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最終話 「この世の果てまで」
3 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:04:24.10 ID:pZSgmORy0
プロローグ


カーテンの隙間から差し込む朝の日差しが、ベッドに横たわる少年の顔を照らした。
日の光を受けて、少年はまぶしいのだろうか、閉じたまぶたを更に強く閉じる。
それでも差し込む日差しのまぶしさを防ぎきれなかった彼は、
体にかけられたタオルケットを顔の辺りまで深くかけなおし、寝返りをうって朝日に背を向けた。

睡眠を妨げる障害を取り除き、「これでゆっくり眠れる」と思ったその矢先、
今度は彼の眠る部屋の外で、ドタバタと誰かが行きかう音がし始める。


「……朝っぱらからうるさいお」


そんなことをつぶやきながら、その音から逃げるかのように
少年はタオルケットの中に頭までもぐりこみ、体を縮こまらせた。


5 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:05:46.75 ID:pZSgmORy0
だけど、そうしたところで鳴り響く音からは逃れられるはずがなかった。
彼は完全な眠りに落ちることもままならず、 覚醒と睡眠の間のまどろみの中を行き来していた。
そんな時間をしばし堪能していると、「ガチャリ」と部屋の扉が開く音がした。
まどろみの中にいる彼には、その音が現実の音なのか幻聴なのか判別できない。 結局、まどろみの心地よさにその音を無視して、彼はまぶたを開かない。
それからしばらく何も音がしないので、 きっとさっきの音は幻聴なのだろうと確信した彼はそのまま眠りの底へと落ちようとした。

しかし結局、それが適うことはなかった。

7 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:12:39.24 ID:pZSgmORy0


「朝だぞ―――!!」

耳元で甲高い声が響く。
それと同時に「ガンガン!」と金属を金属で叩き鳴らす音が頭の中をかき乱し、 一瞬のうちにまどろみの中から引き釣り出された彼は、驚いてベッドの上から転げ落ちた。

「グッモーニン、ブーン!」

床の上に転がった彼の視線の先には、フライパンとお玉を両手に持った少女の姿があった。 彼女はニッコリと笑うと、

「今日もさわやかな朝だよーん!」

と言いながら、再びフライパンの底をお玉で叩き鳴らす。
その音に辟易しながら、 ブーンと呼ばれた少年は起き上ってボサボサの髪の毛をかきむしった。

8 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:14:53.85 ID:pZSgmORy0


「……僕の朝はなんでいつもこんなに騒がしいんだお」
「あんたがいつまでたっても起きてこないからでしょうが!」

部屋を出て、薄暗い廊下を抜け、階段を下って、少年と少女は台所へとやってきた。 地下の一室に備え付けられた台所は薄暗く、 しかしそれとは対照的に、パンの焼ける香ばしいにおいで満たされている。
もうすっかり古くなった木製のイスに座り、 同じく古くなった木製のテーブルの上に、彼は突っ伏した。
すると、後頭部に衝撃が走る。 どうやらフライパンで叩かれたようだ。

「痛いお……」

後頭部をさすりながら顔を上げた少年の口に、間髪いれずにトーストが突っ込まれる。

「ボヘッ!」
「いつまでも寝ぼけてないで、さっさとそれ食べて顔洗って着替えてきなさい!」

9 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:17:58.56 ID:pZSgmORy0


「ふぁふぁひはひはー(わかりましたー)」

口にトーストをくわえたまま器用にしゃべると、彼は洗面所へと向かう。
顔を洗い、用を足して股間のエレファントをしっかりと振った少年は、 台所と同じく地下に設けられた狭い作業場にて飛行服に袖を通した。
飛行服に着替えた彼は、作業場と呼ぶには少し狭すぎるそこを見渡した。 目の前には、窮屈そうたたずむ一台の、全長およそ十mほどの縦長の飛行機械。
その表面は銀色で、座席は前後に二つの複座式。 機体の中央両側部には両手を広げたくらいの大きさの羽が二枚。
機首には一丁の機銃が備え付けられており、 後部下方には黒鉄色の細長い金属の棒のようなものが、 湾曲してスプーンのような形を描いていて付いている。
そのスプーンのような形を描く金属の棒を、少女はいじくり回していた。
少年は前部の座席に飛び乗ると、 そこに備え付けられたスイッチやらメーターやら操縦桿やらをチェックし始める。
その作業を一通り終えると、まだ同じところをいじっている少女に向かって話しかける。


10 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:19:48.22 ID:pZSgmORy0


「なんだお?エンジンの調子が悪いのかお?」
「まあね。こりゃ、パーツ屋のオカマ野朗のところ行かなきゃいけないかも……」

そう言って、彼女は金属の棒をスパナで「ガンッ!」と殴りつけた。

「ちょっとエンジンかけてみて」
「把握したお」

彼がスイッチを押すと、 金属の棒(どうやらこれがエンジンのようである)が細かく振動を始める。
そして、飛行機械が宙に浮いた。

11 名前:VIP村人u[] 投稿日:2006/11/27(月) 06:21:47.68 ID:pZSgmORy0


「へへーん!どんなもんよ!」
「たいしたもんだお!さすがはツンだお!」
「まあね…っと!」

ツンと呼ばれた少女はスパナを放り投げると、飛行機械の後部座席に飛び乗った。 そのスパナは工場の壁に備え付けられたスイッチに当たる。 すると、天井のシャッターがガラガラと音を立てて開きだした。
薄暗くカビ臭い地下の作業場を、外の光がまばゆく照らす。 少年と少女は頭上のゴーグルを眼前に下ろすと、天井を見上げた。
そこから見えるのは、どこまでも青い空と、白い雲だ。

ξ゚听)ノ「それじゃ、お仕事にしゅっぱーつ!」
( ^ω^)ノ「ブ――ンだお!」

飛行機械は垂直に飛び上がると、開いた天井から青い大空へと飛び出した。


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