31 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:57:43.61 ID:GFhh7KW30
第二話 夜のアンドロイド
ひょんなことから、うさぎと亀が競走することになりました。
「ゴールはあの山の上だ」「いいとも」
よーい、どん
うさぎはいつものように一目散に駆け出しましたが、亀はのろのろと歩き始めました。
そのおかげで、亀はうさぎにずいぶん引き離されてしまいました。
しばらくしてうさぎが後ろを振り返ると、そこに亀の姿は見えませんでした。
「なんだ、やっぱりちっとも勝負にならないじゃないか。さて、一休みしよう」
うさぎは一つ大あくび。少し眠たかったのでしょうか、横になるとすぐ、
すやすやと寝息をたてはじめたのです。
亀はやすまず歩き続け、とうとううさぎに追いついてしまいました。
亀は気づかず眠りこけているうさぎの横を通り過ぎるときに一言、
「やっぱり、あの睡眠薬が効いたんだな」
そして、にっこり笑いながらゴールを目指しましたとさ。
おしまい。
32 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:58:35.17 ID:GFhh7KW30
(*゚ー゚)「どう、どう?」
(´・ω・`)「……」
言いたいことはいっぱいある。
またインスパイヤだし。
ここでの体験が全く活かされてないし。
というか、オチを言いたかっただけじゃないのかと。
(*゚ー゚)「でも一つ解けざるミステリーがあるんだよね」
(´・ω・`)「何?」
(*゚ー゚)「亀はどうやってうさぎに毒を盛ったのか」
(´・ω・`)「……もう、いいよ」
どうでも。
まぁでも、可愛い亀とうさぎの絵があるからいいか。
33 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:59:27.79 ID:GFhh7KW30
気づくと外は暗くなっていた。
壁に掛かっている時計を見る。午後八時二十二分。
さっきからニュースを見ようとチャンネルを回してるんだけど、
一向にそれらしいものが映し出されない。
時間帯が悪いのかな。ドラマとバラエティばっかり。
(*゚ー゚)「んー、疲れたな」
(´・ω・`)「どうする? もう寝るの?」
(*゚ー゚)「むーむむむ。先に寝るとしょぼんくんに襲われそうだからやめとく」
さらりと言うな。
(*゚ー゚)「まだお風呂にも入ってないしね。それに夜の町に繰り出したい」
(´・ω・`)「……僕らお金も持ってないし、クーさんも外出するなって」
(*゚ー゚)「『あまり』でしょ? ちょっとぐらいなら大丈夫、大丈夫!」
まったくマイペースだ。利己的ともいう。
でもまぁ、テレビ見るのもそろそろ飽きてきたし、いいかな。
(´・ω・`)「晩ご飯どうするの?」
(*゚ー゚)「帰ってから食べよー。鍵貸しといて、しょぼんくんじゃ心配」
(´・ω・`)「はいはい」
35 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:01:21.51 ID:xwkBscfV0
しぃに出会ったのは確か十年ほど前。小学校に入学した時のこと。
そのころから、まぁなんというか変な子だとは思っていた。
男子ともよく遊ぶし、ジェンダーフリーを形容するような女の子。
そしてなぜか僕は彼女と馬が合い、高校までの付き合いになっている。
まぁだからといって異世界にまで運命を共にする仲になった覚えはない。
ああ、早く帰りたい……
(*゚ー゚)「うわ、星が見えない」
外に出て、しぃは開口一番そう言った。
(´・ω・`)「そりゃそうでしょ。都会なんだから」
(*゚ー゚)「んー、そっかあ」
(´・ω・`)「で、どうするの?」
(*゚ー゚)「適当に歩いてみよう! 道、覚えといてね」
そういってスタスタと先に行くしぃ。
街は帰宅する会社員、不眠のちょい悪少年その他もろもろで埋め尽くされていた。
パチンコ屋とかホストクラブとかのネオンサインが眩しい。
こうしてみると、まるっきり現実世界だ。
もしや自分たちはだまされているだけなんじゃないだろうか……なんて、ただの憶測だけど。
36 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:03:02.97 ID:xwkBscfV0
そんな時。
遠くの方から喧噪が聞こえてきた。
それはだんだんと近づいてきて……僕らに視認できるような距離になる。
一人の少年が猛ダッシュしていた。
……いや、猛ダッシュというか、人外とも思える速さだ。
(*゚ー゚)「おー、おー……」
(´・ω・`)「ちょ、しぃ! 避けないと」
僕の叫声は、少し遅かった。
どん、と音がしたような気がして、しぃが横に吹き飛んだ。
(´・ω・`)「しぃ!」
( ^ω^)「あ……」
さすがの少年も立ち止まった。
そして地面に倒れたしぃを心配そうに覗き込んでいる。
(*゚ー゚)「あいたたた……」
( ^ω^)「ご、ごめンだオ、大丈夫かオ?」
少年のしゃべり方に、僕は少し違和感を覚えた。
機械的というか、電子的というか。
38 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:04:06.55 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「あー、食パンくわえてないね」
(´・ω・`)「何いってんの」
( ^ω^)「あ、あの」
(*゚ー゚)「あ、うん。大丈夫だよ」
( ^ω^)「よ、よカったオ……それジャ!」
謝罪の言葉もそこそこに、少年はまた走り出した。
速いなあ……エンジンでもついてるんじゃないだろうか。
(´・ω・`)「大丈夫? 立てる?」
(*゚ー゚)「おっけーおっけー」
おしりをぽんぽんと手で払いながらしぃは笑顔を見せる。
(*゚ー゚)「それにしてもなんだったんだろうね」
(´・ω・`)「うーん……」
それを歩行者天国のど真ん中で思案していたのが間違いだった。
ξ゚听)ξ「わー、ちょ、ちょっとどいて!」
(*゚ー゚)「へ?」
今度はぶつか……らなかった。
相手の、工事現場にいそうな作業服姿の女性がすんでの所で急ブレーキをかけてくれたからだ。
肩で息をしている女性も、さっきの少年どうよう僕らと同じぐらいの年齢っぽい。
39 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:05:21.41 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「こ、このあたりでブーン見かけなかった?」
(*゚ー゚)「ぶーん?」
ξ゚听)ξ「あ、ええと、やたら足が速くて、ちょっと変な顔のやつ!」
(´・ω・`)「それならさっき、向こうの方に行っちゃいましたけど」
ξ゚听)ξ「あ、そ、そう。ありがと、それじゃ!」
その女性は僕が指さした方向に、一目散に駆けていく。
やがてその姿は、人混みにまぎれて見えなくなってしまった。
(*゚ー゚)「……厄日かな」
(´・ω・`)「かもしれない。帰ろうか?」
(*゚ー゚)「そだね」
さすがのしぃも意気消沈したらしい。
僕らは連れ立って、元のマンションに戻ることにした。
だが、厄災はここで終わらなかったのである。
41 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:06:38.30 ID:xwkBscfV0
マンションのエレベーターから降りたとき、女性の怒鳴り声が耳を劈いた。
……どう考えてもあの女性だ。
(´・ω・`)「……しぃ、鍵閉めた?」
(*゚ー゚)「うーん、閉めたといえば閉めたし、閉めてないといえば閉めてないね」
(´・ω・`)「閉めてないんだね」
(*゚ー゚)「ごめんなさい」
さっさと行かないと事態が大きくなってしまいそうだ。
僕は歩調を早めて708号室に向かった。
ξ゚听)ξ「ほんとまずいって! ここは人の家でしょ!」
( ^ω^)「ぼ、僕ハ戻ろうとしてルんだお! お、おーバーヒート……」
ξ゚听)ξ「あー、だ、大丈夫!?」
開いたままのドアの向こうから、そんな声が聞こえてくる。
意味は解せないけど、結構まずい状況らしい。
42 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:08:43.26 ID:xwkBscfV0
(´・ω・`)「大丈夫ですか?」
玄関に、ブーンなる少年が倒れ込んでいた。
その横で、さっきの女性があわあわと挙動不審な行動を取っている。
ξ゚听)ξ「あ、ご、ごめんなさい。というか、その、あーもう、おしまいだ……」
失意に浸る女性……とはいえ、こちらには何がおしまいなのかもわからない。
(*゚ー゚)「この人、どうかしちゃったの?」
ξ゚听)ξ「まーね……」
(´・ω・`)「うーん、この世界にはまだまだ不思議なことが多いな」
何気なくそう呟いたとき、女性がパッと顔をあげた。
ちょっと希望を含ませて。
ξ゚听)ξ「この世界のこと、知らないの?」
(´・ω・`)「ええ、今日来たばかりですから」
ξ゚听)ξ「じゃあ向こうの世界の?」
(´・ω・`)「はい」
ξ゚听)ξ「……よかっ……た」
へなへなとその場にへたり込む女性。
とりあえず僕はドアを閉める。入居早々ご近所トラブルなんてたまったもんじゃない。
45 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:09:48.91 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「……じゃあ、あんたたちが運命の……」
(´・ω・`)「はい?」
ξ゚听)ξ「いや、なんでも……それにしてもどうしよっかな。絶対見つかっちゃっただろうし」
( ^ω^)「大丈ブ……」
軋んだ音をたてながら、ブーンが声を出した。
( ^ω^)「監視かめらノナイ場所ヲ通過シテキタノデ……」
よくよく考えればこの世界だって広いはず。
そんな大量の監視カメラを設置しても管理しきれないんじゃないだろうか。
なんだ、外出しても案外大丈夫そうだな。
ξ゚听)ξ「……妙なところで器用よね。もういいから、休んで」
( ω )「しゃっとだうん……ピー……ガガ……」
(*゚ー゚)「なんなの、この人」
ξ゚听)ξ「こいつはね……アンドロイドなの」
(´・ω・`)「アンドロイド……」
よいしょ、と女性が立ち上がり、僕らに向かって礼をする。
ξ゚听)ξ「いきなりごめんなさい。私の名前はツンって言います。詳しい話がしたいんだけど……」
(´・ω・`)「まずこの人……アンドロイドを向こうに運びましょう」
ξ゚听)ξ「あ、うん」
46 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:11:19.15 ID:xwkBscfV0
見た目の割に意外と重いアンドロイド(?)ブーンをリビングに運び、ソファに寝かせた。
その上で僕らはダイニングにあるイスに座り込む。
ξ゚听)ξ「ええとね。さっきも言ったけどあいつはアンドロイド」
(*゚ー゚)「あなたが作ったんですか?」
ξ゚听)ξ「ま、まあね」
(*゚ー゚)「すごーい!」
ξ゚听)ξ「そんなことないわよ。原型はできてるから、後は言語プログラムとか
意識プログラムをいじるだけ」
うーん、なんかいきなりSFじみてきたなあ。
異常感が増すというか。
そもそも、アンドロイドなんて僕らの世界にはいなかったし。
ξ゚听)ξ「……なんだけどね、語尾に「お」とかつけちゃってるし、
おまけに今日は暴走しちゃったし……どこかに不備があったんだよね」
(´・ω・`)「直るんですか?」
ξ゚听)ξ「非常プログラムも作動してるっぽいから多分……。
持ち合わせの部品も使えば、動けるまでには回復するはず」
(*゚ー゚)「そっかー。よかった」
47 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:12:51.96 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「それで……その、お願いがあるんだけど」
(´・ω・`)「はい?」
ξ゚听)ξ「こいつ……直るまで動かないんだよね」
(´・ω・`)「そうですね」
ξ゚听)ξ「だから……」
(*゚ー゚)「ここに置かせてもらえませんか、と」
つっけんどんなしぃ。
ツンさんは若干顔を赤らめて、頷く。
僕としぃは顔を見合わせた。
(´・ω・`)「どうする?」
(*゚ー゚)「ま、私はいいよー。楽しそうだし……っと、ツンさん」
ξ゚听)ξ「な、何?」
(*゚ー゚)「私の所、たまにお偉いさんっぽい人が来るんだけど、見つかるとまずかったりする?」
しぃの言ってるのはクーさんのことだろう。
ツンさんは沈黙してしまう。
そわそわとブーンを見やったりして、落ち着かない。
図星だったのだろうか。
ξ゚听)ξ「うん、ええと……まあね」
(*゚ー゚)「隠せるかな?」
(´・ω・`)「……室内まで見て回らないだろうから、二、三日ぐらいなら大丈夫だと思います」
ξ゚听)ξ「うん、急いで修理するから……ありがとう」
(*゚ー゚)「いえいえ、どういたしまして」
ということは必然的にこの部屋には四人が同居する状態になるのか。
今更ながら、部屋が広めでよかったと思う。狭苦しい思いをしなくてすむだろうし。
48 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:14:28.02 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「この世界ではアンドロイドは普通に存在してるんですか?」
ξ゚听)ξ「いや……そういうわけじゃ、ないんだけど」
(*゚ー゚)「じゃあ、この子はなんのために生まれたの?」
ξ゚听)ξ「……」
ツンさんは、意味ありげに俯いてしまった。
ξ゚听)ξ「ごめん、それは言えない」
(*゚ー゚)「あ、そうなの」
なんとなく気まずい雰囲気が流れる。
ツンさんにとっては聞かれたくないことだったのだろう。
場を和ませようと、僕は少し声を大きくして、言った。
(´・ω・`)「ええっと、それじゃあ疲れたでしょうし、お風呂にでも入りましょうか」
女性二人の冷たい視線を受け、僕は自分の発言が相当まずかったことに気づいた。
時、すでに遅く。
まぁ別世界でもラブコメみたいな展開は期待してはいけないということだ。うん。
その日、僕はベッドで寝ることなく、アンドロイドのいるリビングで寝ることになった。
僕が本来寝るべきベッドはツンさんが使うことになった。
システムをシャットダウンした無機質物体の横で寝るのはなかなか気味が悪い……
当人やツンさんには悪いけど。
49 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:15:37.00 ID:xwkBscfV0
そして誰が攻めてくるわけでもなく、平穏なままに朝はやってきた。
僕が目を覚ますと、すでにツンさんは隣でブーンを分解していて……
なんだかよくわからない部品とかがいっぱい散らばっていた。
(´・ω-`)「あ、ツンさん」
ξ゚听)ξ「おはよ」
(´・ω・`)「もう起きてたんですか?」
ξ゚听)ξ「三時間ぐらい前からずっとやってたけど、あんた一向に起きなかったわよ」
(´・ω・`)「あ、ごめんなさい」
ξ゚听)ξ「いや、いいんだけどね」
寝ぼけ眼で僕はブーンを見つめる。
腹部からとびでている部品を除けば、どこからどうみてもただの人間だ。
こうなるとやはり「なぜつくられたのか」がどうしても疑問になってしまう。
ξ゚听)ξ「あんた、どうしてここに来たの?」
(´・ω・`)「わからないんです。気がついたらこっちに来ていたっていうか」
ξ゚听)ξ「ふーん」
(´・ω・`)「あの、ツンさんも僕たちの世界を知ってるんですか?」
ξ゚听)ξ「まあね、っていうかここの人はみんな知ってるよ。口に出さないだけで」
(´・ω・`)「……」
ということは、この人も嫉妬の念を抱いているのだろうか。
50 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:16:54.42 ID:xwkBscfV0
会話はそこで途絶えてしまった。ただ機械の音だけが響いている。
手持ち無沙汰になって僕はテレビをつけた。
……朝からドラマの再放送やってるし。
ニュースはないのかな、本当に。
映し出されるイケメンっぽい俳優と美人らしい女優をボーッと見る。
どうやら韓国ドラマらしい。こっちにも韓流の波は押し寄せているのか。どうでもいいけど。
やがてCMが流れる。
ゴールデンタイムに放送されるバラエティの予告……って、あれ、ちょっと待てよ。
(´・ω・`)「この番組、昨日の夜に見なかったっけ……」
いや、確かに見た。
あの場面を僕は確かに昨日の夜……
(´・ω・`)「どうなってるんだ……?」
ξ゚听)ξ「そっか、アンタは知らないんだね」
(´・ω・`)「え……?」
ξ゚听)ξ「教えて良いかわからないから詳しくは教えられないけど」
ξ゚听)ξ「この世界は再構成で成立しているの」
(´・ω・`)「再構成……」
51 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:18:27.46 ID:xwkBscfV0
そのとき、
(*゚ー゚)「あさ早いねー、二人とも……」
ふあぁ、と大あくびをしながらしぃが現れた。
その姿がパジャマ姿なのを見て、自分も着替えるのを失念していたことに気づく。
ξ゚听)ξ「早く着替えてくれば」
ツンさんが顔を背けながら呟いた。
僕は結局再構成の意味を知ることなく。
ただ思考に沈みながら着替えに向かうこととなった。
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