( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ミ,,゚Д゚彡鳴けないフサギコのようです〜

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当サイトはブーン系小説の完結作品集 です。 読み物系は嫌いって方はご退場ください


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:07:42.76 ID:7KD8yV3D0

ミ,,ーДー彡「ん……」

 ぼくの記憶の中で一番古いものは、光だった。

ミ,,ーДー彡(……眩しい)

ミ,,ーДー彡(……ここは、どこなんだろう)

 とりあえず、ただがむしゃらに手足を動かすと、どこかでぱりぱりと音がした。


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:09:39.60 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「う……ん」

 手、足、背中の羽根、尻尾、それから首を伸ばした。

 ゆっくりゆっくり目を開けると、『何か』が目の前にいた。

( ^ω^)「おっお! ついに生まれたおwww」

ミ,,゚Д゚彡「?」

( ^ω^)「フサフサしてて可愛いお……」

 それが生きている『モノ』だと気が付くのに、時間はかからなかった。

 何を意味するのかわからない音が、ぼくの耳に聞こえてきた。

 そして、明らかに意思を持ったその眼差しにぶつかった瞬間、

 自分がどこで何をしているのかがようやく分かった気がした。


 その瞬間に、ぼくはこの世に生まれたんだ。



    ミ,,゚Д゚彡鳴けないフサギコのようです




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:10:47.21 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「そうだ! 名前を考えなきゃだお!」


 目が慣れてくると、ぼくの前にいる『何か』がはっきり見えてきた。

 毛も鱗も生えていない顔。

 牙もなく裂けてもいない口。

 翼も尻尾もない体。

 ぼくとこの生き物は違うのかなってぼんやり思ったけど、そんな事はどうでもよかった。

 ただ、その『何か』見ているととても安心した。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:15:17.17 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォン……」

( ^ω^)「おっおwwwすまんお、お腹すてるおねwww
       じゃあ、名前をつける前にご飯にするお!」

 『何か』は平べったい物を差し出して、ぼくのすぐ側に置いた。

ミ,,゚Д゚彡「?」

( ^ω^)「ブーン特性のミルクだおww遠慮なく飲むといいお!」

ミ,,゚Д゚彡「……?」

 首を伸ばしてみると、白くていい匂いのする飲み物が入っていた。

 ぼくは夢中で飛びつき、首を突っ込んだ。

ミ,,゚Д゚彡「ング……! ハム、ハフハフ、ハム!」


 ほんのり暖かいそれは、甘くてとてもおいしくて、ぼくは息もつかずにいっぱい飲んだ。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:17:14.81 ID:7KD8yV3D0

ミ,;゚Д゚彡「ングングッ! グッ、ブハ!」

(;^ω^)「ちょwwww慌てずゆっくり飲むめおwwww」


 あんまり慌てて飲んだから、変なところに入ったらしく何回かむせたけれど、

 『何か』が背中を叩いてくれたら楽になった。

 『何か』の手はすごく柔らかくて暖かかった。


ミ,,ーДー彡「フゥ……」

 おなかがいっぱいになると、眠くなって大きなあくびが出た。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:17:51.54 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「おねむの時間かお? よしよし、寝る子は育つ、だお」

 『何か』が暖かい布を持ってきて、ぼくの上にかけてくれた。

ミ,,ーДー彡「……」

(;^ω^)「あ、そういえば名前をつけてなかったお。
       明日考えるから、堪忍してくれお」

 そのまま、ぼくは暖かい布に包まれて、眠った。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:20:34.11 ID:7KD8yV3D0

( ・∀・)「ブーン、用件は分かってるだろう?」

(;^ω^)「お……」

次の日『何か』と同じような生き物をたくさん見た。

皆ぼくを見て何か言っていたけれど、ぼくには何が何だかさっぱり分からなかった。

( ・∀・)「竜を飼うなんて、僕は絶対に許さないぞ」

ξ゚听)ξ「大きくなったら、私達食料にされちゃうわよ?
     わかってるでしょ? ブーン」

(;^ω^)「大丈夫だお! フサギコは絶対人を襲ったりしないお!
       僕がそう教えてあげるんだお!」

( ・∀・)「そうは言うがな……。みろ、この鋭い牙を」

その内のある一匹が側に来て、いきなりぼくに触った。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:24:18.91 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォ!!」

 ぼくはびっくりして鳴いた。

(;・∀・)「うわっ!」

(#^ω^)「触っちゃだめだお! フサギコが怖がってるお!」


 『何か』がすっ飛んできて、叫びながらそいつをぼくから引き離した。

(;・∀・)「と、とにかく! それ以上大きくなるようなら、僕は認めないからな!」

 しばらくして、そいつはどこかに行ってしまった。

( ^ω^)「フサギコ、大丈夫だお。絶対に、僕がお前を守ってあげるお」


 『何か』がぼくに何か言った。

 意味は分からなかったけれど、それはとても優しい感じがした。


ミ,,゚Д゚彡「ウォォン」

 声をかけてもらった事が何だかとても嬉しくて、ぼくは小さく鳴いた。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:26:54.49 ID:7KD8yV3D0

ξ゚听)ξ「どうします? おば様」

J( 'ー`)し「生き物を飼うことはいい事だと思うんだけどねぇ。
      でも、ブーンが襲われないか心配だわ……」


その後もしばらく他の生き物たちがいて、ずっと何かを話していた。


ミ,,゚Д゚彡「ウォォン……」

( ^ω^)「どうしたんだお? フサギコ。お腹すいたのかお?」


時々『何か』がぼくの側を離れていって、その度にぼくは不安になって鳴いた。

そしたら『何か』はすぐに戻ってきてくれた。


そんな事をしながら声を聞いていると、ある単語がくり返し使われているのが分かった。


昨日から何回か聞いていたその単語は「フサギコ」。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:30:17.85 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「おっおwwwフサギコの毛もふもふして気持ちいいおwwww」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォン」

( ^ω^)「ちょwwwくすぐったいからやめるおwwww」


 その言葉は何だかぼくに向かって使っているみたいだった。

 だから、その次に『何か』が「フサギコ」と言った時、ぼくは一つ鳴いてみた。


( ^ω^)「え、ちょ、え? ふ、フサギコ!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォゥ!!」

( ^ω^)「フサギコ〜」

ミ,,゚Д゚彡「ウォオウ!」

( ^ω^)「……」

(^ω^)

ミ,,゚Д゚彡 コッチ ミルナ


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:32:00.74 ID:7KD8yV3D0

 もう一度『何か』が「フサギコ」、と言った。

 ぼくはまた鳴いた。

 そしたら急に静かになって、皆がぼくを見た。


(*^ω^)「ちょwwwwすごいお! 見たかお? ブーンの言葉がわかるんだお!!」

 
 すると『何か』はすごく嬉しそうな顔をして笑った。


ミ,,゚Д゚彡「ウォォォォン!!!」


 ぼくも嬉しくなって、羽根をばたつかせて尻尾を振った。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:34:02.65 ID:7KD8yV3D0


 しばらくして、「フサギコ」というのはぼくの『名前』なんだと知った。

 ぼくには出せない不思議な声が作り出す音。

 誰かを呼ぶための特別な言葉。

 『何か』の名前は、ブーンといった。

 ぼくがブーンの名前を呼ぶことはできないけれど、ぼくはブーンに名前を呼んでもらうのが大好きだった。


( ^ω^)「フサギコー! ご飯にするお!!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォ――!!!」

( ^ω^)「うぇうぇwwwそんなにお腹空いてるのかおwwww」


 ぼくが返事をすると、ブーンは嬉しそうに笑った。

 だからぼくは、名前を呼ばれたら必ず返事をすることに決めた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:38:53.31 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「フサギコ、こっちにくるおー!! 散歩するお!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォウ!!」

 初めて外に出してもらった日のことは良く覚えている。

 いきなり開けた世界はすごく大きくて広くて、見上げても果てがなくて、

 ちょっぴり恐くなったけど、ブーンが側にいたから平気だった。

 ぼくはすぐに外が大好きになった。

( ^ω^)「これは池だお! そして、これは魚だお!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォウ……」

びしゃん。

ミ,,゚Д゚彡 ヒャアウマィィィ

( ^ω^)「ちょwwwww」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:41:23.81 ID:7KD8yV3D0

 ブーンは色んな所に連れて行ってくれた。

 そのうち、ぼくは飛べるようになった。

 羽根を大きく広げて思いっきり地面を蹴ると、体がふわりと浮いた。


ミ,,;゚Д゚彡「ウォ……」

( ^ω^)「大丈夫だお! その羽根があれば、空もきっと飛べるはず!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォォン!!!」

ずざざざざざ。

(;^ω^)「おまwwwww苦しい苦しいくるし(ry」

ミ,,;゚Д゚彡 ワザト ジャ ナイデス


 初めは落ちるんじゃないかと思ってすぐに地面に降りていたけど、

 ブーンがぼくを捕まえて、飛ぶ練習をさせてくれた。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:43:35.13 ID:7KD8yV3D0

ちょっとずつ恐くなくなって、ちょっとずつ高く長く飛べるようになった。

でもブーンは飛べないから、ぼくは高く飛ばなかった。

飛ぶのは好きだけど、一人で高い所を飛んでいてもつまらない。


( ^ω^)「いくおー!! それ!!」
 
ミ,,゚Д゚彡「ウォォォン!!!」


ブーンはいっぱい遊んでくれた。

ぼくの一番好きな遊びは『もってこい』だった。

ブーンが投げた木の枝を、ぼくが咥えてブーンのところまで持っていくのだ。

(#^ω^)「どりゃぁぁぁぁ!!! レーザービーム!!!」

ミ,,;゚Д゚彡 マジメ ニ ムリデス

空高く放り投げられた枝を上手く捕まえると、ブーンは手を叩いて誉めてくれた。

外に出るとぼくは木の枝を捜してきて、何度も何度も『もってこい』をおねだりした。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:45:37.99 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「今日もたくさん遊んだお!! さ、帰るお!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォン」

( ^ω^)「フサギコまた重くなりおってwwww腰が痛いのうwwww痛いのうwww」

ミ,,゚Д゚彡 ソノノリハ リカイ デキナイ


そして、飛び疲れたらブーンの肩に乗るのが、ぼくのお気に入りだった。

顎の下を撫でられると気持ちよくてたまらなくて、ちょっぴり細い声が出た。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:49:16.53 ID:7KD8yV3D0

 ぼくはどんどん大きくなった。

 初めはブーンの腕にすっぽり収まるくらいだった。

 けど、すぐに肩に乗れなくなって、抱きかかえてもらうこともなくなった。


ミ,,゚Д゚彡「ウォォン……」

 家の中に入れてもらえなくなってしまった夜、淋しくてぼくは何度もブーンを呼んだ。

( ^ω^)「フサギコ、ごめんお……。
       フサギコが入ると天井が壊れるってママンがうるさいんだお」

ミ,,゚Д゚彡 ウン

( ^ω^)「今日はフサギコと一緒に外で寝るお。このフサフサの毛を毛布代わりにするお」

ミ,,゚Д゚彡 ウレシイ

そしたら、ブーンがこっそりやって来て、一緒に眠ってくれたんだ。

その後、すぐに一人でも平気になったぼくだけど、あの時はすごくすごく嬉しかった。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:50:56.28 ID:7KD8yV3D0

それからも、ぼくの成長は止まらなかった。

ずっと頭の上にあったブーンの顔がどんどん近くなって、ついには追い越してしまった。

首が長くなって、爪も牙も鋭くなったし、尻尾も手足も伸びた。

羽根も前より立派になった気がした。


( ^ω^)「おっおwwフサギコ、今日は何して遊ぶお?」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォン!」


ある日ぼくとブーンがいつものように野原で遊んでいると、ブーンと同じ生き物がずらりとやって来た。

( ・∀・)「おい、ブーン」

( ^ω^)「モララー……それに、皆までどうしたお?」

その中には、前にぼくに触ってきた奴もいた。

ブーンとそいつらは、何かを話し始めた。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:51:54.29 ID:7KD8yV3D0

(´・ω・`)「ブーン、もうわかってると思うけど……村の皆が怖がってるんだ」

( ^ω^)「フサギコは人を襲ったりしないお!!」

(#・∀・)「お前、まだそんなこといってんのかよ!!
     何か起こってからじゃ遅いだろ!!!」

('A`)「そうだそうだ!!」

( ∵)


意味は分からなかったけど、トゲみたいな言葉がいっぱい聞こえてきた。

そいつらは話しながら、何回かぼくを指差した。

そして、その度にブーンがぼくの前に立ちはだかった。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:54:22.77 ID:7KD8yV3D0

(;^ω^)「やめるお! フサギコを怖がらせるなお!!」

( ・∀・)「怖がらせてるのはそっちだろう!!」

ミ,,゚Д゚彡「……」


ぼくは黙っていたけど、すごくイライラしていた。

咽が少しずつ熱くなって、お腹の中で何かが燃えているような感じがした。


( ^ω^)「だから、フサギコは最後まで僕が育てるんだお!!」

(#・∀・)「いい加減にしろ!!

( ^ω^)「うわっ!」

そいつらの一人が、ブーンの肩を叩いた。


ミ,,#゚Д゚彡「ウゥゥゥ……」


ぼくは首を持ち上げた。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:55:48.30 ID:7KD8yV3D0

( ・∀・)「お前一人の我侭で皆が迷惑するんだ!!」

ミ,,#゚Д゚彡 ブーンカラ ハナレロ !!


よろめいたブーンにそいつらが掴みかかった時、ぼくは思いっきり息を吐き出した。

目の前が真っ赤になった。

ぼくは、自分でも何が起こったのかよく分からなかった。

よく見ると、赤いのは炎だった。




47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 00:58:26.60 ID:7KD8yV3D0

(;・∀・)「あ、あわわわ……」

(;^ω^)「フサギコ!!!」

ぼくの目の前、ブーンと他のやつらのギリギリ横で、草が勢いよく燃えていた。
 

(´・ω・`)「うわあぁぁぁぁ!!!」
(;・∀・)「ひえええええ!!」
('A`)「そうだそうだ!!」
( ∵)


高い声を挙げて、ブーン以外のやつらは飛ぶように逃げていった。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:00:37.51 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「フサギコ……」

ミ,,゚Д゚彡 ゴメン


ブーンがぼくを見た。

ぼくもブーンを見た。

ミ,,゚Д゚彡「ウゥ……」

( ^ω^)「フサギコ。もう大丈夫だお。怖い人はどっかいっちゃったお」


怒られるかな、と思って首を下げて縮こまっていると、ブーンはそっとぼくの首を抱きしめてくれた。




56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:02:54.15 ID:7KD8yV3D0

(´・ω・`)「わかっているでしょう。竜は、人には飼えない」

( ^ω^)「そんなことないお! フサギコはいい子なんだお!」

J( 'ー`)し「ブーンちゃん……」


 その日の夜は何だかすごく騒がしかった。

 昼間のやつらがいっぱいいっぱい同じ生き物を連れて来て、ブーンを取り囲んでいた。

ミ,,゚Д゚彡「……」


 ぼくは離れたところでそれを見ていた。

 ブーンはすごく困った顔をしていた。



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:05:13.16 ID:7KD8yV3D0

(´・ω・`)「また来るよ。……なるべくなら、早い方がいい。
      ……きっと辛くなる」

( ^ω^)「……お」

 空がすっかり暗くなってから、ようやくそいつらは帰っていった。

 ぼくの方を変な目で見ていたやつもいたけど、全然気にしなかった。

ミ,,゚Д゚彡 ブーン・・・

( ^ω^)「フサギコ……」
 
 ブーンに甘えて鼻を近づけたら、笑って優しく撫でてくれた。

 でも、それはいつもとちょっと違う笑顔のような気がした。

ミ,,゚Д゚彡 ウリウリ

( ^ω^)「ちょwwwくすぐったいおwwww」

 心配になって、頭をぐいぐい押し付けると、ブーンはやっと声を上げて笑ってくれた。




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:09:31.50 ID:7KD8yV3D0

(´・ω・`)「いい加減にしろ。ぶち殺すぞ」

(;^ω^)「もう少しだけ……もう少しだけ、お願いしますお!」

ミ,,゚Д゚彡 ハヤク カエレヨ ハゲオヤジ

 次の日も、その次の日も、ブーンのところに同じ生き物がやってきた。

 そいつらが来ると、ぼくはブーンと遊べない。

ミ,,゚Д゚彡 ネー アソボーヨー

( ^ω^)「大丈夫だお。大丈夫だから、もう少しだけ任せてくれお!!」

ミ,,゚Д゚彡「ウォォォォォォン!!!!」

(´・ω・`)「ぎゃ!!!」

 つまらなくて、ぼくは鳴いた。

 そしたら、そいつらはもっと騒ぎ立てた。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:10:53.50 ID:7KD8yV3D0

(´・ω・`)「やっぱりこいつは凶悪だ!! く、食われるぅ!!」

( ・∀・)「村長、落ち着いてください! ズボンの股が裂けてます!」

 困ってブーンを見たら、すごく悲しそうな顔をしていた。

 ブーンのそんな顔なんてちっとも見たくないのに、ブーンはその顔ばかりするようになった。


J( 'ー`)し「……もうすぐね。ブーンちゃん、今度こそ……」

( ^ω^)「わかってるお……」

ミ,,゚Д゚彡 ネー ドウシタ ノー


――――その日から、ブーンはぼくと遊んでくれなくなった。




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:11:56.42 ID:7KD8yV3D0


ミ,,゚Д゚彡ネー アソボウ

( ^ω^)「……」


ブーンはぼくの名前を呼ばなくなった。

ぼくは淋しくて、わけが分からなくて、鳴いた。


ミ,,゚Д゚彡「ウォォォォォン!!! ウォォォン!!」

バタン!

( ^ω^)「……」

ミ,,゚Д゚彡 ア、デデキタ ネー アソボウ


ばしん!

ブーンが、ぼくをぶった。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:12:53.00 ID:7KD8yV3D0

ミ,,;Д;彡 ドウシテ・・・?


初めてブーンにぶたれて、ぼくはすごくびっくりした。


( ;ω;)「ごめんお……ごめんお……」


ブーンは、すごくすごく悲しい顔をしていた。


ああ、そっか。

ぼくは鳴いちゃいけないんだ。




――――その日から、ぼくは鳴かなくなった。




66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:15:13.02 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「フサギコー」

ミ,,゚Д゚彡「!!」

ある日、久しぶりにブーンがぼくを呼んだ。

嬉しくて嬉しくて、ぼくは思わず叫びそうになった。

けれど、すぐにブーンのあの悲しそうな顔を思い出して、ぐっと我慢した。


ミ,,゚Д゚彡 ワクワク

( ^ω^)「……」

ぼくが側に行くと、ブーンは黙って歩き出した。

またこうやって出かけられるのが嬉しくて、ぼくは黙ってついて行った。

今までにないくらい、すごく長く歩いた。

とても遠くて、見たこともない場所をいくつも通り過ぎた。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:16:54.49 ID:7KD8yV3D0

( ^ω^)「ここらへんでいいお……」

ミ,,゚Д゚彡 ウワー スゴイ ケシキ

やがて、いい匂いのする風が吹く場所に来た。

遠くに高い山があって、そこから風が吹いてきているみたいだった。

( ^ω^)「フサギコ」

ミ,,゚Д゚彡「?」


ブーンは遠くの山を指差して、ぼくに何か言った。


( ^ω^)「お前は……あの山で、暮らすお」

ミ,,゚Д゚彡「?」

ぼくは山とブーンを交互に見た。

いい匂いが流れてくる山も少し気になったけど、

ぼくにとってはブーンの方がずっとずっと気になった。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:19:13.79 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「??」

( ^ω^)「それじゃ……バイバイだお。ちゃんと仲間の群れに合流するお」

どうすればいいのか分からなくてぼくが困っていると、ブーンが歩き始めた。

ミ,,゚Д゚彡 マッテヨ

(#^ω^)「きちゃ駄目だお!!」

ミ,,゚Д゚彡「!」


ついて行こうとすると、ブーンが叫んだ。

びっくりして後ずさる。

またブーンが歩き出す。

またついて行く。

またブーンが叫ぶ。

またぼくは立ち止まる。

わけが分からなかった。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:21:38.83 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「???」

( ^ω^)「フサギコ……」

ブーンから離れた場所でうろうろしていると、ブーンが石を投げてきた。

『とってこい』だ!

ミ,,゚Д゚彡「!!!」

ぼくは急に嬉しくなって、空中で石を上手く咥えた。

持って行かなきゃ。

そう思った瞬間、次の石が飛んできた。

( ^ω^)「そらっ! 強肩ブーンのレーザービームだお!!」

ミ,,゚Д゚彡「!!」

 ぼくはあわてて咥えていた石を吐き出し、それを追った。

 捕まえて振り返ると、また違う石が飛んできた。

 また石を吐き出し、新しいのを追いかける。

 何個も何個も、石が飛んできた。

 ぼくは必死で全部追いかけた。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:24:43.47 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「??」

急にぴたりと石が来なくなった。

最後の一個を口に咥えて、ぼくはブーンを見た。

( ;ω;)「次は……有名投手の……変化球……ヒクッ」

そしたら、ブーンの目からぼろぼろ水があふれ出て、ブーンの顔をびしょ濡れにしていた。

それは、今まで見たどんな顔よりもずっとずっと悲しくて苦しい顔だった。

( ;ω;)「行くお!!フサギコ!!! 山で幸せに暮らすハッピーボールだお!!」

ブーンは叫びながら山へ向かって、石を投げた。

ミ,,゚Д゚彡「……!!」

その時、ようやくぼくは分かった。

本当は分かりたくなかった。

できるなら信じたくなかった。

でも、分かってしまった。

――ぼくはもう、ブーンと一緒にいられない。

そういうことなんだって。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:25:53.51 ID:7KD8yV3D0

ミ,,;Д;彡「……!!」

鳴きたかった。

叫びたかった。

でも、声が出なかった。


( ;ω;)「う、う、うあああぁぁぁあ!!!!」


翼を広げ、ぼくは山に向かった。

風の匂いが強くなる。

ミ,,;Д;彡「……」

一度だけ振り返ると、ぽつんと小さな点が見えた。

胸が痛くて張り裂けそうだった。

けれど、ぼくはやっぱり鳴けなかった。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:27:35.96 ID:7KD8yV3D0

山にはぼくの仲間がいっぱいいた。

そこで初めて、ぼくが何なのか、どういう生き物なのかを知った。

ぼくは『竜』っていう生き物で、普通は山で暮らしていること。

ブーンは『人間』っていう生き物で、竜とは全然違う生き物だってこと。

竜はすごく長く生きられるけれど、人間はすぐに死んでしまうこと。

そして、人間は竜を恐がっていて、竜は人間があまり好きじゃないこと。

だから、人間に育てられた竜なんて今までいなかったってこと。

最初は獲物のとり方も分からなくて、お腹がすきっぱなしだったけれど、ぼくはすぐに慣れた。

今まで食べたことのなかった肉も食べられるようになった。

初めは逃げてばかりいたけど、竜同士のけんかにも負けなくなった。

お嫁さんももらった。

平和で幸せだと思った。

ミ,,゚Д゚彡「……」

( ,,゚Д゚) オメー ムクチ ダナ

けれど、ぼくはいつまで経っても声を出して鳴くことができなかった。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:29:11.34 ID:7KD8yV3D0


ミ,,゚Д゚彡

 やがて、ぼくにも子供ができた。

 奥さんとかわりばんこに卵を暖めて、殻から小さなぼくが出てきた時、すごく不思議で暖かい気持ちになった。

 そしてふと、ぼくを見たブーンもこんな気持ちだったのかな、と思った。

 ぼくは首を振った。

 もう考えても仕方ない。

「ウォォォン」

 子供たちは、かわいく鳴いて甘えた。

 ぼくにはもう、新しくて幸せな生活があるんだから。

 そう自分に言い聞かせて、ぼくは子供たちをそっと見つめた。


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:31:45.66 ID:7KD8yV3D0
 静かで穏やかな毎日が何年も何十年も過ぎていった。

ミ,,゚Д゚彡「……」

 いつの間にか子供たちはすっかり大きくなって、ぼくから離れていった。

ミ,,゚Д゚彡「〜♪」

 ある日、ぼくがのんびり空を飛んでいると、珍しく竜たちが集まって何かを話し合っていた。

 聞くと、最近人間がばくたちを狩ろうとしているらしい。

( ,,゚Д゚) ニンゲン コワイ オレ シニアクナイ

/ ,' 3 ワシ オクサン イル シニタク ナイ



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:32:05.49 ID:7KD8yV3D0

 まだ殺された竜はいないけれど、殺されてからでは遅いから、

 今後自分達に歯向うなどという気が起こらないようこっちから先にしかけてやる、と息巻いているものが多かった。

 けれど、ぼくはそんなことをしたら人間がますます怒って向かってくるのを知っていた。

ミ,,゚Д゚彡「……!!」

 だから低く唸って皆にそう教えた。

 賢明だな、と頷くものも、逃げるのか、と声を荒げるものもいた。

 結局、まだ本当かどうかは分からないから、ということでその場は終った。


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:33:39.76 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「〜〜♪」

その日、またゆっくり空を飛んでいると、なぜか胸がどきどきした。

ミ,,゚Д゚彡「!?」

ばくはなぜなのか分からず、首を左右に振って辺りを見てみると、下の方から何かの匂いがするのに気がついた。

羽根を動かして風に乗り、地面に近付く。

遠くから竜の鳴き声がした。

( ,,゚Д゚) ゴラァゴラァ

全速力で声のした方に向かうと、一匹の竜が爪を振りかざして何かを襲っているのが見えた。

旅人でも何でも殺して見せしめにしてやる、と言っていた若い竜だった。

「や、やめておくんなまし」

襲われているのは人間の老人だ。

ミ,,゚Д゚彡「!!」

ぼくは加速したままで飛び続け、息を吸い込んだ竜に思いっきり体当たりした。


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:35:42.84 ID:7KD8yV3D0

( ,,゚Д゚) ギャアア

不意打ちをくらって、そいつは地面に叩きつけられる。

一度体を持ち直してから、ぼくはそいつの前に立ちはだかった。

( ,,゚Д゚) テメー ドコノクミノ モンジャ!

怒ったそいつが叫び声をあげる。あたり一面に声が響き渡る。

ミ,,゚Д゚彡「……!!」

ぼくは首を下げて低く唸った。

( ,,゚Д゚) オボエテロヨ

そいつはしばらくぼくを睨みつけていたが、敵わないと分かったのか、唸りながら飛び去っていった。

羽根を閉じ、首を持ち上げ、ぼくは後ろを振り返った。

「あ、ありがとう……」

ミ,,゚Д゚彡「……」

ぼくが手でちょっとでも触れば壊れてしまうそうな老人が、震えながら縮こまっていた。

人間に会うのは久しぶりだった。

どうやらぼくは前よりかなり大きくなっているらしく、ぼくのはるか下にその老人の頭があった。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:36:46.49 ID:7KD8yV3D0

 その時、風がぼくの鼻をくすぐった。

ミ,,゚Д゚彡「……?」

 また、あの匂いがした。

 ぼくはゆっくり首を下げてみた。

 地面に顎がつく。

 草の匂いがいっぱいに広がる。

 それでも消えないこの匂い。


 まさか。


 ぼくがそう思ったその時だった。


(;^ω^)「フサギコ……?」




90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:37:40.02 ID:7KD8yV3D0

ミ,,゚Д゚彡「!!!!!!!」

 老人が、声を出した。

 かすれて、小さくて、消えてしまいそうなほどに弱々しい声。

 でも。

 でもそれは、ぼくにとって、何よりも何よりも懐かしい声だった。

 ぼくは首を持ち上げ、くるりと後ろを向いた。

 羽根を広げる。

 地を蹴って、ぼくは空に舞い上がった。


( ^ω^)「フサギコ!!」



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:38:32.91 ID:7KD8yV3D0

ミ,,;Д;彡「ウォォォォォォ!!!!!!」


ぼくは鳴いた。

あの日から初めて、声を出して鳴いた。

ぼくの声は山と空に響き、風を切って野を走った。

もうあのころには戻れない。

僕の頭に、ブーンとの思い出が浮かんでは、消えた。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:41:13.36 ID:7KD8yV3D0

ミ,,;Д;彡「ウォォォォォ――――!!!」


初めてブーンであった時のこと……

名前をつけてもらった時のこと……

一緒に遊んだ、あの幸せな日のこと……


ぼくにとっての、大切な思い出を思い出しながら、僕はせいいっぱい鳴いた。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/10/09(火) 01:42:44.91 ID:7KD8yV3D0

 もう一度会えてよかった。

 ずっとずっと言いたかった。

 さようなら。

 それから……ありがとう。


 しばらくして、ぱったりと山の近くに人間が来なくなった。

 やっぱりただの噂だったんだね、と誰もが喜んでいた。

 でも、ぼくだけは本当のことを知っている気がした。

 もう、二度と会うこともないだろうね。

 それでもぼくは、君を忘れない。

 ――ブーン。


 この世でたった一人の、ぼくの最高の友達。



おしまい






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