( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ミ,,゚Д゚彡ギコは体験学習をするようです 後編〜

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当サイトはブーン系小説の完結作品集 です。 読み物系は嫌いって方はご退場ください


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46 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:29:09.70 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「……おい」

(* ;ー;)「ひんっ、ごめ、なさぁ……い……」

(,, ゚Д゚)「いや、謝らなくていいって」

(* ;ー;)「ぅえ、ひぐっ」

(,, ゚Д゚)「お前ん家って、幼稚園の頃から変わってないよな」

(* ;ー;)「ひぃん、ふぇ、そうだ、よ……」

(,, ゚Д゚)「そっか。じゃあここからすぐだな。走るか」

(* ;ー;)「え?」

……一体何を言ってるんだろう?
私の家が何の関係があるのか、
頭にハテナを浮かべたままギコ君を見つめている私。
すると、ギコ君は予想だにしていない行動に出た。


(,, ゚Д゚)「お前ん家にクッキーがあるんなら、取りに行こう」


47 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:30:52.97 ID:HtStuKcJO
(* ゚ー゚)「…………」

(,, ゚Д゚)「なんだ、めちゃくちゃ美味いじゃん」

ここは私の家、私の部屋。
時間は夕方、サッカー部は練習を続けている。
それを証明するかのように、ギコ君の携帯は鳴りっぱなしだった。

(* ゚ー゚)「あ、あの」

(,, ゚Д゚)「なんでクッキー好きって知ってた……ん? 呼んだか?」

サッカー部は大丈夫なのか?
なんで私の家まで来てくれたのか?
聞きたい事はたくさんあった。
でも、ギコ君に一番聞きたい事から、聞いてしまった。

聞いてよかったのかどうかはわからない。
その時の私には、真偽を判断する冷静な心なんて持ち合わせていなかったから。


(* ゚ー゚)「好きな人、いるの?」


私はそれきり、顔を伏せた。
彼の答え、つまるところ返事を聞くために。


48 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:31:34.30 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「……」

まるでその質問を想定していたかのように、なんの動揺もしないギコ君。
言いづらそうに口を開くギコ君は、少し頬が紅かった。







(,, ゚Д゚)「ついさっき、出来たばっかりだ」



また涙を流す私。

悪い癖だなぁ、とつくづく思った。

ギコ君の表情を見れないまま、ファーストキスをしてしまったから。

しょっぱい味は、涙のせいか、クッキーのせいか。
多分、クッキーのせいだろうな。


68 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:42:03.03 ID:p4ffa7BPO

ミ,,゚Д゚彡「…………」

あの時の俺は、女子はサッカー部の邪魔になると思ってた。
実際今でもそう思ってるし、ずっと嫌だった。

でも、それを突き放した時に嫌われそうで。
ずっと八方美人をしてた俺は、心底つまらない人間だった。


あの時しぃを好きになったのは本当の事だ。
しぃといる時は嘘偽りなんかなく、本心で会話できた。
誰にでもいい顔してた俺を、変えてくれた。

ミ,,゚Д゚彡「あの時話した事は、全部本当の事だ!
絶対にお前を離さないって言ったのも、好きだって言ったのも全部!」

ミ# ゚ー゚彡「だからもういい!」

いつもみたいな、しぃじゃない。
何を言っても反論され、その度に俺は肩をすくめる。


69 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:42:50.89 ID:p4ffa7BPO
ミ* ゚ー゚彡「私は諦めるから。ギコ君には、似合わないから」

ミ,,゚Д゚彡「しぃ! だから話を聞けって言ってn」

ミ* ゚ー゚彡「このまま猫になってどっか行くから! もう我慢できない!
ギコ君が、私の支えだったんだよ? ギコ君が好きだったんだよ!」

そう叫んでしぃは飛び出す。小さな交差点へ。
まだ信号は変わってない。真っ赤な灯りはそれを示している。

ミ* ゚ー゚彡「あっ」

ミ,,゚Д゚彡「し……」

誰も見てない。夕方だと言うのに、街は静かだった。
小さな乗用車は、それよりもさらに小さな猫の右半身を潰す。
叫び声もあげる前に、しぃは歩行者用道路にはねられた。


70 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:43:46.89 ID:p4ffa7BPO
ミ,,゚Д゚彡「……!」

ミ,#゚Д゚彡「しぃーー!!!」

信号も待たずに駆け寄る。
さっきまでふわっとしていた白い毛が真っ赤に染まっている。
俺の背筋を凍りつかせるには十分だった。

ミ,,;゚Д゚彡「おい! 返事しろ! しぃ、しぃ!」

ミ* ー 彡「…………」

何の声も返ってこない。
血の量がすごい。骨も飛び出ている。

ミ,,゚Д゚彡「……っあ」

でも、ただ震えているだけなんて出来なかった。

ミ,;゚Д゚彡「気ぃ失ってる……このままじゃ死んじまう……」

助けを呼びたかった。だけど、まずはしぃを安静させないと。
早く、静かなとこに持っていってやんないと。

「あれ? あの猫、二足歩行してない?」
「ただのニャースだろ。気にするなよ」

朝のギャルに対抗するために学んだ二足歩行。
まさかこんな時に役立つなんて思わなかった。


71 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:44:42.55 ID:p4ffa7BPO
ミ,,゚Д゚彡「はぁー、はぁー」

なんとか空き地にしぃを運んで来た。
意識を取り戻したしぃに、声をかける。

ミ,;゚Д゚彡「お、おい、大丈夫か!?
俺の声、聞こえたら返事してくれ!」

息も耐えだえにしぃは口を開く。

ミ* ゚‐゚彡「大丈、夫だよ」


ミ,;゚Д゚彡「なぁ! どこが痛いんだ!?」

こんな事聞いてどうするんだ、俺は。

ミ,;゚Д゚彡「今、助けを呼んでくるから待ってろ!」


駆け出す俺の背中を、小さな声が引き留める。
しぃは、また涙を流していた。いつも、拭ってあげてたっけな


72 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:46:31.24 ID:p4ffa7BPO
ミ* ゚‐゚彡「ねぇ……もしかしたら、あれかもしれないじゃん……」

ミ,;゚Д゚彡「な、何がだ!」

ミ* ゚ー゚彡「血が、止まんないから。
きっと、このまま死んじゃうから……だから……」


ミ* ^ー^彡「一緒にここにいよう?」

なんでなんでなんで?
しぃが、なんで死んじゃうんだ?たまたま猫になっちゃって、変な体験しちゃって。

ミ,,゚Д゚彡「ゴルァ!」

いつも通りに部活動やって、いつも通りに帰るはずだった。
なのに、しぃの体がボロボロになってしまった。
すぐには死なないと思う。でも、このままだと死ぬ。


73 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:47:04.94 ID:p4ffa7BPO
ミ* ゚ー゚彡「…………ね?」

猫にならなければ、しぃはこんな目に合わなかった。
猫になった時も、大して危機感は感じなかった。
ぐっすり寝て、起きたら元に戻ってんじゃないかって。

そんな、現実逃避をしてた。


ミ,,゚Д゚彡「待ってろ! 今から助け呼んでくるから!
俺が戻ってくるまで黙って寝てろ!!!」


もう、自分をかばって楽な方に逃げたくはない。
俺が起きたらあいつが死んでる、そんなのは我慢できない。


やれるだけ、やってみないとわからないじゃないか。



74 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:47:43.76 ID:p4ffa7BPO
空き地から道路へ出て、すぐさま人を探す。
道行く人達へ、しらみつぶしに声をかけた。
助けて、とか誰か来てくれ、とか、たくさん叫んだ。


ミ,;゚Д゚彡「なぁ! こっちに、怪我してる猫がいるんだよ!」

通行人A「…………」

ミ,;゚Д゚彡「なんでもいいから、包帯とか薬とか……」

通行人B「ギコーン!! じゃねぇよwwww気持悪ぃww」

通行人C「邪魔臭ぇな。放っといてさっさと行こうぜ」


ミ,#゚Д゚彡「っ、てめぇら!!!」

クソ、血も涙もねぇ奴らしかいないのか?
困ってるのに、それを素通りとか……頭腐って……る……?



75 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:48:43.06 ID:p4ffa7BPO
ミ,;゚Д゚彡「……あっ」

既視感。デジャヴ。
こんな状況を、俺は見た気がする。
見ただけじゃない。確かに、記憶に残ってた。

(,, ゚Д゚)『気持悪ぃ鳴き声だなwwwwそんなんじゃ一生野良のままだぞww』

ミ,,゚Д゚彡「俺は……」

(,, ゚Д゚)『るっせぇぞゴルァ! 黙ってろ!』

ミ,,゚Д゚彡「……こんな事……」

(,, ゚Д゚)『ええぃ、どけ! 踏み潰すぞゴルァ!!』

ミ,,゚Д゚彡「……してたのか?」


今の自分と同じ、薄茶色の猫を思い出す。
よく思い出すと、あの猫もあの空き地の方面から飛び出してきた気がした。

不意に右足を見ると、猫を蹴り飛ばした事まで思い出す。
なんとなく、頭の中で繋がった感があった。


76 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:49:35.12 ID:p4ffa7BPO
ミ,,゚Д゚彡「あの時も、あの猫は何か訴えるような鳴き声だった……
それに、こんな気持ちになってたなら、あの猫の反抗も頷けるし」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

最初は簡単な疑問だった。けど、徐々に現実味を帯びてくる。
あとは、この不可解なストーリーを誰が考えたか、って事だ。

ミ,,゚Д゚彡「まさか、あの猫の怨念…………?」

そんなぶっとんだ考えを口に出すと、後ろから声がした。
厳かとは言い難く、軽くとも言い難い。そんな声が。

( ´∀`)「ぶっぶー。残念ながら不正解モナー」

ミ,;゚Д゚彡「!!!!!!!????」

( ´∀`)「あんまり驚くなモナー。
……ゲフン。この度は一日に渡り、『体験学習』ありがとうモナー」

ミ,;゚Д゚彡「な、な、訳が」

( ´∀`)「はいはいマンコマンコ。
……続きは製品版でお楽しみ下さーいモナモナ」


77 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:51:07.29 ID:p4ffa7BPO
時間が一日ずれてた。

しぃまで猫になった。

喋っても、人間には通じなかった。

( ´∀`)「とりあえず、話しやすいとこに移動モナ」

しぃが大怪我をした。

しぃが本気で俺を好きなのがわかった。

俺があいつに、何を言うべきかもわかった。

( ´∀`)「ちちんぷいぷいモナモナモナーコ!
"あの"場所へギコと私を飛ばせーモナ!!」


光と共に、世界がひっくり返った。
目が覚めるのは、いつになるだろうか、なんて考えが頭を巡った。

…………正直、どうでもいいか


78 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:51:45.58 ID:p4ffa7BPO
『あー、早く起きろよゴラァ!
さっさと起きないと愛護団体にチクるぞ……ったくよ……
……クッソ、なんで目が覚めないかなぁーーー……だから』

ミ,;゚Д゚彡「はっ!」

( ´∀`)「キモいんだよ!!!!」

ミ,;゚Д゚彡「え?」

( ´∀`)「あ。」

ミ,;゚Д゚彡「お前今なん( ´∀`)「フォッフォ、ようやく起きたモナー」

何かキモいとか聞こえた気がするけど……まぁいいか。
頭が痛くて、ガンガン叩き付けられてる感じだ


79 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:52:27.18 ID:p4ffa7BPO
( ´∀`)「とりあえず……謝罪と賠償を許可するモナ」

ミ,,゚Д゚彡「……は? 謝罪って……一体誰にだよゴルァ!」

( ´∀`)「今なんて言ったモナー?」

ミ,;゚Д゚彡「いや……確かに猫には悪いことしたけど……」

( ´∀`)「死して償え」

ミ,;゚Д゚彡「!!!!!!???」

何でキレてるんだ、こいつは。
今までこんな奴に会った事はないし、見たことさえない。

( ´∀`)「……こんな奴見たことがない、とか思ってるモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「心/(^o^)\ヨマレタ」


80 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:53:01.22 ID:p4ffa7BPO
( ´∀`)「自己紹介が遅れたモナ。私はモナー。
ある空間の、ある世界のちっこい神様をやってるモナ」

( ´∀`)「君は勘がいいし、あらかたわかってきたと思う。
君の考えてる通り、君等を猫にしたのは私の所為モナ」

きっと、この神様が本物で、地球に伝わってる通りの神様だったら
人間を猫にしたり、時間軸をいじったりぐらいは出来るだろう。
ただ、一つだけ。一つだけ頭に残った疑問があった。

ミ,#゚Д゚彡「なんで、しぃも巻き込んだ? アイツは関係ねぇだろ!
猫を蹴り飛ばしたのだって、何もアイツは関係してない!」

( ´∀`)「……言い方は悪いけど、動物を蹴り飛ばしたぐらいで
何度も私が出動してたら、身が持たないし、実際問題無理モナ。」

( ´∀`)「ただ、ざーっと世界を見回した。
そしたら、君達からあるでっかいオーラが出てたモナ」


81 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:53:48.33 ID:p4ffa7BPO
何のオーラだよ、と俺が聞いた。
モナーは、煮えきらないカップルの匂い、と答えた。

( ´∀`)「たられば、っていうのは都合がいい言葉モナ。
それに、本当にたらればでやり直せる人間はそんな事口にしないモナ」

( ´∀`)「君達……特に君からは、真人間になれるオーラが出てたモナ。
それに、私だって個人的に幸せになって欲しいカップルぐらいいるモナ」

ミ,,゚Д゚彡「……神様は中立が主体なんじゃねーのか」

( ´∀`)「そんな決まり、いちいち守ってらんないモナー
そもそも、人類皆平等。主観的な意見が出るのは仕方ないモナー」

人類? コイツが人類ね……世の中おかしい事だらけだ

( ´∀`)「失礼な事考えちゃ駄目だモナー。
……いつか。もしかしたら、今後私の事を知ってる人間と会うかもしれない。
でも、軽々しくこの事言っちゃ駄目だモナー?」


82 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:56:14.81 ID:p4ffa7BPO
ミ,,゚Д゚彡「約束するよ。だから、早く元の世界に返してくんねーかな
あと、猫のしぃは架空の産物と見て大丈夫か?」

( ´∀`)「まぁ……そんな感じモナ。
簡単に言うと、ある時間軸にいる猫に君達の記憶を植え付けた。
そこで体験学習させた訳だから、君やしぃに何の支障もないモナ
記憶が抜けた後のあの猫は、後で助けとくから心配すんなモナ」

ミ,,゚Д゚彡「……そっか。じゃあ早く帰せ」

( ´∀`)「全く、最後までツンデレな奴だモナ。
どうせ「ギコーン!」って鳴く猫を助けようとしてるんだと思うけど、
行って何が出来るんだモナ? ただ慌てるだけかモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「っぐ……」

( ´∀`)「図星かモナwwwwwwプギャーwwww」

ミ,#゚Д゚彡「てめぇ! ………いや、どうすればいいか教えてくれ」

モナーに頼むと、「それが神様に頼む態度かモナー?」
とか調子に乗ってやがる。どこまでも気楽な奴だ。

ミ,,゚Д゚彡「……教えて下さい」

( ´∀`)「よwwくwww出来wwwましwwwたwwwww」

ミ,,゚Д゚彡。o O(あーぶん殴りたいナー。)


83 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:57:05.47 ID:p4ffa7BPO
( ´∀`)「とりあえず電話帳開いて、動物病院探せモナ。
さすれば道は開かれるーモナー。」

大した助言じゃない事を確認すると、俺は拳を握り締めて

ミ,#゚Д゚彡「一発殴らせろぉお!」

……モナーに向けて、走りだした。
しかし流石は神様、といったところか。

( ´∀`)「わかったらお礼ぐらい言わないと駄目だモナ。
それじゃ、しぃちゃんと頑張れよーモナー」

ミ,;゚Д゚彡「うわぁ!」

杖を一振りされ、一瞬の内に存在を消されてしまった。
この頃には、すでに地球に降りたっていただろう。

――殴ってからお礼言おうとしたのに、言いそびれちまったな


84 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:57:30.34 ID:p4ffa7BPO
( ´∀`)「はー……とりあえず終わったけども」


( *´∀`)「うずうず」


( ´∀`)「気になるからまた下界降りてみるモナー。
いわゆるひとつのパトロール、ってやつだモナー」


( ´∀`)「ちちんぷいぷいモナモナモナーコ!
彼の世界にふさわしい姿で、下界に行けーモナ!」


台詞を言い終わるか言い終わらないかの、刹那の内に神様は消えた。
多忙でありながら、どこか人間らしさを持っている神様。
行列の出来る法律相談所でいう丸山弁護士のようなモナーは
また下界、つまりは人間界に降りていった。

お茶目でどこか抜けた神様は、今日も達成感で満たされるのだった。


85 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:58:47.74 ID:p4ffa7BPO
――――
―――
――


(,, ゚Д゚)「っがぁ!」


(,; ゚Д゚)「…………っは、はぁ………………」

キョロキョロと辺りを見回す。
俺が茶色い猫を蹴り飛ばした現場だった。

(,, ゚Д゚)「! そうだ、身体は…………」

五本の長い指。毛のない皮膚。
民家にある磨かれた窓ガラスを利用して自分の全体図を見る。


86 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 00:59:30.20 ID:p4ffa7BPO
(,, ゚Д゚)「人……間……に戻ってるぞ」

(,* ゚Д゚)「っしゃぁぁぁぁああ! ゴルァァァァアア!!」

喜びのあまりに叫び声をあげた。
この際、変人に思われても構わない。
俺は猫になり、猫の一日を『体験学習』した。

――あんな体験をしたのだから。


(,, ゚Д゚)「っと、こんな事してる場合じゃねえ!
早く、アイツらのとこに行ってやんないと…………」

急いで自分の家に駆け出す。
玄関を開けると、がらんとした人気のない空間が目に入った。


87 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:00:22.91 ID:p4ffa7BPO
(,, ゚Д゚)「っし、さっさと済ませちまうか」

急いで電話帳を探す。パラパラとページをめくっていく。

(,, 3Д3)「動物病院……動物病院……」

けして良くない視力を駆使して、細かい文字を順々に見ていった。
ようやく探し終えて、近場の病院の電話番号を読む。

(,, ゚Д゚)「え〜っと……『庶凡動物病院』か……場所は……家の裏じゃねぇか!
くっそ、モナーのやつ舐めた真似しやがって……」

急いで靴を履き、戸締まりなんか忘れて家を出る。
朝8時。もう開いてるかどうかはわからないが、行ってみるしかない。


88 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:01:25.66 ID:p4ffa7BPO

(,, ゚Д゚)「あ。でも先にアイツらを持ってった方がいいかもな。
そうすりゃ、すぐにでも治療してくれそうだ」

これで死んでたらモナーのやつをぶっ殺してやるか。
心にも思ってなかったが、そんな事を口に出していた。

(,, ゚Д゚)「猫になって、猫の世界を知って、人間になって、か。
……まだ、ホントは夢なんじゃねえのか?」

モナーならやりそうだ。
なんてったって、あのカミサマだからな。
おちょくられてたりしたら今度こそぶん殴ってやるぜ。

思い出し笑いをしながら、俺は空き地へ向かう。


90 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:03:03.58 ID:p4ffa7BPO
(,, ゚Д゚)「思えば色々あったな、ゴルァ」

猫を蹴り飛ばした事がそもそもの原因だ。
あの時の俺はそこらへんの奴よりDQNだったなぁ。
なんの罪もない困った猫を蹴って、なんの助けもしてやれなかった。

(,, ゚Д゚)「……ま、あの時っつっても実際は今日なんだけど」

長い一日だった。
でも、元はといえば全て俺が悪い。
だからこそ今俺は走ってるし、助けようとしてるんだ。
そういえば、神様はこんな事も言っていた。

( ´∀`)『変わり始めようとした時から、君は変わってるんだモナ』。
あのカミサマもいいこと言うじゃねーかよなぁ。


(,, ゚Д゚)「せめてもの償い、ってやつだゴルァ!」

透き通った朝の空気に響く俺の声。
小さく、やまびこが返事をした気がした。


92 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:05:05.27 ID:p4ffa7BPO
空き地に着くと、やはりあの猫がいた。そして、メス猫も。

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!ギコーン!」

(,, ゚Д゚)「わかったわかった、蹴り飛ばして悪かった。
お前の言うことも聞けなくて悪かったよ」

(,, ゚Д゚)「伝わらないって、苦しいよな」


お前らを助ける。だから、これで許してくれな。

それだけ言ってからメス猫を抱き上げようとする。
怪我をした足をたたみ、メス猫はずっと震えてた。


すると。


93 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:05:57.14 ID:p4ffa7BPO
ミ,#゚Д゚彡「ギコーン!!」

(,; ゚Д゚)「いってぇ! 噛みつくな、この野郎!
ただ助けようとしてるだけだろゴル……」

ミ,,;Д;彡「……!……!」

可愛い彼女を連れていかれまいと、必死に俺の指に喰らい付く。
それもそうだ。なんてったって俺はコイツにとって極悪人なのだから。

俺の中指の皮がめくれ、血が垂れ出る。
痛みも忘れて、しばらくコイツが噛んでいる様子を眺めていた。

自然と呟いた、独り言。

(,, ゚Д゚)「しぃを守る時も、俺はこんな感じだったのかな
あいつを守ろうとして、こんなに必死になれてたのかな」

問いかけの相手は、自分。


94 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:06:38.66 ID:p4ffa7BPO
しかし、その質問に答えたのは俺じゃなかった。

(´・ω・`)「君は十分、彼女の事を想っていたさ。
大した事が出来たとか、出来なかったかじゃない。
彼女のために何かをしようとした事がその証明だよ」

(,; ゚Д゚)「な、おおおお前誰だゴルァ!」

(´・ω・`)「あれ、自己紹介がまだだったかい?
……ゲフン。『庶凡動物病院』の院長先生、ショボンと申します。」

俺は口をあんぐり開いたまま立ち尽くす。


なんでここにいるんだ?
なぜ俺が探そうとした病院の院長がここにいる?
そもそも、なんで俺の問いに答えられる?

この院長は俺の抱いている疑問もつゆしらず、さっさとメス猫を抱く。

(,, ゚Д゚)「……もう、何がなんだかわかんね」


95 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:07:34.06 ID:p4ffa7BPO
(´・ω・`)「あらららららら、それにしてもひどい怪我だね。
ぼんやり眺めてないで、さっさと病院に持って来ないと駄目じゃないか」

(,, ゚Д゚)「は、はぁ……」

(´・ω・`)「この子達、ずいぶんと君を嫌ってるね。
……まぁ、それはおいといて病院に来るモナ?……じゃない、来るかい?」

一秒だけ考える。そしてもう一秒経つ頃にはこんな事を思った。


――俺が出来る事はここまでじゃね?


(,, ゚Д゚)「あ、いいです。そいつらも不快だろうし。
……怪我、なんとか直してあげて下さい。それじゃ」


それだけ言って、走り出す。
悔いはない。助ける事が出来たのだから。
……ただちょっと、ショボンとかいう奴の語尾が気になったけど。



96 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:08:39.36 ID:p4ffa7BPO
(´・ω・`)「……行ったモナか?危うくバレるとこだったモナ」

(´・ω`)「モナモナ……」

(´・∀`)「……モナ……」

( ´∀`)つ杖「モナーコ!」

下手な変装だったが、ギコには幸い気付かれていないらしい。
ほっと一息つくと、モナーは杖を猫達に向けた。

( ´∀`)「さ、ヌコ達よ。怪我を直してあげるモナ。
……ちちんぷいぷい、モナモナモナーコ!」

杖の先から出る光は、二匹の猫を包み込み、癒す。
自然治癒という名がぴったりで、じわじわと傷が治っていく。
そのうち、オス猫の方が高い鳴き声をあげた。

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!ギコーン!」

( ´∀`)「ははは、嬉しいモナか。……ん? 違う?」

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!」

( ´∀`)「あぁ、そういう事モナか。
大丈夫、あの子は自分が行くべき所に行っただけモナ。
お前が心配する事はなにもないモナ。どこへなりと行くがいいモナ」


98 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:10:04.06 ID:p4ffa7BPO
ミ,,゚Д゚彡「ギコーーン!!ギコーーーン!!!」

( ´∀`)「はっはっは、感謝の気持ちはお腹いっぱいモナ。
恩返しは、そこの彼女を幸せにすることモナ」

二匹の猫は寄り添うように歩き、茂みの奥に消えていった。
猫といえど、幸せそうなカップルには間違いない。

( ´∀`)「ふぅ、一組目のカップルは送り出したモナ。
……あとは、もう一組、面倒くさいのが残ったモナ。」

遠い朝の日差しを見つめるモナー。
それはどこか、悟ったような眼差しに見える。

( ´∀`)「……まぁ」

( ´∀`)「あの子達なら自分達で話し合えるはずモナ。
ここまで関与してしまうと、親馬鹿と言われちゃうモナw」


足元を吹き抜く一陣の風。


( ;´∀`)「……帰るかモナ。空しいモナ…………」


99 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 01:10:48.97 ID:p4ffa7BPO
薄く淡い光を残し、モナーは消えていった。
その後に残ったのは蜃気楼のように歪んだ景色と――

ギャルA「ちょwww今の見た!?瞬間移動ktkrwwwwww」

ギャルB「なにそれwww神?wwwいわゆる悟空wwwww」

――未確認生物を見たという目撃談だった。

モナーはどこまでもおっちょこちょいだった。
それもあのモナーという神様の良い所ではあるのだが。


中学生A「さっきの猫、ギコーン!だってよwww」
中学生B「まじでwwwwキモイwwww」
中学生C「は?どう見ても可愛い猫だったじゃないか。
同じ動物を卑下する発言はやめたまえよ」
中学生A・B「ごめん……(なんで怒られてんだろ、俺ら)」

少しばかり、DQNの態度も変わりを見せた。



そして、ギコは。


106 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 02:06:20.71 ID:p4ffa7BPO
モナーは、煮えきらないカップルのオーラと言った。

正直認めざるを得ないけど、いつまでもこのままでいるつもりはない。


アイツは俺を本気で好きだと言った。

俺はもしかしたら、アイツの事を昔から好きだったのかもしれない。

馬鹿みたいに騒ぐだけの女じゃなかった。

大半の女は、俺が間違った行動をしても
お近づきになりたいから、とかいう理由で何も言って来なかった。


だけど、アイツは違う。アイツだけは、昔から本音をぶつけてきた。

高校生になってからは、少しだけ疎遠になっていたが。


107 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 02:08:08.61 ID:p4ffa7BPO
だからこそ、誕生日に来てくれたのは嬉しかった。

あいつの親友、ヘリカルに手を回しておいて正解だった。

しぃはいつの間にか引っ込み思案になっていて、
なまじ俺が有名になってしまったから声をかけて来なかったのだと思う。


それに、あの『記念日』以来キスもしていない。

アイツは、案外そういうのを気にする女だった。

そこを感じとれなかったのも今となっては反省材料だ。

……でも。

だからこそ、俺は今アイツの家に向かっている。

アイツに、伝えたい事があるから。

アイツに、聞きたい事だってあるから。


109 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 02:11:24.57 ID:p4ffa7BPO
ζ(^ー^*ζ「あら、ギコくん。あの子まだ寝てるみたいだから、起こしてあげて?
テニスの試合っていうのに、朝食も食べに来ないのよ」

(,; ゚Д゚)「……わ、わかりました」

朝から襲っちまうかもしれないのに、しぃの母はのんびりしてる。
そこがまた、しぃに受け継がれているからいいのだが。
ドジっ娘萌えの俺には、丁度良かったし。


(,, -Д-)「すぅー……」

吸ってー……

(,, ゚Д゚)≡3「っだぁぁぁぁ……」

吐いてー……

(,# ゚Д゚)「準備万端!」


あいつにしっかりと、俺の想いを伝えるために。
あいつに俺の気持ちがその場凌ぎじゃないと証明するために。

(,, ゚Д゚)「――――っ」

俺は扉を開けた。


110 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 02:13:46.58 ID:p4ffa7BPO

(,, ゚Д゚)「しぃ! 俺の話、聞いてくれ……る……か……」

あれ? 俺の目ん玉おかしいのかな……?

(,, うД )「…………」

目の前にいるのはしぃ……だけど。しぃだけど……




ミ* --彡<すぅ……すぅ…………



(,; ゚Д゚)「ちょ、ちょ、モナーーーー!!!」


あいつ、元に戻し忘れてやがる。
これはヤバいだろ……外見的に考えて…………


( ´∀`)「いっきし!」

( ´∀`)「あぁ〜、鼻がむずむずするモナ……」


111 :愛のVIP戦士:2007/02/11(日) 02:18:27.37 ID:p4ffa7BPO
猫が横切って、こちらを見つめてきたとします。

もしかしたら、それはあなたの分身なのかもしれません。


猫の気持ちを考えた事がありませんか?
言葉が通じない動物との交流を避けていませんか?
何かを訴えられている事に気付いた事はありませんか?


ギコがフサギコになったように。
しぃがフサしぃになったように。


あなたもいつか、そんな体験をするかもしれません。

その時は、存分にお楽しみ頂ければと思います。



( ´∀`)「ちちんぷいぷいモナモナモナーコ!
地球上全世界のヌコ達に幸あれーモナ!!!!」




ミ,,゚Д゚彡ギコは体験学習をするようです

        〜Fin〜


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