( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンは麻薬捜査官のようです 一気読み〜

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当サイトはブーン系小説の完結作品集 です。 読み物系は嫌いって方はご退場ください


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1 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:27:07.80 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)ブーンは麻薬捜査官のようです





3 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:28:08.18 ID:DOr29HKu0
从 ゚∀从「アハハハハハハハハハハハッ!!」

少女が突然叫びだしたのは、午後一番の授業中だった。
狂ったように叫ぶ少女の目は、明らかに常軌を逸したそれだった。
何も見てはいない、何も映してはいない瞳。

从 ゚∀从「アハハハハハハ!ガハッ・・・ガッ・・・グホ・・・・」

少女は咳き込み、苦悶の表情を浮かべながら倒れた。
そして少女は事切れた。


4 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:29:02.77 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「あーも−、寒いお。九時に空調切れるのだけは何とかして欲しいお」

N国首都ニューソク。
国家刑事局組織犯罪対応課特別分室。
通称「分室」の午後九時半。
毛布に包まりながらパソコンに向かい、入力作業を続ける一つの影。

( ´ω`)「手の感覚がなくなってきたお・・・僕はこのまま凍死するのかお・・・」

( ´ω`)「室長はズルイお。僕にばっかり雑用を押し付けて」

ぶつぶつと呪いの言葉を吐きつつ、地味な作業を続ける小太りの青年。
空調の切れた室内には、パソコンに向かう青年以外誰もいない。

明かりも青年のいる一角しか灯していない。
暗く冷たい室内に、カタカタとキーボードを打つ音が空しく響く。


5 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:29:35.01 ID:DOr29HKu0
永遠とも思える時間が過ぎた時、キーボードの音が止んだ。

( ^ω^)「やっと、やっと終ったお・・・。さっさと帰ってオナヌーでもするお」

携帯「疾風の様に〜ザブングル!ザブングル!」

( ^ω^)「お、ツンからだお。最近頻繁にかかって来るけど、僕に気があるのかお?」

青年がツンと呼ぶ人物は、刑事局前にあるカフェのウェイトレスである。
カフェは大規模な店で、刑事局の人間の癒し場になっている。
その従業員であるツンは、青年の意中の人物であった。


6 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:30:48.48 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「おっおっ、もしもしブーンですお」

ξ゚听)ξ『もしもしブーン?まだ仕事終らないの?』

( ^ω^)「今終ったとこだお。(そうだ、今夜のおかずはツンにするお)」

ξ゚听)ξ『相変わらずノロマな仕事してるわね。そんなんじゃいつまで経っても分室よ』

( ^ω^)「それは勘弁して欲しいお。(フヒヒ、ツンのアレな姿を想像してると・・・)」

ξ゚听)ξ『まぁいいわ。明日の約束忘れてないでしょうね?ちょっと、聞いてる?』

(;^ω^)「あ、は、はい、聞いてますお」


7 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:32:38.60 ID:DOr29HKu0
ξ゚听)ξ『何故敬語?・・・まぁいいわ、明日に備えて今日は早く寝るように!』

( ^ω^)「把握した。今日はもうツンをおかずにオナヌーするだけだから・・・ハッ!?」

ξ#゚听)ξ『最ッ低!!』

ブツッ、ツーツーツー・・・・

( ´ω`)「またやったお・・・。」

ブーン二十三歳の冬の夜であった。


8 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:34:52.85 ID:DOr29HKu0
―――小麦粉か何かニダ。
―――馬鹿もーんなんです!!そいつがニダーなんです!!
―――ようこそ分室へいらっしゃい〜。
――


携帯「そーらーに青い流星・・・」

携帯の着信音がブーンを眠りの世界から強制的に覚醒させた。

( ´ω`)「んんんー?・・・この着歌はドクオだお・・・。眠いお・・・今何時だお?」

携帯「ふーたーりービルの窓ーかーらー」



9 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:36:00.55 ID:DOr29HKu0
携帯の時刻表示は午前ニ時を指していた。
このまま携帯の電源を落として、再び睡魔に身を任せていたかったのだが、
組織犯罪対応課麻薬班のドクオが、昨日麻薬の取引現場を張り込むと言っていた事を思い出した。
何らかの成果があったのかもしれないと思い、ブーンは携帯を手にとる。

( ^ω^)「もしもし、こちらブーンですお。エリートのドクオさんが何の用だお?」

('A`) 『馬鹿な話をしてる場合じゃないぞブーン。エライ物が出てきたぜ』

( ^ω^)「アナルから糸蒟蒻でも出てきたのかお?」

('A`) 『<キャンディ>だ。ブローカーが一粒持ってやがった。』

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・」


10 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:37:13.71 ID:DOr29HKu0
<キャンディ>
文字通り飴玉型の麻薬で、荒巻スカルチノフ博士が精製したと言われている。
経口投与により摂取することで効果を発揮する。
覚醒作用が強く、使用者は覚醒状態に陥る事が知られており、副作用による死亡率は高い。
だが、二年前にこの街でキャンディが大流行したのだ。

キャンディがその死亡率の高さにも関らず広まったのには二つの理由がある。
第一にデタラメな安価で取引されていた為である。
それ故、ティーンエイジャーの間で爆発的に広まった。

もう一つの理由――これが真の流行の原因――が、身体強化作用。
骨格や筋肉はもとより、脳の神経伝達速度まで強化される。
つまり、「体力も知能も一時的にスーパーマンになれる薬」がキャンディの正体。

素手の人間が車を持ち上げ、弾丸をかわし、拳一つで鉄筋コンクリートを破壊する。
そんなモンスターが生成される悪魔の薬。


11 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:39:05.21 ID:DOr29HKu0
ただし、誰もがその恩恵を受けるとは限らない。
身体強化の効果が発現するのは、服用者の一〜ニ%のみである。

しかし、そんな効果を暴力組織は見過ごさなかった。
身体強化の発現者を集め、組織し、犯罪利用に走ったのだ。
凄惨且つ手の込んだ犯罪が多発し、その結果刑事局は一時事実上麻痺し、
街は数週間無法地帯と化した。

最終的には軍が導入され、刑事局と公安局と共に連動し、キャンディの一斉摘発および、
超人化した人間の処理と保護を強行した。
そうしてキャンディの脅威は去ったのである。

もし現在キャンディが闇組織で流通しているのなら、一秒でも早くそれを絶つべきである。
何時身体強化者が発現するかも知れない。手遅れになると街は再び無法地帯になるだろう。


12 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:39:59.01 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「あれは・・・あれは去年の一斉摘発で流通ルートを絶ったはずだお」

('A`) 『あぁ。俺もそう思ってたんだが、どうやら生き延びた連中がいるようだ』

( ^ω^)(あれが・・・あれが・・・また・・・そんなのはもう御免だお)

('A`) 『とにかく、今からキャンディを追わないと駄目だ。体裁は繕っていられない。
    分室にも出張ってもらうぞ。渡辺さんにはもう連絡がいっている筈だ。
    準備が出来次第、署に急行してくれよ』

( ^ω^)「把握した。あれはおもちゃにしては性質が悪すぎるお」


13 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:41:03.68 ID:DOr29HKu0
ブーンは携帯を切り、モソモソと着替えを始め、無意識にテレビの電源をつけた。
――キャンディが再び蔓延する――
そんなことを考えると、眠気も一気に醒めてしまった。
あの事件は忘れようとしても忘れられない。
ブーンが国家刑事局に入局する理由になった事件。
もうあんな悲しい思いは誰にもさせたくない。

テレビは深夜のオカルト番組を放送している。
ソウルメイトが云々、精神的に特別な繋がりを持つ人間同士らしい。
物思いに耽りながらブーンが着替え終わり、テレビの電源を切ったその時。


14 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:41:27.15 ID:DOr29HKu0
携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」

( ^ω^)「もしもし、ブーンですお。渡辺室長、今から署に向かうところですお」

从'―'从『あらあら、もう連絡が行っていましたか。それなら話が早いですね。
    分室にもやっと仕事がまわって来ましたよ』

渡辺はブーンが所属する組織犯罪対応課特別分室の室長である。
温厚な性格はブーンと馬が合うようで、良き上司と部下の関係にあるようだ。
常にマイペースなので、多少ブーンのやる気を削ぐ場合もあるが。

( ^ω^)「窓際にもほとほと飽きてきたところですお。良い運動になりそうですお」

从'―'从『よーし、それじゃ早速急いできてくださいね』

( ^ω^)「了解してラジャー!」

携帯を上着のポケットに入れ、コートを羽織る。
外へ出ると、しんしんとした冷え込みに身が縮こまるようだ。
冬の透き通った星空の下、ブーンは車に乗り込んだ。

( ^ω^)(長い一日になりそうだお)


16 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:45:29.19 ID:DOr29HKu0
その扉には「国家刑事局組織犯罪対応課特別分室」と、
ホワイトボードにサインペンで書かれている表札が貼り付けてあった。

国家刑事局とは所謂警察機構であり、犯罪の摘発や防止、抑止を行う機関である。
組織犯罪対応課は、主に暴力組織を専門に取り締まるスペシャリストであり、
暴力組織によって市井に流された麻薬を摘発するのが麻薬班の仕事だ。

ブーンと同期のドクオはここに所属し、日々暴力組織との暗闘を繰り広げている。
ドクオは素質があったのか、めきめきと頭角を現した。
今では組織犯罪対応課麻薬班の若き孤高のエースである。


17 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:46:07.38 ID:DOr29HKu0
何故孤高なのかと言うと、ドクオは他人に対して心を開く事が無いからである。
ブーンに対してのみ何故か心を許しているのだが、他人には一切自分を見せない。
それが何に起因するのかも、本人は語りたがらない。

一方のブーンは、課は同じでも「特別分室」という訳のわからない部署に所属している。
ルームプレートがホワイトボードにサインペンという仕打ちから大方想像はつくが。
分室にはもう一つの名称、否、蔑称がある。


18 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:46:31.91 ID:DOr29HKu0
「島」

島流しの「島」である。
ブーンは入局一年目にしてこの島に流された。
現在、島の住人は室長の渡辺とブーンの二人のみ。

業務内容は犯罪資料整理という名の雑用雑務。
当然、事件を調査したり現場をまわったりする事は許されていない。
要するに窓際族である。


20 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:47:21.45 ID:DOr29HKu0
午前三時

( ^ω^)「ブーンただいま到着しましたお」

勢いよく特別分室の扉を開けてブーンは飛び込んできた。

从'―'从「おはようございますブーン君。コーヒーが入っていますよ」

真夜中だというのにキッチリとスーツに身を包み、
豊かな黒髪を無造作に流しているこの女性が、室長の渡辺である。

( ^ω^)「おっおっありがとうございますだお」

ブーンはそう言うと、自分のマグカップにコーヒーメーカーからコーヒーを注いだ。

( ^ω^)「それにしても室長。分室に来て約一年。やっと犯罪捜査が出来ますお」

从'―'从「そう言えばそうですね。キャンディの出現はそれだけ火急を要す物なのです」


22 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:47:54.77 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「あれはもう二度と、絶対に流行させちゃいけないんですお」

从'―'从「ブーン君・・・。」

渡辺はため息を一つと深呼吸を一つして言った

从'―'从「そろそろ対策本部に行きましょう。私達の仕事をしなくっちゃいけませんよ。」

( ^ω^)「了解しましたお」

从'―'从「さて、我等が分室には一体どんなお仕事をくれるんでしょうねぇ」


23 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:48:30.84 ID:DOr29HKu0
その部屋の入り口には「キャンディ対策捜査本部」と書かれた立て看板が掛けてあった。
対策本部に入ったブーンは、まずドクオの姿を探したが何処にも見当たらなかった。

対策本部での捜査会議は比較的短時間で終った。一刻の猶予も争うという理由からだ。
しかし、会議では驚くべき真実が語られた。

まず、今回キャンディを所持していたのは、暴力組織「ラウンジ」の末端構成員だった。
取調べを継続しているが、黙秘を続けているらしい。担当官はドクオだそうだ。
だから対策本部に姿を見せなかったのだと、ブーンは理解した。


24 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:48:54.84 ID:DOr29HKu0
そして、驚くべき事実というものはここからだった。
会議も終わろうかという頃、突然会議室に一人の女性がとびこんできた。

川 ゚ -゚)「失礼します。少年課のクーであります。
急を要する情報が入りました。今ここで発表させてください」

すらりとした出で立ちに長い黒髪。
美しく整ったおもて。
しかし、そこから読み取れる表情は無に等しい。
ブーンより二年先輩に当たるこの刑事は、凛とした意志のある目を輝かせて発言した。

( ^ω^)(綺麗だけどなんだかおっかない人っぽいんだお)

(`・ω・´)「なんだね、急に飛び込んできてやぶから棒に」

刑事局長のシャキンが問う。
シャキンは制服を完璧に着こなし、貫禄も十分備え持つ恰幅のよさがある。
階級を超えて人望も厚く、皆に頼られる存在と言っても過言ではない。


25 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:49:52.95 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「申し訳ありません。しかし、必ず本件に関連があるはずです。
結論から言いますと、昨日午後十三時四十分、
キャンディの副作用により死亡した高岡という十二歳の少女がいます」

(`・ω・´)「なんだと!?」

川 ゚ -゚)「場所はニューソク小学校六年三組の教室で、授業中のことであります。
当該者は突然奇声を発し、その後昏倒。速やかに救急にまわされましたが、
既に死亡しておりました」

ニューソク小学校は有名私立小で、大学までの一貫教育がウリであるエリート校である。

川 ゚ -゚)「死亡した少女の血液からキャンディの成分が検出され、
――つい先刻判明したのですが――死因が確定しました。
鑑識としては成分が希少なものの為、解析に時間がかかったとのことです」

川 ゚ -゚)「ここまでが取り急ぎ連絡しておきたかった事象であります」


27 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:50:39.95 ID:DOr29HKu0
クーの突然の発言に刑事たちは色めきだった。
既にキャンディで犠牲者が、しかも小学生が死亡したとは。

( ^ω^)(小学生がキャンディを・・・酷い世の中になったもんだお・・・悲しいお)

確かに前回の流行ではティーンエイジャーの服用者が大量に発生した。
しかし、小学生までもが服用するような事は無かった。
僅か一年で街の空気が変わったのだろうか

(`・ω・´)「なんと・・・現時点で流通している可能性がかなり高いということか」

シャキンが呟いた。
それを受けてクーがうなずく。

(`・ω・´)「よろしい、それでは至急各班はこれより指定する対象に当たってくれ」


28 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:51:22.46 ID:DOr29HKu0
シャキンの言葉の後を追い、ヒステリックな叫び声をあげ、
課長のワカンナイデスが各班に捜査対象を振り分けていく。
そして最後に残ったのが分室の二人とクーだった。

从'―'从「私たちまた余ったみたいねぇ」

( ^ω^)「流石に洒落になりませんお・・・」


川 ゚ -゚)「局長、私を捜査陣に加えていただけないでしょうか。無関係ではありませんし」

(`・ω・´)「うーむ、しかし君は少年課だろう。畑違い過ぎやしないかね?」

川 ゚ -゚)「十二歳の子供が死んでるんです。私はこの真相を突き止めたいのです」

(`・ω・´)「うーむ・・・確かに子供に対しては少年課の方が一日の長があるなぁ。
     よろしい。今回は特別にキャンディ対策本部に加わってもらおう」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。早速遺族と学校に当たってみます」


29 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:52:09.10 ID:DOr29HKu0
( ><)「残ったのはお前達二人だけなんです!
       二人にはクー刑事のバックアップを命ずるのです!」

ワカンナイデスは夜中だというのにテンションがかなり高い。

( ^ω^)「ちょ、少年課のお守りのために僕らは叩き起こされたのかお?」

川 ゚ -゚)「少年課のお守りでは不服かい?」

珍しく怒りという感情を含んだ冷たいナイフの様なクーの声に、ブーンは言葉を失った。

从'―'从「まぁまぁ、怒らないでやってください。空回りはブーン君の専売特許なんです」

川 ゚ -゚)「い、いや、別に怒ってなどいないのですが」

从'―'从「だったら握手で仲直りですよ。これから三人はチームですからね」

川 ゚ -゚)「了解しました。ブーン、握手だ」

( ^ω^)「わかりましたお・・・(この人いくらなんでも怖過ぎるお)」


30 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:52:34.46 ID:DOr29HKu0
まだ納得のいかなさそうなブーンだったが、渋々クーの手を握り替えした。

( ^ω^)「手はクールじゃないんですおね」

川 ゚ -゚)「どういう意味かな?」

組まれた手にすかさず渡辺が手をあてがう。

从'―'从「はい、これで私たちはチームですよ。クーさん、よろしくお願いしますね」

川 ゚ -゚)「よ、よろしくお願いします(何故この人は階級が上なのに敬語なんだろう)」

( ^ω^)(流石室長、こういう事には機微が働くお。)

午前五時、捜査は開始された。


31 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:53:04.23 ID:DOr29HKu0
そして午前七時。
ブーンとクーは死亡した少女、高岡の家に車で乗りつけた。
渡辺室長は分室に留まり、事実上独立部隊である分室の指揮を振るう事になった。

高岡の家は母子家庭で、母親は悲嘆にくれていた。
どうやら昨晩は一睡もせずに、遺体を見守っていたらしい。
顔色は異常に悪い。何か病気でも患っているようだ。
しかし、それでいて不思議な色気を醸し出しているのは気のせいだろうかとブーンは思った。

( ^ω^)(こんな人から事情聴取するなんて、僕らは因果な商売だお。できれば避けたいお)

ブーンにはその考えが甘えである事に気付いていない。
否、気付いていないからこそ、ブーンがブーンであり続けるのかもしれない。
刑事をやるには純粋すぎた。


32 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:53:48.30 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「――――――以上が娘さんの死因です」

川 ゚ -゚)「お母さん、この度は誠にご愁傷様です。娘さんのご無念は、
     薬を娘さんに与えた者は我々が必ず確保します。その為にご協力ください。

J( '-`)し「・・・・・・はい」

( ^ω^)「ちょ、クーさん?いきなり過ぎますお。もうちょっと・・・」

J( '-`)し「いいんですよ刑事さん。あの子の事、お尋ねになりたいんでしょう?
    私にできる事があったら・・・・お手伝いしますわ」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。では早速ですが、娘さんがドラッグを常習的に使用していたという事など、
      何か目立った行動は無かったでしょうか?」

( ^ω^)(直球過ぎるお・・・ありえないお)

J( '-`)し「・・・あの子が・・・ドラッグまで?」


33 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:54:38.84 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)(まで・・・?)

高岡の母親は混乱しているように見受けられる。
我が子が薬物中毒で死に、さらに薬の常習犯として調べられているとは夢にも思わなかっただろうとブーンは考えた。
しかし、高岡の母の表情にはどこか諦観があった。
クーは駄目を押すように続ける。

川 ゚ -゚)「娘さんが何処から今回のドラッグ<キャンディ>を入手したのか――これは大きな問題です――
     心当たりは無いでしょうか?」 ( ^ω^)「ちょっとクーさん?それはあまりにも無いですお。
        もう少し親御さんの気持ちを考えて発言した方がいいですお」

川 ゚ -゚)「私は刑事として聞きたい事を聞いているだけだぞ?何か問題でもあるのか?」

( ^ω^)「それにしたって、もうちょっと聞き方って物があるんじゃ無いですかお」

二人が口論に入る寸前、この場で一番苦しい立場にある高岡の母が割って入った。

J( '-`)し「娘の霊前です。もう少し弁えていただけないものでしょうか・・・」

川 ゚ -゚)「も、申し訳ありません、配慮に欠けました。謝罪します。」

( ^ω^)「すみませんでしたお・・・」


34 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:55:19.28 ID:DOr29HKu0
毅然とした母の態度の前には、二人の確執など取るに足らないものでしかない。
そして、高岡の母はポツリポツリと話し始めた。

家庭での生活態度、学校での評判、塾での成績、その他運動会や参観日の思い出などを、
自分に言い聞かせるように、一言一言思いを込めて語った。
その話を聞く限り、高岡という少女はおおよそドラッグなどとは無縁だと思うブーン。
文武両道というに相応しい少女のようだ。
一通りの事情聴取が済むと、高岡の部屋を捜索した。
高岡の部屋は少女らしいレースなどの装飾が目立ち、藍色系で統一されていた。
ベッドには少女漫画雑誌とファッション誌にオカルト雑誌などが無造作に置かれている。
しかし、手がかりになるようなものは何も出なかった。
ブーンとクーはもう一度不敬を謝罪し、高岡宅を後にした。


35 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:56:52.72 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「母親の証言を全面的に受け入れると、高岡少女はシロか・・・
     しかし、一体何処でキャンディを手に入れた・・・」

クーがポツリと独り言をもらした。

( ^ω^)「やはりここは小学校でも関係者や友達に当たるほか無いお」

川 ゚ -゚)「・・・そうだな。しかしブーンにしてはまともな結論だな」

( ^ω^)「あんま馬鹿にしないでほしいお」

川 ゚ -゚)「馬鹿になどしていない。正論を述べたまでだよ」

( ^ω^)(この女とは完全に合わないお・・・)

確執を残しつつ、ブーンとクーはニューソク小学校に向かった。


36 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:57:16.83 ID:DOr29HKu0
午前八時半。

ニューソク小学校は閑散としていた。
昨日児童が変死したため、今日は休校のうえ、父兄説明会を開くのだそうだ。

ブーンとクーが学校に到着した時、校庭や体育館周辺には誰もいなかった。
説明会にはまだ時間があるのだろう。
クーの話によると教員は全員出勤しているそうだ
二人は通用門に常駐している用務員に用件を伝えると、職員室へ連絡をまわしてくれた。
用務員の案内により、二人は応接室へとやってきた。


37 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:57:56.22 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「聴取は私がやるからブーンは何も喋るんじゃないぞ。先刻みたいな事になる」

( ^ω^)「ちょ、それは酷い。僕にも発言権くらいあるお」

川 ゚ -゚)「しょうがないな。あまり私の邪魔をするんじゃないぞ」

( ^ω^)「ぬぅ、このビッチめ・・・」

川 ゚ -゚)「何か言ったか?」

( ^ω^)「な、なんでもないですお」

川 ゚ -゚)「そうか、だが次に私のことをビッチ呼ばわりしたら尻の穴が二つになるぞ」

( ^ω^)「は、把握した(洒落も糞もあったもんじゃないお)」


38 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:58:26.83 ID:DOr29HKu0
しばらくすると、校長と高岡の担任教師が現れた。
校長はずいぶんと枯れた男であった。

ミ,,゚Д゚彡「ニューソク小学校校長のフサギコです。このたびはお世話をおかけします」

川 ゚ -゚)「こちらこそ協力いただいて感謝しています。少年課のクーと申します」

( ^ω^)「僕はブーンですお」

(*'ω' *)「高岡さんの担任のちんぽっぽですっぽ」

担任教師は少し風変わりというか、特殊な人物のようだ。
そんな印象を受けつつ、クーは質問を始めた。

川 ゚ -゚)「まずは高岡さんの学校での生活態度についてお伺いしたいのですが」

クーの聴取が始まった。
相変わらず必要な事のみ端的に話し、不要な感情などは捨て去る問答である。


42 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:59:00.85 ID:DOr29HKu0
しかし、その結果は芳しくなかった。
高岡の学校での評価は所謂「優等生」であった。
成績は上位に入り、生活態度も良好。友達付き合いも多く、学級委員長を任されていた。

教師陣とも折り合いがついていたらしく、悪い評判は皆無だった。
無論、キャンディとの関わりなど一切見えてこない。
何故キャンディを服用したのか。それを何処で手に入れたのか。
全て闇の中である。


44 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 15:59:32.12 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「ふむ、今までの話しの内容では、高岡さんとキャンディとのの関連性はきわめて
     低いですね」

( ^ω^)「全く無いって言っていいと思うお」

(*'ω' *)「そうっぽ。高岡さんに限ってそんな薬物とは縁が無いっぽ」

ミ,,゚Д゚彡「我々学校側としましても、今回の件には当惑しています。
     刑事さん。一刻も早い真相究明をお願いします」

川 ゚ -゚)「承知しています。なんとか早期解決を・・・」

携帯「そーらーに青い流星・・・」

( ^ω^)「あ、ちょっと失礼だお」

川 ゚ -゚)「携帯は切っておけよ・・・」


45 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:00:02.44 ID:DOr29HKu0
いそいそと応接室から退出したブーンは、ドクオからの電話に出た。

( ^ω^)「もしもし、こちら色男のブーンですお」

('A`) 『モテモテのドクオ様だ。ブローカーが吐いた。が、真偽を問われる証言だ』

( ^ω^)「一体何を吐いたんだお?」

('A`) 『ブローカーは「キャンディは高岡という小学生の少女から受け取った」

と供述している』

( ^ω^)「・・・・・・・ハァ?」

('A`) 『俺だってハァ?っと思ったさ。だから真偽を問うと言っただろう。
     だが、高岡という個人名がはっきり出たんだ。
     何も関連が無いと考える方が不自然だろう?』


47 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:00:35.75 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「確かにドクオの言う通りだお。でまかせじゃない事は確かだお。
      今丁度ニューソク小学校にいるから、もう少し聴取してみるお」

('A`) 『それは無理だな。もう対策本部本隊の連中がそっちに向かってる。
   奴らが来たらお前はお払い箱だぜ?』

( ^ω^)「仰る通りだお・・・。納得いかないけどここは撤退だお」

('A`) 『あぁ、それがいいさ。俺も今から捜査に加わる。
    何か当たりがあればお互い連絡し合おう』

( ^ω^)「把握した。健闘を祈るお」

('A`) 『そりゃこっちの台詞だバーロー』

('A`) 『それとな、これは俺の私見なんだが、分室が認められるためには実績が必要だ。
   今回の件はお前達にとっちゃ正規軍を見返すチャンスだ。
   なるべく俺達の裏をかくような捜査をするんだ。いいな。』

( ^ω^)「ドクオ・・・わかったお。僕らは僕らのやり方ですすめるお」


48 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:01:08.02 ID:DOr29HKu0
携帯電話を切った後、ブーンは少し考えをめぐらした。

( ^ω^)(やっぱり高岡がキャンディを入手した経緯を知るべきだお
      ブローカーに流したのが高岡なら・・・一体どういうことだお?)

思い悩んでいると目の前の扉が開かれ、中にいた三人がぞろぞろと退室してきた。
校長と担任はやや緊張が残る面持ちでだったが、クーの表情は相変わらず読めない。

( ^ω^)「何食ったらそんなに不景気な顔になるんですかお」

川 ゚ -゚)「何か言ったか?」

( ^ω^)「いえなにも」

ミ,,゚Д゚彡「それでは刑事さん。捜査の方はよろしくお頼みしましたよ」

川 ゚ -゚)「心得ました。必ず真相を究明します」


49 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:01:37.30 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「ひょっとして聴取は終ったっぽいですかお?」

川 ゚ -゚)「長電話しすぎだ」

( ^ω^)(アンタが簡潔すぎるんだお)

川 ゚ -゚)「それではフサギコ校長、ちんぽっぽ先生、
     我々は他の先生方ともお話しがしたいのですが・・・

( ^ω^)「もしもしクーさんや、ちょっと話しがありますお」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

ブーンはクーを廊下の端に引っ張っていき、ドクオとの電話内容を話した。

川 ゚ -゚)「どういうことだそれは。その話しは信じてもいいのか?」

( ^ω^)「ドクオが言うのだから、十中八苦間違いないですお」


50 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:02:03.13 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「・・・・よし、これからは本隊の連中が来る前に動こう」

( ^ω^)「具体的にどうすれば良いんですお?」

川 ゚ -゚)「今の事情聴取で、高岡と親しい友人三人をリストアップしたんだ。
     今からすぐに当たっていこう。本隊が行動する前に」

( ^ω^)「把握した。まずは何処へ向かうんですかお?」

川 ゚ -゚)「高岡の一番の親友に、しぃという子がいる。その子に直接会ってみよう。
     家の場所は私がナビするから、ブーンは運転に専念してくれ」

( ^ω^)「了解ですお。じゃぁ急いで出発だお」


51 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:02:29.45 ID:DOr29HKu0
二人は急いで校舎を後にし、車に乗り込んだ。
高岡がキャンディを所持していた事には間違いはないようだが、
その入手経路、更にその流出経路がまるで見えない。

ブーンは言い知れぬ不安感に苛まれている気がした。
何かどこかがおかしい。
何がおかしいのかは、いくら考えてもわからなかった。


52 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:02:59.61 ID:DOr29HKu0
午前九時半。

クーのナビで軽快に車を走らせたブーンは、しぃの家の前に車を止めた。
何かを忘れている気がするが、なんだったのかは思い出せない。
先ほどからの不安感とないまぜになって、少し落ち込み気味だった。

川 ゚ -゚)ここか。ん?どうしたブーン。腹でも痛いのか?」

( ^ω^)「な、何でもありませんお。少し考え事をしてたんですお」

川 ゚ -゚)「ふむ、そうか。なら問題ないな。早速お友達の話しを聞いてみようじゃないか」

インターホンを押すクー。
少し間を置いて、インターホンから少女の声が流れ出てきた。


53 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:03:29.94 ID:DOr29HKu0
(*゚―゚)『はい、どちらさまですか?』

川 ゚ -゚)「私は刑事局少年課のクーと申します。こちらにしぃさんはいらっしゃいますか?」

身分証をインターホンのカメラにかざす。

(*゚―゚)『しぃは私ですが・・・。刑事局の方が一体何の御用ですか?』

川 ゚ -゚)「あなたのお友達で亡くなられた高岡さんについて少し覗いたいのですが」

(*゚―゚)『・・・わかりました、ロックを解除しますので、お上がりください。』

ガチャンと音を立てて門のロックが外れる音がし、
続いて玄関から少女が姿を現した。
どこか疲れたような印象を受けるその少女は、あまり表情が無かった。
まるで仮面をかぶり、何かから自分を隠している様な印象を受ける。

(*゚―゚)「私がしぃです。どうぞ、お上がりください」


54 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:04:00.77 ID:DOr29HKu0
しぃはそう言うとクーとブーンを家に案内した。
ごく普通の一軒屋で、いかにも中層家庭というおもむきの家である。

しぃは二人を応接間へいざなう。
二人は勧められるままに応接間のソファーに身を降ろした。

(*゚―゚)「で、聞きたい事というのはなんでしょうか」

( ^ω^)「ちょっと待つお。自己紹介がまだだお。僕は組織犯罪対策課特別分室の
        ブーンですお。そして、聴取の前に親御さんに話しを通したいお」

川 ゚ -゚)「そうだな。未成年相手だしな。ブーンにしては気が効くじゃないか」

( ^ω^)(この女・・・)

(*゚―゚)「あの、私の両親は共働きで、今家には居ませんが」

川 ゚ -゚)「ふむ、ではご両親とは連絡が取れないのかな?」

(*゚―゚)「携帯がありますけど、連絡しましょうか?」

( ^ω^)「そうしてもらえるとありがたいお」

(*゚―゚)「わかりました。それでは父に連絡しますね」


55 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:04:49.23 ID:DOr29HKu0
そう言うとしぃはポケットから携帯を取り出し、父親の携帯に電話をかけた。
それと同時にブーンがクーに耳打ちする。

( ^ω^)「小学生にしてはえらくしっかりした子ですお」

川 ゚ -゚)「そうだな。日中両親が居ないから、自然とそうなったのかもしれない」

そこまで話した時、しぃは携帯をこちらに差し出してきた。

(*゚―゚)「父です。どうぞお話しください」

クーが電話を受け取り、しぃの父親に事情を説明した。
しぃの父親は最初疑念を持っていたが、クーの的確な説明により
親不在での娘の事情聴取を受け入れた。


56 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:05:25.72 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「では聴取を始めさしてもらおう。
     まず君は高岡さんとはどういうお付き合いをしていたのかな?」

(*゚―゚)「お付き合いって、極普通の親友でした。それがあんな事になって、
     私には今でも高岡さんが家に遊びに繰るんじゃないかと思えて・・・」

川 ゚ -゚)「お互いの家を行き来していたんだね」

(*゚―゚)「はい、親友でしたから。」

川 ゚ -゚)「では、高岡さんの家で何か見かけなかっただろうか・・・例えばドラッグなどを」

(*゚―゚)「え?そんな・・・そんなもの高岡さんが持ってる訳ないじゃないですか。
    それに高岡さんが死んだ事と薬物に何の関係があるのですか!?」

しいは親友を侮辱されたと思ったのか、初めて感情的な側面を覗かした。

( ^ω^)「クーさん、また直球過ぎですお。もう少し順を追って聞いた方が良いですお」

川 ゚ -゚)「無駄な時間を使いたくないだけだ。それとも何かいい聞き出し方があるのか」


57 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:06:01.64 ID:DOr29HKu0
( ^ω^)「この聴取を僕にまかせてはくれませんかお?」

少しの間を置いて、クーはゆっくりと、しかし重い口調で言った。

川 ゚ -゚)「・・・わかった。ここは任せよう。本隊が来る前におわらせるんだぞ」

( ^ω^)「把握した。(絶対スルーされるとおもったお・・・意外だお)」

そんな二人のやり取りを見て、しぃは少し冷静さを取り戻したようだ。

(*゚―゚)「あの、高岡さんの死と薬物には何か関係があるのですね。
    教えていただけませんか?高岡さんに何があったのですか」

( ^ω^)「少し辛いお話になると思うお。それでもいいですかお?」

(*゚―゚)「はい。高岡さんに何があったのか教えてください」


58 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:06:30.76 ID:DOr29HKu0
ブーンはこの際捜査上の機密には目をつぶる事にした。
こちらが真実を話せば、しぃも事情聴取に協力してくれるだろう。

それに、高岡に薬物反応が出た事など、すぐにマスコミに流れるはずだ。
そうやって真実を知らされるよりは、今真実を話した方が傷は浅く済むかもしれない。

ブーンは拙い会話術で高岡の死因を説明した。
その薬物がキャンディである事も教え、その所持疑惑まで持たれている事を話した。

ブーンがキャンディの名前を出した時、クーは少し眉をひそめたが、
本当にこの場をブーンに任せているようで、特に口を挟む事は無かった。
この間、しぃはほとんど表情を変えずにブーンの話に聞き入っていた。
そして、ブーンの話しが終った時、おもむろに口を開いた。


59 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:07:37.91 ID:DOr29HKu0
(*゚―゚)「それでは、高岡さんの死因はキャンディの副作用で、
     高岡さんはキャンディを複数個所持していた疑いがあると。 
      そう言うことですね」

( ^ω^)「そう言うことだお。だから高岡さんのことで思い当たる事が在ったら、
        何でも言って欲しいんだお」

(*゚―゚)「わかりました。高岡さんのことですし、薬物まで絡んでいるなら
      私の出来る範囲で協力させていただきます。お役に立てるかわかりませんが」

( ^ω^)「気楽にお話ししてくれればいいんだお」


61 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:08:47.48 ID:DOr29HKu0
そう言ってブーンは聴取を取り始めた。
ブーンはしぃに話し掛けるとき、常に優しく我慢強くあることに勤めた。
実際、ブーンの子供好きも事も幸いして、しぃの聴取は順調に進捗し、
大丈夫だと判断したクーは、しぃの部屋の捜索を願い出た。

一寸ためらったしぃだったが、ブーンに協力を要請され、捜索を受け入れた。
クーの姿が応接室から消えると、ブーンはしぃに無声音で語りかけた。

( ^ω^)「あの人はクールすぎて怖いですお。さっきは正直スマンかったお」

(*゚―゚)「いえ、あの人はとても優しい人なんじゃないでしょうか。私にはそう思えます」

( ^ω^)(優しい一面なんてみたことないお・・・)

それからブーンは事情聴取を再開し、あらかた質問を終えた時、期クーが戻ってきた。
ブーンは事情聴取が終った事をクーに告げた。


62 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:09:32.51 ID:DOr29HKu0
川 ゚ -゚)「では、もう用は済んだと言う事だ。しぃさん、ご協力感謝する」

(*゚―゚)「いえ、あまりお役にたてずに申し訳ありません」

( ^ω^)「そんな事無いお。興味深い話がいくつかあったお」

(*゚―゚)「そうですか。何かのお役に立てれば幸いです」

そうしてブーンとクーはしぃの家を辞した。

川 ゚ -゚)「次の目的地は、高岡と頻繁に接していたヒートという少女の家だ。私がナビする」

( ^ω^)「把握した」

車に乗り込みエンジンをかけたブーンは、クーに尋ねた。

( ^ω^)「しぃの部屋はどうでしたお?」

川 ゚ -゚)「あぁ、やはり特に手懸りは無かったな。普通の女の子の部屋だ。
     そちらの聴取はどうだった?」


63 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/04(日) 16:10:11.17 ID:DOr29HKu0
クーに問われるままに、ブーンは事情聴取のあらましを話した。
しぃは高岡とは自他共に認める親友で、高岡との親交は厚かったようだ。
表情には表さないが、高岡の死にはかなり衝撃を受けていたらしい。

学校での生活態度は高岡同様いたって真面目で、薬物を所持するような節は見当たらなかった。
成績は中の上くらいで、問題などおこさない児童である。

キャンディの話しに移ると流石にその表情は歪んだものの、冷静さを失う事は無かった。
高岡が薬物中毒死したことも受け入れ、現実逃避をする事など無い。
高岡のキャンディ所持については、全く思い当たる節が無いと言うことである。

しぃの家でもキャンディと高岡の関連性は見つからなかった。
重苦しい空気が車内を満たした時、突然緊張の糸が切れた。


99 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:12:50.50 ID:gMLBDrAM0
その知らせは突然だった。

携帯「疾風の様に〜ザブングル!ザブングル!」

( ^ω^)「アッー、ツンだお・・・完全に忘れてたお・・・」

携帯の時刻表示は午前十時半。
本来なら今日のブーンは非番であるが、もはやそれはどうでも良くなっていた。
非番である事を忘れて捜査をしていたのだが、もっと重要な事を忘れていたのだ。

携帯「今日もさすらい涙も枯れる!」

「十時にニューソク美術館前集合」
この言葉がブーンの脳内を駆け巡る。
それは一週間前のツンの言葉であった。

川 ゚ -゚)「どうした、出ないのか」

( ^ω^)「で、出ますお・・・」

ブーンは車を路肩に止め、携帯を手にとった。


100 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:13:11.73 ID:gMLBDrAM0
( ^ω^)「もしもし、ブーンd・・・」

ξ゚听)ξ『今何時だと思っているの馬鹿ブーン!?もう一時間も待ってるんだからね!』

( ^ω^)「え、まだ十時半だお」

ξ゚听)ξ『う、うるさいわね。ちょっと早めに着いちゃっただけなんだからね。
     待たせたくなかったなんて事は無いんだからね!』

( ^ω^)(これなんてツンデレ・・・・・)

ξ゚听)ξ『今何してるのよ!?今すぐ来ないとアナルにフリスク一箱入れるわよ』

( ^ω^)「ちょ、それは勘弁だお。
     実は昨日の夜中に大事件が起こったんだお。その事件の捜査中なんだお」

ξ゚听)ξ『へー、碌な仕事も無い窓際分室のブーンさんは、私より仕事が大切なのね。』

( ^ω^)「決してそういう訳ではないお。突然事件が発生して忘れてたなんて・・・」

ξ゚听)ξ『やっぱり忘れてたのね・・・もういいわ・・・さよならバカブーン!』

( ^ω^)「あ、ちょ、待つお。ツンー!」

ブツッ、ツーツーツー


101 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:13:45.40 ID:gMLBDrAM0
( ´ω`)(完全に嫌われた上に怒られたお・・・どうすれバインダー・・・)

落ち込むブーンにクーが容赦なく言葉を浴びせる。

川 ゚ -゚)「くだらない痴話喧嘩は終ったか?落ち込んでいる暇など無いぞ。
      さっさとヒートの家に行こう。本隊の連中が来る前に調べてしまうぞ」

「くだらない」――その一言はブーンの心の箍を少しゆるめた。

( ^ω^)「くだらない痴話喧嘩なんかじゃないですお!
         僕にとって今の電話は大切な事ですお!」

川 ゚ -゚)「だが、今はそんなくだらない感情に振り回されている場合じゃないだろう」

( ^ω^)「僕の想いはくだらないと言いたいんですかお」

川 ゚ -゚)「私にはブーンの考えなど及びもつかないが、
     今、無駄な事に時間を費やしている暇は無いだろうと言いたいんだ」


102 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:14:06.80 ID:gMLBDrAM0
クーの硬質な言葉にブーンは過剰に反応した。
今日これまでの軋轢の積み重なりが、音を立てて崩れ始めた。

( ^ω^)「無駄な事・・・無駄な事ってなんですお!」

川 ゚ -゚)「捜査に支障をきたす感情のことだ」

( ^ω^)「クーさん・・・あんた誰かを好きになった事無いんですかお。
      誰だって好きな人と一緒にいたいし、嫌われたくないですお」

川 ゚ -゚)「そうか、だったら今から行ってやればいいじゃないか」

( ^ω^)「そんなわけにはいかないですお。今やるべき事ぐらいわかってますお」

川 ゚ -゚)「それなら話が早いな。さぁ、ヒートの家に向けて出発だ。」

クーの機械的とも言える事務的反応にブーンの箍はさらにゆるむ。

( ^ω^)「アンタは人の痛みがわからないんですお。
        いつもクールに振舞って、無意識に人を傷付けてるんですお!」

川 ゚ -゚)「・・・何を突然怒るんだ?私は今やるべき事を言っただけだぞ」

どこかでブーンの心の箍が外れる音がした


103 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:14:31.81 ID:gMLBDrAM0
( ^ω^)「その態度が腹立つんだお!僕らはロボットじゃないお!
      正解の選択肢をとることだけが正しい事じゃないんだお!
      アンタはいつでも冷静で正しいお!でも、でも、
       アンタは気が付かないだけで、アンタはいろんな人を傷付けているはずだお。
        何気ない一言が人の心をえぐる事もあるんだお!」

ブーンはそれだけを一気に捲くし立てると、ハンドルに両手をつき突っ伏した。
そんなブーンを見てクーは混乱していた。

眼前のこの男は何を怒っているのだろう。
私はそんなに悪い事を言ったのだろうか。
クーにはブーンを傷付ける事など言った覚えは無い。

川 ゚ -゚)「すまないが本当に何が言いたいのかわからない・・・。
そんなに・・・私が悪いのか?」

ブーンが深いため息をつく。
そのままの姿勢でぼそぼそとつぶやいた


104 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:14:57.33 ID:gMLBDrAM0
( ´ω`)「もういいですお・・・。今のは無かった事にして欲しいですお。
僕の問題に僕が一人で怒っていただけですお。
クーさんには関係が無いのに八つ当たりしてしまったお・・・。
申し訳なかったですお」

川 ゚ -゚)「あ、あぁ、それならいいんだ。さぁ、出発しよう」

心なしか湿度の増した車内の空気に気圧されながらも、クーは職務を果たそうとする。
ブーンはゆっくりと頭を上げ、車を発進させた。
それからはお互いの口から音が発せられる事はなくなった。


105 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:15:28.88 ID:gMLBDrAM0
午前十一時。

ブーンの運転する車はヒートの家の前までやってきた。
道中二人は終始無言であった。

川 ゚ -゚)「ここがヒートの家だ・・・が・・・。あの車はひょっとして本隊の車か?」

クーの目線の先には一台の車があった。
ブーンは見覚えのある車を見て舌打ちをした。

( ^ω^)「アレは麻薬班のジョルジュさんの車ですお。強引な捜査で有名ですお。
      でも、実績があるから皆に認められてますお」

川 ゚ -゚)「一足遅かったか・・・」

( ^ω^)「一応、捜査できるかどうか乗り込んでみますお」


106 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:16:13.32 ID:gMLBDrAM0
ブーンとクーは車を降り、ヒートの家に近づいたがその時、
ヒートの家の玄関から人が現れた。
精悍な男が二人と少女が一人。そして、少女の母らしき人物が一人。
男のうち一人がブーンに気づき、近寄ってきた。

( ゚∀゚)「なんだ、分室の坊やじゃねぇか。遅かったな。
    悪いがヒートちゃんの身柄は確保させてもらうぜ。母親共々任意で御同行だ」

見るからにガラの悪い風体で、ガラの悪い喋り方をするこの男が、麻薬班の実力者ジョルジュである。
一見粗野粗暴に感じられるが、実は細かいところに気配りの効く人物らしい。ブーンには信じられないが。

( ^ω^)「ちょ、ジョルジュさん。僕たちにも少し話をさせてもらいたいですお」

( ゚∀゚)「アーアー、聞こえなーい。そういうことだから、ま、せいぜい頑張れや」

そう言い捨てると、ジョルジュ一行は車に乗り込み去っていった。
残された二人はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、クーが沈黙を破った。

川 ゚ -゚)「ふむ、これでもう先回りの捜査は出来なくなったと考えていいな。
     これからの捜査方針を考え直さないといけないな」


107 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:16:40.79 ID:gMLBDrAM0
クーがそう言った時、ブーンの携帯が鳴り出した。

携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」

( ^ω^)「もしもしブーンですお。室長、何の御用ですかお」

从'―'从『ブーン君、連絡ですよー。
どうやら関係者の家にはもう本隊が入っているみたいです。
私達が割り込むには少し無理がありますよ。
一旦捜査を打ち切って部屋に戻ってきませんか?』

( ^ω^)「こちらでも確認しましたお・・・
        残念ですけどこれ以上関係者に当たるのは無理っぽいのが事実ですお」

从'―'从『作戦を練り直しましょう。クーさんを連れて戻ってらっしゃい』

( ^ω^)「了解しましたお。それでは今から戻りますお」

ブーンは携帯を懐に戻すと、クーに渡辺からの連絡を伝えた。
その目を見ることは無かったが。


108 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:17:07.45 ID:gMLBDrAM0
川 ゚ -゚)「よし、作戦会議に分室へ戻るか」

溝を残したまま、二人は分室への帰路へ着いた。
再びの車内は重い空気のままだったが、二人とも何も喋らなかった。
クーは元々必要な事以外喋らない性質だが、
おしゃべりなブーンが黙って運転している様は少々異常とも言える事態である。

二人を乗せた車は、刑事局の駐車場に向けて疾走した。


109 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 15:17:28.53 ID:gMLBDrAM0
午前十一時四十五分。

( ^ω^)「ブーン、ただいま戻りましたお」

川 ゚ -゚)「戻りました」

从'―'从「お帰りなさい。
昼食はお弁当でいいですね。準備が出来ているから食べながら話しましょう」

渡辺がそう言ってテーブルを指す。その上には昼食の準備が整っていた。

( ^ω^)「助かりますお、室長」

从'―'从「?どうしたのブーン君。何かありましたか?」

( ^ω^)「え・・・な・・何も無いですお。いきなりどうしたんですかお」

从'―'从「食べ物に過剰反応しないブーン君は珍しいですからね。
    なにかトラブルでもあったんでしょう?」

( ^ω^)「な、そんな事は無いですお。さぁ、お昼ご飯を食べましょうお」

从'―'从「それなら良いのですけどね・・・」


115 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:24:37.22 ID:gMLBDrAM0

三人は昼食を食べながら捜査状況をまとめた。
まず、高岡がキャンディを所持している痕跡が無かった。
しかし、ブローカーの話によると高岡はキャンディを持っていた。

ブローカーの話を信じると高岡は黒であるが、
キャンディの入手先は相変わらずわからない。

高岡の親友しぃは、ブーンが聴取した限りでは潔白の様に思える。
もう少し調べる必要がありそうだが、現時点ではそれまでだった。

渡辺によると、麻薬班本隊は高岡の親友三人の身柄を確保したらしい。
しぃ、ヒート、そして最後の一人である伊藤にはもう当たれない。
こうなってしまっては少年課の手伝いである分室は、手も足も出ない状況である。
つまり、捜査開始直後から手詰まりの状態だった。


116 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:25:36.61 ID:gMLBDrAM0
从'―'从「うーん、手詰まり・・・ですねぇ」

川 ゚ -゚)「申し訳ありません室長。我々がもう少し迅速な捜査を行っていれば、
     ヒートと伊藤からも情報を得られたかもしれなかったのですが」

その言葉にブーンは敏感に反応し、なげやりに言った。

( ^ω^)「僕がグズった所為でご迷惑おかけしましたお」

川 ゚ -゚)「別にブーンの所為ではないぞ」

从'―'从「やっぱり少しおかしいわねぇブーン君は。
    何かあったんじゃないの?クーさんどう?」

川 ゚ -゚)「ブーンは捜査中にフラれてしまって機嫌が悪いのだと思います」

从'―'从「あらあら、そうだったのですか。傷心なら今日はもう戻ってもいいですよ。
    どうせ捜査は出来ないのですから」

( ^ω^)「ちょ、クーさん?僕はそんなことでは落ち込みませんお。
      僕の事なんかどうでもいいから、なんとか手懸りをさがしましょうお」

从'―'从「まぁ、それならそれでいいのですけれど。
    それでね、手懸りは無い事は無いのですよ」


117 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:26:55.28 ID:gMLBDrAM0
ブーンとクーは渡辺の言葉に反応する。
手懸りを失った今、藁にもすがる思いであった。

从'―'从「さっき、鑑識のヒッキー主任に掛け合ってきたのだけど、
    分室の独断でしぃさんヒートさんと伊藤さんの血液検査も行っているの。
    万が一ということもありますからね」

川 ゚ -゚)「キャンディ服用の可能性・・・ですか」

( ^ω^)「考えたくないですお・・・」

从'―'从「気持ちはわかりますけどねぇ。私たちは疑うのがお仕事ですよ」

( ^ω^)「わかってますお・・・」

从'―'从「それじゃ、ご飯が終ったら鑑識に行って、血液検査の結果を聞いてくださいね」

川 ゚ -゚)「把握した」(^ω^ )


120 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:27:51.71 ID:gMLBDrAM0
昼食をとり終ったブーンとクーは、鑑識課へと足を伸ばした。
鑑識課は刑事局の地下にあり、鑑識官達はモグラと呼ばれている。

( ^ω^)「分室のブーンですお。ヒッキー主任はいらっしゃいますかお?」

昼食を食べた所為かブーンの口調は軽くなっていた。
食べ物で解決できるのなら安いものである。
実際、ブーンは食べて寝るだけで、ほとんどのストレスを解消できるのだが。

(-_-)「やぁブーン君。相変わらずだね・・・」

鑑識課の奥から猫背で顔色の悪い男が現れた。
ボソボソとした口調でブーンに話かけた男こそ、件の鑑識課主任ヒッキーであった。
地底人を思わせるその顔色の悪さは、モグラという鑑識官の渾名にピッタリである。


121 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:28:37.51 ID:gMLBDrAM0
( ^ω^)「主任、キャンディ事件の血液検査の結果を教えて欲しいですお」

(-_-)「うん、まだ簡易判定なんだけど、それでもいいかい・・・」

川 ゚ -゚)「麻薬班本隊より先に情報が欲しいのでお願いします」

(-_-)「君は少年課の・・・?ふーん、これはまた変則的なタッグだね・・・」

( ^ω^)「行きがかり上仕方なくですお」

川 ゚ -゚)「仕方なく?そうか。まぁ、そうだろうな」

(-_-)「これは今からすぐに対策本部に挙げないといけないのだけども・・・
   陽性が出たよ・・・」

( ^ω^)「マジですかお!?」

(-_-)「嘘を言ってもしょうがないよ・・・
   当たりはしぃって子だな・・・
   他の二人は陰性だったよ・・・」


122 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:29:15.16 ID:gMLBDrAM0
ヒッキーの報告に愕然とするブーン。
一度話した限りでは、薬物を服用している気配すら見当たらなかった。
自分の目は節穴なのだろうか。

( ^ω^)「あの子が・・・まさか・・・そんなことする子じゃないと思ってたお・・・」

川 ゚ -゚)「決め付けはいけないな。
     我々がしぃを取り調べられるように、渡辺室長に手を尽くしてもらおう。
     ヒッキーさん、その報告を上にあげるのは一時間ほど待ってくれないでしょうか」

ブーンが放心している間にクーが切り込む。

(-_-)「待てないことは無いけど・・・」

川 ゚ -゚)「ご迷惑はおかけしませんから。お願いします」

クーはそう言って二つ折りにならんかという勢いで頭を下げた。

(-_-)「君・・・そんなにしなくったって・・・
   ハァ・・・実は検査結果の照合に一時間ほどかかるんだな・・・」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。
     ブーン、急ごう。この時間を有効に生かすんだ」


124 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:29:50.37 ID:gMLBDrAM0
クーは放心しているブーンを引きずるようにして廊下を走った。
なんとかしぃの言質を取れれば――事態は展開するかもしれない。そう考えていた。

しかし、その考えはいとも簡単に覆されてしまう。
二人が組織犯罪対策課に戻ってきた時、更なる事件がおきていた。
会議室に人だかりが出来ている。
何事かと思い人垣をかき分けて会議室に辿り着いたクーが見た物は一面の血の海だった。

血の海の中央には、しぃが虚ろな眼差しで仰向けに倒れていた。
右手にはカッターナイフ。
周囲には麻薬班のメンバーが慌しく右往左往している。

川 ゚ -゚)「・・・何があった・・・」


126 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:30:39.02 ID:gMLBDrAM0
午後一時半。

キャンディ対策本部は喧騒に包まれていた。
二人の死者。二人とも小学生であり、同級生である。
しぃの死因は、頚動脈を切断されたための失血性ショック死だった。
会議室で待機させていた時、監視の刑事の目を盗んで、
隠し持っていたカッターナイフで自らの首を掻き切ったのだ。

ブーンは消耗していた。
結局何も出来なかった自分を責めた。
自らが取調べをしてシロだと思い込んだ挙句、被疑者に自殺されるとは。
しぃの自殺はブーンの所為ではないのだが、
今のブーンは全て自分の責任であると誤認してしまうほど動転していた。


128 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:31:23.53 ID:gMLBDrAM0
クーは事実関係を頭の中で反復し、どこかに事件解決の糸口がないか模索していた。
しかし、その思考は半ば停滞していた。どこを切り取っても不可解な事しか残らない。
それでいて、全体の事件はキャンディで結び付けられている気がする。

捜査本部も混乱していた。
局内での被疑者自殺。しかも未成年。
マスコミには緘口令を敷いているが、情報が漏れるのは時間の問題かもしれない。
しぃの保護者には呼び出しをかけた。間もなくこちらに到着するだろう。
現在は当面の捜査方針について審議している。
そんな中、鑑識よりしいがキャンディを服用していたという情報がもたらされた。
会議は益々紛糾した。


130 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:32:11.51 ID:gMLBDrAM0
( ゚∀゚)「今回の件はやはりキャンディの流れをつかまないと話になりませんなぁ。
    そしてしぃが自殺したのは薬物所持および使用の自白に等しい。
    もう一度高岡としぃの身の回りを徹底的に洗いましょうや」

ジョルジュの意見は首脳部にも取り入れられた。
結局、高岡としぃの身辺調査という、捜査の初期段階に戻ってしまう結果となった。

対策会議の後、ブーンと渡辺そしてクーの三人は分室へと引き上げた。
特にこれといった指令は受けていない。遊軍として動けという示唆でもあった。


137 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:49:22.22 ID:gMLBDrAM0

从'―'从「ふー、まいりましたねぇ・・・って、ブーン君。しっかりしてください」

( ´ω`)「しっかりできたらうっかりしませんお・・・」

从'―'从「ボケも切れ味がありませんよ。しぃさんが死んで落ち込むのもいいですけど
    どこかで折り合いをつけないとこの商売は成立しませんよ」

( ´ω`)「折り合いですかお・・・。僕が初動段階で疑いを持っていれば、
        こんな事態は避けられたのかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「ブーンだけの所為ではないさ。私も事情聴取の場にいた。
     むしろ、先輩の私が気付かなかったのだから、私の落ち度だ」

( ´ω`)「どっちにしろ、助けられなかったのは事実ですお。僕には何も出来ないんですお」

川 ゚ -゚)「今回の件はもうだめかもしれな・・・」

从'―'从「お二人ともいい加減にしなさい!」


140 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:51:08.30 ID:gMLBDrAM0
クーの発言に割って入った渡辺が、突然聞いた事も無い鋭い声で二人を叱責した。
あまりの事にブーンはビクリと身体を震わし、クーは無表情な顔をひきつらせた。

从'―'从「貴方達はなんなのですか?刑事なのでしょう?
過去にどれだけ失敗しようとも、大切なのは今なのですよ。
今やるべき事を今全力でやる。それが我々に与えられた使命ですよ。
    それが出来ないと言うのなら・・・刑事など辞めておしまいなさい!」

渡辺の一喝に、ブーンとクーは顔を見合わせた。

从'―'从「今のあなた達に出来る事はなんですか?落ち込む事じゃぁないでしょう?」

少しの逡巡の後、うなずき合う二人。

川 ゚ -゚)「把握した!」(^ω^ )

切り替えが早いと言うより単純と言った方が的確で、ブーンに笑顔が戻っていた。
さらに珍しい事にクーまで笑顔の様な表情を見せた。ごく微妙な表情の変化だったが。


141 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:52:39.84 ID:gMLBDrAM0
川 ゚ -゚)「室長の仰る通りです。我々にできることを、我々にしかできない事を、
     今全力でやりましょう。後ろを振り返っていても仕方ありません。
      渡辺室長、ヒートと伊藤に事情を聞けるよう計らっていただけませんか?」

从'―'从「やるべき事を探すのですね。では、私の方も何とかしてみましょう」

渡辺はそう言って分室から出て行った。局長にでも直訴するのだろう。
課長のワカンナイデスは頭が固い典型的な公務員タイプなので、期待できない。
局長は妙に庶民的でありながら威厳をたたえた人物なので、 ひょっとしたら話が通じるかもしれない。
ブーンはそんな事を考えながらポツリと言った。

( ^ω^)「僕は自分が刑事失格だと思っていましたお。
      子供だと油断して、無思慮な事に疑いもせずシロだと判断したり、
      自分の適当な願望が崩れたら落ち込んでみたり。
      全部一人相撲でしたお」

川 ゚ -゚)「それなら私も同じだ。私は少年課失格の刑事だと思ったよ。
     子供の心が全く理解できていないからな。
      エゴ丸出しの独善的な人間だと、自分の事を評価していた」


142 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:55:21.72 ID:gMLBDrAM0
二人とも憑き物が落ちたような気分だった。
一体何に捕らわれていたのだろうか。
少女達の死というショッキングな出来事が連続したが、それは二人の直接な過失ではない。
少女達の死を背負う事はあろうが、その死に捕らわれるような謂れは無い。
クーが言う。

川 ゚ -゚)「ひょっとしたら私たちは似た者同士かもしれないな」

( ^ω^)「似た者同士?・・・それはないですお」

川 ゚ -゚)「いや、考え方の問題だよ」

( ^ω^)「考え方・・・」

ブーンが答えを模索していたその時、ノックの音が響いた。


144 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 16:57:55.92 ID:gMLBDrAM0
(-_-)「やあ、一寸いいかい?」

( ^ω^)「あ、ヒッキー主任。どうしたんですお?」

(-_-)「いやね、自殺したしいさんの携帯の履歴を調べたんだけどね・・・
   君達が事情聴取した直後に、ヒートさんと伊藤さんに電話をしてるんだ・・・」

川 ゚ -゚)「電話・・・。三人でなにか口裏合わせでもしたというのですか」

(-_-)「いやいや、わかっているのは電話をしたと言う事実だけだからね・・・
   これもしばらく時間を置いてから本部に伝えるよ・・・」

( ^ω^)「ヒッキー主任、ありがとうございますお。
     今、室長が段取りをつけてくれてるんですお。何とかなるかもしれませんお」

(-_-)「そうかい・・・。それは良かった」

( ^ω^)「ところで・・・主任は何故僕達の肩を持ってくれるんですかお?」

(-_-)「そうだねぇ・・・除け者が好きだから、かな」


145 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:00:07.64 ID:gMLBDrAM0
そう言うとヒッキーは静かに分室から出て行った。
彼はどうも分室を贔屓しているようだ。
今回の件でブーンはそう思うようになっていた。
ヒッキーも腹に何かイチモツを抱えていると、ブーンは思う。

しばらくして、渡辺が興奮した面持ちで分室に戻ってきた。

从'―'从「二人とも、ヒートさんと伊藤さんの取調べ許可が出ましたよ。
    局長に無理言ってねじ込んでもらいました。
    でも、時間はあまり取れませんでしたけど」

( ^ω^)「どんな魔法を使ったんですかお!?」

川 ゚ -゚)「十分です。ありがとうございます渡辺室長。ブーンさぁ行こう」

( ^ω^)「今度は間違いを犯さないお」

二人は勢いよく分室を飛び出していった。
その背中を渡辺が見つめている。
―――頼もしい―――純粋にそう思った。


146 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:02:43.54 ID:gMLBDrAM0
午後二時四十五分。
取調室。

伊藤の正面にクーが座り、ブーンは机の横に立っている。
ブーンにはクーの事情聴取は幾分穏やかになってきたような気がする。
相手の心を刺すような発言が抑えられえていた。

伊藤の証言は通り一辺倒で特に手懸りとなるような発言は無かった。
ブーンがイラつき出した頃、クーはおもむろに問い掛けた。

川 ゚ -゚)「伊藤さん、貴方は任意同行の直前に、しぃさんからの電話を受けましたね?
    よろしければ電話の内容を教えてもらえないだろうか」

一瞬の動揺の後、伊藤は答えた。

('、`*川「電話って、それは・・・覚えていないです」

茶色に染められた髪の毛を無意識の内にいじっている。

川 ゚ -゚)「今朝の事なんだ。覚えていないわけは無いはずだよ」

('、`*川「覚えていない物は覚えていません」


147 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:04:52.39 ID:gMLBDrAM0
ブーンとクーは顔を見合わせ、軽くため息をついた。
そこで一旦伊藤への聴取を中止し、ヒートを呼び出した。

予想通りヒートも判で押したような解答しかしない。
供述はしぃと伊藤のそれとほとんど同じであった。
しかし、クーが電話の件に触れたとき、ヒートは明らかに動揺した。

ノパ听)「で、電話はありましたけど、世間話でした!」

川 ゚ -゚)「世間話か。どんな内容だったか覚えているかい」

ノパ听)「はい・・・高岡さんのこととか荒巻の・・・あ!」

川 ゚ -゚)「荒巻?」

ノパ听)「いえ、違います。なんでもないのです!」

( ^ω^)(荒巻・・・・まさか・・・)

( ^ω^)「荒巻ってのは荒巻スカルチノフのことかお?」

ノパ听)「ち・・・ちがう!・・・私は何も関係ありません!・・・」


148 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:06:40.70 ID:gMLBDrAM0
それきりヒートは貝になった。もはや何を語りかけても答えようとはしない。
荒巻という名を出してから以降の動揺は明らかだ。

荒巻スカルチノフは去年、軍によって殺害された科学者である。
キャンディ一斉取り締まり作戦の際だった。
入局したてのブーンは、その殺害作戦の一端を担っていた。
担っていたと言っても、やはり使い走りだったのだが。
ともかくその作戦で荒巻は死亡したはずである。

荒巻はキャンディを最初に精製した人物と言われている。
厄種であった死者の復活。
ブーンはそんな言葉を思い浮かべていた。


なんとかして情報を引き出そうとしたクーは一計を案じ、もう一度伊藤を呼んだ。


150 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:08:42.60 ID:gMLBDrAM0
川 ゚ -゚)「伊藤さん。荒巻スカルチノフとあなた達の関係を話してください」

一瞬の間があり、伊藤は答えた。

('、`*川「荒巻?知りませんそんな人」

そのポーカーフェイスからブーンはなにも読み取れなかったが、クーの眼差しが鋭くなった。

川 ゚ -゚)「ヒートさんが『概ね話してくれました』よ」

( ^ω^)「ちょ、クーさん!?」

クーがブーンを目で制する。
クーの言葉に伊藤は明らかに動揺した。目が泳ぎ始める。黙秘が崩れ始めた。

('、`*川「喋ったのか・・・あの子」

川 ゚ -゚)「最初から順を追って話してはくれないだろうか」

ため息を一つつく伊藤。
そして、秘密の暴露は始まった。


153 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:10:45.20 ID:gMLBDrAM0
('、`*川「高岡さんは、ヒートさんから聞いているなら知っての通り・・・
     『売り』をしていました」

( ^ω^)「!?」

('、`*川「高岡さんのお母さんも、売っていました」

伊藤の告白は続く。
高岡の母は末期のガンを患っていた上に、亡き夫が残した多額の借金があった。
生活費とはともかく、治療費などを払う経済的余裕は無かった。
さらに娘が属する有名私立の高額な学費を捻出する事など不可能である。
ついには高岡の母は夜な夜な街路に立つ事になった。
それを知った高岡は、母を助けたいが為の一心で自らも売春行為に及んだらしい。

何時の世も倒錯した性癖の持ち主というのはなくならないものである。
高岡が夜の街に立つと、客は面白いほど寄り付いた。
そうして高岡は自らの身体と心を汚し、母と自らの生活を助けたのであった。


156 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:12:40.18 ID:gMLBDrAM0
('、`*川「高岡さんが売りのお金をお母さんに渡した時、お母さんは泣いてわびたそうです。
   お金の額と高岡さんの態度ですぐにわかったんでしょうね」

――落ちてしまうと元に戻るのは難しいんです。
伊藤はそう言った。
その後も高岡親子は夜の街に立ちつづけた。幾度かは共に買われる事もあった。
親子が笑顔でいる時間は無くなった。

('、`*川「そんな時、高岡さんの客についたのが荒巻って訳です。
    高岡さんは偶々荒巻に身の上話をしたそうです」

高岡の身の上話を聞いた荒巻は、高岡親子に援助を持ち掛けた。条件付で。
高岡はそれを呑み、荒巻の援助を受け入れた。
以後、高岡親子が夜の街に立つ事は無くなった。


158 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:14:43.41 ID:gMLBDrAM0
( ^ω^)「その条件というのがキャンディ・・・かお?」

('、`*川「その通りです。ヒートさんはどこまで喋りましたか?
    まぁ、ばれるのも時間の問題ですから、私が全部喋りましょうか?」

川 ゚ -゚)「聞かせてもらうよ」

高岡に提示された条件は、荒巻が用意したキャンディをばら撒く事だった。
主に子供達の間に。
高岡はまず信用のおける数人に事情を話し、キャンディを手渡した。
それが、しぃとヒートと伊藤である。
また、荒巻は刑事局を撹乱する為に高岡を通して、
暴力組織ラウンジのブローカーにキャンディを数個流したらしい。

そして高岡はと言うと、良心の呵責と母親の治療費とを天秤にかけていた。
だから、三人以外にキャンディをばら撒く事が出来なかったようだ。

一方キャンディを渡された三人は、伊藤の知る限りでは服用はしていなかったらしい。
さらに、ブーン達がしぃの家を訪問した際、しぃはヒートと伊藤に連絡をとり、
高岡とキャンディ関連の事は黙秘する様指示を出していた。


159 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:16:46.76 ID:gMLBDrAM0
('、`*川「私が高岡さんとキャンディに関して知っているのはこれだけです。
    何故高岡さんが中毒死したのかは知りませんし、
     しぃさんが自殺した理由も知りません」

川 ゚ -゚)「正直に話してくれてありがとう。しかし、すまないが私達は嘘をついていた。
     実のところ、ヒートさんは何も喋ってはいないんだ。
     私達のブラフだったんだ。すまない」

('、`*川「な・・・汚い。騙した」

( ^ω^)「騙すつもりは無かったお。申し訳ないお。だけど・・・・」

ブーンの言葉を遮るように、ため息をつきながら伊藤が言った。

('、`*川「わかってますよ。なんせ悪いのは私達の方なんですからね。
    それに、ヒートの性格上ずっと黙っているなんて出来ないでしょうから。
    いずれにせよ、事実はすぐに明るみに出るわけですね」


160 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:18:40.75 ID:gMLBDrAM0
妙に達観した物の言い方にブーンは罪悪感を持ったが、落ち込んでいても仕方が無い。
クーの騙まし討ちは必要悪だと考え、次の一手を考えた。

川 ゚ -゚)「ありがとう伊藤さん。最後に一つ。
     貴方は渡されたキャンディをどうしたのですか?」

('、`*川「あー、それならトイレに流しちゃいました。
    ヒートも燃えるゴミに出したそうです。
    しぃさんは・・・使っちゃってたんですね」

川 ゚ -゚)「そうか。本当の事を話してくれてありがとう。
      これ以上手を煩わす事は無いと思います」

('、`*川「そう願いたいです。あ、私からも一つ。
    荒巻って人は必ず捕まえてください。
     荒巻さえいなければ高岡さんとしぃさんは死ななかったかもしれないから」


161 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 17:20:42.47 ID:gMLBDrAM0
ブーンとクーは深くうなずいた。
こうして至急の取調べは終った。

その後、渡辺を交えて三人で話し合った結果、手柄より事件解決が先決と決まり、
ブーン達は対策本部に事のあらましを伝えた。
対策本部は急遽捜査会議を開き――会議室は使えないので麻薬班の詰め所で――
早速荒巻の安否確認を急がせた。


190 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:31:09.04 ID:iyOe289Y0
捜査会議の間、ブーンとクーは詰め所の隅で静かに座っていた。
伊藤の話のやり切れなさの後遺症だろうか。
今回の会議も短時間で終了し、麻薬班は荒巻の捜索に重点を置く事になった。
追加情報として、しぃの部屋から大量のアルバムが発見されたらしい。
その中は全て高岡の写真で埋め尽くされていたそうだ。
しぃは余程高岡を慕っていた様である。

そして分室は、相変わらずの遊軍扱いになった。
会議終了後、ドクオがブーンのもとに寄って来た。


192 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:34:52.54 ID:iyOe289Y0
('A`)「よう、ガキに自白させたって聞いたぞ。やるじゃないか」

麻薬班の若きエースは見栄えの悪い顔を持っている。
顔だけで気持ち悪がられる傾向があり、本人も気にはしているようだ。どうしようもないが。
ブーンは見慣れた異相の男に言った。

( ^ω^)「自白と言うよりはただ告白を聞いただけだお。
       それに取り調べはクーさんがやったんだお」

要領を得ないブーンの解答に首を捻るドクオ。

('A`)「なんだそりゃぁ、まぁ、いいや。とにかく分室の得点になったみたいだぜ。
   捜査も進展したんだ。もっと堂々としてろよ」

( ^ω^)「僕はそれほど肝の太い人間じゃないお」

('A`)「まぁそうだな。あんまり堂々としたブーンは見たくないかもな。
   しかし、荒巻の名前が出てくるとは驚きだ」


194 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:38:15.29 ID:iyOe289Y0
( ^ω^)「僕も信じられない気持ちだお。マッドサイエンティスト再びだお」

('A`)「荒巻は俺が挙げるぜ。今度くらい目立たないと俺の株も落ちちまうからな」

( ^ω^)「荒巻、本当に生きてるのかお」

('A`)「だが実際にキャンディが存在しているんだ。去年の狩り残しかも知れないがな」

( ^ω^)「その方が精神衛生上ありがたいお」

('A`)「しっかりしろよブーン。ま、俺はお前と違って折れない心をもってるからな。
   さてと、邪魔したな。俺も捜査に加わってくるわ」


196 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:42:40.41 ID:iyOe289Y0
そう言って自信満々のドクオは詰め所を後にした。
ブーンは未だにドクオの自信の根拠がわからないが、
彼なら何があっても大丈夫と言う確信めいたものを持っていた。

その後、分室の三人組は自らの島へ戻り、会議めいたモノを始めた。
今後の動きをどうするか。麻薬班と同じく荒巻を捜索するのか。
それとも、全く違う切り口を発見するまで動かないか。
三人は思案をめぐらせた。
そして、分室は独自の判断で動こうと結論が出た時、クーがぽつりと言った。


199 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:46:33.57 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「もう一度、高岡の母親に当たってみるのはどうでしょうか」

( ^ω^)「高岡のお母さん・・・これ以上傷を抉るのは気が進まないですお」

川 ゚ -゚)「それは私も同じだ。だが、あの人は私達に本当の事を言わなかった。
     私はあの人の心が知りたい。それが捜査の進展に関るかはわからないが」

しぃの死という体験をして、少し感傷的になっているのかもしれない。
ブーンはなんとなくそんな気がわかるような気がした。
本当の事。
それを知りたいのはブーンも同じであるはず。

( ^ω^)「そう言われるとつらいですお」

从'―'从「うちは分室です。私達は私達のやり方でいきましょう。
    荒巻の捜索は麻薬班本隊に任せましょう。
    さぁ、お二人とも、頑張ってくださいね」

そう言って渡辺は二人の肩を叩いた。


201 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:50:39.54 ID:iyOe289Y0
午後四時半。

再び高岡の家に向かう車中。
クーがステアリングを握っている。
自ら率先して運転を買って出たのだ。

川 ゚ -゚)「そろそろ電話してみたらどうだ?」

( ^ω^)「電話?どこにかけるんですかお?」

川 ゚ -゚)「今朝の痴話喧嘩の相手。ツンとか言ったな」

( ^ω^)「あー・・・いやいや今かける勇気は無いですお」

川 ゚ -゚)「仲直りしなくていいのか?ブーンの特別なのだろう?」

( ^ω^)「今は事件に集中した方が良いですお。もう失敗はできませんお」

川 ゚ -゚)「そうか。それならいいんだ。だったら運転を任せればよかった」

( ^ω^)「もしかしてその為に運転を代わってくれたんですかお?」

川 ゚ -゚)「ああ。その方が時間の都合がいいかと思ってな・・・」


203 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:54:37.64 ID:iyOe289Y0
最後までよく聞き取れない発声だった。
クーにしては珍しく言葉に感情がこもる。
照れていた。

( ^ω^)「クーさんが照れるとは・・・記念になりますお」

川 ゚ -゚)「別に照れてなどはいないぞ」

クーの口調は既にいつも通りに戻っている。
たった一言だけだったが、その言葉でブーンは心のわだかまりが少し消えていく気がした。
一方クーは照れ隠しに無理やり話題を変えようと、あらぬ方向に話を振った。

川 ゚ -゚)「と、ところで、ブーンは何故分室に所属しているんだ?」

( ^ω^)「それを話すと長くなりますお・・・」

川 ゚ -゚)「よければ聞かせて欲しいものだな」

( ^ω^)「・・・あれは一年程前のことですお」


205 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 22:58:49.75 ID:iyOe289Y0
―――【一年前】

ブーンは麻薬班の新入りとして活動していた。
任務内容はやはりただの使い走りだったが。
そんなブーンに初めて麻薬取引の現場を押さえる任務が与えられた。
ニダーという男を中心にした、麻薬密売組織の摘発という任務内容だった。

その日、ブーンは高揚し、通常の状態ではなかった。
現場に踏み込むといってもブーンは後衛要員であり、
突入部隊が取りこぼした犯人を押さえればいいという、比較的気が楽な役割である。
突入開始直前、ブーンは取引が行われる建物の裏口に配備された。

( ^ω^)「緊張するお・・・。何がなんだかわからなくなってきたお」

やがて、突入開始の無線が入ってきた。
数秒後、建物内から怒号が響き渡った。
何かがぶつかり合う音、何かが割れる音、
そんな中、裏口から突然何者かが飛び出してきた。


206 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:02:41.28 ID:iyOe289Y0
( ^ω^)「チェストーッ」

ブーンは飛び出してきた陰に思いきり体当たりを喰らわせた。
もつれ合うブーンと影。
影の持っていたバッグからビニール袋に入った白い粉が散乱する。

( ^ω^)「こ、これは!?」

<ヽ`∀´>「こ、これは小麦粉か何かニダ!」

頬骨が張り、吊り上がった目が特徴的な男だった。

( ^ω^)「なんだ、小麦粉でしたかお」

<ヽ`∀´>「ウリは小麦粉の行商でこのビルに来たニダ。麻薬取引とは関係ないニダ」

( ^ω^)「そうでしたかお。それじゃお気をつけてですお」

<ヽ`∀´>「お役目ご苦労様ニダ。(刑事が馬鹿で助かったニダ)」


209 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:06:36.08 ID:iyOe289Y0
男はそう言って、散らばった袋をかき集めて鞄に詰め、逃げるように去って行った。

――五分後。

( ><)「馬鹿もーんなんです!!そいつがニダーなんです!!」

( ^ω^)「な、なんだってー!?」

( ><)「お前みたいな馬鹿は見たことが無いんです!二度と使ってやらないんです!」

それがブーンの最初で最後の麻薬捜査だった。
次の日、麻薬班の掲示板には異動の知らせが張り付いていた。

「組織犯罪対策課麻薬班ブーン、この者、組織犯罪対策課特別分室に異動とする」


211 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:11:17.53 ID:iyOe289Y0
( ゚ω゚)「・・・島ながしだお・・・」

('A`)「おい、ブーン。これは洒落にならないぞ」

( ´ω`)「これはもうだめかもしれんね」

ブーンは少ない机の中身を整理し、特別分室に向かった。

その扉には「国家刑事局組織犯罪対応課特別分室」と、
ホワイトボードにサインペンで書かれている表札が貼り付けてあった。
ブーンが扉を開けると、満面の笑顔で分室の主が出迎えた。

从'―'从「ようこそ分室へ、いらっしゃい〜」

特大の笑顔だったことは覚えている。


213 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:15:38.99 ID:iyOe289Y0
( ^ω^)「と、言う訳で、僕は分室に配属になったんですお」

川 ゚ -゚)「お前は・・・・(馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが・・・)」

( ^ω^)「馬鹿と言っても構いませんお。
     この話を聞いて笑わなかったのは渡辺室長くらいですお」

川 ゚ -゚)「いや、まぁ・・・」

ブーンの回想はクーの予想の遥か斜め上を飛んでいた。
だからこそ分室に送られるというものである。
原因があるからこそ結果があるのだ。
クーは聞かなかった事にして、更に話題を振った


215 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:19:15.54 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「渡辺室長はどうして分室にいるんだろう。ブーンは知っているか?」

( ^ω^)「室長は昔の事は一切話しませんお。
        詮索するのも気が引けるので、昔の事は聞いてませんお」

川 ゚ -゚)「そうか。ま、人それぞれだな・・・」

それきり車内は沈黙した。
不思議な事にこの沈黙は苦痛ではない。どこか自然な沈黙だった。
その沈黙を保ったまま、車は高岡の家に到着した。


216 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:23:33.16 ID:iyOe289Y0
高岡の母は今朝とほとんど変わらぬ様子で二人を居間にむかえた。
ただ、疲労は確実に溜まっているらしい。
その目からは生気がほとんど感じられなかった。

( ^ω^)「なんどもお邪魔して申し訳ありませんですお」

J( '-`)し「今しがたも刑事さんたちがお帰りになったところですけど・・・」

( ^ω^)「本隊に先を越されましたお」

川 ゚ -゚)「ご面倒をおかけしますが、もう少しお付き合い願えませんでしょうか」

J( '-`)し「今更何も隠し立てする物はありませんよ。
    私達親子の夜の顔もしられているのですから」

( ^ω^)「麻薬班の連中はそんな事も追及したんですかお」

J( '-`)し「私にはもう何にも残ってはいませんよ。お好きな事をお聞きください」


218 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:27:19.28 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「では、単刀直入に覗います。荒巻と言う男はご存知ですね」

J( '-`)し「存じ上げております。私達親子を地獄から救い上げてくださった人です。」

( ^ω^)「荒巻はあなた方親子を苦しめたりはしなかったんですかお」

J( '-`)し「あの人は最初こそ娘を買ったものの、娘から私達親子の実情を聞くと、
    その後は惜しみなく私達に援助を差し出してくださいました。
    私の治療費まで捻出してくださって・・・」

川 ゚ -゚)「では、荒巻は貴方方へは何も見返りを求めなかったと?」

J( '-`)し「はい。あの人が何を考えていたのかはわかりませんが、
    私達に無償の援助をしてくださった事だけは事実です」

( ^ω^)「その・・・荒巻の本当の顔については、既に麻薬班に聞きましたかお?」

J( '-`)し「ええ。先ほど全て刑事さんたちから聞きました。
    娘を使って薬を子供達の間に蔓延させようとしたとか・・・」


220 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:31:34.87 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「結局荒巻は娘さんを利用しただけかもしれないのですよ」

J( '-`)し「そうかもしれません。ですが・・・
      私達を一度は助けてくださったと言う事実は事実です。
      私はもう長くありません。娘も失いました。何も残ってはいません」

( ^ω^)「・・・・(また何も残っていないって言ったお)」

J( '-`)し「荒巻さんの住んでいる場所は、先ほど刑事さんたちにお話しました。
    もう、私から聞き出すことはありませんよ」

高岡の母はそう言うと虚空に目をやり、大きくため息をついた。

川 ゚ -゚)「では、娘さんの事を少し聞きたいのですが、よろしいですか?」

J( '-`)し「ええ。もう何も残っていませんから構いませんよ」

( ^ω^)(また・・・)


222 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:35:51.07 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「娘さんの同級生のしぃさんの事なのですが、今日局内で自殺しました」

J( '-`)し「先ほど伺いました。何故そんな・・・」

川 ゚ -゚)「理由はわかりませんが、何か思い当たる事は無いでしょうか」

J( '-`)し「・・・娘は、しぃさんと特別な関係にあると、常々話しておりました」

川 ゚ -゚)「特別な関係・・・とは一体?」

J( '-`)し「私にもよくわかりませんが・・・
しぃさんは娘と強い精神的な絆を持っていたのかもしれません。
娘はしぃさんを家に呼んで、まじないごとめいた事をよくやっていました」

( ^ω^)(まじない・・・高岡の大量の写真は偏執?執着?・・・今朝のテレビ?・・・
         何か引っかかるお・・・)

ブーンは足りない頭をフル回転させる。
すると奇跡的にこれらが符号する物を高岡の部屋で見た事を思い出した。


224 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:39:05.08 ID:iyOe289Y0
( ^ω^)「そうだお!オカルト雑誌だお!」

ブーンが突然声を張り上げた。
彼は思い出した。オカルト雑誌が数冊高岡の部屋にあった事を。

川 ゚ -゚)「オカルト雑誌?」

J( '-`)し「確かに・・・。娘としぃさんはオカルト雑誌をよく読んでいたように思います」

( ^ω^)「もう一度娘さんの部屋を観せていただけませんかお?」

J( '-`)し「ええ、構いません。どうぞ」


227 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:43:40.11 ID:iyOe289Y0
ブーンとクーは高岡の部屋に入った。
ベッドの上には今朝見たオカルト雑誌が無造作に置かれている。
ブーンはそれを取り、目次に目を通す。

川 ゚ -゚)「ブーン。オカルト雑誌が何か関係あるのか?」

( ^ω^)「ひょっとしたら、しぃの自殺と繋がるかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「?どういうことだ」

ブーンは目次から目的の項目を見つけ出し、その頁を開いた。

( ^ω^)「これですお」

そこには「特集!ソウルメイト!」という見出しが書かれている。
ブーンには今朝聞いたばかりの言葉だった。


230 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/05(月) 23:47:32.84 ID:iyOe289Y0
川 ゚ -゚)「ソウルメイト?・・・なんだそれは?」

J( '-`)し「そういえば娘は先日、『しぃさんとは<何とかメイト>』だと話していました。
     今思えばこれの事でしょうか」

( ^ω^)「ひょっとしたらしぃさんにとって高岡さんは、
      親友を超えて崇拝に近い対象である存在だったのかもしれませんお。
      文武に秀でた高岡さんと自分を同化したかったのかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「話がみえてこないな・・・」

( ^ω^) 「しぃさんの部屋から見つかった大量の高岡さんの写真も符合しますお。
      崇拝している絶対者が死んでしまった場合、
      同化した自らも存在していてはいけない・・・と考えるかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「そんな馬鹿な話・・・」

( ^ω^)「今朝テレビでソウルメイトって言葉を話しているのを観たんですお。
     前世で繋がっていたとか、魂が惹き合っている人間同士とか、
     ソウルメイトっていうのはそういう人たちの事を言うんですお」  


236 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:00:36.94 ID:Qlj1M9gg0
川 ゚ -゚)「そんなものは妄想だろう?」

( ^ω^)「その通りただの妄想ですお。でも思春期の女の子の場合は・・・
      その辺は少年課のクーさんの方が明るいですお」

川 ゚ -゚)「うーん、確かに年頃の少女というものは、極端に走る例があるかもしれないな」

( ^ω^)「それにしぃさんはキャンディを服用していましたお。
      精神高揚作用が祟って勢い自殺したのかもしれませんお」

J( '-`)し「では、しぃさんが自殺したのは娘の所為なのでしょうか」

( ^ω^)「娘さんに責任は無いですお。と言うより、誰も悪くは無いですお。
      敢えて言うなら、ありもしない事をこれ見よがしに商売にする、
        卑劣な大人が悪いんですお」

J( '-`)し「でも、そんな思い込みだけで後追い自殺なんてするものでしょうか」

川 ゚ -゚)「それはなんとも言えませんね・・・・
     しかし、あり得ない可能性ではないかもしれません」

J( '-`)し「そういうものなのでしょうか・・・」

( ^ω^)「本当のところは亡くなったしぃさんにしかわからないかも知れませんお」


239 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:05:35.89 ID:Qlj1M9gg0
これがしぃの自殺の理由なのだろうか。
ブーンは自分で話していても、これは都合のいい詭弁かもしれないと考えていた。
しかし、この結論が関係者を一番傷付けないものだと、心のどこかで思っている。

ブーンが少し思索に耽っていると、携帯が鳴り出した。

携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」

( ^ω^)「もしもしブーンですお。室長、なんですかお?」

从'―'从『今、対策本部に緊急召集がかけられましたよ。
    荒巻の生存が確認された上に、潜伏先が判明しましたよ。
    高岡さんのお母さんの証言から判明したようです』

( ^ω^)「それは一大事ですお。すぐに戻りますお」

ブーンは携帯を切って、渡辺から告げられた内容をクーに話した。


240 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:08:28.97 ID:Qlj1M9gg0
川 ゚ -゚)「急転直下というやつか。急いで戻ろうブーン」

( ^ω^)「そういう訳で僕らは帰りますお。ご協力ありがとうございましたお」

J( '-`)し「協力するも何も、私には何もありませんから、お役に立たなかったでしょう」

( ^ω^)「それは言わない方がいいですお」

J( '-`)し「え?」

( ^ω^)「『私には何もありません』っていうのは言わない方がいいですお。
      貴方にはまだ貴方の人生がありますお。
      病気に犯されていても、まだまだ生きなくてはいけませんお。
      娘さんのためにも・・・」

J( '-`)し「あの子の為に・・・」


244 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:11:41.46 ID:Qlj1M9gg0
しばらくの沈黙の後、高岡の母は言った。

J( '-`)し「こんな若い人からお説教されるなんて情けないですね」

( ^ω^)「あ、お説教なんてつもりで言ったんじゃないですお。僕はただ・・・」

J( '-`)し「わかっていますよ刑事さん。」

―――なげやりに生きるのにはまだ残された時間が多すぎますね

そう言って高岡の母はブーンに微笑んだ。
ブーンの他愛も無い言葉に救われるものがあったのだろうか。
ブーンにその答えはわからなかったし、誰にわかるようなものでもなかったが、
初めて高岡の母と本当の言葉のやり取りが出来たと思った。


246 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:15:20.61 ID:Qlj1M9gg0
二人は高岡の家を辞して、刑事局へと車を走らせた。
車内でブーンは高岡の母と最後に交わした言葉を思い返す。

―――なげやりに生きるのにはまだ残された時間が多すぎますね

これでよかったのだろうか。
いや、よかったのだ。そうでなければ救いが無さ過ぎる。
いくら荒んだ社会だと言えども、全てを無くした人が希望を持つ事くらい許されるべきだ。

( ^ω^)「クーさんは絶望した事がありますかお?」

川 ゚ -゚)「唐突だな。勿論あるさ。絶望した事が無い人間なんて居ないんじゃないか」

( ^ω^)「人は絶望するから希望が持てるのかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「どうしたんだ一体。何か悟ったか?」

( ^ω^)「それ程の事ではないですお」


248 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:19:22.62 ID:Qlj1M9gg0
クーには何故突然ブーンがそんな事を言い出したのか皆目見当がつかなかった。
しかし、何故か自分の心の内を覗き見られたような気がして、少しきまりが悪かった。
そこで話題を強引に変えた。

川 ゚ -゚)「ところで、ブーンは何故刑事局に入ったんだ?」

( ^ω^)「これはまたえらく唐突ですお」

川 ゚ -゚)「おかえしだ。なんとなく聞きたくなったんだ。
     ブーンの性格からして向いている職業とは思えないのでな」

( ^ω^)「確かに僕の性格はこんな仕事にはむいてませんお。
      でも、刑事になると決意した切欠はありますお」

川 ゚ -゚)「是非知りたいものだな」

クーは咄嗟に振った話題に乗ってきたブーンの言葉を受けて、
こんなお人好しが刑事になった切欠を本気で知りたくなってきていた。


251 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:24:12.37 ID:Qlj1M9gg0
( ^ω^)「あれは、二年前のキャンディ騒ぎの時ですお・・・。
      僕が妹と二人で買い物に行った帰りの事ですお。
      僕と妹は偶々強盗事件の現場に居合わせてしまいましたお。
      犯人はキャンディによる身体強化者でしたお。そして・・・」

―――妹は犯人に殴られて死んでしまいましたお。―――

ブーンのあまりにもショッキングな告白にクーは言葉を失った。
この呑気で感情的な青年の過去にそんな深い傷があろうとは。
しかも、トラウマをさらりと語ってのけた事にもクーは驚愕した。

川 ゚ -゚)「思い出させて悪かったな・・・」

( ^ω^)「毎日思い起こしていますから問題ないですお」

何でも無い事のよう、さらりと言ってのけたブーンに、クーは少し動揺した。

川 ゚ -゚)「しかし、お前はそんな大きな傷をよくさらりと他人に喋れるな。
     普通は言いたくないはずだぞ」

クーが直球を投げる。


254 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:28:13.09 ID:Qlj1M9gg0
( ^ω^)「感情を込めて話していないから大丈夫ですお。
     この件に関して感情を込めると・・・心がもたないですお。
     もっとも、感情を込めないで話せるようになるまでには結構苦労しましたお」

クーは隣に座っている青年が、見た目以上にタフなのだと認識した。
過去の傷が、彼の甘さとも言える優しさの根源かもしれない。

( ^ω^)「『しっかりしていなかったら生きていられない。
      優しくなれなかったら生きている資格が無い』
      探偵フィリップ・マーロウの名台詞ですお」

優しくなれない自分は生きている資格が無いのだろうか。クーは思った。

( ^ω^)「渡辺室長もクーさんもしっかりしていて優しいですお。
      僕は全然しっかりしていないので、まだまだですお」


256 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:31:36.70 ID:Qlj1M9gg0
川 ゚ -゚)「私が、優しい?」

( ^ω^)「今朝会った時はおっかない人だと思ってましたお。
     一緒に行動してもっとおっかない人だと確信しましたお
     だけど、僕の島流しの話を聞いて馬鹿にしなかったのは、
     室長とクーさんだけですお」

川 ゚ -゚)(馬鹿だとは思ったのだが・・・言わないで良かった。しかし、私が優しい?)

―――優しい

クーは心の中でそのことばを繰り返していた。
ブーンには嫌われているとばかり思っていたのだが。
クーが思索に耽っていると、ブーンが聞いた。


257 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 00:33:37.20 ID:Qlj1M9gg0
( ^ω^)「クーさんはどうして少年課なんですかお?」

川 ゚ -゚)「え、わ、私は特に深い理由は無いな。
     ただ、子供の頃から人類を守る正義の味方になりたかった。
     子供達は人類の未来だろう?だから子供達を守ろうと思ったんだ」

( ^ω^)「クーさんらしいですお」

川 ゚ -゚)「そうかな・・・」

何故かそれきり声は生まれなかった。
クーはまだ心の中で同じ言葉を反復している。

黙り込んだ二人を乗せた車は、刑事局の駐車場に滑り込んだ。


301 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:00:09.57 ID:C/Td//rO0
午後六時

荒巻の情報を巡って会議は淡々と進んだ。
まだ捜査から帰って来ていない要員もいた為、余計にそう感じられたのかもしれない。

高岡の母の証言により、荒巻はニューソク郊外の別荘地に潜伏している事が明らかになった。
ただ、その場所が本当に荒巻の根城かどうかはわからなかった為、
即座に特別対応チームが組織され、別荘地に向かう事になった。

特別対応チームには銃器が与えられ、ドクオもメンバーに選ばれた。
ドクオはブーンに目で合図を送ると、他のメンバーと共に荒巻の根城に向かった。


302 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:03:31.71 ID:C/Td//rO0
ブーンとクーは、しぃの自殺の理由めいたものを報告したが、
その突飛すぎる意見は捜査に反映されなかった。
最初からこの意見が取り入れられるとは思っていなかった二人だが、
実際に一蹴されると、どうにもやりきれないものがある。

荒巻捜索は、対応チームの報告を待ちつつ、各自引き続き行うよう指令がでた。
勿論分室メンバーは遊軍なので、例の如く独自の捜査会議を開いた。
渡辺が用意したサンドイッチを頬張りながらブーンが話す。


304 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:06:47.78 ID:C/Td//rO0
( ^ω^)「荒巻の居場所が掴めましたから、この事件ももうすぐ終わりですお」

川 ゚ -゚)「そうだな。後の事は対応チームに任せば済むだろうし」

从'―'从「上手くいけばいいんですけどねぇ」

( ^ω^)「室長は心配なんですかお?」

从'―'从「心配していますよ。死んだ人間が生き返る事自体、私はまだ信じられません。
     まだこの一件には裏がありそうな気がしてならないのです」

川 ゚ -゚)「荒巻の死亡は確実なのですよね」

从'―'从「はい。先ほど去年の資料に目を通したのですが、間違いなく殺害されています」

( ^ω^)「捕まえてみればわかりますお。室長は心配しすぎですお。
      きっと何かカラクリがあるんですお」

从'―'从「杞憂に終ればいいのですが」


306 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:10:45.49 ID:C/Td//rO0
渡辺の不安そうな顔を見ていると、ブーンまで不安に駆られてしまう。

( ^ω^)(ドクオは大丈夫かお・・・)

なんとなく発言しづらい空気が分室を覆った時、やにわに廊下が騒がしくなった。
何事かとブーン達は廊下に顔を出す。

( ^ω^)「何があったんですかお?」

丁度廊下の向こうからジョルジュが走ってくるところだった。

( ^ω^)「ジョルジュさん、何かありましたかお?」

( ゚∀゚)「何かあったかじゃねぇよ。荒巻確保に向かったチームからの連絡が途絶えたんだ。
    定時になっても連絡が来ないし、こちらの呼びかけにも答えない。
    何かが有ったのはのは確実だ。今から兵隊見繕って出動だよ」

そう捲くし立てると、ジョルジュは廊下を走っていった。


307 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:14:29.74 ID:C/Td//rO0
从'―'从「やはり何かありましたか。杞憂で終って欲しかったのですが」

( ^ω^)「室長、僕に現場入りの許可をお願いしますお」

从'―'从「ブーン君?」

( ^ω^)「対応チームには僕の親友がいますお。じっとなんかしてられませんお」

从'―'从「それは許可できません。何があるかわからないのですよ、危険すぎます」

川 ゚ -゚)「頭を冷やせブーン。渡辺室長、ちょっとブーンの頭を冷やしてやります」

そう言ってクーは半ば引きずるようにブーンを引っ張っていく。
渡辺はそれを見てため息をついた。

从'―'从「仕方ありませんねぇ・・・事後承諾ですが、また局長に掛け合いましょうか」


308 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:17:26.23 ID:C/Td//rO0
クーはブーンを引っ張って駐車場にまで来ていた。

( ^ω^)「こんなところに来てどうするんですかお」

川 ゚ -゚)「荒巻のアジトに行くぞ。独断専行だが、渡辺室長なら察してくれるだろう」

( ^ω^)「!! わかりましたお!ありがとうございますお」

川 ゚ -゚)「礼なら無事戻ってきてから渡辺室長に言うんだな。
さぁ、対策本部が追加要員を出さないうちに行こう」

二人は車に乗り込みエンジンをスタートさせる。
向かう先には何が待ち受けているのか。
全くの手探りのまま、二人は刑事局を後にする。
ブーンはドクオの無事を祈るばかりだった。


309 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:20:46.73 ID:C/Td//rO0
午後七時十五分。

クーのナビにより、ブーン達は荒巻のアジトであろう別荘地に到着した。
路上には特別対応チームのものであろう車両が横転していた。
特別対応チームのメンバーらしき人物が二人倒れている。
ブーンとクーは倒れている人間に近づいた。

( ^ω^)「大丈夫ですかお?ここで何があったんですかお」

返事は無かった。
僅かに呼吸をしているので死んではいないようだ。
外傷が激しく、出血もかなりの量がある。

川 ゚ -゚)「ブーン!こっちは意識が無い。そっちはどうだ」

( ^ω^)「こっちも似たようなもんですお。救急呼びますお」

ブーンはそう言って携帯で救急車を呼び出した。
クーも携帯を取り出して刑事局に連絡をつける。
ここで何があったのだろうか。
ブーンは救急に電話をかけながら膨大する不安を抱えた。
その不安を払拭するようにクーが言った。


310 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:23:41.04 ID:C/Td//rO0
川 ゚ -゚)「対策本部からは増援が来るらしい。
     それまで待機しろとの事だが・・・この場合は、」

( ^ω^)「勿論潜入ですお。ドクオも見つかりませんですお」

川 ゚ -゚)「よし、行こう」

クーが唇を引き締めた。

荒巻のアジトと思われる別荘には明かりがついている。
中からは何の音も聞こえてこない。
ブーンは渇いた唇を舐める。
別荘の入り口まで来た時、銃を握ったまま頭から血を流して倒れている男がいた。

( ^ω^)「だ、だいじょうぶですかお?」

ブーンは男を抱きかかえるが、脈もなければ息もしていない。

( ^ω^)「死んでるお・・・」

川 ゚ -゚)「私達は丸腰だ。今ならまだ引き返せるが・・・」


311 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:26:26.22 ID:C/Td//rO0
クーの言葉を遮るようにブーンが言う。

( ^ω^)「それじゃ何の為にここまで来たのかわかりませんお。
      ドクオの安否も確認せずに帰れませんお」

その言葉を聞いて、クーは遺体の手に握られていた拳銃を取り上げ言った。

川 ゚ -゚)「私は訓練以外で銃を持ったことが無い。ブーンが持っていてくれ」

( ^ω^)「僕も訓練以外では撃った事はないですお・・・。」

そう言いつつも、ブーンはクーの手から銃を受け取った。
安全装置と弾倉を確認し、大きく深呼吸をした。
そして、決意の言葉を口にする。

( ^ω^)「行きますお」


313 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:29:30.70 ID:C/Td//rO0
屋敷の内部に侵入した二人は、惨状を目の当たりにした。
廊下には対応チームメンバーが転がっていた。
皆重傷を負っているか死亡している。
それを目印にするかのように二人は進んでいった。
二人とも口をきけるような余裕は無い。
心拍数が跳ね上がり、呼吸が苦しい。

二人は広間へと続く、開かれたドアの前までやってきた。
弱弱しくうめく者。完全に動かなくなっている者。その間を抜けて二人は進む。
そして、ブーンが恐る恐る広間を覗き込むと、
数名の対応チームメンバーと共に倒れているドクオが確認できた。

( ^ω^)「ドクオ!?」

ドクオは広間の床にうつ伏せで倒れこんでいた。
ブーンの位置からはドクオの状態ははっきりと把握できない。
しかし、そのままドクオに駆け寄った。

( ^ω^)「ドクオ!しっかりするお!」


315 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 15:32:49.55 ID:C/Td//rO0
銃を上着のポケットに突っ込み、ドクオを抱きかかえてその名を連呼するブーン。
何度目かの呼びかけに、ドクオは反応した。

('A`)「ブーンか・・・何故こんなところにいるんだ」

( ^ω^)「ドクオ!無事だったんだお」

('A`)「無事じゃねー。アバラと右足をやられた。動けねぇ」

( ^ω^)「一体何があったんだお?皆酷い怪我してるし、死んでる人もいるお」

('A`)「あぁクソッタレ。荒巻はバケモノを飼ってやがった。
   一匹のバケモノのおかげでこの様だ。」

( ^ω^)「バケモノ?ひょっとして・・・」

('A`)「あぁ、ご推察の通りだと思うぜ」

―――身体強化者だ。

ドクオは忌々しく吐き捨てる様に言った。


323 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:11:57.53 ID:C/Td//rO0
('A`)「弾ははじき返されるわ、一撃で行動不能にさせられるわ、まさにバケモノだったぞ。
    去年を思い出したぜ」

クーが警戒を解いて側にやってきた。

川 ゚ -゚)「ここにいたのはそのバケモノと、死んだはずの荒巻だけだったのか?」

('A`)「あぁ。荒巻め、地獄から舞い戻ってきやがった。奴らはもうここにはいないだろう。
   俺らが全滅したのを確かめてから、ここを出て行きやがった」

( ^ω^)「荒巻は取り逃がしたんだおね。まぁ、命があっただけ儲けものだお」

('A`)「糞!忌々しい!」


326 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:15:11.50 ID:C/Td//rO0
ドクオが悪態をついていると、遠くから刑事局車両のサイレンが聞こえてきた。
増援部隊だろうが、もはや無意味である。
増援部隊のリーダーはジョルジュだった。
ジョルジュはドクオから事のあらましを聞き、本部に連絡を入れた。
丁度その時、今度は救急車のサイレンが聞こえた。

ドクオを始め重傷者は救急車でニューソク刑事局病院に運ばれた。
到着した増援部隊は別荘中を捜索したが、荒巻の姿はすでに無かった。
また、荒巻の逃亡先も皆目見当がつかないので、
間抜けな事に増援部隊は数名の刑事を残して引き上げる事となった。
ブーンとクーも、分室に戻る事にした。


327 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:18:52.82 ID:C/Td//rO0
( ^ω^)「荒巻に続いて身体強化者まで・・・一体この先どうなるんだお・・・」

荒巻とその配下の身体強化者、そして殉職した刑事達を思ってブーンは悲嘆に暮れる。

川 ゚ -゚)「悲観しても仕方が無いぞ。今は荒巻の尻尾を掴む事に専念しよう」

( ^ω^)「そうですおね。落ち込んでる暇は無いですお」

ブーンは無理やり自分を奮い立たせるが、身体の芯が痺れたような感覚に陥っている。

( ^ω^)「でも、今回の件は麻薬班だけでは処理しきれないかもしれませんお」

川 ゚ -゚)「そうだな・・・重犯罪課が出てくることになるだろうな」

( ^ω^)「そうなったら益々僕たちの出番は無くなりますお」

川 ゚ -゚)「もはや出番とか手柄とか言っている場合じゃないぞ」

( ^ω^)「・・・おっしゃる通りですお」


328 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:22:41.12 ID:C/Td//rO0
重犯罪課は強盗や殺人、また武装した犯罪者に対応する能力を持った課である。
準軍隊とも言われるほどの武力を持ち、独自の戦闘体系を備えている。
去年のキャンディ一斉摘発時には、軍と並んで前線で奮闘した、
刑事局の戦闘スペシャリストが重犯罪課なのだ。

( ^ω^)「荒巻の目的は何でしょうかお。
       地獄から舞い戻ってまで何がしたいんでしょうかお」

川 ゚ -゚)「本人に聞いてみるしかないだろうなぁ。
     生き返ってみたり、子供に薬を流したり、何がしたいのかわからん」

クーがため息をついて呟いた時、ブーンの携帯が鳴り出した。

携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」

ブーンは車を路肩に寄せた。


331 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:26:50.67 ID:C/Td//rO0
( ^ω^)「もしもしブーンですお。何か進展がありましたかお?」

从'―'从『たった今本部から連絡がありました。
    荒巻と思われる人物から高岡さんの携帯に電話があったそうです。
    発信元はVIPホテルからですよ』

( ^ω^)「VIPホテル!目と鼻の先ですお!」

从'―'从『増援部隊と重犯罪課もチームを編成して現場に向かっています。
    非常に危険ですが、貴方達の随行許可が取れました。向かいますね?』

( ^ω^)「また魔法を使ったんですかお?
         もちろん行きますお。ここまで来たら最後まで見届けたいですお」

从'―'从『くれぐれも前線には出ないでくださいね』


333 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/06(火) 16:30:39.15 ID:C/Td//rO0
( ^ω^)「わかりましたお。
      ところで、荒巻は何故高岡さんに電話したんですかお?」

从'―'从『高岡さんの死はまだマスコミには公表されていません。
    恐らく荒巻は更なるキャンディの受け渡しを考えたのではないかと思われます』

( ^ω^)「なるほど、わかりましたお。
      ではこれよりVIPホテルに向かいますお」

从'―'从『本当に気をつけてくださいね』

( ^ω^)「了解ですお」

ブーンは電話を切って車を発信させた。
運転しながら渡辺との電話の内容をクーに伝える。
―――今度こそ終わりにしたいものだ
と、クーは呟いた。


10 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:01:42.27 ID:Pu1O83EQ0
午後八時。

VIPホテル前は騒然としていた。
多数の車両が駐車してあるホテル前の広場。
その外側には非常線を張る警官。
ブーンは身分証明書を見せて非常線を抜け、広場に車を止めた。

ホテル前では麻薬班のチームと重犯罪課のチームが円陣を組んで打ち合わせをしている。
重犯罪課のメンバーは五人で、自動小銃を携行し、カーキ色の制服を着込み威圧的だ。
二人はその円陣にそっと近付き聞き耳を立てた。

打ち合わせを盗み聞きした結果、
現在ホテル内にいるのは荒巻と身体強化者のみであること。
ホテル従業員ならびに宿泊者は既に非常線外に退避完了していること。
ホテルの出入り口は全て重犯罪課が押さえていること。
突入はまさに今、重犯罪課を先頭にし麻薬班がサポートに当たること。
以上の事がわかった。


11 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:05:28.24 ID:Pu1O83EQ0
川 ゚ -゚)「よし、麻薬班の後に続いてついていこう」

( ^ω^)「そんなのすぐバレますお」

川 ゚ -゚)「許可は出ているんだ。バレてもいいさ」

その時、円陣の方から聞き覚えのある声が響いてきた。

( ゚∀゚)「なんだ、お前ら。少年課と分室がこんなとこで何やってんだ」

声をかけてきたのは麻薬班のジョルジュだった。

( ^ω^)「速攻バレましたお」

川 ゚ -゚)「私達にも現場に入る許可が下りたのです。
     最後方から行きますので、ご迷惑はおかけしません」

( ゚∀゚)「んあぁ、まぁ、許可があるならいいけどよう。邪魔だけはすんなよ。死ぬぞ」


13 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:09:28.43 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「流石ジョルジュさん、話が早いですお」

( ゚∀゚)「まぁ、なんだ、俺ら麻薬班もオマケみたいなもんだからな。
    処理は全部重犯罪課がやるだろうさ」

ジョルジュはややなげやりな調子で答えた。
本来握っているはずの主導権は重犯罪課に持って行かれたようだ。

その時、重犯罪課のリーダーのモララーが号令を発した。

( ・∀・)「本部から突入指令だ!
     ゾンビ学者とマッチョのケツに二つ目の穴をこさえてやれ!」

モララーはベテランの重犯罪課員で、数多くの事件で功績を挙げている男である。
カーキ色の制服に身を包み、精悍で鋭い容貌をしている。
号令をかけた後、ホテル入り口に向かって歩き始めた。

( ゚∀゚)「おぅ、行くぜ。お前ら遅れんなよ」


15 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:13:28.21 ID:Pu1O83EQ0
重犯罪課のメンバーが正面玄関から突入する。
それに続いて麻薬班が突入し、残りの面子は裏口を固めた。
ブーンとクーは更にその後に続いた。

ホテル内はがらんどうで、静まり返っていた。
その中を武装した一団が踏破する。
目標の部屋まで一切の躊躇は無かった。

荒巻の逗留している部屋のドアを前にして、重犯罪課は左右に分かれ、ガスマスクを装備した。
モララーが声をひそめて指令を出す。

( ・∀・)「的は身体強化者だけに絞れ。荒巻はとりあえず無視して構わん。
    室内は狭い。面で斉射すればいくら身体強化者でもかわせないはずだ。
    兆弾に気をつけろ」


17 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:17:28.63 ID:Pu1O83EQ0
言葉が終ると同時に、皆は一斉にガチャリという音を鳴らして安全装置を外した。

( ・∀・)「突入!」

号令とともにドアを破り、催涙弾を投げ込むと同時に突入する重犯罪課メンバー。
その様子を少し後ろから伺う麻薬班。
さらにその後ろにブーンとクー。

炸裂音の後、部屋の中から自動小銃の斉射音が響いた。
何かが壊れ弾ける音。
そうして幾程の時間が流れたのであろうか。一瞬とも一分とも感じられる時間の後、
重犯罪課の五人が銃撃しながら部屋から後ずさりし、じわじわと後退し始めた。


18 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:21:28.55 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「くっ、バ、バケモノか!?」

モララーは我が目を疑っていた。
確かに銃弾は命中しているはずである。しかも、文字通り蜂の巣に。
それでもこの怪物は一歩一歩前進してくるのである。

重犯罪課リーダーとして四年間、重犯罪課に通算十年間勤め上げてきたモララーだったが、
こんなに信じられない、訳のわからない恐怖を受けた経験は初めてだった。
去年のキャンディ一斉摘発の時にも身体強化者を何度も相手にした。
しかし、銃弾が当たればそれらは直ぐに沈黙したのだ。
今日の相手は全く別物である。

( ^ω^)「なんだかおかしいお・・・皆さがってくるお」

川 ゚ -゚)「嫌な予感がする。我々はもう少し下がろう」

( ^ω^)「賛成ですお」


22 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:25:28.82 ID:Pu1O83EQ0
二人がまさにさがろうとした時、重犯罪課メンバーは全員廊下にまで押し返されていた。
もはや銃声は聞こえない。
そして、部屋から身の丈二メートルは超えているであろうガスマスクを着けた巨躯が現れた。

( ゚∋゚) 「・・・・・・」

その男――おそらく――はガスマスクを脱ぎ、無言で一歩一歩確実に歩み寄ってくる。
その目には何も映っていない様だった。意思という物が欠落しているように思える。
重犯罪課メンバーは皆恐怖に目を見開いていた。
今そこにある死が見えていた。
死が歩いて近付いてくるのだ。

( ・∀・)「撃てッ!怯むな!」

モララーの必死の号令に反応し、重犯罪課が一斉射撃を男に浴びせる。

狭い廊下で弾丸を避けようともせずに男は迫る。
弾丸は男の身体に命中してはいたが、まるで鋼鉄の様な身体にそれは跳ね返されていた。
糞!とモララーは毒づく。


27 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:29:26.44 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「全員ホットロード装填!頭だ!頭を狙え!」

そう叫ぶと弾薬が過剰に詰め込まれた弾丸の弾倉を小銃に詰め込み、フルオートで発砲した。
今までの銃声とは違う音が響く。
重犯罪課の最後の一斉掃射に大男の歩みが止まった。
弾丸が顔面に命中し、大男の顔が跳ね上がる。
しかし、致命傷にはなっていない様だった。

( ^ω^)「バケモノですお・・・」

ブーンが呟いた瞬間、大男が動いた。

( ゚∋゚) 「・・・・・・」

その巨躯からは想像も出来ない速度で重犯罪課の五人に接近する。
それと同時に重犯罪課のメンバーが一人空中に浮いた。
大男の強烈な蹴り上げを受けたのだ。


29 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:33:27.14 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「牽制しつつ後退!麻薬班は総勢ホテルの外へ退避!」

モララーの号令に重犯罪課がじりじりと下がり始める。
麻薬班は後ずさりしながらホテルの出口へ向かった。

大男と重犯罪課四名とジョルジュとブーンとクーが廊下に残っている。

( ・∀・)「お前達、何をしている!早く撤退しろ!」

( ゚∀゚)「おれは一応責任者だからな。面子ってものがある」

ジョルジュはそう言って懐から銃を取り出した。

( ^ω^)「これはまずいお。早く逃げるに越した事は無いですお」

川 ゚ -゚)「確かに私達は足手まといだからな」

( ・∀・)「早くしろ!持たんぞ!」


31 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:37:27.18 ID:Pu1O83EQ0
モララーが叫んだ時、大男は再び突進をした。
車に跳ねられたかの様に重犯罪課のメンバーが二人壁に叩きつけられた。
鈍い音がして、二人は動かなくなる。

( ・∀・)「糞!撤退だ!格好付けて死ぬこたぁない!
    手持ちの装備じゃコイツはやれない!全員撤退!」

大男はさらに突進した。
強烈なアッパーカットを食らい、もう一人の重犯罪課メンバーが天井に叩き付けられる。
どさり、と砂袋のような音を立てて落下したその身体は、もう動く事は無かった。
廊下で動いているのはもはや大男と四人だけであった。
大男は静かに体制を整え、モララーに向かって歩を進める。

( ・∀・)「俺がここで食い止める!お前らは早く逃げろ!」

( ゚∀゚)「嫌だね。俺は借りを作るのが嫌いな性質なんでね」

そう言ってジョルジュは大男めがけて発砲した。

( ・∀・)「馬鹿が。おい、そこの二人、早く逃げないか!」

川 ゚ -゚)「ブーン、私達に出来ることは無い。ここは逃げよう」

( ^ω^)「元よりそのつもりですお。ジョルジュさん!死んじゃだめですお!」


33 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:42:10.02 ID:Pu1O83EQ0
ブーンがそう言い終わるや否や、当のジョルジュは大男に弾き飛ばされていた。
正面からショルダータックルを受けたのだ。
ジョルジュは消火用具が詰められている鉄製のケースに打ち据えられ、意識を失った。
ブーンが慌てて駆け寄る。

( ^ω^)「ジョルジュさん!しっかりするお!」

ブーンの呼びかけ虚しく、ジョルジュの意識は戻らない。
しかし、息はあるようなので、今すぐ死ぬということは無いだろう。
無論、内臓などがやられていなければの話だが。

ブーンがジョルジュに駆け寄っている間、モララーは必死の抵抗を行っていたが、
奮闘虚しく大男に捕まってしまっていた。
両手でモララーの首を絞める大男。
ミシミシという音を立ててモララーの頚椎が歪む。
――絶体絶命。
一部始終を離れて見ていたクーの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。

しかし、そんなクーの視界に大男に向かって動くものが入り込んだ。
焦点を合わせると、それは消火器を持ったブーンだった。


35 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:45:26.98 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「うわあああぁぁ!!」

川 ゚ -゚)「お、おい!やめろ!戻るんだブーン!」

クーの静止の言葉も聞かずに、絶叫して突っ込んでいくブーン。
大男の直ぐ脇まで突進したブーンは消火器を噴射した。
白い煙が大男の顔面を襲う。
大男の目に大量の消化剤が吹き付けられた。

( ゚∋゚)「ヲヲヲヲヲ・・・」

大男が初めて口を開き叫ぶ。
モララーを掴む手が少し緩んだ。
モララーはこの好機を逃さなかった。
自動小銃を大男の口にねじ込み、血の泡をふきながら声を絞り出す。

( ・∀・)「お休みの時間だ・・・クソッタレ・・・」

銃声が響いた。

口内から後頭部を撃ち抜かれた大男は、モララーを掴んだまま仰向けに倒れていった。
ドスンという重い音と共に大男はその活動を停止した。
ブーンがモララーに駆け寄り、大男の手から救出する。
モララーは何度か咳き込み血を吐いたが、命に別状は無いようだ。


38 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:49:26.81 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「た、助かったぞ・・・流石に死ぬかと思ったが・・・」

( ^ω^)「喋らない方がいいですお」

( ・∀・)「俺のことはいいから・・・荒巻を確保しろ・・・」

( ^ω^)「わ、わかりましたお」

クーが恐る恐る近付いてきた。

川 ゚ -゚)「やった・・・のか?」

( ・∀・)「この小僧のおかげだがな。さぁグズグズするな、部下の死を無駄にせんでくれ」

( ^ω^)「荒巻を確保しにいきますお」

川 ゚ -゚)「あぁ、わかった。行こう」

二人は駆け出した。


39 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:52:55.05 ID:Pu1O83EQ0
( ・∀・)「おい、麻薬班の・・・くたばったか?」

( ゚∀゚)「残念ながら生きてるぜ・・・身体は動かねぇがな」

ジョルジュの意識は回復していたが、全身に痛みが走り足に力が入らない。

( ・∀・)「お前、ウチに来いよ。給料いいぜ」

( ゚∀゚)「うるせぇ、もうこんな目に遭うのはたくさんだ」

( ・∀・)「いい素材なんだがな」

( ゚∀゚)「ハッ、気が向いたら考えてやるよ。期待するなよ」

( ・∀・)「いい返事を待ってるぜ。
    ところであの二人、荒巻をとっつかまえられるかな・・・」

( ゚∀゚)「さぁなぁ、なんせ分室と少年課の刑事だからな」


40 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:56:03.73 ID:Pu1O83EQ0
一拍おいてモララーは驚きの声をあげた。

( ・∀・)「なんだと・・・そんなもん素人じゃねぇか。なんでこんな現場にいるんだよ」

( ゚∀゚)「分室の親分が訳ありでね・・・局長に顔が効くんだよ」

( ・∀・)「なんだよそりゃ・・・ゆっくり休憩も出来ないじゃねぇか」

そう言うとモララーは銃を杖にして立ち上がった。
フラフラと二三歩歩みだすが、そこでまた倒れてしまう。

( ・∀・)「心細いが・・・神頼みしかねぇか・・・」

モララーは通信機を手にとり、増援チームを要請した。


41 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 15:59:26.39 ID:Pu1O83EQ0
一方、ブーンとクーは遂に荒巻と対峙していた。
一連の事件の元凶であり、キャンディ精製者であり、確実に死んだはずの男と。
そして、状況はブーン達にとって極めて不利であった。
何も考えずに部屋に突入したブーンに向かって、荒巻は銃を構えている。
ブーンに照準が向いている限りクーにも何も出来ない。

数十秒ほどの沈黙の後、荒巻はその口を開いた。

/ ,' 3「ワシとこうして対峙しているという事は、クックルは倒されたのか」

その老人は静かに、しかし、威圧的に話し始めた。
飄々とした印象を受ける外見なのだが、中身はまるで違うようだ。

( ^ω^)「あの大男なら倒したお。アンタはもうここまでなんだお」

/ ,' 3「銃を向けられて言う台詞じゃないなぁ。ちっと頭が悪くないかい」 一瞬怯んだブーンだったが、立つ足に力を込めて言った。

( ^ω^)「アンタを捕まえる前に聞きたいことが山ほどあるお」

ブーンの突然の切り出しに意外な表情をみせる荒巻。
一瞬の躊躇の後、荒巻は言った。


45 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:03:27.78 ID:Pu1O83EQ0
/ ,' 3「まぁ、ここまで来たんだ。それなりに事情はわかっておるのだろう。
   祭りはもう終わりだ。いや、始まりもしなかったかな。何が聞きたいのかの?」

( ^ω^)「まず、アンタは死んだんじゃなかったのかお?」

/ ,' 3「死んださ。ワシは三人目の荒巻だよ」

荒巻の言葉に戸惑うブーンとクー。

( ^ω^)「三人目?」

川 ゚ -゚)「どういう意味だ」

/ ,' 3「荒巻スカルチノフは全部で十一人いるのだよ。ワシは三番目。
   簡単に言うとスペアだな」

( ^ω^)「ひょっとしてクローン人間だ、とでもふざけた事を言うのかお」

/ ,' 3「ご名答」


50 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:07:26.70 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「そんなもの作れる訳無いお!」

/ ,' 3「ところが、二十年前にクローン人間作成技術を完成させた男がいたのだよ」

川 ゚ -゚)「二十年前?」

/ ,' 3「その男の名こそ荒巻スカルチノフ。オリジナルの荒巻だ」

荒巻の言葉に混乱するブーンとクーは、
発するべき言葉を見失い、失語状態に陥ってしまった。

/ ,' 3「ワシ等クローン十人はみてくれは完成したのだが、細胞の寿命が短かった。
   二十年前に生まれて、二十年経ったらこの姿だ」

( ^ω^)「な、生まれてから二十年でその姿なのかお・・・・」

荒巻の姿。
薄くなった白髪。
皺だらけの顔面。
乾燥した皮膚。
どれをとっても老人のそれであった。


53 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:11:27.13 ID:Pu1O83EQ0
/ ,' 3「ワシ等はオリジナルに対して愛憎という感覚を持ち合わせていた。
   本物の荒巻スカルチノフになる為、一人称はワシにしたし言葉遣いもオリジナルの真似をした。
   そして、二人目がオリジナルを超えんが為・・・」

語尾が小さくなった。

―――殺したのだよ創造主を。

囁くような荒巻の言葉に、やはり返す言葉が無い二人。

/ ,' 3「二人目のクローンは愛する対象を失い、恨むべき対象を倒した。
  我々を後に待っていたのは恐るべき停滞だった。
  だが、二人目だけは停滞しなかったのだよ。
  オリジナルの研究を引き継ぎ、
  憎むべき対象を、オリジナルから己を生み出した世界に変えていったのだ」


56 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:15:41.92 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「世界を憎んで・・・どうするんだお」

/ ,' 3「二人目は考えた。
   自分達クローンは短命で終る。
   ならばその短い時を、自分達を産んだ憎むべき世界を壊す為に使おうと決意したのだ」

川 ゚ -゚)「逆恨みもいいところだな。歪んでいる」

/ ,' 3「そう。屈折した逆恨みだよ。
   だが、二人目はそこに生きる意志を見出したのだ。
   そしてその屈折した想いは、オリジナルの残した潤沢な資産を伴って、
   ある形となって結実した」

( ^ω^)「ある形・・・それは・・・」

/ ,' 3「これだよ」

荒巻は上着のポケットから球体を取り出した。

( ^ω^)「キャンディ・・・」


58 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:19:27.16 ID:Pu1O83EQ0
荒巻はブーンが確認するのを待って、キャンディを再び懐へ戻した。

/ ,' 3「そう。二年前に二人目が精製に成功したのだよ。人を怪物に変える薬を。
  そして、二人目の悲願は果たされた」

川 ゚ -゚)「悲願というと、世界を壊すということか?」

/ ,' 3「左様。すなわち秩序の破壊だ。
秩序を破壊する事によってこの世界に復讐しようと考えたのだ、二人目は。
もっとも、秩序を破壊できたのはこの街だけだったがの」

( ^ω^)「全てはアンタらの歪んだ想いが引き起こした事だというのかお」

/ ,' 3「正確に言うと二番目が望んだ事だ。ワシ等はキャンディには一切関っておらんかった」

( ^ω^)「おらんかったと言う事には、今は関係しているって事だお」

/ ,' 3「その通り。去年二人目が君達に殺されてから、三人目のワシが後を継いだのよ」


61 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:23:26.73 ID:Pu1O83EQ0
少しの間を空けてブーンは言った。

( ^ω^)「アンタも世界に復讐したかったのかお?」

/ ,' 3「世界と言うのは大げさだが・・・
    既存の秩序を壊したかった点においては二人目と同じだな」

( ^ω^)「じゃぁ何故子供を狙ったんだお。世界の秩序に子供達は直接関係無いお」

/ ,' 3「手っ取り早い兵隊を集めたかったんだよ。
  子供なら主義思想もまだ未熟だ。
  然るべき方法さえ知っておれば優秀な兵士になる」

川 ゚ -゚)「キッズアーミーか・・・。本気でそう思っていたのか」

吐き捨てるようにクーが言った。

/ ,' 3「勿論。更に言うなら、子供は世界の未来を背負う者。
  未来を壊してしまおうなんていう面もあったがね」
  なんにせよあの高岡という子は扱いやすかったな」

川 ゚ -゚)(子供が未来を背負う・・・私と同じ考え・・・だが、この男と私は違う・・・)

クーは荒巻を否定する


64 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:27:26.47 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「何故高岡を起点に選んだんだお?それに高岡親子を援助したのは何故だお」

/ ,' 3「そうだなぁ、高岡親子を援助したのはまぁ気まぐれだな、これは。
   だから、あの親子がどうなろうとワシの知ったことではないな。
   高岡をキャンディ配布の起点にしたのは、彼女が不幸だったからだ」

( ^ω^)「不幸・・・」

/ ,' 3「左様。母の為に身を売る少女。不幸ではないか。
   不幸に付け込み、その不幸を埋めてやると、人は簡単に篭絡できる」

( ^ω^)「お前は!」

ブーンは叫んだ。

/ ,' 3「まぁそう興奮しなさんな。結局あの娘はキャンディをばら撒かなかった。
   安易な思いつきで計画を立てると失敗すると言う典型例だな」


65 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:31:27.03 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「思いつき!お前の思いつきで死んでいった人が沢山いるんだお!」

川 ゚ -゚)「落ち着けブーン」

クーがブーンの肩に手を乗せ、冷静になるように促した。

川 ゚ -゚)「もう一つ聞きたい事がある。
     お前はキャンディを改造したか?」

荒巻は目を細めた。

/ ,' 3「気が付いていたか。確かにワシはキャンディを改良し、性能を上げたのだ」

やはりな、とクーが呟いた。
ブーンは二人の話についていけない。

( ^ω^)「キャンディを改造?どういう意味だお?」


68 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:35:26.36 ID:Pu1O83EQ0
川 ゚ -゚)「まず、今回のキャンディを服用した者の死に方に疑問があったんだ」

/ ,' 3「ほう、やはり死人が出たか・・・改良の余地有りだな」

荒巻の態度にまたもブーンは過剰に反応したが、クーがたしなめた。

川 ゚ -゚)「・・・高岡の死に際は錯乱状態になったんだ。
     麻薬班の連中に教わったのだが、
     既存のキャンディの副作用で死ぬ場合はただの心臓麻痺だ。
     興奮はすれど、錯乱すると言う報告は目に当たらなかった」

/ ,' 3「なんと、あの娘は死んでおったか。またもや計画外だの」

荒巻の発言を意識的に無視するようにクーは続けた。

川 ゚ -゚)「次はしぃの死だ。ブーンの推理によると後追い自殺なのだが・・・。
     私は違うと思う。
     しぃはキャンディの副作用によって異常行動をとり、結果死亡した・・・」


72 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:39:26.28 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「それじゃ二人ともキャンディの副作用で・・・死んだんですかお?」

川 ゚ -゚)「そう考えるのが妥当だと思うな」

/ ,' 3「お嬢さんはなかなか鋭い観察眼を持っているとお見受けした。
   その通り、ワシの精製したキャンディは、ほぼ完璧に人の理性を破壊するのだよ」

( ^ω^)「な、そんなもの・・・秩序の破壊どころの騒ぎじゃないお」

うろたえるブーンに荒巻は続ける。

/ ,' 3「ワシのキャンディは人を狂わせる。
   だが狂った人間を統率する術があるとしたらどうだ?楽しいだろう」
川 ゚ -゚)「そんなことできるはずが・・・」

クーの言葉を遮って荒巻は言う。

/ ,' 3「できるのだよ。私が開発した催眠技術によってね。
   その成果こそ君達が倒したクックルなのだよ」


73 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:43:33.78 ID:Pu1O83EQ0
川 ゚ -゚)「あの大男か・・・。身体強化が発現した者を催眠術で使役したのか。
     そんな事が出来るのかとは言うまいか。十分理解不能なことが起きているしな。
     ついでに聞いておこう。あのバケモノはなんなんだ?
     既存のキャンディで身体強化した者でも、
     銃弾を弾き返すほどの力は得られないはずだ」

/ ,' 3「それはワシが開発したもう一つの効力だ。
   従来の身体強化をさらに強めることに成功したのだよ。
   まぁ、先ほどから話題に挙がっているが、理性の崩壊はその副作用なのだがね」

( ^ω^)「全部わかったお。お前等の歪んだ心が沢山の人を殺したんだお。
      高岡やしぃや麻薬班の皆や重犯罪課の皆や・・・僕の妹を」

/ ,' 3「どうやら君にも私怨があるようだね。
   まぁ、私の方こそ私怨の塊のようなものか。
   さて、喋り過ぎたかな。ワシ等の馬鹿馬鹿しく間の抜けた復讐劇も終わりにしよう」

そう言って荒巻はブーンに向けていた銃を自らのこめかみに当てた。


75 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:47:26.08 ID:Pu1O83EQ0
( ^ω^)「荒巻!?」

川 ゚ -゚)「それがお前の解決法か!?」

/ ,' 3「ワシは三人目だ。残り八人。まだまだ楽しめるよ君達は。
   もうこの世でワシがやるべき事は無くなったよ。後は全てが面倒な事ばかりだ」

( ^ω^)「ここでお前が自殺したら救われない人が沢山でるんだお。罪を償うんだお!」

ブーンが叫んだが、荒巻には届かない。

/ ,' 3「罪?私は罪など犯した覚えは無いよ。ただ自分の思想を成就させただけだ。」

( ^ω^)「そんなの勝手な自己満足だお。ただのエゴだお!」

/ ,' 3「人とは元来エゴイストなのだよ。あぁ、ワシは人外だがの」

熱くなるブーンに反して、クーは冷静さを取り戻していた。


77 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 16:51:45.80 ID:Pu1O83EQ0
川 ゚ -゚)「死ぬのはお前の勝手だが、この世に生きるものには責任というものがあるのだよ」

/ ,' 3「そんなものは知らぬわ。残ったものは残ったもの同士よろしくやればいい」

川 ゚ -゚)「では最後に教えろ。残りのキャンディと荒巻は何処だ?」

/ ,' 3「それはお楽しみと言う事でとっておきたまえ。今知る必要は無いよ」

( ^ω^)「荒巻!お前は・・・お前は・・・」

ブーンは荒巻にかけるべき言葉が思いつかなかった。
ただ、この結末は間違っていると、彼の全身の細胞が告げていた。

( ^ω^)「間違ってるお!お前が死んでも何の解決にもならないお!」

/ ,' 3「この世に解決せねばならぬ事などあったかの。あやふやな位が一番いいのだよ」

一瞬の間の後、荒巻は言った。

/ ,' 3「では、この素晴らしくも醜い世界とお別れだ。お二人さん、しっかりやれよ」


渇いた音が響いた。


112 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 21:59:28.24 ID:qGAYtTP90
午前八時。

( ^ω^)「徹夜明けのコーヒーはシミますお」

川 ゚ -゚)「ここのコーヒーは美味いな」

( ^ω^)「ハムサンドうめぇ」

ブーンがハムの切れ端を飛ばしながらハムサンドの感想を述べた。

川 ゚ -゚)「食べるか喋るかどちらかにした方がいいぞ」

クーは自分のコーヒーとホットケーキを避難させる。

刑事局前にあるカフェの一角で二人は朝食をとっていた。
ブーンがハムサンドをがっつき、クーはホットケーキを食べている。
ホットケーキを一口飲み込んでからクーは言った。


118 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:03:27.95 ID:qGAYtTP90
川 ゚ -゚)「これで私達のコンビも解消だな。
     やっとブーンと離れられると思うとホッとする」

( ^ω^)「それは酷いですお。僕だって結構活躍しましたお」

川 ゚ -゚)「覚えが無いなぁ」

クーがとぼけた素振りを見せたとき、恐怖はブーンに襲い掛かった。

ξ゚听)ξ「おはよう、ブーン。
      全然連絡が無いと思ったら、こんな美人を連れて優雅に朝食ですか。
      十秒以内に全ての言い訳をしないとぶちころす」

このカフェで働いているツンが仁王立ちしていた。

( ^ω^)「ちょ、待つおツン!これは、この人は何でもないただのパートナーだお。
      昨日は事件が立てこんで、しかも調書や報告書をまとめてたから・・・」

ξ゚听)ξ「一二三四五六七八九十。ハイ死刑」


119 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:07:27.84 ID:qGAYtTP90
ツンは持っていた木製のトレイを振りかぶった。
クーが目線をそらす。
ゴン、という鈍い音がカフェに響いた。
ツンはトレイの角で殴ったらしく、ブーンはハムサンドの上に突っ伏した。

ξ゚听)ξ「死ね。氏ねじゃなくて死ね」

流石に見かねたクーが口をはさんだ。

川 ゚ -゚)「えー、ツンさんでしたね。私は刑事局少年課のクーと言います。
     ブーンとは昨日知り合ったばかりでツンさんの疑うような仲ではありません。
     ある事件の捜査の手伝いで昨日一日お借りしました。
     折角のデートを潰してしまって申し訳ない」

ξ゚听)ξ「え、そうなんですか・・・って、デートなんかじゃありません。
      時間が空いていたから一日ボランティアのつもりで、
      ブーンと付き合ってやろうかと思っただけですよ」


123 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:11:28.25 ID:qGAYtTP90
( ^ω^)「それなんてツンデレ?」

復活したブーンがちゃちゃを入れた瞬間、
ゴン、と再び鈍い音。

川 ゚ -゚)「ま、まぁ、私とブーンのコンビは今日限りで解散です。
     だから安心してください」

ξ゚听)ξ「べ、べつに私はブーンと付き合ってるわけじゃないんですよ」

川 ゚ -゚)「そうですか(わかりやすい娘だな)」

クーはツンに気付かれないほど僅かに微笑み、この二人なら馬が合いそうだと思った。
邪魔者は消えたほうが良さそうだ。

川 ゚ -゚)「それじゃブーン。最後のお別れだ。
     一日だけだったが、君は優秀な相棒だったよ」


127 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:14:28.79 ID:qGAYtTP90
ブーンはハムサンドの残骸を顔に付けながら笑った。

( ^ω^)「こちらこそありがとうございますだお」

クーも笑った。
ツンもつられて笑った。
笑っていると昨日の騒動が嘘のようだ。
何も無かったのかもしれないという錯覚すら覚える。
しかし、現実は容赦しない。
事件は笑っているブーンとクーに間違いなく影を落とした。
それでも二人は変わらない日常を過ごす力と心を手に入れた。

川 ゚ -゚)「では、私は少年課に出勤するとしよう。じゃぁな、ブーン」

( ^ω^)「クーさんおげんきでだお。何かあったらまたよろしくだお」

クーはカフェの入り口で振り返り、軽く手を振った。
ブーンも手を振り返す。
ツンは会釈した


131 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:16:28.15 ID:qGAYtTP90
こうしてブーンとクーの奇妙なコンビは解散した。
残されたブーンがツンに言う。

( ^ω^)「今度の休みこそ美術館に行くお。僕が休みを調整するお」

ξ゚听)ξ「そ、そこまで言うんなら仕方が無いわね。
      いいわよ。一緒に行ってあげるわよ」

( ^ω^)「おっおっお。ツンは素直じゃないお」

ξ゚听)ξ「う、うるさい」

ゴン。
三度目の音が鳴り響いた。


138 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:18:27.81 ID:qGAYtTP90
その扉には「国家刑事局組織犯罪対応課特別分室」と、
ホワイトボードにサインペンで書かれている表札が貼り付けてあった。

从'―'从「ふぅ、これで最後ですね。なんとか報告できる形に纏まりましたね」

渡辺は独り言を零しながら事件の書類をまとめるため、パソコンに向かっていた。
ブーンとクーが徹夜で仕上げた報告書のまとめである
一連の事件は新型キャンディ事件と呼称され、現在も捜査継続中になっている。
新たに新型キャンディが流出したという報告は無いが、
かと言って解決できそうな気配も無い。

しかし、渡辺はこのままでもいいのではないかと思い始めている。
残った荒巻達が事件を起こすとは限らない。
クローンであっても意志は統一されていないと思われるからだ。
二人目が暴走したのに比較して、三人目は常に冷静だった。
もっとも、正気を欠いていたのは事実だが。

从'―'从「あの人達は精一杯生きようとして、狂ってしまったのかもしれませんねぇ」


141 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:20:27.83 ID:qGAYtTP90
ため息混じりに独り言を呟く。
誰もが良く生きる事ができる世の中になればいいと思った。
奇麗事だけでは生きていけないのが現実だが、
そういう世界があってもいいと渡辺は思っている。
ただ生きる為に生きる。
そんな世界があってもいい。

完成した報告書を局長当てにメールで送った。
分室の仕事はこれで一旦終了する。
事件の緊急性が薄れた事と、少年課の捜査にも一段落ついた為である。
残りの捜査は麻薬班がやるのだろう。
そして、分室は再び資料の山と向かい合う事になる。
ブーンには申し訳ないが。

从'―'从(ブーン君だけでもここから出してあげたいのだけれども)


143 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:22:28.33 ID:qGAYtTP90
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
扉を開けて入ってきたのは、局長のシャキンだった。

(`・ω・´)「やぁ、おはよう。報告書はまとまったかい?」

从'―'从「はい、丁度今、局長にメールを送りました」

(`・ω・´)「そうかい、それなら良し」

シャキンの歯切れが悪い。

从'―'从「何か御用ですか?」

(`・ω・´)「その、なんだ、二人だけの時はその馬鹿丁寧な物言いは止めてくれないか」

从'―'从「公私混同は許されませんから」

(`・ω・´)「やっぱり、まだ怒っているのか」


148 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:24:27.91 ID:qGAYtTP90
从'―'从「怒ってなんていませんよ」

(`・ω・´)「今回の件ではかなり無理を通したと思ってるんだが・・・」

从'―'从「それに関してはお礼の言葉もありません。ありがとうございました。
     ですが、それとこれとは別の話ではないのですか」

(`・ω・´)「いや、まぁ・・・そうだな。アレだ、母さんは元気か?」

从'―'从「おかげさまで息災です。結婚していた時より元気ですよ」

シャキンは苦笑いを見せた。

(`・ω・´)「そうか、それなら良し」

从'―'从「それだけですか?」


153 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:26:27.82 ID:qGAYtTP90
(`・ω・´)「いや、今回の件なんだが、私を頼ってくれて嬉しかったよ。
     やはり娘のワガママを聞けるのは幸せだ」

从'―'从「ですから、公私混同はやめてください。
    今回は局長が私の父親でなくても直訴しましたよ」

(`・ω・´)「そうか、それなら良し」

从'―'从「そればっかり」

渡辺は少し笑った。

(`・ω・´)「それでだ、お前はこの分室が気に入っているか?」

从'―'从「今回の件で私は初めて刑事の仕事に生きがいを感じました。
     資料とにらめっこはもう十分ではないでしょうか。
     いくら娘が大切でも、檻に閉じ込めておくのはいただけません」


158 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:28:27.95 ID:qGAYtTP90
(`・ω・´)「そうか、大切な娘を危険な目に遭わせたくないからここを作ったんだがなぁ」

从'―'从「それは杞憂と言う物ですよ」

(`・ω・´)「わかった。では今年度末で特別分室は廃止しよう。
     君も一人の刑事となりなさい。
     それからお前の部下のブーンも、春には転属させよう」   

从'―'从「はい」

再び少し笑った。

(`・ω・´)「そうそう、昨晩荒巻とね、少し喋ったよ。
     確保された時の話をしてくれたよ。
     アレは可哀相な人間かもしれないなぁ・・・」

シャキンがそう小さく言った。


160 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:30:27.81 ID:qGAYtTP90
―――昨晩。

荒巻が自らの行いに終止符を打とうとした時、ブーンが動いた。
上着のポケットには別荘地で勝手に借りた拳銃が、安全装置もかけられずに入っていた。
ブーンはとっさに銃を引き抜き、荒巻を撃ったのだ。

日頃の射撃訓練の結果からは信じられないほど正確な射撃で、
弾は銃を持つ荒巻の腕を貫いた。
銃を落とし、膝をつく荒巻にクーが駆け寄る。

( ^ω^)「当たったお・・・」

川 ゚ -゚)「荒巻スカルチノフ。殺人教唆、殺人未遂、麻薬取締法違反、年少者売春禁止法違反、
     公務執行妨害、とにかく確保だ」

クーが荒巻に手錠をかけた。

一方、ブーンは銃を撃った体勢のまま固まっていた。
初めて人を撃ったのである。
クーが近付き、ブーンの腕に手をかけ、優しくその腕を下ろす。
ブーンは銃の安全装置をかけた。


165 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:32:27.96 ID:qGAYtTP90
川 ゚ -゚)「終ったぞ」

( ^ω^)「終わりましたお」

部屋の外が騒がしくなった。
どうやら重犯罪課の増派チームが来たらしい。
ジョルジュやモララーは無事だろうか。
ブーンがそんな事をぼんやり考えていると、荒巻が声を発した。

/ ,' 3「ワシを捕まえても残りのワシがなにか仕出かすかも知れんぞ。
   それを止めるにはワシ等の苦痛を知らねばならない。
   お前にワシ等の痛みがわかるかの」

( ^ω^)「・・・・・・
      人は・・・他人の心を理解する事は出来ないお。
      だから、お互い歩み寄らなければならないんだお。
      それが人間らしく生きるという事なんだお・・・きっと」


168 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:34:27.96 ID:qGAYtTP90
/ ,' 3「・・・・・・」

( ^ω^)「僕は残りの荒巻たちにも――残された時間が少なくても――
       人間らしく生きて欲しいお」

/ ,' 3「・・・青い解答だの」

( ^ω^)「青くて結構だお。人の生き方に解答なんてないと思うお」

追加チームとそのメンバーに肩を借りたモララーが部屋に入ってきた。
部屋の状況を見てモララーが言う。

( ・∀・)「やるじゃないかお前達。よく逃がさなかったな」

( ^ω^)「荒巻は逃げるつもりは無かったですお」

( ・∀・)「そうなのか?しかしコイツはウチの部下のカタキだからな。
     よく確保してくれた。礼を言うぞ」


169 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:36:28.24 ID:qGAYtTP90
( ^ω^)「まぐれみたいなもんですお」

川 ゚ -゚)「モララーさん。荒巻の出血が結構あるので、早々に連行したいのですが」

( ・∀・)「あぁ、ぶっ殺してやりたいが、ここは我慢するよ。さぁ、連れて行ってくれ」

ブーンとクーは荒巻を連れてホテルを出た。
玄関には救急車が何台か止まっている。
怪我人が慌しく搬送されているのだ。

荒巻を救急車に乗せ、麻薬班に身柄を引き渡した時、荒巻が最後の言葉をブーンに放った。

/ ,' 3「坊主!お前さんのその生き方、貫けるものなら貫いてみせろ!」

( ^ω^)「・・・・・・」

川 ゚ -゚)「ブーンなら大丈夫だ」

クーは静かに言った。


170 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:38:34.71 ID:qGAYtTP90
(`・ω・´)「しかし、お前の部下のブーンは最後に良い仕事をしたな。
     クローン人間に人間の生き方を説いた」

从'―'从「あの子はちょっと頼りないですけど、心に大きなものを秘めています。
     自慢の部下ですよ」

渡辺は嬉しそうに答えた。
春にはブーンも分室から卒業できるだろう。
麻薬班に戻るのか、それとも他の部署にまわるのか。
勿論、自分の配属先も重要だ。

( ^ω^)「ブーンただいま到着しましたお」

ブーンが大きな声を出しながら、分室に入ってきた。

春は忙しくなりそうだと渡辺は思った。




( ^ω^)ブーンは麻薬捜査官のようです おしまい。


187 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水) 22:42:56.00 ID:qGAYtTP90
ようやく投下完了です。
さるさんに苛められながらも、皆さんのおかげで終了する事が出来ました。
Wktk、保守、支援、乙、全て嬉しかったです。
本当にありがとうございました。

このお話についてなんですけど、
ドラマの「相棒」からインスパイアを受けました。
冷静なのと馬鹿なののコンビで何かできれば、と思いました。
いろいろ適当にやっつけた所がありますが、その辺は見なかったことに・・・サーセンw

それでは最後にもう一度。
皆様、ありがとうございました。




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