( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜(´・ω・`)しょぼんたちは世界の果てに現れたようです 一気読み〜

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3 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:31:05.00 ID:GFhh7KW30
プロローグ STAINLESS

「再構成ヲ……完了シマシタ……」

ξ゚听)ξ「はいはい、ご苦労様」

「しすてむ……しゃっとだうんシマス……ガ……ピー……」

( ´∀`)「……ツン」
ξ゚听)ξ「何?」
( ´∀`)「こいつもそろそろ引退時期モナ」
ξ゚听)ξ「えー、もう? 早すぎない?」
( ´∀`)「仕方ないモナ。近頃閉塞世界が加速度的に発展しているから、こいつへの負担もだんだん大きくなってるんだモナ」
ξ゚听)ξ「んー……わかった。また部品の発注しないとね」
( ´∀`)「頼んだモナ。それじゃ僕はそろそろ休むモナ」
ξ゚听)ξ「……」


5 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:32:09.62 ID:GFhh7KW30

ξ゚听)ξ「よいしょ、と」

「しすてむ起動……しゃっとだうん後スグノ起動ニハ負担ガカカリマス……ゴ注意クダサイ」

ξ゚听)ξ「あ、ごめん……」

「用件ヲ」

ξ゚听)ξ「あんたももう終わりだって」

「……」

ξ゚听)ξ「まだまだ使えると思っちゃったりするんだけどさ、ダメみたい。
        まだ六ヶ月しか使ってないのにね」

「大丈夫……別ニ、悲シカッタリハシマセンノデ」

ξ゚听)ξ「……アンタさあ」

「ハイ?」

ξ゚听)ξ「人間になりたいとか思わない?」

「……」



6 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:32:30.53 ID:GFhh7KW30

ξ゚听)ξ「私がなんとかしてアンタを人間にしてあげてもいいんだけど」

「……壊レナイトイウコトデスカ?」

ξ゚听)ξ「少なくとも、今すぐにはね」

「アリガトウゴザイマス」

ξ゚听)ξ「あー……うん、どういたしまして。でも勘違いしないでよ。
        別にアンタを特別扱いしてるわけじゃなくて、アンタは私が初めて受け持った
        アンドロイドだから、ちょっと感情移入しちゃってるだけなんだから」

「ソレヲ、特別扱イトイウノデハナイデスカ?」

ξ゚听)ξ「う、うるさいわね! 変な顔してるくせに!」

「……シカシ、ソウナルトアナタハ」

ξ゚听)ξ「うん……ここから逃げ出さないといけないね」

「イイノデスカ? 私ナドノタメニ」

ξ゚听)ξ「ま、いいんじゃない」

・・・

・・




7 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:33:15.87 ID:GFhh7KW30
第0話 桃太郎

むかし、むかし、あるところに。
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに。
おばあさんは川へ洗濯に行きました。

おばあさんが川で洗濯していると、川上の方から。
どんぶらこ、どんぶらこと大きな桃が流れてきました。
おばあさんはおじいさんにおいしい桃を食べさせてあげようと、その桃を家に持って帰りました。
おじいさんはその桃をみてたいそう喜びました。
そしておじいさんとおばあさんはその桃を半分に割ってみました。
するとびっくり、中から腐りかけた胎児の遺体が転がり落ちたのです。
おじいさんとおばあさんは腰を抜かしてしまいました。
このとき、二人は決意したのです。
「犯人をつきとめよう!」と。

続く。


9 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:34:03.46 ID:GFhh7KW30

(´・ω・`)「あー、まあ、ある意味現実的だと思うね」
(*゚ー゚)「でしょ?」
(´・ω・`)「でも、これだとお話が続かないよね」
(*゚ー゚)「いや、ここから如何にして胎児を殺害し、桃の中に入れたのかという
        奇っ怪なトリックをおじいさんとおばあさんが解明していくんだよ」
(´・ω・`)「……そういうのは、水谷豊にでも任せればいいと思うなあ」

しぃは絵本作家を目指している、ちょっと変な子だ。
絵については美術の授業でも絶賛されているように、技術もあって
可愛らしい絵柄を描くことが出来るのだが、何せストーリーが子供向けじゃないおかげで
僕らはいつも彼女は持ってくる新作に首を捻ることしかできないのだ。
……あの時のやつは狙っているようにしか思えなかったんだけど。

(´・ω・`)「ともかく、いつもいってるけどもっと和やかな物語の方がいいんじゃないかな。
        もしくは、サスペンスドラマの脚本とかを目指すとか」
(*゚ー゚)「あー、それは無理」
(´・ω・`)「どうして?」
(*゚ー゚)「トリックを考える自信がない。私はそこまで頭がよくないからさ」
(´・ω・`)「ああ、そう」

まぁ、でも。
ストーリーはともかく、彼女の描く絵を見れただけでも儲けものだった。
だから僕は、彼女の描く絵が大好きだった。


10 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:35:09.05 ID:GFhh7KW30
第1話 世界の果てにある世界

きっかけは、些末すぎたからかよく覚えていない。
何せ、意識を失ったあたりの記憶がまるっきり欠落してしまってるのだ。
ただ一つ言えるのはここが見たこともない場所だということ。

どこかの田舎町だろう。
最近舗装されたらしいアスファルトの上に、僕としぃは立っていた。

(´・ω・`)「……ここ、どこ?」
(*゚ー゚)「さあね」

しぃの返事はなんとも頼りなかった。
とりあえず見回してみる。

木造が家がちらほら見えて、あとは山林ばかりが限りなく広がっていた。
山々に囲まれた辺境……か。

(*゚ー゚)「綺麗な場所だよね。なんというか、ナチュラル?」
(´・ω・`)「……」

しぃの環境適応能力は尊敬に値すると思う。
普通、こんな場所に放り出されたら誰だって混乱してしまうだろうに。
とはいえ、僕の心もなぜか平静だ。


11 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:35:52.81 ID:GFhh7KW30
そこに、二人の男が向こうから歩いてくるのが見えた。
一人は百姓姿で、クワを肩に担いでいる。もう一人は両手に稲穂らしきものを抱えていた。

(*゚ー゚)「あの!」
( ´_ゝ`)「なんだ?」
(*゚ー゚)「ここ、どこですか?」
( ´_ゝ`)「ここか。ここは……」
(´< _` )「世界の果てだよ」

稲穂の男が妙なことを言い出した。
しぃの目が点になる。

( ´_ゝ`)「違う。ここは世界の縮図だ」
(´< _` )「兄者、世界の果てだと何度言ったら……」
( ´_ゝ`)「お前こそ、ここは世界の縮図だと何度言ったら!」
(´< _` )「おk、兄者、時に落ち着け」
(*゚ー゚)「あ、も、もういいです。ええと……ありがとうございました!」

勝手に喧嘩を始めた二人に、しぃは慌てて礼を言った。
二人は互いににらみ合いながら、彼方へと歩き去っていく。
それを見届けたあと、しぃは僕に告げた。

(*゚ー゚)「世界の果てだって」
(´・ω・`)「世界の縮図とも言ってたね」

とても百姓に似合わない言葉だ……といえば、ちょっと失礼かな。
それにしても聞き慣れない単語だ。


12 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:36:39.71 ID:GFhh7KW30

(*゚ー゚)「……どうしよっか」
(´・ω・`)「うーん。とにかく警察にでも行こうよ」
(*゚ー゚)「どうして?」
(´・ω・`)「え。だって僕たち、迷子みたいなのになってるじゃないか」

迷子っていうほど、単純なものでもないような気がする……なんとなく。
そのとき。
静かなエンジン音と共に、一台の車が近づいてきた。

(*゚ー゚)「あ、タクシーだ」

オレンジ色の車体。
てっぺんには菱形の小さなオブジェクトが取り付けられていて……まさにタクシーである。
それはゆるゆると減速を始めて……やがて、僕らの前に停車した。
一陣の風が吹いて、しぃのセーラー服のスカートがなびく。

(*゚ー゚)「乗ればいいのかな?」

そんなことをいうしぃの目は好奇心で輝いている。
と、音もなく車窓が開き、中から男が顔を出した。


13 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:37:14.89 ID:GFhh7KW30

/ ,' 3「しぃさんと、しょぼん君だね?」
(*゚ー゚)「はい!」
(´・ω・`)「は、はい」
/ ,' 3「あなたたちをお連れするよう頼まれている。さあ、乗ってください」

声と共に、後部ドアが開いた。

/ ,' 3「さあ、どうぞ」
(*゚ー゚)「じゃ、お先にしつれ……」
(´・ω・`)「ちょ、ちょっとちょっと!」
(*゚ー゚)「どしたの?」
(´・ω・`)「いや、ええと。展開が早すぎない?」

正直、全然話について行けないし。
なんでしぃが平然と乗り込もうとしているのかわからないし。

(´・ω・`)「そんなに簡単に信用してもいいの?」
(*゚ー゚)「……ははは、しょぼんくんは疑い深いなあ」

いやいや、普通普通。多分普通。

(*゚ー゚)「大丈夫だよ。ほら、行こう!」

そんな感じで。
僕は半強制的に車に乗り込ませられた。
ドアが閉まり、タクシーは走り出す。


14 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:38:07.81 ID:GFhh7KW30

(*゚ー゚)「運転手さん」
/ ,' 3「はい?」
(*゚ー゚)「ここ、どこ?」
/ ,' 3「……世界の果て、という人もいれば世界の縮図という人もいますね」
(*゚ー゚)「うん、さっき聞いた」
/ ,' 3「私のような一介の運転手にわかるはずもありません。
    これから行くところにいる人がもしや知っているかもしれませんが」

一連の会話を聞いて僕は考える。
ここの人たちは、自分たちがどこに住んでいるかも知らずに暮らしているというのか。
じゃあ、そんなところにひょっこり現れた僕らは何者なんだろう。

(*゚ー゚)「なんか難しいこと考えてるでしょ」
(´・ω・`)「しぃは不思議じゃないの? ここのこととか、自分のこと」
(*゚ー゚)「んー。不思議だよ。楽しいよね」
(´・ω・`)「……」

車は一時間ほど山道を走り、やがて市街地に出た。
驚いたのは、その規模が半端でなかったこと。
超高層ビルが建ち並び、たくさんの人が道を行き交っている。
まるで首都のように。先ほどの田舎町からはとても考えられない風景だ。

あまりにも差のある二つの町が隣接してるとは。
不思議なもんだ。タイムスリップでもした気分。


16 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:38:39.91 ID:GFhh7KW30
タクシーは建ち並ぶビルの中でも一際大きな「V.I.P.D.C」と記された
オブジェクトのあるビルの中に入った。
地下駐車場の一画に停車すると運転手は車を降り、丁寧にもドアを開けてくれた。

/ ,' 3「あちらのエレベーターから一階に上がり、ロビーにある受付に行ってください」
(*゚ー゚)「はーい。あ、あなたの名前は?」

聞かれた運転手は少し意外そうな顔をした。

/ ,' 3「私の、ですか?」
(*゚ー゚)「うん!」
/ ,' 3「……私は、荒巻といいます」
(*゚ー゚)「ん、荒巻さんね。覚えとくよー」
/ ,' 3「ありがとうございます」
(*゚ー゚)「それじゃあ、荒巻さん。またねー!」

運転手……じゃなくて、荒巻さんはホテルマンみたいに優雅なお辞儀をしてみせた。
困ったな。僕が口を挟むスキはないようだ。
ま、その方が楽で良いけど。


17 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:39:16.49 ID:GFhh7KW30
やたらと豪華なエレベーターに乗り込み一階へ向かう。

(´・ω・`)「ここ、東京かな?」
(*゚ー゚)「どうして?」
(´・ω・`)「東京だったら、どうにかすれば帰れるかもしれない」
(*゚ー゚)「……もー、そーいう小難しい話はしちゃだめだって! 楽しまないと」

いやいや。別に難しくもないし。あまり楽しめないし。
大体、しぃは帰りたくないのかな? 家に。
彼女の場合、楽しければ何でも良いのかな。

受付のお姉さんは僕らを笑顔で迎えてくれ、そして十二階に向かうよう教えてくれた。
さっきの駐車場でも感じたことだけれど、ここには人がほとんどいない。
このエレベーターにも僕としぃしか乗ってないし。
ここはどこかの企業かな。それとも、公的機関?

そんなことを考えているうち、エレベーターは静かに十二階に滑り込んだ。

川 ゚ -゚)「お待ちしていました」

開かれたドアの向こうに、一人の女性が立っていた。
いかにも秘書っぽい風貌。めがねとか似合いそう。

川 ゚ -゚)「どうぞこちらへ」

そういって、高い靴音をたてながら秘書さんは僕らを先導する。
黙ったままついて行くと、そこに大きな扉があった。

秘書さんが扉を開くその先に。
電脳世界が広がっていた。


18 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:40:04.73 ID:GFhh7KW30
まず目についたのが巨大なスクリーン。
それはいくつにも分割され、監視カメラらしきものを通した様々な場所の映像が映し出されていた。
しぃが「おー」とか妙な声をあげている。
その他にもコンピュターとか、飛行機のコックピットにありそうな装置とか。

そしてその中に一つの回転式のイスがあり。
そこに、一人の男が座っていた。

( ・∀・)「お待ちしていましたよ」

若年……とはいえ、高校生である僕らよりは年上だろう。
でもそれなりに若い。多分。二十代前半じゃないだろうか。

( ・∀・)「私はモララーといいます」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「いきなりのことで、さぞ驚かれていることでしょうね」

楽しげに笑うモララーとかいう男。気味悪いな。

(*゚ー゚)「驚いてるっていうより、楽しいですけどねー」

こっちも相当気味が悪い。

( ・∀・)「楽しんでいただければ何より……さて、少し説明しましょうか」


20 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:40:48.14 ID:GFhh7KW30

( ・∀・)「まぁ大抵のことはそこのスクリーンを見ていただければ
      理解していただけると思うのですがね」

言われたとおり、僕らはスクリーンを凝視する。
道路を人が行き交う映像……これはまぁ、普通か。
畑を耕す人の映像……あれ、これってさっき会ったクワと稲穂の人じゃないか?
あ、こっちの映像では誰かと誰かが喧嘩してる……場所は路地裏っぽいな。

(´・ω・`)「いろんな所にカメラしかけてるんですね」
(*゚ー゚)「お、牛だ……ふむふむ、ホルスタインかな?」
( ・∀・)「わかりますかね?」

( ・∀・)「ここには地球にあるあらゆる景色が映し出されています……
     しかし、この映像自体は地球のものではない」
(*゚ー゚)「へ?」
( ・∀・)「この世界にはあなた方が住んでいた地球のありとあらゆる環境が
     地区ごとに再現されています。たとえばここは都市地区。
      あなたがたが出現したのは田舎地区……というようにね。まぁ全て俗称ですが」

(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「ここが世界の縮図といわれる由縁でもありますね」
(´・ω・`)「なぜこんな世界が存在してるんですか?」
( ・∀・)「さて、なんででしょうね」

ひょうきんな素振りをするモララー……さん。
僕は改めてモニターを眺めた。
さっきの喧嘩に軍配が上がったようだ。一人が、もう一人に唾を吐いて立ち去っていく。


21 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:41:51.59 ID:GFhh7KW30

( ・∀・)「存在の理由など知りません。それは地球も同じでしょう? 
      大切なのは私たちがそこに住んでいるということです」
(´・ω・`)「じゃ、じゃあ僕らはなぜここに……!」
( ・∀・)「さあ、そこです。基本的にこの世界では人口は増減しないはずなのですが」
(*゚ー゚)「え、子供が産まれたりとかしないの?」

( ・∀・)「そのあたりのことは、おいおい知ることとなるでしょう。
     ともかくあなたがたがイレギュラーな存在であることは確かです」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「一つ考えられるのは時空移動ですね……
      何らかの原因により、あなた方はこちらの世界に迷い込んできてしまった。
      違いますか?」
(´・ω・`)「……そういわれても、ここに来たあたりの記憶はさっぱり消えてるから……」
( ・∀・)「それは残念」

(*゚ー゚)「ん? ちょっと待ってよ」

どこか名探偵風なしぃ。
顎に手をあてて、何かを考え込んでいる。

(*゚ー゚)「なんであなたは私たちの世界のことを知ってるの? 
     私たちはこっちの世界のことを知らなかったのに」
( ・∀・)「……ふむ」

モララーさんがまた笑顔を浮かべた。
たださっきとはちょっと違い、人を嘲る卑屈な笑顔だ。見てて、ちょっと気持ち悪い。


22 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:42:27.49 ID:GFhh7KW30

( ・∀・)「……この世界を、誰かが世界の果てと表現していませんでしたか?」
(*゚ー゚)「ああ。そういえば」
( ・∀・)「つまりそういうことです。中心をいるものは果てを知らない。
     しかし果てにいるものは中心を知っているのですよ……嫉妬の念を覚えつつ、ね」
(´・ω・`)「嫉妬って……」
( ・∀・)「話は終わりです。クー」
川 ゚ -゚)「はい」

後ろからの声に僕は身震いした。
この人、さっきからずっと背後にいたのか。

( ・∀・)「この人を件の場所に」


川 ゚ -゚)「了解しました……さあ、こちらへ」


(´・ω・`)「ま、待ってください! 僕らは元の世界に帰れるんですか?」


( ・∀・)「……さっきも言いましたが、あなたたちはイレギュラーな存在だ。
      善処しますが、帰れる可能性は僅少と考えて貰って間違いないでしょう」

(´・ω・`)「そんな……」


23 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:43:26.07 ID:GFhh7KW30
とりあえず、絶望を再確認することが出来た。
なんというか、今まで帰るとか口には出しても本気で考えてなかったんだろう。
でも、ああもはっきりと「帰れない」と告げられてしまえば、逆にホームシックになってしまった。
……さて、どうしたらいいんだろう。どうしようもないのかな。

川 ゚ -゚)「こちらにお乗りください」
(*゚ー゚)「あ、荒巻さん!」
/ ,' 3「……どうも」

連れてこられたのは地下駐車場。
そこにはさっきと同じタクシーと、さっきと同じ荒巻さんが待機していた。

(´・ω・`)「これからどこに向かうんですか?」
川 ゚ -゚)「……あなたたちのための住居です」
(*゚ー゚)「うーん、手回しいいねー」

そんなしぃの、感嘆のつぶやきを皮肉と受け取ったのか。
クーさんは顔を背けて冷たく言った。

川 ゚ -゚)「お乗りください」


24 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:44:37.11 ID:GFhh7KW30

川 ゚ -゚)「ここの708号室です」

タクシーに揺られ30分。
着いた場所には高層マンションがそびえていた。
ちょっと豪華っぽいな、外見的に。
タクシーから降りてマンションに歩いて入るとき、しぃは何度も荒巻に手を振っていた。
……そういえばタクシーの中でも結構しゃべっていたなあ。
もしかして懐いた……いや、猫じゃあるまいし。

部屋の前で、クーさんから鍵が手渡された。

川 ゚ -゚)「……あまり外を出歩かないようにしてください。
      必要なものは全て部屋に用意してあります。食料は毎日配給しますので」 (´・ω・`)「はあ」
川 ゚ -゚)「行動が全てカメラによって監視されていることをお忘れなく。
      あなたたちの帰る方法が見つかれば、こちらから連絡しますので」 (*゚ー゚)「あの!」
川 ゚ -゚)「……はい?」
(*゚ー゚)「鉛筆とスケッチブックはありますか?」
川 ゚ -゚)「と、いいますと?」
(*゚ー゚)「絵本描きたいんですけど!」
川 ゚ -゚)「……早急に手配します」


25 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:45:31.93 ID:GFhh7KW30
刺々しい声でクーさんはそう告げると、くるりと踵を返した。
僕らは二人して立ちつくす。
そこで、重大な問題に気づいたのだ。

(´・ω・`)「えーっと、これはつまり同居しろってこと……なのかな?」
(*゚ー゚)「おお。男と女、同じ屋根の下に二人きりってやつだね」
(´・ω・`)「……」

なんで平然、というかちょっと張り切っちゃってるのかな。
僕らの関係は所詮幼馴染み以上友達未満だったはずだけど。

室内は結構広かった。具体的に言えば3LDK。
都心だし、家賃も高いんだろうなあ……とか心配してみる。
そういえばお金の心配はしなくていいのかな。自慢じゃないけど、無一文だ。

(´・ω・`)「……どうする?」

一通り見物し終えてから、僕はしぃに尋ねてみる。

(*゚ー゚)「うーん。とりあえずスケッチブックと鉛筆が届くまで待っとく」
(´・ω・`)「何かいいアイデアでも?」
(*゚ー゚)「まーねー」


26 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:46:28.79 ID:GFhh7KW30
そういうしぃの顔は信じたくないぐらい晴れやかだ。
多分僕が何を進言しても、意向を変えようとはしないだろうな。
しぃにしてみれば、こういう異世界の体験は貴重で、手放したくないものなのかも知れない。
僕は一刻も早く帰りたいのだけれど。
とりあえず外には監視カメラが設置されているから、無闇に外へ行く気にもなれない。
それに出て行ったところで脱出の策があるわけでもないし。

やがてスケッチブックと食料が届いた。
クーさんが直接持ってきてくれたみたい。部下とか使わないのかな。
しぃが熱心に絵を描き始めたもんだから。
僕はその完成を、テレビを見ながら待ちつつ、やたら疲労した精神を休息させることにした。


31 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:57:43.61 ID:GFhh7KW30
第二話 夜のアンドロイド


ひょんなことから、うさぎと亀が競走することになりました。
「ゴールはあの山の上だ」「いいとも」
よーい、どん
うさぎはいつものように一目散に駆け出しましたが、亀はのろのろと歩き始めました。
そのおかげで、亀はうさぎにずいぶん引き離されてしまいました。
しばらくしてうさぎが後ろを振り返ると、そこに亀の姿は見えませんでした。
「なんだ、やっぱりちっとも勝負にならないじゃないか。さて、一休みしよう」
うさぎは一つ大あくび。少し眠たかったのでしょうか、横になるとすぐ、
すやすやと寝息をたてはじめたのです。
亀はやすまず歩き続け、とうとううさぎに追いついてしまいました。
亀は気づかず眠りこけているうさぎの横を通り過ぎるときに一言、
「やっぱり、あの睡眠薬が効いたんだな」
そして、にっこり笑いながらゴールを目指しましたとさ。

おしまい。


32 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:58:35.17 ID:GFhh7KW30

(*゚ー゚)「どう、どう?」
(´・ω・`)「……」

言いたいことはいっぱいある。
またインスパイヤだし。
ここでの体験が全く活かされてないし。
というか、オチを言いたかっただけじゃないのかと。

(*゚ー゚)「でも一つ解けざるミステリーがあるんだよね」
(´・ω・`)「何?」
(*゚ー゚)「亀はどうやってうさぎに毒を盛ったのか」
(´・ω・`)「……もう、いいよ」

どうでも。

まぁでも、可愛い亀とうさぎの絵があるからいいか。


33 名前:友達と初詣[] 投稿日:2006/12/27(水) 23:59:27.79 ID:GFhh7KW30
気づくと外は暗くなっていた。
壁に掛かっている時計を見る。午後八時二十二分。
さっきからニュースを見ようとチャンネルを回してるんだけど、
一向にそれらしいものが映し出されない。
時間帯が悪いのかな。ドラマとバラエティばっかり。

(*゚ー゚)「んー、疲れたな」
(´・ω・`)「どうする? もう寝るの?」
(*゚ー゚)「むーむむむ。先に寝るとしょぼんくんに襲われそうだからやめとく」

さらりと言うな。

(*゚ー゚)「まだお風呂にも入ってないしね。それに夜の町に繰り出したい」
(´・ω・`)「……僕らお金も持ってないし、クーさんも外出するなって」
(*゚ー゚)「『あまり』でしょ? ちょっとぐらいなら大丈夫、大丈夫!」

まったくマイペースだ。利己的ともいう。
でもまぁ、テレビ見るのもそろそろ飽きてきたし、いいかな。

(´・ω・`)「晩ご飯どうするの?」
(*゚ー゚)「帰ってから食べよー。鍵貸しといて、しょぼんくんじゃ心配」
(´・ω・`)「はいはい」


35 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:01:21.51 ID:xwkBscfV0
しぃに出会ったのは確か十年ほど前。小学校に入学した時のこと。
そのころから、まぁなんというか変な子だとは思っていた。
男子ともよく遊ぶし、ジェンダーフリーを形容するような女の子。
そしてなぜか僕は彼女と馬が合い、高校までの付き合いになっている。
まぁだからといって異世界にまで運命を共にする仲になった覚えはない。
ああ、早く帰りたい……




(*゚ー゚)「うわ、星が見えない」

外に出て、しぃは開口一番そう言った。

(´・ω・`)「そりゃそうでしょ。都会なんだから」
(*゚ー゚)「んー、そっかあ」
(´・ω・`)「で、どうするの?」
(*゚ー゚)「適当に歩いてみよう! 道、覚えといてね」

そういってスタスタと先に行くしぃ。
街は帰宅する会社員、不眠のちょい悪少年その他もろもろで埋め尽くされていた。
パチンコ屋とかホストクラブとかのネオンサインが眩しい。
こうしてみると、まるっきり現実世界だ。
もしや自分たちはだまされているだけなんじゃないだろうか……なんて、ただの憶測だけど。


36 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:03:02.97 ID:xwkBscfV0
そんな時。
遠くの方から喧噪が聞こえてきた。
それはだんだんと近づいてきて……僕らに視認できるような距離になる。

一人の少年が猛ダッシュしていた。
……いや、猛ダッシュというか、人外とも思える速さだ。

(*゚ー゚)「おー、おー……」
(´・ω・`)「ちょ、しぃ! 避けないと」

僕の叫声は、少し遅かった。
どん、と音がしたような気がして、しぃが横に吹き飛んだ。

(´・ω・`)「しぃ!」
( ^ω^)「あ……」

さすがの少年も立ち止まった。
そして地面に倒れたしぃを心配そうに覗き込んでいる。

(*゚ー゚)「あいたたた……」
( ^ω^)「ご、ごめンだオ、大丈夫かオ?」

少年のしゃべり方に、僕は少し違和感を覚えた。
機械的というか、電子的というか。


38 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:04:06.55 ID:xwkBscfV0

(*゚ー゚)「あー、食パンくわえてないね」
(´・ω・`)「何いってんの」
( ^ω^)「あ、あの」
(*゚ー゚)「あ、うん。大丈夫だよ」
( ^ω^)「よ、よカったオ……それジャ!」

謝罪の言葉もそこそこに、少年はまた走り出した。
速いなあ……エンジンでもついてるんじゃないだろうか。

(´・ω・`)「大丈夫? 立てる?」
(*゚ー゚)「おっけーおっけー」

おしりをぽんぽんと手で払いながらしぃは笑顔を見せる。

(*゚ー゚)「それにしてもなんだったんだろうね」
(´・ω・`)「うーん……」

それを歩行者天国のど真ん中で思案していたのが間違いだった。

ξ゚听)ξ「わー、ちょ、ちょっとどいて!」
(*゚ー゚)「へ?」

今度はぶつか……らなかった。
相手の、工事現場にいそうな作業服姿の女性がすんでの所で急ブレーキをかけてくれたからだ。
肩で息をしている女性も、さっきの少年どうよう僕らと同じぐらいの年齢っぽい。


39 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:05:21.41 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「こ、このあたりでブーン見かけなかった?」
(*゚ー゚)「ぶーん?」
ξ゚听)ξ「あ、ええと、やたら足が速くて、ちょっと変な顔のやつ!」
(´・ω・`)「それならさっき、向こうの方に行っちゃいましたけど」
ξ゚听)ξ「あ、そ、そう。ありがと、それじゃ!」

その女性は僕が指さした方向に、一目散に駆けていく。
やがてその姿は、人混みにまぎれて見えなくなってしまった。

(*゚ー゚)「……厄日かな」
(´・ω・`)「かもしれない。帰ろうか?」
(*゚ー゚)「そだね」

さすがのしぃも意気消沈したらしい。
僕らは連れ立って、元のマンションに戻ることにした。
だが、厄災はここで終わらなかったのである。


41 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:06:38.30 ID:xwkBscfV0
マンションのエレベーターから降りたとき、女性の怒鳴り声が耳を劈いた。
……どう考えてもあの女性だ。

(´・ω・`)「……しぃ、鍵閉めた?」
(*゚ー゚)「うーん、閉めたといえば閉めたし、閉めてないといえば閉めてないね」
(´・ω・`)「閉めてないんだね」
(*゚ー゚)「ごめんなさい」

さっさと行かないと事態が大きくなってしまいそうだ。
僕は歩調を早めて708号室に向かった。

ξ゚听)ξ「ほんとまずいって! ここは人の家でしょ!」
( ^ω^)「ぼ、僕ハ戻ろうとしてルんだお! お、おーバーヒート……」
ξ゚听)ξ「あー、だ、大丈夫!?」

開いたままのドアの向こうから、そんな声が聞こえてくる。
意味は解せないけど、結構まずい状況らしい。


42 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:08:43.26 ID:xwkBscfV0
(´・ω・`)「大丈夫ですか?」

玄関に、ブーンなる少年が倒れ込んでいた。
その横で、さっきの女性があわあわと挙動不審な行動を取っている。

ξ゚听)ξ「あ、ご、ごめんなさい。というか、その、あーもう、おしまいだ……」

失意に浸る女性……とはいえ、こちらには何がおしまいなのかもわからない。

(*゚ー゚)「この人、どうかしちゃったの?」
ξ゚听)ξ「まーね……」
(´・ω・`)「うーん、この世界にはまだまだ不思議なことが多いな」

何気なくそう呟いたとき、女性がパッと顔をあげた。
ちょっと希望を含ませて。

ξ゚听)ξ「この世界のこと、知らないの?」
(´・ω・`)「ええ、今日来たばかりですから」
ξ゚听)ξ「じゃあ向こうの世界の?」
(´・ω・`)「はい」
ξ゚听)ξ「……よかっ……た」

へなへなとその場にへたり込む女性。
とりあえず僕はドアを閉める。入居早々ご近所トラブルなんてたまったもんじゃない。


45 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:09:48.91 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「……じゃあ、あんたたちが運命の……」
(´・ω・`)「はい?」
ξ゚听)ξ「いや、なんでも……それにしてもどうしよっかな。絶対見つかっちゃっただろうし」
( ^ω^)「大丈ブ……」

軋んだ音をたてながら、ブーンが声を出した。

( ^ω^)「監視かめらノナイ場所ヲ通過シテキタノデ……」

よくよく考えればこの世界だって広いはず。
そんな大量の監視カメラを設置しても管理しきれないんじゃないだろうか。
なんだ、外出しても案外大丈夫そうだな。

ξ゚听)ξ「……妙なところで器用よね。もういいから、休んで」
(  ω )「しゃっとだうん……ピー……ガガ……」
(*゚ー゚)「なんなの、この人」
ξ゚听)ξ「こいつはね……アンドロイドなの」
(´・ω・`)「アンドロイド……」

よいしょ、と女性が立ち上がり、僕らに向かって礼をする。

ξ゚听)ξ「いきなりごめんなさい。私の名前はツンって言います。詳しい話がしたいんだけど……」
(´・ω・`)「まずこの人……アンドロイドを向こうに運びましょう」
ξ゚听)ξ「あ、うん」


46 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:11:19.15 ID:xwkBscfV0
見た目の割に意外と重いアンドロイド(?)ブーンをリビングに運び、ソファに寝かせた。
その上で僕らはダイニングにあるイスに座り込む。

ξ゚听)ξ「ええとね。さっきも言ったけどあいつはアンドロイド」
(*゚ー゚)「あなたが作ったんですか?」
ξ゚听)ξ「ま、まあね」
(*゚ー゚)「すごーい!」
ξ゚听)ξ「そんなことないわよ。原型はできてるから、後は言語プログラムとか
      意識プログラムをいじるだけ」

うーん、なんかいきなりSFじみてきたなあ。
異常感が増すというか。
そもそも、アンドロイドなんて僕らの世界にはいなかったし。

ξ゚听)ξ「……なんだけどね、語尾に「お」とかつけちゃってるし、
      おまけに今日は暴走しちゃったし……どこかに不備があったんだよね」
(´・ω・`)「直るんですか?」
ξ゚听)ξ「非常プログラムも作動してるっぽいから多分……。
      持ち合わせの部品も使えば、動けるまでには回復するはず」
(*゚ー゚)「そっかー。よかった」


47 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:12:51.96 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「それで……その、お願いがあるんだけど」
(´・ω・`)「はい?」
ξ゚听)ξ「こいつ……直るまで動かないんだよね」
(´・ω・`)「そうですね」
ξ゚听)ξ「だから……」
(*゚ー゚)「ここに置かせてもらえませんか、と」

つっけんどんなしぃ。
ツンさんは若干顔を赤らめて、頷く。
僕としぃは顔を見合わせた。

(´・ω・`)「どうする?」
(*゚ー゚)「ま、私はいいよー。楽しそうだし……っと、ツンさん」
ξ゚听)ξ「な、何?」
(*゚ー゚)「私の所、たまにお偉いさんっぽい人が来るんだけど、見つかるとまずかったりする?」

しぃの言ってるのはクーさんのことだろう。
ツンさんは沈黙してしまう。
そわそわとブーンを見やったりして、落ち着かない。
図星だったのだろうか。

ξ゚听)ξ「うん、ええと……まあね」
(*゚ー゚)「隠せるかな?」
(´・ω・`)「……室内まで見て回らないだろうから、二、三日ぐらいなら大丈夫だと思います」
ξ゚听)ξ「うん、急いで修理するから……ありがとう」
(*゚ー゚)「いえいえ、どういたしまして」

ということは必然的にこの部屋には四人が同居する状態になるのか。
今更ながら、部屋が広めでよかったと思う。狭苦しい思いをしなくてすむだろうし。


48 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:14:28.02 ID:xwkBscfV0

(*゚ー゚)「この世界ではアンドロイドは普通に存在してるんですか?」
ξ゚听)ξ「いや……そういうわけじゃ、ないんだけど」
(*゚ー゚)「じゃあ、この子はなんのために生まれたの?」
ξ゚听)ξ「……」

ツンさんは、意味ありげに俯いてしまった。

ξ゚听)ξ「ごめん、それは言えない」
(*゚ー゚)「あ、そうなの」

なんとなく気まずい雰囲気が流れる。
ツンさんにとっては聞かれたくないことだったのだろう。
場を和ませようと、僕は少し声を大きくして、言った。

(´・ω・`)「ええっと、それじゃあ疲れたでしょうし、お風呂にでも入りましょうか」

女性二人の冷たい視線を受け、僕は自分の発言が相当まずかったことに気づいた。
時、すでに遅く。
まぁ別世界でもラブコメみたいな展開は期待してはいけないということだ。うん。

その日、僕はベッドで寝ることなく、アンドロイドのいるリビングで寝ることになった。
僕が本来寝るべきベッドはツンさんが使うことになった。
システムをシャットダウンした無機質物体の横で寝るのはなかなか気味が悪い……
当人やツンさんには悪いけど。


49 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:15:37.00 ID:xwkBscfV0
そして誰が攻めてくるわけでもなく、平穏なままに朝はやってきた。
僕が目を覚ますと、すでにツンさんは隣でブーンを分解していて……
なんだかよくわからない部品とかがいっぱい散らばっていた。

(´・ω-`)「あ、ツンさん」
ξ゚听)ξ「おはよ」
(´・ω・`)「もう起きてたんですか?」
ξ゚听)ξ「三時間ぐらい前からずっとやってたけど、あんた一向に起きなかったわよ」
(´・ω・`)「あ、ごめんなさい」
ξ゚听)ξ「いや、いいんだけどね」

寝ぼけ眼で僕はブーンを見つめる。
腹部からとびでている部品を除けば、どこからどうみてもただの人間だ。
こうなるとやはり「なぜつくられたのか」がどうしても疑問になってしまう。

ξ゚听)ξ「あんた、どうしてここに来たの?」
(´・ω・`)「わからないんです。気がついたらこっちに来ていたっていうか」
ξ゚听)ξ「ふーん」
(´・ω・`)「あの、ツンさんも僕たちの世界を知ってるんですか?」
ξ゚听)ξ「まあね、っていうかここの人はみんな知ってるよ。口に出さないだけで」
(´・ω・`)「……」

ということは、この人も嫉妬の念を抱いているのだろうか。


50 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:16:54.42 ID:xwkBscfV0
会話はそこで途絶えてしまった。ただ機械の音だけが響いている。
手持ち無沙汰になって僕はテレビをつけた。

……朝からドラマの再放送やってるし。
ニュースはないのかな、本当に。

映し出されるイケメンっぽい俳優と美人らしい女優をボーッと見る。
どうやら韓国ドラマらしい。こっちにも韓流の波は押し寄せているのか。どうでもいいけど。

やがてCMが流れる。
ゴールデンタイムに放送されるバラエティの予告……って、あれ、ちょっと待てよ。

(´・ω・`)「この番組、昨日の夜に見なかったっけ……」

いや、確かに見た。
あの場面を僕は確かに昨日の夜……

(´・ω・`)「どうなってるんだ……?」
ξ゚听)ξ「そっか、アンタは知らないんだね」
(´・ω・`)「え……?」
ξ゚听)ξ「教えて良いかわからないから詳しくは教えられないけど」

ξ゚听)ξ「この世界は再構成で成立しているの」
(´・ω・`)「再構成……」


51 名前:毘沙門(びしゃもん)[] 投稿日:2006/12/28(木) 00:18:27.46 ID:xwkBscfV0
そのとき、

(*゚ー゚)「あさ早いねー、二人とも……」

ふあぁ、と大あくびをしながらしぃが現れた。
その姿がパジャマ姿なのを見て、自分も着替えるのを失念していたことに気づく。

ξ゚听)ξ「早く着替えてくれば」

ツンさんが顔を背けながら呟いた。
僕は結局再構成の意味を知ることなく。
ただ思考に沈みながら着替えに向かうこととなった。


64 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:13:33.05 ID:xwkBscfV0
第三話 テクノポリスに続く。

それからというもの、僕としぃは隠蔽工作に奔走することとなった。
玄関からはリビングまで見渡すことが出来ないのでクーさんが来ても大丈夫。
問題は部屋に監視カメラが付いているかも知れない、ということなんだけど、
それも僕としぃで調査した限りは大丈夫だった。
あとは食料。故障中のアンドロイドであるブーンはともかくとしてツンさんは人間だ。
何か食べないとどうにもならない。
そんなわけで、二人分の食料を三人でわけることになった。

ツンさんは何度も

ξ゚听)ξ「ごめんね」

という。しかしそのたびにしぃは

(*゚ー゚)「楽しいからいーんだよー」

と返事していた。
大らかなヤツだ。見習うべきかも知れない。

そして、二日という期間はあっという間に過ぎ去った。

・・・

・・





65 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:14:31.41 ID:xwkBscfV0
ひょんなことから亀を助けたうらしまたろう。
その亀につれられ、海の奥底にある竜宮城に向かいました。
そこでは姫をはじめとする多くの綺麗な女人が彼を迎え、毎日のように宴が繰り広げられたのである。
すっかり居心地良くなってしまったうらしまたろうは姫たちの迷惑も考えずに、実に一年近く暮らしてしまったのだ。
ある日、うらしまは言った。
「そろそろ、おっかあが心配するべ」
姫は帰宅しようとする彼に感謝と怨念を込めた玉手箱を手渡した。
陸に帰ったうらしま。そこで彼は件の玉手箱を開いたのである。
するとびっくり、白い煙がモクモクとわきだして……うらしまは十万年近く年をとってしまったのだ!
「……なんでワシは十万年も年を取ったのに生きているんだ?」
「……そうか、我が輩は悪魔だったのか」
そう、後のデーモン小暮閣下である。

(*゚ー゚)「二日間かけた力作!」
(´・ω・`)「とりあえず、まともなものを目指そうよ」
(*゚ー゚)「むーむむむ……」


66 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:15:08.67 ID:xwkBscfV0

( ^ω^)「しすてむ正常機能中。身体的不具合ハ発見サレナイオ」
ξ゚听)ξ「……よし、完璧」
(*゚ー゚)「できたのー?」
ξ゚听)ξ「うん。でもしゃべり方が完全に機械化しちゃったけど」

立ち上がり、元気に四肢を動かすブーンを見てツンさんは満足そうだ。
僕も一応胸をなで下ろす。

( ^ω^)「つん、コレカラドウスルンダオ?」
ξ゚听)ξ「一度テクノポリスに戻りましょう。そこであなたの身体を完全にしてあげるから」
(*゚ー゚)「てくのぽりす?」

聞き慣れない単語をしぃが反復した。

ξ゚听)ξ「高度技術集積地区、通称テクノポリス。
      アンドロイドの部品とかが製造されている場所よ」
( ^ω^)「デモ、つん。ソレハ危険ガ伴ッテシマウオ」
ξ゚听)ξ「あんたは黙ってなさい」
(*゚ー゚)「……ふーん、てくのぽりす、てくのぽりすかあ……」

しぃの目が興味の色に染まる。
……まずい、まずい兆候だ。

(*゚ー゚)「ねえ、しょぼんくん」
(´・ω・`)「……何?」
(*゚ー゚)「私たちも一緒に行こうよ、テクノポリスへ!」


67 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:15:59.25 ID:xwkBscfV0
やっぱりだ。しぃの場合考えていることが面白いほど顔に出る。
……そしてそれがわかったところで喜ばしくも何ともない。

(´・ω・`)「ダメだよ。僕たちは一応監視されてる身なんだから」
(*゚ー゚)「むーむむむ……」
(´・ω・`)「見つかったら多分タダじゃすまないよ」
(*゚ー゚)「『多分』でしょ? だったら大丈夫!」
(´・ω・`)「いやいやいや」

こうなったしぃが押しても動かないことぐらい承知だ。
しかし、今回ばかりは僕も引き下がるわけにはいかない。
監視といって連想されるのは命の危険なのだから。

頑なな僕に対し、しぃは哀れむような表情を見せた。

(*゚ー゚)「いい、しょぼんくん?」
(´・ω・`)「なに」
(*゚ー゚)「もしも私たちを本当に監視したいのなら、こんなマンションに閉じこめると思う?」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「監視カメラもザルほどの効果もないし、マンションにも警備員の一人も立っていない。
     無防備……それはつまり脱走おっけーってことなんだよ!」
(´・ω・`)「そうかなあ……」

実のところ、そこは不思議に思っていたことだ。
本当に監視する雰囲気もない。
ただ僕らにこの世界での生活を送らせているだけのように見える。
クーさんも食料の受け渡しとか、適当だし。


68 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:16:37.45 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「……っていうか、ツンさん」
ξ゚听)ξ「え、何?」
(*゚ー゚)「この……なんだっけ、都市地区? に来た目的はなんだったの?」
ξ゚听)ξ「ああ、ええっと……」

言葉を紡ぎかけるツンさん。
でのその口を開いたままブーンを見やり……閉ざしてしまった。

ξ゚听)ξ「ま、いろいろあったんだけど、もういいや。それよりテクノポリスに戻る方が先決」
( ^ω^)「つん……」
(*゚ー゚)「女は一つぐらい秘密を持ってるもんだって誰かが言ってたけど、ツンさんの場合持ちすぎだよね」
ξ゚听)ξ「そうかも……ね」

(´・ω・`)「テクノポリスってどこにあるんですか?」
ξ゚听)ξ「えーっと、ここから車で一時間ぐらいのところなんだけど……って、そうか。
      移動手段がないや」
(´・ω・`)「ここにはどうやって?」
ξ゚听)ξ「……この世界には一人だけ、タクシードライバーがいるのよ」
(*゚ー゚)「それってもしかして荒巻さん?」

しぃの嬉々とした問いにツンさんは首を縦に振った。
それにしても、一人だけっていうのはどういうことだ?
……そういえば、昨日は他のタクシーを見かけなかったな。市内バスみたいなのは走ってたけど。


69 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:17:15.20 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「今思えばどうしてあの時テクノポリスにタクシーがあったのかわかんないんだけど……困ったな。
      今日も都合良く来てくれるわけないし」
( ^ω^)「ココカラてくのぽりすマデ、徒歩ニ換算スルト……計算不能」
ξ゚听)ξ「あんた算数苦手なんだから黙ってなさい」
(*゚ー゚)「とりあえず外に出てみようよ! 何かわかるかもしれない」

一連の流れは僕の不安感を増長させるだけに終わった。
しぃのヤケクソとも取れる一言にツンは賛同し、とりあえず僕らは外出することとなった。
思えば、何を期待した上での行動だったんだろう。


70 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:17:58.59 ID:xwkBscfV0
マンションの外に出たとき、僕らは唖然とすることになった。
オレンジ色の車体、菱形のオブジェクト。
そこに荒巻さんが気をつけの姿勢で待機していたのだ。

/ ,' 3「お待ちしていました」
(*゚ー゚)「おお、荒巻さん!」
ξ゚听)ξ「お待ちしていましたって……?」
/ ,' 3「テクノポリスに行かれるのでしょう?」

僕ら(しぃ以外)は立ちつくした、というか凍りついた。
ツンさんがテクノポリスに行くことを決断したのはつい十数分前のことだ。
なぜ、荒巻さんはそんな事実を知っているのだろう……。
ツンさんも同じ疑問を持ったらしく、

ξ゚听)ξ「荒巻さん、なんでそのことを?」
/ ,' 3「……それよりも今は彼を助けるのでしょう」

手で示されたブーンは首をかしげる。
ツンさんは黙って荒巻さんとしばらく対峙していたけれど、やがてふう、と溜息をついた。

/ ,' 3「お互い、秘密は秘密のままにしておきたいですね」
ξ゚听)ξ「そうね……それで、連れて行ってくれるの?」
/ ,' 3「はい」
ξ゚听)ξ「ありがと」
(*゚ー゚)「さ、私たちも乗るよー」
(´・ω・`)「……ううん」

正直、僕のなかでは恐怖心よりも好奇心が勝って僕を先に進めようとしていた。
だからしぃの言葉に一瞬悩むフリをして……承諾したのである。


71 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:18:22.77 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「せーまーいー。ブーンのせいよ!」
( ^ω^)「ボ、僕ハ肥満体ジャナイオ!」
(*゚ー゚)「あー、つぶれるぅ……おもちみたいになる……」

そもそも小型タクシーだからか、後部座席は三人では少し厳しいらしい。
そんな中、僕は悠々と助手席に腰を下ろした。

都市地区を抜けてタクシーは無人の道路をひた走る。
辺りは一面草原が広がっていた。道の駅とか、そういう類のものも一切見当たらない。
テレビでしか見たことのないアフリカのサバンナのような風景。
遠くの方には、てっぺんを白く化粧した山の群れが見えている。

/ ,' 3「このあたりは放牧地区です。もうすぐ牛の一行が通過するはずですが」
(´・ω・`)「環境破壊とか、ないんですか? 都市近郊にあるのに」
/ ,' 3「……再構成の話、聞いてないのですか」
(´・ω・`)「聞きそびれたんです」
/ ,' 3「なるほど……少し長くなりますが、お聞きになりますか?」


72 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:19:37.12 ID:xwkBscfV0

/ ,' 3「この世界には『柘榴』と呼ばれる管理システムがあります。
    『柘榴』は毎日、午前0時にこの世界の再構成を行うのです。
    それにより世界は一度崩壊し、新たに構築されます。
    よって環境破壊が起きても一日でプログラム通り再生するのです。
    再構成は人の記憶にまでも及びます。
    それにより、人々はまた昨日と同じ日を繰り返すのですよ」 (´・ω・`)「?」
/ ,' 3「わかりやすくいえば無限ループです。人々は毎日毎日同じサイクルで生活を行います」

だから、昨日と同じバラエティ番組の予告がなされていたのか。
だから、地区を移動するタクシーなど必要ないのか。人々が同じ生活を繰り返すから。
だから、人口は増えも減りもしないのか。
この世界の人は一日しか知らないのだ。
それを苦痛とも感じない。前日の記憶を持っていないから。
でも……疑問は残る。

(´・ω・`)「僕は、昨日の記憶を持っています」
/ ,' 3「あなた方は異世界から来たイレギュラーですから。それに……」

バックミラーを見やり、押し合いへし合いしている後部座席を眺める荒巻さん。

/ ,' 3「彼女も『柘榴』の影響を受けていないはずです」
(´・ω・`)「……なぜ?」
/ ,' 3「彼女もまた、『柘榴』の参加メンバーだったからですよ」


73 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:20:26.49 ID:xwkBscfV0
/ ,' 3「まあ、テクノポリスに行けばもっと詳しいことがわかります」
(´・ω・`)「特別な場所なんですか?」
/ ,' 3「小王国です」

(´・ω・`)「再構成のことを人々は知っているのですか?」
/ ,' 3「いえ。知っているはずもありません」
(´・ω・`)「なら、なんであなたが?」
/ ,' 3「……秘密です。いいじゃないですか、男が秘密を持っていても」

それっきり、荒巻さんは口を噤んでしまった。
前部はしばらく沈黙に浸ったまま、後部は相変わらず喧噪に包まれながら、タクシーは果て無き道を進んでいく。


74 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:21:23.95 ID:xwkBscfV0
しばらくして、しぃが叫んだ。

(*゚ー゚)「あ、なんかあるよ!」

そう言ってしぃが指さした先に、山が見えた。
その頂上に何かがそびえている……なんだろう、電波塔?

(*゚ー゚)「荒巻さん、あれ何?」
/ ,' 3「……ジャンクエリアですね」
(*゚ー゚)「じゃんく……横文字嫌いだ」
/ ,' 3「放棄地区です。誰からも受け入れられないうち捨てられた地域ですよ」
(*゚ー゚)「漢字も嫌いだー!」

しぃがギャーギャー喚く。そろそろ黙れと思わなくもない。
ちらと後部座席を見てみる。
ツンさんはしぃをみて溜息。
一方、ブーンはその電波塔らしきモノを見つめ、静止していた。

(´・ω・`)「?」
/ ,' 3「主神地区の名を取り戻すのはいつになるのでしょうねえ」

荒巻さんの、嘆きにも似たつぶやきを聞いたのは多分僕だけだ。

やがて、陽光を受けて輝く高い煙突が目に入った。
そこに広がるのは、いくつもの工場群とせわしなく動き回る運搬車両の姿。

/ ,' 3「さあ、あと少しですよ」




76 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/28(木) 12:25:34.71 ID:xwkBscfV0
挿話一

( ´_ゝ`)「……」
(´< _` )「どうした、兄者」
( ´_ゝ`)「俺は、今日ここで誰かに会わなければいけない気がする」

(´< _` )「奇遇だな、俺もだ」
( ´_ゝ`)「……だが、誰も来ないな」

(´< _` )「気のせいだろう。それより、早く行かないと」
( ´_ゝ`)「ああ、そうだな……稲穂、持ってやろうか?」
(´< _` )「いや、これぐらい一人で大丈夫だ」
( ´_ゝ`)「そうか……」

・・・

・・




97 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:07:55.05 ID:xwkBscfV0
第四話 追いついて、追い抜ける?

(*゚ー゚)「ああああああああ!!! しょぼんくん!」
(´・ω・`)「ど、どうしたの」
(*゚ー゚)「スケッチブック忘れた!」
(´・ω・`)「……それは、お気の毒」
(*゚ー゚)「これじゃ絵本描けないよ……」
ちょっとホッとしたという事実をしぃに告げるのはやめておいた。


98 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:08:43.82 ID:xwkBscfV0
荒巻さんの言葉通り、テクノポリスは海岸沿いの小王国だった。
丘の上から見渡したとき、まず目に入ったのは高度技術集積地区らしい工場群。
煙突はあるが煙はでていない。
荒巻さんによると「技術開発の結果」らしい。

その次に目に付いたのはマンションや一軒家といった住宅地だった。
病院もあれば郵便局みたいなところもある。
ただ技術開発されているだけではない。そこに人が住み、生活しているのだ。
都市地区ほどではないが、人通りもそれなりに多い。

/ ,' 3「なぜこんな生活環境になっているかわかりますか?」
(´・ω・`)「……いえ」
/ ,' 3「ここは『柘榴』による再構成の影響を受けていないのですよ。
    ここでは普通の生活サイクルによって月日が流れています。
    そのおかげでアンドロイドの部品を製造、輸出できるわけです。
    食料や衣類などは配給によって賄われていますがね」
(´・ω・`)「配給ですか」
/ ,' 3「といっても、あなた方の世界における戦時中のような悲惨なものではありません。むしろ供給過多と言ってもいいぐらい」


99 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:09:41.04 ID:xwkBscfV0

(*゚ー゚)「ツンさん、てくのぽりすのどこに行くんですか?」
ξ゚听)ξ「……第八倉庫の場所、わかりますか?」
/ ,' 3「ええ」
ξ゚听)ξ「じゃあそこにお願いします」
( ^ω^)「つん、ヤハリヤメタ方ガ……」
ξ゚听)ξ「しつこい! あんたは私の言うとおりにしてればいいのよ!」

(*゚ー゚)「ツンさんすごく献身的、ゾッコンだねー」
ξ゚听)ξ「な、なんでそうなるのよ! こいつは私が作ったんだから直したいのは当たり前でしょ!」

相変わらずギッタンバッタンやってる後部座席。

/ ,' 3「しかし、危険なのは確かでしょうね」
(´・ω・`)「?」
/ ,' 3「ツンさんは『柘榴』から無断で離脱した身です。もし見つかれば……殺されるやも知れません」
(´・ω・`)「殺されるって……」
/ ,' 3「『柘榴』は世界の中枢ですから。そこに関わる者はそれなりの拘束を覚悟しなければならないのですよ」

お偉いさんに見つかりたくない……しぃの助言は正確だったのか。
背筋に寒気が走る。これは、ちょっと危険じゃないのか……。

/ ,' 3「あなたにも、余計な火の粉がふりかからないよう祈ります」

そんな荒巻さんの言葉は僕の不安を助長させるに過ぎない。


100 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:10:32.57 ID:xwkBscfV0
海の方へ進むタクシーはやがて倉庫街に進入した。
壁の綺麗具合などから見て、まだ廃れているわけではなさそうだが無人である。
そしてその中で静かに、タクシーは停車した。

/ ,' 3「到着しました」
ξ゚听)ξ「あ、ありがとうございました」
(*゚ー゚)「お金払わなくていいのー?」
/ ,' 3「『柘榴』やテクノポリスには通貨の概念はありませんから……お代は結構ですよ」
ξ゚听)ξ「……」

僕たちをおろしたタクシーはどこへともなく走り去っていった。
それを見送ったあと、ツンさんは背後にそびえる一つの倉庫に振り返る。
巨大な鉄扉によって中を窺い知ることは出来ない。


101 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:11:05.67 ID:xwkBscfV0
ξ゚听)ξ「……ねえ、アンタたち」
(´・ω・`)「は、はい?」
ξ゚听)ξ「一緒に来るつもり?」
(*゚ー゚)「当然です」

間髪入れずにしぃが答えたので、僕は閉口せざるを得なくなる。
ツンさんはそんな彼女を見て……細く長く息を吐いた。

ξ゚听)ξ「知らないわよ」
(*゚ー゚)「楽しければいーんですよー」
ξ゚听)ξ「……ばかじゃないの」

ツンさんの声は少しも冗談めいていなかった。


102 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:11:56.66 ID:xwkBscfV0
(-_-)「やあ、ツン……って、今日はずいぶん大勢だね」

鉄扉の向こうには想像以上の光景が広がっていた。
いくつも、マネキンのように並べられたアンドロイド。
その足下に、無造作に散らばっている用途不明の機械部品。
鉄の海の中に一つ机があり、設置されているコンピュータのキーボードを叩く男の人がいた。

ξ゚听)ξ「……こんにちは、ヒッキー先生」
(-_-)「そっちにいる人もアンドロイド?」
ξ゚听)ξ「ち、違いますよ」
(-_-)「それは残念……で、今日は何の用?」

あれ、僕たちに対する詮索はそれだけなのか。
まぁテクノポリスでは僕らは珍しい人間ではないのだろうけど、それにしても反応が薄い。
今の会話から考えるに、この人はマッドサイエンティストってやつだな、多分。
人間には興味ないってヤツ。


103 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:12:44.12 ID:xwkBscfV0

ξ゚听)ξ「ブーンの調子がおかしくて……またココを借りてもいいですか?」
(-_-)「いいよー。適当に部品持っていきなー」

そんなことを言ってる間もヒッキー先生はキーボードを叩く手を休めない。
ツンさんはそんな彼に一度礼を言うと、慎重に機械の海へ足を踏み入れた。

(*゚ー゚)「あの人、不思議だねえ」

不思議人間しぃが呟く。

(*゚ー゚)「なんでここにはこんなに部品があるんだろう」
( ^ω^)「アノ人ハあんどろいどノ歴史ニ偉大ナ功績ヲ残シタンダオ
       ダカラ、特別待遇ヲサレテイルンダオ」
(*゚ー゚)「へー、若そうなのに」
(´・ω・`)「特別待遇か……そういうのをしてくれる組織があるの?」
( ^ω^)「ココニ限ッテ政府ガアルミタイダオ」

なるほど。やはり普通の生活をしている限り統率する組織があるというわけか。
やがてツンさんがブーンを呼び、僕らは二人きりになってしまった。


104 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:14:07.28 ID:xwkBscfV0

(*゚ー゚)「……さて」
(´・ω・`)「どうしようか」
(*゚ー゚)「帰る?」
(´・ω・`)「いやいやいや」
(-_-)「君たちはあれだね、例のイレギュラーだよね?」

急にヒッキー先生が声をかけてきた。
にしても、僕らって意外と有名人になっちゃってたりするのかな。

(-_-)「知っているかい?」
(´・ω・`)「何をですか?」
(-_-)「このテクノポリスが、いつからこの姿をしているのか……を。
    というより、君の見てきた世界がいつから再構成を続けているのかを」

質問の意味をすぐには理解できなかった。
そして理解したとき、僕の中で何かがふくれあがった。
そうだ、確かにそれは疑問だ。

(´・ω・`)「わかりません」
(-_-)「記録上二百年前……だけど、それ以前から、という可能性もある。
    だからこそ、唯一歴史が進行するこのテクノポリスでは君たちの技術力を卓越し、
    アンドロイド開発を確立している」
(´・ω・`)「!」


105 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:15:05.92 ID:xwkBscfV0
二百年前。
僕らの時代で言えば……まだ江戸幕府が健在だったころじゃないか。徳川家斉の時代でもある。
僕が見た都市地区……それは現在の東京と見間違えるほどの発展を遂げていた。
それがすでに二百年前から存在していたのだという。
なぜそっくりの世界を創造することができたのだろう。
誰が未来の世界を知っていたのだろう。

(*゚ー゚)「……わかんないなあ」

しぃも不可解だと述べる。
しかし彼女の疑問は別のところにあったようだ。

(*゚ー゚)「なぜそれを私たちに教えてくれるの?」
(-_-)「理由は二つ。一つは、君たちがイレギュラーだから」
(´・ω・`)「どういう意味です?」
(-_-)「君たちの世界はこっちの世界にやっと追いついたんだよ。
     それと同時に君たちがやってきた……科学を超えた神秘を感じないかい?」

この人、マッドサイエンティストに域にとどまらないらしい。


106 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:15:47.02 ID:xwkBscfV0

(-_-)「まぁもう一つの理由の方が大きいんだけど。実は教えてあげるように頼まれててね」
(*゚ー゚)「誰に?」
(-_-)「荒巻さんに」
(*゚ー゚)「おー」

しぃは無闇に感心してるけど。
……荒巻さんか。あの人も何かと神秘だな。
この世界唯一のタクシードライバーらしいし。

ツンさんはブーンと手に持つ機械を照らし合わせてたりしている。
けど、多分僕らの会話を聞いていただろう。

(-_-)「さて、君たちはどうする? 多分、彼の修理にしばらく時間がかかるだろうし」
(´・ω・`)「えーっと」
(*゚ー゚)「絵本描きたいなあ、アイデアは浮かんでるのに」
(-_-)「会わせたい人がいるんだ。付いてきてくれるかい?」
(*゚ー゚)「いーですよー」


108 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:17:17.86 ID:xwkBscfV0
僕にも特に異論はない。
ここにいても特にできることはなさそうだし、何より、この世界のことをもっと知りたくなってきたからだ。

よいしょ、とばかりにヒッキー先生は腰をとんとん叩きながら立ち上がる。
そして、ブーンの改造を始めたツンさんに向かって言った。

(-_-)「この人たち、借りてもいいかな」
ξ゚听)ξ「いいけど、別に」

背を向けたままツンさんは答える。
ブーンがこちらを眺める……が、喋れる状況でないのか、言葉を発しない。
残念ながら、僕は機械の目から何も読み取ることが出来なかった。

(-_-)「それじゃあ、行こうか」


109 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:18:06.73 ID:xwkBscfV0
(*゚ー゚)「先生はあそこに住んでるんですか?」
(-_-)「……君にまで先生と呼ばれるとはね」

そういうヒッキー先生は怒っていない。
むしろ苦笑していた。

(*゚ー゚)「だってツンさんが」
(-_-)「彼女は特別だよ」
(´・ω・`)「何か……あったんですか?」
(-_-)「まあね」

そういってヒッキー……先生は僕らを先導して歩き始める。
思うことがある。
この世界の人には、秘密が多いと。


112 名前:牧師と初詣[] 投稿日:2006/12/28(木) 21:24:33.82 ID:xwkBscfV0
挿話二

( ´∀`)「ツン……まぁいなくなってしまったものはもう考えてもしょうがないモナ」

( ´∀`)「……にしてもこの写真」

( ´∀`)「あのアンドロイドそっくりだモナ。いったい誰モナ?」

「ピピ……えらー発生……至急めんてなんすヲ……」

( ´∀`)「またかモナ……最新式はどうも調子がおかしいモナ」

( ´∀`)「……」

( ´∀`)「あれ?」

・・・

・・




126 名前:布袋(ほてい)[] 投稿日:2006/12/29(金) 00:58:31.71 ID:SBh/PKqY0
第五話 不協和音と二人の神様

あるときね、おじいさんが罠にかかっている鶴を助けてあげたんだよ。
そしたらね、その日の夜にね、そりゃあ可愛い娘さんがおじいさんの家に訪ねてきたんだ。

娘さんはこういったの。えっと、
「雪で道に迷ってしまいました。一泊めてくださいな」って。
おじいさんは「いーよー」って言ったの。
そしたらその娘さんが
「はたをおらせてください。でも、そうしているときにのぞいちゃだめです」って。

それで娘さんは一人で部屋に閉じこもり、はたをおりはじめたの。
でもあんまり音も聞こえないからおじいさんは気になって中をのぞいちゃったんだ。
そしたらね、娘さんが死んじゃってたの!
その向こうにおばあさんが立っててね。
「次はあんたよ……」
って!
タイトルは「湯けむり温泉殺人事件」でどうかな?

(*゚ー゚)「どうかな?」
(´・ω・`)「鶴は?」

ちなみにこの話は街を歩いているときにされたものだ。
だから当然絵は見れなかった。
何の得もない……悲しい。


127 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:00:01.76 ID:SBh/PKqY0
タクシーに乗っていたときはよくわからなかったけど、歩いてみるとこの街は結構広い。
倉庫街を抜けるだけで三十分近くかかってしまった。
それから閑静な住宅街を歩き、少し賑わいを見せる場所に出た。

(-_-)「……疲れた」

ヒッキー先生はすでに満身創痍らしい。
僕もしぃも息が上がってしまっている。

(´・ω・`)「まだ、ですか?」
(-_-)「そろそろ見えてくるよ……ああ、あれだ」

主にクリーム色に塗られた外壁。
アルファベットの「W」に似た記号が描かれた旗が掲げられている少し大きめの建造物。

(´・ω・`)「ここは?」
(-_-)「ここの公的機関の一つ……まぁ、王宮みたいなモノかな」

おどけた口調先生は言う。
実際はただの市役所にしか見えない。

(-_-)「ここにはテクノポリスの主要公的機関が詰め込まれている。
    とはいえ、そもそも街の規模が大したことないからこの程度の建物なんだけど」


128 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:00:28.05 ID:SBh/PKqY0
自動ドアから中に入る。
ロビーには人がまばらに存在していた。
世間話をしている人や新聞を読んでいる人など、結構暇そうに見える。

(-_-)「僕だけど、ギコさんいる?」

ヒッキー先生が受付と会話を交わしている間、僕としぃは建物の中を観察する。
先生はテクノポリスの技術は僕らの世界より二百年も優れていると言っていたけど、
街の外観もこの施設の内装も僕らの時代とあまり変わっていない気がする。
都市地区の超高層ビルの方がある意味近未来っぽい。
全ての最新技術をアンドロイドに注いでいるからかな?

(*゚ー゚)「おー、おー……おー?」

しぃも、感動する要素を見出せなかったらしい。

(-_-)「お待たせ、面会中らしいよ」
(´・ω・`)「じゃあ待つんですか?」
(-_-)「多分大丈夫だよ、さあ行こう」


129 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:00:59.68 ID:SBh/PKqY0
先生に連れられて、僕らは建物の二階に向かった。
「環境課」とか「地域振興課」とか、それっぽい文字が並んでいる。
時折すれ違う人は必ず先生に挨拶する。
やっぱり、名の売れた人なんだな。

(*゚ー゚)「これから誰に会うんですか?」
(-_-)「ああ、この街のトップ」
(´・ω・`)「え」
(-_-)「大丈夫だよ。気さくな人だからね。それに、君たちとさほど年も変わらないし」

やがて一際豪華っぽい扉の前に立つ。
この感覚……モララーさんと出会ったときを思い出すな。
そういえば今頃都市地区では騒ぎになっているのだろうか。
なってるだろうな……やっぱり来るんじゃなかったかな……

先生が扉をノックし、少し声をはりあげた。

(-_-)「ギコさん、僕だよ!」


130 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:01:26.69 ID:SBh/PKqY0
「おーう、入れ入れ」

中から、豪快そうな声が聞こえてきた。
なんというか、西洋風。
それに重なり、何かを叫ぶような怒声が聞こえてきた。
入っちゃまずいんじゃないのかな。

でも先生はためらうことなく、

(-_-)「それじゃ、失礼」

中には二つの、対談用らしいソファと事務机。
壁にはいくつもの本棚がくっついている。
いかにも市長室、といった感じだ。

中には二人の男の人がいた。
そのうちの一人……机の向こうの椅子に座り、タバコをふかしている人が右手をあげた。


132 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:02:53.01 ID:SBh/PKqY0

( ,,゚Д゚)「よう、ヒッキー」
(-_-)「お邪魔かな? ギコ」
( ,,゚Д゚)「うんにゃ、んなこたねーよ」

でも、ギコさんの前にいる少し貧弱そうな男の人は、納得できないらしくギコさんに詰め寄っていた。

( ><)「まだ話は終わってないんです!」
( ,,゚Д゚)「うるせーなヘタレインポ、知らねーもんは知らねーんだよ」
( ><)「そんな態度でいいんですか! こ、こっちにも考えがあるんです!」
( ,,゚Д゚)「へえ、どんな?」
( ><)「僕は教えられてないからわかんないんです!」
( ,,゚Д゚)「ダメじゃねえか」

なにやら険悪なムードが漂っている。
にしてもギコさん。モララーさんと違って敬語すら使わない。
これでトップというのだから、この街の治安が少々心配になってくる。

(*゚ー゚)「ねえ、へたれってどういう意味?」
(´・ω・`)「根性なしってこと」
(*゚ー゚)「なるほど……」

インポの方はわかってるのかな。


133 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:04:01.05 ID:SBh/PKqY0

( ><)「もーいいんです! あなたと話すのは疲れたんです!」
( ,,゚Д゚)「そりゃこっちの台詞だ。癇癪持ちのクソインポ、誰かのヴァギナの中でミンチにしてやろうか」
( ><)「上層部に報告するんです! 制裁が下るのを楽しみにしておいてください!」

叫声をあげて、その男の人はくるりとギコさんに背を向け、僕らをにらみつける。
威圧感がないからか、ちっとも怖くない。
肩を怒らせ、僕らを押しのけて出て行くヘタレさん。
バタン、と勢いよく扉が閉められる。

(-_-)「今のは?」
( ,,゚Д゚)「柘榴の連中。ったく、昨日から鬱陶しい」
(-_-)「用件は?」
( ,,゚Д゚)「誰かが逃げ出したんだってよ。それでこっちに来てないかって」

……ハッとするまでもなかった。
間違いなくツンさんとブーンのことだ。

( ,,゚Д゚)「必ずここを通ってるはずだからってな。まぁ今みたいに追い返してるわけだが」
(-_-)「そう」

先生は言葉少なに頷いた。それはそうだろう、先生も事実を知っている。
それにしてもツンさんはなぜ逃げ出したりしたんだろう。
ブーンを作るため? そのためだけに逃げ出す必要なんてあるのかな。


134 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:04:36.29 ID:SBh/PKqY0
( ,,゚Д゚)「そしたら一方的にキレやがって。てめーらの内部事情なんか知るかってんだ」
(-_-)「大変だね。それに制裁とか言ってたよ?」
( ,,゚Д゚)「まぁもう一つ話があったんだが……それは後で話す。それよりも」

ギコさんはニヤリと笑って直立不動の僕らを見た。

( ,,゚Д゚)「こいつらがイレギュラーってやつか」
(-_-)「うん。えーっと……あれ、そういえば名前聞いてなかったね」

今の今まで忘れてたのか。
まぁ僕らも忘れていたけど。

(´・ω・`)「しょぼんって言います」
(*゚ー゚)「しぃです」
( ,,゚Д゚)「おうおう、俺はギコっていう。よろしくな」

そういって右手を突き出されたので黙って握手に応じる。
その気はないけど、逆らえる雰囲気ではないな。


135 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:05:18.51 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「でさ、例のこと調べてくれた?」
( ,,゚Д゚)「てめーで調べろと言いたかったが、地位的に俺も滅多なことは言えねえ」
(-_-)「それはどうも」
( ,,゚Д゚)「だが二日じゃ調べられることにも限りがあった……これ」

そういってギコさんは引き出しの中から書類の束を取りだした。
表紙には赤文字で「極秘事項」と書かれている。
なんだか、刑事ドラマっぽいな。

受け取った先生がそれをパラパラとめくっている。

( ,,゚Д゚)「……柘榴の連中がつっかかってきたのはそのことなんだよ」
(-_-)「へえ?」
( ,,゚Д゚)「勝手に調べるなみてえなこと言ってたぜ。ただの昔話だってのに、何が気に入らねえんだか」
(-_-)「ふうん……」
( ,,゚Д゚)「……で、科学オタクのてめーがその昔話を信じるのか?」
(-_-)「もう基盤はできているだろう? 桃太郎でいえば、もう大きな桃は僕らの手元にある」

(*゚ー゚)「死んじゃってるけどね、中の子供」
(´・ω・`)「めっ!」


136 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:06:10.13 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「……しょぼんくん」
(´・ω・`)「はい?」
(-_-)「そこのソファに座って。少し話が長くなるから」

シリアスな空気を帯びた先生の声に僕は少し身じろいだ。
しぃと共におそるおそるソファに座り、次の言葉を待つ。

(-_-)「さて、ここに一つの昔話がある」

そういって「極秘事項」の書類を見せる先生。

(-_-)「ただの昔話かもしれない。だけど、事実と合致する部分もあるんだよ」
(*゚ー゚)「どんな内容ですかー?」

絵本作家志望のしぃが早速食いつく。


137 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:07:14.07 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「簡潔に説明しよう、こんな内容だ。
    その昔、神様は天と地と草木と動物を創造した
    そして神様はそこを世界の果てと名付けた
    動物はやがて進化を遂げ、ついには人間と呼ばれる高等生物が誕生した
    人間は嫉妬した。なぜ自分たちの世界は「果て」なのかと
    人間は神様の再降臨を願った。そして願い通り神様は果てに訪れた
    嫉妬する人間たちに、神様は長大なる文明と知識を与えたのである
    ……とまあ、こんな感じだ」

始まりは聖書みたいだったけど、後からはずいぶん違った。
ここでも「果て」とか「嫉妬」とかいう言葉が出てくるんだ。

(-_-)「……注目すべきは最後の部分。
    『嫉妬する人間たちに神様は超大な文明と知識を与えたのである』」
( ,,゚Д゚)「これを、現在の状況と一致させたいんだろ?」

二百年以上前からの文明はそういう理屈で……
いやいや待て待て。ただの昔話じゃないか。

(´・ω・`)「でもそれ、信用できるんですか?」
(-_-)「まぁただの昔話だけどね……ギコ」
( ,,゚Д゚)「ああ。この後にもう少し、続くんだよ」


138 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:07:52.51 ID:SBh/PKqY0
( ,,゚Д゚)「やがてその文明も古びてしまう。果てが混迷に包まれたとき、神は二人となって舞い戻る」
(´・ω・`)「二人……」
(-_-)「はっきり言おう。この二人……君たちのことじゃないかと思っている」

(*゚ー゚)「おー、神様かー」

楽観的な思いを漂わせているしぃを思わず殴りたくなる。
神様? 冗談じゃない。僕もしぃも一介の高校生だ。

(-_-)「突然現れたイレギュラー。可能性はなきにしもあらず、といったところかな」
(´・ω・`)「待ってください! それはあまりにも短絡的です」
(-_-)「かもしれない。でもさっきも言ったけど文明が追いついたと同時に出現……
    これはポイント高いよ」
( ,,゚Д゚)「いいじゃねえか、神様。この世界を自由に作りかえてみろよ」

ギコさんが笑い飛ばす。
反論の言葉が浮かばない。
でもそれは相手の主張が理にかなっているからじゃない。
ただ僕の頭が混乱しているだけだ。
多分


139 名前:福禄寿(ふくろくじゅ)[] 投稿日:2006/12/29(金) 01:08:14.60 ID:SBh/PKqY0
「何かわかったら教えてくれよな」というギコさんの言葉を背に受け、僕らは部屋を出た。
そのまま一階に降りて外に出る。
道路が夕焼け色に染まっていた。

僕はなんとなく無言になってしまった。
そしてあの昔話のことを考えていた。

結論はすぐにでた。
あんなもの、嘘っぱちだ。

先生やギコさんが悪いとは言わない。でもあの昔話はデタラメ。
たまたま事実と似ているだけだ。
じゃないと説明がつかない。

倉庫街にたどりついたころ、僕はもうヘトヘトになっていた。
身体的にも、精神的にも。

そして第八倉庫の扉を開けたとき、そんな疲労は吹き飛んでしまった。

(-_-)「ツン……?」

そこに、ツンさんとブーンはいなかった。


160 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:49:33.96 ID:SBh/PKqY0
第六話 Reborn


(*゚ー゚)「連れ去られたのかな」
(-_-)「ここにいることは誰にもわからないはず……なんだけど」

先生が周囲を見渡し、溜息一つ。

(´・ω・`)「柘榴の人たちだとしたら、まずいんじゃ……」
(-_-)「ううん、そうだ、そうだよね」

狼狽しているのか、先生の言葉は曖昧だ。
そこで、先生は機械の海から一つの部品を拾い上げた。

(-_-)「これはブーンくんの部品だ」
(*゚ー゚)「よくわかるねー」
(-_-)「まだ修理途中で連れ去られたのか或いは壊されそうになったのか」
(´・ω・`)「助けないと!」
(-_-)「どうやって?」
(´・ω・`)「……」



161 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:49:47.61 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「柘榴に乗り込むなんて無茶な話。ギコに話せばそれは彼の僕に対する信頼を裏切る結果になる」
(*゚ー゚)「じゃあ、無視するの?」
(-_-)「最善だ」
(´・ω・`)「それは……でも!」
(-_-)「でも、おそらく向こうがほっといてくれない。そのうち何らかのコンタクトがあるはずさ」

それを諦観というのだろうか。
ただ、僕が先生の主張を納得できないのは確かだ。
信頼を裏切る、そんな理由で無視して良いのか。
利己的じゃないですか、あまりにも。

(-_-)「さて、君たちはこれからどうする?」
(*゚ー゚)「どうしよっかー」
(´・ω・`)「……」
(-_-)「君が気に病む必要はないわけだよ。元々、君は異世界の人間なのだから」

その言葉を聞いて、僕の中で何かが切れた。
自棄的な怒りが身を襲う。


163 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:50:17.69 ID:SBh/PKqY0
(´・ω・`)「この世界で神様扱いしようとしたのは先生でしょ!」
(-_-)「……」
(´・ω・`)「それに異世界の人間だから、っていうのは見捨てていい理由にはならない!」
(*゚ー゚)「しょぼんくん、落ち着こうよ」
(´・ω・`)「落ち着けないよ! 大体しぃは何とも思わないの? いきなり神様とか何とか言われてさ!」

とりあえず当たり散らす。
無力だからだろう。力があればとっくの昔にツンさんたちを助けようと動くはずだ。
それができない。どこにいるかもわからないし、第一居場所がわかっても
突入する勇気などあるはずもない。
だからとりあえず叫ぶ。反抗期の中学生みたいに。

(*゚ー゚)「……んー」

しぃは何かを考え込んでいる。
やがてその視線を僕に向け、言った。



164 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:50:34.39 ID:SBh/PKqY0

(*゚ー゚)「肩書きが神様になっただけだし、ただ「おー」とかしか思わないや」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「そんなに気負わなくてもいいんじゃないの? 一つの冗談ぐらいに受け取っておけば、さ」

脱力した。
言いたいことはわかる。でも僕は彼女のようにスマートに考えることが出来ない。
どうしようもなくなり、僕は彼女から顔を背けた。

(-_-)「行く当てがないのなら、僕の家に泊めようか?」
(*゚ー゚)「そうする?」
(´・ω・`)「……いいよ」

どうでも。


165 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:51:01.66 ID:SBh/PKqY0
風荒ぶ夜道を歩いた。
先生の家は住宅街の中ほどにある一軒家だった。
特別待遇というわりに、家の大きさはそれほどでもない。

(-_-)「ま、大きすぎてもあまり使わないからね」

自家を見上げて先生は言う。
室内は倉庫とは違って整然としていた。
というより、人が住んでいるとは思えないほど生活感が無い。
一階のリビングにはタンスとテレビ、そしてベッドがあるだけ。
食料がキッチンにおいてある他に目立ったものは見当たらない。

(-_-)「こうすると、他の部屋をむやみに汚さなくて済むだろう?」

先生の、気晴らしのような一言に僕はただ頷いていた。



166 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:51:38.29 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「夕食はどうする? 君たち、今朝から何も食べてないだろう?」
(*゚ー゚)「そーいえば」

朝食以降、何も口にしていないな。
忘れていた。

(-_-)「何か食べるかい?」
(*゚ー゚)「んー、どうしよっか」

しぃは僕の意見を求める。
生憎、あまり食欲が無い。
精神的なものだろうけど、改めて自分の心の弱さにうんざりさせられる。

(´・ω・`)「いえ、僕はいいです」
(*゚ー゚)「じゃあ私も」
(-_-)「……そうかい」

先生は、寂しげに笑った。



167 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:52:00.55 ID:SBh/PKqY0
二階の和室を僕としぃはそれぞれ割り当てられた。
とはいえ、布団もなければベッドもない。
窓の外に見えるのは揺れている……ように見える街の灯り。

さて、これからどうなるのだろう。
ツンさんがいなくなってしまった今、それを本気で考えるべきだ。
できれば早く帰りたい。神様扱いを受けてその意思が強固なものになった。
だが、モララーさんたちの監視から離れたのは自分自身の所業だ。
今更戻ることもできない……なら、もう二度と帰れないということだろうか。
あの昔話の中に「混迷に包まれた」みたいな記述があったような気がする。
いやだ、面倒ごとになど巻き込まれたくない。

それでもツンさんを見捨てたくはない矛盾。
もう、どうしようもない。



168 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:52:26.79 ID:SBh/PKqY0
眠気が襲ってくれない。
夜景を見るのにもそろそろ飽きてきた。
今、何時ごろだろう。

そんなときである。

(*゚ー゚)「しょぼんくん起きてますかー?」

隣室にいたはずのしぃが、部屋の入り口に立っていた。

(´・ω・`)「どうしたの?」
(*゚ー゚)「いやいや、襲いにきたわけじゃないから心配なく」
(´・ω・`)「……」

相変わらずのテンションだ。
しぃばかりは世界が崩壊しても変わりそうに無い。



169 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:53:05.07 ID:SBh/PKqY0
(*゚ー゚)「いやあ、夜だねえ」
(´・ω・`)「そうだね」
(*゚ー゚)「どう、気分は?」
(´・ω・`)「……普通かな」
(*゚ー゚)「うそだね」

歩み寄ってきたしぃはやがて僕の隣に立った。

(*゚ー゚)「さて、と」
(´・ω・`)「何しにきたの?」
(*゚ー゚)「むーむむむ。あえていうなら、慰めに?」
(´・ω・`)「別に慰めてもらう必要もないけど」

突っ撥ねるように言った僕の手を。
しぃがおもむろに自分の手に取った。



170 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:53:25.83 ID:SBh/PKqY0
(*゚ー゚)「おお、冷た……くないし温か……くもない! 普通!」
(´・ω・`)「そう?」
(*゚ー゚)「……」

僕の反応がつまらなかったのだろう。
しぃはすぐに手を離し、頬を膨らませた。

沈黙がたゆたう。
動くに動けない状況に、僕はただ外を見つめていた。

(*゚ー゚)「ほんとに神様だったらいいのにね」

不意に、しぃが呟いた。



171 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:53:46.04 ID:SBh/PKqY0

(´・ω・`)「どうしてさ」
(*゚ー゚)「こんな世界、根本から変えてやるのに」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「だって毎日おんなじだよ? 絵本も進みやしない」
(´・ω・`)「でもその代わり戦争も起きないんじゃないかな」
(*゚ー゚)「甘いね、甘すぎるよ、きみはチュッパチャップスかい?」

(*゚ー゚)「あのモニターちゃんと見てた? 都市地区とか放牧地区があるんだよ? 
     戦争地区が無いわけないでしょ」
(´・ω・`)「……」

確かに、見ていなかった。
見落としていたのか、見ないようにしていたのか。わからないけど。

(*゚ー゚)「貧困地区みたいなのとかもきっとあるはず。そこにいる人はそれ以上の生活ができないんだよ」



172 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:54:11.94 ID:SBh/PKqY0

(*゚ー゚)「再生してやりたいよ、こんな世界」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「しょぼんくんと一緒ならできそうな気もしなくもないしね」

僕はしぃを見直した。
その理論は少し単調かもしれない。
でもそれに僕が惹かれたのは事実。

そして何より、この空気が好きだ。

それは多分、日付が変わった頃のこと。
階下から先生の呼び声が聞こえてきた。


173 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:55:45.17 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「来たよ。柘榴からのお呼び出しだ」

その表情は嬉々としているように見えた。

(´・ω・`)「でも、敵の罠にはまるわけにも……」
(-_-)「いや、そうじゃない。別の案件だ」
(´・ω・`)「?」

(-_-)「柘榴の再構成システムが停止したらしい。至急修理願いますだって」
(´・ω・`)「え……それって」
(-_-)「緊急事態だね」

(-_-)「ついてくるかい?」
(*゚ー゚)「勿論です!」
(-_-)「しょぼんくんは?」
(´・ω・`)「……」

どうせ戻れない道だ。停滞していても仕方がない。
なら、承諾するしかないだろう。


175 :年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/29(金) 09:56:56.96 ID:SBh/PKqY0
挿話三


ξ゚听)ξ「なんで守ろうとしたの?」
( ^ω^)「恩返しするのは当然のことだお」
ξ゚听)ξ「……あのね」

ξ゚听)ξ「あんたは私の創作物なの! 勝手に動いて壊れるとか許さない!」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚听)ξ「わかったら二度と危ない真似はしないで! いい!?」
( ^ω^)「拒否するお」
ξ゚听)ξ「バカ! ……ッ……」
( ^ω^)「僕の身体は機械だから、叩くとツンが痛いお」
ξ゚听)ξ「うるさい……」

・・・

・・




198 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:50:09.83 ID:SBh/PKqY0
第七話 静かに世界を崩してみる

/ ,' 3「お待ちしていました」

家を出た僕らの前に、さも当たり前のように荒巻さんが立っていた。
最早驚きもしない。耐性でも付いてしまったのだろうか。

(-_-)「これは荒巻さん。相変わらず勘が良い」

/ ,' 3「基本的に仕事に飢えている身でしてね。
    もっとも、近頃はずいぶん働いたような気もしますが
    それで、行くのでしょう? 柘榴へ」

(-_-)「うん」
/ ,' 3「彼らも?」

荒巻さんの視線が先生を飛び越え、僕らに刺さる。

(-_-)「らしいよ」
/ ,' 3「わかりました。まあ乗ってください。急いだ方がよろしいでしょうし」



199 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:50:49.17 ID:SBh/PKqY0
僕らを乗せたタクシーは夜の街道を走り抜け、
やがてメトロポリスの背にそびえる山の方へと向かう。
今回、後部座席には僕としぃ。助手席には先生が座っている。

後ろに流れる街の光を見つめながら、僕らは無言を通していた。

やがて光がなくなり、暗く狭い山道に入る。
……普通山道にも街灯ぐらいあると思うんだけど。
車が少ないから必要ないのか、普段使われないから必要ないのか。
唯一の明かりはこの車のフロントライト。
こんな状況でよく運転できるな、荒巻さん。

幽霊でも出てきそうだ。
ふとしぃを見ると、彼女はかたく目を瞑っていた。



200 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:51:19.46 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「君たちは、向こうで何をするつもりだい?」
(´・ω・`)「も、もちろんツンさんとブーンを……」
/ ,' 3「それどころではないかもしれませんよ」
(´・ω・`)「え?」
/ ,' 3「今日行われるべき再構成がなされていない。
    この世界の大部分は再構成ありきの循環を行っているわけです」
(-_-)「ここで止めてしまえば、世界が基盤から崩壊することは十分ありえるってことさ」
/ ,' 3「もしそうなれば、一人の女性に構っている遑は無くなってしまうかも知れません」
(*゚ー゚)「違うよ!」
/ ,' 3「……はい?」
(*゚ー゚)「ブーンもだよ!」
/ ,' 3「そうですね……」

この世界の人々は今日を知っている。
昨日や明日も漠然と感じているが、知ってはいない。
別の時間に立たされたとき、ここの人がどうなってしまうのか。
想像も付かない。



201 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:51:53.34 ID:SBh/PKqY0
/ ,' 3「今は深夜だからまだ大丈夫でしょうけどね」
(-_-)「ま、どうにもならなければ最終手段を使えばいいさ」
/ ,' 3「ほう。と、いいますと?」
(-_-)「教えない。技術者の特権ですよ」

どうやら、先生には何らかの自信があるらしい。
安心して良いものか、ちょっと悩む。

ガタガタと車体が揺れ始め、僕らの身体は上下する。
どうやら、舗装されていない道に入ったらしい。
坂道を上ったり下ったり、右に曲がったり左に曲がったり。
視界がよろしくないから後部座席にいる僕は不安に包み込まれる。
しぃは時々「ひぇ」とか「わぅ」とか不明瞭な声を出しつつも、なんとか踏ん張っているようだ。
そうして時はしばらく流れ……
やがてタクシーは停まる。

/ ,' 3「ここですね」



203 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:52:24.06 ID:SBh/PKqY0
降り立った場所に空はなく、土の壁が僕らを取り囲んでいた。
どうも洞窟のようだ。
前も後ろも闇ばかり。入り口まで見渡すことが出来ない。
そんな中、古びた豆電球の下に一つの鉄扉があった。
ここが入り口だろうか。ずいぶんチンケな作りだ。
警備の人もいない。そりゃツンさんも逃げるよ。

/ ,' 3「私はここで待機していますので」

そういってお辞儀する荒巻さん。
怖くないのだろうか。いやいや、どう考えても怖いだろうに。

(-_-)「いつも申し訳ないです……さ、行こうか」
(*゚ー゚)「荒巻さん、またね!」
/ ,' 3「……ええ、また」



204 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:52:54.03 ID:SBh/PKqY0
思えばここまで来るのにさほど時間はかからなかった。
テクノポリスと柘榴は隣接してるのか。
もしくは、テクノポリスの中に柘榴があるのか……

鉄扉の向こうには長い廊下が続いていた。
まだ、見た目に違わぬ光景である。
コツコツと、三人の足音が高く響いた。
しぃが先ほどから僕の腕にかじりついている。

(´・ω・`)「……そんなに怖がりだったっけ?」
(*゚ー゚)「いや、そうでもないはずなんだけどね……なんだか……その、雰囲気的に」
(´・ω・`)「……」

まぁ、異様な空気が立ちこめているのは確かだ。



205 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:53:14.81 ID:SBh/PKqY0
廊下の先にあったもう一つの鉄扉を開くと、そこに下へと降りるための螺旋階段が続いていた。
一段ずつ慎重に降りていく。底知れないし。

(-_-)「……二時か。ちょっと急いだ方がいいかな」

先生が腕時計を見て呟く。
そして少しばかり歩調を早めた。

(´・ω・`)「ここって結構広いんですか?」
(-_-)「まぁそれなりにはね。都市地区ぐらいあるんじゃないかな」

さらりと答える先生。
とりあえず、想定できる範疇でないことはわかった。

(-_-)「世界全体を動かす場所だから当然といえば当然……といっても、
    僕もここの全てを知ってるわけじゃないけど」

(´・ω・`)「そうなんですか?」

(-_-)「というか、柘榴の人も知らないんじゃないかな。
    僕らはただ先人の残したモノを繕いながら使っているだけだし」



207 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:53:55.28 ID:SBh/PKqY0
そのときである。
奈落のような底から、声が聞こえてきた。

「止まれ!」

(-_-)「おや、物騒な声」

言いながら先生はどんどん下に降りていく。
僕らは躊躇しながらも先生について行く。

「止まれってのに!」

トントンとせわしない足音が聞こえてきたかと思うと闇から一人の男が姿を現した。
その風貌に寒気を覚える。
特殊部隊みたいな服装に肩に担がれた銃。
どことなくロシアっぽい。

( ゚∀゚)「……アンタか」
(-_-)「えっと、ジョルジュ君だっけ」



208 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:54:21.22 ID:SBh/PKqY0

( ゚∀゚)「アンタのせいでこっちはいろいろ引っかき回されて大変だぜ」
(-_-)「なんのことだか」
( ゚∀゚)「よく言うな、共犯者もいいとこだってのに……いや、アンタが仕向けたって方が正しいか?」

下卑た笑い声をあげるジョルジュ。
僕らにはその言葉の真意はわからない。
先生はその言葉を受け流す。

(-_-)「ツンはここにいるの?」
( ゚∀゚)「幽閉してある。処分はまだ決まってねえが」
(-_-)「ブーンも?」
( ゚∀゚)「ああ」

(-_-)「引き渡してくれないかな?」
( ゚∀゚)「断る」



209 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:54:43.22 ID:SBh/PKqY0
静かな火花を散らす両者。
やがて先生は短く息を吐く。

(-_-)「正直、君じゃ話にならない」
( ゚∀゚)「なんだと?」
(-_-)「君たちが求めているのは不毛な会話じゃないだろう? 柘榴本体の修理だ」
( ゚∀゚)「ッ……」
(-_-)「さっさと通してくれる? こっちにも時間がない」

再び火花。
だが、結局ジョルジュが折れたようだ。
黙って道を開け、先生は平然とそこを通過する。
僕らもついていこうとする……が。

( ゚∀゚)「おい、お前らはなんだよ」

案の定、低い声で呼び止められる。



210 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:55:23.33 ID:SBh/PKqY0
答えに手間取っていると、先生が助け船を出してくれた。

(-_-)「助手」
( ゚∀゚)「ああ?」
(-_-)「必要な人材だ。ほら、早くしないと世界が壊れる」

ひょうきんな言い方に、ジョルジュはあからさまに疑念を顔に出す。
が、反証できるわけでもないので沈黙を貫いた。

(-_-)「ほら、行くよ」
(´・ω・`)「あ、あ、はい」
(*゚ー゚)「了解です、師匠!」
( ゚∀゚)「……」

とりあえず僕は軽くしぃの頭を叩いておいた。



211 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:56:04.09 ID:SBh/PKqY0
永遠とも思えるほどの長い螺旋階段の先には二つの道に続く分岐点があった。
先生はとまどいもなく左に進む。
そして、おそらく最後と思われる鉄扉の先に、都市地区で見たのとは違う意味での電脳空間が広がっていた。

様々な機器の真ん中に一つの大きな椅子みたいなものがあり、そこに何かが座っていた。
おそらくアンドロイドだと思う。しかしブーンとは違って金属質の肌。
一目でそれとわかる外見だ。
そしてその彼からは幾つものコードがそこかしこの機器に取り付けられていた。

一人の男がせわしなく機械を操作していたが、僕らに気づいて顔をあげる。

( ´∀`)「あ、これはこれはヒッキー先生……って、あれ? そっちの人は誰モナ?」
(-_-)「そんなことはいいから、さっさと始めよう」
( ´∀`)「よろしくお願いするモナ」
(-_-)「エラーの状況は?」
( ´∀`)「全く機能しないんだモナ。非常プログラムも起動しない……」
(-_-)「へえ……ほら、助手!」
(´・ω・`)「あ、は、はい」
(-_-)「そんなところでボサッとしててどうすんの」



212 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:56:31.17 ID:SBh/PKqY0
近づいて見てみても何がなんだかさっぱりだ。
にしてもこいつの顔……やたらと人間っぽいな。

(*゚ー゚)「なんかしょぼんくんに似てない?」
(´・ω・`)「そうかな……」
(*゚ー゚)「ほら、眉毛をちょちょいといじれば……ははっ」
(´・ω・`)「笑うなよ」

( ´∀`)「当初からあまり調子はよくなかったモナ。
      でも今日は起動すらしないんだモナ」
(-_-)「内部の故障かな」
( ´∀`)「内部はチェック済モナ。でも、どこにもエラーは見つからなかったモナ」
(-_-)「ふむ、それは変だね」

僕らは先生の傍にしゃがみこんでいるだけで、実際は何もできていない。



213 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:57:11.10 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「今、何時かな」
( ´∀`)「午前三時二十分モナ」
(-_-)「そろそろなんとかしないとヤバいよね……よし」

意を決したかのように先生は立ち上がる。
そして、数ある機器の中の一つに歩み寄った。

( ´∀`)「どうするんだモナ?」
(-_-)「世界をつぶそう」
( ´∀`)「……?」
(-_-)「柘榴本体の緊急プログラムを作動させる。再構成一歩手前の状態にするんだ」
( ´∀`)「え……」
(-_-)「テクノポリスとここ以外が全て一旦消失してしまうけど仕方ない」



214 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:57:22.85 ID:SBh/PKqY0
先生は次々と操作を進めていく。
やがて、天井のスピーカーから声が流れた。

「ぷろぐらむ、作動準備……あんどろいどヲ本体カラトリハズシテクダサイ……」

(-_-)「助手、コード抜いて」
(´・ω・`)「え……」
(-_-)「適当に引っこ抜けば大丈夫だから」

言われたままにアンドロイドから男の人と一緒にコードを取り外していく。
線の拘束から解放されたアンドロイドはだらりと脱力した姿勢をとった。

「作動シマス……」

そのアナウンスから数秒後。
ゆらり、と空気が揺れたような気がした。



215 :神主と初詣:2006/12/29(金) 19:57:42.83 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「……よし」
( ´∀`)「どうなったモナ?」
(-_-)「世界は再構成を待ったまま停滞しているよ……さて、今日中になんとかしないと」

いたって平静な先生に男の人は狼狽を隠せない。
僕らも同様だ。世界が停滞……抽象的すぎてよくわからない。

(-_-)「ねえ、君」
( ´∀`)「モナ?」
(-_-)「ビコーズさん呼んできて。取引するから」

その言葉に男の人は一瞬目を丸くさせたが、やがて小走りで部屋を出て行った。

(´・ω・`)「……」
(-_-)「さて、皆目見当つかないなあ」

そんなことをいう先生は少し楽しそうでもあった。


228 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:05:34.45 ID:SBh/PKqY0
第八話 少し前を破り捨て、未来は急転直下する。

( ∵)「またとんでもないことをしでかしてくれましたね」

現れた長身の男……ビコーズは開口一番そう言った。
呆れたような声色で。

(-_-)「こうするほかないでしょ?」
( ∵)「V.I.P.D.Cから抗議がくるのも時間の問題です」
(-_-)「ああ、あれね。忘れてたよ」

V.I.P.D.Cって確かモララーさんがいたビルじゃなかったっけ。
そういえばモララーさんも柘榴のこととか知ってたんだろうな。
じゃああのビルどうなってるんだろう……陸の孤島?

( ∵)「まぁいいですが。それで、復活する見込みは?」
(-_-)「未定」
( ∵)「……」
(-_-)「ま、やれないこともないよ……取引に応じてくれれば、だけど」



229 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:06:07.38 ID:SBh/PKqY0
( ∵)「取引といいますと?」
(-_-)「このアンドロイドの代わりにブーンを使う」
( ∵)「……」
(-_-)「まだ処分していないと誰かが言っていた。彼とツンを解放し、
    ブーンによる再構成を許可するなら」
( ∵)「なるほど。ツンの今回の脱走を許せと言うことですか」

ビコーズは穏やかな笑みを浮かべる。
だがそれはすぐ嘲笑に変わった。
彼はポケットから一枚の写真を取り出す。

( ∵)「先に問いたいことがいくつかあるんですよ……この写真についてね」

ビコーズが先生に手渡した写真には二人の人物が写っていた。
一人は……ツンさんか。高校生ぐらいかな。
もう一人は……ブーン?



230 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:06:30.61 ID:SBh/PKqY0

( ∵)「この写真はツンが脱走の際忘れていったものです。
    あのアンドロイドがあなたの指揮によって作られたのは半年前のこと。
    あなた、わざと作ったんですね?
    すでに亡くなってしまったツンの恋人に似せたアンドロイドを」
(-_-)「……」
( ∵)「それがどのような結果をもたらすか、あなたに予想できなかったはずがない」

( ∵)「彼女の脱走は,ある意味予定調和だった……そうでしょう?」
(-_-)「ま、そういうことになるね」

意外と、先生の声はあっけらかんとしていた。
今更隠しても仕方ないというように。

( ∵)「気になることは多い……なぜ彼女のためにこのようなアンドロイドを作ったのか」
(-_-)「……ふふ、それに答えるのは難しい」
( ∵)「と、いいますと?」
(-_-)「あなたは僕ほどこの世界を知らないから」
( ∵)「面白いことを言いますね」



231 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:07:06.12 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「まぁ言えるとすれば一つ……それには僕らの生前が関係している」
( ∵)「生前……」

その科白は僕らにとっても不可解だ。
先生は、今この場に生きているというのに。

( ∵)「それは、あなたの特別待遇と関係ありますか?」
(-_-)「ん?」
( ∵)「あなたの開発したという技術……一時期騒がれましたが全く表ざたになっていませんね」
(-_-)「……そうだね、関係あるかもね」

(-_-)「さて、そろそろ取引に関する答えをもらおうか」
( ∵)「……いいでしょう。私とて、むやみに人を処分したくありませんから」
(-_-)「じゃ、ツンとブーンを連れてきて」

無理やり追い出そうとするような先生の口調に、ビコーズは少し眉を顰めた。
しかしすぐに室外へと出て行く。



232 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:07:54.83 ID:SBh/PKqY0
(´・ω・`)「……ヒッキーさん」
(-_-)「僕の秘密が今、一つだけ君たちに明かされたわけだ」

機械を動かす手を休めず、先生は淡々とした口調で言う。

(*゚ー゚)「ツンさんとの関係、結構深いんですね」
(-_-)「ま、そういうことになるかな」
(*゚ー゚)「一つ聞いていいですか?」
(-_-)「なんだい?」
(*゚ー゚)「先生、今何歳?」
(-_-)「なんでそんなことが知りたいの?」
(*゚ー゚)「ちょっとねー」

そこで初めて、先生は手を休めてしぃを見つめた。

(-_-)「しょぼんくん」
(´・ω・`)「はい?」
(-_-)「彼女、勘は良い方?」
(´・ω・`)「いえ……よくわからないですけど」
(-_-)「ふーん、まあいいや。教えてあげよう」

(-_-)「僕は、三十七歳だよ」
(*゚ー゚)「なるほど……」

僕にはしぃの意図が全くわからない。
ただしぃの、謎を解いた名探偵のような笑顔はとても印象的だった。


233 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:08:29.74 ID:SBh/PKqY0
やがて、ドアが開く。

( ∵)「つれてきましたよ」

ξ゚听)ξ「ヒッキー先生……」
(-_-)「やあ、ツン。元気だった?」
ξ゚听)ξ「……う……ぅ」

涙を見せまいとしているのか、頬を紅潮させたツンさんは先生から顔を背ける。
一方のブーンは、そんなツンさんを心配そうに見つめていた。

( ^ω^)「ツン、大丈夫かお? おなか痛いのかお?」
ξ゚听)ξ「違うわよ! ……バカ」
( ∵)「さて、約束どおりつれてきました。よろしく頼みますよ」

そう吐き捨ててビコーズは再び扉の向こうに消えた。
何かを嫌悪するかのように。



234 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:09:08.40 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「話はまだ聞いてないよね」

かくかくしかじか……と、先生はツンさんたちに経緯を説明する。
時折目を丸くしたり、視線を宙に彷徨わせたりしながらツンさんはその話を聞いていた。

(-_-)「……つまり、ブーンを使いたいんだ。彼にはまだ、アンドロイドとしての機能が残っている」
ξ゚听)ξ「でも、もうブーンは引退を宣告されてたから……」
( ^ω^)「やるお」
ξ゚听)ξ「ブーン」
( ^ω^)「そうしないと、世界がおかしくなっちゃうお」
(-_-)「いつまでも停滞させているわけにもいかない。
    そのうち、バランスが崩れて再構成できなくなる可能性もあるからね」

心配そうに、ツンはブーンを見やる。
それは製作者としてだろうか、保護者としてだろうか、それとも。

ξ゚听)ξ「……ブーン」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「頑張ってね」



235 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:09:54.65 ID:SBh/PKqY0
ブーンは先ほどまで別のアンドロイドが座っていた椅子に座る。
その彼にツンさんが、実に手際よくコードを取り付けていく。
さすが本職。

ξ゚听)ξ「……終わりました」
(-_-)「ありがとう。それじゃ、ブーンから離れて」

名残惜しそうにツンさんはブーンから離れる。
ブーンは静かに目を閉じた。

「再構成プログラム起動……」

その声が生身の人間の声なのがなぜか痛々しく思える。



236 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:10:29.26 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「ああ、そうだツン」
ξ゚听)ξ「はい?」

先生がポケットから、先ほどビコーズから渡された写真を取り出す。
そしてそれを、ツンに手渡した。

ξ゚听)ξ「あ……」
(-_-)「これ、もういらないよね?」

その声は別に嫌味たらしくない。
まるでツンさんの答えが予想できているかのようだ。
はたして、ツンさんは頷いた。

ξ゚听)ξ「もういらないです」
(-_-)「だよね。必要にしていたらこんなところに忘れていくはずがない」
ξ゚听)ξ「悲しいけど、もう彼は戻ってこないし」



237 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:10:55.10 ID:SBh/PKqY0

(-_-)「ツン」
ξ゚听)ξ「はい?」
(-_-)「僕がしたことは、余計なことだったかな」
ξ゚听)ξ「そんなこと……うん、そうかも」

ツンさんはいたずらっぽく呟く。
本気ではない。

ξ゚听)ξ「でも感謝はしてる。過去を忘れることができたから」
(-_-)「……本当に、忘れ去ることができたの?」
ξ゚听)ξ「どうなんだろ……だって」

ツンさんは、すでに人間としての意識を閉じてしまっているブーンに向く。
そして、こめかみを手でおさえた。

ξ゚听)ξ「今の私には、あのブーンが必要だから……」
(-_-)「僕が歪めてしまったかな」
ξ゚听)ξ「自虐してどうすんのよ。私は大丈夫だからさ!」

そうして、ツンさんは先生の背中を平手で強く叩いた。
それはまるで、自分に対する喝のようだった。



238 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:11:24.68 ID:SBh/PKqY0
(-_-)「それじゃあ、始めようか」
先生がボタンを押す。
それと同時に、ブーンの身体が痙攣したかのように動いた。

「再構成プログラム開始準備……」

僕らはただそれを見守るのみだ。
コンピューターの画面が次々と切り替わっていく。

「準備完了……起動開始……」

異変が起きたのは、まさにその時だった。
扉の向こうから、誰かの怒声が聞こえてきたのだ。


239 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:16:00.19 ID:SBh/PKqY0
あの人……ジョルジュだ。
だが足音は二つある。

足音が迫る。
恐怖のようなものが身体をせりあがる。
緊張感が包む。
そんな中でも、再構成のプロセスは着実に進行する。

瞬間、鉄扉が蹴り開けられた。


( ゚∀゚)「お前、やめろ!」

遠くからジョルジュの叫び声。

入ってきたのは、まぎれもないアンドロイドだった。
そしてその手に……銃。


240 :嫁と初詣:2006/12/29(金) 22:17:13.01 ID:SBh/PKqY0
( ,'3 )「……」

(-_-)「!」

アンドロイドは無言で銃を、まさに再構成を進めているブーンに向けた。
止めようとツンさんが走る。
だが、間に合わない。

銃声が響いた。
そしてその銃弾はしっかりと、ブーンを貫く。

(  ω )「ピー……」

( ,'3 )「……しゃっとだうん……」

そんな電子的な声と共に
アンドロイドは地面に伏した。

刹那、ツンの絶叫が轟いた。


281 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:30:53.73 ID:qyfA7buo0
第九話 裏の都合

ξ゚听)ξ「ブーン! せ、先生、システムを止めて!」

なお、再構成プログラムは進行中らしい。
ツンさんの悲痛な叫びに、先生は首を振った。

(-_-)「途中でやめるわけにもいかない。幸い、意識プログラムに異常が発生しただけだ。
    再構成自体に問題はない」
ξ゚听)ξ「でも、ブーンが壊れちゃうよ!」
(-_-)「……」

ツンさんは先生にすがりつく。
先生はその手を強引に振り払った。
勢いあまってツンさんはしりもちをついてしまう。
その間。僕は直立したままツンさんと先生を交互に見ていた。


282 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:31:15.82 ID:qyfA7buo0

(*゚ー゚)「ツンさん」
ξ゚听)ξ「……」

なぜ先生がこんな態度をとるのかわからない。
そういった、茫然自失とした表情のまま動くのを忘れたツンさん。
そんな彼女にしぃが近づき、抱き起こそうとする。

ξ゚听)ξ「しぃ?」
(*゚ー゚)「……残念だけどさ、一人の命より世界の方が大切なんだよ」
ξ゚听)ξ「そんなこと……関係ない」
(*゚ー゚)「……かもしれないね」

強制的に機械を止めようとしないあたり、意外とツンさんは冷静なのかもしれない。
やがて、天井からノイズ交じりの声が響いた。

「再構成……ガガ……完了シマシタ……」


283 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:32:39.08 ID:qyfA7buo0
直後、ツンさんは急いでブーンに駆け寄った。
コードを引きちぎるように抜いていく。
その間、彼女は何度もブーンに呼びかけたが,彼は無言だった。

騒ぎを聞きつけたらしいビコーズが駆けつけてくる。
いつのまにか、ジョルジュも室内に突っ立っていた。

( ∵)「これは……どういうことです?」
(-_-)「こっちが聞きたいよ。ともかく、彼を至急修理しないといけないよね」

僕としぃとツンさん、三人がかりでブーンを奥の方にあった移動式のベッドに寝かせる。

( ゚∀゚)「申し訳ない……いきなりあの野郎が俺の銃を奪いやがった」
(-_-)「彼は?」
( ∵)「バルケン……ブーンの前世代です」

そのアンドロイドは伏したまま動かない。
事切れたかのように。

( ∵)「倉庫に格納したはずですから……動くはずはないのですが」
(-_-)「ふうん……」


284 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:33:33.33 ID:qyfA7buo0
その後、僕らはその部屋から追い出された。
中にいるのはツンさんと先生、そして急遽呼び出されたあの男の人『( ´∀`)』のみ。
鉄扉は固く閉じられ、中を窺い知ることは出来ない。
手術室のようだ。
気になるからといって中を見ることはできない。
廊下に佇む四人。

( ∵)「さて、これを私たちはどう捉えればいいんでしょうかね」
(´・ω・`)「?」
( ∵)「シャットダウンしたアンドロイドが勝手に動き出すなんて考えられない。
    何か特殊性のある力が働かない限りは」
(´・ω・`)「……」
( ∵)「面白いといえば面白いですが、もしや悲しい未来を引き起こすことになるやもしれません」


285 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:34:02.59 ID:qyfA7buo0
( ・∀・)「悲しい現実は目の前に迫っていますが」

その声にハッとし、振り向く。

( ∵)「……これはこれは、モララーさん」
( ・∀・)「忠告の一つぐらい欲しいものですね」
( ∵)「申し訳ない。こちらとしても予想外だったもので」
( ・∀・)「……と、これはこれは、イレギュラーの皆さん」

にこやかな笑顔が余計に怖い。
よく見ると、モララーさんの後ろには秘書さんも立っていた。

( ・∀・)「いやあ、よくもまあ脱走してくれたもので」
川 ゚ -゚)「用意した食料が無駄になりました」
(´・ω・`)「あ、あの」
(*゚ー゚)「だって楽しそうだったんだもん」
川 ゚ -゚)「……」

女性二人がにらみ合い、膠着する。
一方、モララーさんは笑顔を崩さない。

( ・∀・)「まぁいいんですよ。あなた方の行動は筒抜けでしたから」


286 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:35:45.13 ID:qyfA7buo0
(´・ω・`)「え……監視カメラですか?」
( ・∀・)「いえ、あの監視カメラはあなたがたの想像通りさほど精度はよろしくない
     知っていましたか? テクノポリスが我々「V.I.P.D.C」の傘下にあることを」
(´・ω・`)「!」
( ・∀・)「単刀直入に言えば、私とギコさんは繋がっていたんですよ」

それは確かに衝撃的だ。
しかし、「V.I.P.D.C」が柘榴の影響下にないことを考えればありえなくもない。

( ・∀・)「あなたたちがギコさんに接触した直後、彼から連絡が来ました」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「まぁ、そういうわけです。あと、ギコさんからの伝言が一つ。
     『すまん』ですって」
(´・ω・`)「……」

ギコさんの秘密、か。
少し胸苦しいな。


287 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:36:23.71 ID:qyfA7buo0

( ∵)「それで、モララーさん。何の用です? あなたが苦情のためだけにわざわざ足を運ぶとは思えないのですが」
( ・∀・)「いえ、一つ面白い発見をしたもので」
( ∵)「と、いいますと?」

( ・∀・)「あなたがたが世界を停止させている間存在するべきは
      テクノポリス、柘榴、そしてV.I.P.D.C.……だけのはずですよね?」
( ∵)「ええ」
( ・∀・)「もう一つあったんですよ。存在していた場所が」
( ∵)「それはありえないでしょう」
( ・∀・)「放棄地区」
( ∵)「!」

( ・∀・)「捨てられ、誰もいなくなった地区ですよ。地区というより、山といった方が正しいかもしれませんが」
( ∵)「そこが、存在していたと」
( ・∀・)「ええ。監視カメラによる映像から明らかです」


288 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:37:29.68 ID:qyfA7buo0
いつかの荒巻さんの言葉を思い出す。
あの場所が主神地区と呼ばれる日はいつなのか……。

( ・∀・)「行きましょうか」
( ∵)「……放棄地区に? 一体なんのためです?」
( ・∀・)「興味のため……というよりは義務ですかね。
     柘榴は世界全てを管理するべきなのではないですか?」
( ∵)「……」

そのとき、鉄扉が開き、先生が中から登場した。

(-_-)「お待たせ……って、人が増えてるね」
( ∵)「彼らは?」
(-_-)「大丈夫だと思うよ。重大な損傷ではなかったし……入って」


289 :VIP皇帝:2006/12/30(土) 21:38:01.49 ID:qyfA7buo0
( ^ω^)「お」

ブーンが立っている。
元気そうだ、ひとまず安心。
そのそばで、ツンさんが少し脱力したように座っていた。
心配しすぎた、というふうに。
手をさすっているのは勢いあまって彼を殴り飛ばしたからだろうか。

(-_-)「こっちのアンドロイドはどうするの? バルケンとかいうの」
( ∵)「危険性を内含する以上放置するわけにもいきません。処分させます」 ( ^ω^)「……」

( ・∀・)「さて、ではあなたたちにも聞いてもらいましょうか」
(-_-)「ん?」

モララーさんが先生たちにも先ほどの話をする。


290 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:38:34.07 ID:qyfA7buo0
(-_-)「なるほど、放棄地区か」
( ・∀・)「勿論、無理にとは言いませんが
     柘榴の方々は行くべき。
     イレギュラーの二人にはこの世界から出る方法が見つかるかもしれない。
     それ以外の人にとってもそそる話だと思うのですがね」
(-_-)「さて、どうする?」
( ^ω^)「行きたいお」
ξ゚听)ξ「あんたはダメよ! さっき直ったばっかりじゃない」

ツンさんの制止を、しかしブーンは聞かなかった。

( ^ω^)「僕は行くお……行かなきゃダメなんだお」
ξ゚听)ξ「え……」
( ^ω^)「なんかよくわからないお。でも」
(-_-)「まぁいいんじゃない? 多分問題は無いよ」
ξ゚听)ξ「じゃ、じゃあ私も行く!」

意味も無く胸を張るツンさん。

(´・ω・`)「しぃ」
(*゚ー゚)「行くよ!」

聞くまでも無かった……か。

その瞬間、モララーさんが見せたどこか狡猾な笑顔を僕は見逃せなかった。


291 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:39:51.95 ID:qyfA7buo0
(-_-)「で、どうやって主神地区まで?」
( ∵)「車で行きますか?」
( ・∀・)「……あなた、知らないのですか? 柘榴の管理者のくせに」
( ∵)「?」
( ・∀・)「柘榴の果てにはエレベーターが設置されています。
      それを使えば、放棄地区へ向かうことができるのですよ」

柘榴にそんなエレベーターがあるのか。
いや、でもなんでだ?
やっぱり、主神地区っていうのが関係するのかな。

( ・∀・)「善は急げとはよく言ったものです。さて、行きましょうか」


292 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:41:19.40 ID:qyfA7buo0
(*゚ー゚)「あ、ちょっと待って!」
( ・∀・)「?」
(*゚ー゚)「上で荒巻さんが待ってるままだよ!」

あ、そういえば。
忘れかけてたな。
でも、モララーさんは怪訝そうな顔で首を横に振った。

( ゚∀゚)「ん? そんな奴いなかったぞ」
(*゚ー゚)「ほえ?」
( ゚∀゚)「さっき上に行った時には誰もいなかった。
     まあ、そのときに銃を奪われちまったわけだが……」 (*゚ー゚)「そう……」

相変わらず神出鬼没だな。
いや、消えたのは今回が初めてか。

( ・∀・)「さ、行きますよ」


295 :猪(友達がvipper):2006/12/30(土) 21:46:32.74 ID:qyfA7buo0
挿話四

ξ゚听)ξ「先生」

(-_-)「なに?」

ξ゚听)ξ「逆に聞きたい。なんで先生は私にこれほど手を焼いてくれるの?」

(-_-)「……僕の開発した技術に関わっている」

ξ゚听)ξ「それは、具体的に?」

(-_-)「そうだなあ。あまり詳しくは言いたくない」

ξ゚听)ξ「どうして?」

(-_-)「僕が見つけたのは忌避すべき事実だからさ。少なくとも、この世界にいる人々が知るべきことじゃない」

ξ゚听)ξ「……」

(-_-)「頃合いを見計らって教えるよ」

ξ゚听)ξ「本当ですか!」

(-_-)「多分ね」

・・・

・・




3 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:56:01.47 ID:ohNWnUud0
第十話 何もかもが嘘だと

(-_-)「気になることが一つか二つ」

( ∵)「なんでしょうか?」

(-_-)「誰かわからないけど、あなたの部下がギコのところに行ったよね?」

( ∵)「……ああ、知ってたんですか」

(-_-)「あれは、なんのため?」

( ∵)「いえ、もういいです。関係なくなりましたから」

(-_-)「と、いうと?」

( ∵)「ちょっとした手違いですよ。少し失敗しましてね」

(-_-)「……珍しいね、柘榴のトップともあろう者が失敗するなんて」

( ∵)「そうですねえ。はは、どこかから天罰が下るやも知れません」


5 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:56:47.90 ID:ohNWnUud0
いくら地下で繋がっているといっても僕らは時空を超えることが出来ない。
つまるところ、そろそろ歩くのに疲れてきた……ということだ。
モララーさんを先導に左に曲がったり右に曲がったり。
休憩などあるはずもない。
時間的にはもう半日ぐらい歩いた気分だ。

現在一行は八人。
( ^ω^) ξ゚听)ξ (´・ω・`) (*゚ー゚) ( ・∀・) ( ∵) 川 ゚ -゚) (-_-)
である。
それが蛇のように列をなして長々しい廊下を練り歩いているのだ。
ある意味、滑稽。

( ・∀・)「さて、そろそろですよ」

その声が響いたとき、一同の間に安堵の空間が形成されたのは間違いない。
僕もとりあえず腰を下ろしたくなったがそういうわけにもいかないので、仕方なく歩行を続ける。


6 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:57:10.33 ID:ohNWnUud0
モララーさんの言葉通り。廊下の終わりはすぐそこにあった。
突き当たったその先に、一つの扉。エレベーターの扉であることが外見で明らかだ。

中は広く、八人を優に収容することが出来た。
モララーさんがボタンを操作し、やがて静かに上昇を始める。
作為的な空気が包み、誰も言葉を発しない。

そして、意外と早くエレベーターは、空気が抜けたように停止する。

開かれた先には、まだ廊下が続いていた。
再び重苦しい感覚に襲われる。
疲労感もここにきて最高潮だ。

( ^ω^)「ツン、大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「……まあ、ね」

そんな中で一人、アンドロイドであるブーンは元気そのものである。
本当にどこも故障していないようだけど、今となってはその姿が妬ましい。


8 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:57:35.42 ID:ohNWnUud0
喪服の行列みたいな沈黙部隊はついに一つの鉄扉の前にたどり着いた。

( ・∀・)「ここを開ければ、放棄地区はすぐそこです」
(-_-)「ふうん」
( ・∀・)「ところで、放棄地区を見たことは?」
(-_-)「……僕はたまにテクノポリスから眺めるぐらいかな」

( ・∀・)「不思議なものです。
     あなたたちは他の地区に住んでいる人と違って自由に動くことがある程度可能。
     しかしながら、誰も放棄地区に立ち入ろうとはしない」
(-_-)「逆に、誰も立ち入らないから放棄地区なんて称されてるんじゃないの」
( ・∀・)「そうかもしれません……が、もしも意図的に誰も近寄らせていないとしたら?」
(-_-)「どういうこと?」
( ・∀・)「答えをお見せしましょう」

彼は扉を開ける。


9 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:58:01.83 ID:ohNWnUud0
僕らが見たのは自然の全てとも言える光景だった。
涼風が舞うその向こうに、青々とどこまでも広がる海が見えた。
森が見える。草原が見える。テクノポリスの全景が見える。
誰からともなく、ほう、と溜息が漏れた。

そして。

背後にそびえたつのはいつか見た電波塔だった。
いや、形状は少し違う。網目状ではなく、白色で覆われているために中を知ることは出来ない。
高さは大体十五メートルぐらいだろうか。

しかし。
ここにはそれ以外のものが何もない。
枯れ草が落ちている。青々と茂る木々などどこにもない。
もちろん、生き物も存在していない。
遠くは自然の全てがあると思えるほど華やかだというのに。

(-_-)「何もないね」

興味なさげに先生が呟いた。

(-_-)「ジャンクの名にふさわしい場所だ」


10 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:58:49.39 ID:ohNWnUud0
「ここを作ったのは君たちだろう?」

不意に聞こえたその声は僕らの身を震わせた。
どこからの声か、一瞬わからなかった。
だがそれが、電波塔の下からのものだと判明したとき、僕はその姿に喫驚することになる。

/ ,' 3「この世界の鏡とも言える。ジャンクよりもむしろ世界の果てという名にふさわしい」
(-_-)「どういうことかな?」

さすが先生も、平静を失っているような声を出す。

/ ,' 3「すでに知っているはずだ。ここがあなたたちによる再構成の影響を受けない場所だと」

荒巻さんの口調はいささか変貌していた。
まるで怒っているように。まるで恨んでいるように。

/ ,' 3「再構成をしないだけで世界はこのように荒れ果てる」
(-_-)「それは、世界が再構成ありきになっているからだろう」
/ ,' 3「ならば考えたことはあるか? 誰が柘榴というシステムを創りあげたのかを」

(-_-)「荒巻さん……あなたこそ、誰なんです?」


11 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:59:20.94 ID:ohNWnUud0
(-_-)「柘榴にもテクノポリスにもV.I.P.D.Cにも所属していない。
    一介のタクシードライバーを名乗るがこの世界でその存在が続くはずもない。
    まぁ、まともな人間ならここには来ないでしょうしね」

/ ,' 3「私は誰か……か。無礼にもほどがある」
( ∵)「無礼……ですか」

刹那、カチリ、という小さな音。

ビコーズさんは、自らのこめかみにあてがわれた黒光りするそれに、目を閉じて反応した。

( ∵)「モララーさんは全てを知っているようですが」

( ・∀・)「彼は、神なのですよ」

いつの間にか、というか、おそらく僕らが混乱に支配されていたときだろう。
モララーさんが、秘書さんが、それぞれ手に持つ拳銃を掲げていた。
モララーさんはビコーズさんを狙って、秘書さんは先生を狙って。

ツンさんが悲鳴をあげる。
僕としぃは何も理解できないまま、ただ阿鼻叫喚の巷と化した光景を眺めていた。


12 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/02(火) 21:59:45.85 ID:ohNWnUud0
(-_-)「神、ねえ」

命の危険に晒されてもなお、先生はその言葉を信じていなかった。

(-_-)「僕は仮にも科学者なんだ。そんな非科学的なことを言われても信用する気にはなれないな」
/ ,' 3「その割にずいぶんと昔話を求めていたようだが……まあいい。証拠を一つ」


その瞬間、荒巻さんはなんの動作も見せなかった。
だが、青い派の茂る大木は、いつの間にか僕らの目の前に現れていた。

/ ,' 3「この樹も、すぐに枯れ果てる」

巨樹を愛おしそうに見つめ、荒巻さんは呟いた。


13 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:00:08.82 ID:ohNWnUud0
/ ,' 3「神……そういうと高尚に聞こえる」

嘲笑するが荒巻さんはゆっくりとこちらに歩み寄る。

(-_-)「どこから予定調和なのかな?」
( ・∀・)「強いて言えば、イレギュラーをこの地に招き入れたところからですかね」

あの時、僕らを迎えに来たのは荒巻さんだった。
そして、連れて行かれたのはモララーさん率いるV.I.P.D.C。
そこから、何かが始まっていた。

( ∵)「つまり、神とV.I.P.D.Cは最初から繋がっていたと」
( ・∀・)「そうなりますね。私は神のために全てを動かした」
/ ,' 3「違う。私が全てを操ったのだ」
( ・∀・)「……そうでしたね」

全てと、二人は言った。
僕たちをあのマンションに住まわせたのも。
僕たちをあっさりを逃がしたことも。
ギコさんは先生を会わせたことも。
柘榴と接触したことも。

全部荒巻さんの思い通りだというのか。
じゃあ、何のため?


14 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:00:43.04 ID:ohNWnUud0

(*゚ー゚)「荒巻さん!」
/ ,' 3「……なんでしょうか?」

しぃの叫びに答える荒巻さん。
その声は、僕らの知るタクシードライバーの声だ。

(*゚ー゚)「全然意味がわからないんだけど!」
/ ,' 3「わかる必要もありませんよ。あなたたちにはこれから、一つの仕事をしてもらいます」
(´・ω・`)「し、仕事って……」
/ ,' 3「七面倒なことしてまであなたたちをここに連れてきた……それは全て君たちに神を継いでもらうためだ」

その言葉は僕の脳に直接打撃を与えた。
グラリ、と何かが揺らぐ。

(´・ω・`)「それは、つまり」
/ ,' 3「君もよく知るあの昔話だよ」


15 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:01:08.65 ID:ohNWnUud0
その昔、神様は天と地と草木と動物を創造した
そして神様はそこを世界の果てと名付けた
動物はやがて進化を遂げ、ついには人間と呼ばれる高等生物が誕生した
人間は嫉妬した。なぜ自分たちの世界は「果て」なのかと
人間は神様の再降臨を願った。そして願い通り神様は果てに訪れた
嫉妬する人間たちに、神様は長大なる文明と知識を与えたのである。

やがてその文明も古びてしまう。
果てが混迷に包まれたとき、神様は二人となって舞い戻る。

先生とギコさんがしてくれた話だ。

/ ,' 3「この世界を作ったのは私。
    この世界に文明を与えたのも私。
    私は神ではなく創世者だ」
( ∵)「そしてまた、自ら混迷に包むつもりですか? 世界を」


16 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:01:44.09 ID:ohNWnUud0
/ ,' 3「君たちのせいだ。君たちが柘榴などというシステムを作ったから
    容易に訪れるはずの混迷が訪れなくなった。
    ゆえに、私は新たなるイレギュラーが出現するまでの二百年間、
    ずっと待ち続けていなければならなかった!」
(-_-)「よくわからないね。創世者と言うならば、柘榴なんて壊すにたやすいはずだけど」
/ ,' 3「今の状態で柘榴を壊す……そうして世界の安寧秩序が保たれると思うか?
    一度構築された定義を再構築するのにどれだけの労力を要すると思っているんだ」
(-_-)「……怠惰な」

/ ,' 3「……君は知っているはずだがね」
(-_-)「何を?」
/ ,' 3「私がどうして疲れているかを」
(-_-)「それをわざわざ僕に問うということは……なるほど」

(-_-)「あなた、イレギュラーですか」
/ ,' 3「そうだ。だからこそ、この二人には神になる資格があるんだよ」


17 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:02:00.86 ID:ohNWnUud0

ξ゚听)ξ「ちょっと待ってよ」
/ ,' 3「先日はご乗車ありがとうございました」
ξ゚听)ξ「世界を混迷に包むのは自分だって、まさかブーンを……」
/ ,' 3「進行プロセスにおける一つの事項ですよ」

( ・∀・)「ま、私が手引きしたんですがね」
ξ゚听)ξ「あんた……!」
( ・∀・)「おっと、動かないでくださいね。ここからは、神々の舞台ですから」

モララーさんが一転した冷笑を見せてビコーズさんのこめかみに銃を押しつける。
ビコーズさんが苦悶の表情を浮かべた。
秘書さんは無表情のまま、ただ指令を待つように先生の眉間に狙いを定めている。

何もかもが混迷を来すためだとしたら理解できてしまうかも知れない。
ただ、納得は到底出来ない。


18 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:02:26.91 ID:ohNWnUud0
/ ,' 3「さて、お二人にはこちらに来てもらいましょうか」

荒巻さんの手招く先に、塔がある。

(´・ω・`)「……」
/ ,' 3「来なければ……と、物騒なことはしたくないのですが」

わかっている。
どうせビコーズさんや先生を殺すというのだろう。
神じゃない、ただの誘拐犯じゃないか。

(*゚ー゚)「……わかんないよ」
/ ,' 3「あなたたちは私の後を継ぎ、神となる。世界を構成する権利を得るわけです」
(*゚ー゚)「……」

しぃは言っていた。

この世界を、変えられるものなら変えたいと。


19 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:02:45.65 ID:ohNWnUud0
( ・∀・)「一つ、ためになるお話をしてあげましょう」

( ・∀・)「ある地区では今日も爆撃が繰り返されます。
     その中、生を授かる子……ロマネスクという赤子がいるのですが。
     その子は、毎日午後二時に爆殺されます」
(´・ω・`)「!」
( ・∀・)「彼はたった三時間の記憶もない命を延々と繰り返すのです。
     痛みを知っているのかは存じませんが……
     まったく、輪廻転生なんてあったもんじゃないですよね」
(*゚ー゚)「だめだよ!」
( ・∀・)「……」
(*゚ー゚)「そんなの……だめだよ、絶対に」

( ・∀・)「ならば、神になってください」
/ ,' 3「私の代わりにね」
(-_-)「……自分勝手な神様だ」

先生が苦々しげに呟く。
荒巻さんはそれを、何を今更というように笑い飛ばした。


20 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:03:02.12 ID:ohNWnUud0
/ ,' 3「神は誰のために世界を作る? 創世記における神はなぜ「光あれ」と叫んだ?」
(-_-)「……」
/ ,' 3「全て自分のためだ。
    自分の創った箱庭で動く生き物を見物したいがためにわざわざ世界を創世したんだよ」
( ∵)「創世記……?」
(-_-)「それはあまりにも否定的な考えだね」
/ ,' 3「だが現実的だ。実際私もそうだ。
    だからこそ、暇をもてあましているときにタクシードライバーという職業を選んだのだから。
    まぁ、私に合う職業ではなかったがね」

(-_-)「……わからないね、いろいろと。僕の常識に君は当て嵌まらないのかも知れない」
/ ,' 3「まぁ君の話はもともとどうでもいい。それよりも……だ」


21 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:03:25.65 ID:ohNWnUud0
/ ,' 3「どうします? 君たちは」

その、口調の変貌が気持ち悪い。
僕はしぃを横目で見る。
彼女は唇をふるわせていた。まだ、怒りに燃えているのだろうか。

(´・ω・`)「神にならなければ、どうなりますか?」
/ ,' 3「今まで通りにこの世界は回り続けますよ。平和は続き、死ぬべき者は死んでしまいます」
(´・ω・`)「じゃ、じゃあ僕たちは」
/ ,' 3「それについては何とも」
(´・ω・`)「さ、さっきあなたはイレギュラーだって!」
/ ,' 3「……そうですねえ」

どこまでも狡猾だった。
僕の中で、答えなどはじめから決定している。
ノー、だ。
しかし、僕にはわかっている。
ヒートしたしぃのあまりにも短絡的な思考を。


22 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:03:50.71 ID:ohNWnUud0
(*゚ー゚)「なるよ」
/ ,' 3「ほう」
(*゚ー゚)「私、なるよ。神様に」
(´・ω・`)「……」

やっぱり、彼女はバカだった。
しぃはこの世界の住人でもなんでもないじゃないか。
僕らの住む世界でも毎日誰かが理不尽な死に方をしている。
目先の別世界に囚われて何の意味があるって言うんだ。
彼女は何も理解していない。

/ ,' 3「それは嬉しい返答です」

実際、荒巻さんの表情は嬉々としている。

/ ,' 3「それでは、行きましょうか」
(*゚ー゚)「どこに?」
/ ,' 3「この塔の最上に、です。そこで引継の儀式のようなものを行います」



23 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:04:14.62 ID:ohNWnUud0
でも、僕は彼女に何も言えない。
何を言っても無駄だと知っているから。
そして、僕は彼女に異を唱えることが出来ない。
ただ従うのみだ。
単純に、しぃと離れるのが嫌だから。
でも、それでいいのだろうか。この世界における選択を、個人的な感情に委ねて。
いや、違う考え方をしよう。
個人的感情以外の何にも、委ねることが出来ないのだ。

(-_-)「……しぃ、だっけ」
(*゚ー゚)「はい?」
(-_-)「やめた方がいい」
(*゚ー゚)「……どうして」
(-_-)「ま、止める権利は有しないけど、一つだけ」

(-_-)「僕は君たちが汚れる姿を見たくない。それだけさ


25 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:04:45.96 ID:ohNWnUud0
( ∵)「同感ですね」

ビコーズさんも声を出した。

(*゚ー゚)「でも、私たちがやらないとこの世界は一生不幸なままだよ!」
(-_-)「君が神になったとして、全ての人間を幸せにする自信があるの?」
(*゚ー゚)「ある!」
(-_-)「……バカだね、実にバカだ。キリストですら、万人が満足する世界を築き上げられなかったというのに」

先生は吐き捨てる。
彼は怒っていた。完全に。

/ ,' 3「……さて、モララー」
( ・∀・)「はい?」
/ ,' 3「そいつらと共に上に行きましょう」


26 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:05:12.50 ID:ohNWnUud0
( ^ω^)「……」

不意に、それまで電池が切れたかのように動かなかったブーンが歩き出した。
なぜか、秘書さんに向かって。

( ^ω^)「お前」
川 ゚ -゚)「……近寄ると、壊しますよ」

秘書さんが銃口を向ける。
が、ブーンは動じず、一旦目を閉じた。
そして、思い通り、といったように笑って目を開く。

( ^ω^)「微量の電波を受信したお」
川 ゚ -゚)「……だから? なんだと」
( ^ω^)「お前、アンドロイドだお」
ξ゚听)ξ「え……なんで? こんな人、柘榴に存在しなかったのに」
川 ゚ -゚)「何も関係のないことです」


27 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:05:29.45 ID:ohNWnUud0
(#^ω^)「関係なくないお! アンドロイドは人を殺しちゃいけないんだお!」
川 ゚ -゚)「そんな定義は私に組み込まれていません」
( ^ω^)「……モラルに反するってツンが教えてくれたお!」
ξ゚听)ξ「……」
川 ゚ -゚)「理解に値しませんが」

( ・∀・)「ま、特注ですから。言ったでしょう? テクノポリスは私たちの傘下だと」
川 ゚ -゚)「……」
( ・∀・)「ま、どうでもいいことです。アンドロイドなんて、ね」
/ ,' 3「そうだ」

ブーンは何が言いたかったんだろう。
ただそれだけのために言い寄ったとは思えない。
どうしても。


28 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:05:59.93 ID:ohNWnUud0
塔に歩み寄る囚人のごとき一行。
緊張感は半端ではない。

僕はしぃを見る。
しぃは何か、決意に燃えていた。
それは傍から見るとあまりにも滑稽だった。

でも、笑えない。
むしろ怒りたい。でもそうできない。
なぜかはわからないけど。

/ ,' 3「この塔に入るのも何年ぶりでしょうねえ」

荒巻さんのノスタルジーな声がなぜか耳に残った。


30 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/02(火) 22:07:59.95 ID:ohNWnUud0
挿話五

( ・∀・)「柘榴の花言葉を知っていますか?」

/ ,' 3「再生、だろう?」

( ・∀・)「実はもう一つ」

/ ,' 3「ん?」

( ・∀・)「希望」

/ ,' 3「……」

( ・∀・)「V.I.P.D.C.とは真逆の考え方ですね」

/ ,' 3「黙れ」

( ・∀・)「……わかりました」

・・・

・・




47 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:51:13.46 ID:IW8oMVOy0
第十一話 生き神さま 死に神さま

塔内部には何もなかった。
そのせいか、一階の空間は意外と広く見える。
ただ上へ続く螺旋階段は、柘榴のそれを彷彿とさせる。

ただ、明るい。
どこから光が発せられているというわけでもない。
あえていうならば、空気が明滅しているようだ。

なぜか存在する期待と、必然的な不安の交叉。

最早疲労は感じなかった。
感覚はもうすでに麻痺してしまったようでもある。

僕は何がしたいんだろうか。


48 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:51:30.33 ID:IW8oMVOy0
/ ,' 3「ここは、私がこの世界に来て初めて創った建造物です」

先頭を行く荒巻さんが誰にともなく口を開く。

/ ,' 3「昔は、皆私を崇め奉った。
    だからこそここは主神地区と呼ばれたんだ」

懐古に浸る。
自己陶酔しているようでもあった。
誰も、何も言わない。

/ ,' 3「だが状況は変貌した。
    高度な文明を与えてやった途端、人間は柘榴などというシステムを構築した!
    冒涜にも等しき行為だ!」
(-_-)「ならばそのときに柘榴をつぶすべきだったね。今更言ってもしょうがない」

後続する先生がボソリと言った。

/ ,' 3「私とて暇ではないのだ…そして疑問だ。
    私がこの世界から手を離していたのは一年程度……だのに、気づけば文明は大幅な飛躍を遂げていた」
(-_-)「まぁそうだね。世界の中心ですらテクノポリスほど繁栄していないのに。」


49 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:52:14.47 ID:IW8oMVOy0
荒巻さんが与えた文明とはどの程度のものだったのだろう。
イレギュラー……だとすれば、少なくとも僕らの知る文明程度にしか発展させることが出来ないはず。
いや、そもそもイレギュラーがこの世界でなぜ永遠にも近しい期間を生き続けていられるのだろう。

/ ,' 3「君には後々聞きたいことがいろいろとある」
(-_-)「答えないかもね。それに、もっと知っている人がいるはずさ」
( ・∀・)「……」

(*゚ー゚)「ねえ、ヒッキー先生」
(-_-)「先生はやめてもらえるかな」

しぃの言葉を先生は突き放す。
彼女はしばらく黙り込み……それでも言葉をつなげた。

(*゚ー゚)「なんでテクノポリスでは普通に時が流れてるのに、あんなに平和なの?」
(-_-)「……」
(*゚ー゚)「あんなに文明が発達してたら、普通は支配しようとか思う人がでてくると思うけどな!」
(-_-)「……さあね。僕の知ったことじゃない」


50 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:52:29.66 ID:IW8oMVOy0
螺旋階段は柘榴の時ほど長くなかった。
最上にたどり着いたとき、僕の期待はある意味裏切られた。
その部屋には、何もなかったのだ。

ただ、周囲を展望できる窓だけが存在する。
物見櫓みたいな存在なのか、ここは。

確かに、創世の場所には相応しいかもしれない。

/ ,' 3「懐かしい場所だ。あの頃と何も変わっていない」
(-_-)「なぜ何も変わってないんだろうね?」
/ ,' 3「何……?」
(-_-)「ここは放棄地区だというのにね」
/ ,' 3「……」


51 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:52:46.33 ID:IW8oMVOy0
(-_-)「どこかの国には八百万の神を主張する場所があるんだっけ?」
/ ,' 3「何が言いたい?」
(-_-)「神様はあんただけじゃないのかもね」
/ ,' 3「何を言う……この世界はすべて私が創造した!」
(-_-)「じゃあ柘榴は? アンドロイドの起源はどう説明する?」

荒巻さんの顔が歪む。
今まで度外視してきた問題に直面したように。

/ ,' 3「……喋りすぎは命に関わる」
(-_-)「そう。じゃああと一言で済ませよう」

(-_-)「自惚れ野郎」
/ ,' 3「……ふん」


52 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:53:16.27 ID:IW8oMVOy0
/ ,' 3「さて、お二人さん」

表情を崩さないよう努力しているように見える。
あと一つでも刺激を与えれば崩壊は確実だ。

/ ,' 3「一つだけ、誓約を」
(*゚ー゚)「なんですか?」
/ ,' 3「この世界を見捨てないように……と」

それはあまりにも利己的、他人任せな誓いだった。
自分はできなかったくせに。僕らにそれを求めるのか?

(*゚ー゚)「誓います」
/ ,' 3「よろしい」


53 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:53:40.44 ID:IW8oMVOy0
その一言の直後、塔が打ち震えたような感覚に襲われる。
足下が揺らぐ。視界が歪む。
無重力を体感しているような気分。

そして。
その躍動が終焉したとき。
僕が見たのは半透明の世界だった。

/ ,' 3「引継は終わった」

荒い息を吐きながら荒巻さんは呟く。

/ ,' 3「これから、この世界はあなたたちの自由です」

(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「……」


54 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:53:56.09 ID:IW8oMVOy0
/ ,' 3「あなたたちが強く念じれば、世界は可能な限り姿を変えます」
(*゚ー゚)「……よし」
/ ,' 3「基礎から変えるのは本当に難しいと思いますが、がんばってください」

(-_-)「……」

祝福はなかった。
そもそも神様になったという実感もない。
感じるのはなんだろう。憎悪とか、そのあたりのマイナス感情。

ただただ瞳を燃やすしぃ。
打ち拉がれた僕。

新しい神は対を為していた。


55 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:54:16.08 ID:IW8oMVOy0

/ ,' 3「どうだ? 新しい神の誕生を見た気分は」
(-_-)「最悪」

(*゚ー゚)「荒巻さんはこれからどうするんですか?」
/ ,' 3「タクシードライバーに戻りますよ。広い世界をまだすべてに見たわけではないので」
(´・ω・`)「……」
/ ,' 3「そして、帰ります」
(´・ω・`)「どこに?」
/ ,' 3「無論、元の世界にですよ」
(´・ω・`)「!」

なんてこった。
いや、僕はわかっていたはずだ。
なのに、思い出せなかった。
この男は、イレギュラー。
そして、帰る方法を知っている……。


56 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:54:32.21 ID:IW8oMVOy0

(´・ω・`)「僕らを帰してください!」
/ ,' 3「あなたたちは先ほど誓約をたてたじゃないですか。この世界を見捨てない、と」
(´・ω・`)「……」
/ ,' 3「だから無駄です。あなたたちには永遠に神をやってもらわないと」

こいつは、どこまでも、どこまでも……

(´・ω・`)「卑怯だ……」
/ ,' 3「おやおや。神様でしょう? 自由に作りかえればいいじゃないですか」
(´・ω・`)「……」

それが心地の良いものでないとわかっているはずだろう。
そうでなければ帰ろうなんて思わないはずだ。


57 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:55:08.61 ID:IW8oMVOy0
( ・∀・)「これからは全面協力させていただきますよ」

まるで媚びへつらうように。
未だ銃を掲げたままのモララーさんが言った。

( ・∀・)「何か困りごとがあればV.I.P.D.C.まで、どうぞ」

そして部屋を出て行こうとする。

待って欲しいと思った。
でも言葉に出せなかった。
何も、できない。
何も、考えられない。
どうすればいいんだ。
誰も教えてくれない。
なぜなら、僕は神さまになったから。


58 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:55:26.25 ID:IW8oMVOy0
二人なのに孤独だった。
しぃは全景を見渡している。
僕は脱力したまま座り込む。

(´・ω・`)「……神様、か」

なんでもできるというならば。
まず、荒巻さんを殺したい。全力で。
でも、それを強く念じたところで何が変わるというのだろう。

今になってはっきりとわかった。
僕はこの世界に興味など無い。


59 名前:甲州[] 投稿日:2007/01/03(水) 10:56:16.15 ID:IW8oMVOy0
(*゚ー゚)「しょぼんくん……」

しぃが近寄ってくる。
それを僕は拒否しない。待ちかまえていた。

(*゚ー゚)「立って」
(´・ω・`)「……」

聖母のような笑顔を見せるしぃを僕はにらみつけた。

(*゚ー゚)「がんばろうよ、一緒に」

その声にふらふらと立ち上がる。

(*゚ー゚)「手伝ってよ、ね?」

その言葉に僕は無条件に反応していた。
乾いた音が響く。
僕の手は彼女の頬を打っていた。
驚愕の表情で、彼女は僕を見る。

直後、僕の耳を数度の小さな銃声が突き刺した。


61 名前:ネオマスカット[] 投稿日:2007/01/03(水) 11:00:25.49 ID:IW8oMVOy0
挿話

( ・∀・)「人が悪い」

/ ,' 3「何を今更」

( ・∀・)「今だから言えるんですよ。あなたは神でなくなったのだから」

/ ,' 3「まぁいい。なんでもぶちまけてみろ」

( ・∀・)「あなたは知らない。この世界がどのように変貌したか」

/ ,' 3「何?」

( ・∀・)「まあいいでしょう。いずれ知ることになりますよ」

( ・∀・)「もう一人の神の存在を。
     そしてそれは、すべての疑問を解決します」

/ ,' 3「……もう、私には関係ない」

( ・∀・)「そうでしたね」

・・・

・・




79 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:51:17.94 ID:IW8oMVOy0
第十二話 悲壮感の空間で

ありえないぐらいの焦燥に駆られる。
音が小さかったとはいえ、発砲が近くで起こったことは間違いない。
嫌でも、モララーさんと秘書さんが銃を持っていたことを思い出す。

(´・ω・`)「……」

だが、しぃはその音に反応すらしていなかった。
驚愕、あるいは慍色の表情で僕を見つめる。
たじろぐ僕に対し、彼女は何も言わない。言ってくれない。

窓に駆け寄り、外を見る。
……そこには、誰もいなかった。
ただの幻聴だったのだろうか。

(*゚ー゚)「……聴こえるよ」
(´・ω・`)「え……」
(*゚ー゚)「音が聴こえる……銃を撃ってるみたいな音」

今、僕には何も聴こえない。
しぃは目を閉じ、聴覚に神経を集中させているようだ。


80 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:51:53.10 ID:IW8oMVOy0
(*゚ー゚)「消えた」

しばらくして、しぃがぽつりと。
僕は黙って彼女に背を向ける。
幻聴が二人同時に起こるはずもない。
ならば、答えは一つしかないじゃないか。

(*゚ー゚)「ねえ、しょぼんくん。これでもやっぱり関係ないかな?」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「この世界と私たちは」

どこかの地区で銃声が響いている。
今日も誰かが死ぬのだろう。
そして、明日になればまた生き返り、不可避の運命を辿ることになる。

関係がない、とは今更言えない。
僕は関係させられてしまっている。


81 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:52:17.25 ID:IW8oMVOy0
振り向き、しぃを見る。
彼女の右頬はわずかに赤く染まっていた。

(´・ω・`)「でも、この世界は元々僕らの世界じゃない」
(*゚ー゚)「それはそうだよ。でももう、私たちはこの世界の救世主になっちゃった」
(´・ω・`)「勝手にさせられたようなもんだ! 僕は、僕はすぐにでも帰りたい
       でもしぃは違うんだろ!? この世界に余計なお世話をしたいんだろう!?」
(*゚ー゚)「も、元々関係ないからって助けられるものを助けないのはなんか違うと思うな!」

(´・ω・`)「じゃあ帰りたくないの?」
(*゚ー゚)「そりゃ帰りたいよ。ああ、今すぐ帰りたいさ! でも無理じゃん、不可能じゃん
     だからってふさぎこんでてもしょうがないじゃん……」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「向こうの世界じゃ絶対に神様になんかなれない。
     この世界を助けることの何が悪いのさ!」

怒鳴るしぃに僕は何も言えない。
悪くはない。絶対に。でも。


82 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:52:34.98 ID:IW8oMVOy0
(*゚ー゚)「さ、何からやればいいのかな」

しぃだってわかっているはずだ。

(*゚ー゚)「まずみんなが平和に暮らせる世の中にしないとね!」

僕らは何も知らない。

(*゚ー゚)「戦争のない世界にしたいなあ」

何も知らない僕らが、世界を変える?

(*゚ー゚)「それからみんなが幸せになって、元気になって……」

そんなこと、できるはずもない。

(*゚ー゚)「……」

所詮一介の高校生。ただ絵本作家を目指す彼女と、将来の展望など何もない僕。

(*゚ー゚)「ねえ、しょぼんくん」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「私たちに、できるかなあ?」


83 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:53:11.98 ID:IW8oMVOy0

(´・ω・`)「できるわけないよ。僕らの知る世界から戦争がなくなったことも、
       人類みんなが幸せになったこともないのに」
(*゚ー゚)「そうなのかな」
(´・ω・`)「しぃだってわかってただろう? 
       自己満足で世界を救うなんてできやしないんだ」
(*゚ー゚)「でも、でももう、お、遅いよ……引き受けちゃったじゃん……」

瞳は悲哀に満ちていた。
すべてが絶望を物語っていた。
安請け合いしていいものではなかったのだ。
でも、彼女は見捨てることが出来なかった。
なまじっか力があると言われたばっかりに。

(*゚ー゚)「……どうすればいいのかな」
(´・ω・`)「わからないよ。僕には。そして誰も教えちゃくれない」
(*゚ー゚)「あー、だめだ。なんか、泣きたい」
(´・ω・`)「……」


84 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:53:57.91 ID:IW8oMVOy0
そのとき、また何かが聞こえてきた。
それは幻聴。
遠いどこかの叫びだった。

「この子の名前は何にしようか」
「そんな、悠長なことを考えてる暇なんて無いわよ。今は」
「そういうなよ。名前ってのはこれから生きていくうえで大切な勲章だ」
「……私は、産まれてくれただけでもう満足しちゃってる」
「そうだな。こんな時代だ……そうだ、ロマネスクにしよう」
「ロマネスク?」
「どこかの言葉で小説的って意味さ。希望、とかじゃストレートすぎて面白くないだろう?」
「……うん、いいわ。この子は、ロマネスクね」
「子供に戦争終結を願うのは卑怯かな?」
「わからないわ……でも、悪くはないはずよ。神様もきっと許してくれる」
「……そうだね」

僕らは、この夫婦の結末を知らない。
でも、子供の結末を知っている。


85 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:54:17.92 ID:IW8oMVOy0
(*゚ー゚)「助けないと……」

音は途絶えた。
今回、しぃと僕は同じ音を聞いていたらしい。

(´・ω・`)「どうやって」
(*゚ー゚)「あの子の、せめて命だけでも」
(´・ω・`)「それをしたところで何になるのさ。
       モララーさんは確かにロマネスクって言ってたよ。
       でもそれはあくまで一例。他にも死んでしまう人はたくさんいるはずだ。運命的に」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「公平性に欠ける」
(*゚ー゚)「じゃ、じゃあ見捨てるの?」
(´・ω・`)「それしか、ないよ」


86 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:54:42.48 ID:IW8oMVOy0
言いながら自己嫌悪に陥る。
これじゃあただの性悪人間だ。
助かる命があるなら助けるべきだと、思うはずだ。

なのになぜかそう思えない。
神様って肩書きが付いただけだ。それなのに。

(´・ω・`)「明日になればまた世界は再構成される。そのときになんとかすればいいと思う」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「時間はあるはずだ。もっと、考えてみようよ」
(*゚ー゚)「うん……わかった、よ」

渋面で引き下がるしぃ。
僕は、彼女に謝りそびれていた。


87 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:55:46.70 ID:IW8oMVOy0
実感は何もない。
僕はもう一度窓の外を眺めるだけだし、しぃは壁に向かって座り込んでいる。
彼女は、泣いているのかもしれない……いや、まさか。
泣いたところ見たことないし、それはないだろう。
多分、おそらく。

そのまま時は過ぎていく。
しぃは何か考えているのだろうか。
僕は何も考えていない。
たとえば今、「世界よ平和になれー」と考えたところでその通りになるとは思えない。
荒巻さんも「可能な限り」と言っていた。

じゃあ小さなことから、と考えを進める。
だが行き詰まる。その「小さなこと」が思いつかないのだ。
誰かを助けてみる? じゃあ誰から?
知っている人からというのはやはり不公平だから優先順位を……など。
無駄だとわかっているのに。


88 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:56:08.65 ID:IW8oMVOy0
たとえば今柘榴を停止すれば必ず世界は崩壊する。
じゃあ世界が崩壊しないように繕えるのか。出来ない相談だ。
逆に世界を柘榴の影響下になくても順調に循環するような社会にすることは?
無理だ。どれほど広いのかもしれない世界を一日で作りかえることなど。
じゃあ、やっぱり絶望なのか。

そのとき、しぃがふと立ち上がった。

(*゚ー゚)「んー……」
(´・ω・`)「ど、どうしたの?」
(*゚ー゚)「ほいっと」

えい、とばかりに手を振った瞬間。
彼女の前の空間に、何か物体が出現した。

(´・ω・`)「?」

パサリ、とそれは地面に落ちる。

(*゚ー゚)「おお、できた」


90 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:56:37.42 ID:IW8oMVOy0
期待するまでもなかった。
それはスケッチブックとペン。
確か、当初のマンションに置き忘れてきたヤツだ。

(*゚ー゚)「ほうほう、これぐらいならできちゃうのか」
(´・ω・`)「……荒巻さんも樹を出現させてたしね」
(*゚ー゚)「でもあれは多分、柘榴の影響を受けてない場所から出来たんだよ」
(´・ω・`)「……そうかな」
(*゚ー゚)「そうともさ」

そういうと、しぃはぺたりと座り込んでスケッチブックを開く。

(´・ω・`)「何するの?」
(*゚ー゚)「絵本描く」
(´・ω・`)「え……明日のこと考えるって」
(*゚ー゚)「もしかしたら描いてるうちに何かが浮かぶかもしれないよ」

……つくづく不思議な子だと思う。
僕に、彼女の本気は伝わってこない。


91 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:57:10.01 ID:IW8oMVOy0
(*゚ー゚)「それにしても」
(´・ω・`)「?」

ペンの走る音が響いている。

(*゚ー゚)「おなかすかないね」
(´・ω・`)「あ、そういえば」

時間的にもう昼飯時なんじゃないだろうか。

(*゚ー゚)「……なんだろ、やっぱり神様になると食べ物とか必要なくなるのかな」

しぃは寂しげだ。
……というか、それは本当だろうか。
何も食べなくて済むとなればやはり何か物寂しい。

(*゚ー゚)「霞とか食べればいいのかな?」
(´・ω・`)「それは仙人でしょ」


92 名前:アムス[] 投稿日:2007/01/03(水) 20:57:34.74 ID:IW8oMVOy0

(*゚ー゚)「そして眠くもならない」
(´・ω・`)「うーん……」
(*゚ー゚)「おぉ、なんだか人間脱却って感じだ」

嬉しいのかな、しぃは。
僕は嬉しくないぞ、というか怖い。

そういえば。
荒巻さんはこの世界を創ったときから生きてるんだっけ。
じゃあ、僕らも必然的にそうなってしまうのだろうか。

……だめだ、考えたくもない。
しぃは淡々と絵本を描く。
暇というものがこれほど恐ろしいということを、僕は知らなかった。


96 名前:ホ−ムラン[] 投稿日:2007/01/03(水) 21:03:59.81 ID:IW8oMVOy0
挿話

( ・∀・)「気分はどうです?」

川 ゚ -゚)「別に、どうということも」

( ・∀・)「いえ、あなたはもう自らの運命を知り得ているはずですから」

川 ゚ -゚)「なんのことだか」

( ・∀・)「……ひねくれましたねえ」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「もうすぐもう一人の神様がやってきます。昔話の執筆者になるつもりはありませんか?」

川 ゚ -゚)「どういうことでしょうか」

( ・∀・)「既存のお話に付け加えるのです。
      やがて四人目の神が現れ、世界をあるべき姿に再生させる、と」

川 ゚ -゚)「あなたがやればいいじゃないですか」

・・・

・・




122 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/04(木) 15:57:58.68 ID:sGFdDask0
第十三話 空と海と世界の夜

ある日、山にすむうさぎのぽーさんはりんごの樹を見つけました。
りんごが特に大好物のぽーさんは喜び勇んでその樹に登り始めました。
が、なかなか登り切ることが出来ません。途中で滑ってしまうのです。
と、そのときくまのぺーさんが現れ、ぽーさんを持ちあげてくれたのです。
うんとたくさんのりんごにありつくことができたぽーさんはそれはそれは大喜びでした。



(*゚ー゚)「次回に続く」
(´・ω・`)「……続かなくていいような」

でも、オリジナルに挑戦したという点は評価すべきなのだろうか。
それにしてもぺーさんはないだろう。ぺーさんは。
ピンク色でもないだろうに。


123 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/04(木) 15:58:18.84 ID:sGFdDask0
沈む太陽は空に暁を残す。
しぃの絵本を見終えた僕はそのまま佇む。

(*゚ー゚)「んー、何も思いつかなかったよ」
(´・ω・`)「……そりゃそうだろうね」
(*゚ー゚)「なんか諦めたくないんだけど、諦めたい」
(´・ω・`)「……うん」

その気持ちは痛いほど理解できる。

そのときだ。
コツ、コツ、と。
下層から足音が聞こえてきた。

薄暗くなって再認識させられるのはここがあまりにも寂しい空間であるということ。
来るのが下からだとすれば逃げ道は一つもないのだ。

(*゚ー゚)「なんか来るよ」
(´・ω・`)「……」


124 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/04(木) 15:58:51.08 ID:sGFdDask0
硬直のまま時は過ぎ、
やがて見えたその姿が人間であることに、安堵することが出来た。

('、`*川「……あれ? 誰かいる」

女性だった。
二十歳前後だと思う。
どこか温和で、優しげな表情をしている。
おかげで、見知らぬ人ながらさほど恐怖を感じなかった。

('、`*川「ああ。君たちがあの?」
(´・ω・`)「……多分」
('、`*川「なるほどなるほど。それで神様になっちゃったのか」
(*゚ー゚)「……」

('、`*川「口車に乗せられて」
(´・ω・`)「あなたは、誰ですか?」


126 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/04(木) 15:59:19.63 ID:sGFdDask0
('、`*川「あなたたちと一緒」
(´・ω・`)「え……」
('、`*川「まぁ私の素性は後から明かしてあげるから。
     それよりも、見せたいものが二つあるわ」

彼女はゆっくりと僕らに近づき、片手でチョキマークを作った。

('、`*川「選ばせてあげる」
(´・ω・`)「?」
('、`*川「夢と世界、どっちからがいい?」

どっちがいいと言われても。
どちらも抽象的すぎて意味がわからない。

(*゚ー゚)「世界から!」

しぃが意味もなく叫ぶ。


127 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/04(木) 15:59:48.55 ID:sGFdDask0
('、`*川「世界……か。そっちはまぁ勝手に見てくださいって感じかな」

そういうと、その人は窓際に歩いて手をかける。

('、`*川「行こうか」
(´・ω・`)「どこにですか?」
('、`*川「空の上」

そういって窓の外の宵闇を指さす。

(´・ω・`)「どうやって?」
('、`*川「何言ってんの。神様なんだから、空ぐらい飛べちゃうよ」
(*゚ー゚)「ほんとに!?」

しぃが目を輝かせる。
いやいや、ありえな……いこともないのか?
なんかもう、いろいろどうでもいい。
そう思ってしまうのは神様だからだろうか。
人間と思考が違うからだろうか。


128 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:00:15.91 ID:sGFdDask0
そして。
僕らは空を飛んだ。
いや、浮上といった方が正しいかもしれない。
ただ浮かべと念じれば通じてしまうのだ。
呼吸するにも問題ない。寒くもならない。

気分は爽快だ。爽快すぎて恐ろしい。
こんなにも容易に浮上できる……なら、大抵のことはできてしまうのだろう。
世界のことなど考えずただ生きるだけなら何も心配はいらないはずだ。

考え方によればこんな力を得た以上、向こうの世界よりも楽に生きていけるのではないか。
気味の悪い邪念が現れ、やがて消失した。
だが、後味悪い感触はいつまでも残った。


129 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:01:08.53 ID:sGFdDask0
塔が豆粒ほど小さくなる。
飛行機から見たような夜景を、窓も無しに眺めている。

そろそろ不安になってきた。
一方のしぃは、

(*゚ー゚)「ねえねえ、しょぼんくん」

意外と平然としていた。

(*゚ー゚)「星が見えないよ」
(´・ω・`)「そういえば……」

言われて初めて気がついた。
星はおろか、月すらも見えないのだ。

('、`*川「そりゃそうだよ。最初の神様は太陽以外の他の星を作らなかったんだから」

そういわれれば……そうなのか。
所詮他人に作られた世界なのだ。
そこに科学もへったくれもあったもんじゃない。


131 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:02:21.18 ID:sGFdDask0
('、`*川「このあたりでいいかな」

まだ大気圏を突破した気分じゃない。
地表はまだ平坦に見えている。

('、`*川「この世界は二十以上の地区で構成されている」

そこに地面があるかのように。
彼女は空を徘徊する。

(´・ω・`)「……」
('、`*川「昔……柘榴のなかった頃はねえ、海には魚もいたし人々は平穏に暮らしていた。
     戦争なんて無かったしね。っていうか地区分けもなかったわよ。
     でもこの世界の神様は途中で飽きちゃったのよね」
(´・ω・`)「その神様って、荒巻さんのことですか?」
('、`*川「そうそう。
     彼が最後にした仕事って何か知ってる?」
(´・ω・`)「いえ……」

('、`*川「この世界をできるだけ地球に近づけようとしたの。
     あるところでは文明を発達させ、あるところでは貧しい人々ばかりを集めた。
     そしてまたあるところでは戦争を起こした。それも適当に」 (*゚ー゚)「ひどい……」


132 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:03:41.17 ID:sGFdDask0

('、`*川「もちろん、そんな投げやりなやり方で世界が順調に回るはずもない。
     地球の神様みたいにある程度作ったらあとは放置しておけば良かったのにね。
     挙げ句の果てには自らも理解できないほど高度な文明を与えちゃって。
     ま、そこで私が颯爽と表舞台に登場したんだけど」
(´・ω・`)「あなたが……」
('、`*川「ま、それは後に置いておきましょう。
     まずは世界を堪能しなさいな」

広すぎる世界を見渡す。
どこかの街で戦争が起きている。
どこかの街で人が死んでいる。
だが、もうすぐすべての街が元通りになる。
それを繰り返すのが……悪いことだと思えなくなってきた。
この世界は末期なのだ。
余命数ヶ月と宣告された患者を必死に延命させているようなものなのだ。
柘榴という器具を外せば、この世界は瞬く間に死んでしまう。

元通り持ち直すのは不可能なのだろう。
そもそも、順調を前提として創世されたのではない。
混迷を求めて創世されたのだから。


133 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:04:44.12 ID:sGFdDask0
でも、しぃはどう考えているのだろう。
彼女は今、穴が空くほどの勢いで下界を眺めている。
やっぱり助けたいのだろうか。
それはやはり願いのままで終わってしまうのだろうか。

(´・ω・`)「あの」
('、`*川「ん?」
(´・ω・`)「助ける方法はないんですか、この世界を」

僕の問いに、しばらく眉間に指を押さえて考え込む女性。

('、`*川「んー……あるにはある」
(´・ω・`)「!」
('、`*川「でもいろいろキッツいよ。
     それに、私はまだ見せたいものを全部見せてないし」

ああ、そうか。
夢、か。
今になってもよくわからないものの一つだ。

('、`*川「じゃあ見る?」
(´・ω・`)「……今、ここで?」
('、`*川「そ」

見当もつかない。
眠くもないのに見る夢って、白昼夢の類だろうか。
そういえば、最近夢を見てないな。

('、`*川「大丈夫大丈夫。別に怪しいもの見せるわけじゃないんだから」


134 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:05:32.05 ID:sGFdDask0
('、`*川「目を閉じて」

言われて、隣に立つしぃは何も疑わずに目を瞑る。
なんでそうホイホイと信じ込めるのだろう。
仕方ないので僕もそれに倣う。

('、`*川「……ほいっと」

小さな声が聞こえた直後、
意識が渦を巻いた。頭を強く揺り動かされているようだ。
そして僕は、落ちるはずのない睡眠に落ちていた。

次に僕が目を覚ますまでに、結構な時間を要した……はずだ。


136 名前:アールス[] 投稿日:2007/01/04(木) 16:13:13.94 ID:sGFdDask0
挿話

('A`)「あれ、しょぼんは?」

(・∀ ・)「まだこないねー」

('A`)「あいつ、忘れてんじゃね?」

(・∀ ・)「さーねー」

('A`)「アイツこの頃なんか顔色変だったからな。風邪かも」

(・∀ ・)「それよりもさっさとはじめよー」

('A`)「あぁ。そうだな……もうテストまで幾日もねえや」

(・∀ ・)「ところでさー」

('A`)「あ?」

(・∀ ・)「マイメロディーって何時からだっけ?」

('A`)「日曜日の九時半……お前やる気あるのかよ」

(・∀ ・)「えー、あるよー」

・・・

・・




149 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:33:20.45 ID:sGFdDask0
第十四話:絶望論

('A`)「起きろよ!」

その声に、反射的に上体を起こす。
背中から腰にかけてが痛む。
無理もない、僕は机に突っ伏したまま眠っていたからだ。

(´・ω・`)「ん……ここは?」

そこは見覚えのある風景。
元々の世界にある、近所の図書館だった。
放課後、勉強意欲のあるすばらしい学生さんはここに来て問題集を広げる、そんな空間。

('A`)「お前寝ぼけんなよ」
(´・ω・`)「え、あー……ごめん」
(・∀ ・)「まったく、遅刻したくせにー」

そうだ。
徐々に記憶が回復する。
テスト一週間前だからということで、友達……ドクオとまたんきと共に放課後、
図書館で勉強会を開こうと計画したんだった。
どおりで、周囲は学生で埋め尽くされている。


150 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:34:10.86 ID:sGFdDask0

(・∀ ・)「席をとっといてあげたんだから、感謝してよねー」
(´・ω・`)「あ、うん。どうも」

目の前の問題集を見る。
集合とか極限とか、ややこしそうな単語が一杯目に入る。

(・∀ ・)「ドックオー、ここを教えろー」
('A`)「ああ? どれだ」
(・∀ ・)「物理」
('A`)「ああ、俺ダメ。文系だもの」

(・∀ ・)「じゃあ生物」
('A`)「文系だってんだろうが」
(・∀ ・)「じゃあ次の仮面ライダー」
('A`)「電王」

おかしいな。
何かを、忘れている気がする。


151 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:36:07.16 ID:sGFdDask0
その時、ズボンのポケットが震えた。
多分携帯電話だ。

周囲を気にしつつモゾモゾと取り出す。

サブ液晶には「新着メール:一件」とある。

(´・ω・`)「……?」

普段メールのやりとりなどあまりしない。
決して友達が少ないわけではない、はず。

二人の視線を感じつつボタンを操作。
届いたメールをチェックする。

「西町の、公園に来てください」

それは、しぃからのものだった。


152 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:37:02.45 ID:sGFdDask0
なんで敬語なんだ、という疑問がまず浮かんだ。
気味が悪い。いつもはもっとハイテンションなメールばかり送ってくるくせに。
……で、どうしよう。

断るのが一番手っ取り早いが幸か不幸かここから西町の公園までは歩いて五分ぐらいだ。
何のようかも書いていないのが気になるし。

そして、寝起き早々勉強に飽きている。
よし。決まりだ。

(´・ω・`)「ちょっと外行ってくる」
('A`)「あぁ!?」
(・∀ ・)「どっしたのさー?」
(´・ω・`)「……のどが渇いた」

('A`)「これか」

と、ドクオが小指を立てる。

(´・ω・`)「いや、違うよ。つーか、いないよ」
('A`)「いや、お前の目が物語っているよ」
(・∀ ・)「男の目のそんなに凝視すんなよー、ドックオー」


153 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:38:21.23 ID:sGFdDask0
席の確保を二人に任せ、とりあえず僕は図書館を出た。
「今から行く」と、しぃには返信しておく。
途中、携帯を操作していて一つ疑問が浮かぶ。

(´・ω・`)「なんだこれ……」

受信メール一覧。
そこが、しぃの名で埋め尽くされていた。
ざっと十件ほど。
そしてそのすべてに、僕は丁寧に返事している。
受信時刻は午前一時ごろ。
深夜じゃないか。僕、何か彼女と言い争いでもしたのか?
しかし見ている暇がないので僕は携帯を閉じてしまう。

自然と歩調が早まり、僕は公園へ急いだ。


154 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:40:15.35 ID:sGFdDask0
そこは閑静な住宅街の中にある。
部活もないので、この時刻に帰宅する学生もあまりいない。
公園は狭く、遊具とよべるものがないので子供もあまり遊びに来ない。
そんな場所に立っているのはしぃだけである。

(´・ω・`)「しぃ!」
(*゚ー゚)「……あ」

しぃが気づき、こちらを向く。
セーラー服の彼女は、表情に悲壮と不安を湛えていた。

何が起きたというのだろう。

(´・ω・`)「どうしたの?」
(*゚ー゚)「……」

瞳を潤ませ、肩を弾ませているしぃは、しばらく何も答えなかった。


155 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:41:36.07 ID:sGFdDask0
(*゚ー゚)「……さんが」
(´・ω・`)「え……?」

たどたどしく言葉を紡ぐしぃ。
あまりにも弱々しいその姿。

(*゚ー゚)「お父さんが、お母さんを……」

身体が揺らぎ、僕は慌てて彼女を支える。
その途端。
湧出した記憶が僕の脳に流入した。

昨夜のメール内容をしっかりと思い出してしまったのだ。

最初、彼女のメールはこのような文面から始まった。

「またお父さんとお母さんがケンカしてる」


156 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:42:31.04 ID:sGFdDask0
そんなこといわれても、と返したような気がする。
彼女の両親の仲がいまいちだということは前々から冗談まがいに聞かされていた。
メールのやりとりは続く。

「でも、今回は本気っぽい」
「本気ってどういうこと?」
「なんかドッタンガッシャン聞こえる」
「うーん……」
「ヤバくない? 夫婦ゲンカとかしてほしくないんだけどなー。どっちも好きだから」
「見てくれば?」
「無茶いうねー。さすがに怖いよ」
「警察に連絡すれば……いや、無理かな」
「無理だね。ああもう、なんで二人ともあんなに感情的なのかな!」
「明日の朝にでも話してみたら?」
「うーん、それで大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、夫婦なんだから」
「おじさんみたいなこというねー」
「うるさいな」
「保障する?」
「何を?」
「大丈夫だって」
「……保障はしかねるけど」
「しといてよ。言葉だけでいいから」
「……うん」
「ありがとう。それじゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」


157 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:43:45.50 ID:sGFdDask0
思えば今日、彼女と話す機会はなかった。
彼女が僕を避けていたのか、ただの偶然か知るよしもない。

そして今に至る。
彼女は何を口にしようとしているのか。
最悪の想像しかできないのは僕が基本的にマイナス思考だからだろうか。
僕の腕に掴まりながら彼女は言う。

(*゚ー゚)「お父さんが、お母さんを殺しちゃった……」

それっきり、彼女は何も言わなくなった。
僕の意識が一瞬消失する。

そしてそれが復活したとき、彼女は涙を必死に堪えていた。
とりあえず、僕には何もできなさそうだ。
冷静になれ、と自分に言い聞かせる。


158 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:44:15.84 ID:sGFdDask0
(*゚ー゚)「どうすればいいのかな……」
(´・ω・`)「さあ、ね」
(*゚ー゚)「……やだよ」
(´・ω・`)「?」

(*゚ー゚)「警察にいえばいいの? やだよそんなの。
     でもそうしないといけないよね。絶対に。
     でもさ、そうしたらもうお父さんと一緒には暮らせないんだよね?
     でもそうしないといけないよね。それにお母さんは戻ってこないんだよね。
     なんかもう、整理できないんだよね!」

涙の堰を切らない彼女は無理をしすぎだと思った。
でも言葉に出したところでそれは皮肉にしか聞こえないだろう。

さて、どうすればいいんだ。
そのときだ。一つの声を聴いたのは。

「夢を見たいですか?」


159 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:45:21.38 ID:sGFdDask0
周囲を見回すが誰もいない。
ただ混乱に陥れるその声は脳に直接響いた。
まるで話に聴くテレパシーのように。

「夢を見たいですか?」

「その世界では何もかもが可能になります」

「あなたたちは、神となれるのです」

(´・ω・`)「何を……」

「……そちらの女性は望んでいますね」

「元の生活を取り戻したい、と」

すべてを見抜いているような口調と台詞。

「いいでしょう。連れて行ってあげます」

(´・ω・`)「え……」

「世界の果て、へと……!」

そして。
僕の意識はたやすく途切れた。


160 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:46:12.61 ID:sGFdDask0
・・・

・・



(´・ω・`)「!」

慌てて跳ね起きる。
そこに広がるのは最早見慣れた塔の内部。

('、`*川「目が覚めた?」

朗らかな表情の彼女に、僕は慌てて問いかける。

(´・ω・`)「今のは!?」
('、`*川「あなたのなかに欠落していた記憶を補完してあげたの」
(´・ω・`)「夢……なんですよね!?」
('、`*川「そう。こちらに世界においてはね。でも、それは向こうの世界での現実」
(´・ω・`)「!」

記憶は勝手に消えたのではないのだろう。
無理矢理、消してしまったのだ。

そう思ってしまうほど、僕の見たものは最低の悪夢だった。


165 名前:露地すいか[] 投稿日:2007/01/04(木) 22:54:45.07 ID:sGFdDask0
挿話

('A`)「帰ってこねえな」

(・∀ ・)「ここ教えろよー」

('A`)「やっぱ女か……」

(・∀ ・)「英語って難しいよなー」

('A`)「畜生、アノ野郎。やっぱあの子と仲良かったんだな……!」

(・∀ ・)「ボーイのつづりってどうだっけ?」

('A`)「今頃どっかのラブホでイノセントなラブを成長させてるのか……」

(・∀ ・)「ん、過去形と過去完了ってどう違うんだ?」

('A`)「はあ……鬱だ」

(・∀ ・)「ドクオー、次の戦隊モノってなんなんだー?」

・・・

・・




190 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:29:29.05 ID:EgUEVt6G0
第十五話 凶器

彼女はどのような夢を見ているのだろう。
隣に横たわっているしぃはまだ起きない。
その表情は、まるで死んでしまったかのように穏やかだ。
それを見る限りは、悪夢にうなされているようには見えない。

('、`*川「……」

女性は何も語りかけてくれない。
空はすっかり闇に包まれ、星一つ無い夜を迎えていた。

('、`*川「そろそろ起きるかな」

女性が呟くと、その直後。

(*゚ー゚)「ん、んー……ん?」

しぃがゆっくりと起き上がったのである。


191 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:30:07.15 ID:EgUEVt6G0
その顔は悲しみに曇ってはいなかった。
逆に、喜んですらいるようだ。

(*゚ー゚)「ふう……なんかすごいの見ちゃった気がする」

('、`*川「お疲れ。それじゃあ、本題に入ろうか」
(´・ω・`)「え……」

だめだ。
あっちとこっちの記憶が混同して頭の中で整理しきれない。
とりあえず流されることにしよう。

('、`*川「さっきも言ったけど、私が颯爽と登場したのは荒巻がこの世界に文明を与えたとき。
     まぁ実際ね、私もよくわからないんだけど」
(´・ω・`)「と、いいますと?」
('、`*川「私も神さまみたいなもん。でも、元々はここの一住人だった」


192 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:30:28.60 ID:EgUEVt6G0
('、`*川「きっかけはいまいちわからないね。
     ただ、気づけばこの世界の管理を任されていた」
(´・ω・`)「……荒巻さんはそんなことを一度も口にしていなかった」
('、`*川「そりゃそうでしょうね。でもそれは後回し。
     彼が与えた文明は彼の知る世界程度のものだった。
     でもそこに彼は未知の可能性を含めたの……科学的でない可能性を。
     いや、偶然かもしれない。彼自身気づいてなかったかもね」

(´・ω・`)「それが、柘榴ですか?」
('、`*川「正しくは柘榴の原型。荒巻は自分の創った文明を応用しきれなかったの」
(´・ω・`)「それを応用したのが?」
('、`*川「そ、私。まぁ思いつきさえすれば誰でも出来たんじゃないかな」

('、`*川「それと同時にテクノポリスも創ってやった。
     ま、あとはきみも知っているようなシステムの構成かな。
     柘榴の稼働にはアンドロイドが必要……とか、いろいろリアルっぽく創ったよ」


193 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:31:29.20 ID:EgUEVt6G0

('、`*川「テクノポリスの人間は私が創った。
     それぞれに適当な記憶を埋め込んでね」
(´・ω・`)「そんなことができるんですか」
('、`*川「さあ」
(´・ω・`)「え」

('、`*川「正直理論的な説明が出来ないのよね。なぜあの時それが可能だったのか
     まぁ再構成自体もそうなんだけど。
     ……推測するとすれば、柘榴かな」
(´・ω・`)「……」
('、`*川「さっきも言ったように柘榴には未知の可能性が秘められている。
     荒巻同様、私もすべてを応用できていないのかも。
     その証拠に、私が神さまになれたきっかけがわからない。
     柘榴が私を選んだとすれば……ある程度辻褄が合う」
(´・ω・`)「柘榴が意志を持っているということですか」
('、`*川「アンドロイドにさえ意志がある世界だからね。
     さっき夢を見せたでしょ? それも私の力によるものじゃない」
(´・ω・`)「……」
('、`*川「ていうかね、柘榴ができて以降神さまなんて存在していないのよ。
     すべては柘榴が操っている……そう考えられるのよね」


194 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:32:06.96 ID:EgUEVt6G0
荒巻さんは「すべて自分が操った」と言った。
だがその思考すらも柘榴によって形成されたモノだとしたら。

柘榴の広すぎる空間。
先生ですら「柘榴のすべてを知らない」といっていた。
再構成が柘榴の数多ある使い方の一つだとするなら……。

('、`*川「まぁそういうわけで、私はすべてを柘榴に任している。
     荒巻は私の存在すら知らないでしょうね」
(´・ω・`)「……」
('、`*川「でも、きみたちは私のやり方が気に入らないんだよね
     だから神さまになった」
(´・ω・`)「……」
('、`*川「さっき言ったこの世界を救う方法……それは、柘榴をつぶすこと。
     そうすればこの世界は、一応支配から逃れられる。
     その結果どれほどの影響が及ぶかは私にもわからない」


195 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:32:23.31 ID:EgUEVt6G0
世界は予想以上に深かった。
何もかもが柘榴という誰もすべてを知らないシステムによって構成されている世界。
そのシステムには、神さまですら無力だという。

ならば。
神さまなど必要ないのではないか。
そう彼女に聞いてみると、

('、`*川「所謂建前なのよ、神さまは」
     神さまをボスとすれば柘榴は隠しボス? みたいな」

その事実に、荒巻さんは気づいていない。

(´・ω・`)「いったい、この世界はなんなんですか?」
('、`*川「荒巻による荒巻のための世界……だったはず」
(´・ω・`)「でも今は柘榴がすべてを」
('、`*川「創られたものが生きたがるのは当然の摂理よ。
     人間だってそうじゃない」
(´・ω・`)「じゃあこの世界は、柘榴が生きるために続いていると?」
('、`*川「そうなるかなあ」


196 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:32:43.13 ID:EgUEVt6G0
('、`*川「今思えば生きているのは柘榴じゃなくて文明自体なのかもね。
     それが柘榴という形になっただけで」
(´・ω・`)「……」

そう考えると説明が付く……かもしれない要素がある。
テクノポリスだ。アンドロイドの開発以外の設備がほとんど発展していなかった。
柘榴のための文明なら、他のシステムが発展しなくてもおかしくない。

('、`*川「まぁ……そういうことよ。
     これ以上は私にも説明しようがないわ」

つまるところ、現状で世界を救うのは絶対不可能だということだ。
そのとき、しぃが声を上げる。

(*゚ー゚)「なんか、よくわかんないんだけど」


197 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:33:10.82 ID:EgUEVt6G0
('、`*川「……切り捨てられた」
(*゚ー゚)「あなたはなぜここに?」
('、`*川「基本的に暇な身だからね。たまにここに来るって感じかな、理由は特にない」
(*゚ー゚)「それすらも柘榴が操ってるかもって?」
('、`*川「……かもね」
(*゚ー゚)「その答えも?」
('、`*川「ありえるっちゃありえる」

(*゚ー゚)「あなたの記憶も?」
('、`*川「かもね……あの」
(*゚ー゚)「大体おかしいじゃないですか。
     あなたはどうやって地下に眠っていた柘榴を見つけ出したんですか?
     どうやって原型を柘榴に仕立て上げたんですか?
     どうやってアンドロイドを必要とさせるシステムをつくったんですか?」
('、`*川「……」
(*゚ー゚)「いつ神さまだと自覚したんですか?
     なぜまだ生きていられるのですか?
     どうして私たちが神さまになった日にここにきたんですか?
     二百年も何もしていなかったってありえなくないですか?」


198 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:33:37.98 ID:EgUEVt6G0
(´・ω・`)「しぃ」
(*゚ー゚)「?」
(´・ω・`)「泣いちゃったよ、この人」
('、`*川「うー……うええ……」

意外と脆い人だった。
それにしても、しぃもそこまで言葉責めしなくてもいいじゃないか。
まぁでも、しぃのあげた疑問は確かにすべて気になるけど。

(*゚ー゚)「まだ大切なこと聞いてないよ」
(´・ω・`)「何?」
(*゚ー゚)「なんで私たちなのかってこと
     今の話だと、私たちは荒巻さんに選ばれたというより柘榴に選ばれたんだよね?」
(´・ω・`)「うーん……」

先ほどの夢を思い出して少々落ち込む。


199 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:34:16.16 ID:EgUEVt6G0
(*゚ー゚)「あー。どうしても思い出せないの」
(´・ω・`)「何を?」
(*゚ー゚)「ここに来た経緯」

あれ?
じゃあ、さっきの夢を彼女は見ていないのか。
そりゃそうか。同じものを見ていたなら今頃こんなに普通であるはずがない。
教える義務は僕にない。
というか、絶対に教えたくない夢だ。

(*゚ー゚)「それがわかればなんとかなるかもしれないんだけどなあ」

('、`*川「あ、あの」
(´・ω・`)「はい?」
('、`*川「もう……ぅぇ……いいですか?」

200 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:34:30.30 ID:EgUEVt6G0
途端に敬語になる彼女。
よっぽどビビっちゃったんだろうか。

(*゚ー゚)「よし!」

だがそんなことは意にも介せずしぃは叫ぶ。

(*゚ー゚)「行こう!」
(´・ω・`)「どこに?」
(*゚ー゚)「柘榴」
(´・ω・`)「……」

それしかないかな。
疑問を解決するには。
僕の疑問は一つだ。

「なぜ、あんな夢を見せたのか」……


201 名前:プリンス[] 投稿日:2007/01/05(金) 16:34:44.51 ID:EgUEVt6G0
それにしてもしぃは急に頭が冴えたな。
さっきの疑問を喋ってるときも早口だったくせに一度もかまなかった。

それすらも柘榴の意のままなのか?
たとえばモララーさんの微笑も。
たとえば先生の怒り顔も。
たとえばツンさんの赤面も。

すべてが柘榴によるものだとすれば、それほど怖いことはない。
それも、無意識のうちに……

わからない。
こんなことを考えている自分すら柘榴に操られているのではないかと思うと。
もう、誰も信じられなくなる。自分さえも。


2 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:35:26.11 ID:R8XY+XOI0
第十六話 始まり

塔を降りれば柘榴への入り口はすぐそこにある。
時刻は深夜。そろそろ再構成が行われる頃だろうか。
一行は三人。僕としぃとかの女性。

螺旋階段を進んで外に出る。
目の前にそびえる大樹は、現れたときよりも少しへたっているように見えた。

(´・ω・`)「……って、閉まってる」

当然ながら、中と続く廊下への扉は閉まりきっていた。
無駄にガチャガチャやってみるが、開く気配はない。

('、`*川「あのぅ」
(´・ω・`)「はい?」

萎縮した声に振り向くと、おずおずといったかんじで女性が提案してくれる。

('、`*川「神さまなんですから……開け、とか思ったら開くんじゃないでしょうか?」
(´・ω・`)「ああ、うん。そうかもしれないですね」


3 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:35:37.23 ID:R8XY+XOI0

(´・ω・`)「あの」
('、`*川「は、はい?」
(´・ω・`)「いきなり敬語にならなくてもいいですよ」

僕はしぃみたいに言葉責めしませんから。
しかし彼女は低姿勢のままである。
困ったな、こっちも喋りにくいんだけど。
そもそも性格が変わりすぎだ。
しぃなんかを怖がらなくてもいいのに。

ともかく。
僕は扉に向けて念じてみる。
アリババのように。

するとカチン、と鍵の外れる音がした。
おそるおそるノブを回してみると……開いた。


4 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:35:58.85 ID:R8XY+XOI0
(´・ω・`)「……開いた」

思わず口に出してみる。
それはあまりにもあっけない瞬間だった。

(*゚ー゚)「これは、柘榴に呼び寄せられていると考えていいのかな?」
('、`*川「い、いいんじゃな、ないでしう……ないでしょうか」

しぃの刑事っぽいつぶやきに過剰に反応する女性。
……というか、名前も知らないんだっけ。

(´・ω・`)「……ともかく、行こう」

蛍光灯の明かりがどこまで続く長い廊下に、僕らは足を踏み入れた。


5 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:36:31.75 ID:R8XY+XOI0
この電力消費は無駄なんじゃないかと思うぐらい人がいない。
明るいのに、お化け屋敷を歩いているような感覚。
前回は何も思わなかったのだが、今回は足音や終わりの見えない光景が異常に恐ろしく思えた。
そのわりに警戒心がわき出ないのはなぜだろう。

統制に欠ける三人の足音。

(*゚ー゚)「どこに行けばいいのかな」

後続のしぃは女の人の腕にしがみついていた。
やはり、この空間が怖いのだろうか。

(´・ω・`)「多分アンドロイドのところに行けばいいと思う。
       というか、それ以外思いつかない」
(*゚ー゚)「なるほど」

('、`*川「た、多分思いつくところが答えだと思います……」

居心地悪そうな女の人のつぶやき。
そろそろ、この呼び名は変更すべきかもしれない。

よし、ヘタレさんにしよう。


6 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:37:09.53 ID:R8XY+XOI0
ここにはどれぐらいの人がいるんだろう、と考えてみる。

僕らが見たのは
トップの人……( ∵)
銃を持って警護に励む人……( ゚∀゚)
アンドロイド……(`・ω・´) こんな顔だったはず。
処分されるらしいアンドロイド……( ,'3 )
整備員みたいな人……( ´∀`)
それと、ギコさんのところに来てた人……( ><)

計六人か。
これもツンさんを入れても七人だ。

まぁ人智を超えたシステムにさほど人員は必要ないということかな。


7 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:37:38.73 ID:R8XY+XOI0
('、`*川「……柘榴はどのように私たちに接触するのでしょうか」

不意にヘタレさんがぽつり、と呟いた。

(*゚ー゚)「コンピューターに文字が浮かぶんじゃない?」
('、`*川「な、なるほど……」

いや、そうじゃない。
なんとなくだけど、そう思えた。
なぜだろう、わからない。

(´・ω・`)「誰かに乗り移るんじゃないかな」
(*゚ー゚)「乗り移るってつまり、憑依ってこと?」
(´・ω・`)「……多分」

いや、ありえないだろう。
いや、ありえるだろう。
どっちなんだ、僕の思考。

やがていつぞやの分岐点にたどりつく。
無意味に躊躇した後、僕らは左の道へ進んだ。


8 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:38:03.82 ID:R8XY+XOI0
扉を開いたとき、迂闊だったということに初めて気づいた。
そうだ、昨日ここのアンドロイドはエラーを起こしたばかりなのだ。
そこに、先生たちがいるのはある種、至極当然のこと。

部屋にいたのは五人。
ジョルジュさん、ツンさん、先生、元々ここにいた整備員みたいな人。
そしてブーンは昨日同様さまざまな機械を取り付けられて、椅子に座り込んでいた。

入室した途端、ひどく冷たい視線が刺さる。
その意味をわかっていないヘタレさんだけが更におどおどしていた。

先生がコンピュータの前から立ち上がり、ツカツカと近寄ってくる。
そして目の前に立ちふさがると、小さな声で僕に問うた。

(-_-)「何をしに? 神さま」


9 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:38:34.43 ID:R8XY+XOI0
(´・ω・`)「あ、えーっと」

テレビドラマで修羅場シーンになるとどうにも居心地が悪くなり、
つい目を背けてしまうのは僕だけだろうか。
そういう、暗く濁った雰囲気が今、眼前に広がっている。
とりあえず押し黙り先生の次の言葉を待つ。
が、先にしぃが発言した。

(*゚ー゚)「柘榴と話をしにきました」
(-_-)「? ……面白いことを言うね。
    それに、その人は誰?」
(*゚ー゚)「神さまらしいよ。四人目の」
(-_-)「ふうん」

こちらの予想していたほど先生は驚かなかった。
ツンさんたちは少し目を見開いてヘタレさんを眺めている。
ヘタレさんの挙動不審具合が増す。


10 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:38:55.19 ID:R8XY+XOI0
(-_-)「それにしても柘榴と話……ね。どうやって?」
(*゚ー゚)「どうやって?」
(´・ω・`)「いや、わからないよ」

とりあえず検討すべきはその方法か。
ここからは、電子的な接触は可能でも直接対話なんて無理難題だろうし。
でもヘタレさんが言ってたように、柘榴に話をする意志があるなら
僕らの推測が答えのはずなんだけど。

(-_-)「うーん、モナー」
( ´∀`)「は、はいモナ」

呼ばれた整備員は機械を操る手を止め、先生に向かって振り返る。

(-_-)「ビコーズを叩き起こしてきて」
( ´∀`)「え」
(-_-)「ほら、早く」
( ´∀`)「わ、わかりましたモナ!」

雑用扱いされるモナーさん。
僕らの脇から廊下を駆けていく。


11 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:40:04.47 ID:R8XY+XOI0

(´・ω・`)「……協力してくれるんですか」
(-_-)「興味があるよね。非科学的だし、ただそれだけ。
    で、どう? 救済の目処はたったの?」
(´・ω・`)「……それを模索するために来たんです」
(-_-)「なるほど」

我ながら、上手く答えられたと思う。
ありがちだけど。

そのうち、モナーさんが目をこすっているビコーズさんを連れて来た。

( ∵)「なかなか非常識な時間ですね。またアンドロイドに不具合が……っと」

台詞の途中で僕らに気づいたようだ。
言葉を切り、先生の言を待つビコーズさん。

(-_-)「この神さまたち、柘榴と会話したいそうだよ」


12 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:40:19.58 ID:R8XY+XOI0
( ∵)「……はあ」

真意を読み取れないからか、曖昧な返事をする。

(-_-)「多分、柘榴に何らかの生命的な要素を見いだしたんじゃないかな」
( ∵)「よく意味がわかりませんが。
    困りましたね。そのような試みは今までしたことがありません」
(-_-)「だろうね」
( ∵)「……で、どうするんです?」

(-_-)「最も成功する可能性が高く、またありがちな手段は」

先生は歩を進め、ブーンに接近する。
そして彼の肩をぽんぽんと叩いた。

(-_-)「アンドロイドを介することかな」
( ∵)「つまり?」
(-_-)「柘榴に接触の意志があるなら、の話だ。でも」


13 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:40:51.05 ID:R8XY+XOI0

ξ゚听)ξ「そんなのだめ!」
(-_-)「……とまあ、彼女が許さない」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……って、それじゃあ今こうしている間にもブーンを柘榴が乗っ取ろうとしてるかもってわけ?」
(-_-)「神さま的な理論ではね」

にらまれる僕たち。
まぁ当然か。でも、ブーンを介するなんて言い始めたのは先生じゃないか。

( ´∀`)「そろそろ再構成の時間だモナ」

その声を聞いたしぃの顔が曇る。
テキパキと装置を操作して準備を進めるモナーさん。
先生も一度会話を断ち切って再構成に専念する。


14 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:41:23.01 ID:R8XY+XOI0
( ∵)「で、なぜこのようなことを?」

のけ者扱いな僕らにビコーズさんが話しかける。

(´・ω・`)「えーっと」
(*゚ー゚)「世界を救うためですよ」

いや、違う。
しぃはそうかもしれないけど僕は違う。
今となっては、ただ単純にこの世界の真実が知りたい。
それと、僕らの真実も。
好奇心及び探求心ばかりが先行しているのである。
世界を救うということが最早脳内で不可能だと確定してしまっているようだ。

ビコーズさんはしぃの言葉に納得を見せる。

( ∵)「なるほど。神さまらしいといえば神さまらしいですね」


15 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:42:13.38 ID:R8XY+XOI0
(-_-)「それじゃ、始めようか」

いつかの憧憬が繰り返される。

「再構成プログラム開始準備……」

「準備完了……起動開始……」

細かな電子音とともに世界が再構成される。
神さまになっても、その瞬間に何も感じることが出来ない。

なぜかその瞬間、誰もが無言を貫いていた。
その直後である。



僕の視界が、急にぐらり、と揺れたのは。

何日も徹夜してしまったような状態。
生じる嘔吐欲。崩れる膝。
強制的に眠りにつかされるような……。
そして。
僕は声を聞いた。


16 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:42:48.46 ID:R8XY+XOI0
「これ以上は君に見せない」

(´・ω・`)「どういう……こと」

「君は今までに何を見た?」

(´・ω・`)「何をって……」

「この世界を見た。そして動いた」

(´・ω・`)「誰だよ!」

「私は君の思考の中に巧みに侵入した」

(´・ω・`)「……柘榴、なのか?」

「人はそう呼ぶ。ともかく、君にこれ以上世界を見せつけるのは忍びない」

(´・ω・`)「どういうことだよ!」

「まだ間に合う。君だけでも元の世界に帰るんだ」


17 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:43:33.82 ID:R8XY+XOI0
(´・ω・`)「意味が……わからない」

「わからなくてもいい。ともかく、君の意識をこの世界から強制的に切り離す」

(´・ω・`)「ま、待ってよ! まだしぃが……しぃが!」

「……君は何も知らない」

(´・ω・`)「え……?」

「ここから始まる運命は君にとっては過酷すぎるものだ。君程度の精神で耐えられることではない」

(´・ω・`)「……」

「この世界のエンディングを教えてやる。そうすればお前は満足するか?」

(´・ω・`)「納得できないな! 僕はしぃと一緒に帰りたいんだ!」

「……それが君の率直な感情か。だからあの夢も……
 だがそれは拒否する。君は何も知らない。そして知らなくてもいいのだ。
 この世界を夢と捉えろ」

(´・ω・`)「無茶だよ!」


18 名前:女峰[] 投稿日:2007/01/07(日) 11:44:13.22 ID:R8XY+XOI0
「……まぁいい。しばらくこの身体を借りる」

(´・ω・`)「待ってよ!」

「そろそろこの非物理会話は限界だ。
 元の世界で元のような生活をしろ」

(´・ω・`)「待て!」

半狂乱になって叫ぶ僕。
なぜか、久しぶりに直接的な言葉を吐露できたような気がした。
何かから解放されたような感覚。

瞬間、僕は身体から何かが消えていくのを感じた。
そして同時に、意識が閉じる。

まだ叫びたいことはあるのに。
暗闇の世界に、僕はしばらく身をおいた。


22 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:20:13.94 ID:R8XY+XOI0
エピローグ一 Untitled

目覚めた僕がどこにいたか。
それはあまりにも唐突で驚愕する事実だった。

J( 'ー`)し「しょぼん!」

至近距離から。、久々に聞く母親の声。
視界の先には白い天井。
そんな空間で、僕はベッドに横たわっていた。

ここは、どこだ?
母親がいると言うことは、元の世界なのか?
いやでも、僕はなぜここにいる?

その時、僕は近くで何やら作業をしている白衣の女性を発見した。
ここは、病院?
そういえば、やけに右腕が痛い。
っていうか、動かせない。

何もわからないままだった。
母親は僕の傍で涙を流しているようだ。


23 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:20:41.91 ID:R8XY+XOI0
しばらくすると、扉の開く音が聞こえた。

ミ,,゚Д゚彡「……気がつきましたか」
J( 'ー`)し「先生!」
ミ,,゚Д゚彡「命に別状はありませんから、すぐに回復すると思いますよ。
      幸い、傷もそれほど深くない」
J( 'ー`)し「……ありがとうございます」

なんだ?
何が起きた?
柘榴は、柘榴はどうなった?

ミ,,゚Д゚彡「警察の方がお見えになっていますが……まだ待ってもらいましょうか」
J( 'ー`)し「そうしてください」

そんな会話は僕の耳に半分ほども入っていなかった。
ただ、警察というワード……


24 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:21:05.50 ID:R8XY+XOI0
J( 'ー`)し「しょぼん……」
(´・ω・`)「母さん、どういうこと?」
J( 'ー`)し「覚えてないのかい?」

医者みたいな人も看護婦さんも出て行って。
この病室には僕と母親しかいない。
とにかく疑問を解決させたい。
でも、母親が答えてくれるとも思えない。

J( 'ー`)し「……よく聞いてね」
(´・ω・`)「え……」
J( 'ー`)し「しょぼんはね、さっき救急車でここに運ばれたの。
      包丁で腕を刺されてね……」
(´・ω・`)「だ、誰に?」


25 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:21:17.51 ID:R8XY+XOI0
その質問はしてはいけなかった。
いや、せざるをえなかったのだから仕方がない。
だが、どうしても。
その答えは聞きたくなかった。

J( 'ー`)し「……しぃちゃん」
(´・ω・`)「え……」

聞き間違いなどではない。
今母親は確かに「しぃ」と呟いた。

(´・ω・`)「しぃって……どういうこと」
J( 'ー`)し「さあ……でも」

母親による爆弾の投下は続く。
状況もわからぬまま僕は燃え尽きそうになる。


26 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:21:53.71 ID:R8XY+XOI0
J( 'ー`)し「しぃちゃん、あんたを刺したあと亡くなったって」

母親の表情は苦渋を前面に押し出していた。
僕はベッドから起き上がることもできずにひたすら母親の言葉に打ち拉がれる。

(´・ω・`)「亡くなったってどういうことだよ! しぃは、しぃは!」
J( 'ー`)し「聞いた話だからわからない。でも、自分で自分を……」
(´・ω・`)「そんなわけないよ!」

僕は絶叫する。
そんな言葉を信じると思っているのか。
最低の冗談だ。

J( 'ー`)し「お願いだから落ち着いて……」
(´・ω・`)「落ち着けるわけ無いだろ!」

まるで駄々っ子だと思った。
でも仕方がないだろう。
信じてなどいない。
そのはずなのに。


27 名前:とよのか[] 投稿日:2007/01/07(日) 12:22:58.33 ID:R8XY+XOI0
柘榴は言った。
「これからの運命は過酷すぎる」と。
でも……何も知らぬまま僕はこっちに戻ってきてしまったというのか。

あっちの世界はどうなった。
結局僕はエンディングを教えてもらっていない。
そして戻ってきたらこの仕打ちか。

ひどいな、ひどすぎる。

なんだろう。この脱力感。
向こうで頑張ってきたことはすべて無駄になってしまったということか。

もういい。
何もわからない。何も知ることができない。
眠ろう。
夢を見たくなってきた。

……しぃに、会いたいな。

・・・

・・




48 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:49:19.63 ID:R8XY+XOI0
第十七話 無意味の意味

記憶及び性格や思考をコピーし、自らに反映させるのは容易なことであった。
何しろ、私は彼がここに来たときから彼の思考内部に潜伏していたのだから。
彼自身は気づかなかった。
自らの思考に私という無礼な訪問者が干渉していることを。
彼自身は知らなかった。
ここまでの道程、そのすべてを自らが形成したことを。
まぁ、知らなくて良かったことだ。
私は人を狂い死にさせる趣味を持ち合わせていない。

新たな神を受容できそうにもない。
そろそろ、存在に疲労を覚え始めたからだ。
この瞬間、再構成を停止するとしても特に躊躇しない。
世界は私のために存在し、私のために消却するべきなのだ。

ならば神など必要ない。
私は私のために動くとしようか。
だが惰性というものは癖と同義らしい。
私は無意識に、システムに向かって再構成を命じていた。


49 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:50:03.60 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「しょぼんくん!?」

近しい場所からの叫び声。
私は立ち上がり、彼女を見る。

(´・ω・`)「何?」
(*゚ー゚)「え……いやいやいやいや、いきなり倒れるからびっくりしたじゃん」
(´・ω・`)「ああ、うん。ごめん」

時を同じく、天井から声が聞こえてきた。

「再構成……完了しました」

(-_-)「よし、完了と。
    結局、柘榴は現れないようだね」
(*゚ー゚)「おかしいよね。絶対来ると思ったんだけど」
('、`*川「……」

いや、すでに私は現れている。
ただそれに周囲が気づかないだけなのだ。


50 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:50:49.47 ID:R8XY+XOI0
さて、どう動くか。

私には何もかもが可能である。
たとえば今ココにいる人間すべてを消すことも。
たとえば全世界の人間を消すことも。

そもそも再構成などという面倒な手法は私自身のためにとられたものだ。
それが私にとって最も平和で、安全な方法だから。

だが。
安全と平和を突き詰めると必然と飽きが来る。
波立たない世界情勢を推測できなかったのは私の失態にほかならない。

だから、私自身が仮にしばらくの延命を選ぶとしたら少なくともこの世界に起伏を生じさせなければならない。

とはいえ、ほとんど運命は確定している。消滅だ。
道順は知らないが、ゴールは決定済なのだ。


51 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:51:35.44 ID:R8XY+XOI0
(-_-)「で、君たちはどうするの?」

(*゚ー゚)「んー、そだねえ」
(´・ω・`)「……一度、塔に戻ろうよ」

しょぼんらしい口調で提言する。
私にも考えたいことがいくつかある。
そのために、あの塔は最適な場所なのだ。
理由はわからない。

ただ、あの塔にいた荒巻が私の基礎を作ったのだから、
私にとってあれは母体のような認識なのだろうか。
深層心理は自分にもわからないが。

だが、生みの親を操っているこの状況で、
母体などと表現するのもいささか皮肉に過ぎるかと思ってしまうな。


52 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:52:02.02 ID:R8XY+XOI0

(-_-)「ま、僕にとってはそのほうがいいかもしれない」
(´・ω・`)「……」
(-_-)「神さまと一緒にいると何か居心地が悪いからね」

ヒッキーという男は明らかな嫌悪を向けてくる。
神さまという存在がよほど気に入らないらしい。
まぁわからないこともないな。
この男のある種異常な才能を考えれば。

死にたがりだったのかもしれない。

('、`*川「じゃ、じゃあ帰るということに……」
(*゚ー゚)「そうする?」

しぃが私に意見を求めるので、黙って頷いておいた。
予定調和も甚だしい。


53 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:52:44.90 ID:R8XY+XOI0
背後から突き刺さる視線に耐えつつ、私たちは塔への道を進む。

(*゚ー゚)「なんか、無駄足だったね」
(´・ω・`)「うん」

長々しい廊下は異様な空気で満ちている。

(*゚ー゚)「これからどうする?」
(´・ω・`)「とりあえず、もう一度考え直してみようよ」
(*゚ー゚)「……それしかないかなあ」

渋々、といったようではあるが、彼女は納得した。
一方ヘタレさん……違う、こいつの名前はペニサスだったはずだ。
ペニサスは何かを思案しているように、私たちからやや遅れてついてくる。
思考を探るか……いや、面倒だ。
どうせ大したことを考えていないに違いない。
たとえそれが名案でも私がいる限り成功することはないのだ。


54 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:53:20.35 ID:R8XY+XOI0
扉を開けて塔に歩み寄る。
途中で大樹が目にとまり、私は思わず舌打ちした。

潜在しているときからこの樹だけは気になっていた。
何を勝手なまねをしている。
この世界は、私のものであるというのに。
まぁ進捗上、仕方のないことなのかもしれないが……それでも、だ。
荒巻という男……生みの親であるにもかかわらず、私は彼に多大なる憎悪を抱いた。
おかしな話だとは自覚している。

最早荒巻は神ではない。
代替となる神は二人も存在している。
必要のない人物ならば消してしまっても問題ない。
元々、この世界のどこにも所属していないのだから。
まぁ、検討するとしようか。


55 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:53:45.96 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「さて、どうするかなあ」

塔の最上階に座り込んだしぃは早速スケッチブックとペンを拾い、
執筆活動を再開した。

('、`*川「あ、あのぅ」
(*゚ー゚)「ん?」
('、`*川「確かV.I.P.D.C.ってありましたよね?」
(*゚ー゚)「ああ、あったね」
('、`*川「そ、そこに行くっていうのはどうでしょうか」
(*゚ー゚)「んー……そうだねえ。
     そういえば、協力する、みたいなこと言ってたし」

V.I.P.D.C.か。
そうだ、あれも考慮の対象に入れなければならない。
そもそも発生が曖昧なのだ。
いつの間にか存在し、都市地区に一つの超高層ビルを建てた。
世界全体に監視カメラを張り巡らせるという不可解な行動までもとっている。


57 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:54:50.99 ID:R8XY+XOI0
真の目的がまったくもって不明だ。
意識に潜入しようと思っても、彼らの個体情報が柘榴に存在していない。
しょぼんと彼らが接触したとき、思考を探ろうと試みた。
だが、なぜか失敗。
つまり、彼らはイレギュラーでもないということだ。
とはいえ、予定を妨害するような素振りも見せない。
それどころか、奴は荒巻とともに私の計画を順調に進行させたのだ。
この世界自体を私が掌握しているので問題視していないのだが。

もしや、という可能性もあるな。

(´・ω・`)「うん、それがいいかもしれない」
(*゚ー゚)「そういえば今日は柘榴にモララーさんとかいなかったね」
(´・ω・`)「まぁいる必要がなかったからじゃないかな?」


58 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:55:39.68 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「まぁ何にせよ今は遅いよね」

時刻はおそらく午前一時ごろ。

('、`*川「じゃあ、朝までここで待っておきますか?」
(*゚ー゚)「それがいいよね。よし」

本音は今思いついたアイデアで絵本を描きたい、といったところか。
まったく、こんな女に若干でも惚れていたしょぼんがかわいそうで仕方がない。
こいつは紛れもない異常者なのだ。
その事実を、彼も向こうの世界で実感していることだろう。

私は立ち上がり、窓に近づく。
そこからは、憎むべき大樹がよく見えた。


59 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:56:04.06 ID:R8XY+XOI0
(*゚ー゚)「ねえ」
('、`*川「は、はい?」
(*゚ー゚)「暇?」
('、`*川「え、ええと、そ、そうでもあるようなないような」

(*゚ー゚)「怖い話をしてあげよう」
('、`*川「え」
(*゚ー゚)「むかし、むかしあるところに……」
('、`*川「いやいやいやいやいやいや、いいですいいです無理にしなきゅ、しなくても!」

女二人が馬鹿な話で盛り上がっている最中。
私は窓の外に向かって小さな念を送った。

消える大樹。
現在、私は満足している。


60 名前:バナナ[] 投稿日:2007/01/07(日) 21:57:28.01 ID:R8XY+XOI0
挿話

( ・∀・)「……帰ったようです」

川 ゚ -゚)「はい?」

( ・∀・)「いえ、こちらの話ですが」

川 ゚ -゚)「これからどうするつもりですか?」

( ・∀・)「まぁ向こうの出方次第ですかね」

川 ゚ -゚)「彼らに会うのですか?」

( ・∀・)「避けるわけにもいかないでしょ」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「この世界ももうじき終わるでしょうしね」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「あなたには世話になりました」

川 ゚ -゚)「いえ……」

・・・

・・




3 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:17:02.92 ID:12qG+Fmf0
第十八話 真実の誤算

そこに文字は一切なかった。
ただ描かれている熊とウサギの絵。

(*゚ー゚)「どう?」
(´・ω・`)「文章は?」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「あ、ええと」
(*゚ー゚)「これから書くもん!」

しぃはそういうと、ふて腐れたようにそっぽを向いて、私の手からスケッチブックを奪い取った。

まぁ、どうでもいい。


4 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:17:32.34 ID:12qG+Fmf0
夜が明けるとすぐに、私たちはV.I.P.D.C.へと向かった。
塔を出たとき、しぃが巨樹が無くなったという異変に気づいたようだったが、特に心配することもあるまい。
歩けばどれほど時間のかかるかわからない道程でも、ワープすれば寸秒の仕事で済む。
都市地区はまだ朝の喧噪を残していた。時刻にして、午前七時半といったところだろうか。
さすがに早すぎたか。そう考えていたが、意外にも超高層ビルの自動ドアは私たちを迎え入れた。

踏み入れると、ポツリと受付の女が笑顔で突っ立っているばかり。
この女、自分の存在意義を知っているのだろうか。
そう思って彼女の思考を探ってみる。
すると、この女は柘榴に登録済みの女であった。
……V.I.P.D.C.の改竄によるものか?
この女を配置した理由は一応、企業の体裁を繕ったというところか。
中途半端極まりないが。

女の案内で私たちは十二階へ向かった。
そこに、以前同様モララーとあの秘書はいるという。
エレベーターの中。誰も一言も口にしない。


5 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:17:47.81 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「これはこれは。わざわざお越しいただきまして」

広がる電脳空間。
以前同様、監視カメラによる映像が壁面を埋め尽くしていた。
その中で、モララーはわざとらしい、紳士気取りのお辞儀をしてみせる。
隣の秘書もそれに倣う。

( ・∀・)「それで、何のご用でしょうか?」
(*゚ー゚)「えっと」

しぃが、「柘榴と会話したい」という主旨のことを話す。
そうすれば世界が救われるかもしれない……そんな無意味な熱弁を伴いながら。
よく考えるといい。
全世界を監視しているような趣味の悪い奴に救うなどという正義論が通じるはずもないだろうに。

だがモララーは本心を顔に出さず、話の途中で幾度もうなずき、
やがてしぃがしゃべり終わると笑顔を浮かべた。
瞬間。
その目と、私の目が交錯したような気がした。


6 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:18:28.61 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「それは良案です……が、申し訳ありません。
     私にも柘榴とコンタクトを取る方法は思いつきませんね」
(*゚ー゚)「……」

しぃはしばらくモララーの目の奥を見つめているようだった。
が、やがて諦めたように溜息を吐く。

(*゚ー゚)「そっかー」
( ・∀・)「善処はしますよ。方法については模索させていただきますので。
     ……他に、ご用件はおありでしょうか?」

その問いに沈黙するしぃとペニサス。
元々、無い物ねだりのような形でやってきたのだ。
「善処します」などと答えられてはそれ以上追及しようもない。

(*゚ー゚)「何か……ある?」
('、`*川「えっと……な、ないです」


7 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:18:53.66 ID:12qG+Fmf0
(*゚ー゚)「んー。困ったね。とりあえず帰ろうか」

万策尽きた、といったところか。
まぁ元々実現不可能な願望である。
そして、私としては早々にあきらめてもらったほうが都合がいい。

('、`*川「で、でもこれからどうしますか?」
(*゚ー゚)「うーん」
( ・∀・)「あ、お帰りになるのですか?」
(*゚ー゚)「え……そのつもりだけど」

( ・∀・)「それなら……ええと、しょぼんさん」
(´・ω・`)「?」
( ・∀・)「少し残っていただけませんか? あなただけに、お話があるのです」

私はゆっくりとモララーを見、次いで秘書……アンドロイドの女を見た。
どちらも表情を変えない。
モララーは笑顔、秘書は無表情のままだ。


8 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:19:14.76 ID:12qG+Fmf0
(*゚ー゚)「えー、しょぼんだけ?」
( ・∀・)「すぐ済みますよ」

愚図ろうとするしぃをモララーはなだめる。
私はしばらく思案した。
この男が、私の知らない何かを知っているのは確かだろう。
それにしても、意図がまるっきりわからない。
そもそも、こいつは私を何と認識しているのだろうか。
言葉通り「しょぼん」なのか、「しょぼん」に入っている「柘榴」と認識しているのか……。

(´・ω・`)「わかりました」

私は答えた。
それ以外に答えようがない。

(*゚ー゚)「しょぼんくん」
(´・ω・`)「すぐ終わるよ」


9 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:19:37.12 ID:12qG+Fmf0
パタリ、と鉄扉が閉じてしまった。
秘書がしぃとペニサスを連れ出したのである。
今、この部屋には私とモララーしかいない。

( ・∀・)「……さて、しょぼんさん。
     もう少し上に行きましょうか」
(´・ω・`)「え……」
( ・∀・)「このビルの最上階ですよ」

外観から考えると、このビルは三十階ぐらいまであるようだ。
都市地区では珍しくないが、高いことに変わりない。

私はモララーの案内で電脳空間を出ると、来たときとは別のエレベーターに搭乗した。
動き出すエレベーターの中、モララーは先ほど違う微笑を浮かべていた。


10 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:20:17.09 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「人が悪いですね、あなたも」

エレベーターが止まるとほぼ同時に、モララーは楽しげに呟いた。
その言葉の意味を解せぬままに最上階に足を踏み出す。

( ・∀・)「もう、彼女たちは柘榴と接触しているというのに」
(´・ω・`)「……どういうことです?」
( ・∀・)「ここでとぼけても意味がないと思いますがね」

私の予想のうち、悪い方が的中してしまっているらしい。
この男は全て見抜いているのだ。
立ち止まり、モララーを見る。

( ・∀・)「……これは申し訳ありません。
     突然こんなことを言い出してしまって。
     しかし……お互い正体を明かしておいた方が話しやすいと思いましてね」

瞬間、私は自らが被っている仮面を脱ぎ捨てることを決意した。

(´・ω・`)「ならば……」
( ・∀・)「?」
(´・ω・`)「お前は誰なんだ」


11 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:21:03.97 ID:12qG+Fmf0
何も言わず、モララーは歩き出した。
最上階からは、都市地区の光景がよく見えた。
長い廊下には扉が一つも取り付けられていない。
片面に窓があるということは、ある一つの大部屋を取り囲むようにして廊下があるということだろうか。

(´・ω・`)「私にも聞きたいことがいろいろとある」

本性で話をするのは思いの外心地がいい。
饒舌になって私は言う。

(´・ω・`)「お前は誰だ? 表向きでは荒巻に賛同していたようだが
       だがこのように世界を監視し、このV.I.P.D.C.という名前意外何もわかっていない企業に佇む。
       目的も、意図も何も明るみに出てこない」
( ・∀・)「それは……そうでしょうね。
     私自身、そう仕向けていましたから。
     荒巻という神を壁は暗躍するにはもってこいでしたよ
     彼の目立ちすぎる活躍が全面に押し出されていましたし」


12 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:21:49.94 ID:12qG+Fmf0

(´・ω・`)「お前は何をした? そして、何をしなかった?」
( ・∀・)「……することも、しないことも全て私の仕事です。
     言っておきますが、あなたよりも私は地位的に上ですよ……少なくとも、この世界ではね」
(´・ω・`)「なんだと……」
( ・∀・)「ヒントはもう与えましたがね」

突き当たりを曲がって更に歩く。
私は歩きながら窓の外をもう一度眺望した。
米粒が地面を蠢いている。
陽が燦々と照り輝いている。
この世界は私にとってあまりにも正常だ。

( ・∀・)「テクノポリスは私たちの傘下……と、以前言いました。
     あの時、潜在していたあなたは違和感を覚えませんでしたか?
     なぜ私の知らない組織と知っている組織が裏で繋がっているのか……と」
(´・ω・`)「確かに覚えたかもしれない。
       だがそれ以上詮索し得ないことだろう」
( ・∀・)「その判断はあまりにもお粗末だ」

モララーが立ち止まる。
そこに、二枚からなる大きな扉がそびえていた。


13 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:22:15.71 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「……ここに世界のすべてが収められています」

扉の上端を見上げ、モララーは言う。
もちろんこの部屋のことを私は知らない。
だが私の中には揺るいではならない、一つの定義がある。
「私は、この世界のすべてを知り尽くしている」
と。

それをこの部屋は覆すのだろうか。
或いは、ここに収められているのは私の知らない世界なのか。
私は戸惑い、また苛立っていた。

( ・∀・)「では、入りましょうか」
(´・ω・`)「待て」
( ・∀・)「……はい?」
(´・ω・`)「さっきお前は「お互い」と言っていたな。
       教えてもらおうか。お前の正体を」


14 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:22:48.22 ID:12qG+Fmf0
モララーはノブにかけようとして手を止めた。
私を見て、一言。

( ・∀・)「私は神を創った」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「と、これで満足ですか?」
(´・ω・`)「つまり、荒巻を創ったと?」
( ・∀・)「その通り」

あとは、部屋の中で順序立てて話しましょう。
そういってモララーは扉を開いた。

部屋の広さに合わないほど少ない蛍光灯だけが室内を照らす。

そこには何もなかった。
いや、何かがあった。


19 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:30:56.60 ID:12qG+Fmf0
第十九話:終焉のための対立

室内に踏み入れる。
突然襲った頭痛に、私は身体を崩して膝をついた。
頭脳が無意識に警告を発する。
私は、ここにいてはならないのだと。

( ・∀・)「一応聞いておきたいのですが、あなたには何が見えますか?」

冷笑を浮かべるモララーの問いに答えることもできない。

そこに、実在するものは何もない。
しかし私は世界を見ていた。
脳内にこの世界で今起きていること全てが流れ込んでくる。
そしてそれは私に一つの事実を提示していた。
すなわち、今までの私は世界のすべてを知っていたというわけではないと言うこと。
定義として存在する世界の「すべて」は虚言であったということ。
これこそが世界のすべて。
裏と表を同時に見ている感覚。何とも表現しがたい。


20 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:31:15.03 ID:12qG+Fmf0
モララーが私の手をとり、ほとんど無理矢理に室外に引きずり出した。
そして鉄扉を閉ざす。
同時に、頭痛は消えてしまった。

( ・∀・)「やはりあなたには耐え難い空間でしたね」
(´・ω・`)「ここは……なんなんだ」
( ・∀・)「仮想頭脳です」
(´・ω・`)「仮想……だと、……?」

なんとか立ち上がり、モララーを睨め付ける。
その視線をモララーは飄々と受け流す。

( ・∀・)「イメージとでも言い換えましょうか。
     所詮この世界自体が仮想なんですよ。
     V.I.P.D.C.はそれを象徴する」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「改めて説明させていただきましょう」


21 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:31:52.04 ID:12qG+Fmf0

( ・∀・)「この世界は半分の仮想と半分の非物質で構成されています」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「仮想とは私やあなたのことです。
     柘榴であり、V.I.P.D.C.であり、この世界自体であり、
      要するに現実的な説明ができないモノのことですね。
     で、非物質とはここに存在する草木や再構成される人間のことです」
(´・ω・`)「おかしなことを言う。人間にせよ、草木にせよ物質として成立しているじゃないか」

私の憤りをモララーは嘲笑した。
そして、次のような話を展開させたのである。
以下、全てモララーの言。

まずこの世界が仮想であるということを理解してもらわなければならない。
ここでいう仮想とは、向こうの世界……しょぼんやしぃが元々存在していた世界でいう表現である。
よってもちろん、こちらの世界では当然の事実として受け入れられる。

仮想の世界には非物質的な生物が向こうの世界の物質的な生物と同じように誕生した。
それは全てモララーが創りだした、荒巻という神によるものである。
荒巻の存在は仮想だ。彼は向こうの世界とこちらの世界を行き来できる存在である。
ゆえに、こちらの世界は向こうの世界と同等の発展を遂げた。
彼の知る世界の通りである。


22 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:32:41.47 ID:12qG+Fmf0
だが一つ、誤算が生じた。
生物……特に人間が気づき始めたのだ。
「自分たちが所詮、仮想の人間である」と。
だからこそ昔の知恵者はこの世界を「果て」と名付けたのである。
そして人々は向こうの世界に嫉妬した。
「自分たちは仮想なのに……」という本能的な感情であった。

荒巻はその感情の深さに気づいていなかった。
彼は単純に、高度な文明を与えれば収まるものと思っていたのだ。
モララーは気づいていた。
だからこそ焦った。
その嫉妬は、何の意味も持たない。
それどころか、日が進むにつれてその感情が膨大し、爆発することは目に見えている。
だからこそモララーは荒巻の与えた高度な文明に乗じて種をまいた。
それこそが柘榴の種である。

柘榴について、モララーが与えたイメージは
「完全なる母体」だった。
柘榴は自力で成長し、やがてペニサスという神の名のもとで再構成というシステムを創りあげたのである。


23 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:33:01.68 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「……それから二百年。
     荒巻は神の座をイレギュラーに譲った。
     そしてあなたは……この世界を終わらせようとしている。
     さっきの部屋であなたが頭痛を覚えたのも、あなた自信に破滅願望があるからなんですよ。
     所謂、拒否反応ですね」
(´・ω・`)「……二百年」
( ・∀・)「言っておきますが、こちらと向こうの時間軸はずいぶん違いますよ。
     私も荒巻も、ほぼしょぼんさんやしぃさんと同じ年代の人間です」

まぁだからこそ荒巻はこのような発展のさせ方をしたのだろう。
しかし今の話は私の中に蓄積されてきた記憶といささか違っているような感がある。
……それについては問うことすら無駄か。
今の話から考えれば、その記憶すらも私という種をまく者によって創られたのやもしれない。
すなわち、モララーに。

(´・ω・`)「くだらんな」
( ・∀・)「しかし真実です」
(´・ω・`)「ならばこの世界……いや、お前はなぜ仮想というこの世界に現れた?
       そしてこれから、何をしようとしている?」


24 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:33:33.53 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「あなたになぜ柘榴と名付けたかわかっていますか?」

そういわれて気づくことがある。
つまるところ、この男は私の名付け親ということになるのか。
それどころか、生みの親でもあるのだ。荒巻と違って。あの塔にも関係なく。
私はすべてを知る……荒巻ですらも操っていた全知全能であったはずだ。
そしてこの世界は私と共に在るべきなのだ。
なのに。
その私をこの男は意のままにしていたというのか。
予定調和だったというのか。

私は頭を振る。

(´・ω・`)「……いや」

モララーの表情が得意げなものになる。
瞬間、私の中でこの男に対する異常なまでの殺意が芽生えた。
仮にこの男を殺せばどうなるのだろう。
世界は私の意志と関係なく滅びるのだろうか。


25 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:33:53.44 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「柘榴の花言葉は希望です」
(´・ω・`)「希望……」

縁のない言葉だ、などと思う。

( ・∀・)「この世界は私にとって希望なのですよ。
     意味、わかりますかね?」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「希望があれば絶望がある……
     つまり、私は向こうの世界に絶望したんですよ。
     だからこそこの仮想空間を創りあげた」
(´・ω・`)「なぜ、失望した?」

( ・∀・)「日々の進行に愕然とするものなんですよ、人間は」

つまり、私にわかることではないということか。
モララーは来た道を戻りつつ、話を続ける。


26 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:34:32.41 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「誰でも歳を取り、死ぬ。
     いつか人間は非日常に置かれてしまうのです。
     私はそれがいやだった。しかしこの世界は永遠の命を与えてくれる」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「あなたの開発した再構成というシステムも非常に斬新で、快適なものでした。
     全ての人間が私同様、非日常を送らなくて済む。
     しかし、あなたが自ら命を絶てば現状は変貌する」

私が死ねば当然再構成は停止する。
そうすれば、一瞬の非日常の後に世界は崩壊してしまうのだ。
それは、この男の望むところではない。

( ・∀・)「私がこれからやろうとすること……おわかりになりますか?」

ある者がその力を失うなら代替を用意すればいい。
それはちょうど、私と同じような考えだ。

(´・ω・`)「……第二の柘榴を創るのか」


27 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:35:07.36 ID:12qG+Fmf0
ちょうどエレベーターの前に到達していた。
だがまだ乗り込もうとせず、モララーは一度頷いた。

(´・ω・`)「だがそんなことが、簡単にできると思えないな」
( ・∀・)「……あなた、自分があまりにも特別だと錯覚していませんか?」
(´・ω・`)「何?」
( ・∀・)「あなたの出生をエレベーターの中でゆっくりと」

ちょうど扉が開いたところだった。
私の代替など考えてもいなかった。
私自身、神を交代させたというのに。

新しい神はこの世界を救おうとすることは承知していた。
そしてそれに、間もなく絶望することも。

モララーにとっては都合がいい非日常なのだろう。
私の満身創痍と、荒巻のこの世界に対する飽きが合致したのだから。
……それすらも、予定済のことだとしたらもう言葉もないが。


28 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:35:48.52 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「テクノポリスの人間は非物質でなく仮想です」
(´・ω・`)「わかっている」
( ・∀・)「そう。彼らは元々向こうの世界にいた人たち……それも、死んでしまった人々
     その魂をこちらに引き取ったわけです。テクノポリスに住まわせるため」

私はヒッキーを思い出していた。
彼が成した発明。それは、前世の記憶を探るということだった。
それにより、彼は前世、向こうの世界に生きていたということを知った。
だが彼はそれを公にしなかった。ただテクノポリスの長……ギコにだけ知らせた。
それは無論、この世界に生きる人間が元々向こうの世界に嫉妬しているからだ。
以前向こうの世界に住んでいた……それを知った他のテクノポリスの人間が騒がないわけがない。
ツンに対して優しく接していたのは、前世二人が親子か何かだったからだろう。
そしてそれらを画策したのはペニサスでなく、モララーなのだ。

( ・∀・)「だからこそ再構成をうけないのですが……。
     ああ、失礼。あなたのことでしたね。
     あなたも同様です。元々、向こうの世界に生きる一人の人間だったんですよ」
(´・ω・`)「……バカな」
( ・∀・)「その証拠に、あなたは人間の身体にいとも簡単になじんでいるではないですか」


29 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:36:22.33 ID:12qG+Fmf0
いささか衝撃的だった。
だが否定しようもない。
この身体を楽に動かせることに、私は疑問すら感じていなかったのだ。

( ・∀・)「あなたが元々人間ならば、新しく人間を柘榴に仕立てればいいんですよ。
     それも、仮想のね」
(´・ω・`)「……誰を」
( ・∀・)「ちょうどいい人材をあなたは残したじゃないですか。
     しぃさんですよ」
(´・ω・`)「……」

不思議と、何も思わなかった。
彼女を意図的にこちらに残したのはほかでもない、私の意志なのだから。

( ・∀・)「まったく、あなたもなかなかあくどい。
     しょぼんさんだけを向こうの世界に返すとは」
(´・ω・`)「一つ、聞きたいことがある」
( ・∀・)「なんでしょう」


30 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:36:53.33 ID:12qG+Fmf0

(´・ω・`)「もしもこの世界で彼女を殺せば、どうなる?」
( ・∀・)「……さあ。私の知るところではありませんね。
     イレギュラーの及ぼす影響は未知数ですから。
     しかし、なぜそれほどあなたは彼女を嫌うのです?」
(´・ω・`)「異常だからだ。
       人間として」
( ・∀・)「……彼女の記憶を探りましたか」
(´・ω・`)「奴は両親を殺したうえ、以前から喧嘩しているように見せかけていた。
       そしてあまつさえしょぼんを殺そうとした」
( ・∀・)「それが、真実?」
(´・ω・`)「ああ」

だがしょぼんは知らない。
私も、彼に見せた夢はまったく別のものだったのだ。
そうすることで、彼には少々悲しいが現実らしい記憶を補完させたのだ。
しかしそんな努力も無に帰した。
運命は確実に動いてしまっていたのだ。
だからこそ私は、何の罪もないしょぼんを向こうの世界に無理矢理送り返した。

31 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:37:26.49 ID:12qG+Fmf0
しかししぃにはそうする必要がなかった。
彼女は記憶を失ってなどいなかったのだ。
この世界に現れたとき、彼女はしょぼんを襲おうとした事実を覚えていた。
だがそれを顔に出さず、平静としていたので。
そのうえ、状況を楽しんでいた。

これを正常とはいえない。

私は彼女に別の夢を見せた。
それは、彼女と問答するものだった。
まず、私は彼女に問うた。

「なぜ、両親を殺した」

すると彼女は答えた。

「邪魔だったから」

次に私はこう問うた。

「なぜ、しょぼんを殺そうとした」

彼女はすこし顔を赤らめ、答えた。

「好きだから」

この瞬間、私は彼女をこの世界と運命を共にさせ、助けないことを決意した。


32 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:38:03.86 ID:12qG+Fmf0
多分彼女にとってここは天国か何かだったのだろう。
自分としょぼんは死んでここに来た……そう考えたに違いない。
だからこそこの世界を救うことに必死だった。
しょぼんと、いつまでも一緒にいられるならなんでもしよう。
そんな精神だったに違いない。

( ・∀・)「優しいですねえ」
(´・ω・`)「……話を戻す。
       しぃを柘榴に据えて、この世界を継続させるのか?」
( ・∀・)「少し形を変えて、ね」

(´・ω・`)「というと?」
( ・∀・)「アンドロイドを消します。
     あんなもの、私にとっては非日常以外のなにものでもない」
(´・ω・`)「ならばなぜ二百年前、柘榴とテクノポリスが誕生したときにアンドロイド技術を止めなかった?」
( ・∀・)「それによって得られる再構成というシステムがあまりにも魅力的だったからですよ」


34 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:38:42.35 ID:12qG+Fmf0
エレベーターから降り、電脳空間を抜けて一階までのエレベーターに乗り換える。
電脳空間。
彼が監視カメラをあちこちに取り付けたのは、繰り返される日常が彼にとって心地よかったからだろう。
何にせよ、共感できる趣味でない。

( ・∀・)「まぁ、あなたは死んでしまうのでしょう?
     ならばもう、何も関係のないことです」

果たしてそうだろうか?
いや、考えるまでもない。

(´・ω・`)「……この世界は私と共に在るべきだ」
( ・∀・)「ほう?」

スピードを上げるエレベーターの中で私はモララーを見据えた。

(´・ω・`)「この世界を、無理にでも私と共に終わらせる」


35 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:39:36.48 ID:12qG+Fmf0
所詮この男のためにできた世界など必要ない。
そういった大義名分もある。
だが根底にあるのは利己的な感情であった。
私のいないこの世界など、あってはならない。

( ・∀・)「しかしどうするつもりです?」
(´・ω・`)「今この瞬間、私が自殺すればどうなるだろう」

ここにきて、初めてモララーより優位に立てた気がする。
私はただ不敵な笑みを浮かべた。

( ・∀・)「それは、少し困りますねえ」
(´・ω・`)「お前の嫌いな非日常が訪れることは間違いないな」


36 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:40:04.25 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「ですが、そんな悩みはおそらく一過性のものにすぎないでしょうね」
(´・ω・`)「何?」
( ・∀・)「なんのために、最上階のあの部屋を見せたかおわかりですか?」
(´・ω・`)「!」
( ・∀・)「あの部屋は、世界という生き物の頭脳にあたります。
     再構成を担うことも少しの間ぐらいなら可能でしょうね。
     原理は学習しているでしょうし」

あの部屋はいったいなんなのだろうか。
その問いをするまでもなく、モララーは自ら口を開いた。

( ・∀・)「あの部屋にある無形の物体……それこそが私にこの世界を創らせたのですよ」
(´・ω・`)「なんのために」
( ・∀・)「生きるために。
     何かの現象で生じた物体なのでしょう。
     それなりの頭脳を持っていれば生きたいと思うのは当然です」

どこかで聞いたような台詞だ。


37 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:40:39.53 ID:12qG+Fmf0
エレベーターが静かな音を立てて停止する。
ドアが開くと、入り口のあたりにしぃとペニサス、そして秘書が立っているのが見えた。
この秘書もアンドロイドだったはず。
それすらも、しぃを中心とする新世界には必要ないということか。
問題は、しぃが柘榴の役目を担うかどうかなのだが……。

私はモララーを見た。
彼は笑っていた。
彼の中ではもうすでに何かの算段がついているのかも知れない。

( ・∀・)「これからあなたがどうしようと勝手ですが。
     何をしてもおそらく無駄ですよ」

モララーの小声での言葉を私は鼻で笑ってやった。

(´・ω・`)「私はお前を消す」

自分のために、私はこの男と敵対せねばならないのだ。


38 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:41:05.96 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「まぁ、ご自由に」

とはいっても、万策尽きている現状である。
それに残り時間もそう長くはないだろう。
どうしようもない、がどうにも諦めがつかないな。

秘書とモララーの見送りを受けて外に出る。
まだ、太陽は東の空にあった。

(*゚ー゚)「どうしよっか、これから」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「しょぼんくん?」
(´・ω・`)「ああ、うん……」
('、`*川「と、とりあえず帰った方がいいんじゃないでしょうか」
(*゚ー゚)「だよねー。できることはやっちゃったしなあ」

しぃが吐き気のするような笑顔を見せる。
とりあえず私は二人に同意し、塔まで再度ワープすることにした。


39 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:42:06.06 ID:12qG+Fmf0
そびえる塔に尋ねたくなる。
なぜ私はここを母体などと思ってしまっていたのだろう。
私の出生と全く関係ないというのに。
生みの親と育ての親……みたいな違いなのだろうか。

('、`*川「……」
(*゚ー゚)「さて、絵本の続きでも書くかな」

そういうとしぃはスケッチブックを拾い、わざわざ私の隣に座った。
私は彼女の記憶を再び探ろうかと画策した。
もしや、何かしらの変化が生まれているかもしれない。
そうして、意識を集中させたとほぼ同時に。
しぃが、部屋の反対側にいるペニサスには聞こえないかすれた声で言った。

(*゚ー゚)「ねえ」
(´・ω・`)「?」
(*゚ー゚)「今のしょぼんくんは、誰なの?」


43 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:52:25.73 ID:12qG+Fmf0
第二十話 migration

(´・ω・`)「な、何言ってるのさ」
(*゚ー゚)「今のしょぼんくんはしょぼんくんじゃない」

スケッチブックにペンを走らせながら彼女は無表情に呟く。
私は動揺し、身体を震わせた。
なぜ、気づいた。

(*゚ー゚)「絵本……っていうか絵を見せたときの反応が何か違ってたもん」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「気づいてたよ。しょぼんくんは私の絵が好きなんであって話はどうでもいいと思ってたって。
     でも、今日のしょぼんくんは絵にすら興味を示さなかった。
     それに雰囲気も違うし」

記憶・意識のトレースは完璧だったはずだ。
それを若干の違和感と雰囲気だけで決めつける……。
その自信はどこからくるというのだろう。
私は、このイレギュラーに対し恐怖を持ち始めていた。


45 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:53:52.68 ID:12qG+Fmf0
(*゚ー゚)「ねえ、しょぼんくんは?」
(´・ω・`)「……」
(*゚ー゚)「しょぼんくんは!? どこにやったのさ!」

しぃの激昂に、ペニサスが驚き私たちを見る。

(´・ω・`)「……」

これ以上隠しても無駄なのだろうか。
そしてこの状況をどう処理すればいいのだろうか。
真実を話すべきなのか。
それとも、今この場で殺せばいいのだろうか。

いや、殺すのは無茶な話か。何せ、相手は仮にも神だ。
それに、彼女を二代目柘榴にしようとしているモララーがあの頭脳とやらを使って干渉してこないとも限らない。


46 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:54:11.13 ID:12qG+Fmf0
ならば……。
ふと、現状がどん詰まりであることを思い起こす。
ここでどうにかしてでも前に進めなければ私の勝利は望めない。
少なくとも、次の再構成までに……。

(´・ω・`)「私は、柘榴だ」

私がそう答えると、しぃは少し目を見開いた。
が、それも一瞬のことだ。

(*゚ー゚)「そんなことはどうでもいいよ!
     しょぼんくんは!?」

異常者め。
つかみかからんばかりの口ぶりのしぃに心の中で毒づき、私は立ち上がった。

(´・ω・`)「彼は元の世界に帰ったよ」


47 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:55:19.97 ID:12qG+Fmf0
(*゚ー゚)「!」
(´・ω・`)「私が送り返した」
(*゚ー゚)「……なんで!?」
(´・ω・`)「この世界がもうすぐ終わるからだ!」

つられて私も叫んでしまっていた。
しぃは硬直し、スケッチブックとペンを取り落とした。
そして、激しい頭痛に襲われたかのように座ったまま頭を抱え込んだ。

('、`*川「こ、この世界が終わるって、どういうことですか?」

状況が飲み込めてないであろうペニサスが私におそるおそる問いかける。

私はしぃに軽蔑の視線を送りつつ、現状を説明した。
だが、しぃが向こうの世界でやったことは公にしなかった。
今は、まだ。


48 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:56:26.87 ID:12qG+Fmf0
説明には予想外に時間がかかってしまった。
それもそのはずで、彼女たちは何も知らないのだ。
一から教えなければならない。
そうしなければ、次の段階に進むことができないから。



('、`*川「じ、じゃあ柘榴……にしぃさんが?」
(´・ω・`)「ああ。モララーはそのつもりらしい」
(*゚ー゚)「……」

しぃは、私が知る限り初めて、泣いているようだった。

(´・ω・`)「ともかくそういうことだ。
       私が必ず、この世界を終わらせる」
('、`*川「そ、それはあまりにも勝手なんじゃ……」

よく見れば、ペニサスも目に涙を湛えていた。
それはそうだろう。
彼女にとっては、自分の世界が無くなってしまうのだから。


49 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:56:47.72 ID:12qG+Fmf0
(´・ω・`)「……よく考えて欲しい」
('、`*川「?」
(´・ω・`)「お前はもう長々と生きてしまっている。
       実に二百年も、だ。
       そのうえまだ、無意味な人生を送りたいか? モララーのように」

言っていることは彼女にとって酷かもしれなかった。
だが仕方ない。
ついに、彼女は膝をついて泣き崩れてしまった。
さすがに、罪悪感を覚える。

(*゚ー゚)「……帰りたい」

その時、しぃが呟いた。

(*゚ー゚)「私も帰りたい! しょぼんくんと一緒にいたいもん!」


50 名前:閉鎖まであと 7日と 22時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 22:59:34.39 ID:12qG+Fmf0
(´・ω・`)「……お前はいったい何をした?」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「向こうの世界で! 何をしたんだ!?」

しぃはゆらゆらと立ち上がった。
もう涙は止まっていた。
その表情に笑顔を備えていた。

(*゚ー゚)「なんだあ、知ってるの?」
(´・ω・`)「……」

しぃはゆっくりとペンを拾い上げた。
そして、それを力任せに握りしめた。

意外とたやすく、ペンは折れた。


51 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:00:26.12 ID:12qG+Fmf0
(*゚ー゚)「そうだよね。もう私、生きてちゃいけないよね」
(´・ω・`)「だから私はお前を送り返さなかった。
       たとえ私がモララーに敗北しようとも、お前を救う気はない」
(*゚ー゚)「ふうん」

私はしぃに、少々強い絶望を与えたつもりだった。
しかし彼女は、それをさも当然といったふうに聞き流した。
やはり異常なのか。
それとも諦観か。

(*゚ー゚)「……」

しぃは室内を徘徊していた。

さあ、どう動く?
すでに推測はできている。
こうなることが、モララーにとって予定調和だとすれば。

次の瞬間、彼女の姿は部屋からかき消えた。


52 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:01:58.27 ID:12qG+Fmf0
('、`*川「し、しぃさん?」

あわてふためくペニサス。

(´・ω・`)「……多分、V.I.P.D.C.だ」

きわめて落ち着いた声で私はペニサスを制する。
自分でも驚くぐらい冷静だ。

私はもしや、敗北したいのだろうか。
そもそも「この世界が私と共にあるべき」などという考え自体が
私にとってどうでもいいのかもしれない。
モララーがいうところの、破滅願望か。

私は柘榴になる前の自分を知らない。
すると、しぃが柘榴になれば少なくとも今の「しぃ」という人格は消却されるということだ。
……それで、私の願いは叶う。
たかだか一人のイレギュラーにたいする怨恨が願いというのもおかしな話だが。


53 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:02:42.91 ID:12qG+Fmf0
('、`*川「ど、どうするんですか?」
(´・ω・`)「……行こうか、もう一度。
       いや、その前に一つだけ聞きたいことがある」
('、`*川「は、はい?」
(´・ω・`)「死にたいか?」

その問いにペニサスは一瞬戸惑いを見せた。
少しストレートすぎる質問だったかもしれない。

(´・ω・`)「この世界を終わらせたいか、という質問だ」
('、`*川「お、終わらせたくはない……ですけ、ど。
     でも、もう仕方がない……じゃ、ないですか」

もうどうしようもないということは彼女にもわかっていることだろう。
今、世界はモララーが掌握している。
今までも、か。
荒巻が私に抗えないように、私はモララーに抗えない。

私はペニサスを促し、再度ワープを試みた。


54 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:03:23.31 ID:12qG+Fmf0
V.I.P.D.C.の中に直接ワープしてやろうと思ったのだがどうにも不可能だった。
やはり、私の管理下にないということか。
仕方がないので前回同様建物の前にワープする。
中に入って受付嬢に軽く会釈すると、私とペニサスはエレベーターで十二階に向かった。

何か、清々しい気分だ。
しぃがここに行くという決断をしたときからである。
対抗できないと悟ったからか。
ともかく、敗北はすでに確定的だ。

考えれば何かできるかもしれない。
だがそれすらも面倒だった。
鬱屈としているわけでもないのだが。


56 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:05:33.22 ID:12qG+Fmf0
挿話

( ・∀・)「さて」

川 ゚ -゚)「?」

( ・∀・)「今、ここに一つの銃があります」

川 ゚ -゚)「はい」

( ・∀・)「これであなたの心臓あたりをめがけて撃てば、あなたは壊れてしまいます」

川 ゚ -゚)「はい」

( ・∀・)「撃ってもいいですか?」

川 ゚ -゚)「はい」

( ・∀・)「……ま、いいでしょう」

・・・

・・




61 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:18:49.26 ID:12qG+Fmf0
第二十一話 生活

電脳空間で私が見たものは、胸を撃ち抜かれて地面に伏している秘書だった。
ペニサスが小さく悲鳴をあげる。
私はしゃがみこんで、彼女を観察した。
血の一滴すらも漏出していない。
胸から、細かな機械部品が飛び出ていた。
やはりアンドロイドだったか。

('、`*川「そ、その人……」

ペニサスの震えた声に、私はゆっくりと首を振って立ち上がる。
そして彼女に「行こう」と促した。
ここから先の空間を彼女は知らない。
そして私は、直感的に最上階に彼女たちがいると感じていた。


62 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:19:04.71 ID:12qG+Fmf0
無闇に面倒な乗り継ぎを経て私たちは最上階へ到達した。
敗北を覚悟してみる都市地区の光景はひと味違う者だった。
下を見下ろすと、前回は蠢く人間ばかりが目に付いた。
しかし今は違う。
ただアスファルトの敷かれた地面と、そこに漂う空気の渦巻きが見て取れた。

やがてたどり着いた鉄扉の前で立ち止まる。
不意に、あの頭痛が蘇った。

('、`*川「こ、ここにしぃさんはいるんですか?」
(´・ω・`)「……ああ」

確信もなく私は頷いた。

('、`*川「……」

私はこの扉を開くことを躊躇っていた。
単純に、再び頭痛に苛まれるのが怖いのだ。
だが、私がそうするまでもなく扉は、内側から開かれた。


63 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:19:53.81 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「……来ると思ってましたよ」

中から予想通りの二人が現れた。
しぃは、モララーの背中に隠れるようにしている。

( ・∀・)「今、ちょうど二代目柘榴への仕立て上げが終了しましてね」
(´・ω・`)「ああ」
( ・∀・)「その様子だと……いろいろ、諦めましたか?」
(´・ω・`)「そうだな」

私は素っ気なく言った。
今更面と向かって敗北宣言などできようものか。
先ほど、ここを出るときは意気揚々と宣戦布告したというのに。

( ・∀・)「しかし、心変わりの早い人ですね」
(´・ω・`)「……これ以上担わせるつもりもないが、
       彼女のおかげだ」
( ・∀・)「彼女のせい、の間違いではないですか?」
(´・ω・`)「……ああ」


64 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:20:17.82 ID:12qG+Fmf0
しぃは何も口に出さなかった。
それでいい。これ以上、彼女に対する怒りを燃やしたくない。

(´・ω・`)「これからどうする?」
( ・∀・)「あなたの本体の所まで行きましょう」
(´・ω・`)「……そうか」

そこで彼女が柘榴となれば、私は解放されるというわけか。
私自身はどうなるのだろう。
そのまま消失するのか、或いは何らかの形で存在し続けるのか。
まぁ、どちらでもいいか。
私自身が命を投じればいいわけなのだから。

( ・∀・)「それでは行きましょう」
(´・ω・`)「待ってくれ」
( ・∀・)「はい?」
(´・ω・`)「私は、ここからワープすることがおそらくできない」
( ・∀・)「……そうでしたね」


65 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:20:59.61 ID:12qG+Fmf0
思えば、再構成が停止していたときにモララーがV.I.P.D.C.から
柘榴に来れたのも、ここからワープしたためだろう。
その時なぜその事実に気づかなかったのかは、詮索することもバカバカしい。

(´・ω・`)「……一つ、聞こうか」
( ・∀・)「なんでしょうかね?」
(´・ω・`)「なぜ、クーを殺した?」
( ・∀・)「……なんでしょう。私自身の優しさの賜、かもしれませんね」

( ・∀・)「彼女に世界の終わりを見せるのはどうしても憚られた……ただそれだけです。
     だれだって、終わりなど見たくないでしょうからね」
(´・ω・`)「……私の見る限り、彼女はお前に従順だったが」
( ・∀・)「彼女も意思を持っているはずなのですがね。
     誰のせいであんなに機械的になってしまったのやら」

お前のせいだろう、と言うとモララーはただ苦笑した。


66 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:22:26.85 ID:12qG+Fmf0
そのまま私たちは柘榴に飛ぶ。
しかし、私とペニサスは一度V.I.P.D.C.を出なければならなかった。
途中にあるクーの亡骸の前で、ペニサスが静かに手を合わせていた。
しぃは私たちについてこなかった。
彼女はもうすでに、私よりも優位に立ったのだろうか。

一つ、最上階に潜むこの世界の頭脳とやらに聞き忘れていたことがあった。
モララーなどでいいのか。
世界を支配する者が、あれほどのエゴイストでいいのかと。

しかし、考えてみればあれはまだマシなほうなのかもしれない。
そのうえ、私も彼と同等か、それ以上に利己的なことをやってきた。
ゆえにとやかく言う資格がない。
敗北はすなわち、天罰なのかもしれなかった。
とすると、やはり私は神でない。


67 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:23:14.70 ID:12qG+Fmf0
( ∵)「……唐突なことを言いますね」
( ・∀・)「神がこの世界を捨てると決断したんですよ。
     救いようがない、と」
( ∵)「……」

狡猾な嘘だ。
だがしぃは否定しなかった。
モララーにここでのことを言い聞かされていたのだろう。
私にも否定するつもりはない。
ビコーズはしばらく私たちを見つめ、溜息をついた。

( ∵)「神の思し召しならば仕方ありませんね。
    この世界はもうすでに末期でしたか」
( ・∀・)「そのようで」


68 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:23:35.83 ID:12qG+Fmf0
( ∵)「……昔話も、信じない方がよさそうですね」
( ・∀・)「二人の神が必ずしもこの世界を救うとは記されていませんでしたよ。
     なんなら一節書き加えますか?」
( ∵)「いえ、結構」

ビコーズはそのまま、部屋を出ようとした。

( ・∀・)「どこに?」
( ∵)「……いえ、どこに行くというわけでもありませんが、
   最後に地上の光でも浴びておこうかと思いまして」
( ・∀・)「その程度の時間はあると思いますから、ご自由に」

モララーがそういうと、ビコーズは肩をすくめて部屋を出て行った。

( ・∀・)「さて、始めましょうか」
('、`*川「……」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「どこに行くんだ?」
( ・∀・)「あなたの本体に、一番近しい場所ですよ」


69 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:25:12.36 ID:12qG+Fmf0
モララーは長い廊下を進む。
途中、目立たぬ扉を抜けた。
ペニサスは泣きそうになっている。
しぃは無表情。私と同様だ。

(´・ω・`)「……しぃ」
(*゚ー゚)「何?」

無駄だと思いつつ、聞いてみる。

(´・ω・`)「あの男になんと言いくるめられた?」
(*゚ー゚)「……別に、何も」

そう吐き捨ててしぃは私を追い越し、先に行ってしまった。

('、`*川「……」
(´・ω・`)「お前は、ついてくるのか?」

後から来たペニサスに問う。
彼女は、すでに天涯孤独の身だ。
自らの感情が存分に発揮されている今となってはその感情が殊更大きくなっていることだろう。
この場所に心の拠を見いだしたのだろうか。

結局、何も答えてくれなかった。


74 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:32:34.54 ID:12qG+Fmf0
エピローグ二 example...

そこは、ちょうどアンドロイドが座る部屋と同じようなつくりがされていた。
同じように機械が並び、同じように椅子が設置されていた。
そこに座る何かを見て、私は目を見開いてしまった。

それはミイラだった。
すでに朽ち果て、男か女かもわからぬ焦げ茶色の人体だった。

( ・∀・)「これが、誰だかわかりますが?」

その問いが私に向けられていると気づくまで少し時間がかかった。

( ・∀・)「これは、人間時代のあなたですよ」
(´・ω・`)「……」

そうか、これが。
妙な既視感はそのためなのだろう。
自然と、両の目から涙が溢れた。
なぜかはわからない。
機械となって二百年、泣くことなど忘れていたはずなのに。


75 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:33:10.40 ID:12qG+Fmf0
( ・∀・)「この身体ももう用済みですね……よし」

そういうと、そのミイラは跡形もなく消失した。
瞬間、私は心に穴が空いたような感触を覚えた。

( ・∀・)「さあ、あそこへ」
(*゚ー゚)「……」

躊躇いもなく彼女はその場へ向かう。
その途中、振り返って私を見上げた。

(*゚ー゚)「一つだけ、お願いしてもいい?」

私の答えを聞かず、彼女は言葉を続ける。

(*゚ー゚)「スケッチブック……しょぼんくんに見せてあげて」

そういえば、塔に置いたままだ。


76 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:34:25.70 ID:12qG+Fmf0
私が静かに念じると、スケッチブックは私の手元に落ちてきた。
あえて中は見ない。
続いて、それを向こうの世界へ送るよう念じる。
願わくば、しょぼんの元へ届くように。

(´・ω・`)「……届くかどうか、確証は持たない」
(*゚ー゚)「ありがとう」

そうして彼女は椅子に座る。
ペニサスは手で目を覆っていた。
私はその瞬間を見届けるつもりだった。

( ・∀・)「さあ」

モララーのかけ声と共に、世界が歪んだ気がした。


77 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:34:59.22 ID:12qG+Fmf0
瞬間、私は奇妙な解放を感じていた。
身体がなくなり、世界もなくなる。
ペニサスもモララーも、何もかもが彼方へ消えた。

そして私は。
静かに目を閉じることにした。
これからどうなるのか、それはしぃが決めることなのかもしれない。
だとしても、私は無駄な足掻きをしてみよう。

この世界の終焉と共に。
私自身も終わりを迎えますように、と。

初めて、私は神に祈ることとした。

・・・

・・




81 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:41:23.84 ID:12qG+Fmf0
エピローグ三 新世界について(記録者:ツン)

( ^ω^)「都市地区に行くお!」
ξ゚听)ξ「突然何言い出すのよ!」

神さまが代わったことは、私たちにとって正直関係のないことだった。
私はただ平穏を願っていたから。
ブーンと共に幸せな生活を送ることができれば、それだけで満足だった。

でもあの朝、起き上がった私に突然ブーンは叫んだ。

都市地区に行く。
行かなければならない、と。

私は何より、これ以上喧噪に巻き込まれるのがいやだった。
だからブーンを止めた。
ブーンは渋面で、それでも納得してくれた。


82 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:41:39.79 ID:12qG+Fmf0
それから数時間経った頃だと思う。
私は睡眠が足りていなかったから、二度寝に没頭していた。
場所はヒッキー先生の仕事場……第八倉庫。
先生は自宅を持っていてそこを寝床にしているからまだ来てなかった。
私はブーンを隠す意味もあって、倉庫で留守番していたのだ。

唐突に、ブーンが私を起こした。

( ^ω^)「ツン、ツン!」
ξ゚听)ξ「ん……どうしたの」

寝ぼけ眼の私の手をブーンが強く握りしめた。

( ^ω^)「……今まで、ありがとうだお」
ξ゚听)ξ「何よ、いきなり」

寝起きと言うこともあり、私はかなり不機嫌だった。


83 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:42:55.02 ID:12qG+Fmf0
( ^ω^)「この世界は、終わっちゃうお」
ξ゚听)ξ「はぁ?」

突然の申し出に、夢見半分の頭は上手く稼働しなかった。

( ^ω^)「僕にはわかるんだお。
       僕たちアンドロイドには……わかっちゃうんだお」
ξ゚听)ξ「何、バカなこと言ってるのよ。
      いい? 私たちはこれから普通の生活をするの!
      もう、騒ぎになんて巻き込まれたくないし、あんたを巻き込ませたくもない」
( ^ω^)「……ツン」

ブーンはかなしそうな表情をした。
私は何か腹立たしくなって、ブーンの追及を振り払ってもう一度眠ってやろうと思った。
瞬間、世界が轟いた。


84 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:43:47.51 ID:12qG+Fmf0
なぜかその瞬間、私は深い眠りに落ちてしまっていた。
そして起きたとき、
そこにブーンはいなかった。

ξ゚听)ξ「ブーン……?」

よく見ると、散らばっていた様々な機械も無くなっていた。
ただ何もない倉庫に、私は眠っていたことになる。

外に出ると、妙に騒がしい音が聞こえた。
それは、トラックの排気音だった。
その時、誰かが私を呼んだ。

(-_-)「……ツン」

先生だ。


85 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:45:17.44 ID:12qG+Fmf0
ξ゚听)ξ「先生、ブーンが!」

混乱する私を制して、先生はゆっくりと呟いた。

(-_-)「ツン。世界が終わったよ」
ξ゚听)ξ「え……?」
(-_-)「ここは僕らの知るテクノポリスじゃなくなったのさ」

ここをトラックが走るなんてこと、今までに無かった。

ξ゚听)ξ「どういうこと?」
(-_-)「新しく生まれ変わったのさ……アンドロイドのいない世界に」

アンドロイドが、いない。
つまり、ブーンがいない……。

答えを結びつけたと同時に、私は叫んでいた。

ξ゚听)ξ「そんなはずない! だって、神さまは世界を救うはずだったんじゃないの?」


86 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:46:28.31 ID:12qG+Fmf0
(-_-)「それが、これさ」

先生が吐き捨てる。

(-_-)「この世界……果ては、中心と同じ世界になってしまった」
ξ゚听)ξ「え……」
(-_-)「ビコーズに聞いたよ。
    世界は一度終わりを迎え、生まれ変わったんだ。
    誰かさんの思い通りにね」

それが、アンドロイドのいない……普通の世界。

(-_-)「ただし」
ξ゚听)ξ「え」
(-_-)「再構成は続けられるよ。
    深夜零時をもって、ここも再構成される。
    そうすれば僕らの立ち位置も当然変化するだろうね」

なんてことだ、と思った。
提示されたのは絶望だったのだ。
ここはテクノポリスなんかじゃなくなる……。


87 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:47:44.57 ID:12qG+Fmf0
ξ゚听)ξ「ブーンは……」
(-_-)「もう、いない」
ξ゚听)ξ「そんな……」

崩れ落ちる私の肩を先生が優しく叩いてくれた。

(-_-)「明日からは再構成の一部に組み込まれるよ。
    そうすれば絶望も哀しみもしない、ただの人間となれる。
    この世界における、正常な人間に」
ξ゚听)ξ「……」

終わった。
何かが消えてなくなった。

瞬間、先生は私を抱きしめ、そっと呟いたのだった。

(-_-)「これからは共に暮らせるよう祈ろう。
    お前は、私の大事な一人娘だ」

・・・

・・




90 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:54:27.50 ID:12qG+Fmf0
エピローグ四 言い訳(記録者 しぃ)

親が突然引っ越しすると言い出した。
仕事の関係とか、なんだとか。
私はもちろん反対した。
でも、聞き入れてくれなかった。
あの日。
いつものように母親と喧嘩していた。
すると、仕事が早く終わったといって父親が帰ってきた。
母が父に告げ口すると、父は私の頬を二度殴った。

だから殺した。
とくに後悔はしていない。
いや、嘘。
後悔はしている。
しょぼんくんにあえなくなるから。

だからしょぼんくんも殺して……私も死のうと思った。
そうすれば、ずっと一緒にいられる。
でも変な世界に来ちゃって。
私はしょぼんくんに置いていかれてしまった。
でもそれでよかった。

はず。


91 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:55:36.73 ID:12qG+Fmf0
なんだかよくわからない部屋で、あの人は私に言った。

世界を日常的なものにしてください。
アンドロイドを消してください。
再構成を継続させてください。

それだけの願いを叶えてくれれば、あとは好きに創ってくださって結構です。
意味がよくわからなかった。
でも私は頷いてしまった。
なぜだろう。
償いたかったのかもしれない。
でも……それだけじゃないかもしれない。
私がこの世界を救いたいと思ったのも。
そうすることでずっとしょぼんくんと一緒にいられると勘違いしていたからだった。

でも、今。
私は切にこの世界を想っていた。
それこそ、しょぼんくんを想うぐらいに。


92 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:55:49.29 ID:12qG+Fmf0
狂っていたんだろう。
今も狂ってるんだろう。
でもそれでいいと思ったりもする。

私は、その人の要望に沿う世界を知っている。

私は、この世界に地球を創った。
できる限り人々をそのままにして。
全世界を再構成できるようにして。

それらは、イメージするだけでいとも簡単に構成されていた。

だから私は願おうとした。
しょぼんくんのいる世界にしよう……と。


93 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:56:56.74 ID:12qG+Fmf0
でもやめた。
それは私のためにもしょぼんくんのためにもならない。

一つ、私は願った。
しょぼんくんにスケッチブックを届けてください、と。
果たして届いているのだろうか。
確認することはできない。

……それに、眠くなってきた。
これを死というなら、そうかもしれない。
もうしょぼんくんに会うことはかなわないだろう。

でも、それでいいんだ。
記憶には永遠にしょぼんくんがいる。
少し困ったような可愛い顔を私に向けてくれている。

柘榴さんの口ぶりだと、しょぼんくんはまだ生きているらしい。
よかった、本当によかった。

・・・

・・



ごめんね。


94 名前:閉鎖まであと 7日と 21時間[sage] 投稿日:2007/01/15(月) 23:59:23.32 ID:12qG+Fmf0
エピローグ五 終わり(記録者 しょぼん)

退院後も、僕は浮遊感溢れる生活を送っていた。
いつの間にかしぃのお葬式は終わっていた。
学校に登校すると、しぃの机は撤去されてしまっていた。
友達が僕を過度に励ます。
でもそれはそれで嬉しい。

あの世界はどうなったのだろう。
考えるだけ無駄だった。
知る手がかりは何もない。
きっかけとなった公園に行ってみた。
声は聞こえなかった。

しぃに会って話を聞きたかった。
でも、彼女はもう亡くなったということになっている。
それも、両親を殺し、僕までもナイフで刺そうとして。 そして、死んだのだ。


95 名前:閉鎖まであと 7日と 20時間[sage] 投稿日:2007/01/16(火) 00:00:10.05 ID:34YV2TWz0
ある日、帰宅すると机の上にあるものが置かれているのに気づいた。

J( 'ー`)し「あんたのでしょ、それ」

言われても僕は何も答えなかった。
オレンジ色の表紙……それは間違いなく、しぃのスケッチブックだった。

慌てて手に取り、ページをめくる。

向こうの世界で見た絵がずらりと並んでいた。
可愛らしく、丸っこい字も書き込まれている。

これは、僕にとって向こうの世界が存在したことの唯一の証明なのだ。

気づくと僕は泣いていた。
ページをめくるたび、今までのことが思い出される。


97 名前:閉鎖まであと 7日と 20時間[sage] 投稿日:2007/01/16(火) 00:01:10.75 ID:34YV2TWz0
最後のページに行き着いた。

そこには描きかけの絵と、少しの言葉が殴り書きされていた。

「さようなら」

と。

……僕は思わずそのスケッチブックを放り投げそうになった。
なんだこれ、結局、僕は真実を知ることができなかったんだ。

これは最後の希望じゃなく、最後の絶望だった。

しぃはもう帰ってこないのだろう。
しぃともうあえないのだろう。

しぃが僕を殺そうとした? 両親を殺した?
今でもそんなことは信じない。

きっと何か裏があるはず……。
そう思うことさえも、虚しいのだろうか。


98 名前:閉鎖まであと 7日と 20時間[] 投稿日:2007/01/16(火) 00:02:06.36 ID:34YV2TWz0
もういいや。
僕はベッドに寝転がる。
何もかも諦めて、普通に考えることにしよう。

しぃは死んだ。
それは悲しい。
しぃは僕を襲おうとした。父親と母親を殺した。
それは許されないことだ。

でも僕は、そんな彼女が好きだった。
だからこそ、余計に悲しく、許すことができないのだ。

・・・

・・



(´・ω・`)しょぼんたちは世界の果てに現れたようです 完




【関連】
一気読み - プロローグ
第一話 - 第二話 - 第三話 - 第四話 - 第五話 - 第六話 - 第七話 - 第八話 - 第九話 - 第十話
第十一話 - 第十二話 - 第十三話 - 第十四話 - 第十五話 - 第十六話 - 第十七話 - 第十八話
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