( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです 一気読み〜

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5 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:28:09.48 ID:ckO98Afy0
世は十年ほど前から急速に発展した。
パソコンが、リニアが、ロボットが……人々を様々な方面から魅了する。

それでも人間の欲望というのは坩堝のように入り乱れ、際限は無い。
歳の老いた人々が「時代に着いて行けない」と口を揃えるほどに、
進化は人間を置き去りにしてまでも止まらないのだ。
ひたすら己の欲望を満たすために……自分勝手に。


それでも昨今は頭打ちか、ようやく進化も止まり、大きな変化の無い日常があった。

サラリーマンはいつもどおり汗水垂らして働いているし、学生は嫌々にも勉学に手をつける。
主婦ばかりが便利になった洗濯機や食器洗い機に恩恵を受けながら、今日も携帯電話で世間話だ。


そう、『時代は変わった』のだ。


6 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:29:17.99 ID:ckO98Afy0
地下に設けられたその施設では、たった数人の人間がいるだけだった。
無駄に広い設備、しかしコンクリートの壁面はひび割れ、黒ずみ苔生している。

そんな趣なくだだっ広い一室に、3つの影があった。
その他には何も無い、椅子や机さえも無い質素というにもあまりな空間。
時代錯誤感のある古びた場では、照明と呼ばれるような明かりも薄暗く点灯するだけだ。

   「どうして……この二人を?」

女性がそう尋ねた。
その正面にいる男が頷いた。
陣頭指揮しているのだろう、抜けた声を返す。

   「うん、その二人が必要なんだよろしく頼むよ」

訝しげな顔をしつつ、質問をした女と隣にいた男は頷いた。
世の中には『奴等』に対抗するために、もっと優れた者は数多といるだろうのに……
それでも信じたのだろう、真意を聞き出すような野暮な真似をすることは無かった。


男と女はすぐに準備を済ませて駐車場へ向かい、地上へと車を走らせた。


7 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:31:05.31 ID:ckO98Afy0
第一話『討伐隊』


いつのペットボトルだろう?

青紫色の液体を見て彼は思った。
乱雑な部屋には半分くらいまで中身の減ったペットボトルがゴロゴロと転がっている。

中にはマリモのような気持ち悪い塊がプカプカと浮いていた。
朝日に照らされて透き通ったそれは、どことなく神秘さを醸し出す。

マリモは見て楽しむものだ、だったらこれも似たようなものじゃないか。
マリモなんかよりもよっぽど早い速度で大きくなっていくだろう、色は茶色だが。


観賞用にと机の上に置いて、改めて乱雑な部屋をガサガサと漁る。

ようやく発見した靴下を広げると、ひどく汚れていた。
洗って畳んでそのまま放置していたのに汚れるとは理不尽なものだ、そう思いながら男は靴下を裏返した。
……うん、許容範囲だと己に言い聞かせる。

そのまま靴下に足を通すと、数週間と洗われていないだろうシャツに腕を通した。
秋の涼しい風が吹き付けるだろう外へ、緊張しながらも足を踏み出した。


8 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:32:24.68 ID:ckO98Afy0
( ^ω^)「太陽が眩しいお……」

いや、天気は曇りだが。
天気は曇りなのだが……一日中部屋に閉じこもっている彼にとっては瞼がチクチクと痛かった。
一日中部屋に閉じこもっている理由はみなまで聞くな、彼こそは自他共に認める、
今を羽ばたく絶望の代名詞であるニートだからだ。

時間に余裕があればネット、エロゲ、読書を繰り返す日々。
世情に対し無関心な彼にとっては欲求もひどく少ない、食事は面倒だからと食べない時だってある。

(;^ω^)「久しぶりに外に出ると他人が嫌になるお……全てが敵に見えるお」

そんな四面楚歌の状況では、目線で視姦されているかのような錯覚に陥る。
被害妄想甚だしいわけだが……うん、中々悪くないかも知れない。
彼は自身の新たな性癖を発見した。


外に出るなど夜にコンビニに行く時くらい、朝から出かけるなど実に数ヶ月ぶりだ。
そう、今日は同じニート引きこもり仲間と会う日なのだ。


9 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:33:23.49 ID:ckO98Afy0
コンビニでパンを買うと、食べながら歩く。
食べ歩きというのは奇異な目で見られがちだが、そうやって自分を隔離した。
道行く人、一般人と自分とを完璧に分け隔てたのだ。

約束の公園にいくと、ベンチに腰掛けながら携帯をいじった。
周りを見渡す気にもならなかったのだ、待ち人に到着のメールを送って携帯でネット。

そうこうしていると、声をかけられる。

('A`) 「よおブーン」

( ^ω^)「ドクオ、久しぶりだお」

ブーンと呼ばれた青年は、如何せんその重い腰を上げようとしない。
ドクオと呼ばれた青年は、特にそれを咎める事もしなかった。

('A`) 「こんな所で話するのもなんだし、漫喫にでも行かね?」

( ^ω^)「漫喫も人多くて嫌だお、奴等は視線で僕を辱めるお。ドクオの家がいいお」

('A`) 「おま……相当なヒッキーだな。恥ずかしくないのか?」

( ^ω^)「五十歩百歩だお」


分かりきっていた事かとドクオは首を振り、ブーンは半ば強制的に彼の家に乗り込む事に決めた。


11 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:34:30.59 ID:ckO98Afy0
一方、物陰でその二人を覗く影があった。

川 ゚ -゚)「ジョルジュ、ターゲットが移動を開始した。捕まえるか?」

( ゚∀゚)「……仕掛けるか? クーに判断は委ねる」

川 ゚ -゚)「把握、仕掛けよう」

男と女は軽く話を済ませると、そのままブーンとドクオを尾行した。
公園から出て人通りが少なくなっただろう、そこで静かに二人に近付いた。

そして黒い大きな袋に二人を入れると、入り口を縛り付ける。
あまりに手馴れた素早い行動に、二人はなす術無く捕まった。

(;^ω^)『おおおおおお!?』

('A`) 『何これ、拉致?』

二人の声は袋の中に響くばかりで外には漏れない。

川 ゚ -゚)「捕捉完了」

( ゚∀゚)「ちょろいもんだぜ」

ドタバタと暴れる荷物を気にとめることも無く、任務完了と粋がる。
そして手っ取り早く岐路につこうとした。


12 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:35:38.14 ID:ckO98Afy0
しかしそんな二人をさすがに不審に思ったか、偶然通りかかった警察が銃を構えて声をかける。
かなりの警戒色を示していた。
間違ってもサンタクロースじゃないだろう、慌てんぼうのそれでも限度がある。

(=゚ω゚)ノ「えーと、君たち? 警察だけど……その袋は何だい?
   最近魔女騒ぎで物騒だからね、一応確認させてもらってもいいかな?」

( ゚∀゚)「あー、悪いね。オレらこういう者でさ」

そう言ってジョルジュという男は手帳を警察に出した。


『魔女討伐隊 団員証』


(;=゚ω゚)ノ「あ、あなたたちがあの討伐隊……失礼しました!」

( ゚∀゚)「いやいや、お仕事ご苦労さん」

そう言ってジョルジュは警察の肩をポンと叩くと、その場を後にした。
女も軽く会釈してそれに続く。

(;=゚ω゚)ノ「政府の認めた魔女討伐機関……こんな所で会えるとは……」

あからさまに不審なその二人を驚愕の眼差しで見た。
傍から見ればさぞ奇妙な構図だったことだろう。


13 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:36:46.10 ID:ckO98Afy0
ジョルジュと女性はそのまま車に乗り込むと、十数分走らせる。
念入りに迂回路を通ると、とあるビルの地下駐車場に車を止めた。

( ゚∀゚)「さて、またここから運ぶのか……肩が凝るねぇ」

川 ゚ -゚)「あとで揉んでやろうか?」

( ゚∀゚)「むしろオレがオマエのおpp……」

女はジョルジュの方へ、銃を突き出して構えていた。
素早い動作だったが、男は驚いた素振りなどまったく見せていない。

川 ゚ -゚)「笑えない冗談は好かんな」

( ゚∀゚)「残念だなぁ、クーのツボは未だにわかんねえよ」

ジョルジュの諧謔を生真面目に突っ撥ねると、二人で人の入った黒い袋をトランクから運び出した。
袋の中身は抵抗する事が無意味とわかったのだろうか、暴れる事無くスムーズにことは進んだ。


14 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:38:04.33 ID:ckO98Afy0
そのまま地下の奥にある、広い物置にやってきた。
ここでようやくブーンとドクオの入った荷物が地面に下ろされる。
「いたっ」っと声がしたのは幻聴ということにしておこう。

( ゚∀゚)「ショボンさん、連れて来たぜ」

川 ゚ -゚)「2名滞り無く連行しました」

(´・ω・`)「うん、ありがとう。とりあえずその中から出してあげようか」

それを合図に、ジョルジュと女性はそれぞれの袋の口をナイフで切り破った。
袋から二人はようやく姿を表す。

( ^ω^)「……こんにちはですお、残念ながらブーンの家に身代金は要求するだけ無駄ですお。
   むしろお荷物の息子がいなくなって喜んでいる頃だお!」

('A`) 「……いい暗さだな、だが他人がこうも集まっていると嫌になる。
   ああ、拷問とか殺すなら痛くないのにしてくれ」

そこは薄暗く、いくつかの白熱灯が灯っているだけ……この二人には中々居心地の良い空間だった。
だがドクオは他人と一緒という事に不満を抱いているようだ、そもそも全員で5人しかいないのだが。

(;゚∀゚)「……」

川;゚ -゚)「……」

(´・ω・`)「想像以上のダメダメっぷりだね、ある種才能だよ。
   ちなみにこれは身代金目当ての誘拐なんかじゃないから安心して欲しい」


16 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:39:06.34 ID:ckO98Afy0
(´・ω・`)「えっと、とりあえず自己紹介から入ろうか。
   僕はショボン、一応この魔女討伐隊の長をしているよ」

( ゚∀゚)「オレはジョルジュ、一応副長だ」

川 ゚ -゚)「私はクー、同じく副長だ」

( ^ω^)「ぷっ、魔女とか言ってるお。僕達よりもいかれてますね」

('A`) 「何々? 新しいサバゲーですか? 構わないけど生きてる人誘拐したら犯罪だよ、それは分かるよね?」

川#゚ -゚)「殺しの許可をお願いします。今すぐに、跡形も無く姿・形・匂い・存在全て物理的に完全抹消します」

(´・ω・`)「まあまあ落ち着いて、僕も予想以上のダメっぷりに驚きを隠せないよ」

ショボンが止めると、クーは素直に従って構えた銃を下げた。
そして会話から逃げるように部屋から出て行く。

( ゚∀゚)「あーあ、怒らせた」

( ^ω^)「フラグ立てのコツは、まず相手に自分を意識させる事からはじまるお。
   何より好感度最悪からのスタートなんて今時珍しい話じゃないお」

('A`) 「ってか分岐マダー?」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」


17 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:40:12.43 ID:ckO98Afy0
(;゚∀゚)「とりあえずなんだ、魔女から話し進めないといけないのか?
   相当に前途多難だな……ってか魔女知らないことは無いだろオマエ等」

( ^ω^)「正直魔女よりもナースの方が萌える件」

('A`) 「バカだな、魔女はあのステッキで……ってのが魅力的なんだよ」

(;゚∀゚)「いいか、無視して話し進めるぞ。
   俗人なら当然知っていると思うんだが、最近ここいらで魔女が出るんだ。
   ちなみに本物の魔女で、既に何百人と被害者が出ている」

( ^ω^)「あー、2chで新ジャンル『魔女』が乱立してたのはそういう事かお」

('A`) 「本物の魔女か……それは大変おいしい話だ、ぜひ一度あのステッキで……」

(;゚∀゚)「そして先週ようやくそのうちの一人を倒す事が出来た」

(;^ω^)「リアル魔女ktkr! kwsk、kskkskksk!!!」

(;'A`) 「更新更新更新ッ、F5キーがぶっ壊れる!!」

( ゚∀゚)「魔女っつっても男だったが」

( ^ω^)「魔女キメェ」

('A`) 「Alt+F4」


19 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:41:30.87 ID:ckO98Afy0
( ゚∀゚)「犠牲者7名、10人編成で樹立したオレら討伐隊も魔女一人にここまでの犠牲者を出した。
   新たな魔女の相手をするために今、新メンバーを必要としているわけだ」

そう言ってジョルジュは二人を見る。
二人はしばらくフーンと言いた気だったが、次第に現状が理解できてきたようだった。
つまり、新しい魔女討伐のメンバーとしてブーンとドクオをこの場に連れて来た事に。

(;^ω^)「ちょっと待てお、そんな魔女退治によもやニートを使うなんて……」

(´・ω・`)「ニートだからだよ、いなくなっても社会的にも道徳的にも全然問題ないからね。
   分かったか社会のクズが」

('A`) 「あー、反論できんね」

(´・ω・`)「とりあえずここ一週間のネット時間を調べ、君たち二人は抜きん出て優秀な結果だったよ。
   そしてハックしてメールボックス調べたら二人が今日会うときた、運命だと思わないか?」

( ゚∀゚)「最高のチャンス到来ってワケだ。
   あとオマエ等のパソコンウィルスだらけだよ、オレのノートン先生お怒りだったぜ?」

('A`) 「ノーガード戦法なんで」

( ^ω^)「どんなもんじゃーい!」

( ゚∀゚)「そもそもオマエ等の個人情報はある意味ウイルスよりタチが悪いよな、愚問だった」


20 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:42:34.34 ID:ckO98Afy0
(´・ω・`)「残念ながら君たちの親からも許可を得ているので、強制的にここで君たちには動いてもらうよ。
   断ったら殺す、家族ごと」

('A`) 「あー、別にどうでもいいわ」

(;^ω^)「断れない事知ってて言ってるお?」

( ゚∀゚)「そういうこった、よろしくな。ブーンにドクオ」

ジョルジュが差し出した手を、二人は掴む事をしなかった。
納得していないのか、それとも現状について来てないのか……。

( ^ω^)「そもそも魔女って何だお?」

( ゚∀゚)「魔女ってのはな、ある事象を……形の無いものの大きさをでかくできるんだ」

( ^ω^)「オマエ何言ってんだお」

(´・ω・`)「スカラーって分かるかな? ベクトルと違って、方向を持たない力や量……」

('A`) 「聞いたことあるな」

( ^ω^)「記憶にございません」

(´・ω・`)「厳密には違うけど、『高校で習う』スカラーの大きさを大きく出来るんだ。
   密度を上げる、力を強くする、物が堅くなる、温度を高くする……」


22 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:43:50.06 ID:ckO98Afy0
( ^ω^)「オマエ何言ってんだお」

('A`)「自分中卒ですが」

(´・ω・`)「とりあえず一度会ってもらうといいんだけどね、同時に死ぬ可能性も大いにあるけど」

(;^ω^)「出来れば一生会いたくないお……」

( ゚∀゚)「一応先週に殺した魔女の話だと、残るメンバーは6人だそうだ。
   男が4人、女が2人……こいつらを倒さない事には今までの生活の戻れないと思え」

('A`) 「相手一人殺すのに7人の犠牲、残り6人って事は……42人の犠牲か」

( ^ω^)「とりあえず僕らニートの力なんて人一人分で計算されるなんて恐れ多いお、
   僕とドクオで一般人半分くらいかお?」

('A`) 「そんなに過大評価すんなよ」

(;゚∀゚)「……」

本当にこの二人は魔女を知らないのだろう、そして甘く見ているのだろう。
そうでなくてはこうもふざけ合ってなどいられるはずも無い。
ジョルジュは怒りよりも先に、呆れるという感情が生まれた。


23 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:44:55.08 ID:ckO98Afy0
( ゚∀゚)「とりあえず、その魔女がここ数年突然の反乱を起こしてな、一斉の駆除が開始されたわけだ。
   今回の相手っていうのはその生き残りにあたる」

('A`) 「何で魔女ってのはそんないきなり反乱なんてしたんだ?」

( ゚∀゚)「魔女に聞いてくれ、オレらにゃ奴等の意図までは分からないし、発端に何があったかも知らない。
   ただ、奴等は感情に任せて自分勝手に殺戮を行う無法者ってことだけは確かだ。
   そしてオレらはそんな魔女から一般人を守る……ヒーローって所だ」

('A`) 「……ニートのね」

( ^ω^)「うは、新境地!」

(;゚∀゚)「……ふぅ」

ヤレヤレとジョルジュは肩を竦めた。
現状でこの二人に何を言っても無駄だと悟ったのだ。


大体の話を終えると、クーを呼んで改めて自己紹介をした。
そして、ブーンとドクオは討伐隊として動く事になった。


24 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:45:59.50 ID:ckO98Afy0


その頃、ジョルジュに討伐隊の証明をされた警察はその感動を露にしていた。
パッと見火事場泥棒と寸分と違わず『不審』という言葉だけでは生温い、
ヒーローに憧れる子供たちの夢を一撃で粉々に砕くような最悪のシーンに対面してしまったわけだが、
それ以上に出会いの感動が大きかったのだ。

(;=゚ω゚)ノ「いやー、本当に討伐隊がいるとは……感動だなぁ、
   今時魔女に向かうなんて我々警察から見ても尊敬するよ……」

そんな事を口にしながら歩いていると、後ろから声をかけられる。

( ^Д^)「魔女が……どうかしたんですか?」

(;=゚ω゚)ノ「あー、いえいえ何でもないですよー。魔女が出るから物騒な世の中ですよねー」

( ^Д^)「プギャー、警官さんも魔女が怖いんですか?」

(;=゚ω゚)ノ「流石にね、あいつらは人間じゃない――」

瞬間、警官の前にいた男が消えた。


そして……警官は腹への激しい鈍痛を覚えた。


25 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:47:09.91 ID:ckO98Afy0


今はもう使われていないとある港倉庫、そこには数人の男女がいた。
木造の古ぼけたその壁からは、板の間を縫うように光が差し込める。
電気がついていないにも拘らず、意外にも明るみを帯びていた。

( ´_ゝ`)「なんだ、プギャーは遊びに行ったのか?」

(´< _`)「なんでもモナーが殺されたから、調子に乗らないように警察を何人か殺してくるそうだ」

( ´_ゝ`)「モナーか……魔女の恥さらしめ」

二人の男はパソコンを覗きながら会話していたた。
パソコンにはモナーという魔女が捕まった話題がニュースとして挙がっている。
電気の無いここでどうやってパソコンを使っているか、どうやってインターネットをしているかはまた別の話だ。

(,,゚Д゚)「しかしプギャーの勝手さにはいい加減困るなゴルァ」

(*゚ー゚)「そうよねぇ、もうちょっと作戦とかさ、何か考えてもいいのに」

(´< _`)「言うだけ無駄だ」

( ´_ゝ`)「そう思う、反骨精神の塊みたいな奴だからな」

話していると、そこに一際甲高い声が響いた。

ξ#゚听)ξ「あーもう、アイツなんなのよプギャー!
   私にガキガキいつも言いながら勝手な行動ばっかりでさー!」


27 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:48:21.66 ID:ckO98Afy0
(,,゚Д゚)「ガキは事実だろ、最年少魔女なんていい響きだろゴルァ」

ξ#゚听)ξ「うっさいわね、どうせガキで力も全然強くないですよーだ!」

辺り構わず噛み付く彼女だったが、周りは慣れているのか歯牙にも掛けない。
宥める事もせずに、淡々と言葉を続けた。

( ´_ゝ`)「力が強くないのはプギャーも一緒だろ、モナーもだが」

(´< _`)「少なくともツンよりは強いがな」

(,,゚Д゚)「言ってやるな、プギャーは器用貧乏なだけだ」

ξ#゚听)ξ「私を弁護しろよ」

( ´_ゝ`)「確かにモナーに比べればプギャーはよほどマシだが」

(´< _`)「ツンはモナーよりさらに格下だがな」

ξ#゚听)ξ「うっさいわね、ほんとトサカくるわアンタたち!」

魔女の集まるその空間、その雰囲気は異質だった。
仲間を同情する者もいない、そんな関係だった。


28 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:49:30.74 ID:ckO98Afy0


自己紹介も手短に済ませたブーン達は、とりあえずその『基地』ともいえる地下施設を案内されていた。
ジョルジュとクーが歩いて直接教えてくれる。

遊技場に射撃場、お手洗いにお風呂。
例外なく壁は黒ずみ、苔臭さが漂った。
一通り紹介を終えると、最後にとある一室の扉を開けた。

( ゚∀゚)「そしてこれがオマエ達の部屋だ」

と紹介されたのは、20畳ほどのアスファルトで囲まれた一室。
用意されているのは布団だけと、まるで囚人用にしか思えない粗末っぷりだ。

( ^ω^)「これ何てアスベスト?」

( ゚∀゚)「ねーよ」

二人で使うにはなまじ広過ぎる空間が、孤独には慣れているとはいえブーンを焦燥させる。
何も無いのならいっそのこと3畳部屋に一人でも十分なのに。

何よりこの部屋で魔女と戦って死んでいった人達が生活していたんだろうと思うと、背筋が凍った。


そこで突然、基地全体に響くほど大きく無機質な電子音が鳴る。
ビクッと体が跳ねた。


29 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:50:46.21 ID:ckO98Afy0
   ピーッ ピーッ ピーッ......

(;^ω^)「放送禁止音が聞こえるんですが、大変卑猥です」

(;゚∀゚)「これは……行くぞ、魔女が出た」

(;^ω^)「ちょま、タイミングいとワルス」

('A`) 「おれ……この戦いから帰ったら結婚したいなぁ」

( ^ω^)「死亡フラグとみせかけて願望乙」

川 ゚ -゚)「オマエ達、いい加減マジで切れるぞ? 千昌夫のホクロの位置に風穴開けるぞ?」

('A`) 「俺Mじゃないんで勘弁して下さい」

ジョルジュとクーはすぐにも戦闘の準備を整える。
チョッキに袖を通すと、手榴弾(らしきもの)に銃、ナイフを懐にしまう。
映画のように黙々と銃機器を揃えて、数分とせずにも準備を終えた。


31 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:51:56.61 ID:ckO98Afy0
ポカーンとその様を見ているブーンとドクオは、準備を終えた二人に促され一際広い倉庫部屋へと連れて行かれる。
ブーン達が初めに連れて来られた場所だ、ショボンは動く事も無くまだそこにいた。

(´・ω・`)「うん、最高のタイミングで魔女が出てくれたみたいだね」

( ゚∀゚)「……そうですね」

ジョルジュの顔は若干強張っていた。

(´・ω・`)「とりあえずすぐに向かってくれ、新隊員に魔女を見せるチャンスでもあるしね」

( ゚∀゚)「なんとか死なないよう努めてきます」

(´・ω・`)「それは最低条件だよ」

おどけるショボンに対し、ジョルジュは笑って返す気にもなれなかった。
魔女と会えばただで済まない、普通なら死ぬのだから。
少なからず現世の思い出を頭に浮かべてしまうものだ。

( ゚∀゚)「それじゃあ、行こうか」

ジョルジュは指揮を取って、すぐにも駆け出した。

ブーンとドクオは……不運にも、早々に魔女と対面のチャンスを得た。


38 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:55:32.30 ID:ckO98Afy0
第ニ話『初遭遇』


太陽が真上から照りつけ、影はその面積を小さくした。
雲一つ無い空から照りつける太陽、まだまだ暑さを感じる。

そんな爽快な気候だというのに、ビルや民家の立ち並ぶ往来を散策する人影はない。
それもその筈だ、魔女の無差別殺人がニュースに取り沙汰されているこの地域であえてそんな暴挙にでる人間もいない。


そして今、沈滞した町一帯に響き渡るほど高らかな笑い声と、吐き気を催すほどの断末魔が轟いた。


( ^Д^)「はははっ、脆い脆いッ!」

銃を構え及び腰な人間を見ながら、更に笑いを大きくした。
それで威嚇しているつもりなのかと。
『それ』で『自分』を倒す気なのかと。

為す術の無い相手の顔を鷲掴みにすると、首の後ろにもう片方の手を当てた。
そして勢いよく折る。

ボギッと鈍い音がした。
折られた人間は瞳孔を開き、震えて泡を吐きながら倒れた。

首が有り得ない角度に曲がるそれは、どこか人形のように写った。


41 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:56:35.83 ID:ckO98Afy0
呼吸する事さえもままならないだろうその首を更に蹴飛ばしてせせら笑う。

( ^Д^)「さーてと、とりあえず7人か……」

その魔女は、既に7人もの警察官を殺していた。
子供のように指を折り曲げながら『7』を数えると、またフフッと笑った。
警察を一人殺せばまた一人来る、援護に数人が来る。

命知らずだ。

   パンッ

発砲音、同時に魔女は動き、紙一重銃弾を避ける。

<;`∀´>「ば、バカなッ!!」

信じられないのは当然だろう、銃弾を避けるのだから。
見た目は一般人となんら変わりないその魔女は、素手で全てを捻じ伏せた。


42 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:57:37.47 ID:ckO98Afy0
肉眼では捉えられない異常なスピードで移動し、警官の目前に現れるとその銃に手を被せた。

( ^Д^)「オマエで8人……いいくらいかな?」
   『握力の増強』

   バキィッ

<;`∀´>「に、ニダァ!?」

魔女が力を入れると、銃はけたたましい音を立てて砕けた。
そのあまりの出来事に警官はただ驚く事しか出来ない。

まるでこの銃がおもちゃのように、いとも簡単に砕けたのだから。
目を白黒とさせ、眼球をキョロキョロと動かした。
その行為に意味は無い、助かるための希望をある筈もないのに本能的に探してしまっただけだ。

<;`∀´>「このッ!」

とっさに反撃を試みて、警官はその拳を相手に振りかざした。

( ^Д^)『バランスの増強、肉体の硬化』

ゴッと鈍い音を辺りに響かせて、微動だにしない魔女がいた。
対して警官の拳からは血が流れ出ている。


44 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 21:58:48.68 ID:ckO98Afy0
<;`∀´>「ニダァァ!」

( ^Д^)「うるさいヤロウだ」

そう言ってプギャーはすぐに反撃をした。

( ^Д^)『回転力の増強、衝撃の増強』

プギャーの拳は弾丸となり、一瞬で相手の頬に直撃すると先に負けないほどの鈍い音を辺りに轟かせた。
そして首を変な方向に向けたまま、骨を変形させた警官が十数メートル首に引っ張られてふっ飛んだ。

( ^Д^)「おいおい、まだまだ本気じゃないぜ?」

生身の人間の脆さを嘲け笑うように言った。
魔女にとっての銃は、子供の玩具にも値しない。


そして人間は、最高の玩具だ。


49 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:00:05.64 ID:ckO98Afy0
( ゚∀゚)「待て、魔女!」

川 ゚ -゚)「それ以上暴れるな」

( ^Д^)「ん?」

そこにたどり着いたジョルジュとクーはすぐに魔女と接触した。
恐怖しながらも堂々と魔女に対面する。
ブーン(とドクオ)は恐怖で物陰に隠れていたが。

( ^Д^)『気配の増強』
   (……3人か4人……もしかすると5人ってところか、随分少数精鋭だな)

魔女はすぐに相手の人数を確認して、改めて2人に向いた。

( ^Д^)「オマエ達が……もしかしてモナーを倒した奴等か?」

(;゚∀゚)「だったらどうした!?」

( ^Д^)「だったら……随分と間抜けな奴等にやられたもんだ。
   魔女の面汚しもいいところだな」

余裕の笑みを見せながら、吐き捨てるように仲間を侮辱した。


50 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:01:44.00 ID:ckO98Afy0
ブーンとドクオはその二人の後ろ、民家の影に姿を隠していた。
ジョルジュとクーの正面にいるのはどう見てもただの一般人だ、どう見てもそうなのだが……
言葉では言い表せない異質な恐怖があった。

('A`) 「あいつも男じゃねぇか……」

(;^ω^)「っていうか周りが血だらけだお……魔女テラコワス」

銃を持った警官が何人と死んでいる、あまりの凄惨に姿を見せる事にすら畏怖した。
銃になど到底太刀打ちできない自分達が何を出来るだろうか。
来る時に車内で渡されたチョッキなど、着ていても無意味に思える。

(;^ω^)「やっぱり僕は家でエロゲやっているくらいがお似合いだお」

( ^Д^)「何のエロゲがオススメだ?」

(;^ω^)「僕のオススメは、はじめてのおるすばああああああああああんっ!!!!11!」

突如隣に現れた魔女に仰け反った。
なぜ、さっきまで遠くにいたはずなのにいつの間にここに。

(;゚∀゚)「ブーン!!」

川;゚ -゚)「逃げろ!!」

言わずもがな、その姿を確認するや咄嗟に逃げ出した。


53 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:03:29.60 ID:ckO98Afy0
魔女の『衝撃を増強』してでの移動力は凄まじいものがある。
目で追うのですら精一杯のスピードで人間が動く。
反射反応でその動きを辿る事が精々、言葉を挟む暇すらも容易に与えてもらえない。

ブーンは突然目の前に現れた魔女にただ只管に脅え、軽挙妄動しても
すぐに殺されるだけだと理解しながらもどうしようもない。
走り方など滅茶苦茶で駆け出した。
逃げれるわけ……ある筈もないのに。

( ^Д^)「オレから逃げる気でいるのか?」

それくらいブーンだって分かっている、それでも逃げるなという方が無茶というもの。
黙って殺されるなんてそんな律儀な人間などそうはいない。

と、ここで魔女はもう一人の男に気付いた。

( ^Д^)「……オマエは逃げないのか?」

('A`) 「逃げても無意味だろ」

( ^Д^)「賢いな、正解だ」

そう言って笑うと、すぐに目線を逸らしてブーンに戻した。

動かない玩具よりも動く玩具の方が楽しい、当然のように興味がそちらに向いただけだ。


54 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:04:32.79 ID:ckO98Afy0
走り去るブーンを見ながら嘲笑、そして踏ん張った。

( ^Д^)『衝撃の増強、速さの増強』


   ダッ



地を力強く蹴り、風のようにスピードをぐんと上げていく。
一瞬でブーンとの距離が詰まった。


遅い、死ぬ気で逃げて所詮そんなものか。
泥棒のぬき足さし足じゃあるまいし、見ているだけでもイライラする遅さだ。



( ^Д^)(正面に回りこんでやる)


そう思い、魔女は一度ブーンの横を通り過ぎる事にした。


57 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:06:24.10 ID:ckO98Afy0
(;゚ω゚)「おおおお!!」

ブーンは必死に逃げる事で精一杯だった。
もっと速く、一秒でも一刹那でも早く速く。

そう思っていたら勝手に腕を横に伸ばしていた。

⊂二二二(;゚ω゚)二⊃ブ……


  ゴッ!


その伸ばしたブーンの肘に何かが衝突した。
そしてそのまま自分の正面へともの凄い勢いで転がっていく。
正面のビルにぶつかると、酷い音と供にそのまま倒れた。
ガラスが一帯に散布してバラバラと大きな音を響かせる。

何が起きたのか分からない、とりあえずブーンは肘の痛みに耐え切れなくなり蹲った。

(;゚ω゚)「痛いおッ、痛いおッ、だから外になんて出たくなかったんだおッ!」

やっぱりそうだ、外に出ると罵声を受け唾を吐かれ嘲笑され肉体的にも精神的にもボロボロになるんだ。
自分の身分は弁えている、だから外になんて出たくなかったのに。

そして『ブーンの肘にぶつかった何か』は体中から血を流しながら立ち上がる。


58 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:07:50.55 ID:ckO98Afy0
(#^Д^)「この……オマエ、ぶっ殺す……!!」

(;゚ω゚)「ひいぃぃぃぃ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
   初めてのお留守番あげるから許して欲しいお、今ならお医者さんもつけちゃいますお!」

(#^Д^)「いらねぇよ糞ヤロウが!!」

まるで火に油を注ぐかのように相手は怒りに燃え上がる。
理不尽さと痛み、双方の怒りが爆発寸前だ。


   パンッ


(#^Д^)「!!」


集中力の散漫になった魔女をジョルジュの銃が襲う。


反応できた。

反応できたが……体を反らすのが間に合わない、辛うじて直撃は避けるが、銃弾は魔女の肩を貫通した。


61 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:08:59.73 ID:ckO98Afy0
(;゚∀゚)「これでも避けるか……」

(#^Д^)「っつ……ッ!」

魔女は聞こえるように大きく舌打ちした。
このままでは分が悪い、何より傷したことが少なからず恐怖を生んだ。

痛みからくる『死』という恐怖。
いくら魔女でも銃弾が当たり所悪く貫通すれば死ぬ、そこは普通の人間と一緒だ。

(#^Д^)(体中の傷もある……。仕方ない、今は引くか……)

(;゚ω゚)「もしかしてロリじゃなかったのかお?
   お姉ちゃんがいいのかお、それともナースの方が好みですかお?
   ひょっとしてつよきすですかお!?」

(#^Д^)「おいっ!」

(;゚ω゚)「はいですお!」

(#^Д^)「てめえ、次会った時は……覚えとけよ?」

(;゚ω゚)「えっ、えっ? つよきす?」


65 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:10:35.23 ID:ckO98Afy0
困惑するブーンを傍目に、プギャーは続いてジョルジュに向いた。

(#^Д^)「次はテメェの脳天に風穴空けてやるよ」

(;゚∀゚)「最近は涼しくなってきたから勘弁してもらいたいね」

( ^Д^)『衝撃の増強』

大きな音をたてて地面を蹴ると、その反動で高く飛び上がった。
周り一帯のビルをゆうに超える跳躍で、プギャーは根際にあるビルの屋上に着地した。

一瞬でビルの屋上に、もう……追い付けない。

( ^Д^)「オレの名はプギャーだ、忘れんじゃねぇぜ?」

人のいない町は静かで、その声がよく聞こえる。
男はプギャーと名乗った、しかし逆にジョルジュたちの名前を聞くことはしなかった。

( ^Д^)「それじゃな、次会う時までがオマエ達の余命だ」

言うとまた地面を強く蹴り、一瞬にしてはるか遠くへと去って行った。


66 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:11:28.23 ID:ckO98Afy0
残された4人は安堵の息をつく。
へなへなとその場に撓垂れ掛かった。

(;゚∀゚)「ははぁ、一人倒したからって思ったが……やっぱりアイツ等はおかしいわ」

ジョルジュも笑いきれていない。
改めて彼にも『魔女』という恐怖が襲い掛かった。

川;゚ -゚)「まったく、常識外れの強さだ……。ブーン、大丈夫か?」

クーが声をかけても、ブーンは固まったままだった。
呆気にとられた様子で目をパチクリとさせ、ガクガクと震えている。
そして絞れるような声でこう言った。

(;゚ω゚)「次の時までに、忘れずにつよきすの準備しとくお……」


74 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:16:50.72 ID:ckO98Afy0
第三話『違乱者』


川´ー`)「プギャーくんは人形遊びが本当に好きね」

小さい頃からそうだった。
暇があれば人形を手にして弄っていた。

親や保母さんも、毎日そんな自分を微笑ましく見てくれていた。


   パキッ


そこに言い知れぬ喜びを感じていたとも知らずに。


川´ー`)「あららー、また折っちゃったね。
   あまり強く曲げるといけないよ?」


昔からずっとそうだった。
人形の関節を逆に曲げる事が好きな子供だった。
それこそが最高に愉悦な瞬間だった。


76 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:18:58.34 ID:ckO98Afy0
( ^Д^)「あー、すっきりしねぇ」

肩は自己治癒の力を増幅させた、包帯を巻いておいたから明日には痛みはひくだろう。
体全体の僅かな切り傷は既に治りかけていた、恐ろしいほどの治癒力だ。

(*゚ー゚)「まったく……油断しているといけないわよ?
   銃だって避けれても、当たれば死ぬんだから」

( ^Д^)「うっせーな、別に包帯巻いてくれたからって礼は言わないからな!」

(*゚ー゚)(ツンデレ……)

叫んでプギャーは部屋から出て行った。

そして怒りの吐き場所を求め、物置に行く。
ドアを大袈裟なほど勢いよく蹴り開けると、一つの段ボール箱の蓋を開ける。
暗闇の中、手探りで人形を取り出した。

それの関節を逆に曲げる。

( ^Д^)「ふっ……ふふっ……!」

肘と膝を全て逆方向に曲げると言い知れぬ快感があった。
その格好の人形が好きだった。

その壊れた姿が。


77 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:20:10.40 ID:ckO98Afy0
彼の精通は小学校三年の頃だ。
相手は全ての関節を逆に曲げられた人形だった。
その壊れた様に魅了されたのだ。

彼の性欲はかなり歪んでいた。
全裸の女性が前にいようと彼は興味を示さない、体の柔らかい女性が好きだった。


彼は15の時に体操をやっていた女性と性行為に及んだ。
体の柔らかさに惹かれたのだ。

そして行為の後、腕を骨折した女性が病院に運ばれた。


( ^Д^)(人間は……折れない……)


人間は固かった。
肘の一つを逆に曲げるだけでも相当な苦労があった。


( ^Д^)(人間を簡単に折れるような……力が欲しい)


彼は力を欲しがった。
力があれば思いの自由に人を曲げれるのに……元より彼の目的はそこにしかなかったのだ。



79 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:21:26.04 ID:ckO98Afy0
ξ゚听)ξ「あ、また人形遊びしてる……ギコが呼んでるよ」

( ^Д^)「……うるさいな」

自分を呼ぶ声、一気に現実に引き戻され、やり切れぬ怒りがこみ上げてきた。
少女は部屋の入り口から再び話し掛ける。

ξ゚听)ξ「せっかく呼びに来てやったのにひどい言い草じゃない、根暗が」

( ^Д^)「恋人との憩いの一時を邪魔されたんだ、怒って当然だろ」

ξ゚听)ξ「キメェwwww」

人形を箱に戻すと、プギャーはツンを小突いて物置を出た。
そしてギコの元へと向かう。

( ^Д^)(まーた何言いやがるのか……面倒くせえ。
   ガミガミガミガミ、オマエはオレのお袋かっての)

グチグチ言いながら行くと、そこには魔女が揃っていた。

( ´_ゝ`)「プギャー、もうニュースになっていてネットは大騒ぎだぞ」

(´< _`)「死者8人か……地味の極みだな」

( ^Д^)「うるせーな、邪魔が入ったんだよ」


80 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:22:53.97 ID:ckO98Afy0
広い倉庫、思い思いの場所に魔女は座り込んでいた。
統率の無さはこれを見ただけで一目瞭然だ。

(,,゚Д゚)「邪魔なんてどうでもいいが、ちょっと勝手が過ぎるなゴルァ」

(*゚ー゚)「もうちょっとさ、慎重に行こうとか思わないの?
   モナーもやられちゃったのに驕慢過ぎる……」

( ^Д^)「モナーなんかと一緒にすんじゃねーって。
   オレは今日の一件でかなりムカついてんだ、明日にはもう一回町に行くぜ?」

(,,゚Д゚)「勝手な事するなゴルァ、見切り発車でそんな……」

( ^Д^)「うるせーな、オレはオマエ達の民族の仇とかそんなのどうでもいいんだよ。
   勝手で結構、もう休むから行くぜ?」

(,,゚Д゚)「……」

一方的に別れを言うと、プギャーはそこを離れた。
彼自身自分勝手は承知だが、他の奴等のように敵討ちなんかに興味が無いのだから仕方ない。
自分には関係ないから勝手にやってくれと。



82 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:24:10.20 ID:ckO98Afy0
そのまま倉庫を出ようとすると、さっきの少女が前に立った。

ξ゚听)ξ「あんたホント自分勝手ね、精神的な自立が出来てないんじゃない?」

魔女はそれぞれが動くにしても、プギャーの行動はまったく独りよがりなものだった。
統率が取れている必要は無い、それでも最低限の秩序と目途を統一する必要はあった。

それら全てにおいて彼は非協力的であり、足並みを揃えようとはしなかった。

( ^Д^)「うるせーなガキが……どうせオマエなんて人間一人も殺せないだろ」

ξ#゚听)ξ「失礼ね、私だってその気になれば討伐隊のやつらなんて簡単にやっつけれるわよ!!」

( ^Д^)「分かったからさっさとおやつの時間にしてろ、ションベン臭ぇガキが……」

ξ#゚听)ξ「……!!」

彼は常に突っ掛かりながら話をし、煽るだけ煽ってはすぐに去っていく。
魔女の中でも厄介者だった。


84 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:25:23.76 ID:ckO98Afy0


その日は初めて魔女との接触を果たしたブーンはただただ恐れていた。
こんなことならしっかりと働けばよかった、もっとちゃんと親孝行すればよかった。
後悔しても遅い、既に自分は魔女と戦わざるを得ない立場にいるんだ。

生きる価値がないことは百も承知だったが、それ以上に恐ろしかった。

川 ゚ -゚)「あれが魔女だ、運がよかったな。
   ただ次はないと思え、次は相手を殺すか殺されるかだ」

( ゚∀゚)「今日のところはゆっくりと休んでおけ、精神的に疲れただろう?」

そう言われ、準備された部屋にドクオと一緒に入った。


しばらくは信じられない気持ちと信じたくない気持ちがいっぱいで、独り言を言いながら頭を掻き毟っていた。

ようやく落ち着いても、やはり納得いかない。
ブーンはずっとボケーッとしているドクオに尋ねた。

(;^ω^)「ドクオは……怖くないのかお?」

ブーンは先般の魔女との戦いから今までずっと、体が震えて止まなかった。
刻み付けられた『恐怖』。

('A`)「ん、俺か?」



86 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:26:47.25 ID:ckO98Afy0
(;^ω^)「だってドクオは冷静だったお」

('A`)「あー、魔女は怖いが、怖いからといってうろたえてもどうしようもないだろ」


彼は冷め切っていた。
感情はあるが、それですら彼をコントロールできないのだ。

冷静であり、同時にすべてに屈していた。


( ^ω^)「正直僕はむかつくお、何もしていないのにいきなりこんな場所に入れられて……桎梏されて……
        間違いなくここの人間は自分たちを餌に魔女を倒そうとしているんだお。
        既に魔女が猛威を振るってかなり経つお、だからそろそろ贖罪として
        僕たちを使って何とか仕留めよと画策しているんだお」


('A`)「俺たちが餌か……光栄だな。
   食べた魔女は食中毒で苦しむんじゃないか?」

( ^ω^)「でも餌は誰も覚えていないお、気にも留められないお。
        釣った魚のことしか誰も気にしないんだお、
        餌はただその魚の価値を上げるためにしか存在しないんだお」

('A`)「つまりこの魚を釣り上げるため高級な餌をこれだけ使いました、この魚にはそれだけの価値があります。
   魔女を捕獲するのに〜人の犠牲を出しました、それを捕まえた我々はそれだけに値するヒーローですってことか?」

( ^ω^)「そうそう、相変わらずドクオは解釈が早くて的確だお」



87 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:28:12.35 ID:ckO98Afy0
ドクオとブーンは二人きりになるといつもこうやって真面目な話ばかりをした。
ほかの人と一緒の時は絶対にこんな姿を見せない、気が合い意見を言い合える仲だからこそだ。
そして互いに以外の人間に見せることの無意味さを知っているのだ。

自分たちは社会的に価値のない存在だから、誰も耳を傾けてなどくれないと。


そしてドクオは考えが卓越していた。
馬鹿と天才が紙一重なら、間違いなくその紙一重の間に位置する存在だ。

もっとも前述通り、ブーン以外の前ではこんな姿を見せなかったが。

('A`)「でもいいんじゃないか? 仕方ないだろう、俺たちはそういう存在なんだから実際。
   餌としてしか使い物にならない、いや普通なら餌にも使えないような存在なんだ。
   事実魔女相手なんて放っておいても死者が増えるだけ、意識を逸らせる為贖罪を作る考えは分からなくも無い」

あえて言う必要は無いかもしれないが、この二人とて当然『魔女』については予てから知っていた。
魔女が闊歩し人間が日々襲われ、恐怖政治染みているこの世の中だ、引き篭もりでも知らない方がおかしい。

それでも彼らは知らない振りをしたのだ、『真面目さを見せる無意味さ』を知っているから。



88 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:29:18.15 ID:ckO98Afy0
( ^ω^)「……ドクオは本当勿体無いお。
        どうしてそこまで分かっていながらそういった考えした出来ないのかお?」

('A`)「弁えてんだよ、身分相応だ。だからこそ協力してやる義理も無いがな」

たとえ賛美されようとも、ドクオは鼻にかける事もせずに自嘲するばかりだ。

( ^ω^)「ブーンは絶対納得いかないお、今すぐにも逃げ出したいお」

('A`)「普通はそうだろうな、逃げればいいんじゃね?」

その言葉は決して突き放したものではなかった、ドクオという人間の言い方なのだ。
そして同時に自分は一緒には逃げないと言いたかったのだ。

ブーンはもう彼の言い方には慣れている、その言葉の意味をちゃんと理解すると覚悟を決めた。

( ^ω^)「ドクオ、僕は今晩逃げ出そうと思うお。たかだか僕たち以外は3人……
       これならどうにか逃げられると思うお。
        それで、これを……」

('A`) 「?」

ブーンはドクオに一枚のCD-ROMを渡した。


90 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:30:26.80 ID:ckO98Afy0
('A`) 「これは?」

( ^ω^)「つよきすだお、もし今日の魔女に会ったら渡しておいてほしいお。
  それまでは僕だと思って大切にしてほしいお。
  ちなみに僕のオススメは乙女先輩だお」

(;'A`) 「突っ込みは苦手なんだが……」

そんなドクオを放っておいて、ブーンは今晩逃げるために今は寝ることにした。
ドクオはため息をつくと、彼もまた眠りに入った。

今日は色々とあってもう疲れた、体をゆっくりと休める事に専念した。


92 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:31:37.59 ID:ckO98Afy0


そして夜も更けようとしていたか、暗い町に再び影を落とす男がいた。


欲求が満たせないのだ。
まだまだ足りないのだ。


結果的に逃げてきたとしかとれないだろう昼の行動に、彼はストレスを感じきっていた。

( ^Д^)「とりあえず……昼の二倍だな。15人殺すか」

15人を殺す。
殺した人間は自分らしく間接を逆に曲げてやろう。

……そう考えたら笑いが止まらなくなった。

ξ゚听)ξ「アンタ……また勝手に行動する気?」

( ^Д^)「……オマエに見つかるとは心外だな」

ξ゚听)ξ「こっちこそそんな言われ方されるなんて心外よ」

ツンはプギャーの前に立つが、プギャーは足を止めることなくその場を去ろうとする。



106 名前:( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです[] 投稿日:2006/11/15(水) 22:42:17.26 ID:ckO98Afy0
ξ#゚听)ξ「ちょっと、何無視してんのよ」

( ^Д^)「……オマエは羨ましいんだろ?
  自由に動く俺が、人間を怖いと思わず殺せる俺が。
  一族の復讐やら何かに縛られているだけの自分が惨めに見えてくるのが嫌なだけだろう?」

そう言いながらプギャーがツンに差し出しす手、何かを企んでいる様な卑下た笑い。

それがあまりに怖かった。
一瞬昔がフラッシュバックするその瞬間……一気に脱力して彼女はへなへなと座りこんでしまった。

( ^Д^)「魔女のくせに人間が怖いか……情けない野郎だ」

そう言ってプギャーはその場を後にし、暗闇の町に消えていった。



ξ;凵G)ξ「……くそぉ……ばか、ばか……」


そして一人たたずむツンを、後ろからギコはこっそりと眺めていた。


(,,゚Д゚)(……プギャーか、これ以上野放しには出来ないな……)


113 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:47:43.23 ID:ckO98Afy0
第四話『再会劇』


ブーンは夜になると、自分の部屋で苦悩していた。

逃げたいし、今すぐにでも逃げようと思う。


ただ……実行に移せなかった。


もし見つかったら殺されるんじゃないか。

そう思うと今ひとつ踏ん切りがつかなかったのだ。

コンクリートに囲まれたその部屋が囚人であるかのような錯覚を呼び、余計に決心を鈍らせた。

('A`)「逃げれないならそれもいいじゃないか、結局それ程度の気持ちだったってことだろ。
  目先の死と不確定の死、そのどっちに脅えるかだ」

( ^ω^)「……不確定っていうのは、次魔女に会う時って事かお?」

('A`)「そう、それはいつになるか分からない……対してここから逃げようとしたら見つかった瞬間に殺されるだろうからな」

( ^ω^)「……」


114 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:48:54.79 ID:ckO98Afy0
結局、恐怖とかそういうこと関係なしに人間は目先ばかりしか見ていないんだ。
目先のもので一喜一憂するんだ、改めて感じた。

   ピーッ ピーッ ピーッ......

(;^ω^)「!!」

突然のその無機質な電子音に、ブーンは過剰に反応してみせた。
不自然なほど一気に汗が吹き出る。

('A`)「これは……不確定の方が早く来たもんだ」

(;^ω^)「ああ、僕はどうすればいいんだお、もう死ぬしかないのかお……」

ドクオは体を持ち上げると、ゆっくりと部屋の出口に向かって歩き出した。
この音は魔女が出現した時の合図、まずは指定場所へ召集すると約束を交わしたのだ。

('A`)「ブーン……隠れとけ」

(;^ω^)「え……ドクオは……?」

('A`)「何とかうまくやってやるよ、とりあえず隠れとけ」

そう言ってドクオは部屋から出て行った。



116 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:50:35.71 ID:ckO98Afy0
(´・ω・`)「二連続か……やっぱり相手も一人殺されたことで焦っているように見えるね」

川 ゚ -゚)「しかし連戦とは……精神的に辛いですね」

( ゚∀゚)「昼と場所が同じだ、もしかすると同じ奴かもしれんな」

すでに集まった隊員は、各々準備していた。
銃に煙幕弾、銃は予備も何丁か用意していく。
どこまで役に立つか分からないが、備えをしてし過ぎる事もないだろう。

そこに悠長にドクオが歩いてきた。

( ゚∀゚)「おうドクオ、遅いぞ……片割れは?」

('A`)「気づいたらいませんでした、逃げたかもしれないが分からないです」

川 ゚ -゚)「逃げたって……ちょっと待っていろ」

クーは準備も途中で投げ出し、ドクオとブーンの部屋に行く。
部屋にはそれぞれの小さな荷物と布団が置いてあるだけだ、隠れられる所など無い。

大きく重いドアを、大袈裟なほど音を立てて押し開けた。



118 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:52:04.22 ID:ckO98Afy0
その部屋にはそれぞれの小さな荷物と、布団が置いてあるだけでもぬけの殻だった。

川#゚ -゚)「あいつ……どこまで不真面目な……」

('A`)「逃げたもんはしゃーないっしょ、俺を欺くなんてたいしたもんっすよ」

川#゚ -゚)「オマエがなおざりにしなければ済んだ話だ……」

( ゚∀゚)「落ち着けよクー、実際逃げられたものは仕方ないだろう。
  そんな事よりも早く魔女の所に向かうべきだろ」

川 ゚ -゚)「……。……そうだな、すまなかった」

( ゚∀゚)「クーは相変わらず真面目だな、そういうところが……」

川 ゚ -゚)「もう落ち着いたから変なことは言わなくても大丈夫だ」

( ゚∀゚)「あーあー、本気なのになー」

そう言いながらも口だけでなくちゃんと手も動かして、改めて二人は相手と交わる準備を整えた。
ドクオは一人それをボケーっと見ていた。

やはり作業は手早く、数分すればあっという間に準備を整え終えた。



120 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:53:43.16 ID:ckO98Afy0
( ゚∀゚)「とりあえず行ってくるわ」

川 ゚ -゚)「それでは」

いつ今生の別れになるかもしれないというのに、軽い挨拶を告げる。
当然かもしれない、出撃するたびに遺言を残すなどバカバカしい。

それでもまるで朝出勤するかのような挨拶はとても不自然だったが。

('A`)「……ん? ショボンさんは行かないのか?」

と、挨拶をされるショボンに対しドクオは聞いた。

(´・ω・`)「そうだね、いつもながらに僕はここに残るんだ」

( ゚∀゚)「大丈夫、いざとなったらこの人はちゃんと助けにきてくれるよ」

(´・ω・`)「らしいよ?」

('A`)(そういえば前回もそうだったな。これは誤算だ、ブーン大丈夫だろうか……)

そしてショボンをその場に残して、3人は昼と同じ場所へと向かっていった。



123 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:56:37.59 ID:ckO98Afy0
( ^Д^)「昼の奴らがくるまで……悪いけど遊んでもらうぜ?」
   『風力の増強、硬さの強固、衝撃の増強』

突如強くなる風、プギャーはあわせるように砂を上に投げると砂吹雪が起こった。
荒れ狂う砂は無差別にその場の人間を襲う。
砂の一粒一粒が重い、鉛球の様だ。

周りの建物はガラスが割られ、家の壁には大きな音がして無数の穴が空いた。

静寂となったその場には、無数の緑色の痣に骨格を歪めながら倒れるいくつもの人間の死体が残る。


( ^Д^)「ひーふーみーよー……まだ8人か」


そう言いながら周りに注意しつつ、一人一人の腕を逆に曲げていった。

そこには無残な死体だけがポツポツと残された。


その時、パンッ――と突然乾いた銃声が響き渡った。


( ^Д^)「!!」



127 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 22:57:58.96 ID:ckO98Afy0
突如の発砲音に驚いてすぐに飛びのいた。
常に反射神経と聴覚、第六感だけは増強している。
大抵本能だけで銃は避ける事が出来るのだ。

川 ゚ -゚)「ずいぶん悪趣味な死体が好きなようだな」

( ゚∀゚)「人間は人形じゃないぜ?」

そして3人はその場に姿をあらわすと、待っていましたとばかりにプギャーはにやけた。
この相手の間接を逆に曲げることが出来る、考えただけでうれしさに頬が緩んだ。

( ^Д^)「俺にしてみれば、どっちも大差ないが……もう一人は?」

( ゚∀゚)「逃げたよ」

( ^Д^)「……くく、賢明だな」

残念そうだが緩む頬は止まらない、笑いを一層毒つかせた。
と、そこにドクオが声を出す。

('A`)「そういえば、そいつからオマエ宛に預かったもんがあるぜ?」

( ^Д^)( ゚∀゚)川 ゚ -゚)「!!」

そう言いながらドクオはブーンから預かったCD-Rをポケットから出した。



130 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 23:00:28.31 ID:ckO98Afy0


(;^ω^)「……もうさすがに行ったお?」

ブーンは、ドクオ達が魔女討伐へ向かってからもずっと躊躇していた。
きっともうとっくに魔女の退治に行ったはずだ、絶対とも言い切れたのだが……
たった数パーセントの疑心が彼を足止めしていた。

そもそもクーがこの部屋にブーンを探しに来たのは10分以上前になる。
この布団しかない質素な部屋に人が隠れているならば、見つけられないはずは無いのだ。
隠れる場所はないと思ったのだろう、逃げた後だと思ったのだろう。


押し開けたドアの裏側にいるとも知らずに。

まさかそんな隠れ方でうまく相手を欺けるとは、ブーン本人でさえ思ってもいなかった。

(;^ω^)(そうだお、あそこで見つかっていたらその時点で……)

ドクオが作ってくれた最初にして最後だろうチャンスなんだ、ブーンは意を決して扉をあけた。
そして逃げるべく、出口への道を一歩一歩静かに歩いていった……。



132 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 23:03:28.49 ID:ckO98Afy0
カツン、カツンと足音が響くだけで今にも銃口を向けられそうな恐怖に陥る。
足音を小さくしようと努めるも、思うようにいかない。

音がしても何も反応がないということは、心配が不要という事でもあるのだが。

(;^ω^)「……!!」

人の声が聞こえ、足を止めると同時すぐに引き返そうとした。
体が震える、口が一気に渇いた。
呼吸する音でさえ、辺り一帯に響いている錯覚に陥った。

声をかけられない、つまりまだ見つかっていない、このまま引き返すのか……それとも……。

   「……、……。……」

(;^ω^)(これは……ショボンさん?)

何故ここに残っているのか、どうして魔女狩りに向かっていないのか?

いやしかし一番安全な人かもしれない、クーとかいう女性なら殺されてもおかしくない状況だ。
何よりのんびりとしていそうな人だから……きっと気付かれないと信じたい。

そもそも戻るという選択肢など端からないと気付く。
先の見えない暗い道を再び前に歩く。
部屋からは僅かな光が漏れており、そこからショボンが覗けた。



136 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 23:06:34.95 ID:ckO98Afy0
(´・ω・`)「……うん、うん。そうか、いよいよか……」

どうやら電話しているようだ。
ブーンは耳をすませて電話の内容を聞き取ろうと試みる、内容が分かればショボンが
ここに居座るかどうかを確認できるから。
今すぐ現地に向かおうなどと言い出して鉢合わせになったら最悪のパターンだ。

(´・ω・`)「そうだね、その話を聞く以上このまま放置はまずいと思うよ」

ずっと耳を済ませる。
話し相手は誰か、もしかしてクーやジョルジュといった他の討伐隊メンバーかもしれない。

(´・ω・`)「そうか……それじゃ、僕が久しぶりに出ようかな」

誰だ、誰とどんな会話をしているんだ……。

(´・ω・`)「うん、ギコこそちゃんと僕との繋がりがばれないようにね。
   とりあえずプギャーは僕が始末しておくから」

(;^ω^)「……!」

人の名前が出た、ギコとプギャー。
しかし残念ながら二人とも知らない人物だった。

(;^ω^)(……プギャー?)

しかしブーンは若干の違和感を抱く名前だった、どこかで聞いた気もした。
そもそも他の人が戦いに出ているというのに……本当にこの人は残って何をしているのか?



140 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 23:08:35.19 ID:ckO98Afy0



――瞬間。




一瞬大きな音、揺れる空気――その部屋には既に誰もいなかった。


(;^ω^)「……お?」


さっきまでショボンがいたはずだ、絶対に夢じゃない。
電話していて、そしてブーンが目を離した隙に一瞬で消えて……さっきの音は一体何なのだろうか。


突如消えたショボンに恐怖しつつも、ブーンは覚悟を決め、一歩一歩今まで以上に慎重に出口へと進んでいった。



160 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/15(水) 23:25:52.25 ID:ckO98Afy0
一応ブーンとドクオは20歳手前、ショボンは年齢不詳の類というイメージです
しっかりと固まっていないですがこれくらいでイメージしていただければと思います

( ^ω^):18歳前後(20歳手前)
('A`):18歳前後(20歳手前)
(´・ω・`):25〜30(年齢不詳の類)
( ゚∀゚):20歳前半
川 ゚ -゚):20歳前半


213 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:44:39.99 ID:Tyw9yLgi0
第五話『悪英雄』


('A`)「そいつからオマエにって、CD-Rで勘弁してくれってさ」

ドクオが差し出したCD-Rを、如何わしいといった目で見ながらもプギャーは受け取る。
裏表をチラチラと見てみるが、当然何のデータかなど分かりはしない。

( ^Д^)「……これには何のデータが?」

('A`)「つよきすっていうエロゲだ」

( ^Д^)「……」

プギャーの手が震え、ピキッとCDケースにひびが入る。
それまでの悪魔染みた笑いではなく、怒りを露にした苦笑いが彼の顔に張り付いていた。

(#^Д^)「てめ……バカにしてんのか?」

('A`)「頼まれた事をそのまま伝えただけだ」

プギャーは震えきっていた。
今までに加え、憤りはとうとう最高潮に達した。


214 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:46:37.05 ID:Tyw9yLgi0
   パンッ

そこで突如の発砲音、プギャーはしっかりと避けて、怒りの矛先をそちらに向けた。

(#^Д^)「あまり賢明な行為とは思えないが……」

( ゚∀゚)「常識に縛られない性質でね」

(#^Д^)「……ピキピキ」

ドクオを守るように発砲したジョルジュは、目でクーに合図する。
そして彼は両手に銃を持つと構えた。

   パンパンッ

銃を同時に放つが、それを避けながらプギャーはジョルジュに接近する。
既に目の前だ。
しかしジョルジュの動作も負けじと速い。

   パンッ

( ^Д^)「当たんねーよ」

プギャーの目の前で銃を撃たれるが、それを体を捻って避けるとそのまま回転蹴りをジョルジュに仕掛ける。


219 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:48:38.21 ID:Tyw9yLgi0
ジョルジュは銃を逆手に持ち、トンファーのように手首の横に銃口を持ってきてプギャーの攻撃を守る。
相手は魔女だ、体を堅くも出来るし衝撃を倍増も出来る。
その攻撃を生身の肉体で受ける事は無謀だ。

相手の攻撃を銃身で受け止めると、もう片方の手に持つ銃でさらに相手を撃つ。
数十センチとしか離れていないにも拘らず、当然のように相手は避けた。

(;゚∀゚)「これも避けるか……前のヤツは掠ってくれたんだが……」

( ^Д^)「モナーか? 人間に負けるとは魔女が聞いて呆れるぜ、あんな奴と一緒にしてくれるな」

ジョルジュは銃をくるりと回転させて再び順手に構えると、相手に向かって発砲した。


   バァンッ!!


( ゚∀゚)「ッ!!」


その銃の強烈なほどの衝撃に、トリガーをひいた瞬間ジョルジュは後方に体を浮かした。
痺れる手から銃は離れ、尻餅をつく。


221 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:50:10.64 ID:Tyw9yLgi0
川;゚ -゚)「ジョルジュ!!」

慌てて近寄ろうとするクーを、ジョルジュは片手を挙げて制止させる。

(;゚∀゚)「ちくしょう……銃が暴発か? こんな時に……ッ!!」

( ^Д^)「残念だな、運が無い」

(;゚∀゚)「まだだ!」


   バァンッ!!


さらにもう一つの銃も発砲と同時に鈍い炸裂音を轟かせる。
ジョルジュの片腕は銃に弾かれ、体はその手に引きずられるように一瞬浮いた。

(;゚∀゚)「くっつぁぁ!」

人形のようにジョルジュの体は勝手に暴れ、そしてその場に伏した。

(;゚∀゚)「オマエ……」

( ^Д^)「銃の火薬の爆発を強くしただけだ、銃自体がそれに耐えれなかったみたいだな」

(;゚∀゚)「……ッ」


222 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:52:10.88 ID:Tyw9yLgi0
銃の爆発の衝撃で肩が痛む。
手は痺れきっていて感覚など無い。

銃が避けられるというだけで、人間など対抗出来ないに等しいというのに……
銃を使う事すら認めてもらえないのだ。

目の前の魔女はジョルジュの前に歩いてくると、膝を曲げて屈んだ。
目線を合わせると、威嚇しながら聞く。

( ^Д^)「さて、それで……オマエがモナーを殺したのか?」

(;゚∀゚)「……ああ、少なくともとどめを刺したのは確かに俺だ」

( ^Д^)「そうか……先でもそうだが、魔女相手に生身でここまで戦えるとは素晴らしいな。
   オマエが魔女だったら相当な力だっただろうが……」

プギャーは言いながらジョルジュの頭を平手打ちで弾くと、すぐに顔を踏んづけた。

(;゚∀゚)「つがぁッ!」

( ^Д^)「所詮……ただの人間だ」

足に力を入れると、ジョルジュは顔を顰めて暴れようとする。
プギャーは「暴れるな」と言う代わりに、更に足に力を入れた。


223 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:53:33.89 ID:Tyw9yLgi0
川;゚ -゚)「おい、ジョルジュを放せ」

( ^Д^)「!!」


再び銃声がその場に響くが、プギャーはジョルジュを踏んづけたままで器用に避ける。
意表は突かれたか、しかしただそれだけだ。

そんなもので人間は魔女に勝てやしない。


   パンッ


( ^Д^)「!!」

そこで更に突然の発砲音、一段落したプギャーにとってあまりに意外で心が急いた。

一体誰が。
目の前の女性はまったく行動を起こしていない、ならばもう一人の男か。


プギャーはすぐに目線をドクオに向けたが、彼はこちらを傍観しているだけだった。
そこでようやく彼は、発砲した犯人に気付いたのだ。


224 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:55:30.07 ID:Tyw9yLgi0
咄嗟に避けようと試みるも、期せぬ攻撃は避けきれずに肩を貫通した。

(;^Д^)「つぁっ!!」

(;゚∀゚)「ざまーみろって」

軽く言い放つと、顔に載せられている足を振り払い転げて距離をとるジョルジュ。
まだ若干手は痺れているものの、十分に対抗できる。

そのまま休む暇なく銃を数発発砲する。

(;^Д^)「このヤロゥ!!」
   『衝撃の増強』

大きな音を立てて、プギャーは一瞬で建物の上へとジャンプして距離をとった。
ここで緊張が解け、改めて肩の痛みが彼を襲う。
昼に撃たれた場所とほとんど同じ位置だ。

(;^Д^)「くっ……油断したな。反応は出来たがまさかオマエが撃つか……避け切れなかったな……」

( ゚∀゚)「銃は複数常備していてね、伊達に魔女を一匹倒せてないぜ?」

(;^Д^)「あんなヤツとオレを同等視してもらっては……大変不快だ」

プギャーは思い直す、相手はかなりのやり手だ。
事実モナーが格下とはいえ、人間が魔女を倒せるなど普通ではあり得ない事なのだ。
それをこの男はやってのけたのだ。


225 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:56:54.55 ID:Tyw9yLgi0
( ^Д^)(これはのんきに遊んでいる場合でもないな……)

( ゚∀゚)「さて、それじゃぁ仕切り直し――」


瞬間ジョルジュの体はふっ飛ばされた。
それまでジョルジュのいたところには相手の姿が。
巻き起こる砂埃、後れたような衝撃音。


川;゚ -゚)「ジョルジュ!!」


すぐにクーは目線をジョルジュに向けようとするが、その視線から逃げるように彼は吹っ飛ばされていった。

壊れた人形のようにコンクリートの地面で二度三度と跳ね、転がってようやく勢いがおさまる。
倒れてピクリとも動かない。


226 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 21:58:24.47 ID:Tyw9yLgi0
 ^Д^)「ふぅ……単純なタックルだが、まさかそれくらいで終わったりはしないよな?」

川;゚ -゚)「オマエーッ!!」

咄嗟にクーは何発か銃を撃つが相手は気にも留めない。

( ^Д^)『衝撃の増強』

また目にも見えない速さで移動し、銃弾は空を掠めた。

( ^Д^)「……残念だな、オマエも死ぬか?」

川;゚ -゚)「!!」

後ろからの声、慌てて振り返ろうとするがそれすら遅い。
プギャーの拳がクーに向かって振られた。



228 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:00:06.98 ID:Tyw9yLgi0
突如の世界が振動するかのような衝撃音。
一体何の音だと疑いたくなるような……恐ろしく大きな音が響いた。


その音の余韻の中、無感情のドクオとてその光景に驚きを隠せないでいた。


死を覚悟したクーは、体に衝撃がないと分かると怖くなった。

死んだのではないのか。
痛みもなく死ねたのか、それならば本望だ。

同時、相手がすぐにいる気がして目を開けることを一瞬渋った。
だめだ、目を見開かなくては……始まらない。



川;゚ -゚)「……」


(´・ω・`)「やあ、間一髪だったね」


230 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:02:08.11 ID:Tyw9yLgi0
そこにはショボンがいた。
プギャーの拳が振り落とされるだろう刹那……
彼は相手の魔女をも超えるスピードでタックルを仕返し、ふっ飛ばしたのだ。

相手の魔女は建物にでも突っ込んだのか、すぐ近くには瓦礫の山があった。
界隈はいっそう煙っぽくなり、出し抜けにその場に静寂が戻った。

安心すると同時、ぺたんと力無く座り込むクー。
腰が抜けたとはこういう状況のことなのか、安心したと同時に一気に脱力した。

(´・ω・`)「とりあえず後は僕に任せてほしい。
   ああ、ドクオ君、ジョルジュを介抱してくれるかい?」

('A`)「……はい、わかりました」

ドクオは思わず敬語となってしまった。
無表情だが、少なからず驚いていることはその震える声からも分かった。
感情が無くても人間は当然驚く、咄嗟の事に驚かない人間などこの世にはいない。


233 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:03:43.91 ID:Tyw9yLgi0
ショボンは肩と首をゆっくりと回しながら大きくふっ飛んだ相手に向かう。

(´・ω・`)「しかし流石だね、寸前に自分の堅さを高めていなかったら死んでいたよ?」

その直線上、崩れた瓦礫から姿を表したプギャーは比較的ピンピンとしていた。
若干ダメージはあったのだろう、顔は辛そうにしているがそれでも体は然程問題無さそうだ。

(#^Д^)「……テメェ、もしかしなくても……魔女だな?」

(´・ω・`)「うん、そうだよ」

('A`)「!!」

ドクオはまさかの事態に驚く。
そんな事聞いていない、狩るべき相手の魔女が……仲間にいた?

ジョルジュを介抱しながらも頭が高速で回転し、様々な考えが過った。
一方クーは知っていたのか、そしてその上で信頼しているのだろう。
ショボンの登場と同時に安堵の息を漏らしていた。

川 ゚ -゚)「遅いですよショボンさん……」

(´・ω・`)「悪いね、ヒーローみたいな登場だったね。
   ダークヒーローで申し訳ない」



234 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:05:28.21 ID:Tyw9yLgi0
(#^Д^)「おう、オレを前にして随分と余裕そうじゃないか……」

(´・ω・`)「残念、余裕なんて無いよ」

そう言って対峙する二人の間には、異空間ともいえる特異さが漂っていた。
普通の人間が絶対に踏み込む事の出来ない……そんな領域だ。

( ゚∀゚)「驚いたか?」

ジョルジュは元より意識があったようで、困惑気味のドクオに声を掛ける。
一瞬の出来事ではあったが、ちゃんと自分の体を守っていたようだ。
擦り傷がかなりあるが、本人は杞憂なほど平気な顔をしている。

('A`)「ショボンさんが……ですか?」

( ゚∀゚)「ああ、まさか味方に魔女がいるなんて……ってな」

('A`)「驚かないわけないですよ」

そう言いながらドクオは気持ちを落ち着けた。
無感情で引き篭もりの彼は、常日頃驚く事が少ない。
久しぶりに驚くとなんとも不健康な気分になる。

心音が鳴るのが早い。
……嫌な感覚だった。



235 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:06:51.63 ID:Tyw9yLgi0
(´・ω・`)「さて、それじゃぁ僕がコイツを相手するからクーもジョルジュの所へ行ってもらえるかい?」

川 ゚ -゚)「はい、ショボンさんも頑張って下さい」

(´・ω・`)「そうだね、頑張るよ」

そう言って軽く手を振ると、相手に向いた。
突然攻撃されただけに留まらず、クーと話してばかりで蔑ろに扱われたプギャーは顔を真っ赤にしていた。

(#^Д^)「オレの名はプギャーだ、オマエは……ショボンといったか?」

(´・ω・`)「名乗る手間が省けたよ、よろしく」

(#^Д^)「ふざけたヤロウだぜ……俺への攻撃、高くつくぜ?」

そして二人は構えた。
魔女同士の戦いが今……始まった。


245 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:22:11.39 ID:Tyw9yLgi0
第六話『相前後』


ブーンは静かで暗い地下通路を一人で歩いていた。

静寂では歩く音が不思議と大きく聞こえてしまうものだ。
そして自分の心臓の音すら大きく聞こえる。

自分の心臓の脈動で体がビクビクと動き、体裁が不審な自分ばかりを想像してしまっていた。
ショボンが『消えた』ことが、彼の心配に拍車をかけていたのは言うまでも無いだろう。

(;^ω^)「……」

『本当に誰もいないのか?』

同じ自問を幾度と繰り返しながらも一歩一歩進み、ようやく地下基地の出口が露になった。
階段をコツコツと音を立てて上がると、夜の町が顔を出す。
往来する人影は見当たらない。


246 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:23:36.68 ID:Tyw9yLgi0
外に出てもまだ安心できずに、彼はそのまま闇に紛れた。
魔女騒ぎで慌しい世の中だ、あえて夜に外に出る物好きもいないのだろう、誰にも会わずに路地を進んでいく。


そこは彼の知らない町だった。
魔女との戦場に位置された町、厳かなビルが立ち並びながらも人の気配は皆無だった。
ニュースで何度と聞いた事がある、戦場『ニューソク町』。

その初めての町をひたすらに駆け抜けた。



そしてしばらく走ったか、公園を見つけるとベンチで一息つく。
緊迫と運動で汗まみれになっていた。
外灯が明るく、地下からの脱出成功を祝うスポットライトのように目に映った。


ようやく逃げ切れたという気持ちになった。


(;^ω^)「……」

しかし冷静になると逃げ切れた所でどうだと言うのだ。
家に帰れない、むしろカーチャンは大丈夫なのか。

仮にも自分は魔女の対策本部の場所を知ってしまっているのだ、逃げるなんて……。


250 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:31:47.27 ID:Tyw9yLgi0
寒気がした。

もしかして自分……とんでもない事をしてしまったのではないのか?

(;^ω^)「……戻るかお?」

当然その選択肢はなかった。
一度逃げた身、今更戻れるわけなんてないのだ。 大きくため息をついた。 逃げ切れたのにどうして思い悩まなくちゃいけないのだ。

時間感覚が無かった、今更だが外は既に真っ暗になっている。
携帯で時間を確認するとなるほど、すでに22時を回っていた。


そんな彼に、声をかける者がいた。


   「すみません……」

(;^ω^)「おっ?」


251 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:32:55.31 ID:Tyw9yLgi0
ξ゚听)ξ「少し……いいですか?」

女の子だった。
クルクルと巻いた黄色い髪が印象的な可愛らしい少女だった。

だが侮るなかれ、彼は二次元にしか興味の無い人間だ。
身分相応弁えている。

( ^ω^)「なんですかお?」

ξ゚听)ξ「おとーさんとはぐれちゃったんだけど……」

( ^ω^)「そうなのかお? いいお、探すの手伝ってあげるお」

ブーンはこの時助かったと思った。
逃げ出した自分、人助けする事でその罪が許されるんじゃないかなどと考えてしまったのだ。
ただの自己満足でもいい、むしろ自己満足でいいんだ。

( ^ω^)「とりあえず交番に行くお?」

ξ゚听)ξ「うん」



254 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:41:07.66 ID:Tyw9yLgi0
相手が魔女だと知る術は無い。
もう少し彼が頭を回転させ、この時間にどうして子供が……と考えられれば良かったことだろう。
ただ残念ながら、彼は贖罪行為に奔命する事にいっぱいいっぱいで、そんな頭は残っていない。

広い公園、大きな池もあれば、林歩道もある。

ブーンは少女とはぐれない様に手を繋ぐと……柄にもなく緊張した。

(;^ω^)(やばいお、手が汗ばんできたお……息切れが激しいお……はふぅはふぅ!)

ξ゚听)ξ(汗ばんでいてマジキメェ)

そして二人は外灯だけが照らす静かな公園を、ゆっくりと歩いた。

ξ゚听)ξ(ピザ、キモメン、オタク、色白、短足、荒い鼻息……間違いない、こいつがプギャーを怒らせた討伐隊の一員だわ!)




255 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:42:44.71 ID:Tyw9yLgi0


(´・ω・`)「さて、それじゃぁ始めようか?」
   『反射神経の増強』

( ^Д^)「借りは返させて貰うぜ?」
   『反射神経の増強』

二人の魔女は構えをとると、どちらから出るか……睨み合う。
互いに相手を誘っていた。

(´・ω・`)「……」
   『集中力の増強』

( ^Д^)「……」
   『集中力の増強』

しばらくが経過したか、とうとう痺れを切らしたのはプギャーだった。

地面を力強く蹴る。
音が速いか相手が速いか、ショボンとプギャーは一瞬にして目前で対立した。

( ^Д^)『回転力の増強』

直前でストップすると、そのままくるりと回転してプギャーは裏拳を相手に放つ。



257 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:44:23.58 ID:Tyw9yLgi0
( ^Д^)『衝撃の増幅、硬化の増幅』

(´・ω・`)『硬化の増幅』

プギャーの攻撃をしっかりと防御するショボン。

空気が振動するかのような衝撃。
攻撃が当たった瞬間、二人とも一瞬だけ時間が止まったかのように制止した。

( ^Д^)

(´・ω・`)

互いに牽制し合っている、そしてこの一撃で相手の強さを確認したのだろう。

(( ^Д^))「がぅっ……!」

直後、プギャーの腹部への鈍痛。
ショボンの蹴り上げが見事に決まっていたのだ。

(´・ω・`)「遅いよ」
   『バランスの増強、回転力の増強、硬化の増強、衝撃の増強』

相手を蹴り上げえたアンバランスな状態から更に、体制を崩す事無く回し蹴りをプギャーの顔面に当てる。
地面に顔面をぶつけ、そのまま頭で数メートル跳ねた。



260 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:46:07.93 ID:Tyw9yLgi0
直後、プギャーは空中で体制を取り直して無理矢理着地する。
が、着地直後にグラッと一瞬揺れた。
相当なダメージがあったようだ。

(;^Д^)「く……ッ!」

(´・ω・`)「どうだい、魔女としての格の違いを感じてくれたかな……?」

蹴られた顔面と首を手で押さえながら、プギャーは舌打ちをした。
対してショボンは余裕の表情で相手を見据える。

(#^Д^)「てめ……絶対に殺すッ!」



そんな二人を傍から見ながら、ジョルジュはドクオに聞く。

( ゚∀゚)「どうだ、魔女対魔女を見た感想は?」

('A`)「オレら普通の人間がどうこう出来る次元じゃないっすね」

( ゚∀゚)「だろう?」

ドクオは以外にもサッパリとしていた。
驚いてはいるのだろうが、それすら怪しくなるほど落ち着いていた。



264 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:47:36.98 ID:Tyw9yLgi0
('A`)「でもショボンさんの方が断然有利ですね」

( ゚∀゚)「そう思うだろう、しかしそうじゃないんだ」

ジョルジュはその言葉を待っていたとばかりに得意気に言った。
それにドクオも興味を引かれる。

('A`)「どういう事ですか?」

( ゚∀゚)「そのままだよ、魔女同士の戦いっていうのは単純に強い方が勝つんじゃないから奥深いんだ」

現在の状況では、明らかにショボンの方が強く有利だ。
だがジョルジュの話によると強い方が勝つとは限らないらしい。

どういう事だろうか?

そんな事を考えるドクオを他所に、再びプギャーとショボンは戦いを始めた。



265 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:49:13.80 ID:Tyw9yLgi0


( ^ω^)「それで、お父さんとはどこではぐれたんだお?」

ξ゚听)ξ「……覚えてない」

(;^ω^)(またかお……)

さっきからブーンが何を聞いてもこの少女は分からないの一点張りだった。
いい加減にイライラしてくる。

……この繋いだ手がなければ。

(;^ω^)(違うお、僕は三次元なんかに興味のある犯罪者予備軍じゃないお、純然たる二次元愛好者だお!
   ここで心を揺らす事は乙女先輩への侮辱冒涜以外のなんでもないお!!)

そんな自分の葛藤を他所に、少女は顔を覗き込んで言った。

ξ゚听)ξ「どうかしたの?」

( ^ω^)「……」


   この場で犯す
 > 様子を見る
   脱ぐ


266 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:50:49.34 ID:Tyw9yLgi0
(;^ω^)(選択肢がおかしいお……エロゲならここで幼女フラグが立っているはずなのに……)

現実は違う、迷子の世話をしたらそれまでの関係だ。
それだけの繋がりだ。
意味の無い親切、自分に何も帰ってこないし見返りを求めてはいけない。

苦悩しているブーンをよそに、少女は暗みを帯びた世界で青い池を見ていた。
青く大きな池には月が反射して、キラキラと水面が輝いている。

ξ゚听)ξ「ねえ、名前は……何て言うの?」

( ^ω^)「おっ、僕はブーンだお。君は?」

ξ゚听)ξ「私はね、ツンっていうの」

どこか挑発的にも見えるその顔を、正直に綺麗だと思った。

( ^ω^)(まったく最近の子供は大人びているものだお)

そんな親父臭い事をブーンは考えた。


269 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:52:22.42 ID:Tyw9yLgi0
( ^ω^)「とりあえず交番に行くお、そんな池の端にいたら危ないお」

ξ゚听)ξ「何か怖いよー!」

ブーンが近寄ろうとすると、そんな事を笑って言う。
少なからず心が傷付いた、お返しとばかりに相手にノッてやる。

( ^ω^)「ほらほらー、大丈夫だよー? おじちゃん何もしないよー?」

ξ゚听)ξ「あははー、きゃあー助けてー」

傍から見た自分の姿を想像して含羞を覚えたが、いまさら引けやしない。
自我を省みずに、大げさな身振り手振りをあわせて襲う真似する。

ξ゚听)ξ「あははー……っと、キャッ!」

そんな矢先……どぽんと大きな音を立てて彼女が池に落ちた。
それ見た事かと思いながらも、正直自分が原因な気がしてならない。
何だこの罪悪感は、だから三次元の女は嫌なんだ。

しかも少女は泳げないようだった。

ξ;゚听)ξ「きゃ、っぷ、……ぷはっ!」

そんなさまを冷静に見ているブーンがいた。



271 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:54:18.00 ID:Tyw9yLgi0
助けなくてはいけないだろう、しかしどうして自分が?
勝手に親探しに付き合わされてそんな義理はないだろう?
そもそも自分は注意したのだ、その上での不注意なのだから世話無い。

なによりわざわざ濡れたくない。

この少女のお陰で逃げてきた罪悪感を忘れられた自分など、彼はすっかり忘れていた。

ξ;゚听)ξ「助け……ッ!」

少女の声が耳に届き、ブーンはようやくハッとした。
そうだ、一応助けた方がいいだろう常識的に考えて。

しぶしぶといった感じで飛び込もうとするも、その前にと携帯を取り出してその場に置いておいた。
上着も脱ごうかと考えたが、そこまで余裕を見せるのは彼とて憚られた。

さて、それでは助けようか。
ブーンは意を決して飛び込んだ。



272 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/16(木) 22:55:53.33 ID:Tyw9yLgi0
すぐにも少女を抱き抱えるとそのまま岸へ泳ごうとするが……どうした事か、思うように泳げない。
水がまるで体に纏わりつくかのように自由を束縛する。


そして……体が段々と沈んでいる。
まるで下から何かに引っ張られているように、底無し沼のように。
体を動かせばそれだけ深みにはまっていった。


(;^ω^)「ちょ、おま……!!」

ξ゚听)ξ『質量の増加、粘着性の増加、重力の増幅』



   とぷん


一気に重くなった彼女に引き摺られると、抗いも虚しく、少女に抱きつかれたまま彼は沈んだ。

水面はただ静かに揺れていた。


336 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 21:57:29.45 ID:YVvretVV0
登場人物の紹介(第七話)


討伐隊side

( ^ω^):ブーン
  ニートでピザ、あまりに堕落しすぎた生活のため、討伐隊へと引き抜かれる。

('A`):ドクオ
  ニートだが、らしからぬ思考を持つ異端児。ブーンとは親友。

(´・ω・`):ショボン
  討伐隊の長にして魔女、力も強く頼れるが、魔女側のギコと関係が……?

( ゚∀゚):長岡
  気のいい討伐隊員、それでいて銃の腕から格闘技と極めて多彩多優。

川 ゚ -゚):クー
  討伐隊員で生真面目、銃の腕はピカ一だが不真面目を放っておけない一面も。



338 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 21:59:05.52 ID:YVvretVV0
魔女side

( ^Д^):プギャー
  ブーンが始めて出会った魔女、唯我独尊で動いていて他の魔女からも疎まれている。

ξ゚听)ξ:ツン
  人間が怖いらしい魔女、魔女の力もまだ未熟な少女。

( ´_ゝ`):兄者
(´< _`):弟者
  二人してパソコンから情報を集めている魔女。

(*゚ー゚):しぃ
  他の魔女の事を気遣ってやれる女性魔女。

(,,゚Д゚):ギコ
  魔女側の大将的存在か、全体を指揮している。



339 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:01:16.09 ID:YVvretVV0
第七話『無沙汰』


魔女同士の戦いは決して強い方が勝つとは限らない……その言葉が意味するところは一体何か。
ショボンとプギャーは戦いを再開した。

( ^Д^)「死ね!」

(´・ω・`)「勘弁願いたいね」

二人の声はもうあってないようなもの、それよりも速く、二人の攻撃しあう音しかこの場には響かない。
空気の振動はドクオやジョルジュにまで響いてくる、比喩でなく地面が振動している。

一瞬、目で捕らえることの出来ない一瞬に何かが起きている事は分かる。
ただ何が起きているかは分からず、気付くとプギャーという魔女が攻撃され、はるか遠くへ飛ばされていた。

圧倒的な甲乙、幾度とプギャーが攻撃でふっ飛ばされているにも拘らず、ショボンの方は一度として
相手から引けを取っていない。
歴然たる実力の差がそこにはあった。

( ゚∀゚)「ショボンの方がどう見ても有利だ……そう思っているだろ?」

('A`)「まぁ……」

( ゚∀゚)「ついでだし、魔女について少し話しようか」

戦いを見ながらジョルジュはゆっくりと語りだした。



344 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:03:03.94 ID:YVvretVV0
強い方が勝つとか限らない、つまりショボンが勝つとは限らないという事なのに……割に随分と落ち着いた様子だ。
自身でそうとは限らないと言ったわけだが、その上でショボンをかなり信用しているようだ。

( ゚∀゚)「まず魔女という者について話しようか?」

戦いは一層激しさを増す。
とても肉体同士がぶつかり合っている音とは思えない、鈍さの中に甲高さを含んだ不思議な音が響き渡った。

( ゚∀゚)「魔女っていうのはな、万能じゃないんだ」

('A`)「どういう点でですか?」

( ゚∀゚)「例えば30kgのおもりがあるとしよう。
   魔女はこれを50kgにする事は出来るが、10kgにする事は出来ないんだ」

('A`)「つまり大きくする事しか出来ないわけですね」

( ゚∀゚)「そういう事、さらに言うと誰かが30kgのおもりを50kgにしたら、
   他の魔女はそのおもりを同様にその重さ以下には出来ない……。
   こと戦いにおいてもまったく同じだ、つまり魔女同士の戦いっていうのは
    規模を大きくしあう事しか出来ないんだ。
   それが恐ろしい所であって、同時にオレらでは手出しすらできない大きな要因だ」

('A`)「なるほど、戦う上で相手を上回り続けることでしか有利に立てないんですね」

( ゚∀゚)「そうだ」

目の前ではより一層響き渡る音が大きく、多くなっていた。



346 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:05:05.42 ID:YVvretVV0
魔女の攻防は速過ぎて、傍から見ていても何をやっているのかが理解できない、
そう思っているとまたプギャーがふっ飛ばされた。

拳を構えたショボンが堂々とそこには立っている。

プギャーはまだまだと立ち上がるも、足は覚束ない。
ジワジワと、そして確実にダメージを受けていた。
そんな圧倒的不利にも拘わらず、まったく引かない。

(メ^Д^)『闘志の増強』

そして今一度ショボンに向かって駆けた。



( ゚∀゚)「そして魔女の特性として、無いものを増やす事は出来ないんだ」

('A`)「それは何となく分かります」

( ゚∀゚)「ああ、一応説明すると衝撃ない所に衝撃を作る事は出来ないし、
     物体のない所に質量を作り出すことも出来ない。
    さらに魔女は感情を操ることもできる、ここが大事だ」

('A`)「感情を操る……?」

( ゚∀゚)「そう、つまりは自分の闘志を高めたり、相手の絶望を高めたりも出来るわけだ。
   その上で、相手に無い感情を高めることもできない」

('A`)「あー、なるほど」



347 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:07:19.08 ID:YVvretVV0
( ゚∀゚)「同時に対立する性質の『負』を高める事は出来ない」

ここで説明するジョルジュの声が少し小さくなる。

('A`)「マイナスですか?」

( ゚∀゚)「そうだ、重力を正と捉えた場合、浮力は負だ、つまり浮力を高める事は出来ない。
     ただ例えば希望と絶望は対極にいるが真逆のものでない、正と負のものではなく……
     双方を高める事ができる」

ドクオは眉を顰めた。

('A`)「……理解は出来ますが、それは個人の考えによるのでは?
   浮力が正なら重力は負ですよね?」

( ゚∀゚)「そういう事だ、あー例えが悪かったなこれは。
   その個人がどう考えるか、そしてその相対する方の力を強める事は出来ないんだよ。
   軽いものを重くすることは出来ない」

('A`)「1kgのビー玉は重く出来ても、1kgのテレビは重く出来ないってことですか?」

( ゚∀゚)「物分りが良いね、もっとも重さの場合は重力そのものの力を上げるという逃げ道があるがね」

参ったもんだとジョルジュは肩をすくめて見せた。
つまり魔女は、どのようにして自分たちの弱点を補強するのかが大事という事なのだろう。

もっとも、ドクオは説明された事でなおのこと小難しそうな顔をしたが。



348 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:09:11.90 ID:YVvretVV0
('A`)「全然理解できないですが、これ以上聞くのは野暮みたいですね」

( ゚∀゚)「よく分かってるな、戦っていけばそのうち分かってくるさ、線の引けない区分がな」

('A`)「……それで、それが強い者が勝つと限らない事と何の関係が?」

( ゚∀゚)「ま、見てろって」

見てろだなんてどういうつもりか。
見ていればその内分かるというのか。

そもそも、見ていて分かった時、それはショボンが負けた時だろう。
ショボンが負けなければ証明も出来ないが……ショボンが負けてしまっては元も子もない。
一体どういうつもりか。

ジョルジュはドクオに対し、得意げに笑って見せるばかりだった。



351 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:11:03.36 ID:YVvretVV0


ショボンに向かってプギャーの拳が突き出される。
避けながらショボンは反撃を仕掛ける。

全体的な手数はプギャーが勝っていた、もっともショボンはそれを避けながら的確に攻撃を繰り出していたが。

(´・ω・`)(どう出るか……)

再びショボンに向かって回し蹴りがとんできた。
わざとそれを防御して受ける。

(メ^Д^)『衝撃の増強』

(´・ω・`)『衝撃の増強』

そして二人によって増強された衝撃は一気に肥大した。
火花が起こったのではないかというくらい、接触点が爆発したかのような衝撃が返ってきた。

(メ;^Д^)「くぉっ!!」

(´・ω・`)「つっ……思ったよりもきついね……」

自分だけしか衝撃を増強していないと思ったプギャーは、予想だにしない強大な反発力に体勢を崩す。
ショボンは自分で(相手の強化に加え、更に)倍加したので体勢を崩す事はなかったが、
執拗に強くなった衝撃に顔を顰める。



352 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:13:01.64 ID:YVvretVV0
(メ;^Д^)『バランス力の増強』

相手は思わず転びそうになるところを何とか耐える。
しかしそれで出来た隙をショボンだって逃すわけが無い。

(´・ω・`)「肉を切らせて骨を絶つってヤツだよ」

敢えて自分に向かってきた衝撃を増強するなどとは考えないだろう、ショボンはその隙を突いた。

隙だらけのプギャーの胴に、ショボンの重い一撃が下った。
互いに堅さの増強もしたが、いかんせんショボンの方が魔女としても長けている。
何かを吐き出さんが勢いで大きく口を開き、そのまま一気に近くの塀へふっ飛んだ。

いや、その塀をさらに突き抜けて住宅へと突っ込む。

それでもまだ音は止まなかった、もしかするとさらに奥まで突き抜けたのかもしれない。
そこまで確認はできなかったが、今まで以上に痛烈な一撃が相手に入ったことだけは分かった。

(;゚∀゚)「……あれ? もしかして決まっちゃったりするかな?」

強い方が勝つとは限らない、それを証明しようとしていたジョルジュは
意外な展開に素っ頓狂な声を上げた。
これで決まったなら、純粋に強い方が見事な勝利を決めただけだ。



354 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:14:18.55 ID:YVvretVV0
(メメ#^Д^)「安心しろよ……まだ、決まっちゃいねぇからよ……」

瓦礫をどけながら、土埃の舞う中プギャーが姿を表す。
その体は随分と無理をしているのが見て取れた。

それでも……恐ろしいまでの闘争心だ。

(´・ω・`)(さてと……そろそろ相手も疲れてきているし決めようかな)

ショボンは改めて腕を回すと大きく息を吐いた。
相変わらず独特の覇気の無い眼つきだが、同時にそれが恐ろしさを増してもいた。

(´・ω・`)「いいかな、決めようと思うんだが……」

(メメ#^Д^)「随分余裕綽々だな」

(´・ω・`)「いいや、余裕なんて無いよ」

そう言いながら明らかに余裕を見せているようにしか見えないショボン。
プギャーは唇を噛みながらも、それがチャンスだと分かっていた。



355 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:15:54.73 ID:YVvretVV0
(メメ#^Д^)「それじゃあ……いくぞ?」

(´・ω・`)「どこからでもどうぞ」

(メメ#^Д^)「言われなくとも!」

再びショボンの前に瞬間的に移動した。

(メメ^Д^)『バランスの増強、摩擦の増強、筋力の増強』

そして目の前でピタッとブレーキ、二人はまた目前に対立した。

(メメ^Д^)(オマエのその油断が命取りになるぜ?)
   『油断の増強』



その直後、ショボンの構えた手が少し下がった。
それを見逃さない、相手は油断しきっている。
ここで渾身の一撃を決めれば……相手は沈む。



(メメ^Д^)『衝撃の増強』

(´・ω・`)「!!」



359 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:17:42.45 ID:YVvretVV0
油断とは全てにおいてまったくの無防備となる。
反射神経や判断力など諸々の思考が普段どおり働かなくなり、咄嗟の出来事にも満足に対応できなくなる。

魔女同士の戦い、そこでもっとも物を言うのはこの油断なのだ。
相手の方が強かろうが関係ない、油断したところを突けば相当な実力差があろうと
二度と立ち上がることは出来ないだろう。

そして油断とは弱者は抱かない、常に自分の優勢を確信したほうの人間のみが抱く感情だからこそ、
魔女の戦いは強き者が勝つとは限らないのだ。


プギャーは油断させたショボンの前で、衝撃を増強して跳ねると、相手を飛び越えて後ろをとった。
ショボンは油断したところを突かれたのだ、反応は出来ても思考がついていっていない。


戸惑っている。

それが手に取るように分かった。
自分の勝ちだ。


プギャーは拳を大きく振った。


(メメ^Д^)『衝撃の増強、硬化の増強』



360 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:19:35.57 ID:YVvretVV0
プギャーの振りぬいた腕は……何を捕らえる事もなかった。
ただ空を切った。

(メメ;^Д^)(な……なにぃぃ!?)

その直後の腹部への鈍痛。
骨が何本と折れる音がした。


死んだ。


そう思うほど痛烈な一撃が背に与えられ、のけぞった状態で彼は地面に沈んだ。
すでに闘志の消え去った霞んだ目で、ショボンを見上げた。


(メメ;^Д^)「お……おま……ッ!」


言葉が思うように出ない、体中の器官がどうにかしてしまっている。
呼吸音がおかしい、間違いなく……この後自分は死ぬ。


367 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:25:20.71 ID:YVvretVV0
(´・ω・`)「残念だったね、魔女同士の戦いでは油断したほうが負けだよね」

(メメ;^Д^)「しか……、オマエは油断……増強できた……ッ!!」

(´・ω・`)「そうだよね、油断なんてしないでおこうと思っても少なからず無意識にしちゃうものだよね。
   でもね、僕の若干の油断を君が増強したものよりも、
   『僕の油断を増強して勝ったと思った君の油断』を僕が増強した方が大きかった、そういう事だよ」

自分の油断をダシに、相手の油断を誘って自分の物以上にした、話にしてみれば単純なものだった。
単純だが……相当の自信が無くてはそんなこと出来ないだろう。
その朗らかな表情に対し、確固たる精神の強さ。

ショボンはプギャーの頭に拳を突き立てた。

(´・ω・`)「ちなみに僕はまだ君に勝ったなんて思っていない、そして君に同情もしない。
   それらの感情を強めようとするだけ無駄だ、本当に強い魔女は心も強いものだよ」

次第にショボンの拳が抑える力が強くなっていく。
ミシミシとプギャーの骨格が悲鳴を上げている。

(メメ;^Д^)「負けは……負け、だ……。オレら……は、……海沿いのぉ……VIP倉庫……にいる……」

息切れ切れに相手はこう言った。



370 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/17(金) 22:27:33.92 ID:YVvretVV0
(´・ω・`)「潔い事だね、それで……言いたいことはそれだけかい?」

('A`)「ああ、ショボンさんちょっと待ってくれ」

ここでドクオが声を出した。

('A`)「そいつに伝え忘れたことがあったんでな」

(メメ;^Д^)「……!」

ドクオはゆっくりと相手に近付いてしゃがみこんで……言った。

('A`)「さっきのCD-Rのつよきすだがな、オススメは乙女先輩だってさ」

(メメ^Д^)「……」

それまで悲観に満ちていた相手の顔が、少し笑った気がした。

(メメ^Д^)「どこまでもなめたヤロウだ……なごみが、一番オススメに……決まってるだろ?」

('A`)「ああ、そう伝えておいてやるよ。じゃあな」

(メメ^Д^)「ちゃんと、伝えとけよ……じゃあな」

そしてショボンの腕がプギャーの頭蓋を完全にひしゃいだ。
プギャーとの戦いは、ようやく結末を迎えた。


7 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:06:59.95 ID:eFzhjLIe0
登場人物の紹介(第八話)


討伐隊side

( ^ω^):ブーン
  ニートでピザ、あまりに堕落しすぎた生活のため、討伐隊へと引き抜かれる。

('A`):ドクオ
  ニートだが、らしからぬ思考を持つ異端児。ブーンとは親友。

(´・ω・`):ショボン
  討伐隊の長にして魔女、力も強く頼れるが、ギコと関係が……?

( ゚∀゚):ジョルジュ
  気のいい討伐隊員、それでいて銃の腕から格闘技と極めて多彩多優。

川 ゚ -゚):クー
  討伐隊員で生真面目、銃の腕はピカ一だが不真面目を放っておけない面も。


8 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:08:33.44 ID:eFzhjLIe0
魔女side

( ´∀`):モナー(逝去)
  討伐隊に初めに倒された魔女、能力は強くなかったらしい。

( ^Д^):プギャー(逝去)
  ブーンが始めて出会った魔女、唯我独尊で動いていて他の魔女からも疎まれている。

ξ゚听)ξ:ツン
  人間が怖いらしい魔女、魔女の力もまだ未熟な少女。

( ´_ゝ`):兄者
(´< _`):弟者
  二人してパソコンから情報を集めている魔女。

(*゚ー゚):しぃ
  他の魔女の事を気遣ってやれる女性魔女。

(,,゚Д゚):ギコ
  魔女側の大将的存在か、全体を指揮している。


9 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:10:34.14 ID:eFzhjLIe0
前回までのあらすじ(第八話)


ブーンとドクオはニートで日々を自堕落に過ごしていたが、ひょんなことから討伐隊へと参加させられる。
運がいいのか悪いのか、その日に魔女と出会うこととなり、その異常な強さに唖然とするしかなかった……。

ドクオは討伐隊と供にプギャーと言う魔女と再び戦いにいく。
しかし相手の異常な強さにやられるかと思った時、同じ討伐隊にして魔女のショボンが助けに登場した。
その完璧なまでの強さで相手を翻弄し、勝利を収めることに成功した討伐隊。

一方ブーンは魔女と接触した時の恐怖から討伐隊から逃げ出した。
そんな彼の元にツンが現れ、魔女と知らない彼は一緒に行動を共にする。
そして池に落ちた彼女を助けようとした所、彼女にしがみつかれ池へと引きずりこまれてしまった……。


10 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:12:07.38 ID:eFzhjLIe0
第八話『水面下』


ショボンの腕がプギャーの頭蓋を完全に砕き、戦いは終結した。

ショボンと同様にドクオも幾量かの返り血を浴びるが、不思議と彼は嫌悪感を示さなかった。
このグロテスクな状況にも拘わらず、吐き気を催すどころか眉を顰める素振りすらなかった。

('A`)「……」

彼はその意思の無い目で、それでも確かに砕かれたプギャーの死体を凝視していた。
まるで何かを考えるように……。

無感情といえば簡単だが、ここまで無感情の人間など普通存在するわけが無い。

ジョルジュはドクオという存在に違和感を覚えた。
自分ですら未だ慣れないこの惨事、それを傍観者として見る事のできるこの青年に。

川;゚ -゚)「……ジョルジュ」

(;゚∀゚)「ああ、気持ち悪い奴だな……」

クーも同じように思ったようだ。
この青年はおかしいと。


13 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:13:43.03 ID:eFzhjLIe0
(´・ω・`)「さて、とりあえずこれからどうする? ブーン君でも探すかい?」

あの激しい戦いの後にも拘わらず、何事も無かったのように話をするショボン。
合わせて他の三人も『今の戦い』については話せず、すぐにこれから先の行動に頭を移す。
余韻に浸りたくもなるが、やるべきことはまだ残っているのだ。

川 ゚ -゚)「そうか、ドクオ、ブーンの携帯に電話するんだ」

('A`)「……」

ドクオは考えた、きっと自分が電話したならブーンは電話に出ると思ったから。
しかし渋っていてもどうしようもないことだろう。
彼は抗う事をせずに、言われたとおり電話をした。


   プルルルル......プルルルル......


無機質な電子音だけが耳に響く。
ブーンが果たして考えて電話を取らないのか、それとも偶然電話に気付かないのか……分からない。
それでも結果的に彼は電話に出なかった。

('A`)「出ませんね」

ドクオは電話を切ると、素っ気無くそう返した。


15 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:14:48.01 ID:eFzhjLIe0
(´・ω・`)「出なくてもいいよ、大体の位置は分かったから」

('A`)「ああ、なるほど」

そうか、魔女の力があるんだ。
ショボンはその聴覚を最大限に強め、ブーンの携帯電話の大まかな位置を突き止めた。
ドクオも一瞬でそれを理解すると、なるほどとしか返せない。

(´・ω・`)「それじゃ皆僕に捕まって。一気に移動するよ?」

ショボンは促すと、三人を自分の体に掴まらせた。

皆がしがみ付いたのを確認すると、さらにその上から大きく三人を抱擁する。
ショボンは一気に地面を蹴り加速した。


17 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:16:22.21 ID:eFzhjLIe0
それは音速の世界だった。
全ての音がドップラー効果のかかった異質な音となり、風景はパラパラ漫画のように
瞬きの暇もなく姿を変えていった。
秋風が鋭く顔にぶつかってくるので、薄目を開けるだけで精一杯だ。


闇夜に映る黒と藍色のコントラスト。


まるで絵の具を撒けたか、筆で掠れるまで一気に線を引いたような、そんな残像。


体の揺れがスローに感じるほどに、周りの描写が素早く動いていった。


何一つと正しい形のものは見られない、これが昼間だったらどれだけ素晴らしい光景だったことだろうか。





気が付けば彼らは公園の池の淵にいた。


18 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:18:01.07 ID:eFzhjLIe0
(;'A`)「……これはすごいな」

ショボンから離れると同時、僅かに手足が震えた。
ここまでドクオが感情を露にするのも珍しい。
魔女の登場といい、今日ばかりは彼の常識も通用しなさそうだ。

と、ここで突然嘔吐を示し、ドクオは公園の端に腹中をぶちまけた。
グロテスクな場面で平気な面をしていた彼とて、物理的な衝撃相手では流石に我慢できないようだ。

ジョルジュやクーは慣れた様子で、ふぅと一息ついたくらいの反応を見せただけに留まった。

(´・ω・`)「多分この辺りだね」

( ゚∀゚)「それじゃドクオ、大丈夫か?
   もう一回電話鳴らしてもらえるか?」

(;'A`)「んー」

適当な返事をして口元を拭うと、青白い顔でドクオは再びブーンへと電話をかける。


   〜〜♪ 〜〜♪


川 ゚ -゚)・ω・`)゚∀゚)'A`)「……」


そんな彼らの足元、池岸にその携帯電話は無造作に置かれていた。


20 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:19:43.27 ID:eFzhjLIe0
(;゚∀゚)「……もしかしてオレらがはめられた?」

川#゚ -゚)「アイツ……もう許さない、絶対に撃ち抜いてくれる……」

余程不真面目な人間が嫌いなのか、クーは銃をしかと構えた。

(;゚∀゚)「落ち着けよクー、ショボンさんからも何とか言ってやって下さいよ」

ジョルジュがショボンの方を見ると、彼はその目を池に向けていた。
辺り一帯は暗い、その藍色に輝く池を見ていた。

(´・ω・`)「……」

( ゚∀゚)「……? どうしたんですかショボンさん」

ジョルジュの声に、ハッと気付いたようにふり返る。

(´・ω・`)「ううん、何でもないよ。とりあえず手当たり次第探してみようか?」

( ゚∀゚)「あー、魔女を倒してその感動に浸ったりボロボロの体を一段落させたりしたかったが……
    そんな暇も無いか」

そう言いながら四人は思い思いの方向へブーンを探しに動き出した。
すぐそこにいるとも気付かずに……。


21 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:21:18.42 ID:eFzhjLIe0


月明かりが差し込む水面下では、とても神秘的な世界が広がっていた。
清らかとはお世辞でも言えない、不透明な緑色の水が煌々しさに拍車をかけていたといえば
皮肉にしかならないか。
しかし今のブーンにはそれを堪能する余裕などありはしない。


(;゚ω゚)「!! ……!!」


ブーンがもがけばもがくほど水は彼に纏わりついて池の底へと引きずり込んだ。

なぜ?
何故この少女がこんなに重いのだ?
何故水がこうも自分を捕らえるのだ?

反射的に水中に引っ張られる際空気を吸ったから良かったものの、このままでは地上に出られず溺死してしまう。

放せ。

その手を放せ。

(;゚ω゚)(離すお、その手を離すおっ!!)

振り解こうとするも、子供の女性とは思えぬ力でツンはブーンに捕まり続ける。

ξ゚听)ξ(……さぁ、いつまでもつかしら?)


25 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:23:27.07 ID:eFzhjLIe0
そして二人はとうとう池の底まで沈みきった。
挑発的なツンに対して、ブーンはひたすらに早く水面に上がりたいとジェスチャーする。
手を降り解かんとする。

ツンはこのまま溺死していくブーンを見守るだけだ。
どれだけ振り解こうとされても、構わずにしっかりと掴んでいた。
放してなるものか。

(;゚ω゚)(なんでこの娘は僕のこと気に入ってるんだお?
   道案内しただけでこんなに好まれるってsneg?)

生憎ブーンはそんな相手の思惑に気付いていなかったが。

相手は自分を気に入ってくれて、ツンの挑発的な『笑み』は彼に

ξ゚听)ξ【私を助けてくれるんだよね、心強いわ】

そんな勝手な誤釈を生んでいた。


(;゚ω゚)(何とかしないと、僕が何とかしないとッ!!)


28 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:25:02.66 ID:eFzhjLIe0
上に向かって泳ごうとするも、まったく水を掻くことが出来ない。
焦れば焦るだけ、心拍数は高まっていく。
酸素を求める、呼吸が荒くなる。

(;゚ω゚)(もう苦しくなってきたお、もう死ぬお、死ぬおッ!!)

苦しさで思わず死を連想してしまう。
まだ余裕はあろうとも、この状況で死を連想しない訳にもいかないだろう。

ツンはそんなブーンを見ながら、不敵な笑みを更に強めた。

下劣な人間が。
もがけ、苦しめ。
そして死ね。

そしてツンは自分の胸に手を当てる。

ξ゚听)ξ『酸素の肥大』


30 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:26:41.99 ID:eFzhjLIe0
彼女の体の中にはいくらかかの酸素が作られ、苦しさを和らげる。
自分はまだまだ水中にいることができる。
だが相手はそうもいかない、しっかりとその死に様を拝んでやろうではないか。


誰が人間が怖いだって?


誰が魔女のおちこぼれだって?


私だって出来るんだ。
魔女として人の一人くらい簡単に殺せるんだ。
ほら見ろ、討伐隊の一人は今にも死にそうじゃないか。

ξ゚ー゚)ξ(私だって……やれば出来るんだから)

死にそうな相手の顔を前にして、いい気味とふいに笑顔が出た。

(;゚ω゚)「!!」

そしてブーンはその『笑顔』を見逃さなかった。


31 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:28:23.98 ID:eFzhjLIe0
ξ゚ー゚)ξ【私……ここでアナタと死ねるのなら本望かもしれない……】※ブーン脳内


(;゚ω゚)(ダメだお、諦めちゃそこで試合終了なんだおッ!!)

ξ゚听)ξ「!!」

再びブーンはツンの手を引っ張って水面へ上がるべく泳ぎ出した。
ツンが微動だにしないのでなんとも滑稽な姿であったのだが。

ξ;゚听)ξ(……何コイツ、まだ私を助ける気なんかでいるの? バカじゃない?)

ツンは呆れた。
一人で逃げればいいじゃないか、初めのように彼女を振り切って逃げようとすればいいじゃないか。
ほら、そうやってもがいてみろ。

どうして最後までそうやって綺麗面するんだ。
他人を助けようとしてなんの意味があるんだ。

ツンは『怒り』を露にしてブーンを睨んだ。


33 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:30:18.25 ID:eFzhjLIe0
ξ#゚听)ξ【私の事はいいから一人で逃げてって! あなただけでも助かって、ブーン!】


(;゚ω゚)(そんな事はさせないお!)

随分と勝手な妄想でツンの考えをカバーしながら、ブーンはひたすらにツンと供に水面へ出ようとした。

そう、ブーンには久しぶりの感覚だったのだ。


誰かに好まれること(それが妄想だったとしても)。
誰かに頼られること(それが妄想だったとしても)。


ニートとしてプライドを固持した彼が、今本気で人の役に立とうとしているのだ。
彼女を助けようとしているのだ。


ただ皮肉か、それは彼女を怒らせる行為にしかならなかった。


ξ#゚听)ξ(格好つけて死んで何の意味があるのよ!
   自分勝手に生きなさいよ、私なんて放っておいて無様に生きようとしなさいよ!!)

(;゚ω゚)(絶対に助けるんだお、絶対に助けるんだお……!)


39 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:31:58.80 ID:eFzhjLIe0
既にブーンは苦しさで思考を失っていたのかもしれない。

ただこの少女と一緒に逃げよう、そういう思考しか思いつかなくなっていた。

それ以外何も考えていなかった。

考えることが出来なかった。



しかし……もう限界だ。

これ以上は息が続かない、もう生きれない。



死ぬんだ。



その時がきたんだ。



(;'ω`)(もう……ダメだお……)


45 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:33:53.99 ID:eFzhjLIe0
苦しい、足掻くのも疲れた。
もう無駄なんだ、それが分かった。


抵抗もせずに死にたい、出来る限り苦しまずに死にたい。

そう思うと同時、足掻く気持ちが自然と消えていった。

痺れる手足がだらんと力を失った。


とうとうブーンは無抵抗となった。



ξ゚ー゚)ξ(ようやくか……結構長かったわね)


ツンはブーンを見てにやりと笑いながら、頭では別の事を考えていた。
おそらくこの男が意識を失ったとしても、しばらくは生き続けるだろうと。

うつ伏せに池に浮かせておけば死ぬだろう。
だが誰かに見つかる事も考えると、この池の底にもうしばらくいて確実に相手を殺した方がいいだろう。

相手の死を目前に、『笑顔』で彼女は今後の算段をしていた。


50 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/18(土) 22:35:40.69 ID:eFzhjLIe0
(;'ω`)(チン……って名前だったかお……。ゴメンだお、助けられなくて……ゴメンだお……)


最後に見開いたブーンの目の前で……彼女は笑っていた。



ξ゚ー゚)ξ【あなたと一緒に死ねるなら……本望かもね……】



(;'ω`)(チン……さよならだお……)


43 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:01:27.84 ID:NmNm5LDm0
第九話『畜生塚』


ツンは池底に足を着きながら、ブーンを確りと掴んでいた。
抵抗しなくなったとはいえ油断できない、既に目が虚ろな彼を、絶対に逃がさまいと掴んでいた。


月の光は思った以上に弱い、池の底まで届く光などたかだか知れていた。
公園にある外灯の方がきつく照らしてくれているくらいだ。

公園とはいえ所詮は池か、底にもなると汚く色々な物が沈んでいる。
ブレスレットや指輪といった高級そうなものから、三輪車のような大きな物も伺えた。

藻が生えていてとても拾い上げる気になどならないが。


ただ、それらと一緒に沈んでいるというのも中々に不快である。

ξ;゚听)ξ(汚いわね本当……もっと水もちゃんと浄化しなさいよ……)

などと悪態をつきつつも、ツンは改めてブーンを殺す算段に入った。


46 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:03:15.03 ID:NmNm5LDm0
ξ゚听)ξ(とりあえずあと十数分だけここにいればいいかな?
   意外に心配機能が停止しても人って蘇生できるみたいだし……
   でもそれだともっと長い時間かけて確実に――)

( 'ω`)(チン……)


考えるツンの頬にブーンの手が伸びた。

何が起きるのだろうか、そう考える暇はなかった。


そのままブーンは……ツンの唇に自分の唇を重ねた。



ξ 凵@)ξ(…………ッ!!!!111)


48 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:05:02.26 ID:NmNm5LDm0

ブーンは何も考えていなかった。
その朦朧とした世界で感情もなくやった行為の一つだった。


そして唇を合わせたまま……彼は一気に息を吸い込んだ。



ξ 凵@)ξ(――――












53 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:06:44.91 ID:NmNm5LDm0
ξ;゚听)ξ(――――ッ!!)


一瞬世界が真っ暗になった。
意識が瞬間飛んだのだ。
それもそうだろう、一気に体の中の酸素がなくなったのだから。

意識が戻ると同時、激しい頭痛と苦渋が襲い掛かる。

ξ;゚听)ξ『酸素の肥大』

とりあえず自分がこのままだと死ぬ。
慌てて残った酸素の量を増やした。


(;゚ω゚)(むふっ、むふっ……ッ!!)


ブーンは何とか空気を手に入れて意識を取り戻したか、相変わらず辛そうにはしていたが、
先ほどまでの様に朦朧とはいしていない。

それ以前に彼はくっつけた唇を離さない。
肘でしっかりとツンの頭を捕まえて、唇を合わせたままでいるのだ。


59 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:08:49.68 ID:NmNm5LDm0
ξ;゚听)ξ(キメェ、頭はなせバカヤロウッ!!)

首を振るも相手は完璧にツンの頭を捕まえている。
ツンが首を動かせば、ブーンは体ごと同じ方向へと動いた。

ξ;゚听)ξ『酸素の肥大』

焦りながら相手を引き離そうとするが、がっちりと固められた腕はまったく離れようとしない。


止めてくれ、止めてくれ、止めてくれ。


嫌な思い出がフラッシュバックする。

ξ;゚听)ξ(この変態が、離れろッ!!)

目の前というにも近すぎる位置にある相手の頭にツンは拳をぶつけた。

ξ#゚听)ξ『衝撃の増強』

水中で思うような大きな衝撃は与えられないも、増強する事でそれなりの攻撃にはなる。
相手の頭は大きく横方向にふっ飛ばされ、体が大きく曲がった。


64 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:10:36.33 ID:NmNm5LDm0
……が、依然ブーンはツンの頭を離そうとしない。
ずっとその手で抱き締め続け、ツンの頭ごと横へと動いた。
そして唇はずっと重なったままだ。

ξ#゚听)ξ(しつこい、しつこい、もう殺す死ねッ!!)
   『衝撃の増強』

そしてツンがブーンの腹に拳を突き立てた。


(;゚ω゚)(モルスァぁぁッ!!!)


腹部への鈍痛に驚き、体内の二酸化炭素を全て吐くブーン。
唇を合わせるツンは一気に大量の二酸化炭素を体に入れられ……一瞬で意識が飛んだ。










65 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:12:34.91 ID:NmNm5LDm0


(;゚ω゚)「ぶわっはぁあっ!!」

静かな公園の池からブーンは顔を出すと、一気に空気を吸った。
同時にひどい頭痛を感じるが、こんな所で卒倒しては再び池の中だ、
少女を担ぎながら何とか必死の思いで岸へと泳いだ。

そしてツンを岸に上げると、自分も続いて岸に上がってそのまま倒れ込んだ。

(;゚ω゚)「はふぅ、ふぅ、ふぅぅ……はっ、はふぅ……」

頭が痛い、呼吸が安定しない。
吸っても吸っても、まるで肺が呼吸を拒むかのように息ばかりが外に出ようとする。
激しい嘔吐の気もある。

気持ち悪い……もう、寝たい。
眠ればきっとこの苦痛からも解放されるのだろう。

(;-ω-)「はぅ……ふぅ……」

頭がやっぱり痛い、それが気になって眠れない。
そんな事を思っているとすぐにも睡眠につけた……。









69 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:14:21.36 ID:NmNm5LDm0


ξ;゚听)ξ「!!」

起きると真ん丸い月が自分たちを照らしていた。
自分たちとは、自分と……となりにいるこの青年。
ピザ、キモメン、オタク、色白、短足、荒い鼻息……そんな青年。

ξ;゚听)ξ「……本当に私を助けた……の?」

( -ω-)

正真正銘のバカだ、こんなにバカな人間を見たことはない。

そして同時、唇を勝手に奪った相手に嫌気がさした。

ξ#゚听)ξ「こんなヤツに……私の過去が……」

一瞬にして生まれる殺意。
眠る青年の喉に両手を添える。

ξ#゚听)ξ「……」


72 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:16:03.44 ID:NmNm5LDm0
しかし両手を添えただけで力を入れることが出来ない。
悔しいのに、悔しくて……なのに、殺すことが出来ない。

   『……オマエは羨ましいんだろ?』

ξ#゚听)ξ「違う、違う!」

   『自由に動く俺が、人間を怖いと思わず殺せる俺が』

ξ#゚听)ξ「違う、私だって……違うっ!」

   『一族の復讐か何かに縛られているだけの自分が惨めに見えてくるのが嫌なだけだろう?』

ξ#゚听)ξ「違うッ!!」

その場で叫び続けたが、その手がブーンの首を締める事はとうとうなかった。


ξ#;凵G)ξ「くそぉ……なんで私なんて助けたのよ……くそ、くそっ!」


叫び続け、ひたすらに叫び続けた後に一時の静かな空間が生まれる。
そして次の瞬間、誤魔化したかのような笑い声が響いた。

ξ 凵@)ξ「ふふ……そうよ、何も私が殺す必要なんてなかったのよ……」


74 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:17:52.33 ID:NmNm5LDm0
気付いて立ち上がると、そんな彼女の目の前に一人の男が立っていた。
ジョルジュだ、さっきのツンの叫び声を耳にしてやって来たのだろう。

( ゚∀゚)「……こんばんは、そこで寝転がっているヤツはオレらの知り合いなんだが……返してもらえないかい?」

ξ゚ー゚)ξ「いいわよ、どうぞ勝手に取って行って」

( ゚∀゚)「……オマエは魔女だよな?」

ξ゚ー゚)ξ「魔女のツンよ。そいつによろしく言っておいて」
   『恋心の増強、衝撃の増強』

言葉を残すと、ツンは地面を強く蹴って一瞬でその場から離れた。

ξ゚听)ξ(いい気味よ、私に恋をして味方と対立して……裏切り者として仲間に殺されるといいわ!)

自分と行動を供にして、そしてキスをして少なからず生まれただろう、相手の自分に対する恋心。
それを利用した。


ツン自身が手を下すまでも無い、裏切り者として処罰されるがいい。


75 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:19:28.64 ID:NmNm5LDm0




( 'ω`)「う……うん……」

(´・ω・`)「起きたかい?」

ショボンが声をかけてもブーンの反応は無かった。
寝返りでもうっただけなのだろう。

(´・ω・`)「やれやれ……」

肩をすくめると、再びショボンはその隣で本に目を戻した。


76 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:20:59.04 ID:NmNm5LDm0




( ^ω^)「……ショボンさん」

(´・ω・`)「なんだ、起きていたのかい?」

( ^ω^)「どうして僕はここにいるんだお?」

ブーンは未だ自分の立場が分からずにいた。
敷かれた布団、辺りに漂う苔むした臭いは、間違いなく討伐隊の本拠地のものだ。
そもそもショボンがいるのだからそれは間違いないのだろうが。

逃げようとしたにも拘わらず、どうしてブーン自身が匿ってもらえているのか。

(´・ω・`)「うん、君は魔女に騙されて僕たちを裏切ったんだ」

( ^ω^)「……?」

(´・ω・`)「君は魔女に騙されていたんだ。
   だから裏切ったんじゃない、裏切らされたんだ」

言葉を淡々と語りながらショボンは本のページを捲った。

(´・ω・`)「……そうなっているよ」


79 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:22:43.40 ID:NmNm5LDm0
そうなっている。
この人はどこまで自分を疑ってどこまで自分を信じているのかと不思議になってくる。
ここから逃げようとした時も、実は自分に気付いていたんじゃないのか……そう考えてしまう。

( ^ω^)「……他の皆は?」

(´・ω・`)「魔女の基地とでも言おうか……集まっている場所が分かってね。
   そこに向かったよ、ドクオ君も含めて」

( ^ω^)「……そうですかお」

(´・ω・`)「ああ、それで伝言だよ。
   君と一緒にいた少女は……ツンと言う魔女だったよ」

(;^ω^)「!!」

ショボンが言うと、ブーンは驚きを露にして……同時に唇を噛んだ。
その時の感情を、彼はなんと表現すればいいのか分からなかったのだ。
恋という感情を。

そしてすぐにも決心した。

( ^ω^)「僕も……相手の基地ですか、行きたいお」


81 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:24:25.83 ID:NmNm5LDm0
(´・ω・`)「VIP倉庫だよ、ここからだとちょっと距離があるかな?
   これを出したらタダでタクシーにも乗れるから使うといい。
   タクシーもここら辺までは魔女のせいで中々来てくれないけどね、電話で無理矢理呼びつけるといいよ」

手渡されたものは、自分の写真と『討伐隊証』と書いてあるカードだった。

でも違う、ブーンは何も魔女を討伐するために向かうのではない。
あの子にもう一度会うためだ。
そして、あの子を殺すことは……何としてでも止めないといけない。

あの子が……ツンが、好きだから。

( ^ω^)「ありがとうございますお、ショボンさん。
   それでは行ってきますお」

ブーンはすぐにも起き上がると、自分の体の好調を確かめて外に向かった。
目指すはVIP倉庫だ。
討伐を……何とかして止めないといけない。

(´・ω・`)「……さて」

ショボンはブーンが行ったのを確認すると、携帯電話を出して電話をかけた。

相手は当然ギコという魔女だ。


88 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:40:01.11 ID:NmNm5LDm0
第十話『奇計法』


様々なニュースサイトが前日の事件について報道していた。
再び魔女を倒した、これは市民にとっては喜ばしいばかりのニュースだった。
見るに耐えない下世話がつらつらと並べられていた。

魔女が負けたんだ、人間に。

( ´_ゝ`)「モナーに続いてプギャーもやられたか……粋がってはいたものの、
        流石にやられないと思っていたがな……」

(´< _`)「大方強さに酔いしれた所を突かれたんだろう。
   ただそれでもプギャーを倒せる相手がいるんだ、モナーといい相当な人間がいるな」

(*゚ー゚)「プギャーは何だかんだでそれなりの使い手だからね。
   私達もあんまり油断していると痛い目を見るかもね」

( ´_ゝ`)「ま、アイツはいなくなってせいせいするよ……
        いつ裏切るかとヒヤヒヤしながらってのはどうも気が落ち着かない」

ヤレヤレと言いながら男は素早い速度でタイピングを続ける。
パソコンの中でブラウザは十数個も開かれていた。
その殆どが魔女に対する下賎な扱いばかりだったが。

(´< _`)「時に兄者、思うのだが……相手に魔女がいるとは考えられないか?」


89 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:41:50.56 ID:NmNm5LDm0
(*゚ー゚)「いくらなんでもそれはないでしょう?
   魔女同士が出会ったら気付くからね。
   そういう報告が無いって事はいないってことよ」

(´< _`)「む、そうなのだが……」

( ´_ゝ`)「しぃの言うとおりだ、考えすぎだぞ弟者よ」

(*゚ー゚)「いずれにしても、相手に未知で隠然な人物がいることは確かそうね」

そう言いながら兄者と呼ばれた男はひたすらにノートパソコンをタイピングしていた。
既に相手のデータは奪っている、討伐隊の構成人数から個人データまで。
新人を足して4人、ジョルジュとクーに残り二人は元ニートときたから面白いものだ。

( ´_ゝ`)(おそらく現在討伐隊を牛耳っているのはジョルジュと言う男になるのだろうな)

今までの魔女もこの男に殺されたのではと想定していた。


ξ#゚听)ξ「……」

そんな中、ツンは一人その場で佇んでいた。

勝手に動いた挙句、人間ごときに引けをとって負けてきた。
そして話題にも出されず……居場所がなかった。

事実ツンは魔女としてはきわめて弱い、特にここの者達が際立って強いのだから尚更だ。


90 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:43:32.42 ID:NmNm5LDm0
(,,゚Д゚)「あー、まったく一気に変化がくると厄介だな……」

そこに、携帯電話を片手にもう一人魔女が登場する。

(*゚ー゚)「ギコ、電話は大丈夫なの?」

(,,゚Д゚)「ああ、それよりも討伐隊がこちらに向かってきているそうだ」

こんな情報をどこから仕入れてくるのか、一体誰と電話していたのか。
それらは魔女同士でもタブーとなっていた。

ただ、これらの情報は何より信頼できる、それだけは確かだった。

( ´_ゝ`)「……ほう、それでどうするんだ? 全員で一気にカタをつけるのか?」

(,,゚Д゚)「それでもいいがな」

ξ゚听)ξ「待って!」

話する中、ツンが声を上げた。

ξ゚听)ξ「私に……相手させて欲しいの」


92 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:45:13.10 ID:NmNm5LDm0
ツンの発言に、兄者と弟者はため息をついた。
昨日人間一人に引きをとった人物が突然何を言い出すんだと。
モナーにプギャーまでが死んだ中、それ以下の人物に任せれるわけがない。

(,,゚Д゚)「いいじゃないか、任せてやろう」

( ´_ゝ`)(´< _`)「!!」

(,,゚Д゚)「はっきり言ってこのまま人間一人相手出来ないようでは役不足だ。
   このまま黙過し続けるわけにもいかん、だったらここで克服してみろよ」

ξ゚听)ξ「ギコ!」

(,,゚Д゚)「その代わり……ここで相手を倒せないようならオレらが殺すぞゴルァ。
   後が無いことだけ自覚して挑め」

ξ;゚听)ξ「……」

ツンは頭を縦に振った。
このギコの意見には皆同意した、いずれ足手まといになっては困る。
最年少魔女、といってもこれ以上甘やかしてはいけない。

ここで勝ってもらわなければ、ここで成長してもらわなくては。

(,,゚Д゚)(ショボンは今回は出ない筈だ、ならば……余程の事が無い限り大丈夫だろう)


95 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:47:13.14 ID:NmNm5LDm0


ドクオ達は人気の少ない昼の街中を車でとばし、順調に目的の倉庫へと向かっていた。
人気が少ないといってもそれなりの往来はある、どうしてこの街の夜がああも静かなのかと聞き返したくなるほどに。
これほど沢山のビルが立ち並ぶというのに、真っ暗な夜の町を見てしまっては当然の疑問なのだろうが。

討伐隊は相変わらずしっかりと装備を固めていた、ドクオも今回は拳銃を携えている。
そう、自分の身は自分で守れという事だ。

一般人は到底縁の無い『拳銃』だが、彼は相変わらず無表情で受け取った。

川 ゚ -゚)「チャンスがあれば、躊躇するな」

クーが念入りにこう言うが、ドクオはさっぱりとした様子で答えた。

('A`)「心配ないですよ、大丈夫です」

その答えが逆に怖くもあったが。


そして今は車の中で、魔女勢とどう戦闘するのかを話し合っていた。
正攻法では勝てないに決まっている、どう工夫し、どう魔女に対抗するのか。
もっともジョルジュとクーが経験を活かし、二人で討議しているだけのようなものだったが。

( ゚∀゚)「魔女は……だからこそ……」

川 ゚ -゚)「いや、そこは……それも可笑しいか、しかし……」

二人が淡々と会話している時、突然ドクオが思い立ったかのように発言した。


98 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:48:55.30 ID:NmNm5LDm0
('A`)「俺に……アイデアがあるんですが」

今までまったく協力的でなく、味方かどうかとすら思ってしまうほど
無関心だった彼の、突然の発言に二人はギョッとした。
期待半分だ、車内は一転して沈黙となった。

川;゚ -゚)「……」

( ゚∀゚)「……聞こうか、言ってくれ」

ドクオが鬼才である事は、二人も薄々感ずいていた。
ニートをしているのは望んでなのだろう、彼はその上でしっかりと確立された芯を持っていた。
一方何事に対しても無関心という、また一風変わった性質も持ち合わせていたが。

そんな彼が、自分から言葉を出した。
何かに興味があったのだろう、それを知る由は無いが。

('A`)「VIP倉庫はもう古い、廃屋でしたよね。それを利用して……」



そして数分後、ドクオに感心する二人の姿があった。

( ゚∀゚)「それは……いけるかもしれないな」

川 ゚ -゚)「賛同する、それでいこう」


100 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:50:36.46 ID:NmNm5LDm0
ドクオのアイデアをベースとし、更に作戦を練る。
もっともこの時は、またジョルジュとクーだけの話し合いに戻っていたが。

( ゚∀゚)(……それにしても、魔女の特性を知ったばかりだというのに……大した奴だ)



目的地に着く頃には、作戦はある程度固まった状態に仕上がっていた。


VIP倉庫からは少し離れて車を止め、3人は車から降りる。
辺りは不気味なほど静まり返っていた。
今日は風も無いのか、海際だというのに波も穏やかだ。

( ゚∀゚)「さて……」

ジョルジュは改めて自分の装備を確認した。
クーも同じように自分の体に手を当て、武器の所持を確認する。

( ゚∀゚)「……しかしドクオ、オマエどうしてニートなんてしてるんだ?」

('A`)「世の中が理不尽で」

( ゚∀゚)「世の中なんてそんなもんだろ?」


101 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [役不足 誤用申し訳ないです] 投稿日:2006/11/19(日) 22:52:17.06 ID:NmNm5LDm0
ジョルジュの些細な疑問は、簡潔な答えで返って来て終わってしまう。
そもそもその話題に長く費やす時間など当然無いのだが。

川 ゚ -゚)「それでは行くか……」

( ゚∀゚)「だな」

二人は銃を手に持つとその場にドクオを残し、倉庫の入り口へと歩を進めた。




残されたドクオは一人、ポケットからライターを取り出した。
車の中に常備されていたタバコも一緒に手にすると、興味本位で口に咥え、着火する。

('A`)「……がっ、ごほっ!!」

そして直後にむせた、彼に喫煙は向かなかったようだ。

('A`)「気持ち悪……ごほっ!」

そして彼は二人をちゃんと見送る事もせず、車へと戻って行った。


102 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:54:05.50 ID:NmNm5LDm0


倉庫の中は薄暗く、無造作に巨大な木製ブロックが積み上げられている質素な場所だった。
木造の古めかしい倉庫では、壁板の間から陽が入り込むのみ、今日は曇りだから尚更暗いのだろう。
とても人が住めるような所ではない。

随分な歓迎だ。


ξ゚听)ξ「いらしゃい」

その目の前にいたのは、昨晩にジョルジュが出会った少女だった。
しかし油断はできない、辺りをキョロキョロと見回す。

ξ゚听)ξ「安心して、私一人だから」

( ゚∀゚)「敵を信用しろっつってもな……何より女子供を相手するのは苦手なんだ」

ξ#゚听)ξ「……奇麗事並べて、そういうのが一番ムカつくわっ!
   それより昨日の一人はどうしたの?
   まさかもう仲間割れで殺された?」

川 ゚ -゚)「仲間割れ? 大丈夫だ、誤解は解けて今はゆっくりとしているよ」

ξ゚听)ξ「誤解?」


105 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:56:29.29 ID:NmNm5LDm0
互いに会話が食い違う。
いや、今はもうそんな事どうでもいいのだ。

必要なのは、この場で戦いどちらが生き残るかという事だ。

ξ゚听)ξ「アナタ達を倒してから確認する事にするわ」

( ゚∀゚)「それじゃ、戦うか?」

ジョルジュが腰に備えた銃を両手に持つ。
流れるような動作で銃を相手に構えようとしたが、その場に相手はいない。

強烈なダッシュで逃げたのだ。

(;゚∀゚)(ち、早速見失うか……)

薄暗い倉庫、木造の幾つものブロックが障害として立ち並ぶ。
この場で素早く動く相手を捕捉するのは並大抵のことではない。
神経をすまし、目を動かして集中する。

ξ;゚听)ξ(さて……私もどう戦うか……ね)

ツンは自身の肉体の増強はひどく苦手だ。
同時、女であり子供である自分は元々の筋力も無い。

接近した状態での銃弾を避け切られる自信は無かった。


108 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 22:58:01.81 ID:NmNm5LDm0
とりあえず銃に焦点を絞り、離れた状態で一発一発慎重に避け続けるしかない。
銃の火薬の爆発力を高めて銃を暴発させてもいいが、それも自分は苦手だ。
失敗したら通常よりもさらに速くなった弾丸が自分に向かって飛んでくる……リスクが高すぎる。

ξ;゚听)ξ『反射神経の増強、集中力の増強』

長期戦となるだろうのに集中力を増強する事はかなり諸刃となる。
しかしそれでも……早い内に何とか対抗策を思いつきたい一心だった。


ジョルジュとクーは銃を両手に構えた。

いつ、どこに、誰(ツン意外も潜んでいる事を仮定して)が姿を表しても瞬時に発砲できるように。

(;゚∀゚)「……」

川;゚ -゚)「……」

僅かな音が響いた。

魔女の足音だ。

ただジョルジュもクーも分かっている、ダメだ。
闇雲に銃を撃っても意味は無い。


109 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:00:02.56 ID:NmNm5LDm0
それを見抜いているかのように足音はあからさまに鳴る。
神経が磨り減っていく……まだか、まだ相手は攻めてこないのか?
一体いつ相手は攻めてくるんだ?

クーは痺れを切らし、威嚇に一発だけ発砲するが、銃声だけが鳴り響くだけだった。

また僅かな足音が響いてくる。

挑発している。
明らかに挑発している。

(;゚∀゚)(大丈夫だ……うまく時間を稼げれば……)

川;゚ -゚)(銃弾は限られている、うまく使わないと……)

互いに時間を使っての静かな戦いとなった……。


111 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:02:03.79 ID:NmNm5LDm0
魔女の動きは直線的だ。
だからこそダッシュをした音が聞こえれば、その方向へ打てばいい。
そうすれば相手がこちらに向かって来ていても大丈夫だ、
むしろダッシュした相手の正面から弾丸が向かってくる、一歩間違えれば魔女とて避けれるものでは無いだろう。

ジョルジュがこうも魔女と渡り合えた大きな理由には、常人離れした反射神経と反射行動にある。
瞬間的な行動の素早さは魔女にも引けをとらないほどに優れていた。
だからこそ、魔女と同等とまでいかずとも渡り合える事くらいは出来るのだ。

魔女と戦う事が出来る、それだけで彼も十分人間離れした、超人だった。




牽制合戦は十数分が経ったか、そろそろのはずだが……いい加減ジョルジュとクーの精神力がもたなくなってくる。
銃弾も残りは少ない、とはいえ油断をしてはいけない、勝負は一瞬で終わるのだから。

ツンもそんな二人の疲労を感じ取ってか、少しづつ威嚇を仕掛け始めていた。


113 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/19(日) 23:03:55.90 ID:NmNm5LDm0
大きな音が響く。
間違いない、相手が衝撃を増幅してこちらに突撃してきたのだろう。
即座にその方向を向く。


違う、そんな自分たちの後ろでもう一度壁を蹴る音がする。


一度目のダッシュはフェイク、そのダッシュに反応した自分たちの裏をとったのだ。

後ろを向く暇は無い。
ジョルジュとクーは威嚇の意味も込めて揃って後ろに発砲した。

だが残念ながら、相手はこちらに向かって来ていなかったようだ。
二度目のダッシュもフェイク、これで銃弾がまた2発消えた。


(;゚∀゚)(クー、残りは何発だ?)

川;゚ -゚)(私はもう残り1発だ……相手も積極的にこちらを威嚇している、まずいな……)

(;゚∀゚)(ドクオ……まだか!?)

二人は精神的に限界が近いのは当然、何よりも残りの弾数がほぼ底をついた。
彼らはドクオの奇策が一刻も早く成功することに祈るしかなかった。


6 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:49:49.19 ID:ByRXHuAL0
第十一話『信義則』


銃弾が響いた後のまた少しの平穏。
この平穏がまた神経を刻み続けた。
動きの無い静かな空間は、時の流れが遅すぎたのだ。

ξ;゚听)ξ(よし、なんとかまた無駄に発砲させれたわ……
   残りは何発か……銃弾のなくなった振りには気をつけないと)

ツンも若干の疲れを見せてきていた。
相手ほどでないにしろ、集中しなくてはならないのは同じなのだ。

銃が当たれば魔女だって死ぬし、魔女の力も無尽蔵なわけでは無い、限界がある。
もともと衝撃の増強などを得意としないツンにとっても、この戦いは辛いものだった。

ξ;゚听)ξ(そろそろ、銃弾も限界でしょう……)

それは希望か推測か。
祈るようにツンは考えた。

そんな彼女の鼻を、不自然な香りが突く。

ξ゚听)ξ(……何この臭い?)


7 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:51:35.22 ID:ByRXHuAL0
少し開いている入り口から指す光が、濁り淀んだ空気を照らす。
よく見ると辺り一帯に、僅かに赤い光が灯っている。
弾けるようなパチパチとした音も響き渡った。

ξ;゚听)ξ(もしかしてコイツら……!)

(;゚∀゚)(よし、ナイスだドクオ!)

作戦が成功した事を確認すると、ジョルジュは声を出した。

(;゚∀゚)「何が起きているかは……分かるな?
   この場でオマエはどうするつもりだ?」

ξ;゚听)ξ「へぇー、随分なめたマネしてくれるじゃない」

話している間にも、倉庫周りの火の手は一瞬で燃え上がる。
ガソリンをまいての放火、加えてぼろくなった倉庫は一瞬で燃え上がった。

白い煙が辺りを包み、薄い木製の壁はすぐにも剥がれ落ちる。
既に互いが互いの位置を把握できるまでにその場は明るく燃え囲まれていた。


8 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:53:18.19 ID:ByRXHuAL0
ドクオの考えた作戦、それは魔女が増強しか出来ない部分を利用した。

魔女は炎を消す事は出来ないのだ。
彼らに出来るのは、炎の勢いや気温・温度をさらに上げる事と……逃げることのみ。

ジョルジュとクーはツンの位置を把握すると、その両脇に別れる。

(;゚∀゚)「さて、魔女さん……どう出る?」

白い煙がたちこめ、視界は随分とアバウトになった。
出入り口からの光は分かるも、それ以外の眩しさは炎なのか光なのか分かりはしない。

川;゚ -゚)「……?」

と、クーが違和感に気付く。

相手が……震えている?

自分たちなんて見ていない、その辺り一体を埋め尽くす炎にガタガタと震えきっていた。

ξ;゚听))ξ「あ……あああ……ああっ!」

止めてくれ止めてくれ、脳裏に再びフラッシュバックする昔の記憶。
家の無くなるその瞬間、燃え上がる炎。


9 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:54:52.20 ID:ByRXHuAL0

燃え上がる、炎。


ξ;゚听)ξ「きゃああぁぁぁ!!」


衝撃を増幅したのか、一気に倉庫の出入り口へと駆けたツン。

僅かに開いた扉の間をするりと抜け、その炎と煙の空間から逃げ出した瞬間……彼女の目に巨大なバールが写った。



ξ;゚听)ξ「あ――」



素早く倉庫を出たツンにドクオはバールを振った。
ツンは自分で生み出したその勢いで、ドクオの振ったバールに勢い良く突っ込んだ。


  ゴゥンッ!


咄嗟に自分の額を堅くしたのだろうか、その音は鈍い音だった。


10 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:56:26.66 ID:ByRXHuAL0

ツンの頭は上にガクンと曲がる。
視界一面の空……今日は雲が多かった。
続けて体全体が上を向くが、勢いは止まらない。

目の前が一瞬で黒く染まると、頭を地面にぶつけた衝撃が全身を駆け抜ける。
そのまま体に引き摺られて数メートル飛んだ。


(;'A`)「つぁっ!」

怒涛の衝撃に、ドクオはバールを放り投げて思わず叫び上がる。
そして振動は腕から肩に、そして頭にまで響き渡った。

後頭部への強烈な痛み、しゃがみこんだ。


一方ツンは額から血を流し、倒れたまま動かない。

生きているのだろうか?
そこがまず疑問に上がるくらいの衝撃だった。


12 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 22:58:16.04 ID:ByRXHuAL0
(;゚∀゚)「ドクオ、やったか!?」


そこへジョルジュとクーが駆け寄ってくる。
ジョルジュはすぐにドクオへと駆けて、クーはツンに向かって銃を構えた。


川;゚ -゚)「よくやった、ドクオ」

(;'A`)「ったく……尋常でない堅さだな……」


ドクオの作戦というのは魔女が炎を消せないこと、そしてこの倉庫が火の回りの早い古びた木造だったこと。
さらには相手を追い込んだ状態で、ジョルジュとクーが『わざと』出入り口前を無防備にすることで相手を
そこから飛び出すように誘導した。

視界の悪い煙の充満した状況では、ドクオが待ち構えていることに気付く事もできない。


唯一意外だったのは、ツンが異状なまでに炎に怯え、早々に脱出したことだ。
本来ならもっとぎりぎりまでジョルジュとクーが引き付け、一歩間違えれば二人もただでは済まない程の
危険をはらんでいた作戦でもあった。


14 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:00:11.57 ID:ByRXHuAL0
未だピクリとも動かない少女。
おそらく死んだ、誰もがそう思った瞬間……僅かに声が漏れた。

ξ 凵@)ξ「ぅん……」

川 ゚ -゚)( ゚∀゚)('A`)「!!」

咄嗟にツンへ向かって銃を構える三人。
その前で、ツンは上半身を持ち上げた。

ξ>凵)ξ「う……つっ!!」

目を開けた先にはこちらに銃を構える三人。
頭が痛くグラグラする、目を開くのすら正直辛い。
こんな状況でこの三人を相手にするのは……無謀というものだ。

しかし彼女に後はない、このまま逃げ帰っても魔女としての居場所も無い。

ツンは不敵に微笑んだ。

ξ;゚ー゚)ξ(とりあえず、ここをどうにか切り抜けないと……難しそうね)

痛む頭、一先ずこの状況で戦うのは賢いやり方ではない。
一旦休戦を求めるのが賢いやり方だろう。

体調さえ取り戻せば相手が三人がかりだろうと、倒すことはそう難しくはないだろう。


15 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:02:00.31 ID:ByRXHuAL0
( ゚∀゚)「さて……年貢の納め時だぜ?」

川 ゚ -゚)「最後に言い残す事はないか?」

ξ゚听)ξ「……」
   『同情の増強』


ツンが相手の同情心の増強をすると同時、ジョルジュとクーの表情に変化が見えた。

ここでツンが少し辛そうな、悲しそうな表情を見せるとなお二人の顔が歪んだ。
耐え切れない、そんな様子だ。
あまりに心痛くて、このまま銃を構え続ける事ができないのだろう。

『ジョルジュとクー』は。


   パンッ


響く銃声。

ツンのすぐ横を銃弾は通った。


('A`)「あー、やっぱ手が痺れてるといけねーな。すごい衝撃だ……」


18 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:03:39.19 ID:ByRXHuAL0
ξ;゚听)ξ「……え、なんで……」


口がパクパクと開くばかりで言葉が出てこない。

何故同情しないの?

なぜそう考えもなしに銃を撃てるの?

何故、何故、何故?


(;゚∀゚)「オマエ……もしかしてオレらの同情心でも高めたか?」

ジョルジュが気付いて言うと、ツンはバツの悪そうな顔を返した。
同情が増幅されているのだと分かれば話は早い、ジョルジュもクーも改めて銃を構えた。

自分の同情心を自分で疑ってかかれば、さほど大きな障害ではない。
ある程度は吹っ切れる。
そして残るは引き金を引く、一瞬の勇気だけだ。


ξ;゚听)ξ「あ……ああ……」


20 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:05:21.63 ID:ByRXHuAL0
改めて銃を構える三人、対して逃げ道を失ったツンは恐怖に体を強張らせた。

('A`)「悪いな、感情なんてしようと思っても出来ないんだ」

ツンは恐怖と困惑に苛まれた。

なぜだ、普通は逆じゃないのか?
隠そうと思っても感情は現れてしまうものだというのに……コイツは逆なのか?
感情なんて勝手に湧き出るものだろう、自分の意志でどうにかできるものではないだろう?

('A`)「こちとら異端児でね」

ξ;゚听)ξ「ひっ……!!」

怖がるツンに少なからずジョルジュとクーは迷いが生じる。
殺さなくてもいいんじゃないのか?
本当に殺してしまうのか?

見て取れる彼らの戸惑い、そしてドクオの異常性。
眉一つ動かす事無く、彼は引き金に改めて手を掛けた。
じりじりと引き金を引いていく。


('A`)「じゃあな」

ξ;゚听)ξ「いや……ッ!」


22 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:07:00.97 ID:ByRXHuAL0
(;^ω^)「止めるお!!」


突如響いたブーンの声。

間一髪、ドクオは引き金を引ききらなかった。
が、その指を戻す事もせずにドクオはブーンに顔を向ける。


ブーンは間に合った、ギリギリで。
呼吸を乱しながら無表情なドクオを睨み返す。


('A`)「それで……どういうつもりだ?」

(;^ω^)「どういうつもりと言っても……とりあえずダメだお、絶対に引き金を引いちゃいけないお!」

('A`)「何故?」

(;^ω^)「それは……!!」

皆が固唾を呑んでその場面を見守った。
無感情のドクオに対してブーンの言った言葉は、あまりに自分勝手な言葉だった。

( ^ω^)「僕が……ツンを、好きだから」


23 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:08:47.90 ID:ByRXHuAL0
その言葉にどう反応すれば良いか分からずに皆唖然とした。
しかしドクオは驚いた様子も呆れた様子も無く、ブーンに言葉を返す。

('A`)「その愛情っていうのは……多分、コイツに植え付けられたものだぞ? それは分かるな?」

(;^ω^)「それは根拠がないお……」

('A`)「仮定の確定の話だ。どちらも証明出来ることじゃないからこそ……聞いてるんだ。
   なのにオマエは自分勝手でこの魔女を殺すタイミングを……逃させるのか?」

(;^ω^)「構わないお、ツンを殺したら……」

ブーンはここで息を吸い込むと、大きく叫んだ。


(;^ω^)「ツンを殺したら、僕がオマエを殺すお!」


全霊の叫びが、その場に轟いた。


26 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:11:14.13 ID:ByRXHuAL0
ツンは……どうしてブーンをこんな事にしてしまったのだろうかと泣いていた。

事実なんだ、この男が自分を好きなのは魔女の力によるものなのだ。
裏切られて殺されろなんて思った。

自分を助けたこの男を、自分の手で殺す気になんてなれなかったんだ。
なのに……どうしてまた自分を助けようとするんだ。

どうして……どうして自分の事を考えないんだ。
他人のことばっかり……私のことばっかり……。


ξ;凵G)ξ「バカ、バカ……何やってるのよ、バカ……」


力無いツンの声、ブーンはその声に応えるように力強い眼でドクオを睨んだ。
ドクオは意志の無い目でツンを見る、互いの目線が交錯した。

('A`)「オマエ、ツンっていうのか?」

ξ;凵G)ξ「そうよ、だから何!?」


28 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/20(月) 23:13:01.22 ID:ByRXHuAL0
('A`)「オレは感情なんてない、オマエを殺すことには何も思わない。
   ただ……友人の言葉を裏切ることだけはしたくないんだ、運がよかったな」


そしてドクオも銃を下げた。


ξ;凵G)ξ「えっ……」

( ^ω^)「ツン!」

それを確認するとすぐにツンの元へ駆け寄るブーン。
ツンはもう抗う力なんて無かった。

ξ;凵G)ξ「バカ、バカ……そいつの言うとおりよ、私の力であなたが私に好意を抱くようにして……分かる?
   私はアナタを騙して……そしてこうやって助けてもらっているのよ?
   ムカついた? 怒った? 殺したいと思った?」

(#^ω^)「いい加減にするおッ!」

ξ;凵G)ξ「……ッ!」

(#^ω^)「僕はツンが好きなんだお! 魔女とかそんな事どうでもいいお、好きなんだお!!」


ブーンはツンを無理矢理抱きしめた。


そして……この戦いは幕を下ろした。


74 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 21:50:06.31 ID:0/B2jX8b0


そんなブーン達を遠くから見る影があった。

(´・ω・`)「やれやれ、どうやら僕の出番はなかったようだね……」

遠く、建物の上に立ち眺めるその者は、ショボン。
一部始終を見ていたが、こうも見事に魔女を倒すとは思ってもいなかった。

(´・ω・`)「それにしても、魔女を殺さずにすむとは……こればかりは誤算だね。
   まったく、こっちの身にもなってもらいたいものだよ」


ヤレヤレと肩をすくめると、地面を大きく蹴ってショボンは姿を眩ませた。


78 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 21:56:53.59 ID:0/B2jX8b0
第十二話『裏面史』


ツンとの戦いから一日あけた朝、改めて討伐隊の本部に招集がかかった。
ツン、ブーン、ドクオ、ジョルジュ、クーの5人。
ショボンはその場にいなかった。

ツンは信用されているのか、その身は自由にされていた。
本人も特に改めて討伐隊と戦う気は起きず、言われるがままに集まった。


( ゚∀゚)「さて……それでツン、悪いが教えてもらえるだろうか?
   ……ツンが我々を狙う理由、そして魔女達が我々人間を狙う理由」

ξ゚听)ξ「……」

その場で全員が押し黙る中、ツンはゆっくりと言葉を紡いだ。

ξ゚听)ξ「私たち魔女は……あなた達に純粋な恨みを持っているの」

慎重に一言一言、彼女は言葉をつなげた。

ξ゚听)ξ「あなた達は……私たち魔女にひどい事をしたのよ、過去に。
   今のあなた達は昔の話だと思うでしょう、それでも……私たちには許せない過去なの!」


79 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 21:58:46.42 ID:0/B2jX8b0
魔女とは人間と何も見た目は変わらない、ただ先天的に力を持っていた。
ある時を境に生まれる強大な『魔女』の力。

普段は
ただの人間と相違ない、それでも人間は魔女を隔離した。
弱き者だからこそ、強き者を乖離するんだ。
弱き者が自分のプライドを示す方法、それは強き者を押しのけることだ。

そして弱き者は自分たちの強さを勘違いして優越に浸る。
魔女を下劣な存在として扱いだすんだ。
魔女と人間を確実に線引きしたんだ。



それでも私たち家族は楽しく暮らしていた。
安い賃金で働かせられていたが、楽しく暮らせていた。



それでも……幸せだった。


80 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:02:07.91 ID:0/B2jX8b0
数年前、地方で大きな戦争が連鎖的に起こったわ。
そしてそれにより、私達の国は様々な資源の経路を失った。
経済が一気に変化して、もう私達の国はダメだと思われたの。

そんな時……人間はどうしたと思う?


私たち魔女を捕まえ、一斉に虐殺したのよ。


彼らは私たちの中で強大な魔女の力を持つ者全てを集め、毒殺した。
経済が思うようにままならない幾つもの板挟みの中、
魔女という一つの心配の種を確実に消去したの。


そして……とうとう強制的な行動に入ったわ。


「ぱぱ、皆どこに行ったの?」


「どこだろうね、きっと戦争で自分たちの力になっているんだよ」


「ふーん」


ささやかな食卓が一瞬で戦場に、血の海に化けたわ。


81 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:03:52.83 ID:0/B2jX8b0
突然壊される家の壁。

押し入る幾人もの人。

突きつけられる銃。

体に与えられる衝撃。

理解できぬ状況で唖然とする中、私たちは打ちのめされ意識が朦朧としたわ。
母親はその場で体を何発も撃ち抜かれ、父親はスタンされて意識無いまま体を束縛されていた。
私は魔女の力も芽生えてない、だからそのまま力で押さえつけられた。


穴だらけで原形をとどめていないような無残な私の家、そしてそれに纏い上がる炎。

容赦なく打たれる拳、遠のく意識、意識の片隅で……炎の中から叫ぶ母親の声。

あまりの理不尽さに「何故?」と思う余裕もなかった。
「どうして私たちが?」、不思議とそういうことは考えられなかった。
ただ、何が起きているのかと理解しようとするだけで……命が助かるのかと心配するばかりで。


83 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:05:32.26 ID:0/B2jX8b0

それから暗い独房に入れられた。
両手足を縛られ、出される食事はスープ一杯だけ。
それを動物のように地にはいつくばって食べされられた。


一眠りした次の日、私は独房に来た数人の男に連れられてある部屋に運ばれたわ。

なんてことない、そこで私は裸にされて数人の男達に弄ばれた。

そしてその隣では人間の解剖を始めたの。
それがいつもの光景であるかのように。

「ラッキー、今日は赤ん坊が切れるぜ」

「オマエ運良すぎるよ……俺中年男性以外最近切った記憶ないな」

「この前のあのデブ、中々切り甲斐あって良かったがな、はは!」

そう言いながら自分を見る卑しい目。
羞恥だとか憤恨だとか、そんなものではない……単純な恐怖。

そしてそんな自分に投げつけられる腸。

私は一瞬で気絶した。


84 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:07:09.65 ID:0/B2jX8b0
目が覚めると再びそこは独房だった。
意識が覚める事で体がひどく傷している事に気付く。

あまりの痛さに、突然狂ったように悶絶し絶叫した。

狭い独房の中に声は大きく反響した。


しばらくすると一人の男の人が入ってきて、うるさいと私を蹴りつけた。

「淫事の最中に気絶した礼儀のない雌が……だから魔女は下等なんだ」

そう言って裸の私につばを吐き捨てた。

「少々、お仕置きが必要だなぁ……」

そう言って出て行った。



次の日、再び男に回される自分の隣で……父親が解剖された。


86 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:08:53.75 ID:0/B2jX8b0
隣で娘が裸で男達に弄ばれている。
それを最期の光景とし、私の父親はその腹を切り込まれた。

耳が弾ける様な音。
未だ聞いた事のない父の叫び声。
部屋に鳴り響く声、それを快感の様に聞く人々。

この人達は麻酔なんて使わない、生きた人間の自由を拘束し、そのまま切り刻んでいく。
断末魔の叫びは父も、その他の人も変わらないまったく同じ金切り声だ。

空気が抜けるように瞬間に小さくなる父の声。
いや、もうそれは父のものか誰のものか分からない。
皮肉な事に、その叫び声を聞いたことで私は少し冷静になれていた。

「オマエの父親、中々良い……サンプルだぜ?」

そう言ってメスをちらつかせる相手に、私はただ怖くて……
父親とか、そんな事を考える暇なんてなくて……

「私は、助けて……下さい……」

その言葉に男はこう答えたんだ。

「オマエ、若い女でよかったな」


その日の夕食には初めて焼かれた肉が出た。
それが何か分かると同時、私は吐き気を催したが無理矢理口に詰められた。
私は自分の父親を食べたのだ。


87 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:11:01.60 ID:0/B2jX8b0
初めは恥辱的で自分には生きる価値が無いのかなんて思い、何度も死のうと考えた。
しかし慣れとは怖いもので、数日後には逆の恐怖があった。


私は飽きられればきっと殺されるのだろう。
今私が女性であり、そして若いから生かされているだけなんだ。

いつこの人達は私に飽きるんだろう?

死にたくない、死にたくない、死にたくないのに……。



常に性道具として玩ばれ、隣では見知らぬ男の断末魔。
彼らの好みに合わなかっただろう殺された女性も何人も見てきた。

時には「五月蝿いから黙れ」と咽喉仏を執刀されている人もいた。

いつか私もあの断末魔を上げる側につく日が来るのだろう……とても他人事ではなかった。


89 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:12:37.22 ID:0/B2jX8bO
「まだまだ実験台なら腐るほどいるぜ?」


「いい加減にしてくれ、一日に何人切ればいいんだよ。
 半分くらいは病原菌を注射して放置しといてくれ。
 ああ、何日で死んだかのメモは忘れないようにな」


「どうせだったら病原菌にかかっている人間も切ってみたいから赤ん坊以外には全部注射しとけばいいんじゃないか?」


「それよりもオレは、動物類の毒を試したいな」



人の命は……一体どれだけの価値があるのだろう?


92 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:14:30.43 ID:0/B2jX8b0


ξ゚听)ξ「アナタは、人間の目玉を……見た事がある? 本当の断末魔を聞いた事がある?
   何度死にたいと本気で思ったか……想像できる!?」


ツンの鋭い言葉を、そこにいる人間は固唾を呑んで聞いた。
魔女と普通の人間との関係、そんな背景も知らずに知らずに討伐隊とは人間勝手もいいところだ。

ツンの過去。
勝手に殺された両親、そして自分はただの性欲処理の道具とされたんだ。
それで……ずっと人間を恨んできたのだろう。


魔女と人間にはそんな関係があったのだ。


('A`)「ツンっていったか?」

ドクオが声をかけた。
ツンはどこか悲しげに、それでも意志の強い目を向けた。

ξ゚听)ξ「何よ!」

('A`)「辛かったんだろ、だったら死ねよ、なんで死ななかったんだ?」

ξ゚听)ξ「!!」


98 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:16:17.60 ID:0/B2jX8b0
周囲の人間は慌てふためいた。
何を言い出すんだドクオは。
どうしてここで相手に追い討ちをかけるような言葉を放つんだ。

あまりに無慈悲なドクオの言葉に憤慨するあまり、ツンはわなわなと震え上がった。
そして出せる限りめいっぱいに声を張り上げる。

ξ#゚听)ξ「死ねって言いたいの!? 死にたいワケないじゃん、あんた何考えてるの?
   バカにしてるの、私の過去を……辛かった私の過去を馬鹿にして楽しい!?」

(;^ω^)「止めるおツン!」

今にも襲い掛かりそうなツンをブーンは押さえつける。
それでもツンの勢いは止まらない。

ξ;凵G)ξ「どいてよブーン、私はそいつを……だったら殺してやるんだから!
   死ぬってどういう事か分かるの!?」

('A`)「それはこっちの台詞だ、自分は経験してないくせに何分かった気になってんだテメーこそ」

(;^ω^)「ドクオ!」


101 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:18:01.20 ID:0/B2jX8b0
ツンを押さえたまま、ブーンはドクオに顔を向けて叫ぶ。
ブーンは知っている、ドクオがどうしてこんな言葉を掛けるのか。
ドクオが今どんな考えをしているのか。

だけどいけないんだ、ドクオの考えは一般的に受け入れられないんだ。
彼はまたい天才だから。

ξ;凵G)ξ「何よアンタ、死ねッ、だから人間なんて勝手なのよッ!
   アンタこそ死ね、バカにして生きる価値も無い……殺してやるんだからッ!!」

細く掠れた声を張り上げるツンをブーンは抑制して、ドクオに声をかける。

(;^ω^)「ドクオ、言いたいことは分かるお。
   だけど……止めてあげて欲しいお」

('A`)「……」

ブーンがそう言うと、ドクオは不満そうにゆっくりと歩いて自分たちの部屋へと戻っていった。
ジョルジュが慌ててその後を追った。


103 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:20:02.73 ID:0/B2jX8b0


討伐隊の基地は地下にあり、部屋数はゆうに十部屋を越える。
調理場、射撃訓練場、そしてシアタールームもあり、町の雑踏は一切聞こえない。


その頃地上では太陽が照りつける真昼、十数階はあるだろうビルを思うが侭にジャンプで移動する影があった。


(*゚ー゚)(さて、ツンちゃんはどこに行っちゃったのか……)


魔女の一人だ、名前はしぃといったか。
同じ魔女である弟者に言われた「相手に魔女がいるかもしれない」という言葉。
その場では否定したが、ずっとそれが引っ掛かっているのだ。

ツンを探すついでに、何とかその魔女の手がかりがつかめれば……と思い今こうやって町に出向いた。
騒ぎを起こすつもりはない、ただの様子見だ。

ビルの屋上に静かに着地すると、次はそれよりも5階以上高いビルの屋上へと大跳躍した。
町を往来する僅かな人々を一瞥するが、そこに魔女の姿はない。

魔女は魔女を見分ける事ができる。
うまく言えないが、魔女を見ると体から薄く光を放つオーラのようなものが見えるんだ。

(*゚ー゚)(さて、しかしツンちゃんも出てこないなぁ……)


106 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/21(火) 22:22:38.37 ID:0/B2jX8b0
ビルとビルを縦横無尽に飛び回って地の人々を見てみるが、そこに魔女の姿は一向に現れない。
元々魔女が多く姿を見せるこの街に、さほど多くの人影など無い。
魔女がいるか簡単に地上に目を通しながら、衝撃を高めて建物間を飛び上がる。

(*゚ー゚)「!!」
   『バランスの増強、摩擦力の増強、筋力の増強』

大跳躍をしてビルからビルへ跳ぶと、そこで急ブレーキをかけて止まる。

目の前には体から薄い光を放つ男が立っていた。


(´・ω・`)「やあ、ようこそ」


普通の人間には渾然としか見えないのだろうが、しっかりとその目には映った。
魔女特有の体から発せられる紫煙が、互いに目視できた。

(;*゚ー゚)「……」

これがきっとプギャーやモナーを、そしてツンをも殺した魔女なんだろう。
そう考えると背中を汗が伝った。

構えるしぃの前で、ショボンは片手に持つビンを差し出した。

(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」


164 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 21:55:55.02 ID:AsLz3T460
第十三話『風雲児』


川 ゚ -゚)「なあツン、どうして我々は魔女にそんなひどい事をしたんだ?」

ツンの過去の話を聞いてクーがそう尋ねるも、ツンはドクオとの会話で苛立ったままに叫んで返した。

ξ;凵G)ξ「知らないわよ、私が聞きたいくらいよ……!
   あいつらは……あなた達はもう人間じゃない、感情のない人間なんて人間じゃない!」

かの昔、有名な人が「人は考える葦」と説いた。
そういう事だ、考えを止めた人間は人間にあらず。
人である事を止めた、人の仮面をかぶったもののけだ。

ツンはその場に泣き崩れた。

クーは目でブーンに合図すると、その部屋を出て行く。
ブーンにツンの事を任せたのだろう。

(;^ω^)(選択肢が出てこないお……)

そう思い、ブーンは何も言わずに抱擁してツンが泣き止むのを待っていた。


166 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 21:57:53.64 ID:AsLz3T460


( ゚∀゚)「なあドクオ」

('A`)「なんですか?」

ジョルジュはドクオの後を追い、結局は部屋で向かい合って座り込んでいた。
ドクオはまるっきり先程のツンへの台詞を詫びた様子もなく、特に居心地の悪さはない。
ジョルジュはゆっくりと言葉をかけた。

( ゚∀゚)「どうしてあんな事を言ったんだ?」

あんな事……辛い記憶を話したツンへの、辛辣な言葉のことだ。

ドクオは僅かに嫌そうな顔をした。
余計なお世話だ、表情はそう語っていた。

('A`)「どうせ言っても無駄ですよ」

( ゚∀゚)「分からんだろ、言われなきゃ分かるモンも分からん」

('A`)「……だったらアイツの言っていた死ぬってどういうことですか?」

( ゚∀゚)「……ん?」

ジョルジュは止まった。
死ぬ事がどういう事かと?


168 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:00:10.91 ID:AsLz3T460
( ゚∀゚)「哲学か? 死ぬっていうのはこの世から存在が消えることじゃないかな?」

('A`)「肉体は残ります。何が消えるんですか、その言葉の『存在』とは何ですか?」

(;゚∀゚)「精神……魂?」

('A`)「つまり生きているのは魂ですか?」

(;゚∀゚)「うーん……良く分からん。魂がこの体を動かしているとかそう言いたいのか?」

ジョルジュは困りながらも何とかドクオの考えを知ろうと頑張って会話を続けた。
しかしどこかで自分などでは話をしても無駄だとわかっていたのかもしれない。
相手の考えが周りを逸脱した確固たるものだと、何となく分かっていたから。

('A`)「魂は何のために生きているんですか?」

( ゚∀゚)「あー、それは困る質問だな……」

('A`)「死ぬ事が魂が消えるとして、魂が消えたら何も感じる事は出来ない。
   どれだけ素晴らしく生きても、どれだけ黒く生きても結局死んだ先は一緒です。
   死んだ先には何もないんだ、なのにどうして生きようとするんですか?」

ドクオの表情は一向に変わらなかった。
どうして生きようとするのか?
何故か、何故なのか?


169 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:02:14.26 ID:AsLz3T460
( ゚∀゚)「オレが死んだら少なからず悲しんでくれる人がいると思うんだ。
   それに死んだ後に何か残せたら……いいと思わないか?
   魔女と戦ってオレが死んでも、平和を人々に与えられたら幸せだと思わないか?」

('A`)「誰が幸せに思うんですか?」

( ゚∀゚)「だから俺だ、自己満足だがな」

そうジョルジュが言うと、ドクオは目を逸らした。
完璧に興味をなくした瞬間だった。
ジョルジュとドクオは分かり合えない、それを相手が悟った瞬間だった。

('A`)「魂が死んだ人間がどうやって何を思うんですか?」

(;゚∀゚)「!! それは……」

('A`)「悲しんでくれる人がいるとして、それが死んだ人にどんな影響を与えるんですか?
   あなたはそれを嬉しいと思うんですか?
   思えないです、死んだ人間が思えるわけないですよね」


172 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:04:35.11 ID:AsLz3T460
死ぬという事、生きるという事。
たった二つの質問でドクオはジョルジュの浅はかさを露にした。

('A`)「俺気付いたんですよ、なんで死ぬ事を怖がらなきゃいけないのだろうって。
   後悔も懺悔も無い、そんな中で何を怖がっているのだろうって。
   どれだけ死にたくないって思っても、死んだ時には魂がないから「死んだ」事が分からないんですよ?」

(;゚∀゚)「……」

('A`)「人間は生きることしか感じられないんです、死んでも死んだ事は分からないんです。
   それからですかね、悲しみながら嫌な事をしてまで生きる意味が分からなくなったのは。
   物事に無関心になって、死ぬ事を別段恐れなくなったのは……」

ドクオの考えは彼自身の言ったとおり異端だった。
そして……彼は間違いなく天才だった。


174 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:06:12.38 ID:AsLz3T460


その町でも一際大きくそびえ立つビルの屋上で、二人の魔女は対峙していた。

(;*゚ー゚)「……テキーラをいらないかですって? いりません」

(´・ω・`)「それは残念だ」

そう言ってショボンはテキーラの入ったビンに口を付けた。

(*゚ー゚)『反射神経の増強、集中力の増強、判断力の増強』

身構えるしぃを傍目に、ショボンは口からビンを放す。
ビンの中にテキーラはまだ残っているみたいだ。

(*゚ー゚)「戦いの前に飲むとは、ちょっと余裕が過ぎませんか……?」

(´・ω・`)「どういたしまして、これは譲れないんでね。
   して、戦うとは……?」

とぼけるのは顔だけにしてもらいたい。
しぃはキッと睨んだが、ショボンはおやおやといった様子で肩をすくめた。

敵か味方かは分からない。
いや、少なくとも味方ではないだろう。


176 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:08:00.93 ID:AsLz3T460
しぃは一瞬で近づくと足払いを仕掛けた。
が、同時ショボンは後方に軽くジャンプして避ける。
互いに追撃はない、改めてしぃは間合いを空けた。

(;*゚ー゚)「何気に反射神経をアップさせてるじゃないですか」

(´・ω・`)「うん、魔女と会う以上油断は命取りだからいつでも戦えるようにはしているよ」

しぃが攻撃した事について言及しない。
この時点で相手が敵だと判断できた。

そんなしぃの感情をよそに、ショボンはもう一度ビンに口をつけた。

しぃの眉間に皺が寄る。
常に油断をしない……?
そんなヤツが口にアルコールを含むはずがない。

(*゚ー゚)『油断の増強、衝撃の増強』

再び瞬間でショボンに近づくしぃ。
ショボンは口にビンを当てながら、その眼球をしぃに向けた。


179 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:09:52.55 ID:AsLz3T460
(*゚ー゚)(手遅れだ……ッ!)

しぃが拳をショボンの胴に打ち込むが、その相手のあまりの硬さに驚く。

魔女は能力の倍加しか出来ないため、元来体躯の違う男と女では男の方が断然有利である。
何より女とは感情豊かな動物だ、感情を操作できる魔女同士の戦いでは当然それはディスアドバンテージとして働く。
そのため常に女は男よりも卑下た扱いを受けるんだ。


ただ、ここまで明らかな差が出来ることはなかった。


しぃは思わず突いた腕を引っ込め、再び距離を空けようと後退する……が、ショボンがそれをさせない。
逃げるしぃへ一瞬で間合いを詰めた。

(;*゚ー゚)(パンチか、キックか……!)

受けるか避けるか、どうすればいいか?
さっきのしぃ自身の攻撃を諸共しない感じだと、ショボンの攻撃を一発でも受けたら堅さを増強しようとも
致命打になりかねない。
相手の手足の動きに細心の注意を払う。


180 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:11:30.51 ID:AsLz3T460
   ぶうぅ


(;*゚ー゚)「きゃぅ!」

ショボンはそこで、口に含んだテキーラを霧状に噴き出した。
意外な攻撃、驚いて目を背けかけるが……いけない、相手から目を逸らしてはいけない。

案の定その隙にショボンはしぃの胴へ蹴りを放ってきた。


避けないと。


しかし突然テキーラを吐き出された困惑で、体が硬直して動こうとしない。


まずい、直撃する。


(;*゚ー゚)『堅さの増強』


骨のきしむ音、体がくの字に曲がっていくのが自分でも分かる。
何も抵抗できない、体が勝手に動くさまをスローモーションのように感じてだけいた。


182 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:13:08.34 ID:AsLz3T46O
   ドォンッ


屋上から斜め下に吹っ飛ばされ、隣のビルに突っ込むしぃ。
それでも地上からは十階程度はあろうか、突然の爆音に驚くビル下の人々は米粒のようだった。

(´・ω・`)「やれやれ、野次馬が多いね……」

それを肴にショボンはもう一度テキーラを口に含むと、衝撃を強め、しぃが突っ込んだビルへと跳び入った。


(;*゚ー゚)「くっ……」

しぃは何とか平常を取り戻すと、身体に踏ん張りを利かせた。
様々な能力を増強させ、真直ぐに立ち構えた。

オフィスの一室、アルミ製の机はいくつも吹っ飛ばされ僅かな人々は我先にと逃げ惑う。
書類などは大切な物もそうでない物も入り混じり、風に吹かれて辺りを舞っていた。

逃げ惑う人々の声が聞こえない。
大丈夫だ、しっかりと集中できている。

二三度目配りをして辺りを見回したが、残念ながら良い武器になりそうなものはない。


184 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:15:05.00 ID:AsLz3T460
と、隣のビルの屋上からショボンが飛び下りてくるのが見えた。
それは一瞬でしぃのいるフロアへと着地すると、瞬きする暇も無くもう一度床を蹴って襲い掛かる。
のべつ幕なしな攻撃。

(´・ω・`)「……」

(;*゚ー゚)「ッ!!」

そして彼のその左足に目が釘付けになる。
固まりきっていて、同時に恐ろしいほど筋肉で隆起していた。


一撃で決める気なのだろう。


しぃは身構えた。
その相手の攻撃を避ければまだ希望はある、勝てる望みはあるだろう。

いつ来るか分からない相手の一撃に全神経を集中させる。
逆にその攻撃を喰らってしまっては負けだろうから。


ショボンはしぃの目前でキュッと停止した。


186 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:17:16.90 ID:AsLz3T460
攻撃か、それともフェイントか?


目線を右にずらしたがショボン本人は動かない。
しぃもピクッと反応しかけたが、何とか持ち堪えた。


ショボンが足をその場で二度三度動かす、しぃはその度体を微かに震わせた。


   ぶぅう


(;*゚ー゚)「!!」


まただ、再びショボンはその口の中に含んだテキーラをしぃに浴びせた。
緊張の糸が切れるか切れないかというくらい、再び意標を突かれた。


   タッ


と僅かなステップ、直後回転するショボンの体。
回転力を高めたかみるみる加速した左足がしぃへと振られた。


191 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:26:09.74 ID:AsLz3T460
(;*゚ー゚)(回転蹴り!?)

一瞬反応が遅れた。
回転蹴りは体を回すだけ若干のロスが発生する、だから威力は上がれどよほどの事がない限り避けれる自信があった。

しかし吹かれたテキーラ、そして魔女同士の戦いでそのロスのある攻撃を仕掛けるなど想定外だ。
しぃも反応が一瞬遅れた。
そして魔女対魔女ではその一瞬が命取りになる。

体が固まって動かなかった。


動け、動け、動け。


早く動かねば……回し蹴りを直で受けてしまう。


動け、動け!


ショボンの足はもうすぐそこだ……!


192 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:27:49.88 ID:AsLz3T460
と、ようやく自由を取り戻した体。
しかし避けれるのか、相手のこの攻撃を避けれるのか?

(;*゚ー゚)『衝撃の増強』

そしてジャンプした。

避けろ、避けろ、避けろ!
この攻撃を避ければ勝ちなんだ、この攻撃が当たれば……間違いなく負ける。


なんとしてでも、避けろ、避けろ……!!


そしてショボンの回転した足は……跳んだしぃのすぐ下を空切った。



しぃは避けた。
鎌鼬が発生しそうなほどの切れ味を持ったその蹴りを、紙一重避けたのだ。

ショボンの懇親の一撃は彼女を捉える事は出来なかったのだ。

(;*゚ー゚)(勝った!)

そう思って顔を上げた先の光景に、言葉を失った。


193 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:29:33.08 ID:AsLz3T460
(;*゚ー゚)「――ッ!!」

直後の腹部への痛み。
体を堅くしたがそれすら意味を成さないほどの強烈な一撃。
ショボンの左足のかかとが彼女の横脇を突いていた。


剃刀のキックは、確実にしぃの胴をとらえていた。


骨が軋むだけでは済まない、間違いなく折れた。
体はくの字に折れ曲がるだけでもまだ済まない、そのまま上半身と下半身で真っ二つに裂かれるかのような衝撃だった。

勢いで首すら千切れそうになった。
体の中の器官が全てぐちゃぐちゃに砕けた感覚に襲われた。


そのまましぃはそのビルを突き抜け、さらにもう一つ小さな建物を突き抜け、次のビルに突撃してようやく止った。
体全体が麻痺していた。
血がまったく循環していないように感じた。

ここは……給湯室のようだ、しぃが大きく激突したことで辺りからは水が噴き出してきた。
ボイラーか、低い音が鳴り響く。

温かいお湯が体を伝う。
それが自分の血だと分かると、皮肉に笑う元気すら失った。


197 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/22(水) 22:33:41.14 ID:AsLz3T460
そんなしぃの前に、ショボンが表れた。
しぃの目にもう闘志はなかった。
ここで……自分は死ぬんだ。

(´・ω・`)「大丈夫かい、テキーラでも飲むかい?」

笑う余裕も無く、意志の無い目だけをショボンに向けていた。
ここでまた彼は肩をすくめる。

(´・ω・`)「悪いね、僕の回し蹴りは2回転するんだよ。
   いずれにせよ攻撃を避けただけで油断しているようじゃダメだね、
   増強したとはいえあそこまであからさまに安心されるとはガッカリだ」

油断してはいけない、それくらい分かっている。
ただそれすら忘れさせるほどショボンが強いのだ。
その素振り全てが余裕あるように見えて、そして隙が無いようにも見えて……。

考えていたらまた身震いした。
そんなしぃにショボンは手を掛ける。

(´・ω・`)「それで、悪いけどまだ僕は勝った気ではいない。
   当然君に同情もしていないし、情けをかける気も無い」

頷くとしぃは目を瞑った。


そしてショボンはその頭を掴み潰した。


269 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:18:54.93 ID:nvDwzRG50
第十四話『黄信号』


夜、辺りが暗くなり外灯が点きだした頃にショボンは討伐隊の拠点に帰ってきた。

(´・ω・`)「ふぅ、雨に降られて大変だったよ……」

(;゚∀゚)「ショボンさん、遅かったじゃないですか!
   町じゃ大変ですよ、また一人魔女が死んだって!」

(´・ω・`)「うん、偶然出会ってね。逃がしてくれなかったんだ」

しれっと言うショボンに、ジョルジュは頭痛を覚えた。
この人は本当に……どうしてこうも緊張感が無いのか?

(;゚∀゚)「その話題で各テレビも持ちきりですよ!」

(´・ω・`)「うん、まぁいいじゃないか。
   それよりもツン君のところに案内してもらえるかい?」

自分がどれだけすごい事をしでかしたのか自覚はあるのだろうか?
そんな事を思いながら、ジョルジュはツンとクーの部屋にショボンを案内した。
二人揃ってそこにいると考えていたが、ドアを開けても二人はいない。

「?」マークを浮かべて、とりあえずブーンとドクオの部屋にツンの居場所を聞きに行く事にした。


271 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:21:00.78 ID:nvDwzRG50


クーはその頃、射撃練習場で銃を撃っていた。

自分の悔しさをぶつけるように。

発砲した銃弾は全て的の中心近くを貫通する。
どんな体勢になろうとも的を外さない。
感覚だ、狙いを丁寧に定めずにも的を打ち抜くことが出来る。

正に自分の体と銃が一体化しているとでも言おうか、的確に狙い撃った。

完璧だった。

川 ゚ -゚)「……」

銃の腕だけはずっと誰にも負けなかった。
それがクーのプライドであり、自我だった。

時間を置かずに次々に出てくる標的、クーは即座に銃を構え、廃弾を捨て、そして的目掛けて打った。

クーは常に銃の腕だけずば抜けていた。
他が悪かったわけでは無い、ただ他は他人に自慢できるほど卓抜したものではなかった。

銃の腕だけは秀でていたのだ。


272 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:22:59.07 ID:nvDwzRG50
川;゚ -゚)「く……ッ!」

体勢を崩した、それでも撃てば銃弾は的に吸い込まれていく。

体勢を戻して、再び撃つ。


銃の天才と謳われたクーだが、今まで一度も勝てなかった人がいる。
それがジョルジュだった。
唯一と言ってもいい、彼女が心から尊敬できる人間だった。


川 ゚ -゚)「……ふぅ」

口から息を吐くがまったく落ち着く暇は無い、銃は絶え間なく発砲声を鳴り響かす。
右手に持つ銃弾が6発を打ち切った、すぐに廃弾を捨てると同時、左腕に持つ銃で標的を狙い続ける。


両手持ちに変えたのも彼に出会ってからだった。
ジョルジュが両手で銃を構えているから……だから自分も両手撃ちにした、無駄なところだけ女らしい。

彼に少しでも追いつこうと勉学から自己鍛錬に至るまで日々没頭し、
ジョルジュの後を追うように自分も出世していった。
銃の腕ではクーとジョルジュの隣に並べる者はいない程だった。

そしてジョルジュという人間についても分かってきた。
クーが不真面目を倦厭するのは、頑張ってきた自分への冒涜行為が許せないだけでない。
そう、人がいいジョルジュは嫌に思っていても絶対に怒らないから、だから代わりに彼女が怒りを露にするのだ。


273 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:24:47.03 ID:nvDwzRG50
川 ゚ -゚)「……」

それで二人は討伐隊の代表となった。
二人で戦って……頑張って勝とうと思った。
平穏を取り戻そうと思った。


銃では無理なんだ。
感慨無量なほど無力感を味わった。


川;゚ -゚)「……くそ、くそッ!!」


雑念が入ると、狙いは次第に外れだした。
弾痕がマトの中に残る事は無くなる。

  カチッ カチッ

気付いたら銃弾がなくなっていた。
こんな事にも気付かないなんて……まったく集中力を欠ききっていた。

銃を足元にぶつけた。


274 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:26:28.33 ID:nvDwzRG50
ダメなんだ、銃なんかじゃ魔女には何の意味も持たないんだ。

当然のように避けられてしまうのだ。


悔しさで震え上がった。

自分の存在を否定される相手と彼女はずっと戦っていたのだ。
彼女のアイデンティティとも言える、銃を諸共しない相手と。

川;゚ -゚)「く……」

肩で息をした。
この悔しさ、情けなさ、自分の小ささ。

ジョルジュのように銃無しで魔女と戦えたりもしない。
彼女には銃しかないというのに……。


ξ゚听)ξ「あ、クーさん見っけ」

川 ゚ -゚)「……ツンか。どうした?」

射撃場の入り口からクーを見つけると、ツンは笑顔でトテトテと歩いてくる。
すぐにいつもの彼女に戻してツンに対応した。


276 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:28:21.68 ID:nvDwzRG50
ξ゚听)ξ「気付いたらいないから、どこに行ったか探してたの」

川 ゚ -゚)「スマンな、迷惑をかけてしまったようだな」

ξ゚听)ξ「ううん、いいよ」

そう言いながらツンの頭を撫でてやった。

川 ゚ -゚)「ブーン達の所へ行けばよかったのに」

ξ゚听)ξ「私あのドクオってヤツ嫌い」

川 ゚ -゚)「そうか……」

相当嫌われたもんだなとクーは皮肉で笑みを浮かべた。
それにしても自分こそどうしてこんなに好まれているのやら。

川 ゚ -゚)「……」

そうか、ツンがいるじゃないか。


278 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:30:23.22 ID:nvDwzRG50
川 ゚ -゚)「ツン、お願いがある」

ξ゚听)ξ「お願い?」

川 ゚ -゚)「銃の、火薬の爆発の衝撃を強めてもらえないか?」

ξ゚听)ξ「……私なんて大した事無いよ? それでもいいなら」

ツンの返事を聞くや否や、クーは改めて銃を準備して今度はしっかりと標的に構えた。
狙いをつける、集中する。

ξ゚听)ξ「……いいよ、いつでも」

川 ゚ -゚)「合図は人差し指を二回、トリガーに当てる。
   三回目で引き金を引く……いくぞ?」

クーは狙いを定めて引き金に構えた指に力を入れる。
汗が出た、未だかつて無いほど緊張していた。

失敗すれば銃が暴発する、ジョルジュのそのシーンを見た。
でも……暴発するかしないか、その限界の力で弾を放てれば……。

人差し指で合図を出した。
……トン、……トン、――


279 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:32:08.51 ID:nvDwzRG50
   バンッ

銃が手から離れた。
恐ろしい衝撃、しびれた手は銃を持った形のまま固まった。

銃が地面に落ちる。


そして銃弾は……見事マトの中心を打ち抜いていた。


川 ゚ー゚)「……これなら」

この衝撃は恐ろしい、一発撃ったらしばらく銃は握れなくなるかもしれない。
それでも……きっとこれなら魔女に対応できるはずだ。

川 ゚ー゚)「ありがとうツン、これなら私も……きっと戦える」

ξ゚听)ξ「戦えるって……魔女に?」

そう言われてハッとした。
そうだ、ツンは魔女なのに……魔女同士戦えと言うのか?
今更ながら自分の傲慢さがに気付くなど、とても愚かだ。

川 ゚ -゚)「悪いな、ツン」

ξ゚听)ξ「……ううん」

言いながらツンは泣きそうな表情を見せた。


280 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:34:51.08 ID:nvDwzRG50
そう、彼女は既に戻る所を失ったのだ。
今は人間側に世話をして貰ってるとはいえ、そこにいる自身に対しての嫌悪感と、
人間側への感謝が葛藤していた。
自分がどういう行動をとればいいのか、宙ぶらりんな状態だったのだ。

ξ;凵G)ξ「クーさん」

川 ゚ -゚)「……なんだ?」

ξ;凵G)ξ「私はまだ悔しいのに……でも、人間が分からない……。
   どうなんだろう、魔女と人間が分かり合えることって出来るのかな?
   ううん、昔を思いだすとやっぱり分かり合えるなんて絶対無理だなんて思う……」

自分の矛盾した心に踏ん切りがつけられないまま、ツンは慎重に話した。

ξ;凵G)ξ「だって、無理よ絶対私は許せない、言葉の上でも人間を許すなんて誓いたくもない。
   許したくも無いわよ私を滅茶苦茶にして……なのに私を助けたり何がしたいのか分からないよ。
   本当に辛い、信じられずに助けてくれたブーンにありがとうも言えずにでも殺そうとしたのも人間で……」

次から次に生まれてくる言葉を、繋がりもなくツンはひたすらに吐き出していた。

ξ;凵G)ξ「魔女にも戻れなくて……私、何が……もう……」

川 ゚ -゚)「ツン、我慢しなくてもいい、憎いなら憎いと思え。
   人間全体を信じる必要は無い、自分の昔を押さえつけて耐える必要もどこにも無い。
   ただ……都合いいかもしれないが、私たちだけは信じて欲しい。
   私はオマエを守るから、絶対に」

クーがギュッと強く抱きしめると、ツンは頷いた。
そして大きな声をあげて泣いた。


289 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 21:59:12.51 ID:nvDwzRG50


廃墟となったビルの一室を勝手に陣取ると、三人の男が向き合っていた。
白熱灯の明かりの中、カタカタとパソコンを操る音が響く。

( ´_ゝ`)「しぃが帰ってこないとは……不慮の事態だな」

パソコン上には、たて続け魔女を捕縛したというニュース画面がいくつものブラウザで開かれていた。
どこもかしこも魔女に対する醜聞ばかりが飛び交っていた。


『討伐隊 魔女四人を連続して倒す』

『もう魔女は怖くない 討伐隊の軌跡』

『飛んで火に入る夏の虫か 魔女を返り討ち』


(´< _`)「モナー、プギャー、ツン、しぃ……なるほど四人だな」

( ´_ゝ`)「格下ばかりとはいえ、これはそろそろ放っておけない事態だな」

最近町では宗教団体がうごめいているらしい。
ここ数日で魔女の大半が崩れた……それに何らかの理由つけて売り込んでいるのだ。

くだらない。


291 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 22:01:08.08 ID:nvDwzRG50
( ´_ゝ`)「しかし弟者の懸念も真実味を帯びてきたな、魔女が相手にいるという」

(´< _`)「どれ程の使い手か分からないが、とりあえずプギャーやしぃよりも強いとなると少なからず厄介だな」

(,,゚Д゚)「……」

ギコは固まっていた。

誰がしぃを殺したのか?

すぐに浮かんだのはショボンだったが、彼がこんな事をする理由は何も無い。
打ち消すと別の候補を考えてみる。

つまりは相手に魔女を……
モナーとツンとしぃ(プギャーはショボンが殺したのでノーカウント)を倒せるだけの力を持つ人間がいるという事か。
既にショボンを足して魔女は残り四人と半壊した、これ以上犠牲は払えない。

(,,゚Д゚)「……オレが行って、やつらを潰すかゴルァ」

そう言ってギコはとうとう重い腰を上げた。
こうなれば自分が直々に制裁を下そうと立ち上がった。


294 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [支援ありがとうございます] 投稿日:2006/11/23(木) 22:02:57.25 ID:nvDwzRG50
しかしそのギコを兄者が止める。

( ´_ゝ`)「まあまあ、落ち着けギコ。次はオレらが出るよ」

そう言いながらカタカタとパソコンをいじる。
パソコンの動作やいやに快適だ。
画面は一面暗く、流れるように白字が打ち込まれていく。

そしてエンターを押すと、そのまま勝手に文字が羅列されていく。

(´< _`)「何をしているんだ兄者?」

そして文字の羅列が止まると、次は四角いバーが出現した。
『受信率』と書かれたそれは、次第にパーセンテージを上げていく。
5%……10%……15%……。

( ´_ゝ`)「ああ、討伐隊の戦力は四人、そのうちの一人の情報をハックしているところだ」

80%まで到達すると残りの受信を一気に完了させ、ブラウザが一つ開いた。
フォルダ名、『ジョルジュ』『クー』『ドクオ』『ブーン』。
全てのデータを受信し終えた。

(´< _`)「流石兄者、してそのデータをどうするつもりだ?」


296 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 22:04:41.61 ID:nvDwzRG50
( ´_ゝ`)「目には目を、既に討伐隊の拠点は把握している。
   手土産に身内の死体の一つでももって行ってやろうとな」

(´< _`)「流石だな、なんとも悪どい」

そうして取得したフォルダを見ると、個人情報で溢れ返っていた。
元ニートの二人とは『ドクオ』『ブーン』という名の男のことだろう、
その内一人を適当に決めて、ファイルを開いた。
住所、家族構成、略歴……全てが書かれていた。

( ´_ゝ`)「母子家庭か、これは丁度良いな、母親が殺された相手は一体どう思うか……」

(,,゚Д゚)「流石兄弟」

( ´_ゝ`)(´< _`)「ん?」

(,,゚Д゚)「オマエ達二人が組めば俺なんかでも到底歯が立たない。
   だからこそ心配はないと思うが……負けるなよ?」

(´< _`)「オレらが組めば無敵さ」

( ´_ゝ`)「当然だ」


298 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/23(木) 22:05:17.31 ID:nvDwzRG50
兄者はパソコンの電源を落とすと、先ほど取得した住所に向かおうと弟者を促した。

(´< _`)「……そういえば、その討伐隊の人間の名前は何て言うんだ?」

( ´_ゝ`)「ん、確か……ドクオとかいったな。
   コイツがどんな悲壮な顔をするのか……考えただけでたまらないな」

夜は更けていた。
雨は止む気配が無い、黒い雲が空を覆いつくしていた。


4 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:48:53.49 ID:xf06olQV0
第十五話『手土産』


大きな発砲音に反応してか、廊下から声がした。
そしてクーとツンがいる射撃場に皆がやってくる。

皆が向かってきた事に気付くとツンはすぐに涙を引っ込め、気丈に振舞ってみせた。

ξ゚听)ξ「皆してどうしたの?」

( ゚∀゚)「おお、ここにいたのか」

(;^ω^)「なんだか銃が一杯あるお……テラコワス」

川 ゚ -゚)「ジョルジュか、どうしたんだ?」

( ゚∀゚)「ああ、ショボンさんが帰って来てね」

ξ゚听)ξ「ショボン?」

ツンがその名前に反応した。

(´・ω・`)「初めまして、君がツンさんだね」

ショボンは出来る限り友好的に話を切り出したが、対してツンは渋っているようだった。
怪訝な顔をしながら、確認をとる。


5 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:50:42.56 ID:xf06olQV0
ξ;゚听)ξ「アナタが……魔女の裏切り者、人間側で魔女を狩り続ける……ショボンなのね?」

ショボンから出る僅かな光は魔女の証。
ツンは睨みつけるようにショボンを見た。

魔女にして魔女にあらず、噂は幾度と聞いた。
恐ろしいほどの魔女としての力を持ち、人間側に立って魔女を狩る者。

ただの噂かと思っていたその名前……ショボン。

(´・ω・`)「うん、残念ながら僕がそのショボンだよ」

幾分も表情を変えないショボンに、ツンはより睨みを効かせた。

ξ゚听)ξ「アンタが……そのショボン……。
   どうして、どうして私たちを裏切ったの!?」

(´・ω・`)「裏切った……か、今こちら側にいる君が言えた台詞じゃないよね」

ξ;゚听)ξ「……そうだけど」


6 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:52:21.72 ID:xf06olQV0
ジョルジュもクーもショボンについてはまったくといっていいほど知らなかった。

魔女であること、ただそれだけと言ってもいい。
だから討伐隊の長でありながら、表向き隊長はジョルジュでありメンバーにすら含まれていない。

ジョルジュもクーもショボンの事は信頼している、そして隊長としても認めている。
ただそれとこれとでは話が別だ。
『魔女の裏切り者』、むしろ今までショボンがこちら側にいる理由を聞かなかった
彼らにこそ原因があるのかもしれないが。

川 ゚ -゚)「……ショボンさん」

(´・ω・`)「おや、なんだか僕が悪者みたいだね」

川 ゚ -゚)「そんなつもりじゃないです、でも……」

そこにタイミング良くか悪くか、ショボンの携帯が鳴った。

(´・ω・`)「悪いね」

言うとショボンは携帯を手に奥へ引っ込んでいく。
その場はなんとも言えない空気が漂っていた……。


8 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:54:04.99 ID:xf06olQV0
(´・ω・`)「もしもし?」

(,,゚Д゚)『ショボンか? 俺だ』

(´・ω・`)「……うん」

念の為後ろを確認したが、誰も来ていない。
ショボンは安心して電話を続ける。

(´・ω・`)「どうしたのいきなり?」

(,,゚Д゚)『しぃが殺されたらしいな』

(´・ω・`)「……」
   (やっぱり情報が早いな、彼女を殺しておいて正解だった。
    ツンがこちらに来るのは誤算だったからね……)

ショボンは考えた。
ツンが殺されたとあればきっと魔女の集団も慎重な動きを見せることになるだろう。
魔女が三人も殺されたのだ、流石に出足は鈍るはずだ。

同時、世間に殺されたと報道されているツンは生きて人間側に今いる。
そしてきっと人間と魔女の因果について話をするだろう。
それでこちらの出足も鈍るに違いない、魔女側の言い分を一部でも知ってしまったならば。

双方が慎重になってこの事態が一時の制止を迎えるのは容易に想像が出来た。


10 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:55:50.20 ID:xf06olQV0
だからこそ、この崩れかけた関係を維持するためショボンはしぃを殺した。
これで相手は黙っているはずは無いだろうと見越して。
そうする事で魔女は憤怒し、守りの姿勢が無意味と知り、攻め込んでくるだろうと。

ショボンの行動の全ては、今の崩壊しかけたアンバランスな関係を保持するためだ。

(´・ω・`)「そうみたいだね、僕も流石に驚いたよ」

ショボンはツンを警戒してか、歩きながら話をした。
この会話が聞かれることはまず無いだろう、そこまで彼女の頭が回るとは思えない、それでも念の為だ。

(,,゚Д゚)『それに腹を立ててな、今既に二人が動いた。
   その基地はもうばれている、ショボンだけでも逃げた方がいいだろう』

(´・ω・`)「そうしたいのは山々なんだけどね、今偶然どこかから
        僕が裏切り者のショボンだっていう情報が渡ってさ。
        常に見張られている状態なんだ。
        残念ながらそうもいかないよ」

(,,゚Д゚)『ダッシュで有無を言わさず逃げろ』

(´・ω・`)「そうもいかないよ。
   そもそも、これからの人達は僕とギコと一緒に人間への敵討ちを果たす仲間なんだよね?
   だったら個人的にぜひ手合わせ願いたいからね」

ギコは「敵討ち」という言葉に弱い。
この言葉を言われたら納得するしかない事を知って、ショボンはこの言葉を使った。


11 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:57:41.45 ID:xf06olQV0
(,,゚Д゚)『……そうだな、ショボンにもぜひ強さを知っておいてもらいたい、
     同時にその二人にショボンの強さも見てもらいたいしな』

ほらね、と彼は口元を緩ませた。

(´・ω・`)「うん、だからちょっと戦ってみるよ」

(,,゚Д゚)『くれぐれも同士討ちだけは避けてくれな?』

(´・ω・`)「おっけい」

気の無い返事をして、電源を切るとショボンはふぅとため息を吐く。
ツンの事はややこしくなりそうなので黙っていた。

(´・ω・`)(今度は魔女が二人か……まぁ誰が来ても負ける気は無いけどね。
   とりあえずその人達が来るまでちょっと時間稼ぎでもしようかな?)

ショボンは射撃場に戻ると、広間にドクオを含めた皆を召集させた。


12 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 21:59:33.47 ID:xf06olQV0

(´・ω・`)「こんな夜だけど結局皆揃っちゃったし、ちょっと魔女について踏み込んだ話でもしようか?」

( ^ω^)「お、まだ何かあるのかお?
   ブーンも増強しか出来ないとか無いものを増強できない、マイナス方向に増強できないとかは聞いたお」

(´・ω・`)「うん、そこからさらに説明しようと思うんだ。
   ツンちゃんは『質』と『量』の話を知っているよね?」

ξ゚听)ξ「まぁ……ちゃんとした区分けは知らないけど……」

(´・ω・`)「いいよ、ちゃんとした区分けなんて無いし。
   せっかくだからそれを説明しようかなって」

ξ゚听)ξ「……わかったわ、説明する。
   私たち魔女では私達の力で増強できる種類のものを六つの区分に分けているの。
   それで、それぞれの区分で大体得意不得意が分けられるの」

( ゚∀゚)「得意不得意? 肉体の強化は得意だけど心の強化は苦手とかか?」

ξ゚听)ξ「そうそう、それの大まかな分け方なの。
   『質』と『量』、それが自分・物体・無形物の三種類にそれぞれあって六つの区分なの」

魔女といっても誰もが全てを得意としているわけでなく、得手不得手があるようだ。
そしてその区分けが六つあるということらしい。


15 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:01:20.72 ID:xf06olQV0
ξ゚听)ξ「ああ、ちなみにここで言う『質』と『量』っていうのは
      本来の質と量とは意味がまったく異なるから。
      私たち魔女が自分たちの能力を区切るために、勝手に作った言い方だからね。
      そもそも境界もアバウトだし」

ショボンが聞きながらうんうんと頷いた。

ξ゚听)ξ「まず、自分の『質』的変化。
   これは自分自身の精神的な面の増強を主にさすわね。
   反射神経、集中力、闘争心……この辺りの増強は主にこれに当たるわ」

( ゚∀゚)「反射神経のアップは基本皆使ってるよな? かなり重要な力か?」

ξ゚听)ξ「うん、基本的に自分に関する変化はすごく重要。
   次に自分の『量』的変化だけど、これは肉体的な変化を主にさすわ。
   肉体の強固や筋肉の増強、質量の増強なんかが代表的かな?」

(´・ω・`)「相手に攻撃されたら、自分の肉体を固めないと大ダメージを受けちゃうからね」

川 ゚ -゚)「つまり『質』とは精神的な面、『量』とは目に見える部位の強化をさす……みたいな感じか?」

ξ゚听)ξ「うーん、大まかに言うとそんな感じかな、その方がわかり易かったかもね。
   実際にちゃんとした区切りも無いから何とも言えないけど」

(´・ω・`)「つまり内面的な変化と外面的な変化があるってことだよ」

ショボンがそう付け加えると、ツンは続きを説明しだす。


16 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:03:13.02 ID:xf06olQV0
ξ゚听)ξ「それで次は物体に対する『質』と『量』、だから内面的変化と外面的変化ね。
   ただ、内面的変化の精神的なものは、他人に対してしか意味無いけど」

川 ゚ -゚)「物に心は無いから……なるほど」

(´・ω・`)「相手の油断を増幅させるのは内面的変化、相手の肉体を強化するのは外面的変化だ、
        自分に対するのと一緒だね。
        ただ例外として、魔女同士の場合これらの変化を拒絶することができるんだ」

( ゚∀゚)「どういうことですか? 油断の増強とかは普通にされていますよね?」

(´・ω・`)「うん、つまり『意識していれば相手の増強を拒絶できる』ってことかな?
   だから油断していない状況では相手の怒りや優しさ、筋力なんかは増強できないんだ。
   逆に望めば僕がツンちゃんの筋力を強化することだってできる」

( ゚∀゚)「魔女同士はって言いましたよね、つまり俺たち人間では意味ないんですか?」

(´・ω・`)「うん、無意味だね」

ξ゚听)ξ「私じゃ無理かもしれないけど、もっと上級の魔女なら指一本触れずに人間は殺せるわよ?」

ツンのその一言に、一気にその場が硬直した。
魔女の異常性、そして人間の無力さを大っぴらに示す一言に。

銃が利かないなどという次元ではない、人間そのものが『抗えない』のだ。


17 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:05:05.51 ID:xf06olQV0
(´・ω・`)「加えて物の強化っていうのはその物体をちゃんと知らないと強化できない、
         僕も筋肉を強化するために解剖書を読んだしね」

ξ゚听)ξ「私も読んだわ、経験が直で物をいうから、やっぱりある程度年齢が大切だって馬鹿にされたもん」

そんな絶望的な感情を知ってか知らずか、魔女の二人は当然のような顔をしながら話を進めていく。

ξ゚听)ξ「それで最後に無形物だけど、これについてはかなり境界があやふやなのよ」

(;^ω^)「おっおっ、どういう事かお?」

ξ゚听)ξ「捉え方がまちまちなのよ。
   無形物の内面的変化は、例えば回転力や音の大きさ、衝撃の増強。
   外面的変化は、例えば温度や明るさの増強がこれに該当するわね」

(;^ω^)「違いが良くわかんないお……」

(´・ω・`)「難しいだろうね、一般的には無形物の内面的変化は
       『一時的に発生させられたモノの増強』。
         無機物の外面的変化は『常にある一定に決められたモノの増強』
         っていう感じで習ったかな?」

分かり易く説明してくれたようだが、ブーンは依然首をかしげ続けた。
ジョルジュやクーも同じようにピンと来ない表情をしている。
ドクオは……良くわからないが。


19 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:06:50.69 ID:xf06olQV0
(;゚∀゚)「えーと……それで、ツンは何が得意なんだ?」

ξ゚听)ξ「私が得意なのは、物体の内面的的変化かな?」

(;゚∀゚)「相手の心の変化か……魔女相手には微妙だな」

ξ゚听)ξ「うるさいわね、別にいいでしょ? それでも戦いでは重要なんだから!」

物体の内面的変化は相手の緊張感や油断・同情の増強。
なお、そういった精神的な変化は人以外の物体に対しては意味が無いそうだ。
更に相手が魔女ならそれを拒絶されるという、使い方次第といった所か、癖の強い分野だ。

ξ゚听)ξ「そういうショボンは何が得意なのよ!」

(´・ω・`)「ん? 僕は何でもできるよ?
   あー、強いて言うなら一度に複数の強化を行うのが得意かな」

川 ゚ -゚)( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)「……」

一同呆気に取られた。
全て得意で複数の強化が得意とは……最強ではないか。

一時の静けさが出来た、その時だった。


20 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:08:32.21 ID:xf06olQV0

  バゥン

「!!」

大きな音が廊下いっぱいに広がった。
この拠点の扉が強引に破壊されたのだろう、隠れもせずに堂々とした足音が響く。

魔女が攻めて来たのだ、この場の誰もがそれを察知し、息を呑んだ。

(´・ω・`)(やれやれ、ようやくか)

(;゚∀゚)「マジかよ……休みの日が少しくらい欲しいな……」

川 ゚ -゚)「連日連戦だな、しかし……相手は一人か?」

クーの言葉を聞き改めて足音を伺うと、確かに一人では無さそうだ。
とはいえ多くも無い、おそらく二人か。
しかし魔女が二人、そう考えると恐怖以外の何でもなかった。

何の構えもしていない、この状況でまさか相手が二人で来ようとは……。

ξ;゚听)ξ「複数……もしかして流石兄弟!?」


21 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:10:16.81 ID:xf06olQV0
( ^ω^)「お、何なんだおそいつらは」

ξ;゚听)ξ「魔女界きっての最強コンビといわれた兄弟で、チームワークが抜群……。
   二人揃った時はどんな強者でも打ちのめしたといわれる……。
   まさか、いやでももう他には考えられない……」

ツンがブルブルと震えた。
ツンの話からすると兄弟が揃った強さは魔女界最強だという事だ。

(´・ω・`)(なるほどね、骨はありそうだ。
   相手にするこちらは骨が折れそうだな……)

廊下を音を立てて歩いてやってくる、この堂々さは油断もしくは相手への圧迫感のどちらかだ。
ここで相手にうまく圧迫感を与えれれば良いが、逆に自分達が油断してしまってはいけない。
いや、むしろ自分たちを追い詰めることで自身の気持ちを引き締めているのかもしれない。

そして部屋の扉に手を掛けると、そのまま開いた。

(´< _` )「時に兄者、まったく薄暗い場所だと思わぬか?」

( ´_ゝ`)「同感だな弟者よ、設備がきちんと整っていないのかね?」

威風堂々とでもいおうか、その二人の登場は威厳あった。
空気が一気に変わった。

何気ないやり取り、それにすら恐怖を感じた。


22 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:12:17.37 ID:xf06olQV0
(´<_` )「おや、魔女が二人とは予想以上に面倒そうだな」

( ´_ゝ`)「いやいや弟者よ、片方はツンじゃないか。
   我々を裏切ったようだがあれ程度が相手では魔女の頭数に入らんさ」

(´< _` )「流石だな兄者、だが油断はするなよ?」

( ´_ゝ`)「弟者よ当然だ」

こちらを無視しているのか、二人の世界といった感じで勝手に話をしている。
本当に強いのかと少々疑念が沸いた。

( ´_ゝ`)「ちなみにツン、オレたちは言ったな?
   コイツらを殺せずに帰ってきたらオマエを殺すと」

ξ;゚听)ξ「……」

(´< _` )「お前もコイツらと一緒に消えてもらうこととするよ」

ツンがこちらにいることにも心を乱さず、その上で問答無用にツンも殺す事と宣言した。
仲間意識は無いのだろうか?
それがさも当然のような顔をする流石兄弟に、ブーンは怒りを覚えた。


23 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:14:23.27 ID:xf06olQV0
( ´_ゝ`)「さて、それでもう一人の魔女さん、アナタは誰かね?」

(´・ω・`)「失礼な人達だ、先にそちらが名乗るのが礼儀でしょう?」

( ´_ゝ`)「怒られちった」

(´< _` )「当然だな、オレは弟者、こちらが兄者だ」

(´・ω・`)「初めまして、裏切り者のショボンとは僕のことです」

(´< _` )「……魔女界の裏切り者、名士ショボン。……本当なのか?」

( ´_ゝ`)「しかし討伐隊データにこんなヤツはいなかった、魔女の裏切り者である可能性は
        極めて高いんじゃないか?
        魔女として飛び抜けた力を持ち、それを使って人間と供に魔女を狩った男」

(´・ω・`)「やれやれ、ツンちゃんもだけど初対面の相手に酷い言われようだよ、
        僕はただ独立独歩なだけさ。
        もっとも魔女である事は、魔女同士なら一目瞭然だろう?」

そう言うショボンに、弟者が歩み寄った。

(´< _` )「伝説の最強の男か……興味はあるな。ぜひ潰したい」

( ´_ゝ`)「残りはオレが相手しようか」

弟者と呼ばれた方はショボンの目の前に立った。
そして兄者と呼ばれた方はブーン・ドクオ・クー・ジョルジュ、そしてツンの五人の前に立つ。


24 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/25(土) 22:16:38.21 ID:xf06olQV0
( ´_ゝ`)「ああ、そういえば……お土産があるのだが、ドクオというのは?」

('A`)「俺だが……何だ?」

( ´_ゝ`)「オマエか、一番面白く無さそうなヤツだな……ほらよ」

そう言って兄者が風呂敷を投げる。
ゴロゴロと転がって……風呂敷からその生首が覗けた。
白く向き出た目、血みどろで髪の毛は乱れきってい、今にも虫が集りそうだった。


それでも分かった。


川;゚ -゚)「……!!」

ξ;゚听)ξ「ひっ!」

(;゚∀゚)「うおぉ!」

(;^ω^)「おおおおおっ!」


ドクオはそれでも、それが自分の母親の生首だと分かった。


('A`)「……」


84 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:07:13.11 ID:LtT0gyy20
第十六話『閑古鳥』


風呂敷からこぼれる、ドクオの……彼の母親の頭。
暗い部屋が、それを一層不気味に照らしていた。

( ´_ゝ`)「プッ、はははは!」

(´< _` )「どうした、感動の再会だろ?」

('A`)「……」

笑ってみせる流石兄弟に、怒りを感じたのはもちろんドクオ以外だ。
クーとジョルジュは銃を構え、ツンとブーンは今にも殴りかかりそうな勢いだ。

( ´_ゝ`)「母子家庭だってな、これでオマエ一人だけになったわけだ」

(´< _` )「どうだ、今の気持ちはどんな気持ちだ?」

('A`)「……それで?」

(;´_ゝ`)「は?」

ドクオは表情をやはり変えない。
それどころか相手に尋ねる始末だ。


86 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:09:15.00 ID:LtT0gyy20
('A`)「それで……何がしたいんだ?」

(;´_ゝ`)「あ、いや……悲しむとか……」

('A`)「悲しんだ所でカーチャンは帰ってくるのか?
   そもそも何を悲しむ必要があるのか分からない、死人が悲しんでいるなんて誰が決めた?
   悲しんでさも自分がいい人間だと言いたいのか?」

(;´_ゝ`)「オマエは……オマエは悔しく無いのか?
   親だろ、女手一つでオマエをずっと育ててきてくれた母親だろう!」

('A`)「勝手なことして勝手に悔しがれ悲しがれ……うるさいな。
   お前に殺されたか、老衰したか、結果は同じ『死』だ。
   ニュースで報道される女の死もカーチャンの死も同じだろ、おまえはニュースで人が死ぬたび悔しくて叫ぶのか?」

(#゚∀゚)「ドクオ!」

   パシッ

そんなドクオをジョルジュが殴った。
あまりに勝手であまりに冷め切った男に。

ドクオの考えは間違っているとは言えない、それでもそのように
『本気で』思える男に、ジョルジュは我慢ならなかった。
口先だけでない、実際の親の死を目前に平気で持論をつらつらと振りかざす男に。


87 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:11:22.02 ID:LtT0gyy20
(#゚∀゚)「……今はいい、ただこの戦いが終わったらちょっと話し付き合え」

('A`)「……別にいいですよ」

ドクオは不貞腐れたように返事する。
とりあえず今はそれどころじゃない、二人は落ち着くと相手に向かった。



(´< _` )「兄者も時に落ち着け」

(;´_ゝ`)「そうだな、すまん」

ツンが討伐隊に居ようと心乱さなかった魔女だが、相当納得がいかなかったのだろうか、
ドクオに対して心を乱した。
せっかくの演出が無駄になったが、いずれ殺すのだ、そこにこだわる必要なんてまったく無い。

(´・ω・`)「それじゃ、僕たちもはじめようか」

(´< _` )「希代の裏切り者さん、お手柔らかに頼むよ」

( ´_ゝ`)「ああ、そうだいずれ殺すんだ……それでは自分はちゃんとコイツらを相手しておこうか」

ショボンと弟者が互いに戦いの構えをした。
兄者もそれに合わせて残る五人の前に、パソコン片手に構えた。

89 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:13:32.87 ID:LtT0gyy20

弟者は自分の肉体や精神面を強化すると、すぐにもショボンに向かっていく。

(´< _` )「まずは……肩慣らしだぜ?」

正面から向かってくる拳。
正直すぎる攻撃だ、相手の狙いは何だろうと、ショボンの脳裏に色々な考えが過る。


単調な攻撃で自分の油断を狙うのか、それとも避けた直後が狙いか?
はたまたこうやって考えて、集中力が散漫になったところが狙いかも知れない。


手を正面でクロスすると、ショボンは弟者の攻撃をブロックした。

(´・ω・`)「……っ、これはキツイな……!!」

そこにぶつかる拳、その衝撃に体全体が痺れる。
地面は当然のアスファルトだが、踏ん張る足が埋まりそうになるほど強烈な衝撃。

魔女の戦いらしくない、スローな世界だったがその規模は類を見ないほどだった。
この一撃で、互いの魔女としての技量が良く分かる。

双方とも、かなりの使い手だ。


91 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:15:55.36 ID:LtT0gyy20
(´< _` )「ほう、流石だな」

(´・ω・`)「そちらこそ正直な攻撃だね、逆に不意を突かれたよ」

(´< _` )「いやいや、これからが本領だぜ?」

弟者が今度は左手を構えた。

(´・ω・`)(左利きか?)

そう思った瞬間、弟者の左腕の筋肉は膨張し、キュッと絞れた。

直後の激しいスピードのパンチが、ショボンのクロスした腕に放たれた。

そのままショボンの腕を押しのけ、むりやり腹へと鉄槌を加える。

(;´・ω・`)「がはっ……!」

(´< _` )「言い忘れたが、オレは自分の強化が得意で兄者は物体の強化が得意だ。
   裏切り者の魔女さん、アンタが相手しているのは俺だが、俺一人だと思っちゃ大間違いだぜ?」

倒れるショボンの頭に向かって、弟者は肘を落とした。

ショボンの頭蓋は地面に激突してアスファルトを砕く。
下半身は力なく飛び跳ねた。


94 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:18:04.32 ID:LtT0gyy20
(´< _` )「兄者の強化とオレの強化、そしてオレは無敵なんだ」

威風堂々と仁王立ちし、公言する弟者。

倒れるショボンの頭を鷲掴みすると、自分の正面に持ち上げる。
だらんと力無く垂れる体がそのダメージを物語っていた。

(´< _` )「ちゃんと頭の堅さを強化したよな?
   これで終わりなんてことは無いよな?」

(;´・ω・`)「……まったく、滅茶苦茶な相手だね」

そう言いながらショボンは相手の顔面に向かって拳を突き立てたが、弟者の体が少し揺れただけだった。
兀然として引き下がる事も無い。

堅いなんてものではない。
一般人が鎧を纏った相手に攻撃するようなものだ、衝撃はあっても相手へのダメージは皆無だ。

(´<_` )「満足か?」

ショボンの頭を掴んだまま弟者は振りかぶると、壁に向かって投げつけた。

(´< _` )「兄者!」

( ´_ゝ`)(´< _` )『衝撃の増強』×2


95 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:20:27.95 ID:LtT0gyy20
ショボンが壁に激突すると、まるで花火のようにそのコンクリート壁が爆発した。
無数にあたりかまわず飛び散る幾破片、その場は一気に騒然となった。

そこここで鳴り響く万雷の衝撃音が作り出す恐怖。
ワケが分からない。
まるでこの世界が現実で無いような、地に足が着いていないような衝撃に駆られた。

ショボンが、あの他の魔女を諸共せずに打ち倒してきたショボンがこうも弄ばれている。
大きな欠片が直撃せず無傷で済んだブーンだが、たかが人間に何が出来るのかと自問しながら只管に脅えた。


破片が散り終わると、そこにはごっそりと抉れた、洞穴のような衝撃跡が残った。
洞穴にショボンはいない。

(´< _` )「!!」

(´・ω・`)「まったく、はちゃめちゃだね」

散乱された破片と供にその場からショボンは移動し、天井に吸い付くように着地していた。
そのまま天井を蹴って加速し、弟者にカカト落としを直撃させる。

鉛同士が激突したような鈍い音、振動する空気、弟者の足元のコンクリートが一気に砕けた。

魔女同士の戦いはそうだ、攻撃までは見えないような速さで展開されるために、
攻撃の直後は世界がスローに動くような錯覚に陥る。
コンクリートに亀裂が入り、地面から自然に離れて宙に浮く。
幻想的で否現実的なその世界、その世界に一般人は入り込めない。


96 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:22:37.75 ID:LtT0gyy20
カカト落としが直撃したのを確認すると、ショボンは一度距離を空ける。
弟者は自分の額に手を当てた。

(´< _` )「……血が出たか、そこまで痛くは無かったのだがな。
   ただ脳にずしりと来る攻撃だ」

そう言いながら笑いを一つも入れずにショボンに向いた。
ピリッと空気が変わった、重い。

(;´・ω・`)(これは本格的にまずいかもね……)

ショボンは両手を体の前で構えた。
どこから攻撃されても守れるよう、防御の体制に入った。

攻撃は……捨てた。


98 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:24:27.32 ID:LtT0gyy20


( ´_ゝ`)「さて、そろそろ俺らも始めようか。
   正直あちらの邪魔はしたくない、俺たちは俺たちでやるのが希望だが」

兄者は5人に向いた。
少なくともツンという魔女がいるのだと、兄者は油断せずに神経を張り詰めた。

来る。

誰もがそう感じた。

ξ;゚听)ξ「!!」

瞬間的にツンの前に表れた兄者。
やはり警戒しているのはツンだろうか、持っていたパソコンでその顔面目掛けて叩きにかかる。


ここでも大きな鈍い音が響いた。
兄者の攻撃を堂々と顔面で受けるツン、そのままパソコンにしがみ付いた。
痛そうにしながらも、大きなダメージではないようだ。

ξ#゚听)ξ「この……!!」

ツンは拳を相手の胴にぶつけたが、兄者は何食わぬ顔でフッと笑った。


102 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:26:38.77 ID:LtT0gyy20
( ´_ゝ`)「痒いわ」

ξ゚听)ξ「生意気ね」

ツンは両足を兄者の胴に置くと、衝撃をアップして蹴り飛ばした。
「蹴る」というよりは「押した」と言った方がいいのだろうか。

兄者は「おっと」と言って少しぐらついた程度の反応だ。
ツンは大きく距離をとった。

   パンッ

そこに響く乾いた銃声。

川 ゚ -゚)(捉えた……!)

無防備な、体勢を整えようとした兄者に、ツンが衝撃を増強したクーの銃弾が向かった。
これは避けられないだろう、万一無茶に避けようものならその隙を銃で追撃出来る。


103 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:28:51.52 ID:LtT0gyy20
兄者はそこでも焦る事無く、冷静に片手に持つパソコンを正面に掲げた。

   ガッ

銃弾はそのパソコンに当たると、明後日の方向へ飛んでいく。

そして兄者は体制をしっかりと持ち直すと、やれやれといった様子で
パンパンとパソコンを払う素振りを見せた。
ゆっくりと、感情を表さない目でクーを見る。

川;゚ -゚)「!!」

クーは驚き、恐怖に陥った。
増強したはずの銃弾が、こうも簡単に避けられたのだ。
『どうにかなる』と見出した希望が、いとも簡単に砕かれたのだから。

目に見えて震えるクーに、兄者は不敵な笑みを浮かべた。

( ´_ゝ`)「恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強」

川;゚ -゚)「うわあああああ!!」

(;゚∀゚)「クー!」

急いでジョルジュが寄るが、クーは座り込んでじりじりと兄者から後退するばかりだ。
口も、まぶたも、体全体が震えきっていた。
息のリズムもおかしい、喘息でも起こしたようなその表情に体。


105 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:30:53.14 ID:LtT0gyy20
( ゚∀゚)「いいぜ、兄者って言ったか、オレが相手してやる。
   ちなみに初めの魔女をやったのは俺だ、不足は無いだろう?」

ジョルジュは銃を2丁取り出すと、それぞれを両手に、トンファーのように逆手で構えた。
ジョルジュのその体制を見ると、兄者はフッと笑う。
その笑いは一般人が魔女に挑む事に対してだろうか?

( ゚∀゚)「ツン、補助頼むぜ?」

ξ;゚听)ξ「あ、うん……」

ツンもまさか一般人で魔女に挑むなどとは……
唖然としているがそれ所ではない、すぐにジョルジュの反射神経や銃の硬度などを高める。
しかし……大丈夫なのか、相手は魔女界でも名を轟かせたほどの手練だというのに。

ξ;゚听)ξ「私よりも相手の方が全然上だから、無茶しないでね」

( ゚∀゚)「おk」

ジョルジュはそう言って、眉毛をぴくぴくと動かした。
そしてツンを見る。

ξ;゚听)ξ(ああ、衝撃をアップする合図ね、はあk――)

そんなジョルジュに一瞬で詰め寄る兄者、ジョルジュは対応して銃を撃つ。
人間の動く速さには限度がある、兄者との差は銃を撃つことで上手く牽制するしかないのだ。


106 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:33:13.13 ID:LtT0gyy20
兄者は銃弾を避け、ジョルジュの懐にもぐりこんでアッパーを仕掛ける。
ジョルジュは両腕を重ねて銃身でそれを受けるが、そのまま押される。

(;゚∀゚)「うおおぉ!?」

そして宙に投げられた。
あまりに無防備なジョルジュに、兄者はにやりと笑った。

ジャンプして蹴りをくらわす兄者、ジョルジュはそれを受けるが踏ん張るものは無い。
そのまま勢いに任せて壁へぶつかるかと思ったその時。


( ゚∀゚)「死ね」


ジョルジュは攻撃をされながらも、兄者へ肘を突き出す。
逆手に構えた銃の口が、兄者に向いた。

(;´_ゝ`)「!!」

兄者も今は空中、身動きの取れない状況だ。
そしてジョルジュは器用にも小指でトリガーを引いた。


108 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:35:18.75 ID:LtT0gyy20

   パンッ


響く発砲音。
銃口から飛び出す銃弾。

全てがスローの世界だ、兄者は咄嗟に片手に持ったパソコンを盾にしようとする。


ジョルジュの狙いは的確だった。
心臓を突いてきている、攻撃をされて吹っ飛んでいる最中の発砲だというのにだ。


バカな、魔女がただの人間に殺されるというのか?

兄者は腕を、パソコンを自分の目の前に持ってくる。
空中は踏ん張りが利かず、自分の動きが遅い。


間に合え、間に合え、間に合え。


速く、速く、速く。


110 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:37:35.96 ID:LtT0gyy20
紙一重、兄者のパソコンは銃弾を止めた。


ただ守る事だけに躍起になった兄者は空中で体制を崩し、無茶苦茶な体勢で地面に落ちた。

ジョルジュも変な体制で壁に激突したが、ツンが体の堅さを強化してくれたお陰か
そこまで大きく痛む事は無い。
すぐさま立ち上がると落ちたばかりの兄者に銃を向けた。
4発一気に打ち込む。

(;´_ゝ`)(く!)

体制を整えてもいない兄者は、ジョルジュの方を確認する暇が無い、
銃弾がどこに飛んでくるのかわからない。
衝撃を強化してその場を去ろうとしたが、寸前に一発が足を貫通した。

(;´_ゝ`)(……んッ!!)

思わぬ痛みだったが何とか一気に移動をする。
しかし貫通した足のせいで踏ん張りが利かずに転げた。

その隙を逃さない、ジョルジュはさらに2発銃を放った。

兄者はまた慌ててそこから移動した、今度はしっかりと銃弾を避けた。
血が噴き出し痛む足に活を入れ、無理矢理踏ん張りを利かせてしっかりとジョルジュの方を向いてストップした。


114 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:40:06.96 ID:LtT0gyy20

(;´_ゝ`)「オマエ……」

( ゚∀゚)「どうしました、魔女さん?」

そう言って再びジョルジュは兄者に銃を向けた。
足を貫通させれたのは良かった、これで相手は大きな移動をするたび足に激痛が走るはずだ。
少なくとも無謀な衝撃増強からの素早い動きを制止できた筈だ。

魔女の何が厄介かというと、その移動力の高さが最も大きな点と言える。
攻守から牽制に至るまで、あらゆる場面で有効に使え人間との劇的な差を演出する。
それをある程度抑制できたジョルジュの功労は大きい。


( ´_ゝ`)「……なるほどな、オマエにだったらモナーがやられたのも納得がいく。
   ただ俺とモナーを同一視してもらっては困るがな。
   オマエはここで殺しておくべき存在だ、悪いが本気でいかせてもらう」

( ゚∀゚)「ああ、相手が魔女じゃないからって油断したら死ぬぜ?」

そう言いながらジョルジュは内心『死んだ』と思った。

今までの彼の二回の発砲は、あくまで相手の意標を付いた銃撃だったからこそ
どうにかなっただけだ。
正面から撃てば以前のように銃が暴発させられて終わりに決まっている。

『ジョルジュ自身』が見られていないような、『銃を撃つ動作』を
見られていないようなそんな隙が必要なんだ。
先も小指で撃つという相手にとって意外な動作だから増強されずに済んだだけだ。
こうも警戒された状況ではもう望めない。


117 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:42:19.61 ID:LtT0gyy20
ジョルジュはチラとクーの方を向いた。

( ゚∀゚)「……」

クーは若干恐怖をなぎ払っていた。
ジョルジュの頑張りに感化されたのだろう、そんな彼女に軽い笑いをしておいた。
彼女は何か言いたそうにしていたが、すぐにも顔を正面の兄者に戻した。


兄者は少しづつジョルジュに歩み寄る。
その圧迫感はただならない、ジョルジュは背中を伝う汗、頬を流れる汗にむず痒さを覚えた。

抵抗できない、抗えないもどかしさ。

同時にどこか爽々とした感があった、バカらしい。

兄者はゆっくりと歩いてジョルジュの正面に来た。
互いに何もしない、何も言わない。
手を伸ばせば届く、そんな近くでようやく兄者は口を開いた。

( ´_ゝ`)「どうした? 何もしないのか?」

(;゚∀゚)「油断の無い魔女相手に……何をしても無駄だろ?」


無力なんだ、そう。
彼は一人で魔女に抗うことなど到底できないことをよく知っていた。


118 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/26(日) 22:44:03.94 ID:LtT0gyy20
次の瞬間、兄者の手がジョルジュを貫いた。


短いジョルジュの悲鳴、直後に兄者のチョップがジョルジュの喉仏に強烈な一撃を与えた。


大きく開いた口、流れる血、ぐりんと黒い眼球は反転して白目を剥く。
ジョルジュはその場に倒れこんだ。


大量の血が流れた。
小さな灯りが照らす、生々しい血。


ジョルジュはピクピクと脈動し、そして……動かなくなった。


川;゚ -゚)「ジョ――」

唖然とその状況を見ることしかできなかった。
その誰よりも早く、誰よりも大きい声で彼女は叫んだ。

川;゚ -゚)「ジョルジューッ!!」

そんな彼女の最後の叫びは、彼の耳には届いていなかっただろう。


186 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 21:57:14.74 ID:OHfQQMSp0
第十七話『涙千万』


死に顔は安らか?
そんなバカな、死んだ人間の顔に表情などあるわけ無いだろう。
人間のために殺された牛や豚が笑うわけ無いだろう。


ジョルジュは何の反応もしない。


彼は死んだのだから。


泣くのは残された者だ。
表情をくちゃくちゃにするのは、生きている者だけだ。

クーは慟哭した。

今まで強がってきたのに、どんな時でも泣かないようにって、
女だからと言われないように、特別扱いされないようにって。
出来る限り悲しむことも喜ぶこともせず、冷腸冷淡を装ってきたというのに……
女性でもジョルジュと並べるようにって。

もうクールに振舞う必要なんてどこにも無かった。

涙を流し、ひたすらに叫んだ。
何も考えたくなくて、ただ叫ぶことでそれらを誤魔化したかったのだ。


187 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 21:59:11.11 ID:OHfQQMSp0
ξ;゚听)ξ「クーさん!」

ツンが大きな声で叫んでも、彼女は耳を塞いで叫び続けた。
現実の残酷さに目を背けたかったのだ。
現実からはどうやっても逃げる事が出来無いことくらい分かっている、
だからといって『今』を認めろというのか。

( ´_ゝ`)「はは、討伐対のメンバーたるものが随分と弱い心をしているもんだな」

ξ#゚听)ξ「兄者!」

( ´_ゝ`)「おや、本当のことを言ったまでだがな」

兄者を睨む目線を再びクーに戻し、ツンは駆け寄る。

ξ;゚听)ξ「クーさん! 辛いのはわかるけど、そんなでどうするのよ!」

川 ; -;)「……」

肩を揺すると、焦点の合わない目をツンへ向けた。
哀咽し、青い顔をしたクー。


189 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:01:07.22 ID:OHfQQMSp0
ツンは諦めずに声をかける。

ξ゚听)ξ「兄者をたおそ?
      そうじゃないと何も変わらない、ジョルジュさんだって
      何のために犠牲になったかわかんないじゃん!」

川 ; -;)「犠牲……なんだ、分かっている、分かっている。
       だが……分かっているのだが、納得できなくて……。
       今やるべきことは分かっているんだ、戦うべきなんだ。
       だけど……納得できなくて、辛くて……」

また涙が出た。
感情が高ぶる度に、また一粒と涙が流れ落ちる。
恥ずかしい話だ、今まで仲間が死ぬ瞬間に幾度と立ち会ってきたというのに、
好きな人が死ぬとこうも脆いのだから。

川 ; -;)「……辛いんだ」

ξ;゚听)ξ「クーさん……」

小さな明かりが、彼女の少量の涙を綺麗に照らす。
静かに項垂れるクーに、誰一人と良い言葉をかけれずにいた。


192 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:02:51.51 ID:OHfQQMSp0


(´・ω・`)(ジョルジュが……
        ツンがいるからどうにかなるかと思ったが、そうもいかないか……)

ショボンはチラともう一方の様子を窺うと、すぐに目線を弟者に戻す。
が、その一瞬の隙を弟者が逃す訳がない。

(;´・ω・`)(……いない!?)


直後の腹への鈍痛。

穴が空いたと見まごうばかりの強烈な一撃。
ショボンの腹に拳をつき立てた弟者はそれでも笑みを見せない。
確固たる精神力の強さも彼は兼ね揃えていた。

(´< _` )「……余所見とは、ずいぶん余裕があり過ぎないか?」

(;´・ω・`)「ぐっ……わるいね、自分以上の魔女に会うのは初めてで要領が掴めないんだ……」

(´< _` )「そうか」

すっとつき立てた拳を引くと、さらにもう一発顔面に突いた。
すぐにショボンも防ごうとしたが、それよりも速く弟者の拳はショボンの顔面にヒットした。

血を振り撒き、大きな弧を描いてショボンは吹っ飛ばされた。


193 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:04:37.71 ID:OHfQQMSp0
(´< _` )「まだ……わからないか? 死ぬ寸前、人生の最期を迎えているということが」

弟者は感情を込めないように、ゆっくりと言った。
心を乱すことだけはいけない、魔女の戦いにおいては初歩だ。

それでも……心など自身でそう簡単にコントロールできるものではない。
弟者はマイペース過ぎるショボンに対し、もどかしさを感じていた。
命乞いでもすればよっぽど『すぐに』殺しただろうのに。

(;メ´・ω・`)(心が動いてしまう、すぐに殺さない……どうやら相当僕は嫌われているみたいだね)

魔女が人間をすぐに殺さないには理由がある。
理由といってもそんな大したものではない、ただ恐怖を味あわせて殺したいだけだ。
魔女の受けた積年の恨みを、痛みや恐怖無く殺してチャラにする気など毛頭ない。

ショボンはボロボロの体に力を入れて立ち上がろうとするが、思うように力が入らない。
鼻血がポタポタと流れ落ちた。

(;メ´・ω・`)(鼻血どころじゃないのになぁ……多分鼻折れてるよ)

悪態つくと、すぐにも弟者と距離をとる。

(;メ´・ω・`)(できればこの上で更に、すぐには殺されないようにしないと……
         兄者の方の強化さえなくなればどうにかなるはずだ。
         命乞いしても……いや、むしろ殺してくれというくらいの方が逆に弄ばれるか?
         でもそんな度胸はないからね……、とりあえずしばらくはこのまま
         ある程度攻撃されていくのが一番だろうね)

ショボンは様様なことを考えながら、体の各部位を軽く叩いてみる。


195 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:06:17.65 ID:OHfQQMSp0
(;メ´・ω・`)「……っ」

(´< _` )「どうだ、そろそろ体は限界じゃないか?」

(;メ´・ω・`)「そうだね、随分痛みが増えてきたよ」

(メ´・ω・`)(やはり、打診している間は待ってくれるみたいだ。
         典型的な格闘好きに武士道だね、天晴れだよ。
         これをうまく利用して、少しずつでいいから時間を稼いでいかないと)

両手、首、胸から腰へ。
各部位を軽く叩くが、特に腰と肩が触れるだけで強烈な痛みを感じる。
ショボンはその顔を顰めた。

(´< _` )「そういえば……おまえに確認したいことがあった」

(メ´・ω・`)「なんだい? 答えれる事ならできる限り答えるよう努めるよ」

ゆっくりと返答しながら、ショボンはチャンスだと思った。
できる限りここで長く受け答えすれば時間が稼げる。

(´< _` )「お前は俺達魔女側の者を、何人倒した?」

(メ´・ω・`)「ああ、そのことか」


196 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:08:04.59 ID:OHfQQMSp0
ここでショボンは考え込む振りをして一拍おいた。
あからさまに長引かせすぎると、逆に相手を刺激しかねない。
慎重にゆっくりと言葉をつなげる。

(メ´・ω・`)「えっと……まず、一人目の魔女……名前はなんていったかなぁ」

(´< _` )「モナーだ」

(メ´・ω・`)「そうそう、モナーだったっけ、少し背の低めでのほほんとしていた男」

(´< _` )「ああ、それなら間違いない」

(メ´・ω・`)「そのモナーだけど、残念ながら彼を倒したのは僕じゃないんだ」

(´< _` )「?? 討伐隊に殺されたと聞いたが……
         つまり今兄者と戦っている人間たちに殺されたのか?」

(メ´・ω・`)「そういうこと」

弟者が驚いて、ばっと兄者のほうを見た。
明らかな隙が生まれたがショボンはそこを突くような真似はしない、
無駄なことを分かっているから。
間違って相手を刺激でもしてみろ、どんな惨事に発展するかは想像に難くない。

それよりもこれをクーと話をできる機会に発展させれれば、時間も稼げて一石二鳥だ。


198 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:09:47.69 ID:OHfQQMSp0
(´< _`;)「兄者、その中に一人、モナーを倒したやつがいる!」

人間が魔女を倒すなど異常な事態だ、弟者はとっさに兄者へ叫んだ。

( ´_ゝ`)「弟者よ、心配無用だ。そいつなら今しがた殺した奴だ」

(´< _` )「流石だな兄者」

ふぅと落ち着く弟者、そんな今をチャンスと見てショボンは声を出した。


(メ´・ω・`)「……おや、クーはどうしたんだい?」

ξ;゚听)ξ「ショボン……クーさんが……ジョルジュさんが死んじゃって……」

(メ´・ω・`)「そうかい」

いざ言葉をかける場面になると、今度は何を言っていいかわからなくなった。
ショボン自身頭の回転にはそれなりに自信を持っていただけに、そんな自分にひどく幻滅した。

しかし何とかクーを動かさないといけない。

ショボンほどの使い手になると、数手合わせただけで相手の力量が分かる、精神的な強さも含めて。
このままでは弟者に勝てないと、彼は悟っていた。
だからこそ彼以外のメンバーには兄者を殺さずとも、せめて弟者の強化をする
余裕が無い程度まで追い込んでもらわなければならない。

(メ´・ω・`)「クー」

ショボンが声をかけると、少し体が動いた。
どうやら声は聞こえているようだ、相槌は返してくれないが。


199 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:11:48.28 ID:OHfQQMSp0
(メ´・ω・`)「クー、ジョルジュも……そしてキミも、いつ死んでもおかしくない状況に身を置いてきた」

軽く声をかけるが、依然反応が無い。
いくらショボンでも分かってる、いつ死んでもおかしく無い『状況』と、
死んでしまった『現実』はまったく別物だという事くらい。
ただクーの立場を明確に諭してやる必要があった。

チラと弟者の方に目をやると、止めるでもなく傍観している。
やはりここで妨害するほど野暮な真似はしないようだ、
これ見よがしげにチャンスとしなくてはいけない。
ショボンは言葉を続ける。

(メ´・ω・`)「キミ達はいつ死んでもおかしくない、魔女の討伐隊という所に入った。
   ジョルジュは死んだ、魔女に殺された、立派な殉職だ。
   辛いのは分かるが、この場にいる者がそれでどうする?」

川 ; -;)「……」

(メ´・ω・`)「キツイ言い方になってすまない、それでも君が今するべきことは
         ジョルジュの死を弔う事か?
         違うだろう。ジョルジュが、キミがどうしてここにいる?
         どうしてジョルジュが死んだ? 分かるかい、今君がするべき事が」

クーは涙をふいたが、それでも吃逆をしながら無言だった。

弟者がため息をついたのを見るや、ショボンは再び焦る。
無理矢理にでも彼女を躍起させて、戦線に戻さねばいけない。


200 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:13:33.87 ID:OHfQQMSp0
(メ´・ω・`)「クー、返事が聞こえない」

川  - )「……」

(メ´・ω・`)「泣く事はいつでも出来る、戦うことは今しか出来ない。
         死んでは両方出来ない、弔う事すらも。
         考えるんだ、魔女から人間を庇護するという
         大きな使命をキミは背負っているんだ、
         今だけでも強気で戦ってもらわないと」


弟者が痺れを切らしたそうに、またため息を吐いた。
首を左右にコキコキと鳴らしている。

(メ´・ω・`)「すまない、キツイ言葉ばかりで君のことを思い遣れないダメな上司で。
   その上で、クー」

川  - )「……」

(メ´・ω・`)「いますべき事……分かるね?」
   『勇気の増強』

ラストチャンスだ。
頼む、お願いだから答えてくれ。
戦うと公言してくれ。


202 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:15:17.49 ID:OHfQQMSp0
川  - )「……魔女と、戦うことです……」

ショボンは安堵の息をついた。
状況はまったく好転していない、一方的に不利な状況は変わらない。
それでも……少なからず希望が見えたのだ。

(メ´・ω・`)「ツンちゃん」

ξ;゚听)ξ「あ、はい……」

(メ´・ω・`)「クーを、そちらを……任せるよ。これ以上の犠牲を出さないために」

こう言っておけば上司としての示しもつく。
何よりも少なからず消沈気味のあちらを鼓舞できた事だろう。
クーにつられて泣きそうだったツンも、頬を叩いて意気込んだ。

何とか想像通りに動かせ、ようやくショボンも弟者に向く。

(メ´・ω・`)「ごめんよ、待たせたね」


205 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:17:29.03 ID:OHfQQMSp0
(´< _` )「いやいや、随分と弁論に長けてるじゃないか。
   さすが魔女を裏切って人間の世界に堂々と紛れ込んだだけのことはある」

(メ´・ω・`)「失礼だね、本心をそのまま言葉に表しただけさ。
   本当にこれ以上の犠牲はご遠慮願いたいものだよ」

(´< _` )「安心しろ」

弟者はここで改めてショボンに構えた。
目付きも鋭くなる。
勝負を仕掛ける気だ。

(´< _` )「次はオマエだ、もう他人が死ぬのを見なくて済むからな」

(メ´・ω・`)「いやだねえ、自分が一番可愛いものなのにさ」

弟者の突き刺すような目線。
ピリピリっとその場の空気が凍る。

(メ´・ω・`)(いつ……来る?)


213 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/27(月) 22:21:57.87 ID:OHfQQMSp0
集中している時というのは、逆に心の『隙』は大きくなるものである。
普段であれば臨機応変に、柔軟に思考をめぐらせる事が出来るが、集中すると一つにばかり
意識がいってしまい他がおざなりとなる。
一つの物事に固執するあまり、その他の事象に集中し切れていないと気付かないのだ。

(;メ´・ω・`)(心の隙を、見つければもしかして……)

ショボンは唇を強く噛んだ。
威圧されて集中力が途切れそうな自分に、気圧されそうな自分に活を入れ続けた。





瞬間に踏み込む弟者――





ショボンの体は弾ける様に吹っ飛んだ。


3 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:50:14.98 ID:uSrYtDpF0
登場人物の紹介(第十八話)


討伐隊side

( ^ω^):ブーン
  ニートでピザ、あまりに堕落しすぎた生活のため、討伐隊へと引き抜かれる。

('A`):ドクオ
  ニートだが、らしからぬ思考を持つ異端児。ブーンとは親友。

(´・ω・`):ショボン
  討伐隊の長にして魔女、力も強く頼れるが、ギコと関係が……?

( ゚∀゚):ジョルジュ(逝去)
  気のいい討伐隊員、それでいて銃の腕から格闘技と極めて多彩多優。

川 ゚ -゚):クー
  討伐隊員で生真面目、銃の腕はピカ一だが不真面目を放っておけない面も。

ξ゚听)ξ:ツン
  魔女の力もまだ未熟な少女。魔女側から討伐隊へ。


4 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:51:56.74 ID:uSrYtDpF0
魔女side

( ´∀`):モナー(逝去)
  討伐隊に初めに倒された魔女、能力は強くなかったらしい。

( ^Д^):プギャー(逝去)
  ブーンが始めて出会った魔女、唯我独尊で動いていて他の魔女からも疎まれている。

( ´_ゝ`):兄者
(´< _`):弟者
  魔女界きっての最強兄弟。その力はギコやショボンをも凌ぐ。

(*゚ー゚):しぃ(逝去)
  他の魔女の事を気遣ってやれる女性魔女。

(,,゚Д゚):ギコ
  魔女側の大将的存在か、全体を指揮している。


5 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:53:39.10 ID:uSrYtDpF0
前回までのあらすじ(第十八話)


ブーンとドクオはニートで日々を自堕落に過ごしていたが、ひょんなことから討伐隊へと参加させられる。
運がいいのか悪いのか、その日に魔女と出会うこととなり、その異常な強さに唖然とするしかなかった……。

ショボンの活躍により魔女を半壊させる事に成功した討伐隊。
さらに行く先を失った魔女、ツンが討伐隊と供に行動し、とうとう戦いの終結が近付いたかに見えた。
そんな中、いよいよ魔女界でも最強と名高い流石兄弟が始動する。

討伐隊に現れた兄者に弟者、弟者はショボンと戦うが、
今まで相手の魔女を諸共しなかったショボンですらまったく歯が立たない。
そして兄者は残りの討伐隊と戦い、ジョルジュを仕留めた。
仲間の死に悲しみ暮れるクーだったが、ショボンの言葉により再び兄者と戦う事を決するのだった。


7 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:55:22.07 ID:uSrYtDpF0
第十八話『無関心』


クーは両手に銃を構え、まだ咽ているその顔をいつものように持ち直した。

川 ゚ -゚)(いつもなら……冷静で率直ないつもの私なら……)

体と心に鞭打って自戒すると、彼女は構えた。
ジョルジュが残したもの……彼女は二丁の銃を兄者に向ける。
彼女自身の体に刻まれた、彼を鑑みたスキルこそ彼が残してくれたものだ。

涙で滲んだ視界。
僅かに震える手……そう簡単に心が割り切れるわけなんて無い。

( ´_ゝ`)「震えているが……そんな中途半端な気持ちで俺と渡り合えるつもりか?」

川 ゚ -゚)「うるさい、私だって……いつまでも好きな人に頼っているばかりじゃないんだ!」

( ´_ゝ`)「OKOK、あまりヒートアップするなよ」

川 ゚ -゚)「……」

相手の言うとおりだ、改めて気持ちを落ち着けるよう努めた。


10 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:57:08.18 ID:uSrYtDpF0
( ´_ゝ`)「して女、銃で俺とやろうと言うからにはちゃんと考えがあるんだろうな?」

川 ゚ -゚)「敢えてそれを公言する必要も無いだろう」

( ´_ゝ`)「いいな……クールな女は好みだ」

川 ゚ -゚)「簡単に人を殺す男は、どう頑張っても好きになれそうに無い」

( ´_ゝ`)「実に残念だ」

直後二発の銃声。
しかし兄者はノートパソコンを盾に、一歩も動く必要が無かった。

カランと音を立てて落ちる銃弾。

( ´_ゝ`)「オマエは先ほどの男には数段劣るか?」

川 ゚ -゚)「ジョルジュは私の目標だから当然だ」

( ´_ゝ`)「そうか……楽しませてくれるかと期待したんだがな」

そう言う兄者に、クーは銃口を向けた。

川 ゚ -゚)「しかしそれは……私がお前に劣る理由には、何一つなっていない」


12 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 21:58:50.83 ID:uSrYtDpF0
しばらくの沈黙……クーはその引き金を中々ひこうとしない。
そう、相手に引く瞬間を悟られてはいけないんだ。
以前のように銃を暴発させられてはいけない、だからこそ
一発一発を慎重に撃たねばならない。

無言で向き合う二人、クーは一気に引き金を引いた。


今まで以上に大きく乾いた発砲音。

螺旋回転しながら銃弾は兄者へ一直線へ軌跡を作る。

(;´_ゝ`)「!!」

さっきまでとは比べ物にならない程のスピードで向かってくる銃弾。
思考が一瞬飛び、兄者は固まった。

人間は恐怖に対面すると筋肉が硬直し、思考も停止する。
その一瞬は魔女の唯一の隙と言ってもいい、人間が魔女に対抗する事の出来るその刹那。

(;´_ゝ`)(ツンか、どうやってタイミングを合わせた……くそッ!)

兄者は何とか体を反らして銃弾を避けるが、それをクーは逃さない。

再び銃を構えると軽くステップを踏み、更に銃声を響かせた。


14 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:00:52.77 ID:uSrYtDpF0
(;´_ゝ`)「……ッ!!」

ジョルジュの時と同じだ、銃弾を避けた瞬間を追撃する。
いくら魔女でも死角の物を見ることは出来ない、それを利用したのだ。

一際大きな音を響かせ、兄者は銃弾を避けて壁際へと移動していた。
ジョルジュに撃ち抜かれた片足が、やはり痛む。

銃弾は何に当たる事もなく、壁へと穴を空けた。

( ´_ゝ`)「……ツンか」

兄者の向いた方向にはクーとツンが。
『ツン程度』の魔女の力で銃の威力を強めてどうにかしようなどとは、実にくだらない。
しかしそれに兄者が引いてしまった事も事実だった。

壁を背にして、改めて相手を見る。
銃をこちらに構えるクーに睨みを利かせるツン、端で脅えるブーンに
感情の無い目線を自分に向けるドクオ。

男どもは……使い物にならないのか?
当然といえば当然、元ニートなのだから。


兄者は「引いた」事実を包み隠すように、余裕ある表情で口を開く。


15 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:02:53.17 ID:uSrYtDpF0
( ´_ゝ`)「クーとかいったか、それとツン……
        そしてそこのやる気無い男がドクオで、余りの一人はブーンか。
        オマエ達は参戦しないのか?」

(;^ω^)「僕かおっ?」

名指しにされ、ビクッと驚くブーン。
ジョルジュが死んだ時でさえまるで自分は関係ないかのようにずっと蹲っていた。
ドクオは至って表情を変えなかった、銃声が大きく響いた時に少し驚いたくらいか。

('A`)「オレは……はっきり言ってどうでもいい、この戦いは戦争みたいなもんだろ?
   オレらが勝とうとオマエ達が勝とうと関係ない、
   この戦いの首謀者達はここにはいないのだから。
   戦う理由やそいつらの考えは知りたいが、戦いたいとは思わないね」

( ´_ゝ`)「自分が死ぬのに……か?」

('A`)「どうせいつか寿命で死ぬんだ、死に方や死んだ日付けが変わろうと、死んだ先は一緒だ。
   一年長く生きたから、この戦いで勝って幸せになったから……
   そんな事は死んだ人間には無意味なんだよ」

演技かとも思ったが、それにしては淡々とし過ぎている。
感情の起伏の無い言葉……これが演技なんかで出来るわけが無い。
この男は本気でそう考えているのだ。


16 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:04:38.72 ID:uSrYtDpF0
兄者は焦りと戸惑いを隠しきれなかった。
そう、ドクオは自分の母親が殺されたと分かった時も眉一つ動かさずに『傍観者』でいた。
まさにテレビのニュースでも聞いているかのように、自分とは無縁の出来事として捕らえていた。

どうしてそんなことが出来るのだ。

ドクオという男は一体どういう神経で、どういう考えで『今この場』にいるのだ。

(;´_ゝ`)「オマエは、一体今までの戦いをどう考えて見ていたんだ?」

('A`)「今までか……
   少なくともジョルジュさんが死んだ時に、クーさんも死んだらどうだとは思ったな」

クーがキッと睨む。
やはり……演技なんかではない、クーという女性は隙だらけになりながらドクオを睨んでいた。
そして本気で怒りを感じているのが目に見えて分かった。

('A`)「どうせ死ぬのに、どうして悲しんでまで生きようとするのか、その神経が理解できない。
   楽しむ事は無意味な事だ、死んだら感情も無くなり、
   何も残らないのだから生きている一時の自己満足に過ぎない。
   ただ悲しむという行為はそれ以上に無意味だと思わないか?」

(;´_ゝ`)「……」

('A`)「人間の終着駅の『死』には悲しみも喜びも無い、唯一無二であり絶対の存在。
   終着駅までの道のりを長々と遠回りしているんだよ、
   そして悲しいこと苦しいことにオレらは遭遇しているだけなんだ。
   オレは無意味だから喜怒哀楽はしない、それだけだ」


19 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:06:20.82 ID:uSrYtDpF0

「無意味だから」。


それだけで感情を捨て去れるわけが無い、普通の人間なら絶対に口だけだ。

だが……ドクオは違った。
本気でそう思っているからこそ、感情が動かないんだ。
本気で無意味なものだと思っているから。


兄者の頬を汗が伝った。
理解できない、そういった思考は、魔女にとってはある種の恐怖だった。

(;´_ゝ`)「あ……だな、その……。
   ここでオレらに勝ったら……この戦いの目的が分かるかもしれんのだぞ?
   お前は知りたいと思わないのか、魔女と人間の戦いの背景を!?」

('A`)「ああ、戦う目的は知りたいと思うけど死んだら全てが無くなるって言っただろ。
   生きているから知りたいのであって死ぬなら死ぬでオレはそれを受け止める。
   生きている今の自己満足だ、分かるよな?
   あまり同じ事ばかりいうのは好きじゃないんだ」

魔女が相手だとうのに気圧される様子も無く、考えを流暢に紡ぐ。

この男が元ニートだというのか?
どんな神経をしているんだ、どうしてそんな風に考える事が出来るんだ。

ドクオという男の神経が理解できない。
この考え方が、鳥肌が立つほど気味が悪い。


20 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:08:12.62 ID:uSrYtDpF0
(;´_ゝ`)(落ち着け、落ち着け……)

兄者の心拍が上がっていく。
心臓の音が耳まで届く、大きく抑動する。

(;´_ゝ`)(焦っているのか? あんな人間風情たかだか一匹に、何を焦るんだ……。
   落ち着け、何も恐れる事は無い、恐れる必要は無い……。
   異端なだけだ、無表情を装うのが格好いいと思っているガキだ、相手にするな……)

( ^ω^)「ドクオ……僕は戦うお。何が出来るか分からないけど、戦うお」

(;´_ゝ`)(!!)

まるでそのドクオの言葉を聞いたことで決意を固めたといわんばかりにブーンが言う。
ドクオの話を聞いて理解していたのか?
彼が戦わない理由を聞いて、どうしてそれを発端として戦う気を出すんだ?

('A`)「ああ……そうしろ。ただ……死んでくれるなよ?」

( ^ω^)「イエスとは返し難い質問だお」

(;´_ゝ`)「……」


23 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:09:53.87 ID:uSrYtDpF0
その二人のやり取りに周りは絶句した。
ドクオの否定に感化されたブーン、そしてドクオの「死ぬな」発言……
この二人の頭では会話できているのだろう。


コイツらは何なんだ?


ただのニートじゃないのか?


(;´_ゝ`)「オマエはどうなんだ? 死ぬんだぞ、怖くないのか!?」

( ^ω^)「怖いお、でもこのままいても変わらないお、結局は死ぬだけだお」

(;´_ゝ`)「そうだ、お前だけ生かしてやる。どうだ、それでも戦うか?」

何を言っているんだろうと兄者は自問した。
どうして生かす必要があるんだ、どうして交換条件を持ち出す必要があるんだ。
人間が相手に増えるくらい何も怖く無いだろう。

何が自分を脅えさせるんだ。

( ^ω^)「それでも結果は一緒だお、戦うお」

そのブーンの言葉に、ドクオはふっと笑った。


27 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:11:35.30 ID:uSrYtDpF0
兄者の困惑は止まらない。
不可解な二人に向かって、大声をあげた。

(;´_ゝ`)「オマエ達ふざけるな! なにが死ぬのが怖くないだ、ふざけるな!」

(´< _` )「兄者、時に落ち着け」

隣で戦っている弟者の呼び声で、はっと平生を取り戻す兄者。
息を軽く乱している。

(;´_ゝ`)「……スマンスマン、少しどうにかしていたようだ」

(´< _` )「兄者、魔女が心を乱すとはかえないな。
   こちらも伝説の魔女ことショボン相手は中々骨が折れる、兄者の補助なくしては危険なんだ」

(;´_ゝ`)「分かっているとも、スマンかった」

ξ;゚听)ξ(……兄者が心を乱している、これはチャンス?)

ツンは思う、兄者を倒すなら今だ、今しか無い。
正当な勝負では到底及ばないだろうが、兄者が焦りを見せている今ならどうにかなるかもしれない。

そう、これまでのやり取りを見ていても冷静な弟者に対し、兄者は心を乱し易く思う。


29 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:13:25.56 ID:uSrYtDpF0
ξ;゚听)ξ(私たちが勝たないと……)

弟者の方を軽く見ると、ボロボロに倒れるショボンの姿があった。
それでもヨロヨロと立ち上がる。

額や唇からは血を流し、体中は痣だらけ。
それでも余裕そうな表情は変化を見せない。

(メ´・ω・`)「やれやれ……僕のことは無視かい?」

(´< _` )「ああ悪い、油断していた」

魔女同士の戦いは油断したほうが負ける、分かっていながら弟者はそう皮肉を言った。
実際その目を見れば「油断」などしていないことは一目瞭然でもあった。

(メ´・ω・`)「それにしてもキミ達みたいな強い魔女がまだ残っていたなんてね……」

(´< _` )「褒めの言葉として受け取っておこう」

(メ´・ω・`)「ああ」

ショボンは腰を低く構えた。

(メ´・ω・`)「これは僕も、いよいよもって本気を出さないとね。
         君を倒すため……悪いけど使わせてもらうよ」


32 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:15:41.30 ID:uSrYtDpF0
(´< _` )「?」

(メ´・ω・`)「キミ達は魔女が何たるかをしっかりと理解していないだろう?
         魔女の力、そして……それを最大限に使用する事」

(´< _` )「……興味深いな」

(メ´・ω・`)「ああ、魔女の力……それを君はなんだと思っている?
         神か、天使か、はたまた悪魔か、妖精か?」

ショボンは弟者に向かって少し感情的に話を入れた。
初めて……感情を見せ始めた。

(メ´・ω・`)「それを僕は開拓して、そして未踏の境地へ踏み込んだんだ……
         この戦いで僕が勝つならこれを冥土の土産に、君が勝つならば
         死ぬ前に僕の持っているものを全て授けよう。
         少し話を聞いてくれるかい? 君ほどの魔女なら理解できるはずだ」

(´< _` )「……いいだろう」

弟者とて興味ないわけではない、魔女という存在の在処。
ショボンが伝説とまで謳われる所以はそこにあるのだろうか。

静かに耳を傾けた。


40 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:24:36.05 ID:uSrYtDpF0
第十九話『天王山』


川 ゚ -゚)「ドクオ」

('A`)「何ですか?」

川 ゚ -゚)「この戦いが終わったら話に付き合え」

ジョルジュとまったく同じ事を言われ辟易しながらも、ドクオは「へい」と返事した。
激高したい気持ちを押さえつけ、自律してクーは兄者へ向く。

その隣にはツンが、その更に逆側にはブーンが立った。

(;´_ゝ`)「とりあえず、戦いだ。まずコイツらを倒して……」

兄者はまだドクオという男の偏向な考えにばかり意識がいっていた。
戦いに頭を転換しようと試みるも、『転換すること』に徹しすぎて思うように集中できない。
またとないチャンスだ。


42 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:26:53.89 ID:uSrYtDpF0
ξ;゚听)ξ(絶対に……今、決めないと。
   でもどうやれば……集中力の欠如は増幅できないし……そうか)
   『興味の増強』

( ´_ゝ`)「まずは……戦いだな、これを片付けなくては」

言って頭を戦いに戻そうとするが、やはりそうはいかない。
心中ではドクオとブーンをどうやって悲壮な顔にしてやろうかでいっぱいいっぱいだった。

( ´_ゝ`)(しかしドクオという男だけでは……
    ブーンという男も残し、いざ死に直面させてやりたい……
    その自信が崩れ非情に満ちた顔を拝んでやりたい……
    そうだな、最後に一言くらい残させてやってもいいな……)

ξ;゚听)ξ(よし、私が心を動かした事に気付いていない……油断もしている……!)

ここで表情を変えてはいけない、あくまでツン達は劣勢な立場なのだ。
笑みでも見せようものなら相手に勘繰られる。
相手の余裕を失くすような行為があってはならない。

兄者が常に余裕をみせている状況を作らなくては。


45 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:28:56.09 ID:uSrYtDpF0
川 ゚ -゚)「ブーン、これを」

クーはブーンに銃を一丁渡す。
ジョルジュのように、クーも何丁か常備しているようだ。

川 ゚ -゚)「引き金を引く瞬間だけは悟られるな、暴発させられる」

(;^ω^)「把握しましたお……」

そう言いながら、ブーンはその銃の重さと冷たさに背筋が凍った。
人を殺せる道具。

引き金に指をかけると、更に腕が震える。
引き金を引く行為、そこにはもう一つ『心の引き金』が存在した。
『心の引き金』を引かない限り、銃の引き金も引く事は出来ない。

川 ゚ -゚)「ブーン……引けるか?」

(;^ω^)「大丈夫ですお」

そう言った彼の頬を幾滴もの汗が伝い、震えは依然止まない。
おそらく……今のブーンに引き金を引くことは出来ないだろう。


47 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:30:59.23 ID:uSrYtDpF0
川 ゚ -゚)(私が……ジョルジュ……)

彼の名前を出すと柄にも無く涙腺が緩んだ。
駄目だ、今は戦いに集中しなくては。

川 ゚ -゚)(私が、ジョルジュの代わりにヤツを倒さなくては……!)

二丁の銃を兄者に構えて静止する。

兄者も自分の前にノートパソコンを持ってきて構える。

( ´_ゝ`)(いつ来る……?)

瞬間発砲される。
当然のようにツンの力で増強され、銃弾は通常を遥かに超えるスピードを持っていた。

が、距離をとって構えていた兄者には十分見切れた。
ノートパソコンで的確に守る。

ブーンは戦いに参加するどころか、その跳弾にすら脅える始末。
やはり訓練された人間と同じようにはいかない、当然だが。

( ´_ゝ`)(それにしても、俺に気付かれないように、
   どうやってあの女とツンは発砲のタイミングを合わせている……?
   それが分からない以上、むやみやたらに近付けんな)


50 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:33:05.28 ID:uSrYtDpF0
発砲のタイミングさえ掴めれば、もしくはツンによる強化さえなければ
銃など然程恐れる必要も無い。
ただ強化される可能性があるなら、接近し過ぎては避けきれない可能性がある。
それはジョルジュとの戦いで明らかだった。

何よりも兄者はその足を一発貫通させられてる、足に負担の大きいダッシュを無駄に使いたくはなかった。

( ´_ゝ`)(……)

一歩だけ近づく。
しかしクーは銃口を向けた構えのまま動かない。

と、また突然の発砲。
しかしこれも的確に兄者は防御した。

そして一歩近づく。

( ´_ゝ`)「……」

発砲音、しかしこれも兄者は守った。

( ´_ゝ`)(……足か、発砲前に僅かに足先で二回地面を叩く。
   それが発砲のタイミングを知らせる合図だな)

兄者がまた一歩近づくと同時、クーの足が二回地面を叩いた。

発砲と同時、兄者は地面を蹴って大きく移動する。


51 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:35:16.22 ID:uSrYtDpF0
川;゚ -゚)「……!?」

( ´_ゝ`)(よし、完全にタイミングを掴んだ!)

発砲したのは一発、クーが右手に持っている銃だ。
つまり今の段階で、クーの右手に持つ銃は撃鉄を引かなければ次の弾を打てない。
しかし彼女は二丁の銃を構えているのだ、この時点ではまだ左手に持つ銃が発砲できる状態にある。

つまり、左手からのもう一発を避けられれば相手は銃を使えない状態になる。
そうしてしまえば、後は煮るなり焼くなり自由だ。


川;゚ -゚)「くッ!」

クーの右手側に素早く回った兄者に、左手の銃口を向ける。
兄者は構わずクーの方へ向かって駆けて来た。

同時、クーの足が合図の仕草を見せた。


地面を叩く、一回……二回……


( ´_ゝ`)(ここだ!)

タイミングを完全に読んだ兄者は、そこで一気に跳躍した。


55 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:37:19.98 ID:uSrYtDpF0
そのままの勢いでクーへ向かっていくが……

(;´_ゝ`)「!!」

川 ゚ -゚)「残念だな」

クーは銃弾を発射しなかった。
まだ発砲準備状態にある左手の拳銃を、空中で無防備な兄者に向けた。

(;´_ゝ`)(そうか、足先での合図はフェイク、実際は別の合図で
   タイミングを合わせていた……!
   まんまとオレははまったわけか!?)

そう、クーとツンとの合図は指で引き金を軽く二回叩くこと。
わざと彼女は足先でもタイミングを取り、見事兄者はそれに騙されてしまった。

川 ゚ -゚)「捉えた」

クーの構える銃口に対し、自ら向かっていく兄者。
空中では為す術も無い、的は次第に大きくなっていく。


60 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:39:23.93 ID:uSrYtDpF0
(;´_ゝ`)(これは……仕方ないな)

迷っている暇は無い、兄者はすぐにも口を開いた。

(#´_ゝ`)「あああああ――――ッ!!」

川;゚ -゚)「!!」

強烈な『音』が辺り一帯に広がった。
広い室内とはいえ、小さな出入り口が二つのこの空間では恐ろしいほど反響する。

咄嗟にクーは発砲したが、耳へチクリと痛みを感じ狙いがずれてしまう。
その弾道を見守る事をする余裕も無い、魔女の力で増幅されただろう音はクーを蝕む。

僅かだった刺さるような痛みはすぐに脳まで達し、強烈で鋭い痛みに変わる。
思わず顔を背けた。

川;゚ -゚)「くあああぁぁ!!」

むず痒い、手の届かない耳の中で痛みは反響し、次に平衡感覚が狂い出す。

彼女は無残にその場に倒れた。


62 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:41:27.91 ID:uSrYtDpF0
川;゚ -゚)「くあ、ああッ!」

耳に指を突っ込むと、生温かい感触があった。
慌てて取り出すと、その指には赤い血がヌットリと付着していた。

一気に重くなる頭、痛烈さに神経がどうにかなりそうになった。
ぐったりと倒れこむ。
力が入らない、なす術なく頭を地面に押し付けた。

川;゚ -゚)「あぁ……あ、ああ……」

歪曲する地面、体全体が震える。
思考能力なんて無い、自分はどうなってしまうんだろうかと身体に任せるばかりだ。


63 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:43:38.56 ID:uSrYtDpF0
(´< _`;)「兄者!?」

(;´_ゝ`)「ああ、大丈夫だ弟者よ。心配かけてスマンな」

(´< _` )「一瞬強化が無くなって死んだかと思ったぞ、気をつけてくれ」

(;´_ゝ`)「おk、悪い悪い」

そう言いながら撃たれた腕を押さえて舌打ちする兄者。
致死には至らないが、血はどんどんと抜けていく。
顔を顰めた。

(;´_ゝ`)(腕に当たるとはな……運良く掠っただけからまだ良かった、そこまで痛むわけでも無い)

掠ったと表現したが、実際は肘の上を僅かに貫通している。
『そこまで痛まない』と言っても当然相応の痛みは感じるに決まっている。

( ´_ゝ`)(人間が……やってくれるな)

片足に片腕、兄者が直接の戦闘を得意としなくとも、
魔女が人間相手にこうもしてやられるとは思ってもいなかった。
兄者が得意とするのは『物体の外面的変化』だ、これで弟者の肉体を強化もできるし
パソコンの硬度を遥かに高めることだってできる。

そしてもう一つ得意なもの、『無機物の内面的変化』、つまり衝撃などの増強だ。
今回もそれにより自分の発した「声」を増強、そしてクーの鼓膜に異常な振動を……
三半規管系へ衝撃を与えた。
接近戦を得意としない兄者の、魔女ならではの遠距離攻撃。


67 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:45:42.16 ID:uSrYtDpF0


(メ´・ω・`)「……いやぁ驚く咆哮だったね、まだ頭がガンガンするよ。
   それで、どこまで話をしたかな?」

(´< _` )「魔女の力の定義についてだ」

(メ´・ω・`)「そうそう、それで、今までの僕の発言に一つ矛盾があったんだが分かるかな?
   そここそが僕の発見した、魔女の力を最大限に解放する方法のヒントなんだけど」

(´< _` )「いままで……ちょっと待ってくれよ?」

弟者はうーんと考え出す。

(メ´・ω・`)「繰り返すよ、魔女はマイナス要素の強化は出来ない、
         同時に『軽い』と認識した物を重くも出来ない。
         何となく見えてこないかい、魔女の矛盾した要素が……」

(´< _` )「そうだな、何となくは……上手く表現できないが」

(メ´・ω・`)「いいよ、それじゃ説明を続けるよ?
   ここで僕が死ぬなら、この考えを後世へ引き継いでもらわなくては死んでも死に切れないからね」


68 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:47:53.55 ID:uSrYtDpF0
( ´_ゝ`)「さて、やってくれたな……」

兄者は倒れこむクーに近づくと、足を上げて踵をその手に落とした。
衝撃を強めたか、鈍い音がして肉がグチャグチャになり、血が飛び散る。

川;゚ -゚)「ああああぁぁッ!」

自分の声がまるで自分の声でないようにくぐもって聞こえた。
同時に恐ろしいまでの耳内部への激痛、自身の叫び声からきた衝撃に失神しそうになる。

川;゚ -゚)「あかっ、あ、あぁ……ッ!!」

( ´_ゝ`)「これで、銃は撃てないな。さて、もう片方の手も……」

ξ゚听)ξ「させない――」

更にもう片方の手を踏みつけようとする兄者を止めようと駆けるツン、
しかしそれを狙っていたといわんばかりに兄者はツンに向かった。
無防備にやって来た彼女は、いとも簡単に取り押さえられる。

ツンの腕を後ろで固めると、そのまま地面に押さえつける。
そしてその頭を地面へと押し当てた。


74 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:49:56.40 ID:uSrYtDpF0
( ´_ゝ`)「面白いくらい望み通りの行動をとってくれたもんだ……これでオマエは、何も見えない。
   発砲のタイミングも、仲間が移動する姿さえも」

ξ;゚听)ξ「くうぅ……!」

ツンを取り押さえたことで、魔女に関する心配事が無くなった。
発砲のタイミングが分からなければ、その場所が把握できなければ銃を強化することなど到底できない。
仲間の場所も、状況も的確に掴めない以上、それらの強化もままならないはずだ。


そんなツンを助けようと、クーが潰されていない手を覚束ないながらにも動かして銃を握った。
銃を兄者に向け、引き金を引いた。

    バゥンッ

川;゚ -゚)「あああぁ!!」

ξ;゚听)ξ「クーさん!?」

暴発する銃、また無残にクーは伏せた。
爆発音がまだ耳に轟き反響している。
頭が痛い、体を動かすだけで耳の中をナイフで抉られる様な痛さがあった。


76 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:52:00.02 ID:uSrYtDpF0
それでも彼女はまだ諦めず、懐から予備の拳銃をまさぐるが、

( ´_ゝ`)「動くな、それ以上動くなら……こいつの顔を潰すぞ?」

川;゚ -゚)「!!」

兄者にそう言われると動きを止め、その場に倒れたままになった。
頭痛は依然止まない、動きを止めるとなお強く頭を締め付けられるように感じる。
平衡感覚の殆ど無い体、頬を地面に着きながらの無様な姿で成す術を失った。

ξ;゚听)ξ「クーさん、私は構わないから!」

( ´_ゝ`)「考えても見ろ、魔女の強化無い銃弾ならばオレは簡単に避けられる。
   そう、ツンの頭を潰してからでもな」

川;゚ -゚)「……くッ!」

何も出来ない、魔女に対して無力な人間。
更に『死ぬ』・『無力』という2つのワードがジョルジュを連想させ、また感情が押し寄せてくる。

これ以上誰も死んで欲しく無いのに。
ここで撃とうと撃たまいと、どうせ死んでしまうだろうのに。

どうしろと言うんだ、撃つべきなのか?
そんな事出来ない。
撃ってツンが殺されたら……まるで自分が殺したみたいじゃないか。


78 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:54:04.33 ID:uSrYtDpF0
川;゚ -゚)(無力か……くそッ!)

悔しくて悔しくて悔しくて仕方なかった。
むざむざ死ぬのを待ち続けるしか無いのか。

( ´_ゝ`)「――で、そこの男は何を聞いていた?」

兄者の視線の先には、銃口を向けるブーンがいた。
やはり手は震えているが、しっかりと構えている。

(#^ω^)「ツンを……放すお!」

ξ;゚听)ξ(ブーン!?)

( ´_ゝ`)「断る」

考える必要もなく、ブーンの言葉に返答する。

ブーンの手の震えは次第に大きくなっていく。

(#^ω^)「撃つお」

( ´_ゝ`)「無駄だといっただろう、ましてや魔女の援助もなしに何が出来る、ニート君」

(#^ω^)「……」


80 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:56:08.01 ID:uSrYtDpF0
そんな直後だった、突然ブーンが落ち着いたかのように体の震えを止めた。
大きく深呼吸し、銃を構えなおす。

(#^ω^)「撃つお」

( ´_ゝ`)「撃ってみろ、ツンを殺した上で避けてやるさ」

ブーンの本気の眼つき、兄者の挑発するような眼つき。

ξ;゚听)ξ(ブーン……!)

ツンは怖くて、ブーンが撃ったら自分は殺されるんだ、それが分かっているから……怖くて。
クーへは自分に構わず撃てと言い放ったが、それはどこかで撃たないと分かっていたから言えた言葉だろう。 当然だ、誰しも死にたくなど無いに決まっている。


ブーンの決意に満ちた「撃つお」という言葉に恐怖した。


彼は……本気で撃つ気だ。


83 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 22:58:14.19 ID:uSrYtDpF0
( ´_ゝ`)「避けるまでも無いか、その銃を暴発させてやろう。
   どれだけ自分が無力か分かるだろう、そして死にいくツンを見取るがいいさ」

(#^ω^)「……」

挑発し続ける兄者に、ブーンは何も返さない。

そしてゆっくりと、もう一度口を開いた。



(#^ω^)「ツンを、放すお」



( ´_ゝ`)「断る」



ブーンの指に力が入り、引き金が引かれた。
同時に兄者は火薬による爆発力を増強し、一帯に再び大きな音が炸裂した。




84 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 23:00:17.63 ID:uSrYtDpF0


兄者の咆哮が一体に轟いた。

兄者がクーの片手を踏みにじり、ツンを取り押さえた。

クーの持っている銃がパンッと暴発した。

そして兄者の言葉、クーへの抑圧。

兄者に銃を構えるブーン。


ショボンは傍目でそれらを確認すると、説明を続ける口を一旦止めた。

(メ´・ω・`)「もう少し詳しく話をしたかったけど、そろそろあちらも決着のようだし……
         この余談も結論を話しようか」

(´< _` )「そうだな、魔女の本当の力とやら……教えてもらおうか」

弟者は満足げな顔をしていた。
ここまで話を聞いて、ショボンの話がどれだけ価値があるものか分かったのだろう。
そしていよいよその結論に達そうというのだ、胸が期待で躍り出しそうだった。

(メ´・ω・`)「うん、それだけどね……」

ブーンが兄者に向かって口を開いた、「撃つお」、と。
ショボンもそれに合わせるかのように言葉を繋げた。


(メ´・ω・`)「やあ、バーボンハウスへようこそ」


91 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/28(火) 23:02:22.86 ID:uSrYtDpF0
(´< _`;)「!?」

何が起こったか分からないといった様子で、弟者はうろたえたが構わずショボンは続ける。

(メ´・ω・`)「僕の詭弁に付き合ってくれてありがとう、でも『また』なんだ、すまない」

(´< _`;)「ちょっと待て、一体どういうこと……ッ!」

(メ´・ω・`)「謝って許してもらおうとは思っていない、
         それでも君はこの話を聞いた時言葉では言い表せない
         『ときめき』みたいなものを感じてくれたと思う」

弟者の顔色がみるみる変わっていく。
高沸、騙された事により自尊心を著しく傷つけられたのだろう、口元がヒクヒクと引き攣っている。



(メ´・ω・`)「それじゃ、注文を聞こうか」
(#^ω^)「ツンを、放すお」



(´< _`#)「殺す」
( ´_ゝ`)「断る」



弟者が地面を一気に蹴り去り、ショボンへと向かった。
拳が顔面を直撃し、皮肉なほど爽快な音が響き渡った。


147 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:02:26.67 ID:wfNok9gr0
二十話『紅楼夢』


相手の拳が顔面にヒットし、骨格の変形する生々しい音、顎節のずれる音が直に響いた。
首顎が強烈に動かされ、脳が瞬間的にシェイクされる。
視界は一瞬でブラックアウトした。

攻撃されてから壁に飛ばされるまで、まるで宇宙遊泳しているようだった。
「痛い」と知覚する余裕も無い、その割に異常なほど長く時間を感じる。
走馬灯が流れるのはこういう時なのだろう、皮肉にもそんなくだらない事を考えただけで終わった。

壁に肩から直撃した瞬間に、遂に痛みを感じた。
肩、首、そしてスローモーションになった世界で痛みの信号が体を走り抜けていく。
壁が崩れた、その破片一つ一つを感じられるほど敏感に衝撃を感じた。



……死んでいない、それが救いか。



男は目眩を覚えながらも、瓦礫をどけて起き上がった。


150 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:04:43.27 ID:wfNok9gr0

(´< _`;メ)「オマエ、……何が……」

クラクラとし、立ち上がってすぐに再び腰を下ろす。
あれだけ瞬間的に脳が振られたのだ、今しばらく回復までは時間がかかる。

先刻の攻撃は何があったんだ、まるで脳信号が体に行き渡っていないような、
そんな無防備でどうしようもない瞬間に攻撃をされた。

(メ´・ω・`)「残念だったね、僕の渾身の一撃……
         しっかりと味わってもらえたようで嬉しい限りだよ」

拳を振りぬいた恰好で彼は答えた。
今、ここで完璧にショボンは優勢に立った。





ブーンが引き金を引くと、火薬は本来からは考えられないほどの爆発を起こした。
ブーンとてそのあまりの威力に、銃を手放して尻餅をつく。
腕が痺れ、それは体全体に伝わって脳天に雷が落ちたような衝撃が走った。


152 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:06:50.22 ID:wfNok9gr0

そして……血を流して死んだ魔女が一体。


(  _ゝ )「……!!」


言葉を発する事も無かった。
ツンを押さえ付けていた腕が放れ……兄者は倒れた。
当たり所が悪かった、偶然とはいえ目のすぐ下を打ち抜かれ、絶命した。

ブーンの手から離れた銃は、その形を留めたまま宙を舞い、乾いた音と供に地面に落ちた。




兄者の体はもう動かない、即死だ。

(;^ω^)「お……お……」

ブーンは喜んでいいのか悲しむべきなのかが分からず、ただ唖然としていた。
相手を『殺した』という真実、葛藤。

川;゚ -゚)(ブーン、撃ったか……)


154 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:08:58.81 ID:wfNok9gr0
殺せるとも思っていなかった。
銃が爆発する、もしくは相手が避けるのを承知で撃ったのに……そんないい訳ばかりが出てくる。

どうして殺したんだと、どうして殺せたんだと。

(;^ω^)「お、つ、ツン……!」

考えをすべて排除し、とりあえずツンに近寄る。
ツンもどことなく信じられないという表情を浮かべているが、現実をすぐに受け止めた。

ξ゚听)ξ「ブーン、ありがとう」

(;^ω^)「お……」

お礼を言われるのも何か違う気がして、ブーンは返答に詰まった。
そんな彼を、更に後ろからクーが評する。

川 ゚ -゚)「ああ、助かった。ありがとう」

勝ったんだ。
自分たちは魔女相手に勝利したんだ。


155 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:11:04.96 ID:wfNok9gr0


(´< _`;メ)「バカな……兄者、どうして……」

弟者はワナワナと震え、現実を受け止められずにいた。

どうして、何が原因で。
どうしてあの兄者が。

(メ´・ω・`)「兄者は、ブーンの撃った銃の爆発威力を増強させた、それは分かるかい?」

ショボンが言っても弟者は反応しない。
ヤレヤレといった様子でショボンは続けた。

(メ´・ω・`)「ブーンが銃を撃った時、僕はブーンの勇気も増強させていた」

(´< _`;メ)「!!」

(メ´・ω・`)「そして兄者が銃の爆発を強めた瞬間、同時に僕は銃やネジの硬度から摩擦力を高めた。
   更に兄者の油断や驚きを強めた」

ξ゚听)ξ「ちなみに私も兄者の油断を増強させたわよ。
   銃は見えないけど、私を抑えつけている兄者は知覚できるからね」

完全に油断しきった兄者へ、暴発する事無く兆速で跳んでくる弾丸。
様々な事が脳裏を過ぎった事だろう、しかし油断しきっていた彼が
避けるという選択肢に辿り付くには時間が無さ過ぎた。

そして為す術なく銃弾は兄者を貫通したのだ。


158 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:13:10.16 ID:wfNok9gr0
(メ´・ω・`)「そして同時に僕はキミの油断や驚きも増強させていた。
   (油断をより強めるために、怒りや悔しさという感情の類もね)
   兄者が死んで突然増強が無くなり困惑するキミを、僕が返り討ちにしたわけだ。
   肉体強化、衝撃強化……めいっぱい強めたつもりだよ?」

語り終えると、弟者はようやくショボンの方を向いた。
カタカタと歯を鳴らしながら喋る。

(´< _`;メ)「そんな事が……一度にそこまで複数の……バカな……」

(メ´・ω・`)「ああ、ちなみに僕の反射神経や集中力なんかも当然強めていたよ?
   信じる信じないは勝手だ、ただこれが結果だよ」

逝去した兄者、拳の直撃を受けてボロボロの弟者。

(メ´・ω・`)「悪いね、一度に複数の強化を行うのは得意分野なんだ」

(´< _`;メ)「だからって……そんな……」

弟者も魔女の中ではかなりの使い手だ。
それでも一度に増強できる数など、せいぜい五つを超える程度が限界だろう。

ショボンは一度に……十をも軽く超える数の強化をやってのけたのだ。


162 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:15:27.36 ID:wfNok9gr0
(メ´・ω・`)(それにしても、あの一撃で倒れてくれないなんてね……タフな相手だ)

優勢に立ったとはいえ、ショボンにとっても限界は近かった。
幾度と受けた痛烈な攻撃、その防御のためにずっと体や集中力は強化し続けていた。

そして先の一撃は、本当に全身全霊を込めた一発だった。
相手がある程度防御をしても倒せると思っていたが……甘く見ていたようだ。

(メ´・ω・`)「さてと……とりあえず、こちらも勝負を決めようか」

出来る限り余裕あるように見せ、構えるショボン。
戸惑いながらも、舌打ちをして弟者も構えた。

(メ´・ω・`)「……いくよ?」

(´< _`;メ)「くっ……」

弟者のすぐ前に移動するショボン。
そのまま弟者に蹴りをするが、相手も黙っていない。

すっと避けると拳を返してくる。

(メ´・ω・`)(……くっ、やはり素でもかなり強い……!!)

弟者の攻撃を何とか守ると、一旦退がる。


163 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:17:34.24 ID:wfNok9gr0
ショボンの移動スピード、攻撃、そして同じように弟者のスピードや攻撃。
それらに今までの力強さは無かった。

それでも双方供に突出した強さを持っていたが。

(メ´・ω・`)(持久戦になれば互いに辛い……が、持久戦にならざるをえないね。
   それにしてもここまで来てこの強化具合とは……敵ながら天晴れだね)

(´< _`;メ)(兄者の支援が無いとはいえ、俺とタイマンが張れるとは……
   やはり相当だな、この男。
   何よりタイマンならいいが、相手にはツンという要素もある。
   ……分が悪いといわざるえないな)

弟者は構えを崩すと、チラと部屋の扉の位置を確認する。

(´< _` メ)「ショボンとやら……この借りはいつか返す、兄者の分も」

(メ´・ω・`)「やれやれ、兄者の件については間接的にしか係わってないはずだけどね」

(´< _` メ)「ツン、オマエも同罪だぜ?」

ξ;゚听)ξ「……」

弟者は軽く目配りすると、すぐにも地面を強く蹴って出口から逃げ去る。


164 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:19:39.95 ID:wfNok9gr0
ξ;゚听)ξ「弟者……ッ! ショボン、追わなくていいの!?」

叫ぶツンに対し、ショボンはやれやれとその場に座り込んだ。
胡坐をかくと、ようやくといった様子で大きく息を吐く。

(メ´・ω・`)「勘弁して頂きたいね、とても現状のタイマンじゃ勝てる気がしないよ……」

ξ;゚听)ξ「アンタ……意外に弱気なのね」

(メ´・ω・`)「彼が強いだけだよ」

ともあれ戦いは終わったんだ、ツンもその場にペタンと座り込む。
ブーンも一気に気が抜けたか、ごろんと寝転んだ。
クーは寝たままだ、ドクオは相変わらず何を考えているか分からない顔でその光景を眺めていた。


長い戦いは……勝利で終わった。


169 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:22:09.70 ID:wfNok9gr0


体の節々が痛む、いくつもの箇所から血はかなり流れ出ている。
それでも一歩一歩、力を入れてビルとビルを飛び跳ねる。

いつの間にか雨は止んでいて天気は曇りだった、黒い空からは月も覗けない。

(´< _`;メ)(兄者……くそッ!!)

弟者は悔しさでいっぱいだった。
負け知らずと言われ、常に兄弟で勝利を分かち合ってきたというのに……。

自分がまんまと相手に乗せられ、その所為で兄者は死んだ。
そして自分はまざまざと逃げ帰ってきているのだ、情けない。


ポツポツと再び雨が降り始めた頃、弟者は廃ビルの前に到着した。
中に入ると薄暗い、電灯は一つも点いていなかった。

(´< _` メ)「……ギコ、どこにいるんだ?」

声を張り上げる。
イライラしているのが声からも明らかだった。


174 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:24:22.94 ID:wfNok9gr0
(´< _`#メ)「ギコ、おいギコ!」

イライラが募るばかりだ、呼んでも一向に反応が無い。

(´< _`#メ)「いい加減にしろ、おいギ――」


直後、腹が一気に暖かくなった。
熱い……違う、これは痛みだ。


(´< _`;メ)「あああああ、おま、ギコ……ッ!!」

目を見開いて後ろのギコを睨みつける。
彼の片手は弟者の腹を貫通していた。

(´< _`;メ)「あか、カッ!!」

喉を血が逆流し、口から僅かに赤色が飛び出す。
そのために声を張り上げることができない、苦しいのに、痛いのに。

(´< _`;メ)「ガパッ、パハヒュ、パッ!!」

うがいをしているように口からは赤い泡が飛び出し続ける。
声が出ない、体が冷えていくのが自分でも分かった。
痺れ、麻痺していく。


177 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/29(水) 22:26:35.54 ID:wfNok9gr0

(´・ω・`)『戦っていた時に間違いなく言っていたよ、彼らは討伐隊を倒した後僕達をも裏切る気だ』

ギコは感情を持たないかのように、ただ弟者を睨みつけていた。
命からがら助けを求めるその男を。

(´< _`;メ)「ギ……パッ、かぱ!」

(´・ω・`)『だから倒そうと努めたが……弟者が逃げたんだ、その処理は悪いけど頼んでいいかい?』

(´< _`;メ)「たす……、ギパファッ!!」

助けてくれと朦朧とした眼つきで哀願する弟者に向け、ようやくギコは口を開いた。

(#゚Д゚)「裏切るつもりだったとは……なめられたもんだ」

(´< _`;メ)「!? なんのkパヒャッ!!」

弟者の頭を掴むと、釈明の余地も与えることもせず、一気に地面へと押しつぶした。
魔女はもう壊滅状態だ。

(#゚Д゚)「惜別の情も沸かないな。いいさ、元よりオレはショボンだけしか信じていない……」

そう吐き捨て、弟者の亡骸を憤懣の限り踏み潰した。
外は何時の間にか大雨になっていた。


259 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 21:56:36.29 ID:UZpa6Eo00
第二十一話『無慈悲』
第二十二話『自尊心』


流石兄弟との戦いの翌日、討伐対もようやくとなる休息となった。

クーは兄者に踏み潰された片手が複雑骨折しており、ギプスでがんじ搦め状態となっていた。
耳にも布を宛がっており、痛々しい姿ではあったが特に生涯尾を引くような傷はなかったそうだ。
それでも完治には数ヶ月を要するらしいが。

ショボンも体にかなりの傷や骨折があり、治癒力を強化しても
到底回復は追いつかず、ずっと安静にしている。
ほかの3人は特に大きな怪我は無く、体の節々が痛む程度で済んだ。


ξ゚听)ξ『残る魔女は、ギコ一人……
       私も彼の強さをちゃんとは知らないけど、随一の使い手と聞いているわ』


終わりが来ないとさえ思えた魔女との戦いは、とうとう終局を迎えようとしていた。
しかし、それでもまだ魔女ともう一度戦わなくてはならない。
そう、最後の一人に全滅させられる可能性も大いに残っているのだ。

束の間の休息、それぞれ様々な思いを交錯させた。


また、ジョルジュは朝一で家族の元に運ばれていった。
さよならを最後に言い、クーは再び泣いた。


261 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 21:58:40.74 ID:UZpa6Eo00


そして今は、ブーンとドクオの部屋にツンとクーが集まった。
しかしその空気は決して軽いものでなく、しんと静まり返っていた。

('A`)「……それで、話は何ですか?」

ふてぶてしい態度をとるドクオに、クーはまた感情的になりそうになる。
兄者と戦った時にドクオとクーが交わした、戦いが終わったら話しようという約束。

川 ゚ -゚)「お前は、死ぬことをどう考えているんだ?」

('A`)「率直な質問ですね」

相変わらず面倒そうにしか話しようとしない。
ドクオはここでクーと話することに価値を感じていなかった。
興味が湧かなかったのだ。

('A`)「死ぬことは、自分にはどういうことかわかりません」

面倒臭そうにこう言うものだから、いい加減にしろと言いたくもなってくる。

('A`)「次はこっちから質問いいですか?」

川 ゚ -゚)「……ああ」

('A`)「クーさんは、ジョルジュさんが死んだ時にどうして死ななかったんですか?」


262 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:00:45.74 ID:UZpa6Eo00
川 ゚ -゚)「……」

どうして死ななかったか。

どうしてと聞かれても困る、死にたいと思わなかったからだ。
そもそも死のうとすら思わなかった。

川 ゚ -゚)「……お前がアバウトに答えるのなら私もそうさせてもらう。
   死のうと思わなかったからだ」

('A`)「どうして死のうと思わなかったんですか?」

川 ゚ -゚)「どうして……」

一体ドクオは何が聞きたいんだと、クーは困惑した。
どうしてと言われても思わなかったから思わなかったんだ。
結果論ではあるが、それ以外に何の理由があるというのだ。


265 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:02:49.74 ID:UZpa6Eo00
川 ゚ -゚)「逆に、どうしてそこで死のうと思うんだ?」

('A`)「言いませんでしたっけ? 生きる意味がわからないからです」

川 ゚ -゚)「お前と同じように誰もが考えれると思うな、私は死のうとは思わなかった。
   それでもジョルジュが死んだことは……すごく悲しくて、まだ……」

('A`)「誰も自分が当然だなんて思っていません、だから理由を聞いてるんじゃないですか。
   自分には分からないんです、どうして悲しんでまで生きようとするのかが。
   どうして人が死んで悲しく思うのかが」

一転して真面目に意見をぶつけてくるドクオだったが、
その言葉の真意はクーには伝わりきらなかった。
クーにはドクオの考えが、思考が彼女にはまったく理解できなかった。

川 ゚ -゚)「もう……その人に会えないから……だから悲しいんだ」

('A`)「いずれ人は死にます、それが早いか遅いかだけです。
   もしかして人間が生きていることが当然だと思っていませんか?
   人間が生きるという事は、もしかすると可笑しい事かもしれないんですよ?」

クーの頭の整理がつかないうちに、ドクオはどんどんと話を進める。


267 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:05:00.91 ID:UZpa6Eo00
('A`)「人間は死んだ形こそが本来の形かもしれないんです。
   死んで解脱するという考えもあるでしょうし、そう思いませんか?
   そもそももう会えなくて悲しいなんて、ずいぶん身勝手な意見だと思いますが」

川 ゚ -゚)「身勝手だと?」

('A`)「自殺した人間の家族が泣いているのを見ても思うんです、どうして悲しむんだって。
   自殺はその人間が望んでした事です、なのにその考えも尊重せずに『何で自殺したんだ』なんて、
   自分の考えの押し付けで泣いているだけじゃないですか」

川 ゚ -゚)「しかしジョルジュは私たちの代わりに……」

('A`)「ジョルジュさんが選んだ方法が正しいと思うなら何を悲しむ必要があるんですか?
   十歩引いて『ありがとう』が正しいんじゃないですか?」

川;゚ -゚)「……」

クーはとうとう言い返せなくなった。
ドクオはそんなクーに向かってまだまだ無慈悲な言葉を繋げる。


270 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:07:09.78 ID:UZpa6Eo00
('A`)「あなたたちのために犠牲になったジョルジュさんに向かって、何を尊んで泣くんですか?
   そして質問を返すようですが、『死ぬ』とは何なんですか?
   それも分からないのに何を勝手に悲しんでいるんですかあなたは?」

川  - )「……」

クーは再び涙腺が緩むのを感じた。
どうして、何で悲しんではいけないんだろう。
なぜ愛する人が死んだというのに悲しんではいけないのだろう。

('A`)「ジョルジュさんが死んだのと自殺は何が違うのですか、双方とも望んだ死だったのでは?
   自殺が自分のために望んで死んだのならば、あなた達のために望んで死んだことも
   ほとんど同じではないですか?
   愛する人が死んで悲しみながら行き続ける人間よりも、それなら愛する人に死なれて
   後を追う様に死ぬ人間の気持ちの方が良く分かる」

川#゚ -゚)「それでも、ジョルジュが死んだのは私たちを守ってだ!
   その私たちが生きて何が悪い、生きなければジョルジュは何を残したことになるんだ!!」

('A`)「人が何かを残して死ぬ……? どうして?」

本気で分からないという顔をするドクオに、クーは再び言葉が詰まった。


274 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:09:14.76 ID:UZpa6Eo00
('A`)「何を残す必要があるんだ?」

川 ゚ -゚)「例えばだ、子孫のために財産や土地を残して、子孫が幸せになるように……」

('A`)「子孫が幸せになったらどうなるんだ?」

川 ゚ -゚)「その……嬉しいんだ」

('A`)「嬉しい? 喜んで死ねるって事か?」

川 ゚ -゚)「喜んで死ねるわけじゃない、それでも子孫のために
     何かできたっていう喜びは少なからずあるだろう!」 ('A`)「死んだ人間がか? 
   死んだら嬉しさも悲しさもないのに何を求めて何を残そうなんて思っているんだ?
   偉人が死んだあと自分の名前が歴史に残って嬉しいと思っているというのか?
   思わない、思えないだろ、それはもう死んでいるから」

再びドクオはクーの意見を聞くことなく、饒舌になる。


276 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:11:18.52 ID:UZpa6Eo00
('A`)「名を残して死にたいという人間も同じだ、名を残しても自分が死んでいるのに
    どういう意味があるというんだ。
   名を残せたから嬉しい? 名を残せなかったから悔しい?
   そんなこと感じれるわけ無いだろう、死んだ人間が思うわけ無いだろう?」

川;゚ -゚)「……」

('A`)「そもそもオレのカーチャンについてでも、家族と他人を同一視しない事が分からない。
   血が繋がってるだけで、自分ではない他の人間だ。
   相手の考えが分かるわけでもない、所詮は他人なんだ」

つらつらと言葉を並べ、ふと気づくとクーは黙ってひたすら俯いていた。
気が削がれたと言わんばかりにドクオは頭を掻くと、最後にこう言った。

('A`)「仮にクーさんの言うとおり死んだ人が何かを残すとして、
    あなたに涙を残していったんなら相当価値のない死ですよね」

(;^ω^)「ドクオッ!!」

ξ#゚听)ξ「アンタ、言いすぎよ!!」

ツンとブーンの声を気に留めることなく、興醒めしたドクオは部屋を出て行く。
クーは終始俯いたままだった……。


279 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:13:21.77 ID:UZpa6Eo00
ξ#゚听)ξ「何なのよ、アイツさ、クーさんの気も知らないで!」

( ^ω^)「……ドクオは本気でああ思っているんだお。
   本気で悲しむことや死なないことを不思議に思っているんだお」

ξ#゚听)ξ「ブーン、どうしてあんなのと友達でいるわけ」

ツンがそう藪から棒に言うと、ブーンは口調を強めて言い返した。

(#^ω^)「あんなのじゃないお、ドクオは僕の敬愛する人間なんだお!!」

ξ;゚听)ξ「……あ、ごめん……」

あまりの剣幕に思わずツンが謝ると、ブーンは慌てて取り繕った。

(;^ω^)「おっおっ、こっちこそゴメンだお、いきなり大きな声を出して……」

ξ゚听)ξ「ううん、私こそ気が立ってて、何も考えずに言い過ぎて……。
   それで、ブーンは……どうしてドクオと一緒にいるの? 
   尊敬するってどういうこと?」

( ^ω^)「……僕ととドクオが出会ったのは、高校2年の頃だお」

ブーンはドクオと出会った当時を懐古した。
彼と出会った事が良かったか悪かったかは今でも分からない。

ただ……二人が出会った今の状態において、彼はブーンが尊敬する唯一の人間となり得たのだ……。


286 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:15:39.72 ID:UZpa6Eo00


ブーンとドクオは同じ地区に住んでいたが、学校は別だった。

さらに年少期、活発で愛嬌あるブーンに比べドクオは無愛想で挨拶すらもしないほどだった。

まったく接点のなかった二人、この二人が出会うのはしばらく後の話になる。


ブーンは小学校から進学校へと進み、周りの環境の甲斐もあってか
典型的な秀才として育っていく。
テストでは100点は当然だったし、その上で祝日休日は友達とよく遊んだ。
健康で真面目な子供のステレオタイプだった。


288 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:17:43.66 ID:UZpa6Eo00
一方ドクオはつとにその異常性を発揮していた。
小学生らしからぬ探究心と興味の旺盛さで周りから隔離されていく。

小学校1年、「1+1=2」を教えられると同時に、彼はこんな質問をした。

「どうしてブドウとリンゴを足したら2になるんですか? ブドウは1つなんですか?」
「ブドウの房は? どうしてリンゴは1なんですか」
「りんご1つを切ったら2つになりませんか?」
「1ってなんですか? どうしたら1って数えれるんですか?」

漢字を教えられたら、その都度由来を聞いた。

理科を教えられる度に詳しくそれらの反応や生態について聞いた。
小学校のころから彼は原子や分子といった話をされていたのだ。
もっとも理解できていたかどうかは別の話となるが。


291 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:19:40.57 ID:UZpa6Eo00
そして学年が上がるにつれ、教師からも疎ましく扱われだす。
質問をしても何も答えてくれない、調べろと言われる。

この時から早くもドクオは他人に頼るという行為を拒否し、他人を嫌うようになる。
人に聞く事はせずに、納得するまで様々な事を調べ尽くすようになった。



ブーンとドクオ、二人とも成績は優秀だった。
違いがあるならばそれは『天才』か『秀才』か、それだけだろう。


293 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:21:44.44 ID:UZpa6Eo00
中学、秀才であったブーンは推薦で県内きっての進学校に入学した。

相変わらず授業態度は真面目で、そのくせ家に帰ってからの宿題や予習を欠かさずにおこなった。
そして休みの日はやっぱり友達と活発に遊び、友好関係も上々だった。

周りもブーンに負けず劣らず優秀で、ブーンのグループは学校の中でも常に上位を占めた。
全国模試でも幾度と上位に割り込んだことがある。


決してブーンは勉強を楽しいとは思わなかったが、嫌だと思うこともなかった。

知識を身に付けるのは好きだったし、数学などはパズルのイメージだった。
彼自身の性格が勉学に向いていたのだろう。


滞りなく勉強を積み重ね、高校も県内トップの名門へと入学した。


295 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:23:48.28 ID:UZpa6Eo00
一方天才は母子家庭が故、近場の町立中学校へ入学した。
社交性や授業態度は悪かったが成績は良かったのだ、よりレベルが高い
私立にも行けたが彼自身にそんな気持ちもなかった。


そして彼はやはり一人となり、いじめの対象となる。


この時からだろう、彼の『興味』が転移していったのは。

『感情』や『生死』について興味が湧いたのは。


まず彼はどうして苛めるのかということを考え出した。
相手より優位に立って自己満足に耽りたいだけか、
もしかすると苛めるという行為は生理的なものかもしれない。
動物だって苛めや格付けを行う、これは生き物の無様な本能じゃないのだろうか。


次にどうして苛められて悔しいかを考える。
痛いから、ストレスがたまるから、だったらどうして痛いとストレスが溜まるのか、
ストレスが溜まるとどうして悔しいのか。
冷静になると、自分は一体何に悔しがっているのだろうか、
苛めは悔しいと勝手に思い込んでいるだけではないか。

前述の『生き物の本能』と併せて考え出すと、苛める側が惨めに見え出した。

本能に従うただの野生動物……なのか。
そう考え出すと、苛められてもまったく悔しくなく、
むしろ苛められることで分析調査が進む事に気付いた。
彼は苛められた環境ゆえ、感情を露にする事の
無価値で単細胞な様に気付き、感情を失った。


300 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:25:53.15 ID:UZpa6Eo00
この時、ちょうど彼の母親方の祖父が亡くなる。
彼が感情を無くしたその時……あまりにタイミングが悪すぎた。

通夜、涙を流す血族に社交辞令をする知り合い、お経を唱えるお坊さん。


『死んだ人間』のために何をやっているのだろうと、一人傍観者でいた。


周りから見ればまだ幼くて感情が豊かでないとしか思えないのだろう。
子供ならではの、一事的な『死』への興味だとしか思えないのだろう。
彼はそれ以上に突飛な存在だった。

無意味な涙、無意味なお経。
祖父の亡骸に最期だからと話し掛ける人間など、本当に何がしたいのかわからない。
どうして『知人の死』でここまで感慨に浸るのに、ニュースでの『死』に無頓着なのかと疑問は増すばかりだった。


彼は周りの人間の勝手さと哀れさに嫌気が差し、高校に進学することはなかった。


301 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:28:00.40 ID:UZpa6Eo00

高校、ブーンは周りとの荒波に飲み込まれていく。
レベルの高い周り、常に勉強し、常に競いたがる。

休日も思うように遊べない、なのに学内順位も思うように伸びない。
人生において初めての挫折、しかしそれに打ちひしがれる暇もない。


今まで以上に頑張っているのに落ちていくばかりの成績に辟易としだした。


40人のクラスで、ブーンの成績はいつしか38番となっていた。
そう、誰がどう見ても落ちこぼれだ。


家では叫びながら、泣きながら勉強した。
ご飯を食べながら、トイレで用を足しながら。

病院に運ばれたことは数回ではない。

比喩でなく死にたいとすら思った。


303 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:30:11.86 ID:UZpa6Eo00
そんなある時分、彼はパソコンで調べ物をしていて、偶然とあるホームページに辿り着いてしまった。



『自殺願望者の集い』



彼は自殺する気は無かったが、どうしてかそのページを開いてしまった。
そしてのめり込むように書き込みを見出したのだ。


その中、あるハンドルネームの書き込みに興味を持った。



『投稿者:DOKU』



これがドクオとブーンの初めての接触だった。


309 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:32:09.75 ID:UZpa6Eo00
ドクオは中学を卒業し、母親の頼みもあって渋々フリーターとなった。
近所のスーパーマーケットに勤めたが、ものの1週間で辞める事となる。

理由は簡単だ。
『お客様第一』と宣うくせに、利益しか考えていない店長に嫌気が差したのだ。

『どうして利益第一と言わないのですか?』

と質問したら、『お客様第一だから』という質問の意図を認知できていない答えが返ってきたので辞めてやったのだ。

それを話すと、母親も半ば諦め、自分はニートとなった。

そしてパソコンと本に囲まれた生活と化していく……。


312 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:34:13.92 ID:UZpa6Eo00
そんな中、彼はパソコンで生死の心理についてより詳しい、生の情報を得たいと思った。


必然だったのだろう、自殺願望者のサイトへ彼が足を踏み入れたのは。


自殺する気は無い、それでも彼は話が聞きたい。


その考えを正直に掲示板に書き込んだ。


316 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:36:04.99 ID:UZpa6Eo00

ブーンが目をつけた『DOKU』という人物は、話が聞きたいという用件を短く書き込んでいた。

当然場違いだと、沢山の書き込みによる非難の集中砲火を浴びていた。
削除対象となったのだろう、次の日に見ると彼の書き込みは無くなっていた。


どういう風の吹き回しだろうか。

いや、深層ではきっと誰かに話を聞いて欲しいと望んでいたのだろう。


ブーンはメモしておいた『DOKU』のアドレス宛にメールを打った。

これが二人のファーストコンタクトとなる。


318 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:38:09.08 ID:UZpa6Eo00
そのサイトでは、地域ごとに分かれた掲示板が複数用意されている。
だから自分の該当地域の掲示板でやり取りすれば、必然的に身近な人間とのコミュニティが形成される。

それでもブーンとドクオがまさか同じ市に住んでいるなどとは流石に驚いた。

まるで運命であったかのように。


それから3日後、二人は公園でついに対峙した。


ここからブーンの歯車は大きく狂いだすこととなる。


321 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:40:14.53 ID:UZpa6Eo00

正直に言えば、ブーンは初めドクオに職業を聞き、ニートと言われた時は自分の愚かさを呪った。
仮にもブーンには『エリート』というプライドがあった。
そもそもプライドがあるからこそここまで苦しんでいるのだ。

だと言うのに何が悲しくてニートに話を聞いてもらわなくてはならないのだ、馬鹿馬鹿しい。


そういう皮肉も込めて、まずはブーンが言った。


『どうしてDOKUは自殺願望者の意見が聞きたいんだお?』


これを引き金として語りだした彼はあまりに想像を絶していた。
独特であり、かつ確執し的確な考え。
迷走しているブーンには美しくすら感じる彼の持論。


ドクオは否定するだろうが、少なからず彼自身どこかで論議する機会を欲していたのだろう。
ブーンがそれに選ばれたんだ。


325 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:42:21.37 ID:UZpa6Eo00
ブーンは胸の内を包み隠さずに話した。
経歴、葛藤、挫折……。
そして内心期待を寄せていた、そんな自分へのDOKUの返答に。

しかしその返答は望みとは遠くかけ離れたものだった。

「なんだ……」

殴ってやろうかと言うほど沸憤し、ギラッと目つきを変えると興味なさそうにDOKUは言ったんだ。

「FLYは学校で一番賢くなって、それで何がしたいんだ?」

FLYとはブーンのハンドルネームだ。


そしてドクオのその一言は、苛められながらも無感情に相手を哀れむ彼だからこその言葉だった。


学年で成績優秀になって見下すのも、苛めによって相手を見下すのも……
結局目的無くしてやっている以上は同じ行為だと言いたかったんだ。


327 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:44:25.70 ID:UZpa6Eo00
そして次に彼は将来有名になって、金持ちになって、それでどうなんだと言った。
死んだら一緒じゃないかと。

名前を残せたら自分の存在が永遠に残って……
子や孫に財産を残せれば……こんな答えを当然ブーンもした。
ここでのやり取りは省こう、クーという女性と交わした答弁と
何ら変わりなくブーンは言い包められたのだから。


そしてプライドをもズタズタに引き裂かれ、言い返すこともできずに項垂れるブーンに彼は言ったんだ。


「下らん勉強をし、下らん人間と拙い会話を重ねる位なら、一人で死について考えるほうがよっぽど有意義だ」


そして彼は帰って行った。


ブーンは彼にとって『下らん人間』だったのだ。


プライドなんて残されていなかった、悔しさでいっぱいになった。


331 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:46:29.96 ID:UZpa6Eo00
結局勉強も望んでした行動ではなく、そしてそれを嫌がるのもすべて『本能的』な行動だったわけだ。
優位に立ちたい、立って相手を見下したいと思っているからこそ、
落ちこぼれると見下されていると感じてしまう訳だ。
つまりこのストレスもすべて自身の深い考えなしに植え付けられていたリビドーだったのだ。


その日は泣いた。
どれだけ優秀を気取って、落ちこぼれてでも周りの人間を見下しながら過ごしてきた自分は
完膚なきまでにぶちのめされた。
社会的な価値の無い者に蔑まれたのだから。

ニートに言い負けるんだ、どれだけ今までの勉学が無駄だったか。
その無駄なことでどれだけ自身が思い悩み迷走していたのか。
蓋を開けてみれば、ブーンのそれまでの人生がすべて否定されていた。


今まで以上の挫折に自身への失望感、そして……DOKUという一人の尊敬できる人間を見つけてしまったのだ。
彼に認められたいと思ってしまったのだ。


333 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:48:43.73 ID:UZpa6Eo00
ドクオにとって、真面目な一面を見せるのは極一部の人間だけだったりする。

答えは簡単だ、『下らない人間』と言い争うのが嫌だから。
考えも浅はかなくせにやたら突っかかってくる人間との会話は、無益でこの上ない時間の浪費だ。
一人で色々と考えに耽るほうがよっぽど有益だったのだ。


『DOKU、もう一度会いたい。話がしたい』

『俺はもうお前に興味はない、結構だ』

『僕が興味あるんだ、DOKUに。DOKUの考えに』


そんな彼が、ブーンを僅かながらに認めた瞬間だった。

ブーンがドクオの考えを認めた、そこにドクオは喜びを感じたのかもしれない。
そう、普通なら異端としてしか扱われない彼の考えに興味持つブーンだからこそ、ドクオは認めたのだ。


337 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:50:48.40 ID:UZpa6Eo00
ブーンはドクオの意見を聞きながらも、すべてを鵜呑みにしなかった。

納得するところは納得するが、納得のいかないことは徹底的に意見した。

彼自身、ドクオを目標としていたのだから当然だろう。
プライドは元より高い、隙あらばドクオを言い負かそうとしていた。



それがドクオには嬉しかったのだろう。
ブーンに考えを可能な限り話したし、その上で突っ込まれてより深く考える時も多かった。


その上で二人でよくする話は『人間と動物(と植物)の死』、『輪廻』、『血縁者と他人の死』、
『仏教における死』、『人を殺してはいけない理由』など哲学的なものが大半を占めていた。
あとは時事的な事件についてをそのつど話したくらいか。
その時々で話題は違ったが、最終的にはこれらの話になることが多かった。


341 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:52:56.50 ID:UZpa6Eo00
そして二人は、互いの考え方を認めるようになる。

以心伝心とでも言おうか、「俺はこう考えるが、相手ならこう考えるだろう」と分かるのだ。
毎日論議を醸していれば当然とも言えるだろうが。


例えば兄者に戦うかどうかと聞かれた時、ドクオは断ったがブーンは戦うと言った。
ブーンだけ生かしてやるとも言ったが、それでも死にたくないから戦うと言った。

これはドクオの『大切な人が死んで悲しいのなら死ね』という言葉と密接に絡んでいる。

ブーンにとって、ドクオも……ツンも、その場にいた他人が大切な人なのだ。
だから大切な人が殺されて自分だけ生き残っても、『悲し』ければ自分は『死ぬ』んだ。

ドクオが戦わない理由をブーンは分かっていたし、ドクオはブーンが戦う理由を分かっていたからこそ
互いに何も言わなかったのだ。


その時にドクオが『死ぬなよ』とブーンに言ったのは、少し矛盾しているようにも感じられるが。
ブーンはその言葉の重さを分かったからこそ、敢えて突っ込むような野暮な真似はしなかった。


345 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:54:02.10 ID:UZpa6Eo00
さて、ブーンだがドクオとの接触以降学校を無断欠席し、両親の反対を押し切って数日後に中退。
エリート街道まっしぐらだったにも関わらず、彼は堕落しニートとなった。


これで良かったのかどうかは分からない。


少なくとも彼の両親は悲しみ、彼自身はそんな人生に納得している事だけが確かだ……。


346 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:56:11.43 ID:UZpa6Eo00


ここ数日ずっと続く雨、苔むしたコンクリートの壁に、埃臭。
討伐隊はその相手をようやく最後の一人まで殲滅した所で、ようやく一段落した。

(´・ω・`)「ジョルジュの通夜が今日あったみたいだよ」

川 ゚ -゚)「そうですか……」

ずずっとコーヒーを口に運び、二人は話していた。
外景も拝めない地下の閉所では、趣も何もあったものではない。
湿気ばかりを感じながら二人は向き合ってきた。

(´・ω・`)「……この湿気は嫌になるね、不快極まりないよ」

川 ゚ -゚)「そうですね、あと目に見える苔は衛生的にも気にかかります」

僅かにひび割れたコンクリートに、これ見よがしげに苔は生え茂る。
慣れたとはいえ、湿気が伴うと視覚的・感覚的にも中々に居心地が悪いものだった。

湯気の漂うコーヒーを口に注ぐと、ふぅと息を吐いた。
コーヒー臭いが、苔臭さよりは幾分もマシだ。

(´・ω・`)「気持ちは落ち着いたかい?」

川 ゚ -゚)「……それなりに踏ん切りはつけました。完璧とまではいきませんが」

(´・ω・`)「そうかい」


350 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 22:58:15.61 ID:UZpa6Eo00
言葉数が少ないと、どうしてもカップに手がいく。
空になったそれに、メイカーから新しいコーヒーを注いだ。

一帯に香ばしい香りが漂う。


(´・ω・`)「それにしても、弟者が死んだニュースには度肝を抜かれたね。
   魔女がまさか同士打ちするなんてさ」

川 ゚ -゚)「そうですね、一体何があったのか……」

流石兄弟との戦いの次の日、新聞やニュースで次々に報道された「魔女の変死」。
討伐隊が倒した兄者に加え、逃げたにも拘らず死に至った弟者。
一度に二人もの魔女が消えたことで、話題は持ちきりだった。


もっとも、ジョルジュについてはどこの紙面も触れていなかったが。
『そんな事』よりも魔女が死んでいったことのほうがよっぽど重要だったのだろう。


353 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:00:20.21 ID:UZpa6Eo00
川 ゚ -゚)「……ショボンさん」

(´・ω・`)「ん、何だい?」

川 ゚ -゚)「……ドクオのことですが」

(´・ω・`)「ああ」

言い難そうに口を震わせながら、クーは続ける。

川 ゚ -゚)「ショボンさんが、どうして彼に目を掛けたのか分かった気がします。
   ずっとどうしてニートの彼に固執するんだろうって疑問でしたが」

(´・ω・`)「そうかい、それは光栄だよ。
   彼は……彼の考えは異端であるにも拘らず筋が通っているからね」

川 ゚ -゚)「認めたくないですが」

そう言って彼女は口にカップを運ぶ。


358 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:02:26.07 ID:UZpa6Eo00
川 ゚ -゚)「彼の中で完結している、独特の思想といいますか、哲学といいますか……」

(´・ω・`)「うん」

猫舌なのか、ショボンはカップに指を絡ませるも口には運ばなかった。
真白で質素なカップはコーヒーで少し茶ばんでいる。

川 ゚ -゚)「しかし……どうして彼がこの魔女討伐に必要だったのでしょうか?
   彼が来てからショボンさんも積極的に戦ってくれますし、信じられないスピードで事が運ばれています。
   それでも……彼を選んだ理由には結びつかないです」

(´・ω・`)「……」

ショボンは口元までカップを運び、しかしやはり熱そうだったのか、口に付ける事無く机上に戻した。

何を考えているのか決して表情に見せない、これは彼が魔女だからか、それとも常なのか。
表情からは逆に無関心といった印象しか受けない。

川 ゚ -゚)「これまでの成果を見てきても、ツンとの戦いの際アイデアを出して補助をしてくれましたが……。
   何と言うか、それだけではないですか?
   戦おうともしない、我々と協力しようともしない……ショボンさんの意図を汲みかねます」

(´・ω・`)「……つかぬ事だけど」

言い切ったクーの言葉に添えるように口を開く。


365 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:04:30.29 ID:UZpa6Eo00
(´・ω・`)「キミは、魔女に復讐したいと思わないのかい?」

川 ゚ -゚)「……」

突然のショボンの質問に、クーは押し黙った。

(´・ω・`)「ジョルジュの敵討ちをしたいとは思わないのかい?」

しばらく返事を待ってみるも、クーはずっとその目線を落として口は閉まったままだった。

(´・ω・`)「もし……もし、僕が実は魔女側の人間だったらどうする?」

川 ゚ -゚)「!!」

相変わらずの表情でショボンは突拍子もない質問を投げかけた。
これにはクーも反応を示す。

川 ゚ -゚)「ショボンさんがって……どうしてそんな事を聞くんですか?」

(´・ω・`)「何となくさ、例え話だよ。
   僕がジョルジュの仇の立場にいたら、君は戦って殺せるかと思ってね。
   別段何の不思議も無いだろう、そもそも僕は魔女なんだからあちらサイドにいるのが自然だ」


369 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:06:34.84 ID:UZpa6Eo00
川 ゚ -゚)「でもショボンさんは今まで魔女と戦ってきてくれたじゃないですか」

(´・ω・`)「それも演技だとしよう、キミ達を騙すために画策していたんだ」

川 ゚ -゚)「……」

随分とタチの悪い例え話を持ち出してくるものだ。
にわかには返答しかね、少し静かな時間が過ぎた。

川 ゚ -゚)「……私は、それでも戦います。
   仇などではなく、それが討伐隊である私の使命だから」

(´・ω・`)「討伐隊の使命か……」

ようやくショボンはカップを口に付け、温かいコーヒーを啜った。

(´・ω・`)「それをドクオ君が聞いたら、なんていうだろうか?」

川 ゚ -゚)「さっきからショボンさん、何が言いたいんですか?」

(´・ω・`)「……」

クーが少し口調を荒げると、今度はショボンが言葉を止めた。
再び、今度は少し長い沈黙。


372 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:08:01.11 ID:UZpa6Eo00
(´・ω・`)「……すまない、どうやら少し感情的になってしまったようだ」

寸分とも変わらぬ表情のまま、そう言うと一気にコーヒーを飲み干した。
そして席から立つ。

(´・ω・`)「今日のことは忘れてくれ」

川 ゚ -゚)「ショボンさん」

(´・ω・`)「すまない」

ショボンはそのまま一方的に部屋を後にした。


381 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:10:11.23 ID:UZpa6Eo00


雨時の港は風が吹き荒ぶ。
斜めに降って来る無数の雨粒を気にもせず、合羽を着た男が一人歩いていた。

幾練も立ち並ぶ倉庫。
相似している物ばかりだが、目的の物以外には見向きもせずに歩き続ける。

(,,゚Д゚)「……」

その目は鋭い。
既に魔女群は死に体と言っても過言では無いだろう、ギコは舌打ちした。
魔女として人間に対立してきた、最後一人の男。

(,,゚Д゚)「流石兄弟が……まさか煮え湯を飲まされるとは思わなかったな……。
   あいつ等に黙っていたのはやはり正しかったようだ」

そして目的の倉庫に着くと、扉を開けた。

暗くてよく目視できないが、ビニールの被せられた『巨大な何か』がそこにはあった。
思わずギコは口が緩む。

(,,゚Д゚)「ショボンと俺だけで十分さ……そしてコイツがあればな」

元より忠誠心の無いペットなど必要ない。
ギコの高笑いは雨音よりも大きく響き渡った。


386 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/11/30(木) 23:12:17.60 ID:UZpa6Eo00


(´・ω・`)「さてと……それじゃ皆、準備はいいかい?」

川 ゚ -゚)「はい」

ξ゚听)ξ「いつでも」

( ^ω^)「おkですお」

('A`)「ういー」

狭く湿気で不快な部屋にも拘らず、五人は円陣を組んだ。

いよいよ……この長かった勝負に終焉が訪れようとしているのだ。
絶対に負けれない戦い。

(´・ω・`)「それじゃ、今日勝負を決めて……アイーンダヨー!」

( ^ω^)('A`)川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ「イインダヨー」

( ^ω^)('A`)川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ「グリーンダヨーッ!!」(´・ω・`)

心を一つにし、5人は最後の闘いへ向かおうとしていた。
クーは口パクだった。


2 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:00:47.24 ID:jmhlAyFy0
第二十三話『簓先穂』


引きも切らない雨は、次第に強さを増していった。
ここ数日の盆を傾けたような豪雨、海原は荒れ、波は夥しくうねる。
どす黒い雲は太陽を垣間見せる事さえ許さなかった。

倉庫の中では、バラバラと雨が波板トタンに当たる音だけが幾多も反響した。
電気も付いていないそこは、小さな窓ガラスから差し込む光だけで
不気味な暗さを醸し出していた。
雨の日は殊更に気味が悪い。

(,,゚Д゚)「いよいよ……決着だな」

以前燃え落ちたVIP倉庫の隣、造りがまったく同じなだだっ広いその倉庫内で、男の声がした。
しかし雨音ですぐにも消される。

(,,゚Д゚)「うるさい雨だ」

男はその場に寝転がった。
その場……自分の何倍とあるだろう、その『巨大な何か』の上で。

(,,゚Д゚)「いいさ……元より、あいつ等なんて信用してねぇぞゴルァ……」

いよいよ孤独になったが、男はやせ我慢をして見せた。
薄暗い空間は、心の寂しさに一層拍車を掛けた。


4 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:02:52.64 ID:jmhlAyFy0
どうして皆、自分を置いていったのだろう?
何がいけなかったのだろう?

自分は一族のために、その一心で只管に頑張ってきた。
自分の事なんて考えた事無い、ただ一族のために。
なのに……どうして。

(,,゚Д゚)「バカどもが……」

頼れない、使えないヤツばかり。
我利我利亡者ばかり、利に敏い奴ばかり。

そんな奴等に自分の意志が通じるわけなかったんだ。
自分と対等に物事が出来るわけがなかったんだ。


(,,゚Д゚)「あー、くだらねぇ」

男は上半身を持ち上げ、倉庫の扉を見下す。
そこには五人の客人が立っていた。

(,,゚Д゚)「……いらっしゃい」


6 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:04:55.73 ID:jmhlAyFy0

川 ゚ -゚)「オマエが、ギコか?」

身体、そして耳に包帯をしながらも気圧される様子無くクーは聞いた。

(,,゚Д゚)「ほぅ、オレのことは既に知っているか……その通りだ」

ギコは返事をすると、相手の集団を一瞥する。
その視線はツンで止まった。

ξ;゚听)ξ「!!」

(,,゚Д゚)「……クク」

そして身振り手振りを加え、大袈裟に笑い出す。

(,,゚Д゚)「ハハハ、ツンがね、だから流石兄弟ですら……そういう事か……ハハハッ!!」

ツンが裏切っている事をギコは知らない。
この場で始めてそれが判明したわけだが、彼女を見て驚くかと思いきや笑い出した。
何がそんなに面白いのだろうというほど大笑いをした。

(#゚Д゚)「ふざけるなッ!!!」

ξ;゚听)ξ「!!」

そして突然吠えた。


7 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:07:01.59 ID:jmhlAyFy0
(#゚Д゚)「使えない、どこまでも使えない……
     死ぬどころか挙句に反旗を翻しやがって……
     親父やお袋の死なんてもうどうでもいいのか!? 
     そうか、所詮オマエも自分を取ったわけだな!?」

ξ;゚听)ξ「えぁ……そんなつもり……」

(#゚Д゚)「どいつもこいつもバカにしやがって、上等だゴルァ!」

ギコは『巨大な何か』から飛び降りると、五人の前に立った。
彼の眼力は今までのどの魔女よりも鋭く、真っ直ぐに尖っていた。

暗味を帯びて音が深く反響するその場では、その男が一層恐怖染みて見える。

ギコはまだまだ、これでもかと怒り奮う。

(#゚Д゚)「もう親の仇だ何だは忘れたんだろ、      自分が幸せでそれでいいなどと思っているんだろう!!
     そうだ、やっぱりオマエもそうだ、人間にすら脅えていたくせに      すぐ心を動かしてすぐ寝返る!」

ξ;゚听)ξ「違う、違う……!」

(#゚Д゚)「もういい、言い訳は聞きたくない」

そう言ってギコは更に目を尖らせる。

(#゚Д゚)「どうせ死ぬんだ、敢えて非難してやる必要もないな」


9 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:09:11.87 ID:jmhlAyFy0
ピンと張り詰める空気、その場は一瞬で戦いの雰囲気へと変わった。
クーとブーンは銃に手を添え、ツンは困惑しながらも形だけの構えをとった。

(,,゚Д゚)「……と、その前に」

しかしギコが自身でその空気を壊す。

(,,゚Д゚)「オマエ達に、悲しいお知らせが二つある」

突然の展開に戸惑うブーン達に意地悪く笑いながら、ギコはその後ろの『巨大な何か』に歩いた。
そして勢いよくかかっていたビニールを剥ぎ取る。


黒光りする、ラグビー型の巨大な鉄装。
禍々しさを醸し出す『それ』は、見る者を恐怖へと一気に陥れた。

一見しただけでそれが何か分かった。



巨大な爆弾。


11 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:11:15.07 ID:jmhlAyFy0
ゾクッと背筋が凍り、クーとブーンはその厳かな姿に圧倒され、へなへなと座り込んだ。
目は既に釘付けとなり、思考は働かない。

まるでその黒に自分の全てが飲み込まれたような錯覚すら覚えた。

(;^ω^)「ば……」

言葉が続かない。
ば『くだん』は絶望を象徴していた。

(´・ω・`)「ほぅ」

(,,゚Д゚)「これがオレの切り札だ。
   威力を高めれば半径2〜30km程度なら軽く無に返すぜ?」

挑発的な笑みは、悪魔という比喩でも生易しいほどだ。

国の機能が集中している首都圏と隣接した地区、こんな所で爆発すれば、犠牲は枚挙に暇がない。


13 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:13:17.90 ID:jmhlAyFy0
(;^ω^)「でも、それを押せばお前も死ぬんじゃないのかお!?」

(,,゚Д゚)「ああ、だからこそこれは最終手段だ。
   万に一つも無い勝機を、ゼロにするための」

ギコは爆弾に近づくと、そこからスイッチを取り出す。
コードで爆弾とは繋がっていた。

(,,゚Д゚)「ちなみに無理にコードを切っても結果は同じだぜ?
   もし俺に負けそうになったら狙ってみるがいい」

再び最悪な笑いを轟かせて、スイッチに指を近づける。

(,,゚Д゚)「いっそのこともう押してしまおうか?
   結構押し込むのに力が必要でな」

言いながら指をスイッチに接触させ、力を込める振りをする。
悲壮な顔を強めるものの、それを止める者はいない。

絶望の支配からは、誰もが逃れる事が出来なかった。


16 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:15:22.66 ID:jmhlAyFy0
(,,゚Д゚)「……つまらんな、誰か一人くらい止めてみてはどうなんだ?」

やれやれとスイッチから指を離す。
そう、あくまでこれは最終手段なのだから。

(,,゚Д゚)「しかしドクオといったか、オマエは本当に我関せずだな」

('A`)「実際関係の無い話だ」

(,,゚Д゚)「オマエが死ぬというのにか?」

('A`)「ああ」

眉を顰め、理解出来ないギコは相手をするだけ無駄だと決めて話を元に戻す。

(,,゚Д゚)「悲しいお知らせは二つと言ったな、もう一つはもっとオマエ達には辛いかもしれないな」

そう言いながらギコは5人へ向かって歩いていく。

銃を構えるクー、抵抗する気さえ見せれないブーン、
自分の考えを見失ってどうする事も出来ないツン、我関せずのドクオ。
そして、表情を寸分も変えないショボン。


ギコはそのショボンの正面で足を止めた。


19 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [ら抜き言葉発見スマソ] 投稿日:2006/12/01(金) 22:17:27.09 ID:jmhlAyFy0
(,,゚Д゚)「ショボン、直に会うのは久しぶりだな」

(´・ω・`)「そうだね、電話ばかりだったからね」

川;゚ -゚)「!!」

クーは目を見開き、信じられないと言わんばかりの顔をした。


(´・ω・`)『もし……もし、僕が実は魔女側の人間だったらどうする?』


川;゚ -゚)「ショボン……さん」

ジョルジュを殺した相手の集団との癒着。
自分たちの使命。

(´・ω・`)「そういう事なんだ、すまない」

ショボンは相変わらず顔色を寸分と変えずに詫びた。
悪びれた様子は感じられない。


21 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:19:30.85 ID:jmhlAyFy0
川;゚ -゚)「どうして……そんな、ずっと血で血を洗う真似を……」

(´・ω・`)「そうだね、色々と理由はあるんだ。
   いずれにしても言えるのが、一面的な視点から見れば双方が被害者だって事くらいかな」

川;゚ -゚)「わかりません」

クーの声は震えていた。
出来る限り平生を保とうとしていたが、既に銃口は下を向き、腕は力無く垂れ下がっていた。

ショボンはやれやれとギコの方を向くと、彼は待ってましたと言わんばかりに口を開く。

(,,゚Д゚)「復讐だよ」

川;゚ -゚)「何を戯言を! これだけ沢山の犠牲を出しておいて、沢山の人を殺しておいて何が復讐だ!!」

(,,゚Д゚)「ツンから聞いただろう、我々魔女が人間を嫌う理由」

川;゚ -゚)「だからって私たちはどうすればいいんだ、どうすれば許してもらえるんだ!?
   何でもしよう、私が出来る事は何でもしよう!」

(,,゚Д゚)「何もするな」

川;゚ -゚)「!!」


25 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:21:37.30 ID:jmhlAyFy0
(,,゚Д゚)「因果応報、先人の罪はおまえ達の罪だ、素直に殺されろ」

つまりは「許さない」と言いたいのだ。
どれだけ頑張ろうとかこの罪は清算できない。

(,,゚Д゚)「優勝劣敗、弱肉強食……弱きはどれだけ罪か。
   そして弱きはどれだけ惨めたる存在か」

ギコは吐き捨てるように言った。



そして手に持つスイッチを見えるように掲げると……押した。


27 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:23:47.40 ID:jmhlAyFy0

(;^ω^)('A`)(´・ω・`)川;゚ -゚)ξ;゚听)ξ「!?」

(,,゚Д゚)「……そういう事だ」

何も起こらない、それでも雨音が聞こえないほど大きな心音が響いた。
生きた心地がしない、心臓が止まった程に驚き、『死』が見えた。

腰が抜け、倒れこむクー、ブーンにツン。
唯一ドクオだけが驚いた様子を見せただけだったが、ギコは無視した。

そして爆弾まで歩くとパチンとスイッチを入れる。

(,,゚Д゚)「強き者に玩ばれる為の命だ」

見る見る間に爆弾周りの光が点灯し、大きく振動すると、ギコの手に持つスイッチが赤く光った。
『今度こそ』、ボタンを押せば爆弾は爆発するのだろう。

(,,゚Д゚)「哀れだな、弱者は」

そしてギコは、冥土の土産とばかりにポツリポツリと話し出した。
彼が背負う、『復讐』を……。


35 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:30:33.96 ID:jmhlAyFy0
第二十四話『土性骨』


これから話す物語は『人間』と、『魔女』と呼ばれる人々の話。
魔女で無い人を『人間』、この世界の人達はそう呼んでいる。

今からそう遠くも無い昔、人間と魔女は共存していた。
現在からは想像できないだろうが、互いに生きるために協力していたんだ。

魔女の類稀なる力は人間にとっては素晴らしい力だった。
この世を発展させていくのに欠かせなかった。

魔女にとっての人間は人数が多いだけ、下層階級と捉えられていた。
そう思うのも仕方が無いが、人間がいなければ食物や文化は成り立っていかない。
食物連鎖は土台があってこそ成り立つのだから。


さて、ピラミッドは土台が無くては上は存在しえないが、上がなくても
土台は存在しえることに気付いただろうか?
上からの圧迫無く、より伸びやかに土台がいられることに。


36 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:32:43.83 ID:jmhlAyFy0
別に魔女がその力で人間を押さえつけていたなんてことは無い、むしろ協力的だった。
ある種のナルシストとでも言おうか、彼らは自身の力を自任していたし、
だからこそそれが人間に必要な事も分かっていて積極的に協力をしていた。

人間が自分たち魔女の力を最大限に引き出し利用してくれる、それを分かっていたのだろう。
ある意味では文系と理系の関係に似ている。


さて、魔女は積極的に人間達に協力していたと言ったが、それは人間達がいるからこそ
自分たちが成り立っていることを知っていたからだ。
魔女は人間がいなければこの世が成り立たないとも理解していたし、
だからこそ一魔女が暴動を起こしても、人間と協力してそれらを止め、裁いてきた。

それが『秩序』だった。


これだけ聞くと、魔女はいいヤツだと思うだろう。

そう、魔女はいいヤツで何も悪くなんて無かったのさ。


39 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:35:38.99 ID:jmhlAyFy0
恐怖するのは当然土台の方、常に押さえつけられている方だ。

人間は常に魔女という存在を危惧していた。
そう、裏切られてはどうしようもなかったから。

魔女に裏切られては自分たちは死ぬ。
魔女が裏切らない保証がどこにある。


優しい人間を『偽善者』と称するが、称する側が偽善者だからこそ他人の善意が偽善に見えるのだ。
偽善者から見れば全ての善は偽善なのだ。

そして国の上に立つ人間というのはえてして偽善者になりやすい。




魔女の善意が偽善に見えたらそれは恐怖に決まっている。


42 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:37:42.05 ID:jmhlAyFy0
始めは純粋に協力していた人間も、次第に疑心を覚えだす。
どうしてこうも自分たちに協力をするのだろうか?
一体何の利益を求めてこうも共存してくれるのだろうか?

そして結果、守りに徹するのだ。

魔女が裏切ったら自分たちは死んでしまい、これまでの発展は意味を成さなくなる。
だが一方で、魔女が死んでもそれまでの発展は残るのだ。


彼らは恐怖と発展を天秤にかけた結果、恐怖に負けたのだ。
このまま恐怖に脅えて発展し続けるくらいなら、今の発展で満足し
恐怖を取り除こうと言うのだ。
弱いからこそ裏切られるのを恐れ、人間は魔女を根絶やしに、駆逐したのだ。

この選択は当然だろう、彼らを責める理由がどこにある。

軽蔑はするが。


44 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:40:09.91 ID:jmhlAyFy0
魔女の徴兵令とでもいおうか、力持つ魔女は一所に集められ、一斉に殺された。

会合を開き、出席した魔女は一度に毒殺した。
食事に薬を入れればそれはもう簡単に、人間と同じように死んでいく。
すし詰めの部屋にガスを撒けば、あっという間に意識を失う。

面白いくらい一度にそれらは殺された。


残りは簡単だ、力の弱い僅かな魔女に力の無い魔女。
人間側に魔女が一人でもいれば、簡単に殲滅させれた。
銃殺なり爆殺なり、普段の魔女は結局人間同様なのだ、力さえ強めなければ所詮人間なのだ。

特に炎や電撃は魔女が止めようも無い、最高の武器になる。


魔女狩りは、とうとう行われた。


46 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:42:24.27 ID:jmhlAyFy0
魔女の力の開花は精通と同時に発生する。
丁度10歳あたりになると自然に備わるんだ。


力の弱い魔女は薬を注射され、右も左も分からない朦朧とした状態で執刀される。
子供においては女は性奴隷とし(妊娠しないから余計に適していた事は言うまでもないだろう)、
男は人体実験に。

魔女自体は沢山いたが、それでも子供で男というと限られてくる。
ああ、子供を執刀できる医師はなんと幸せなことか。


たった7日で、1000近い数を誇っていた魔女は殲滅させられた。
人間どもの手によって、完全に駆逐されたのだ。


さて、それではどうして今その生き残りがいるのだろうか?


49 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:44:34.06 ID:jmhlAyFy0
答えは簡単だ、それらは少し特異だっただけだ。

魔女と人間のハーフは、極稀に後天的に魔女の力を手にする。
通常であれば魔女の力は純潔にしか与えられず(だからこそ魔女は少ないのだが)、
ハーフは普通の人間となんら変わり無い。
それが折りしも例外として開花した者が生き残っているのだ。

もっとも、魔女側にもツンをはじめ純潔な魔女に数人が該当する。
何よりも魔女の家庭で育っていたハーフは、魔女と同様に狩られている。

『魔女と人間のハーフ』であり、かつ『孤児』だったからこそ例外として生き残れたのだ。


純潔の魔女は力が開花しなくとも魔女と判別できる。
魔女が魔女を見るとオーラのようなものが見えるのはもう知っているだろう?
魔女の力が目覚める前と後とで色の違いはあるものの、
それにより純潔な魔女は簡単に見分けがつくのだ。


ただ、ハーフは魔女の力が開花しない限りそれにすら該当しないのだ。
力が一生開花しなければオーラが芽生えることはない、
それにもかかわらず魔女狩りの対象にされたわけだが。


そうだ、幾重にも重なった偶然こそが、今の魔女たちをこの世界で生還させた。


52 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:46:49.57 ID:jmhlAyFy0
魔女を一斉排除した人間の理由は「魔女が裏切ったので対抗した」だそうだ。
何も知らない一般人風情は「よくやった」と言っていればいいだろう。

魔女は強いのだ、にも拘らず使われていたのだからいつ裏切りが発生しても何の不思議も無い。
「我々人間を守るために裏切った魔女を殺した」、そう『人間に』言われれば
考える必要も無く納得してしまうだろう。


その間も水面下で自分たち生き残りは仲間を集め、復讐の道を辿りだしていた。


魔女の生き残りである自分たちが復讐に走ったのは人間にとって追い風だったようだ。
無差別に復讐の念を晴らしていく自分たちに対し、やはり一般人は
「本当に魔女は最悪な奴等だ」と否定すればいいのだから。


人間と魔女の間に蔓延る互いの反発。


それは必然だったのだろう。


54 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:49:02.46 ID:jmhlAyFy0


雨が降りしきるうるさい最中で、ギコはその過去をすべて吐き出した。
人間が隠し、魔女を悪者としたその今までの経過を。

(,,゚Д゚)「それが、魔女と人間の因果だ」

川;゚ -゚)「……」

(,,゚Д゚)「もっとも、それすら知らずにオレ達と戦ってきたオマエ達
     を否定する気は無い、哀れには思うが。
     ある意味では仕方ない事だったと思える、オマエ達こそ
     人間の我が侭の犠牲者とも言えるしな」

ギコはここで笑って見せるが、その他はとても笑える気分になどなれなかった。

理不尽に殺された魔女、その復讐に奔る相手を、自分たちは敵にしていたのだ。
どうしてその真実を表に現してくれなかったのか。

当然だ、表に現そうと人間が一方的にもみ消すに決まっている。
そもそも彼らが人間を信じれるわけが無い、同様に人間が彼らの言い分を信じるわけが無い。


(#^ω^)「そんなの……そんなの悲しすぎるお!」

ξ;゚听)ξ「ブーン!?」

(,,゚Д゚)「!!」


59 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:51:05.93 ID:jmhlAyFy0
黙り込んでいたブーンだったが、納得いかずに思わず叫んだ。
納得のいかない事に逆らう、ドクオに教えられた心得。

(#^ω^)「今、僕たちがその真実を分かったお!
   だから一緒に主張するお、こんな形で復讐を続けるなんて悲しすぎるお!」

(,,゚Д゚)「……悪いが、その主張はただの命乞いにしか見えないな。
   一緒に主張する? 自分の命が大事なだけだろう。
   『一緒に主張するから命を助けて下さい』……違うか?」

どうして分かり合えないのか、どうして通じ合えないのか。
ブーン自身こんなにも先人達の身勝手が許せずに憎いというのに。

(#^ω^)「自分も人間の身勝手が憎いんだお、だから考えを改めさせ知り渡らせたいんだお!」

(,,゚Д゚)「人間の身勝手が憎いか……ならば死ね、人間が。
   そうやって主張をするだけのオマエの方がよっぽど身勝手だ」

(#^ω^)「それはもっともだお、でも……やっぱり、そんなのは悲しすぎるお……」

(,,゚Д゚)「オレを哀れむか、勝手にするがいいさ」

分かりあえないのだ。
どれだけ言葉をぶつけようと、分かり合えないのだ。


62 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:53:12.14 ID:jmhlAyFy0

そして次の瞬間――




(;゚Д゚)「が……ッ!!」




目を疑った。




( ^ω^)「!!」


68 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:55:16.35 ID:jmhlAyFy0

ショボンの手が、ギコの横腹を抉り取った。

痛みに喘ぎ、腰を丸めながら倒れこむギコ。

いつもの表情で、ショボンは眼球だけを倒れるギコに向ける。

その冷たい目線――


ギコはどれだけ悲壮な顔をしていたか。

裏切られた、夢半ばで途絶えた彼は――


孤独に倒れ込んだ。


76 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:57:22.13 ID:jmhlAyFy0
ξ;゚听)ξ「ギコ……!!」

(;^ω^)('A`)川;゚ -゚)「……!!」

誰もがその目を疑い、何が起きたかを理解できなかった。
自分たちを裏切ったショボンが、更に相手を裏切った。

倒れこむギコはまるで人形のように、抵抗の術もなく。


ばたんと。


倒れた。


(;゚Д゚)「ショボ……!!」

(´・ω・`)「悪いねギコ、僕は復讐だとかそんな事に興味は無いんだ」

(;゚Д゚)「結局……オマエも、か……」


81 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/01(金) 22:59:25.80 ID:jmhlAyFy0
ギコの頭に幾つもの考えが過った。

ショボンはどこまで本当に敵なのか。

ショボンがどれだけ自分たちの同胞を殺したのか。

弟者は本当に裏切ったのか。


全ての真相は闇の中、これから死ぬ自分には関係の無い、知る由も無いこと。

(,,゚Д゚)「……フッ」

自己卑下に鼻で笑うと、ギコはその目をショボンに向けた。
死を覚悟した、力ない目つきで。

(,,゚Д゚)「オマエも死ね」

彼はその手に持つスイッチを押した。


8 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:04:07.46 ID:i7MwlZhN0
第二十五話『魔女狩』


(;゚Д゚)「ば……バカな」

信じられない、といった様子でギコは幾度とそのボタンを押し直した。
それでも、やはり爆弾は何の反応も示さなかった。

ブーンも、ツンも、クーも、ドクオでさえも今回こそはもう駄目だと思った。
もう終わったと確信した。

……が、そこには情けなく幾度もボタンを押す息絶え絶えなギコの姿があった。

ξ;゚听)ξ「ギコ……」

(;゚Д゚)「うるさい、うるさい、うるさいッ!!」

スイッチを投げつけると一瞬にしてギコは体全体から力が抜けるのを感じた。
血は、ドクドクと絶え間なく流れ出続ける。

(;゚Д゚)「お前か……またお前か、ショボン!! 今度は何をやった!!」


10 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:06:10.64 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「なに、銅線の電気抵抗を極めて高くしたまでさ。
   絶縁するほどにね」

何度スイッチを押しても、その電気信号は伝えられることがなかったのだ。
だから……爆弾はこうも平然とその姿形を残しているんだ。

(´・ω・`)「ちなみに電気抵抗を高めるなんて事は普通の魔女じゃ出来ない事だよ、
        僕の研究の集大成であり、魔女の真髄さ」

誰も聞いていない、それでもショボンは自己満足に耽ったように言った。
そんな事はどうでもいいというのに、それ以上に聞きたい事など山ほどあるというのに。

ギコはあまりの異常な状況に現状把握が追いつかない。
それ以上に自分は死ぬ、その恐怖が背後に立ち、考えなど冷静に出来ない。

しかし冷静で無い事が功を奏したか、スイッチのコードを切ってやろうという暴挙を思いつく。
考えが先、その後に「コードを切っても爆弾が爆発する」という自分の言葉を反復した。

コードを手に持った。

(;゚Д゚)「はは……、ショボン、オマエだけ……ふざけるなよ、一緒だ、みんな一緒に……」

腕に力を込めた。
そして一気に引っ張り千切る。


13 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:08:14.33 ID:i7MwlZhN0
(;゚Д゚)「?」

おかしい、腕に力を込めて左右に引っ張ろうとするが、上手く引けない。
どうしてだ、それほど硬くも無いコード、このコードが切れない。
腕に力が入らない、動かそうと思っても動かない。

ショボンはそんなギコを蹴り飛ばした。

(´・ω・`)「脳からの信号が腕に伝わっていないんだ、どういう意味か分かるかい?」

『抵抗を高める』。
ショボンが自らを特殊だと自負する理由はここにもあった。
魔女について研究し、彼自身が編み出した希代の能力。

余談となるが、彼は弟者との戦いでこの事について話をしていた。
だからこそ弟者はその話がフェイクだとは見抜く事が出来なかった、
あまりに真実味を帯びていただけに。
最後まで説明を仕切らなかっただけで、この能力の根源についてを語っていたのだから
見抜けないのも当然だろう。

魔女の力の所以。


14 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:10:18.85 ID:i7MwlZhN0
(;゚Д゚)「くそぉ……くそぉ、く……」

体が思うように動かない、信じた仲間に裏切られる、その上でこれほど不本意に死ぬ羽目になるとは。

(;゚Д゚)「はぁ……はぁ……くっ!」

もう話することすら辛いか、ギコは頭を地面につけ、黙り込んだ。
声も、体全体も震えていた。

彼は泣いていた。

ξ;゚听)ξ「ギコ……」

何も反応しないギコに、構わず続けた。


15 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:12:21.79 ID:i7MwlZhN0
ξ;゚听)ξ「私を……助けてくれてありがとう」

(,,;Д;)「……くそぉ……ち、くしょぉ……」

ξ;゚听)ξ「……」

まもなく彼はその場の全員に看取られ、絶命した。
流れ出る血量が少なくなる、それは心配機能が停止した証拠だ。

激しい焦燥感が駆け抜けた。

ξ;凵G)ξ「ギコ……」

泣き出すツンをブーンは撫でてやる。
何も気の利いた言葉をかけれず、結局はそんな行動しかできなかった。

そんな空間ではあったが、まだ……すべては終わっていないのだ。

川 ゚ -゚)「ショボンさん」


19 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:14:25.00 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「ん、なんだい?」

クーの呼びかけに、何事もなかったかのような素っ頓狂な返事を返す。
それでもクーは生真面目に尋ねた。

川 ゚ -゚)「ショボンさんは結局、私たちの味方なんですか敵なんですか?
   何がしたいんですか?」

そう、ショボン。
彼の理解出来ぬ言動。
どちらに属するともいえない、その奇妙な行動。

(´・ω・`)「僕はギコに対して嘘をついていない、つまりこういうことだよ」

川 ゚ -゚)「わかりません」

目を背けずに、真っ直ぐとクーは睨み続けた。
やれやれと目を逸らしたのはショボンだ。

(´・ω・`)「クー、何が納得いかないんだい?」


21 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:16:26.66 ID:i7MwlZhN0
川 ゚ -゚)「どうしてギコを殺したんですか?
   そして今までギコと連絡をとっていたとはどういうことですか?
   もうまったく理解できないです、貴方がわからないです」

(´・ω・`)「どこから説明しようかね……」

ショボンは逸らした目を軽くギコに向け、そして再びクーに戻した。

(´・ω・`)「君はどうしてギコを殺したことに納得していないんだい?」

川 ゚ -゚)「それは、ギコが……魔女が、やり方はどうあれ自益だけを考え
   自暴自棄に殺人をしていたのではないとわかったから……
   私だってブーンと同じです、分かり合って、再び共存の出来る世界を築き上げたかったです。
   きっとギコは納得しなかったでしょうが、それでも出来る限り……」

(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「はい?」

(´・ω・`)「『討伐対の使命』は、魔女チームの殲滅だろう?
   今この結果の何が不安なんだ?」

川;゚ -゚)「それは……」


22 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:18:29.32 ID:i7MwlZhN0
黙り込んだクーが、次は目を逸らした。

(´・ω・`)「僕が魔女側の人間なら……容赦なく殺す、そうだったね?」

川;゚ -゚)「……いえ、確かにあの時はそう言いましたが……」

立場が圧倒的に悪くなり、言い返そうとするもすべてが空言となるのは明白だった。
所詮は口からの出任せになるんだ、以前の問答がそうであったように。

(´・ω・`)「安心してほしい、僕は魔女側の人間じゃないから」

川 ゚ -゚)「……」

ギコを殺したのだ、そうであることは『薄々』感付いていた。

川 ゚ -゚)「しかし……私たち人間側でもありませんね?」

(´・ω・`)「うん」

クーの質問に、ショボンは間髪いれず断言してみせた。


26 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:20:44.81 ID:i7MwlZhN0
ξ#;凵G)ξ「ショボン、貴方は何なのよ!?
   私達サイドにいて、魔女を率先して倒していきながらギコと連絡もとってて……
   それで私たちの味方でないって、何がしたいの何が目的なの!?」

(;^ω^)「落ち着くお、ツン」

ξ#;凵G)ξ「なんでギコを殺したの? どうして……」

再びツンは泣き出し、ブーンが介抱した。

(´・ω・`)「やれやれ、君もギコの件で怒る性質かい……参ったね。
   魔女を殺してあげたのに、こうも攻め立てられるなんて酷い扱いだ」

外ではまだ雨が降りつづけているのだろう、しかしそこの人間たちにとって、
それはまったく聞こえなかった。
どことなく静かな、不思議な空間だった。

(´・ω・`)「人間と魔女の争いか……君たちには分かっただろう、それがどれだけ無意味なものだったか」

川 ゚ -゚)「はい、だから……説得して、再び魔女と――」

(´・ω・`)「和解なんて出来るわけないだろ、それはギコと話した君がよく分かっているはずだ」

川;゚ -゚)「……ッ!」


27 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:23:08.01 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「君たちがなまじ優しさを見せたことは、最もやってはいけないことだった。
   分かるかい? ギコ、彼が自分の行為に自信をもてなくなったらどうなると思う?
   彼が自分を信じれなくなったら、可能性として……」

ショボンは巨大な爆弾に目を向けた。
それが何を意味するか、言わずも分かることだ。

(´・ω・`)「同時、君たちが死ねばギコの暴走を止めようとする人なんていなくなっただろうね。
   最初からそれが僕には分かっていた」

川;゚ -゚)「私たちは優しさを見せてはいけないのですか、そして死んではいけないのですか?」

(´・ω・`)「そうだ」

川;゚ -゚)「つまり……魔女が滅びるしかなかったということですか?
   私はそれも納得できません、結局それでは人間の勝手じゃないですか!?
   こうも人間の思惑通りにいくなんて、同じ人間としても嫌気が差します!」

(´・ω・`)「だったらどうしろというんだ、感情論を振りまくんじゃない」

そう言われても、どうすることも出来なったことだって分かっている。
それでも……納得いかないのに。


29 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:25:11.82 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「無意味な戦いを終わらせるには、それしかなかったんだよ」

それしかなかった……そう、魔女が滅ぶしかなかった。

事実この問題はすでに人間の思惑通り進み、魔女が絶滅の道を辿るしかなかった事は明らかだ。
人間が絶滅すれば魔女は生きていけない、それが食物連鎖の意図するところだから。
ピラミッドの土台である人間がいなくなれば、上の魔女も死への道を辿るしかないのだ。

今この世界の技術を維持できるのは人間であって、魔女ではないのだ。

(´・ω・`)「これは喧嘩なんて生易しいものじゃない、戦争なんだ。
   終わらせるには、どちらかが絶滅の道を辿るしかない。
   だから僕は人間と協力して、魔女を殺してきたんだ」

人間が血迷い、魔女を滅ぼそうとした時点ですぐにもショボンは人間側へついた。
そう、人間に魔女は見分けられない、最低でも人間側に一人は魔女が必要なことを知っていたから。

そして彼は血で血を洗い続けた、今日に至るまで。


31 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:27:15.81 ID:i7MwlZhN0
川 ; -;)「どうして……自分たちが死ぬ道なんかを選択するんですか……」

これ以上誰も死んで欲しいと思っていなかったのに。
ジョルジュの死があんなにも彼女の心に傷跡を残したのに、なのにどうして死のうなんて。
クーはとうとう我慢しきれなくなり涙を流したが、その涙にショボンが心動かすことは無かった。

(´・ω・`)「言っただろう、魔女が生き残ってもこの世界は回らない、結局は滅んでしまうんだ。
   そして和解が無理なのも言っただろう、分かったことだろう」

川 ; -;)「だからってそんなの……あんまりです……」

涙を流すクーに、ショボンは「すまない」とだけ言った。
そして今度はブーンとツンに向く。

(´・ω・`)「しかしそれも……今日で終わりだ」

ショボンの目は、明らかにツンに向いていた。
まさか……嫌な予感がした。

(´・ω・`)「君で最後だ、ツン君」

ξ;゚听)ξ「ひ……っ!」


33 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:29:20.72 ID:i7MwlZhN0
恐怖で後ずさるツンに、構わず歩を進めるショボン……と、その前にブーンとクーが割り込んだ。
ショボンは足を止めた。
切なげな独特の表情は崩れない。

(´・ω・`)「また……君たちは魔女を討つのを止めるんだね」

(#^ω^)「何でだお、ツンまで殺す必要なんてどこにもないお!」

川#゚ -゚)「もう止めて下さい、これ以上の犠牲に何の意味があるって言うんですか!」

ξ;゚听)ξ「二人とも……」

叫ぶ二人に、ショボンは肩を竦めた。
そして振り返り、反対に歩き始める。

(´・ω・`)「愛されているね、ツン君」

ξ゚听)ξ「……はい、ショボンさんも」

(´・ω・`)「……」


35 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:31:25.07 ID:i7MwlZhN0
ショボンは言葉を失って、ただひたすらに足を進めた。
他の四人とは次第に距離が離れていく。

十数歩進んだか、突然足を止めた。
しかし顔はこちらを向けない。

(´・ω・`)「ツン君、一つ約束してほしい」

ξ゚听)ξ「……はい」

(´・ω・`)「金輪際魔女の力を使わないと、約束してほしい」

ξ゚听)ξ「約束します、誓います」

即答すると、ショボンはふっと笑って振り返った。
いつもの表情、いつもの表情だが……どこか笑っているようにすら感じた。

(´・ω・`)「約束だ」

そう言ってショボンはポケットから銃を取り出した。


40 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:33:29.79 ID:i7MwlZhN0
(;^ω^)川;゚ -゚)「ショボンさん!」

(´・ω・`)「……」

その銃を自分のこめかみにあてがうと、僅かに涙を流す。

(´・ω・`)「僕は……嬉しいよ、人間と分かり合える魔女がいてくれることを、誇りに思う」

川 ; -;)「止めて下さい、もういいんです、何も殺さなくてもいいんです!」

(;^ω^)「止めるお、ショボンさんが死ぬことなんかに意味はないお!」

ξ;゚听)ξ「何でですか、私だけ生き残っても……そんなのおかしいですよ!」

(´・ω・`)「……僕だって」

カチリ……と、ショボンは撃鉄を引いた。
指をしっかりと、トリガーに掛ける。

(´;ω;`)「僕だって死にたくない……でも、僕だって……人間が、憎いんだ」

子供のように泣きながら、震える口から声を漏らす。


43 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:35:34.57 ID:i7MwlZhN0
ショボンは涙をすぐにも拭うと、ある男を呼んだ。

(´・ω・`)「ドクオ」

('A`)「……はい」

突然呼ばれたにもかかわらず、ドクオは落ち着いて返事を返した。

(´・ω・`)「君は……『復讐』についてはどう思う?」

('A`)「復讐ですか」

ふーっと長く息を吐き、ショボンに向き直る。

('A`)「少なくともギコの復讐は無意味で自分勝手ですね。
   相手を殺しても、喜ぶ魔女はもうこの世にいないのに……
   ギコもそれで本当に喜ぶわけではないでしょう?
   何がしたいかわからないです、馬鹿げてます」

(´・ω・`)「無意味で自分勝手でバカか……違いない、僕も魔女の復讐など本当にそうだと思うよ。
   やっぱり君を選んだのは正解だった、君の話を聞くたびに迷走していた自分を律せれた。
   これでいいんだと自分の考えに自信を持って、確固たるものに出来た」

('A`)「ありがとうございます、ただ……」

ドクオがここで含んだ。
ショボンが押し黙ると、確かにこう言葉が返って来た。


47 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:37:39.86 ID:i7MwlZhN0
('A`)「あなたが死んだら、ギコ含め全ての意味はありませんよ?
   いい現世を残した所で、あなたが死んでは無意味です。
   このままで……世の中を変えなくていいのですか?」

思わぬ言葉にショボンは再び涙腺が緩みそうになる。
どうして、今まで自分の考えを支援してきてくれたのに、
どうして最後の最後でこう渋るような事を言うんだ。
決心が緩むじゃないか、ここまで頑張って円滑に事を運んできたのに……


台無しじゃないか。

(´・ω・`)「もっと早く、そして君をギコに出会わせたかったよ」

('A`)「そうですね、俺もこの無意味なことに力を注ぐ貴方たちとはちゃんと話したかった。
   何を考えているのかを」

ドクオとの話を終えると、ショボンはまた四人に背を向けた。


48 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:39:44.50 ID:i7MwlZhN0

(´・ω・`)「人間よ、僕達魔女の死を背負って生きるがいいさ……」



そして目を瞑った。



(´・ω・`)(こんな時ばかり、雨の音が大きく聞こえるな……)




パン、と、一際大きな音が鳴り響いた。



男は昏倒した。


51 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:41:49.55 ID:i7MwlZhN0
音がすると同時、クーとブーンはすぐにもショボンに駆け寄った。

川;゚ -゚)「ショボンさん!」

無理だ、無茶だ。
死んでいるに決まっているのに、そう思っているとまだ息があった。
苦しんで、生死の狭間を彷徨っていた。

川;゚ -゚)「ドクオ、救急車に連絡を入れてくれ!」

(;^ω^)「ショボンさん、ショボンさんしっかりするお!!」

(´;ω;`)(……痛い……痛いよ……)

声が出ない、そして激痛。
そんな中、ショボンはギコとの出会いを思い出していた。


53 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:44:06.85 ID:i7MwlZhN0


人間側についていたショボンと戦うギコ。
当時の彼はまだまだ荒削りで、魔女としての力はあったがすぐにもショボンが取り押さえ、勝利を決めた。
最後に言い残したことはないかと言うと、こんな答えが返ってきた。

(メ;゚Д゚)『へへ、俺が死ねば……同胞が爆弾を爆発させるぜゴルァ、ざまねぇな……』

そのときにショボンは決めたのだ、彼をダシにその生き残り集団を片そうと。

(´・ω・`)『そうかい、随分用意が良いようだね……決めた、君に協力しよう』

(メ;゚Д゚)『な、どういうことだ!?』

(´・ω・`)『そのままさ、僕は君のような魔女を待って、ずっと人間側についていたんだから。
   君のような復讐に一直線な魔女の役に立つために、人間側に潜入しているんだから』

当然初めは半信半疑だったようだが、信用を得るためにさまざまな策を弄した。
信用のために人間側のディープな情報もかなり売ったし、ばれない範囲で人間側を裏切る行動を何度ととった。
そして時間を掛けて少しずつ信頼を得ていった。

そうだ、そのおかげで……ついにこの無意味な戦いを終わらせることが出来たのだ。
長年の頑張りがとうとう実ったのだ。


56 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:46:10.85 ID:i7MwlZhN0


(´;ω;`)(やっと、念願の夢が……かなったのにな……)

誰の声も聞こえない、誰かに触れられているのかどうかも分からない、
自分が今どんな姿勢でいるのかも分からない。
ただひたすらに、痛みだけの世界でショボンは泣いた。

(´;ω;`)(なのにどうして……こんなに辛いんだろうな……)


川 ; -;)「ショボンさん、ショボンさん!」

脈は次第に力強さを失っていく。
息はもう絶え絶えだ。

( ;ω;)「起きるお、目を覚ますお!」

ξ;゚听)ξ「ショボン、ちょっと何でよ!」

目を開くことはない、体もまったく動かない。
そして呼吸は次第に弱々しくなっていき……。

( ;ω;)「ショボンさんショボンさん!!」

ブーンは叫んだ、力いっぱい……喉がいかれそうなほど声を張り上げた。

( ;ω;)「こんなのってないお、こんな終わり……あんまりだおッ!!」


62 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:51:22.16 ID:i7MwlZhN0
エピローグ『日日草』


人間というものは実に醜いものだ。
他人のためには何も出来ない、自分のためにしか動けない。

『自分勝手』なんだ。

喜怒哀楽や愛する嫌うといった感情、これらもすべて自分勝手なんだ。


それにしても人間というものは不思議なものだ。
彼らは自分は死なないと思っているのだから。

今日死なない保証はどこにもない、明日がいつも通りやってくる確証はない。
それほど身近に『死』が存在していることに気付かず、人間は先の事を考える。
「明日の晩御飯はどうしようか」、「今週末は何しようか」……まったく愚かだ。

そして彼らは「80まで生きれればいい」などとふざけた事を言うのだ。

それまで生きれる保証はないのに生きるつもりでいて、それ以上は結構だと丁寧に断るんだ。
それでいて彼らは、『死』んだ『その後』は考えないんだ。
死ぬとは何か、死んでどうなるのか……彼らはそれに興味がないのだ。


実に愚かだ。


63 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:53:28.35 ID:i7MwlZhN0
青く広がる空、いつもの青い空。
しかしそれが明日も続くとは限らない、明日も見れるとは限らない。

少し肌寒くなってきた風がまた、そんな哀愁にふけさせるのか。


黄色ばんだ安物のカップからコーヒーを口に運んだ。


窓を閉めようと思うが、体が動かない。

しかしそんな自分を察してくれたのだろう、見舞いにきてくれたその人が窓を閉めてくれる。

軽く御礼を言うと、「どういたしまして」と返ってきた。


65 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:55:33.72 ID:i7MwlZhN0
その後、彼女はお見舞いのリンゴを取り出して果物ナイフで皮をむく。
見る見る間にリンゴは裸となり、小さく分断されて自分の前に出てきた。
器用な人だ。

川 ゚ -゚)「食べないんですか?」

(´・ω・`)「いや、頂くよ」

たどたどしい手付きでリンゴに刺さった楊枝を掴み、口に運んだ。
プルプルと震えながらも何とか落とさずに運びきる。
爪楊枝は持ちにくいから難しいが、それでもそれなりにこなせるようになってきた。

川 ゚ -゚)「食べさせてあげましょうか?」

(´・ω・`)「流石に遠慮しておくよ」

笑いを沿えて、もう一切れ口に運んだ。


食べる……か、人は生きるために食べるのだろうか、それとも食べるために生きているのだろうか。
欲求というのは生きるために産まれるものなのだろうか生きるから産まれるものなのだろうか。

食べる事だって生きる人間の我侭かもしれないのに。


72 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:57:39.49 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「何ですか」

(´・ω・`)「僕はどうして生きているんだろう、四肢が思うように動かないこの状況で。
   何を頑張ってリハビリなんてしているのだろう、死んでしまってもいいのに」

川 ゚ -゚)「私が許しません」

(´・ω・`)「君が許さないか……、手厳しいね。
   いい加減僕のことはもう良いよ、だ――」

突然喉が詰まり、激しい頭痛がくる。
咳き込む、涙が出るほど苦しく痛い。

辛い。


しかしいつものことだ、しばらくもすれば落ち着いて痛みもおさまる。


73 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 21:59:33.93 ID:i7MwlZhN0
(´・ω・`)「もう僕は死にたいんだ、だからもう構わないでくれていいよ。
   ニ年もの間、本当に感謝している、でも……やっぱり僕はこのまま生き続けても考え直せると思わない。
   体が元に戻れば、ギコの遺志を継いで人間たちに復讐するかもしれない」

言ったが、クーは訝しげな顔をすることはなかった。

川 ゚ -゚)「本当に人間を恨んでいる人が、看護婦さんに付き添ってもらってまでジョルジュの墓参りには行きませんよ」

(´・ω・`)「……」

ここぞとばかりに彼女の頬が緩んだ。
まったく、恥をかかせられた。
気付いているのなら言っておいてくれれば良いものを……一体いつから気付いていたのか。

川 ゚ -゚)「二ヶ月くらい前から行きだして、大体週一ペースで行ってますよね」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「いえ、どこまで私が知っているのか聞きたそうな顔をしていたので」

そんなに僕に恥をかかせて何が面白いのやら。


75 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:01:38.84 ID:i7MwlZhN0
川 ゚ -゚)「そういえばブーンとツンの結婚式、明日じゃないですか」

(´・ω・`)「そうだね、僕は検査でいけないから残念だよ」

川 ゚ -゚)「そうですか、『残念』なんですね」

(´・ω・`)「……」

いい加減しつこい、相も変わらず嫌な笑みだ。
それももう見慣れたものだが。

(´・ω・`)「そろそろ時間だろう、早く仕事に戻らなくても良いのかい?」

川 ゚ -゚)「本当ですね。でも今日は仕事道具を持って来たので問題ないです」

(´・ω・`)「……そうかい」

戦いから離れ、社会に出たことで女性らしく話すようになったが性格は歪んでしまったようだ。
元々の彼女は少し素っ気無いくらいで、それでも真っ直ぐな女性であったというのに。
悪態をつく自分など露知らず、彼女は隣で分厚いファイルをペラペラと捲りながらパソコンを起動させている。



そうか……件の日からもうニ年も経つのか。


77 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:03:43.32 ID:i7MwlZhN0

実際人間はこめかみを真横に打ち抜いても即死しないらしい。
痛みにもがき、苦しみながら死んでいく無残な死に方となるから、こめかみを打つ時は少し銃口を下げろと注意された。
とんでもない医師がいたものだ。


ニ年前、病院に運ばれてから一ヶ月あまり眠っていた。
そして目覚めた自分を待っていたものは、四肢が不随で声が出せない状況だった。
思考が働くだけでも十分奇跡だと言い聞かされた。

リハビリを繰り返し、声が出始めたのが一年前、最近では時たま喉に痛みを感じて詰まるが、それ以外では流暢に話が出来るにまで回復した。
腕は生活を重ねる内に右手の指が徐々に動き始めた。
その他は全くだが、リハビリをニ年続けてようやく指はそれなりに動くようにはなった。
肩はまったく動かず、肘は何とか駆動するくらいだがそれでも端やコップが使えるようになっただけでも進歩だ。



(´・ω・`)(……進歩か)


78 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:05:52.17 ID:i7MwlZhN0

社会はニ年前、魔女事態が公となり激しく混乱した。

クーが代表して社会に訴え、すべてを赤裸々に話した。
何も知らない国民たちは国を批判し、そしてそんな事をわざわざ主張するなとクーに対する批判も多かった。

それでも彼女は負けずに主張し続け、とうとう国は罪を認めた。


国が犯罪を隠蔽していたんだ。

その犯罪がまた陰湿で、あまりに残酷なもの。

国家は崩壊したといっても良かった。

未だにその論議は続き、政治界では混乱してばかりで思うように国家は安定していなかった。


それでもこうやって不自由なく日々が過ごせているのは、やはり『人間が勝った』からだろう。
自分の考え通り『人間』がいれば世の中は機能するのだ。

どことなく悲しくなった、今までにない感覚だ。


80 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:07:59.55 ID:i7MwlZhN0

発展という視点で見れば、15年程前に魔女と人間が協力して飛躍的に上昇したが、
5年前の『魔女の反乱』(人間的目線ではこういう表現しかされないのが魔女としては悲しいが)により魔女の援助を失った人間社会は発展が横ばいに。
今でもそれは変わらず、生活に大きな変化は見られない。

もっとも前述した通り、国家を建て直す方が先決なのだろうが。

犯罪も随分と増えているらしい、国家が安定しない今当然だろう。
人間らしいといえばそれも人間らしい。



(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「なんですか?」

(´・ω・`)「この前の試供品の栄養剤だけど、飲み難過ぎると思う。
   中高学生までターゲットにするならもう少し苦味を減らすのは必要じゃないかな?
   銘の打ち方も抽象的過ぎてそそられないね」

川 ゚ -゚)「苦味に標語……ですね、ありがとうございます」


81 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:10:04.91 ID:i7MwlZhN0
カタカタと打ち込みを開始するクーを見て、思わず笑みが出た。
天下の魔女が、今では薬品会社のモルモットだ。

魔女の時は心を動かさないようにと表情が固まっていたはずなのに……
今では皮肉ばかりの日々を過ごしているものだから、これまた皮肉な笑みが漏れてしまう。

川 ゚ -゚)「何笑ってるんですか、気持ち悪いですよ、ショボンさん」

(´・ω・`)「……」


ほら、またぞろ皮肉で笑うしかないだろう。








83 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:12:19.75 ID:i7MwlZhN0


ξ゚听)ξ「ブーン、待ってよぉー」

( ^ω^)「ツン、遅いお……」

ξ#゚听)ξ「ブーンが速いのよ! ほんっと女性の気遣い出来ないわね……」

ぐじぐじ言い出したツンを待って、仕方なく揃って歩く。
いや、仕方なくといっても当然元より置いていく気もない。
ただ辛そうに坂を登る姿を見るていると少し意地悪したくなってしまうが、『仕方なく』意地悪なしで一緒に歩いているのだ。

小学生みたいだなんて自分で思った。

ξ゚听)ξ「何でここのお墓ってこう高い所にあるのかしら……」

( ^ω^)「いっつも同じ事言って登ってるお」

ξ#゚听)ξ「うるさいわね、いつも気になるからいつも言ってるの!」

そう言い合いながらしばらく登りつづけると、ようやく目的地へ着いた。
沢山の墓が秩序を保って建ち並ぶ。

花をツンに預けると、水を用意した。


84 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:14:24.92 ID:i7MwlZhN0
まずは一直線に、一際大きな墓へと向かう。
殉職扱いとなり、いまや英雄の一人でもあるジョルジュさん。
そう、死んで英雄などと言われても生きている者達の自己満足でしかなく、自分はむしろ馬鹿にしているようにすら聞こえてしまう。

そんなジョルジュさんのお墓には、見知らぬ人達から頂いたのだろう、沢山の花が飾られていた。

( ^ω^)「ジョルジュさん……」

花を添えて水を掛けると、二人で揃って手を合わせる。

……。




そのまま次は横の墓へ移動する。


88 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:16:30.22 ID:i7MwlZhN0
その横の墓は六つ並んでいる。
そう、魔女たち六人の墓。


ツンと無言で順順に参っていく。

最後、ギコさんの所では少し長めに手を合わせた。


そして歩いていると、見知った顔に会った。

ξ;゚听)ξ「あ……」

ツンがあからさまに嫌そうな顔をする。
そんなに嫌わなくても……と思ったが、当の本人はどこ吹く風で全く気にする素振りは見せない。


('A`)「おう、お二人さん。相変わらずお熱いことで」


( ^ω^)「ドクオ」


90 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:18:34.03 ID:i7MwlZhN0
ドクオとは久しぶりに顔を合わせた。
今でもネットで会話はするが、会社で働く自分は思うように時間が取れずその回数は週三回程度になっていた。
会うのは一ヶ月ぶりくらいか。

( ^ω^)「それにしても、ドクオが墓参りだなんてどんな風の吹き回しだお?」

('A`)「ああ、俺も死者を弔う意味がわかんねーし、これだけ沢山の中から望みの墓以外は見向きもしない……
   なんてのはどうも納得いかないんだがな。
   親戚に言われて渋々だよ」

ドクオは相変わらずニートを続けている。
今は親戚の家に預けられたといっていたが(それが要因で会う機会が減ったのは言うまでもないが)、親戚からも疎まれているらしい。

('A`)「ブーンも随分社会人続いてるじゃねーか」

( ^ω^)「社会人には社会人の発見があるお、上司もそれなりにいい人で、結構恵まれているお」

「ふーん」と興味なさそうな返事をしながら、ドクオは母親の墓に花を添えた。
それにしても花が多過ぎる気がするが……。

('A`)「……いかんな、花を買いすぎた」

( ^ω^)「それじゃ、ついでにジョルジュさんたちの所を参るお」

('A`)「……まぁいいか、どうせ余り物だ」

そしてドクオは順順に、ジョルジュさんと魔女たちの墓を参った。


91 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:20:42.72 ID:i7MwlZhN0
('A`)「あー……」

それでも、まるで計算したかのように一本余った。
赤くのっぺりとした、綺麗な花。

('A`)「……お前にやるわ」

( ^ω^)「おっおっ、ありがとうだお」

正直に受け取った横で、ツンが「うげー」と気持ち悪そうにしていた。

ξ゚听)ξ「一本だけならギコの所についでに供えればいいのに……」

('A`)「秩序を大切にしてんだよ、バランスが崩れないようにな。
   それじゃ俺は帰るかな」

手を振ると、愛想もなくドクオは帰路に着く。

ξ゚听)ξ「ちょっと待ちなさいよアンタ、そういえば明日私たちの結婚式だけど来ないってどういうことよ!」

('A`)「めんどい」

そう言って片手を上げると、そのまま振り向きもせずに歩いて行ってしまう。
そして見えなくなってしまった。


94 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:22:46.88 ID:i7MwlZhN0
ξ#゚听)ξ「あー、もうあいつ本当に勝手ね! 私だけならまだしも、ブーンも祝わないなんて!」

( ^ω^)「違うお、ツン」

ξ#゚听)ξ「何がよ」

そう聞き返すツンの前に、さっきドクオから受け取った花を差し出した。
一瞬キョトンとしたが、次に理解し、ため息をついた。

ξ゚听)ξ「なるほどね、結婚祝いがこれか……でもちょっとお墓参りの花って……」

( ^ω^)「そういう奴なんだお」

はじめドクオを見つけた時も、彼は座り込んでいた(罰当たりであるが)。
きっと自分たちが来るのを待っていてくれたのだろう。
そして、ジュルジュさんや魔女にも参るつもりだったのだろう。

自分たちの前でワザと言い訳したんだ、見かけによらず恥ずかしがり屋な奴だ。


96 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:24:51.62 ID:i7MwlZhN0

ツンはその花を僕の手から奪うと、ブラウスの胸ポケットにストンと入れた。

そして伸びをした。


自分もそれに応えるように、彼女の唇に唇を重ねた。


ほんのりと、日日草の香りがした。







          ブーンが魔女を狩るようです・END


109 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:26:55.47 ID:i7MwlZhN0
〜〜あとがき〜〜


このお話を最後まで読んで頂き本当にありがとうございます。
そして本当にすみませんでした。

この話は、データが一度消えてもう書く気が無くなっていたものでした。
ただ「魔女狩り」を作っていると公言したので少しづつなんとか書き進めたのですが・・・
戦闘シーンが書けないと悩んでいたらそのまま地の文自体が書けなくなってしまい本当に拙い作品が出来上がってしまいました。
それでもうどうでもいいかと永遠に封印しておこうと思ったのですが、某スレで自分が何か書かないのかや
文章力があるなどとありがたいお言葉を頂け、嬉しい反面この作品を見て溜息をこぼしもう姿を眩まそうかと思っていました。


ただ、だったら逆に自分の印象を壊してしまおうと中途半端な出来にも拘らずに投下を始めたのがこの作品になります。
「仮病」は突然の投稿で大変驚かれたと思います、こちらも自分のイメージを壊してしまおうと作った作品の一つです。
ゲリラ投稿を画策していたのですがその前に出番が来る事になるとは・・・想定外でした。


111 名前: ( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです [] 投稿日:2006/12/04(月) 22:27:22.63 ID:i7MwlZhN0
本来ならこの作品に更に細かい描写や「魔女の過去」、日々の生活などを入れようと思っていたのですが、
申し訳ありませんがそんな元気がありませんでした。
毎日投稿も意外に大変なもので、一応投稿前に最終チェックはしていたのですがいかんせん駄文の投下が多かったです。
そういう意味ではまったく削る所の無い、読者置き去りで変化ばかりの物語になってしまいました。

そのため、読者の方々には全般的に厳しいお言葉を頂戴しました。
また、それにも拘らずwktkしていただけた方々には本当に感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいです。
本当にプレッシャーに勝てないチキンな人間ですみません。


ただ、「痛み」などによる設定ミスや戦闘シーンの粗末な出来につきましては自分の力そのものです、いい訳は一切ありません。
同じくプロット自体のデータは消えていないので、一連の流れは自分の考えそのものです。


個人的にはこの作品を投下し終える事が出来、本当に安心している気持ちが一番大きいです。
ずっとこの作品が尾を引いていましたので・・・。

まとめていただきましたオムライス様に蛇屋様、特に蛇屋様は最後の最後にここでのお礼となってしまいすみませんが、
毎日の更新ありがとうございました。
また支援から保守、そしてwktkに至るまで数日の間自分の作品を支えて下さいました皆様、本当にありがとうございました。


言い訳するくらいなら作者らしく作品投下しろって感じなので、質問がなければこのまま新作投下に移行したいと思います。




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