97 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:07:55.05 ID:xwkBscfV0
第四話 追いついて、追い抜ける?
(*゚ー゚)「ああああああああ!!! しょぼんくん!」
(´・ω・`)「ど、どうしたの」
(*゚ー゚)「スケッチブック忘れた!」
(´・ω・`)「……それは、お気の毒」
(*゚ー゚)「これじゃ絵本描けないよ……」
ちょっとホッとしたという事実をしぃに告げるのはやめておいた。
98 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:08:43.82 ID:xwkBscfV0
荒巻さんの言葉通り、テクノポリスは海岸沿いの小王国だった。
丘の上から見渡したとき、まず目に入ったのは高度技術集積地区らしい工場群。
煙突はあるが煙はでていない。
荒巻さんによると「技術開発の結果」らしい。
その次に目に付いたのはマンションや一軒家といった住宅地だった。
病院もあれば郵便局みたいなところもある。
ただ技術開発されているだけではない。そこに人が住み、生活しているのだ。
都市地区ほどではないが、人通りもそれなりに多い。
/ ,' 3「なぜこんな生活環境になっているかわかりますか?」
(´・ω・`)「……いえ」
/ ,' 3「ここは『柘榴』による再構成の影響を受けていないのですよ。
ここでは普通の生活サイクルによって月日が流れています。
そのおかげでアンドロイドの部品を製造、輸出できるわけです。
食料や衣類などは配給によって賄われていますがね」
(´・ω・`)「配給ですか」
/ ,' 3「といっても、あなた方の世界における戦時中のような悲惨なものではありません。むしろ供給過多と言ってもいいぐらい」
99 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:09:41.04 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「ツンさん、てくのぽりすのどこに行くんですか?」
ξ゚听)ξ「……第八倉庫の場所、わかりますか?」
/ ,' 3「ええ」
ξ゚听)ξ「じゃあそこにお願いします」
( ^ω^)「つん、ヤハリヤメタ方ガ……」
ξ゚听)ξ「しつこい! あんたは私の言うとおりにしてればいいのよ!」
(*゚ー゚)「ツンさんすごく献身的、ゾッコンだねー」
ξ゚听)ξ「な、なんでそうなるのよ! こいつは私が作ったんだから直したいのは当たり前でしょ!」
相変わらずギッタンバッタンやってる後部座席。
/ ,' 3「しかし、危険なのは確かでしょうね」
(´・ω・`)「?」
/ ,' 3「ツンさんは『柘榴』から無断で離脱した身です。もし見つかれば……殺されるやも知れません」
(´・ω・`)「殺されるって……」
/ ,' 3「『柘榴』は世界の中枢ですから。そこに関わる者はそれなりの拘束を覚悟しなければならないのですよ」
お偉いさんに見つかりたくない……しぃの助言は正確だったのか。
背筋に寒気が走る。これは、ちょっと危険じゃないのか……。
/ ,' 3「あなたにも、余計な火の粉がふりかからないよう祈ります」
そんな荒巻さんの言葉は僕の不安を助長させるに過ぎない。
100 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:10:32.57 ID:xwkBscfV0
海の方へ進むタクシーはやがて倉庫街に進入した。
壁の綺麗具合などから見て、まだ廃れているわけではなさそうだが無人である。
そしてその中で静かに、タクシーは停車した。
/ ,' 3「到着しました」
ξ゚听)ξ「あ、ありがとうございました」
(*゚ー゚)「お金払わなくていいのー?」
/ ,' 3「『柘榴』やテクノポリスには通貨の概念はありませんから……お代は結構ですよ」
ξ゚听)ξ「……」
僕たちをおろしたタクシーはどこへともなく走り去っていった。
それを見送ったあと、ツンさんは背後にそびえる一つの倉庫に振り返る。
巨大な鉄扉によって中を窺い知ることは出来ない。
101 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:11:05.67 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「……ねえ、アンタたち」
(´・ω・`)「は、はい?」
ξ゚听)ξ「一緒に来るつもり?」
(*゚ー゚)「当然です」
間髪入れずにしぃが答えたので、僕は閉口せざるを得なくなる。
ツンさんはそんな彼女を見て……細く長く息を吐いた。
ξ゚听)ξ「知らないわよ」
(*゚ー゚)「楽しければいーんですよー」
ξ゚听)ξ「……ばかじゃないの」
ツンさんの声は少しも冗談めいていなかった。
102 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:11:56.66 ID:xwkBscfV0
(-_-)「やあ、ツン……って、今日はずいぶん大勢だね」
鉄扉の向こうには想像以上の光景が広がっていた。
いくつも、マネキンのように並べられたアンドロイド。
その足下に、無造作に散らばっている用途不明の機械部品。
鉄の海の中に一つ机があり、設置されているコンピュータのキーボードを叩く男の人がいた。
ξ゚听)ξ「……こんにちは、ヒッキー先生」
(-_-)「そっちにいる人もアンドロイド?」
ξ゚听)ξ「ち、違いますよ」
(-_-)「それは残念……で、今日は何の用?」
あれ、僕たちに対する詮索はそれだけなのか。
まぁテクノポリスでは僕らは珍しい人間ではないのだろうけど、それにしても反応が薄い。
今の会話から考えるに、この人はマッドサイエンティストってやつだな、多分。
人間には興味ないってヤツ。
103 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:12:44.12 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「ブーンの調子がおかしくて……またココを借りてもいいですか?」
(-_-)「いいよー。適当に部品持っていきなー」
そんなことを言ってる間もヒッキー先生はキーボードを叩く手を休めない。
ツンさんはそんな彼に一度礼を言うと、慎重に機械の海へ足を踏み入れた。
(*゚ー゚)「あの人、不思議だねえ」
不思議人間しぃが呟く。
(*゚ー゚)「なんでここにはこんなに部品があるんだろう」
( ^ω^)「アノ人ハあんどろいどノ歴史ニ偉大ナ功績ヲ残シタンダオ
ダカラ、特別待遇ヲサレテイルンダオ」
(*゚ー゚)「へー、若そうなのに」
(´・ω・`)「特別待遇か……そういうのをしてくれる組織があるの?」
( ^ω^)「ココニ限ッテ政府ガアルミタイダオ」
なるほど。やはり普通の生活をしている限り統率する組織があるというわけか。
やがてツンさんがブーンを呼び、僕らは二人きりになってしまった。
104 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:14:07.28 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「……さて」
(´・ω・`)「どうしようか」
(*゚ー゚)「帰る?」
(´・ω・`)「いやいやいや」
(-_-)「君たちはあれだね、例のイレギュラーだよね?」
急にヒッキー先生が声をかけてきた。
にしても、僕らって意外と有名人になっちゃってたりするのかな。
(-_-)「知っているかい?」
(´・ω・`)「何をですか?」
(-_-)「このテクノポリスが、いつからこの姿をしているのか……を。
というより、君の見てきた世界がいつから再構成を続けているのかを」
質問の意味をすぐには理解できなかった。
そして理解したとき、僕の中で何かがふくれあがった。
そうだ、確かにそれは疑問だ。
(´・ω・`)「わかりません」
(-_-)「記録上二百年前……だけど、それ以前から、という可能性もある。
だからこそ、唯一歴史が進行するこのテクノポリスでは君たちの技術力を卓越し、
アンドロイド開発を確立している」
(´・ω・`)「!」
105 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:15:05.92 ID:xwkBscfV0
二百年前。
僕らの時代で言えば……まだ江戸幕府が健在だったころじゃないか。徳川家斉の時代でもある。
僕が見た都市地区……それは現在の東京と見間違えるほどの発展を遂げていた。
それがすでに二百年前から存在していたのだという。
なぜそっくりの世界を創造することができたのだろう。
誰が未来の世界を知っていたのだろう。
(*゚ー゚)「……わかんないなあ」
しぃも不可解だと述べる。
しかし彼女の疑問は別のところにあったようだ。
(*゚ー゚)「なぜそれを私たちに教えてくれるの?」
(-_-)「理由は二つ。一つは、君たちがイレギュラーだから」
(´・ω・`)「どういう意味です?」
(-_-)「君たちの世界はこっちの世界にやっと追いついたんだよ。
それと同時に君たちがやってきた……科学を超えた神秘を感じないかい?」
この人、マッドサイエンティストに域にとどまらないらしい。
106 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:15:47.02 ID:xwkBscfV0
(-_-)「まぁもう一つの理由の方が大きいんだけど。実は教えてあげるように頼まれててね」
(*゚ー゚)「誰に?」
(-_-)「荒巻さんに」
(*゚ー゚)「おー」
しぃは無闇に感心してるけど。
……荒巻さんか。あの人も何かと神秘だな。
この世界唯一のタクシードライバーらしいし。
ツンさんはブーンと手に持つ機械を照らし合わせてたりしている。
けど、多分僕らの会話を聞いていただろう。
(-_-)「さて、君たちはどうする? 多分、彼の修理にしばらく時間がかかるだろうし」
(´・ω・`)「えーっと」
(*゚ー゚)「絵本描きたいなあ、アイデアは浮かんでるのに」
(-_-)「会わせたい人がいるんだ。付いてきてくれるかい?」
(*゚ー゚)「いーですよー」
108 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:17:17.86 ID:xwkBscfV0
僕にも特に異論はない。
ここにいても特にできることはなさそうだし、何より、この世界のことをもっと知りたくなってきたからだ。
よいしょ、とばかりにヒッキー先生は腰をとんとん叩きながら立ち上がる。
そして、ブーンの改造を始めたツンさんに向かって言った。
(-_-)「この人たち、借りてもいいかな」
ξ゚听)ξ「いいけど、別に」
背を向けたままツンさんは答える。
ブーンがこちらを眺める……が、喋れる状況でないのか、言葉を発しない。
残念ながら、僕は機械の目から何も読み取ることが出来なかった。
(-_-)「それじゃあ、行こうか」
109 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:18:06.73 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「先生はあそこに住んでるんですか?」
(-_-)「……君にまで先生と呼ばれるとはね」
そういうヒッキー先生は怒っていない。
むしろ苦笑していた。
(*゚ー゚)「だってツンさんが」
(-_-)「彼女は特別だよ」
(´・ω・`)「何か……あったんですか?」
(-_-)「まあね」
そういってヒッキー……先生は僕らを先導して歩き始める。
思うことがある。
この世界の人には、秘密が多いと。
112 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:24:33.82 ID:xwkBscfV0
挿話二
( ´∀`)「ツン……まぁいなくなってしまったものはもう考えてもしょうがないモナ」
( ´∀`)「……にしてもこの写真」
( ´∀`)「あのアンドロイドそっくりだモナ。いったい誰モナ?」
「ピピ……えらー発生……至急めんてなんすヲ……」
( ´∀`)「またかモナ……最新式はどうも調子がおかしいモナ」
( ´∀`)「……」
( ´∀`)「あれ?」
・・・
・・
・
【関連】
一気読み
プロローグ
-
第一話
-
第二話
-
第三話
-
第四話
-
第五話