( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンが大人になったようです〜

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1 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:19:55.83 ID:0zBPPdMK0
いつも通りの朝。

いつも通りの部屋。

いつも通りの・・・からだ?



                     ( ^ω^)ブーンが大人になったようです


2 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:21:43.26 ID:0zBPPdMK0
一日目


いつからだろう。
この部屋で眼を覚まし、この部屋で昼を過ごし、この部屋で夜を向かえ、気づくと朝に戻っている。
そんな日常を何度も繰り返してきた。
記憶をたどると始まりはこの部屋で、この部屋から出たことは一度もない。
変化のない日々に退屈という感情すら忘れかけていたそんなある日、『青年』の身に変化が起きる。
見慣れた天井がいつもより近く感じた。
自分自身の内側から力が湧き出るのがわかる。

( ^ω^)「そろそろかお・・・」

彼の名はブーン。この日『成年』になる。


4 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:23:20.89 ID:0zBPPdMK0
大人になったら何をしよう。
そんなことを考えているうちに、彼の足は地面を踏みしめていた。
初めて見る部屋の外。
どんなに手を伸ばしても届きそうにない天井。
横を見ると、大きな木が何本も立っている。ここは皆の憩いの場のようだ。
周りにはたくさんの仲間がいた。

「よう!お前も俺と同期か?」

不意に声をかけられ慌てふためく彼を気にせず、声の主は続けた。

('A`)「せっかく大人になったんだから、精一杯楽しめよwwwwwフヒヒwwww」

こいつからは危険なにおいがする。関わらないようにしよう。


5 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:24:34.79 ID:0zBPPdMK0
ブーンは変人を適当にあしらったあと、眠りにつくことにした。
部屋の外というものは、思っていた以上に体力を使うようだ。
明日は何をしよう。
大人になっても眠ることの心地よさは変わらず、少しだけ安心した。



                     一日目終了


8 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:33:31.29 ID:0zBPPdMK0
二日目


目を覚ますと、目の前に大きな顔があった。
未だ覚醒しきらない頭で必死に状況を飲み込もうとする。

(´・ω・`)「やあ、やっと起きたみたいだね」

決して良くはないことだけはわかった。


9 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:34:54.03 ID:0zBPPdMK0
(;^ω^)「な、何か用ですかお」

当然の質問だった。
仰向けの若い男にまたがっているいい男。周囲の視線が痛かった。

(´・ω・`)「ああ、すまないね。可愛らしい子を見るとつい襲いたくなるもんでね。ははは」

男は立ち上がりながらとんでもないことをいった。
かわいい女性ならまだしも・・・いや、それでも問題にはかわりないが、ましてやブーンは男だ。
この男は危険だ。彼の本能がそう告げていた。


10 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:35:55.59 ID:0zBPPdMK0
昨日のことといい、ブーンは変人に好かれるようだ。
先ほどから背中に熱い視線が送られているが、気にせず歩き続ける。


熱烈な眼差しから逃れるためにとにかく進んだ。
暫くして湖が見える頃には、男の視線は感じなくなっていた。
この湖で休憩することにしよう。喉も渇いた。


11 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:37:03.84 ID:0zBPPdMK0
日陰に寝そべっていると、湖のほとりに二つの影を見つけた。
それらは互いに徐々に距離を縮め、やがて一つとなる。


嫉妬などではなく、ただ単に羨ましいと、そう思った。
自分もいつかはと、淡い羨望を抱きながらゆっくりと目を閉じた。

陽は傾き、伸びきった影はやがて闇へと溶け込んでいった。



                     二日目終了


13 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:39:16.32 ID:0zBPPdMK0
三日目


湖面を伝う少し冷たい、心地よい風が頬をくすぐる。
昨日に比べると随分とすっきりとした目覚め。
ふと湖に目をやる。
朝陽が湖面に反射して、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

感傷に浸っている時、湖のほとりに動く何かを見つけた。


14 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:40:15.31 ID:0zBPPdMK0
美しい。

それが第一印象だった。
ブーンはその女性の体に、完全に意識を奪われていた。
いつまでも眺めていたいと思った。そこに卑しい気持ちはない、といえば嘘になるが、
それだけではないことは確かだった。
暫く見惚れているうちに、不意にその女性と目が合った。


15 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:43:34.39 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「・・・」

まずい。
女性は表情を変えないまま、どんどんと近づいてきた。
逃げなければ危険なことは分かっていた。
しかし体を見てしまったという罪悪感からか、体は言うことを聞かない。
彼女はみるみるうちに近づいてきた。

今まで楽しかったな。
初めて話をしたのは変人だったし、朝起きたら変人が乗っかってたり。
もし生まれ変わったなら、次こそまともな人生に。

勝手な考えを巡らせている彼に向け、女性の口が動かした。


16 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:44:26.99 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「見た?」

ずばり言われた。
嘘をついても、誤魔化しきれる状況ではなかった。
正直に言おう。

( ^ω^)「・・・見ましたお。すみませんお」

怖い。
次の瞬間どんな罵声を浴びせられるのか、考えただけで心が折れそうだ。

しかし次に彼女の口から出た言葉は意外なものだった。


17 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:45:30.60 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「なんとも思わないの?私の体を見て・・・」

それは思いますよ、とても美しいです。
と返すと、そういうことじゃなくて、と彼女は続けようとしたが、

ξ゚听)ξ「見えなかったのかな・・・」

小さくつぶやき自分の中で納得したのか、それ以上問い詰めようとはしなかった。
それはこちらとしても好都合だったため、深く詮索しないことにした。

その後少しだけ他愛なのい話をして別れた。
名前を教えてもらった。ツンというらしい。それだけでお近づきになれた気がして嬉しかった。


18 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:49:38.24 ID:0zBPPdMK0
さっきまで心の隅にあったある感情が、確信へと変わった。
彼はやっと生きる目標を見つけた。


彼女のことを思っているうちに、あたりは徐々に暗闇が滲んでいた。



                     三日目終了


19 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:51:50.10 ID:0zBPPdMK0
四日目


どうやら僕は完全にツンに惚れてしまったようだ。
朝から彼女のことが頭から離れない。
初めて恋というものを知った。
普通とは違う甘美な憂鬱に浸りながら、彼女の顔が浮かんでは消える。

彼女に会いたい。


20 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:54:22.76 ID:0zBPPdMK0
気づいた時、あの湖に足を運んでいた。
ここにくればまた彼女に会えるかもしれない。
微かな、しかし確信めいた考えだった。
彼女にに再び出会うために彼に出来ることは、これしかないから。
しかしもしものことを考えて、あまり期待しすぎないようにした。
自分でも恥ずかしいくらい臆病だと思った。


そしてその期待は、違った形で裏切られるのだった。


21 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:55:50.64 ID:0zBPPdMK0
彼女を待つ間、湖のほとりを散策することにした。
そして凄く高い木を見つけた。
この周辺で一番だろうか。
その上から見えるのは息を呑む絶景。
この景色をツンと一緒に、そう思った。


22 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:56:34.77 ID:0zBPPdMK0
ずっと木の上で待ち続けた。
気づけば湖は赤く染まり、昼間とは違った美しい景色を映し出していた。
今日は来ないのか。期待しすぎないようにしてはいたものの、少なからずショックはあった。
諦めかけていたそのとき、木々の間からツンが現れた。


28 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:58:58.34 ID:0zBPPdMK0
心臓が一気に跳ね上がった。

昨日は普通に話していたのに、女性として意識するだけでこんなにも変わるものなのか。

しかし次の瞬間、彼の頭の中は真っ白になった。

ツンに続いて姿を現した男。

なにやら話をしていた。



29 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 22:59:31.48 ID:0zBPPdMK0
( ゚∀゚)「ここ・・・か?・・・だし・・・」

ξ゚听)ξ「え・・・わか・・・しょう・・・」

遠くて断片的にしか聞こえなかったが、親しい間柄だということは分かった。

これ以上何も見たくない。


墨を落としたように黒く染まった湖に背を向け、静かに寝息を立てた。


                     四日目終了


30 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:00:12.70 ID:0zBPPdMK0
五日目


目が覚めてからも、昨日から気分は沈んだままだった。

気分転換に公園に行くことにした。

あそこにはいい思い出はないが、何でもいいから気を紛らわせたかった。

気持ちの晴れないまま、公園へと歩を進めた。


31 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:01:19.27 ID:0zBPPdMK0
早朝なだけあって、公園は閑散としていた。

体に纏わりつく朝霧を心地よく感じつつ、適当な場所に座り込んだ。

気持ちを整理しようとすればするほど、絡まる糸のように余計に複雑になった。

諦めてぼうっとただ前を見つめていると、霧の向こうから声が聞こえてきた。


33 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:01:49.08 ID:0zBPPdMK0
(*゚ー゚)「朝は気持ちいいね。ギコ君どこか生きたいところある?」

(,,-Д-)「・・・」


なんだ、あの時のカップルか。朝からイチャイチャしやがって。

今の自分の立場もあり、軽い嫉妬を覚えた。

しかしすぐにおかしなことに気がついた。


36 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:03:03.27 ID:0zBPPdMK0
(*゚ー゚)「湖は昨日行ったし・・・他のところにしようよ」

(,,-Д-)「・・・」

女が一方的に話しかけていた。

それに対して男の反応はない。いや反応できないのだ。

ブーンは全てを悟った。それと同時に酷い吐き気を催し、その場に嘔吐した。

頭痛がする。少し横になろう。


湖に戻ろうと決めた頃には、陽は頭上に昇っていた。


38 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:04:12.60 ID:0zBPPdMK0
湖で顔を洗うと、幾分気持ちが楽になった。
自分の顔を思い切り叩いた。

絡まっていた糸がすうっと解けた。

揺るがぬ決心を胸に抱き立ち上がる。

湖面には今までとはどこか違う顔が映っている。

分かっている。

自分に残された時間が少ないことを。


                     五日目終了


40 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:05:24.97 ID:0zBPPdMK0
六日目


もう心に決めた。

しかし相手がいなくては、その気持ちは伝えられない。

朝からずっとそこら中を飛び回っている。

この際、道に迷うことなど気にしていなかった。

心身ともに疲弊しきっている彼を動かすのは、

彼女に会いたい、という気持ちだけだった。


41 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:06:39.45 ID:0zBPPdMK0
散々探したけど、最後に行き着く場所は決まっていた。

そして、そこに彼女がいることも、なんとなく分かっていた。



小さな影。

そっと寄り添う少し大きな影。

静かな湖には、夕暮れを告げる鳥の声と、鼻をすする音だけが響いていた。


42 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:07:34.63 ID:0zBPPdMK0
( ^ω^)「久しぶりだお」

声が震えているのが、自分でも分かった。

ξ゚听)ξ「そうね・・・」

驚きはなかったみたいだ。

それとも、表情に出さないだけだろうか。

( ^ω^)「ずっと探してたんだお」

気持ちを伝えるために。


43 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:08:51.31 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「なによそれ・・・」

不機嫌そうな返答にも、どこか丸みがあった。

( ^ω^)「笑うお。せっかくかわいい顔してるんだから、泣いてちゃ勿体無いお」

自分でもこんなことが言えたのが不思議だった。

ξ゚ー゚)ξ「大きなお世話よ」


44 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:09:47.49 ID:0zBPPdMK0
笑った。

初めて笑顔を見た。今日の疲れはどこかへ飛んでいってしまった。


小さな影。

そっと包み込む少し大きな影。

静かな湖には、季節を告げる虫の声と、小さな嗚咽だけが響いていた。



                     六日目終了


45 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:10:46.88 ID:0zBPPdMK0
いつも通りの夕方。

いつも通りの湖。

少し違うのは、

隣に愛する人がいること。



          ( ^ω^)ブーンが大人になったようです  七日目


46 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:11:43.22 ID:0zBPPdMK0
ツンが全てを話してくれると言った。

ブーンは全てを受け止めると言った。

二人の間を隔てるものはもう何もなかった。


やがて彼女は、ゆっくりと口を開く。


47 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:12:49.24 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「私数日前に、木に引っかかって大怪我をしたの・・・」

一つ一つ言葉を探して、時間をかけて紡ぎだしていた。

ξ゚听)ξ「幸い命に別状はなかったの。でもその代わり・・・」

彼女は覆っているものを退け、背中を見せた。

右肩から腰にかけて、痛々しい傷跡があった。

ξ゚听)ξ「少し前にね、私のことを好きって言ってくれる人がいたの。」

その先の話は、なんとなく想像がついてしまった。


49 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:14:23.12 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「その人とね・・・子どもをつくろうって話しになってね・・・」

今にも泣き出しそうな彼女の小さな背中をそっとなでた。

ξ;;)ξ「傷を見られたら嫌われるような気がして、それで・・・」

( ^ω^)「もういいお・・・よく話してくれたお」

そっと立ち上がりツンの手を握った。

キョトンとしている彼女を抱き起こして、引っ張りながら走った。

ξ゚听)ξ「ちょっ、なによいきなり!」

( ^ω^)「見せたいものがあるお」


51 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:15:50.92 ID:0zBPPdMK0
木の上から見る景色は、心なしかあの日よりも綺麗に思えた。

ξ゚听)ξ「きれい・・・」

その後暫く、二人は景色に見惚れていた。

沈黙を破ったのはブーンの方だった。

( ^ω^)「もう一度、その人に会ってみるといいお」

勝手ながら、それが彼女にとって一番いいことだと思った。

( ^ω^)「ツンはきっと大丈夫だお。自信を持つお」

これでいいんだ。これで。


52 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:16:27.89 ID:0zBPPdMK0
ξ゚听)ξ「ありがとう・・・」

言葉は要らなかった。ただただ彼女を、強く抱きしめた。


太陽が静かに時間切れを告げた。

ツンも、全てを理解しているようだった。


53 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:18:05.07 ID:0zBPPdMK0




( ^ω^)「ばいばいだお」





ξ゚ー゚)ξ「ばいばい」


54 名前: ◆Ciy/3xg8GY [] 投稿日:2007/09/12(水) 23:19:21.47 ID:0zBPPdMK0
最期にツンの笑顔が見れてよかった。

唯一心残りなのは、愛してると云えなかったこと。



世界が180度回転した。

風に煽られた体から、大人の証である薄い羽が剥がれ落ちた。



                       ( ^ω^)ブーンが大人になったようです 完




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