64 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:13:33.05 ID:xwkBscfV0
第三話 テクノポリスに続く。
それからというもの、僕としぃは隠蔽工作に奔走することとなった。
玄関からはリビングまで見渡すことが出来ないのでクーさんが来ても大丈夫。
問題は部屋に監視カメラが付いているかも知れない、ということなんだけど、
それも僕としぃで調査した限りは大丈夫だった。
あとは食料。故障中のアンドロイドであるブーンはともかくとしてツンさんは人間だ。
何か食べないとどうにもならない。
そんなわけで、二人分の食料を三人でわけることになった。
ツンさんは何度も
ξ゚听)ξ「ごめんね」
という。しかしそのたびにしぃは
(*゚ー゚)「楽しいからいーんだよー」
と返事していた。
大らかなヤツだ。見習うべきかも知れない。
そして、二日という期間はあっという間に過ぎ去った。
・・・
・・
・
65 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:14:31.41 ID:xwkBscfV0
ひょんなことから亀を助けたうらしまたろう。
その亀につれられ、海の奥底にある竜宮城に向かいました。
そこでは姫をはじめとする多くの綺麗な女人が彼を迎え、毎日のように宴が繰り広げられたのである。
すっかり居心地良くなってしまったうらしまたろうは姫たちの迷惑も考えずに、実に一年近く暮らしてしまったのだ。
ある日、うらしまは言った。
「そろそろ、おっかあが心配するべ」
姫は帰宅しようとする彼に感謝と怨念を込めた玉手箱を手渡した。
陸に帰ったうらしま。そこで彼は件の玉手箱を開いたのである。
するとびっくり、白い煙がモクモクとわきだして……うらしまは十万年近く年をとってしまったのだ!
「……なんでワシは十万年も年を取ったのに生きているんだ?」
「……そうか、我が輩は悪魔だったのか」
そう、後のデーモン小暮閣下である。
(*゚ー゚)「二日間かけた力作!」
(´・ω・`)「とりあえず、まともなものを目指そうよ」
(*゚ー゚)「むーむむむ……」
66 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:15:08.67 ID:xwkBscfV0
( ^ω^)「しすてむ正常機能中。身体的不具合ハ発見サレナイオ」
ξ゚听)ξ「……よし、完璧」
(*゚ー゚)「できたのー?」
ξ゚听)ξ「うん。でもしゃべり方が完全に機械化しちゃったけど」
立ち上がり、元気に四肢を動かすブーンを見てツンさんは満足そうだ。
僕も一応胸をなで下ろす。
( ^ω^)「つん、コレカラドウスルンダオ?」
ξ゚听)ξ「一度テクノポリスに戻りましょう。そこであなたの身体を完全にしてあげるから」
(*゚ー゚)「てくのぽりす?」
聞き慣れない単語をしぃが反復した。
ξ゚听)ξ「高度技術集積地区、通称テクノポリス。
アンドロイドの部品とかが製造されている場所よ」
( ^ω^)「デモ、つん。ソレハ危険ガ伴ッテシマウオ」
ξ゚听)ξ「あんたは黙ってなさい」
(*゚ー゚)「……ふーん、てくのぽりす、てくのぽりすかあ……」
しぃの目が興味の色に染まる。
……まずい、まずい兆候だ。
(*゚ー゚)「ねえ、しょぼんくん」
(´・ω・`)「……何?」
(*゚ー゚)「私たちも一緒に行こうよ、テクノポリスへ!」
67 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:15:59.25 ID:xwkBscfV0
やっぱりだ。しぃの場合考えていることが面白いほど顔に出る。
……そしてそれがわかったところで喜ばしくも何ともない。
(´・ω・`)「ダメだよ。僕たちは一応監視されてる身なんだから」
(*゚ー゚)「むーむむむ……」
(´・ω・`)「見つかったら多分タダじゃすまないよ」
(*゚ー゚)「『多分』でしょ? だったら大丈夫!」
(´・ω・`)「いやいやいや」
こうなったしぃが押しても動かないことぐらい承知だ。
しかし、今回ばかりは僕も引き下がるわけにはいかない。
監視といって連想されるのは命の危険なのだから。
頑なな僕に対し、しぃは哀れむような表情を見せた。
(*゚ー゚)「いい、しょぼんくん?」
(´・ω・`)「なに」
(*゚ー゚)「もしも私たちを本当に監視したいのなら、こんなマンションに閉じこめると思う?」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「監視カメラもザルほどの効果もないし、マンションにも警備員の一人も立っていない。
無防備……それはつまり脱走おっけーってことなんだよ!」
(´・ω・`)「そうかなあ……」
実のところ、そこは不思議に思っていたことだ。
本当に監視する雰囲気もない。
ただ僕らにこの世界での生活を送らせているだけのように見える。
クーさんも食料の受け渡しとか、適当だし。
68 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:16:37.45 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「……っていうか、ツンさん」
ξ゚听)ξ「え、何?」
(*゚ー゚)「この……なんだっけ、都市地区? に来た目的はなんだったの?」
ξ゚听)ξ「ああ、ええっと……」
言葉を紡ぎかけるツンさん。
でのその口を開いたままブーンを見やり……閉ざしてしまった。
ξ゚听)ξ「ま、いろいろあったんだけど、もういいや。それよりテクノポリスに戻る方が先決」
( ^ω^)「つん……」
(*゚ー゚)「女は一つぐらい秘密を持ってるもんだって誰かが言ってたけど、ツンさんの場合持ちすぎだよね」
ξ゚听)ξ「そうかも……ね」
(´・ω・`)「テクノポリスってどこにあるんですか?」
ξ゚听)ξ「えーっと、ここから車で一時間ぐらいのところなんだけど……って、そうか。
移動手段がないや」
(´・ω・`)「ここにはどうやって?」
ξ゚听)ξ「……この世界には一人だけ、タクシードライバーがいるのよ」
(*゚ー゚)「それってもしかして荒巻さん?」
しぃの嬉々とした問いにツンさんは首を縦に振った。
それにしても、一人だけっていうのはどういうことだ?
……そういえば、昨日は他のタクシーを見かけなかったな。市内バスみたいなのは走ってたけど。
69 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:17:15.20 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「今思えばどうしてあの時テクノポリスにタクシーがあったのかわかんないんだけど……困ったな。
今日も都合良く来てくれるわけないし」
( ^ω^)「ココカラてくのぽりすマデ、徒歩ニ換算スルト……計算不能」
ξ゚听)ξ「あんた算数苦手なんだから黙ってなさい」
(*゚ー゚)「とりあえず外に出てみようよ! 何かわかるかもしれない」
一連の流れは僕の不安感を増長させるだけに終わった。
しぃのヤケクソとも取れる一言にツンは賛同し、とりあえず僕らは外出することとなった。
思えば、何を期待した上での行動だったんだろう。
70 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:17:58.59 ID:xwkBscfV0
マンションの外に出たとき、僕らは唖然とすることになった。
オレンジ色の車体、菱形のオブジェクト。
そこに荒巻さんが気をつけの姿勢で待機していたのだ。
/ ,' 3「お待ちしていました」
(*゚ー゚)「おお、荒巻さん!」
ξ゚听)ξ「お待ちしていましたって……?」
/ ,' 3「テクノポリスに行かれるのでしょう?」
僕ら(しぃ以外)は立ちつくした、というか凍りついた。
ツンさんがテクノポリスに行くことを決断したのはつい十数分前のことだ。
なぜ、荒巻さんはそんな事実を知っているのだろう……。
ツンさんも同じ疑問を持ったらしく、
ξ゚听)ξ「荒巻さん、なんでそのことを?」
/ ,' 3「……それよりも今は彼を助けるのでしょう」
手で示されたブーンは首をかしげる。
ツンさんは黙って荒巻さんとしばらく対峙していたけれど、やがてふう、と溜息をついた。
/ ,' 3「お互い、秘密は秘密のままにしておきたいですね」
ξ゚听)ξ「そうね……それで、連れて行ってくれるの?」
/ ,' 3「はい」
ξ゚听)ξ「ありがと」
(*゚ー゚)「さ、私たちも乗るよー」
(´・ω・`)「……ううん」
正直、僕のなかでは恐怖心よりも好奇心が勝って僕を先に進めようとしていた。
だからしぃの言葉に一瞬悩むフリをして……承諾したのである。
71 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:18:22.77 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「せーまーいー。ブーンのせいよ!」
( ^ω^)「ボ、僕ハ肥満体ジャナイオ!」
(*゚ー゚)「あー、つぶれるぅ……おもちみたいになる……」
そもそも小型タクシーだからか、後部座席は三人では少し厳しいらしい。
そんな中、僕は悠々と助手席に腰を下ろした。
都市地区を抜けてタクシーは無人の道路をひた走る。
辺りは一面草原が広がっていた。道の駅とか、そういう類のものも一切見当たらない。
テレビでしか見たことのないアフリカのサバンナのような風景。
遠くの方には、てっぺんを白く化粧した山の群れが見えている。
/ ,' 3「このあたりは放牧地区です。もうすぐ牛の一行が通過するはずですが」
(´・ω・`)「環境破壊とか、ないんですか? 都市近郊にあるのに」
/ ,' 3「……再構成の話、聞いてないのですか」
(´・ω・`)「聞きそびれたんです」
/ ,' 3「なるほど……少し長くなりますが、お聞きになりますか?」
72 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:19:37.12 ID:xwkBscfV0
/ ,' 3「この世界には『柘榴』と呼ばれる管理システムがあります。
『柘榴』は毎日、午前0時にこの世界の再構成を行うのです。
それにより世界は一度崩壊し、新たに構築されます。
よって環境破壊が起きても一日でプログラム通り再生するのです。
再構成は人の記憶にまでも及びます。
それにより、人々はまた昨日と同じ日を繰り返すのですよ」
(´・ω・`)「?」
/ ,' 3「わかりやすくいえば無限ループです。人々は毎日毎日同じサイクルで生活を行います」
だから、昨日と同じバラエティ番組の予告がなされていたのか。
だから、地区を移動するタクシーなど必要ないのか。人々が同じ生活を繰り返すから。
だから、人口は増えも減りもしないのか。
この世界の人は一日しか知らないのだ。
それを苦痛とも感じない。前日の記憶を持っていないから。
でも……疑問は残る。
(´・ω・`)「僕は、昨日の記憶を持っています」
/ ,' 3「あなた方は異世界から来たイレギュラーですから。それに……」
バックミラーを見やり、押し合いへし合いしている後部座席を眺める荒巻さん。
/ ,' 3「彼女も『柘榴』の影響を受けていないはずです」
(´・ω・`)「……なぜ?」
/ ,' 3「彼女もまた、『柘榴』の参加メンバーだったからですよ」
73 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:20:26.49 ID:xwkBscfV0
/ ,' 3「まあ、テクノポリスに行けばもっと詳しいことがわかります」
(´・ω・`)「特別な場所なんですか?」
/ ,' 3「小王国です」
(´・ω・`)「再構成のことを人々は知っているのですか?」
/ ,' 3「いえ。知っているはずもありません」
(´・ω・`)「なら、なんであなたが?」
/ ,' 3「……秘密です。いいじゃないですか、男が秘密を持っていても」
それっきり、荒巻さんは口を噤んでしまった。
前部はしばらく沈黙に浸ったまま、後部は相変わらず喧噪に包まれながら、タクシーは果て無き道を進んでいく。
74 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:21:23.95 ID:xwkBscfV0
しばらくして、しぃが叫んだ。
(*゚ー゚)「あ、なんかあるよ!」
そう言ってしぃが指さした先に、山が見えた。
その頂上に何かがそびえている……なんだろう、電波塔?
(*゚ー゚)「荒巻さん、あれ何?」
/ ,' 3「……ジャンクエリアですね」
(*゚ー゚)「じゃんく……横文字嫌いだ」
/ ,' 3「放棄地区です。誰からも受け入れられないうち捨てられた地域ですよ」
(*゚ー゚)「漢字も嫌いだー!」
しぃがギャーギャー喚く。そろそろ黙れと思わなくもない。
ちらと後部座席を見てみる。
ツンさんはしぃをみて溜息。
一方、ブーンはその電波塔らしきモノを見つめ、静止していた。
(´・ω・`)「?」
/ ,' 3「主神地区の名を取り戻すのはいつになるのでしょうねえ」
荒巻さんの、嘆きにも似たつぶやきを聞いたのは多分僕だけだ。
やがて、陽光を受けて輝く高い煙突が目に入った。
そこに広がるのは、いくつもの工場群とせわしなく動き回る運搬車両の姿。
/ ,' 3「さあ、あと少しですよ」
76 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:25:34.71 ID:xwkBscfV0
挿話一
( ´_ゝ`)「……」
(´< _` )「どうした、兄者」
( ´_ゝ`)「俺は、今日ここで誰かに会わなければいけない気がする」
(´< _` )「奇遇だな、俺もだ」
( ´_ゝ`)「……だが、誰も来ないな」
(´< _` )「気のせいだろう。それより、早く行かないと」
( ´_ゝ`)「ああ、そうだな……稲穂、持ってやろうか?」
(´< _` )「いや、これぐらい一人で大丈夫だ」
( ´_ゝ`)「そうか……」
・・・
・・
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【関連】
一気読み
プロローグ
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第一話
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