( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜(´・ω・`)しょぼんたちは世界の果てに現れたようです 第十七話 無意味の意味〜

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48 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:49:19.63 ID:R8XY+XOI0
第十七話 無意味の意味

記憶及び性格や思考をコピーし、自らに反映させるのは容易なことであった。
何しろ、私は彼がここに来たときから彼の思考内部に潜伏していたのだから。
彼自身は気づかなかった。
自らの思考に私という無礼な訪問者が干渉していることを。
彼自身は知らなかった。
ここまでの道程、そのすべてを自らが形成したことを。
まぁ、知らなくて良かったことだ。
私は人を狂い死にさせる趣味を持ち合わせていない。

新たな神を受容できそうにもない。
そろそろ、存在に疲労を覚え始めたからだ。
この瞬間、再構成を停止するとしても特に躊躇しない。
世界は私のために存在し、私のために消却するべきなのだ。

ならば神など必要ない。
私は私のために動くとしようか。
だが惰性というものは癖と同義らしい。
私は無意識に、システムに向かって再構成を命じていた。


49 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:50:03.60 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「しょぼんくん!?」

近しい場所からの叫び声。
私は立ち上がり、彼女を見る。

(´・ω・`)「何?」
(*゚ー゚)「え……いやいやいやいや、いきなり倒れるからびっくりしたじゃん」
(´・ω・`)「ああ、うん。ごめん」

時を同じく、天井から声が聞こえてきた。

「再構成……完了しました」

(-_-)「よし、完了と。
    結局、柘榴は現れないようだね」
(*゚ー゚)「おかしいよね。絶対来ると思ったんだけど」
('、`*川「……」

いや、すでに私は現れている。
ただそれに周囲が気づかないだけなのだ。


50 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:50:49.47 ID:R8XY+XOI0
さて、どう動くか。

私には何もかもが可能である。
たとえば今ココにいる人間すべてを消すことも。
たとえば全世界の人間を消すことも。

そもそも再構成などという面倒な手法は私自身のためにとられたものだ。
それが私にとって最も平和で、安全な方法だから。

だが。
安全と平和を突き詰めると必然と飽きが来る。
波立たない世界情勢を推測できなかったのは私の失態にほかならない。

だから、私自身が仮にしばらくの延命を選ぶとしたら少なくともこの世界に起伏を生じさせなければならない。

とはいえ、ほとんど運命は確定している。消滅だ。
道順は知らないが、ゴールは決定済なのだ。


51 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:51:35.44 ID:R8XY+XOI0
(-_-)「で、君たちはどうするの?」

(*゚ー゚)「んー、そだねえ」
(´・ω・`)「……一度、塔に戻ろうよ」

しょぼんらしい口調で提言する。
私にも考えたいことがいくつかある。
そのために、あの塔は最適な場所なのだ。
理由はわからない。

ただ、あの塔にいた荒巻が私の基礎を作ったのだから、
私にとってあれは母体のような認識なのだろうか。
深層心理は自分にもわからないが。

だが、生みの親を操っているこの状況で、
母体などと表現するのもいささか皮肉に過ぎるかと思ってしまうな。


52 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:52:02.02 ID:R8XY+XOI0

(-_-)「ま、僕にとってはそのほうがいいかもしれない」
(´・ω・`)「……」
(-_-)「神さまと一緒にいると何か居心地が悪いからね」

ヒッキーという男は明らかな嫌悪を向けてくる。
神さまという存在がよほど気に入らないらしい。
まぁわからないこともないな。
この男のある種異常な才能を考えれば。

死にたがりだったのかもしれない。

('、`*川「じゃ、じゃあ帰るということに……」
(*゚ー゚)「そうする?」

しぃが私に意見を求めるので、黙って頷いておいた。
予定調和も甚だしい。


53 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:52:44.90 ID:R8XY+XOI0
背後から突き刺さる視線に耐えつつ、私たちは塔への道を進む。

(*゚ー゚)「なんか、無駄足だったね」
(´・ω・`)「うん」

長々しい廊下は異様な空気で満ちている。

(*゚ー゚)「これからどうする?」
(´・ω・`)「とりあえず、もう一度考え直してみようよ」
(*゚ー゚)「……それしかないかなあ」

渋々、といったようではあるが、彼女は納得した。
一方ヘタレさん……違う、こいつの名前はペニサスだったはずだ。
ペニサスは何かを思案しているように、私たちからやや遅れてついてくる。
思考を探るか……いや、面倒だ。
どうせ大したことを考えていないに違いない。
たとえそれが名案でも私がいる限り成功することはないのだ。


54 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:53:20.35 ID:R8XY+XOI0
扉を開けて塔に歩み寄る。
途中で大樹が目にとまり、私は思わず舌打ちした。

潜在しているときからこの樹だけは気になっていた。
何を勝手なまねをしている。
この世界は、私のものであるというのに。
まぁ進捗上、仕方のないことなのかもしれないが……それでも、だ。
荒巻という男……生みの親であるにもかかわらず、私は彼に多大なる憎悪を抱いた。
おかしな話だとは自覚している。

最早荒巻は神ではない。
代替となる神は二人も存在している。
必要のない人物ならば消してしまっても問題ない。
元々、この世界のどこにも所属していないのだから。
まぁ、検討するとしようか。


55 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:53:45.96 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「さて、どうするかなあ」

塔の最上階に座り込んだしぃは早速スケッチブックとペンを拾い、
執筆活動を再開した。

('、`*川「あ、あのぅ」
(*゚ー゚)「ん?」
('、`*川「確かV.I.P.D.C.ってありましたよね?」
(*゚ー゚)「ああ、あったね」
('、`*川「そ、そこに行くっていうのはどうでしょうか」
(*゚ー゚)「んー……そうだねえ。
     そういえば、協力する、みたいなこと言ってたし」

V.I.P.D.C.か。
そうだ、あれも考慮の対象に入れなければならない。
そもそも発生が曖昧なのだ。
いつの間にか存在し、都市地区に一つの超高層ビルを建てた。
世界全体に監視カメラを張り巡らせるという不可解な行動までもとっている。


57 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:54:50.99 ID:R8XY+XOI0
真の目的がまったくもって不明だ。
意識に潜入しようと思っても、彼らの個体情報が柘榴に存在していない。
しょぼんと彼らが接触したとき、思考を探ろうと試みた。
だが、なぜか失敗。
つまり、彼らはイレギュラーでもないということだ。
とはいえ、予定を妨害するような素振りも見せない。
それどころか、奴は荒巻とともに私の計画を順調に進行させたのだ。
この世界自体を私が掌握しているので問題視していないのだが。

もしや、という可能性もあるな。

(´・ω・`)「うん、それがいいかもしれない」
(*゚ー゚)「そういえば今日は柘榴にモララーさんとかいなかったね」
(´・ω・`)「まぁいる必要がなかったからじゃないかな?」


58 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:55:39.68 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「まぁ何にせよ今は遅いよね」

時刻はおそらく午前一時ごろ。

('、`*川「じゃあ、朝までここで待っておきますか?」
(*゚ー゚)「それがいいよね。よし」

本音は今思いついたアイデアで絵本を描きたい、といったところか。
まったく、こんな女に若干でも惚れていたしょぼんがかわいそうで仕方がない。
こいつは紛れもない異常者なのだ。
その事実を、彼も向こうの世界で実感していることだろう。

私は立ち上がり、窓に近づく。
そこからは、憎むべき大樹がよく見えた。


59 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:56:04.06 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「ねえ」
('、`*川「は、はい?」
(*゚ー゚)「暇?」
('、`*川「え、ええと、そ、そうでもあるようなないような」

(*゚ー゚)「怖い話をしてあげよう」
('、`*川「え」
(*゚ー゚)「むかし、むかしあるところに……」
('、`*川「いやいやいやいやいやいや、いいですいいです無理にしなきゅ、しなくても!」

女二人が馬鹿な話で盛り上がっている最中。
私は窓の外に向かって小さな念を送った。

消える大樹。
現在、私は満足している。


60 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:57:28.01 ID:R8XY+XOI0
挿話

( ・∀・)「……帰ったようです」

川 ゚ -゚)「はい?」

( ・∀・)「いえ、こちらの話ですが」

川 ゚ -゚)「これからどうするつもりですか?」

( ・∀・)「まぁ向こうの出方次第ですかね」

川 ゚ -゚)「彼らに会うのですか?」

( ・∀・)「避けるわけにもいかないでしょ」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「この世界ももうじき終わるでしょうしね」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「あなたには世話になりました」

川 ゚ -゚)「いえ……」

・・・

・・






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