( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンのなく頃に 〜バレンタインの悲劇〜〜

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41 名前:0/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:10:13.28 ID:mKRI0Nvu0



( ^ω^)ブーンは、こんなイベントで日本経済に幾許かの+影響が出るのであれば、
喜んでその企みに乗ってやりたい気概は充分あるのに、肝心の甘ったるい洋菓子を
世の婦女子どもが自らのために購入するという消費行動を
起こさないことに心の底から憤慨し、地団駄を踏みながらも
この国の将来を憂いて、とめどない汗をその両目から流すようです


略して、( ^ω^)ブーンのなく頃に 〜バレンタインの悲劇〜


42 名前:1/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:10:54.56 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚听)ξ「ロシアン・バレンタインのはじまりです。
     さあ、この中から一つ選びなさい」

ツンデレが指差した机の上には、色とりどりに包装されたチョコレートが、
数にして七つ、無造作に並べられていた。

(;'A`)「いや、ロシアにはそういう風習はないと思う」

(|||^ω^)「ああ、チョコなんてせがまなきゃよかったお・・・」

ブーンは後悔した。
放課後、猛る気持ちを抑えきれず、ツンを捕まえて
チョコレートを催促したところ、あろうことかこの仕打ち。
腕を組み、不敵に口の端を吊り上げるツン。
その横には、椅子に腰掛けたクーが、これまた含んだような
笑みをたたえてこちらの顔を覗き込んでいた。


43 名前:2/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:11:28.49 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚听)ξ「さっきも言ったように、この中の一つは私が作った本命チョコよ。
     さらに一つはクーが作った本命チョコ。
     残りは・・・・食べてみてのお楽しみ」

(;^ω^)「ううう、なんでこんな回りくどいことをするのかお」

川 ゚ -゚)「ふむ、君たちはただでチョコが欲しいのだろう?」

ξ゚听)ξ「どうせホワイトデーにお返しもしてくれないくせに」

('A`)「そ、そんな事ないぞ! チョコさえくれればさ……チョコさえ……」

(;^ω^)「そそそそうだお。僕なんてすっごいお返しを考えていたお」

ξ゚听)ξ「僕がプレゼントだお〜なんつって、体にリボン結び付けてきたらどうなるか」

(;^ω^)「うっ」

川 ゚ -゚)「その時は、バラバラに切り刻んでマシュマロの具にしてやるか」

(;'A`)「……怖ええよ」


45 名前:3/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:12:25.50 ID:mKRI0Nvu0


( ゚∀゚)「おうおうお前ら、まだ教室に残ってやがったのか……って、おい」

教室の扉から響いてきた声の主はジョルジュ長岡。
ブーン達の姿を見つけて気軽に声をかけたつもりだったのだろうが、
横にいる女の子二人と、その眼前に並べられた可愛らしい包みの数々を見た途端、
肩をいからせ、血相を変えて飛び込んできた。

(#゚∀゚)「お、お前らひょっとして、二人からチョコを……しかもそんなにたくさん!」

(;'A`)「いや、もらえるかどうかはまだわかんないんだけどな」

ξ゚听)ξ「あら、ジョルジュも挑戦する?」

(#;∀;)「挑戦? よくわかんねえ事を言いやがって!
      しょうがないから、昨日一人で三時間かけておっぱいチョコを完成させ、
      帰ってむさぼり食おうとしていた俺への当て付けか!」

(;^ω^)「そういう情熱があるなら、その分を女の子へのアプローチに向けるお」

川 ゚ -゚)「君が言うとまったく説得力がないな」

('A`)「モテないレベルは大差ねえからな……」


52 名前:4/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:17:48.25 ID:mKRI0Nvu0


(#T∀T)「ちくしょう、裏切り者め!
      こんなもの、こうしてやるぅ!」

Σ(;^ω^)「ああ、それは……!!」

ブーン達が止める暇もなく、ジョルジュはチョコレートの一つを掴み取ると、
乱雑に包装を破り捨て、中のチョコに手をかける。

( ゚∀゚)「ハムッ! はふはふ、ハフ!」

ξ;゚听)ξ「ちょ、まだ良いとも言ってないのに……」

(;'A`)「おいおい……」

欠片も残さず、全てのチョコを一気に飲み込む。

(;^ω^)「どうだったお? それ、おいしかったかお?」

(;゚∀゚)「ああん?急いで食べたから、味なんて、味……」

そこで言葉は途切れ、見る見るうちにジョルジュの体に異変が起こった。


53 名前:5/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:18:28.07 ID:mKRI0Nvu0


( ゚∀゚)「あ……」

(((;゚∀゚)))「あああああああ」

Σ(;◎∀◎)「あんぎゃあああああああああ!!!!!!!!!!」

言うなり彼は卒倒し、目を剥き、喉を掻き毟るように
ひっかきながらのたうち回る。
ひとしきり悶絶したあと、止めとばかりに断末魔の雄叫びを上げ、
そのまま泡を噴いて動かなくなった。

(;^ω^)「な、何が起こったんだお、ジョルジュ……」

(;'A`)「おい! 一体このチョコには何が入ってたんだよ!」

気絶したジョルジュの体を一瞥すると、ツンは近くの机に腰掛け、説明した。

ξ゚听)ξ「えーとね、長岡が食べたのは、赤のリボンがついたチョコだから、確か……」

(;^ω^);'A`)「(ゴクリ)」


57 名前:6/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:18:56.90 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚听)ξ「ねりわさびと七味唐辛子と、その他、各種スパイス目白押し。
     あと、ねりけしとドライアイスに、紙粘土、拾った軍手とかも入ってたかな」

少女の口から、事も無げにすらすらと紡ぎ出される、

川 ゚ -゚)「ふむ。仕上げにバスクリンで風味と香りをつけた」

悪魔の宣告。

(|||'A`)「既にそれ、食べ物じゃないんですけど……」

(;^ω^)「ぐえええ、チョコなんてレベルじゃねーお」

川 ゚ -゚)「まあ、彼が食べたのはハズレの中でも良い方だ」

(|||^ω^)「一体他にはどれだけ凄まじいものがあるんだお」

ξ゚听)ξ「ま、人によっては臨死体験くらいは可能かも知れないわね」

(;A;)「神よ………俺を救ってくだしゃい……」


58 名前:7/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:19:35.49 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚听)ξ「さてと、予定外の出来事で一個減っちゃったけど、残りは六個ね」

川 ゚ -゚)「ふむ。それぞれ選べるのは一つ。どちらが先にする?」

(;'A`)「ど、どうぞどうぞ、ブーンさん」

(;^ω^)「いえいえドクオさんこそ」

('A`)「そんなそんな、遠慮なさらないで、白豚さん」

( ^ω^)「滅相もありません、お先にどうぞ、もやしさん」

('A`)「くっ……かくなる上は、勝負だこの野郎」

( ^ω^)「望むところだお」

ξ゚听)ξ「どうでもいいから早くしてね」

川 ゚ -゚)「ふむ、タイムイズマネーだ」

('A`)「いざ、尋常に勝負!」

( ^ω^)「きやがれお!」


59 名前:8/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:20:04.76 ID:mKRI0Nvu0


( 'A`)(^ω^ )「じゃん、けん、ぽん!!!」

('A`)グー

( ^ω^)パー

( ^ω^)「あっち向いて……!!」

Σ(;^ω^)б「あーっ! あんなところにでらべっぴんな巨乳スレンダーが……!!」

('A`)「バカめ!そんな古い手に引っかかるか!」

( ゚∀゚)「あーっ! あんなところにローゼンの第三ドールが……」

ミ( 'A`)「本気と書いてマジ?」

( `ω´)=σ「ほおおおおおおいっ!!!」

Σ(;'A`)「あああ、しまったー!!」

( ^ω^)「勝ったおー! 第三部完!」

( ゚∀゚)「すまん、チョコによる幻覚だった」


60 名前:9/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:20:35.89 ID:mKRI0Nvu0


川 ゚ -゚)「決着はついたようだな」

('A`)「ううう、俺だってマスターになりたかったんだ!」

( ^ω^)「その気持ちはわからないでもないお!」

ξ゚听)ξ「決まったみたいね。さ、ちゃっちゃと選んでね」

ξ゚ー゚)ξ「私達の、プ・レ・ゼ・ン・ト♪」

敗者であるドクオは、こわごわとチョコの包みを眺めていたが、
やがて意を決したように、その一つに手を伸ばした。

('A`)「俺、このチョコ食ったら、お菓子でリアルドールを作るんだ……」

( ^ω^)「食べるのが惜しくなるお」

まるで死刑台への階段を一歩一歩登るかのごとく、ゆっくりと包装を紐解く。
ブーンと女の子二人が固唾を飲んで見守る中、その手に現れた小箱。
透明なプラスチックからは、可愛らしい白いトリュフが顔を覗かせていた。


61 名前:10/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:21:02.44 ID:mKRI0Nvu0


('A`)「ドクオ、いきます」

ξ゚听)ξ「緊張の一瞬ね」

川 ゚ -゚)「不穏な雰囲気を演出するため、蚊取り線香を焚いてみたぞ」

(;^ω^)「(ドキドキドキドキドキ)」

ドクオは目を瞑ってチョコを摘み上げ、大きく深呼吸をしたあと、それをぽいと
口の中に投げ入れた。

('A`)「パクリ。もぐもぐもぐもぐ」

( ^ω^)「どうだお、ドクオ、おいしいかお……?」

('A`)「うん、ちょっとまてブーン、これは意外に、うん……」

('A`)「もぐもぐ、も……」

(゚A゚)

( ^ω^)「!!!」


62 名前:11/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:21:30.77 ID:mKRI0Nvu0


(゚A゚)

(゚A゚)-<'A`)フワーリ

Σ(;^ω^)「ああ!ドクオが幽体離脱してるお!!!」

ξ゚听)ξ「ぽこたんイン! ぽこたんイン!」

川 ゚ -゚)「ほいきた」

クーがドクオの耳から抜け出した幽体をハリセンで一閃(言いにくい)、体内に押し戻す。

(゚A゚)シュウウウウウ

Σ('A`)「ハッ、ここは……」

( ;ω;)「おおお、ドクオ、大丈夫だったかおー!?」

('∀`)b「ああ、俺は大丈夫だぜ!」

言った瞬間、その目玉がぐるんと反転し、ドクオは白目を剥いて倒れ込んだ。

Σ(;^ω^)「ああ、ドクオがー!」

川 ゚ -゚)「ふむ、どうやら致命傷は免れたようだが」

ξ゚听)ξ「無事というわけでもなかったみたいね、まあそのうち目覚めるでしょ」


64 名前:12/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:22:33.18 ID:mKRI0Nvu0


傍らに横たわる親友(とも)の姿を一目見やると、ツンはゆっくりとブーンの方へ向き直る。
続けざまに、少女の口許から死刑宣告が発せられた。

ξ゚听)ξ「さあて、ブーンの番ね。アンタはどの箱を選ぶのかしら?」

(;^ω^)「ちょちょちょちょっと待ってくれお!」

ξ゚听)ξ「なにさ、往生際の悪い」

( ^ω^)「今までの二つは、ハズレだったんだおね?」

川 ゚ -゚)「ああ、ドクオが選んだのはいい線行ってたんだがな」

そう言うが早いか、クーは床に落ちたトリュフの包み紙にそっくり似ており、
しかしリボンの色だけが違う別の箱を摘み上げると、ドクオと同じように、時間をかけて紐解いた。

中にはさっきのものとそっくりな、黒いトリュフが入っているのが見えた。

川 ゚ -゚)「ふむ、ま、私のチョコの用途はあとで考えることにしよう」

ξ゚听)ξ「ちょっと、クー……」


65 名前:13/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:23:07.59 ID:mKRI0Nvu0


川 ゚ -゚)「いいんだ。内藤が欲しいのはお前の本命チョコなんだから」

ξ゚听)ξ「えっ……?」

ξ////)ξ「そ、そんな事ないわよ! きっとこいつはチョコもらえるなら誰からでも……」

ξ*゚听)ξ「そ、そして、どんなチョコだっていいんだから、どうせ!」

(;^ω^)「ううう、そんな事ないお!」

川 ゚ -゚)「それは、ツンのチョコだから欲しかった、という事か?」

( ^ω^)「そ、そうだお!」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

その返答を聞くと、クーはやれやれと言った感じで肩をすくめ、
それから真っ直ぐにブーンを見た。


川 ゚ -゚)「ならば、理解できるはずだ、彼女の気持ちを」

( ^ω^)「お?」


66 名前:14/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:23:48.23 ID:mKRI0Nvu0


川 ゚ -゚)「ツンがどういった気持ちでチョコを作り、この包みを用いるに至ったか」

( ^ω^)「ツンの、気持ち……」

川 ゚ -゚)「残りは四つ。君がツンのチョコレートを、その気持ちを欲しているのなら」

( ^ω^)「……だお」

うつむいて頬を染めた少女が、上目遣いでこちらを見る。

ξ*゚听)ξ「……私が作ったチョコレート、当ててみて」

潤んだ瞳に見つめられ、鼓動が高鳴り、速度を上げる。
一瞬の静寂を破るように、固まった決意を表明する。

(* ^ω^)「は、把握したお……」

川 ゚ ー゚)「頑張れ」


68 名前:15/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:24:19.88 ID:mKRI0Nvu0


(;^ω^)「(雰囲気に流されて安請け合いしちゃったけど、
包みで当てろと言われても……)」

ブーンはしげしげと四つの包みを眺める。
一つは赤く細長く、金のリボンが二つの長い緒をなびかせており、
その横は対照的にずんぐりとした正方形、白いチェックの模様に
銀のリボンで結ばれている。
残りの二つはハート型の小箱で、それぞれ、赤と青の色をした
リボンの玉がくっついている。

( ^ω^)「包みで当てられる可能性があるってことは、
それを選んだ根拠があるってことだお」

念のために四つの包みを手に持って、側面や底を覗いたり、軽く振ったりしてみる。
しかし、それらに特筆するような差や違和感はなく、ブーンの頭を悩ませる。

ξ゚听)ξ「……ブーン……」

川 ゚ -゚)「わからないのか? 早いとこ選ばないと、タイムリミットを設けるぞ」


69 名前:16/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:24:58.37 ID:mKRI0Nvu0


(;^ω^)「……ツン……」

ξ゚听)ξ「……」

再び静寂が訪れる。
ブーンは目を閉じると、今その場にある情報を、ない脳味噌で一生懸命組み立てる。

ツンは、ツンはそのチョコに何を込めていたのか?
それは、バレンタインにわざわざチョコを手作りするくらいの、何か。

答えはいとも簡単に見つかった。

川 ゚ -゚)「そろそろ覚悟を決めるんだ。内藤、選べ」

( ^ω^)「……わかったお」

目を開けると、四つの包みが鎮座する机に両手を乗せ、そのまま
一つの箱をまじまじと見つめた。
様々な感情が入り混じったツンの視線が頭上に感じられる。

川 ゚ -゚)「さあ、どれだ?」

ブーンは頭を上げると、真剣な眼差しを二人に向け、その答えを提示した。


70 名前:17/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:25:31.83 ID:mKRI0Nvu0


( ^ω^)「もしも、もしもツンが、僕を想ってチョコを作ってくれたのなら……」

ξ゚听)ξ「え……」

ξ////)ξ「そ、そんなわけ無いじゃないバカ! 義理よ義理!」

(;^ω^)「わ、わかってるお、もしもの話だお」

( ^ω^)「とにかく、ツンが自分の気持ちをチョコに込めているのなら」

( ^ω^)b「その気持ちをあげるってのは、自分自身をプレゼントすることだと思うお」

川 ゚ -゚)「ほう……」

ξ゚听)ξ「……」


72 名前:18/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:26:03.19 ID:mKRI0Nvu0


( ^ω^)っ■「この箱、赤い包みで可愛いお。確かツンは赤が好きだお?」

ブーンは一番細長い包みを手に取って、そのまま続けた。

( ^ω^)っξ「それにこの、長くて、二つに分かれた金のリボン」

( ^ω^)「ツンのツインテールに似てるお。可愛いお」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

川 ゚ -゚)「ふむふむ、君もなかなかクサいことを言うな」

(;^ω^)「おっお。臭いのは足だけで充分だお」

川 ゚ ー゚)「だが、それがいい」

( ^ω^)「(納豆臭いのがそんなにいいのかお……?)」


73 名前:19/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:26:49.54 ID:mKRI0Nvu0


川 ´ -)「選んだなら、次は確認タイム」

川 ゚ -゚)「さあ、準備はいいか?
     その口で、体で、気持ちを受け止める時間だ」

( ^ω^)「僕は僕の選択を信じるお。後悔しないお」

ξ゚听)ξ「……」

ブーンは赤い包みを手もとに引き寄せると、金のリボンに
両手を添え、引っ張ろうとする。
しかし、その手をツンの白くやわらかな掌が包み、動きを制した。

( ^ω^)「……ツン?」

温かな感触をその目で確かめ、驚いた顔を上げる。
ツンはブーンの目をまじまじと見詰めると、その表情を綻ばせた。

ξ゚ー゚)ξ「……ブーン」


74 名前:20/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:27:22.42 ID:mKRI0Nvu0


(;^ω^)「(ドキドキ)……ど、どうしたお?」

ξ゚听)ξ「それ、チョコ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚ー゚)ξ「残念、それはハズレよ」

Σ( ^ω^)「えっ」

(;^ω^)「そ、そうなのかお。僕はダメダメだお」

川 ゚ -゚)「……」

ξ゚ー゚)ξ「ふふ、いいの」

ξ*゚听)ξ「私、ブーンの気持ちが、考えがわかったから」

( ^ω^)「……お?」

ξ゚听)ξ「ありがとう」

( ^ω^)「ぼ、僕は別に何もしてないお……」


75 名前:21/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:27:59.61 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚听)ξ「私が作ったのは、これとこれ」

ブーンの右手に掌をそえたまま、もう片方の手で包みを交互に指差す。
その先には、赤と青のリボン玉のついたハートが並んでいる。

ξ゚听)ξ「もう、気持ちといったらハートでしょ?バカね」

(;^ω^)「おっお、そんな単純な話だったのかお……」

川 ゚ -゚)「王道だな」

( ^ω^)「でも、どうして二つもあるお? 本命と義理なのかお?」

ξ゚听)ξ「え? 違うわよ……」

ξ*゚听)ξ「チョコ作ってたら私も食べたくなってきたんだもん。だから、お揃いなの」

( ^ω^)「お揃い?」


76 名前:22/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:28:30.88 ID:mKRI0Nvu0


ξ゚ー゚)ξ「その、私も、横で一緒に食べられたらいいな、と思って」

( ^ω^)「ぼ、僕とかお?」

ξ゚听)ξ「え?」

ξ////)ξ「う、自惚れないでよバカ! 好きな相手とよ!」

(;^ω^)「ご、ごめんお。特定の相手とってわけじゃないおね」

ξ*゚听)ξ「そうよ、あんたのために作ったなんて、勝手に思わないでよね……」

川 ゚ -゚)「(ふむ、その時点でもう告白してるようなものなのに……)」


78 名前:23/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:29:04.12 ID:mKRI0Nvu0


ブーンから離れたツンは、そのままぴこんと後ろに飛び跳ねた。
胸を張って両手を後ろに組むと、もじもじと体を揺らしながら、
目を合わせないように顔だけ横を向ける。

ξ*゚听)ξ「バレちゃったからにはしょうがないわね。
     ……しょうがない、しょうがないから、それはブーンにあげるわ」

(;^ω^)「おおっ。僕は別に何も……」

川 ゚ -゚)「いいじゃないか、もらっておきなさい」

( ^ω^)「……もちろんだお! ツン、ありがたくいただくお!」

ξ゚听)ξ「ど、どういたしまして……」

ξ////)ξ「べ、別にあげたくてあげたわけじゃないんだからね! 
しょうがなくなんだからね!」

(;^ω^)「わ、わかってるお。早速食べていいかお?」

ξ*゚听)ξ「う、うん。私も一緒に食べる」

川 ゚ -゚)「(なんという甘酸っぱい青春……正直、書いてて嫉妬する俺は
間違いなくチョコ0個)」


79 名前:24/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:29:42.44 ID:mKRI0Nvu0


包みを開くと、ちょっと不恰好だけどそこがいかにも手作りっぽい、
可愛らしいハートが姿を現した。
黒い表面にホワイトチョコでSt. Valentineと書いてある。
それなりに手の込んだ作りのようだ。
ブーンは、そこまでしてくれたツンの気持ちを、嬉しく、
そして照れ臭く思った。

(* ^ω^)「じゃ、じゃあいただきますお。本当にいいのかお?」

ξ*゚听)ξ「いいって言ってるでしょ! いらないなら返してもらうわよ!」

( ^ω^)「それは無理だお。あーん」

ξ゚听)ξ「ちょ、ブーン食べるの早い……」

( ^ω^)「ハムッ、ハフハフ、モフッ!」

川 ゚ -゚)「うん、見事なまでにキモいな。キモさの芸術にまで昇華している」

ξ*゚听)ξ「ちょっとお、もうちょっと味わって食べてよね」

言いながら、ツンも自分の包みから取り出したお揃いのそれを一口かじる。

( ^ω^)「もぐもぐもぐ。これはまた、辛さと粘っこさが絶妙にミスマッチで……」

ξ゚听)ξ「パクッ。もぐもぐ……うん?」


80 名前:25/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:30:16.45 ID:mKRI0Nvu0


(;^ω^)「ん? …辛さ?」

ξ;゚听)ξ「粘っこさ?」

川 ゚ -゚)「?」

( ^ω^)「………」

ξ゚听)ξ「……」

( ゚ω゚)

ξ゜凵K)ξ

Σ川 ゚ -゚)!?

( ゚ω゚)゜Д゜)ξ

( ゚ω゚)゜Д゜)ξ「あんげれごべげえええええええええええ!!!!!」

ツンは卒倒すると、顔を紅潮させ、首に血管を浮かせて悶絶したあと動かなくなった。
ブーンは顔中の穴という穴から様々な液体を噴出させ、崩折れるかのように
前向きに倒れ、ヒクヒクと痙攣している。


81 名前:26/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:30:52.48 ID:mKRI0Nvu0


川 ;゚ -゚)「こっ、これは……!?」

クーは彼らの手からこぼれ落ちたチョコレートを拾いあげると、顔に近づけた。

川 ゚ -゚)「クンクン……ペロ。ぐえっまずい」

川 ;゚ -゚)「この刺激臭、シュールで例えようもない味……」

( ゚∀゚)「これはつまり、意識してまずく作らなくても」

('A`)「最初から、ツンデレの料理の腕前はひどかったわけだな」

いつの間にか意識を取り戻していた二人が、やれやれといった表情で肩をすくめている。

川 ;゚ -゚)「だが、同じチョコの材料を使って、よくこんな毒物を作れるもんだ」

( ゚∀゚)「砂糖と塩を間違えた、ってレベルじゃねーぞ」

('A`)「しかしまあ、こいつらも一緒に逝けて幸せだろうよ……」

後ろ向きに倒れて白目を剥いたツンと、前のめりに突っ伏し、尻を上げ痙攣しているブーン。
二人の右手と左手は、偶然にも、しっかりと重ね合わせられていた。


82 名前:27/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:31:21.29 ID:mKRI0Nvu0


今や教室はオレンジ一色に染めあげられ、少し開いた窓からは冷たく澄んだ空気が流れ込んでいる。

足元に横たわる二人の脇に、教卓の花瓶から花を持って来て添えると、クーは重い口を開いた。

川 ゚ -゚)「さて、彼らのことは放っておくとして、君たちはどうするんだ?」

('A`)「どうするって……」

( ゚∀゚)「どうしようもないぜ。帰るしかねえ」

('A`)「そう言えば、クーの作ったチョコはどれだったの?」

川 ゚ -゚)ノ◇「ん? ここにあるぞ」

(;'A`)「なあ、もう間違えないから、それ俺にくれないか?」

( ゚∀゚)「さすがにクーさんの料理の腕前は信じられるからな」

川 ゚ -゚)「ふん? 何を言っている。君は選択を誤ったではないか」

(;'A`)「そ、そうだけどさあ……」

( ゚∀゚)「せっかく作ってきたんだし、くれよー」


85 名前:28/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:31:52.23 ID:mKRI0Nvu0


川 ゚ -゚)「これはボッシュートです。むしゃむしゃ」

(;'A`)「ちょ、それはひどいぜ! 欠片でいいから! ねっねっ」

川 ゚ -゚)「往生際が悪いな。そんな奴には来年もあげない」

(|||'A`)「うううううう」

( ゚∀゚)「あきらめなドクオ、俺の家でおっぱいチョコを一緒に食おうぜ」

Σ(;A;)「うう、ちゃんと二個あるのか……?」

( ゚∀゚)b「もちろんだ! おっぱいは二つでひとつだからな!!」

(;A;)「わかった。てっぺんにチェリー乗せて食おう……!」

川 ゚ -゚)「うーん、苦くて酸っぱい、どどめ色の青春だな」

(;A;)「ううう、バレンタインなんて消えてなくなれええええええ!!!!」


地面に横たわる二つの死体すら羨ましい。
愛に飢え、甘味に飢えたドクオの悲痛な叫びが、夕暮れの校舎にこだました。


86 名前:29/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:32:22.25 ID:mKRI0Nvu0






しかし、世の中は捨てたものではない。
大きな大きなハート型のチョコを持って、ドクオを待つ一人の女性がいることを、
彼は未だ知らずにいた。






87 名前:30/30[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03:32:44.97 ID:mKRI0Nvu0





J( 'ー`)し「ドクオ……早く帰っておいで……」

息子を待つカーチャンの笑顔は、いつもより一層艶やかで、若々しかったという。




終わり。






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