10 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:01:42.27 ID:Pu1O83EQ0
午後八時。
VIPホテル前は騒然としていた。
多数の車両が駐車してあるホテル前の広場。
その外側には非常線を張る警官。
ブーンは身分証明書を見せて非常線を抜け、広場に車を止めた。
ホテル前では麻薬班のチームと重犯罪課のチームが円陣を組んで打ち合わせをしている。
重犯罪課のメンバーは五人で、自動小銃を携行し、カーキ色の制服を着込み威圧的だ。
二人はその円陣にそっと近付き聞き耳を立てた。
打ち合わせを盗み聞きした結果、
現在ホテル内にいるのは荒巻と身体強化者のみであること。
ホテル従業員ならびに宿泊者は既に非常線外に退避完了していること。
ホテルの出入り口は全て重犯罪課が押さえていること。
突入はまさに今、重犯罪課を先頭にし麻薬班がサポートに当たること。
以上の事がわかった。
11 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:05:28.24 ID:Pu1O83EQ0
川 ゚ -゚)「よし、麻薬班の後に続いてついていこう」
( ^ω^)「そんなのすぐバレますお」
川 ゚ -゚)「許可は出ているんだ。バレてもいいさ」
その時、円陣の方から聞き覚えのある声が響いてきた。
( ゚∀゚)「なんだ、お前ら。少年課と分室がこんなとこで何やってんだ」
声をかけてきたのは麻薬班のジョルジュだった。
( ^ω^)「速攻バレましたお」
川 ゚ -゚)「私達にも現場に入る許可が下りたのです。
最後方から行きますので、ご迷惑はおかけしません」
( ゚∀゚)「んあぁ、まぁ、許可があるならいいけどよう。邪魔だけはすんなよ。死ぬぞ」
13 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:09:28.43 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「流石ジョルジュさん、話が早いですお」
( ゚∀゚)「まぁ、なんだ、俺ら麻薬班もオマケみたいなもんだからな。
処理は全部重犯罪課がやるだろうさ」
ジョルジュはややなげやりな調子で答えた。
本来握っているはずの主導権は重犯罪課に持って行かれたようだ。
その時、重犯罪課のリーダーのモララーが号令を発した。
( ・∀・)「本部から突入指令だ!
ゾンビ学者とマッチョのケツに二つ目の穴をこさえてやれ!」
モララーはベテランの重犯罪課員で、数多くの事件で功績を挙げている男である。
カーキ色の制服に身を包み、精悍で鋭い容貌をしている。
号令をかけた後、ホテル入り口に向かって歩き始めた。
( ゚∀゚)「おぅ、行くぜ。お前ら遅れんなよ」
15 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:13:28.21 ID:Pu1O83EQ0
重犯罪課のメンバーが正面玄関から突入する。
それに続いて麻薬班が突入し、残りの面子は裏口を固めた。
ブーンとクーは更にその後に続いた。
ホテル内はがらんどうで、静まり返っていた。
その中を武装した一団が踏破する。
目標の部屋まで一切の躊躇は無かった。
荒巻の逗留している部屋のドアを前にして、重犯罪課は左右に分かれ、ガスマスクを装備した。
モララーが声をひそめて指令を出す。
( ・∀・)「的は身体強化者だけに絞れ。荒巻はとりあえず無視して構わん。
室内は狭い。面で斉射すればいくら身体強化者でもかわせないはずだ。
兆弾に気をつけろ」
17 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:17:28.63 ID:Pu1O83EQ0
言葉が終ると同時に、皆は一斉にガチャリという音を鳴らして安全装置を外した。
( ・∀・)「突入!」
号令とともにドアを破り、催涙弾を投げ込むと同時に突入する重犯罪課メンバー。
その様子を少し後ろから伺う麻薬班。
さらにその後ろにブーンとクー。
炸裂音の後、部屋の中から自動小銃の斉射音が響いた。
何かが壊れ弾ける音。
そうして幾程の時間が流れたのであろうか。一瞬とも一分とも感じられる時間の後、
重犯罪課の五人が銃撃しながら部屋から後ずさりし、じわじわと後退し始めた。
18 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:21:28.55 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「くっ、バ、バケモノか!?」
モララーは我が目を疑っていた。
確かに銃弾は命中しているはずである。しかも、文字通り蜂の巣に。
それでもこの怪物は一歩一歩前進してくるのである。
重犯罪課リーダーとして四年間、重犯罪課に通算十年間勤め上げてきたモララーだったが、
こんなに信じられない、訳のわからない恐怖を受けた経験は初めてだった。
去年のキャンディ一斉摘発の時にも身体強化者を何度も相手にした。
しかし、銃弾が当たればそれらは直ぐに沈黙したのだ。
今日の相手は全く別物である。
( ^ω^)「なんだかおかしいお・・・皆さがってくるお」
川 ゚ -゚)「嫌な予感がする。我々はもう少し下がろう」
( ^ω^)「賛成ですお」
22 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:25:28.82 ID:Pu1O83EQ0
二人がまさにさがろうとした時、重犯罪課メンバーは全員廊下にまで押し返されていた。
もはや銃声は聞こえない。
そして、部屋から身の丈二メートルは超えているであろうガスマスクを着けた巨躯が現れた。
( ゚∋゚) 「・・・・・・」
その男――おそらく――はガスマスクを脱ぎ、無言で一歩一歩確実に歩み寄ってくる。
その目には何も映っていない様だった。意思という物が欠落しているように思える。
重犯罪課メンバーは皆恐怖に目を見開いていた。
今そこにある死が見えていた。
死が歩いて近付いてくるのだ。
( ・∀・)「撃てッ!怯むな!」
モララーの必死の号令に反応し、重犯罪課が一斉射撃を男に浴びせる。
狭い廊下で弾丸を避けようともせずに男は迫る。
弾丸は男の身体に命中してはいたが、まるで鋼鉄の様な身体にそれは跳ね返されていた。
糞!とモララーは毒づく。
27 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:29:26.44 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「全員ホットロード装填!頭だ!頭を狙え!」
そう叫ぶと弾薬が過剰に詰め込まれた弾丸の弾倉を小銃に詰め込み、フルオートで発砲した。
今までの銃声とは違う音が響く。
重犯罪課の最後の一斉掃射に大男の歩みが止まった。
弾丸が顔面に命中し、大男の顔が跳ね上がる。
しかし、致命傷にはなっていない様だった。
( ^ω^)「バケモノですお・・・」
ブーンが呟いた瞬間、大男が動いた。
( ゚∋゚) 「・・・・・・」
その巨躯からは想像も出来ない速度で重犯罪課の五人に接近する。
それと同時に重犯罪課のメンバーが一人空中に浮いた。
大男の強烈な蹴り上げを受けたのだ。
29 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:33:27.14 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「牽制しつつ後退!麻薬班は総勢ホテルの外へ退避!」
モララーの号令に重犯罪課がじりじりと下がり始める。
麻薬班は後ずさりしながらホテルの出口へ向かった。
大男と重犯罪課四名とジョルジュとブーンとクーが廊下に残っている。
( ・∀・)「お前達、何をしている!早く撤退しろ!」
( ゚∀゚)「おれは一応責任者だからな。面子ってものがある」
ジョルジュはそう言って懐から銃を取り出した。
( ^ω^)「これはまずいお。早く逃げるに越した事は無いですお」
川 ゚ -゚)「確かに私達は足手まといだからな」
( ・∀・)「早くしろ!持たんぞ!」
31 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:37:27.18 ID:Pu1O83EQ0
モララーが叫んだ時、大男は再び突進をした。
車に跳ねられたかの様に重犯罪課のメンバーが二人壁に叩きつけられた。
鈍い音がして、二人は動かなくなる。
( ・∀・)「糞!撤退だ!格好付けて死ぬこたぁない!
手持ちの装備じゃコイツはやれない!全員撤退!」
大男はさらに突進した。
強烈なアッパーカットを食らい、もう一人の重犯罪課メンバーが天井に叩き付けられる。
どさり、と砂袋のような音を立てて落下したその身体は、もう動く事は無かった。
廊下で動いているのはもはや大男と四人だけであった。
大男は静かに体制を整え、モララーに向かって歩を進める。
( ・∀・)「俺がここで食い止める!お前らは早く逃げろ!」
( ゚∀゚)「嫌だね。俺は借りを作るのが嫌いな性質なんでね」
そう言ってジョルジュは大男めがけて発砲した。
( ・∀・)「馬鹿が。おい、そこの二人、早く逃げないか!」
川 ゚ -゚)「ブーン、私達に出来ることは無い。ここは逃げよう」
( ^ω^)「元よりそのつもりですお。ジョルジュさん!死んじゃだめですお!」
33 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:42:10.02 ID:Pu1O83EQ0
ブーンがそう言い終わるや否や、当のジョルジュは大男に弾き飛ばされていた。
正面からショルダータックルを受けたのだ。
ジョルジュは消火用具が詰められている鉄製のケースに打ち据えられ、意識を失った。
ブーンが慌てて駆け寄る。
( ^ω^)「ジョルジュさん!しっかりするお!」
ブーンの呼びかけ虚しく、ジョルジュの意識は戻らない。
しかし、息はあるようなので、今すぐ死ぬということは無いだろう。
無論、内臓などがやられていなければの話だが。
ブーンがジョルジュに駆け寄っている間、モララーは必死の抵抗を行っていたが、
奮闘虚しく大男に捕まってしまっていた。
両手でモララーの首を絞める大男。
ミシミシという音を立ててモララーの頚椎が歪む。
――絶体絶命。
一部始終を離れて見ていたクーの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。
しかし、そんなクーの視界に大男に向かって動くものが入り込んだ。
焦点を合わせると、それは消火器を持ったブーンだった。
35 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:45:26.98 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「うわあああぁぁ!!」
川 ゚ -゚)「お、おい!やめろ!戻るんだブーン!」
クーの静止の言葉も聞かずに、絶叫して突っ込んでいくブーン。
大男の直ぐ脇まで突進したブーンは消火器を噴射した。
白い煙が大男の顔面を襲う。
大男の目に大量の消化剤が吹き付けられた。
( ゚∋゚)「ヲヲヲヲヲ・・・」
大男が初めて口を開き叫ぶ。
モララーを掴む手が少し緩んだ。
モララーはこの好機を逃さなかった。
自動小銃を大男の口にねじ込み、血の泡をふきながら声を絞り出す。
( ・∀・)「お休みの時間だ・・・クソッタレ・・・」
銃声が響いた。
口内から後頭部を撃ち抜かれた大男は、モララーを掴んだまま仰向けに倒れていった。
ドスンという重い音と共に大男はその活動を停止した。
ブーンがモララーに駆け寄り、大男の手から救出する。
モララーは何度か咳き込み血を吐いたが、命に別状は無いようだ。
38 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:49:26.81 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「た、助かったぞ・・・流石に死ぬかと思ったが・・・」
( ^ω^)「喋らない方がいいですお」
( ・∀・)「俺のことはいいから・・・荒巻を確保しろ・・・」
( ^ω^)「わ、わかりましたお」
クーが恐る恐る近付いてきた。
川 ゚ -゚)「やった・・・のか?」
( ・∀・)「この小僧のおかげだがな。さぁグズグズするな、部下の死を無駄にせんでくれ」
( ^ω^)「荒巻を確保しにいきますお」
川 ゚ -゚)「あぁ、わかった。行こう」
二人は駆け出した。
39 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:52:55.05 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「おい、麻薬班の・・・くたばったか?」
( ゚∀゚)「残念ながら生きてるぜ・・・身体は動かねぇがな」
ジョルジュの意識は回復していたが、全身に痛みが走り足に力が入らない。
( ・∀・)「お前、ウチに来いよ。給料いいぜ」
( ゚∀゚)「うるせぇ、もうこんな目に遭うのはたくさんだ」
( ・∀・)「いい素材なんだがな」
( ゚∀゚)「ハッ、気が向いたら考えてやるよ。期待するなよ」
( ・∀・)「いい返事を待ってるぜ。
ところであの二人、荒巻をとっつかまえられるかな・・・」
( ゚∀゚)「さぁなぁ、なんせ分室と少年課の刑事だからな」
40 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:56:03.73 ID:Pu1O83EQ0
一拍おいてモララーは驚きの声をあげた。
( ・∀・)「なんだと・・・そんなもん素人じゃねぇか。なんでこんな現場にいるんだよ」
( ゚∀゚)「分室の親分が訳ありでね・・・局長に顔が効くんだよ」
( ・∀・)「なんだよそりゃ・・・ゆっくり休憩も出来ないじゃねぇか」
そう言うとモララーは銃を杖にして立ち上がった。
フラフラと二三歩歩みだすが、そこでまた倒れてしまう。
( ・∀・)「心細いが・・・神頼みしかねぇか・・・」
モララーは通信機を手にとり、増援チームを要請した。
【関連】
一気読み
第一話
-
第二話
-
第三話
-
第四話
-
第五話
-
第六話
-
第七話
-
第八話
-
第九話
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1172989627/
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1173246578/