえないな)
弟者は構えを崩すと、チラと部屋の扉の位置を確認する。
(´< _` メ)「ショボンとやら……この借りはいつか返す、兄者の分も」
(メ´・ω・`)「やれやれ、兄者の件については間接的にしか係わってないはずだけどね」
(´< _` メ)「ツン、オマエも同罪だぜ?」
ξ;゚听)ξ「……」
弟者は軽く目配りすると、すぐにも地面を強く蹴って出口から逃げ去る。
164 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:19:39.95 ID:wfNok9gr0
ξ;゚听)ξ「弟者……ッ! ショボン、追わなくていいの!?」
叫ぶツンに対し、ショボンはやれやれとその場に座り込んだ。
胡坐をかくと、ようやくといった様子で大きく息を吐く。
(メ´・ω・`)「勘弁して頂きたいね、とても現状のタイマンじゃ勝てる気がしないよ……」
ξ;゚听)ξ「アンタ……意外に弱気なのね」
(メ´・ω・`)「彼が強いだけだよ」
ともあれ戦いは終わったんだ、ツンもその場にペタンと座り込む。
ブーンも一気に気が抜けたか、ごろんと寝転んだ。
クーは寝たままだ、ドクオは相変わらず何を考えているか分からない顔でその光景を眺めていた。
長い戦いは……勝利で終わった。
169 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:22:09.70 ID:wfNok9gr0
体の節々が痛む、いくつもの箇所から血はかなり流れ出ている。
それでも一歩一歩、力を入れてビルとビルを飛び跳ねる。
いつの間にか雨は止んでいて天気は曇りだった、黒い空からは月も覗けない。
(´< _`;メ)(兄者……くそッ!!)
弟者は悔しさでいっぱいだった。
負け知らずと言われ、常に兄弟で勝利を分かち合ってきたというのに……。
自分がまんまと相手に乗せられ、その所為で兄者は死んだ。
そして自分はまざまざと逃げ帰ってきているのだ、情けない。
ポツポツと再び雨が降り始めた頃、弟者は廃ビルの前に到着した。
中に入ると薄暗い、電灯は一つも点いていなかった。
(´< _` メ)「……ギコ、どこにいるんだ?」
声を張り上げる。
イライラしているのが声からも明らかだった。
174 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:24:22.94 ID:wfNok9gr0
(´< _`#メ)「ギコ、おいギコ!」
イライラが募るばかりだ、呼んでも一向に反応が無い。
(´< _`#メ)「いい加減にしろ、おいギ――」
直後、腹が一気に暖かくなった。
熱い……違う、これは痛みだ。
(´< _`;メ)「あああああ、おま、ギコ……ッ!!」
目を見開いて後ろのギコを睨みつける。
彼の片手は弟者の腹を貫通していた。
(´< _`;メ)「あか、カッ!!」
喉を血が逆流し、口から僅かに赤色が飛び出す。
そのために声を張り上げることができない、苦しいのに、痛いのに。
(´< _`;メ)「ガパッ、パハヒュ、パッ!!」
うがいをしているように口からは赤い泡が飛び出し続ける。
声が出ない、体が冷えていくのが自分でも分かった。
痺れ、麻痺していく。
177 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:26:35.54 ID:wfNok9gr0
(´・ω・`)『戦っていた時に間違いなく言っていたよ、彼らは討伐隊を倒した後僕達をも裏切る気だ』
ギコは感情を持たないかのように、ただ弟者を睨みつけていた。
命からがら助けを求めるその男を。
(´< _`;メ)「ギ……パッ、かぱ!」
(´・ω・`)『だから倒そうと努めたが……弟者が逃げたんだ、その処理は悪いけど頼んでいいかい?』
(´< _`;メ)「たす……、ギパファッ!!」
助けてくれと朦朧とした眼つきで哀願する弟者に向け、ようやくギコは口を開いた。
(#゚Д゚)「裏切るつもりだったとは……なめられたもんだ」
(´< _`;メ)「!? なんのkパヒャッ!!」
弟者の頭を掴むと、釈明の余地も与えることもせず、一気に地面へと押しつぶした。
魔女はもう壊滅状態だ。
(#゚Д゚)「惜別の情も沸かないな。いいさ、元よりオレはショボンだけしか信じていない……」
そう吐き捨て、弟者の亡骸を憤懣の限り踏み潰した。
外は何時の間にか大雨になっていた。
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