一気読み
第一話
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第二話
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第三話
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第四話
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第五話
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第六話
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第七話
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第八話
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第九話
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第十話
第十一話
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最終話
1 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:38:17.02 ID:w6l7mQUD0
我家の家族構成。
綺麗でちょっと天然ボケな母さん、優しくて笑顔がダンディーな父さん。
明るくて笑顔が可愛い妹。それで私。
……あと、害虫が一匹。
ゴキよりもヤスデよりもクモよりも蛞蝓よりも厄介な、害虫が。
3 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:38:38.13 ID:w6l7mQUD0
J('ー`)し「じゃあカーチャン達行ってくるけど……ドクオ」
締め切られた扉に向かって話しかける母さん。
「いい」
扉の向こうから、二言ボソリと声がする。
(*゚ー゚)「お兄ちゃんも一緒に行こうよぅ……」
「……」
妹のしぃも声をかける、が今度は返事が無い。
5 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:03.72 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「父さんが車で待っている。行こう」
私はしぃの小さな手を引いて、玄関へと向かった。
母さんも「そうね」と言い、名残惜しそうに扉の前を後にする。
( ´_ゝ`)「……ドクオはやっぱり来ないのか? 」
父さんは、さっきまでふかしていたタバコを灰皿に押し当て聞いた。
J('ー`)し「ええ。誘ってはみたんだけど」
母さんは助手席。私はしぃをチャイルドシートに乗せ、
後部座席に座る。
( ´_ゝ`)「そうか」
それだけ言うと父さんは母さんにキーを受け取り、エンジンをかけた。
重苦しい空気が流れる中、車は小さく振動し、やがて発車した。
6 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:33.49 ID:w6l7mQUD0
4月12日。今日はしぃの誕生日。
私達家族4人は近所のファミリーレストランへと向かっていた。
(*゚ー゚)「何食べようかな! ねぇ、クーちゃんは何食べるの? ねぇ、」
川 ゚ -゚)「ん、そうだな……」
しぃはニコニコと満面の笑みを浮かべて、何を食べるか考えている。
もうドクオの事は脳内から消え去っているようだ。
川 ゚ -゚)「いかすみパスタにしようかな」
(*゚ー゚)「じゃあさ、じゃあさ、しぃはいちごのあまいやつ! 」
7 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:54.87 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「……いちごパフェ? 」
(*゚ー゚)「ぱふぇじゃないの! あまいやつ! 」
ちいさな手をふにふにさせて、何かを表現しているが
私には何を伝えたいのかよくわからない。
( ´_ゝ`)「さ、ついたぞ」
そうこうしている内に車は小さなファミリーレストランの
小さな駐車場に駐車していた。
8 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:40:20.50 ID:w6l7mQUD0
家族と出かける時、大抵ドクオはいない。
いつからかは分らない。
北海道に旅行に行った時も、ドクオだけいなかった。
沖縄に行ったときも、映画を見に行った時も、当たり前にいなかった。
9 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:40:41.16 ID:w6l7mQUD0
(*゚ー゚)「クーちゃんのおいししそうだな!
ねぇ、ひとくちちょうだいよ、いいでしょ?ねぇ」
しぃがほっぺにたっぷりと生クリームをつけ、私のパスタをねだる。
川 ゚ -゚)「わかったから口を拭け。だらしない」
私は綺麗にたたまれたおしぼりで
しぃの口についた生クリームを拭った。
J('ー`)し「ふふ、クーったら。しぃのお母さんみたい」
( ´_ゝ`)「しぃの母親はお前だろう」
10 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:06.26 ID:w6l7mQUD0
その通り。
私はしぃの母親ではない。ただの世話好きな姉だ。
(*゚ー゚)「ねぇクーちゃん、コーラおかわりー」
川 ゚ -゚)「……」
しぃは私をお姉ちゃんと呼ばない。
川 ゚ -゚)「ちょっと待っていろ」
別にお姉ちゃんと呼んで欲しいわけでもないし
クーちゃん、という呼び名に不満があるわけでもないから良いけど。
私は、しぃが飲み干したグラスを片手にドリンクバーへと向かった。
12 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:26.95 ID:w6l7mQUD0
(;^ω^)「……」
ドリンクバーには先客が居た。
若いピザ男。神妙な、でもどこかふざけた表情。
グラスを片手に指を空中に彷徨わせ、うーん、うーんと唸っている。
……このピザ、さては。
川 ゚ -゚)「どうかしたか」
(;^ω^)「え、あっ、これ、やり方がよく分らんもんで……」
……やっぱり。
川 ゚ -゚)「ここにコップを置いて、このボタンを押す」
私はしぃのコップを置き、ジュースを入れて見せた。
男はおおっ、と興奮した声をあげる。
13 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:47.67 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「止めるときはどうしたらいいんだお? 」
川 ゚ -゚)「何も押さなくていい。自動的に止まる」
( ^ω^)「科学の進歩スゴスwwwwwww」
大の男がドリンクバーの前できゃっきゃとはしゃぐ姿は滑稽で
私は呆れると同時に少し吹き出しそうになった。
( ^ω^)「ん? ……」
川 ゚ -゚)「? 」
男は注ぎ終わったアイスコーヒーを手に
まじまじとこちらを見つめ、またうーんと唸る。
川 ゚ -゚)「氷はここだ。ガムシロップはこれ」
( ^ω^)「いや、そうじゃなくて。
君、どこかで僕に会った事ないかお? 」
14 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:42:12.51 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「……ナンパ? 」
(;^ω^)「そ、そんなんじゃないお。
僕にはツンっていう大切な人が居て……」
男の顔をじっと見てみる。
口角が異常に上がっていて、愛想の良い印象を与える。
……こんな知り合いいたっけ?
15 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:42:40.79 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「ショボンおまたー」
(´・ω・`)「遅い」
ショボンはかなりイライラした様子で
グラスの氷をストローでコツコツと突付いている。
( ^ω^)「めんごめんごwwwwww
どりんくばあ?の使い方が分らなかったもんでwwww」
(´・ω・`)「……君は本当に機械が苦手だからね。
そんな事だろうと思った」
( ^ω^)「でもこうやってアイスコーヒー持ってこれたお」
僕は自慢げに先ほど注いだアイスコーヒーをテーブルに置いた。
16 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:01.66 ID:w6l7mQUD0
(´・ω・`)「……一人で出来たの? 」
( ^ω^)「可愛い女の子に手伝ってもらったおwwww」
(´・ω・`)「ふーん」
ショボンは興味なさそうにアイスコーヒーにガムシロップを入れ
小さな銀色のスプーンでカチャカチャとかきまぜた。
( ^ω^)「可愛さという点ではツンに負けるけどwwww」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「そうそう、この間ツンと遊園地に行ったとき……」
(´・ω・`)「……ツンとは上手く行ってるんだね」
18 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:23.32 ID:w6l7mQUD0
僕が飛び切りの笑顔で始めようとしたお惚気話を
ショボンが遮る。
( ^ω^)「そりゃあもうwwww毎日ラブラブだおー」
(´・ω・`)「そう……」
ショボンの表情が険しくなった気がした。
……嫉妬?
まさか、ショボンはツンの事が好きだったのか……
いや、それともまさか……
(;^ω^)「まさかショボン、僕の事g
(´・ω・`)「ドクオとはどう? 」
19 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:46.81 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「ドクオ? 」
ふいに出てきた懐かしい名前に
一瞬どういう表情をしていいか分らなくなる。
(´・ω・`)「連絡はとれた? 」
( ^ω^)「まだメール帰って来ないお」
(´・ω・`)「そう。……何してるんだろうね、今頃」
何もしていないんだろうね。ショボンが付け加える。
( ^ω^)「今度家に行ってみるお。ショボンも行くお? 」
(´・ω・`)「……会ってくれるかな? 」
21 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:09.02 ID:w6l7mQUD0
会ってくれないだろうけど、何もしないなんてできない。
(´・ω・`)「もうドクオの話はやめようか」
すこしの間の後ショボンが、ボツリとつぶやく様に言う。
自分からドクオの話を振ったんじゃないか、と言いかけてやめた。
もうドクオの話はいい。正直したくない。
でも、気になることが一つ。
( ^ω^)「ショボン、ドクオはどうしt
(´・ω・`)「ブーン、今日もツンと約束あるんだろう?」
ショボンは少し残っていたアイスコーヒーを飲みきると、席を立った。
(´・ω・`)「そろそろ出よう」
22 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:38.59 ID:w6l7mQUD0
この時、ドクオは想像もしていなかった。
自分の事を心配してくれる友達がいることも
家族を乗せた車が、もうすぐ家に到着しようとしている事も。
『もしもし、ドクオ?どうだ?』
('A`)「……白ばっか」
『白ktkrwwwwwwおkおkwwww』
俺は受話器を持ったまま、タンスを物色していた。
全く、色気の無いもんばっかりだ。
17にもなってこんなフリルのパンツ履いてるとはね。
兄ちゃんは情けないよ。
23 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:59.32 ID:w6l7mQUD0
『でさ、あれはある? 』
('A`)「……あれ?」
『じらすなよwwww』
('A`)「……あー、アレね。ちょっと待てよ」
アレ はこの引き出しじゃないみたいだ。
俺はすぐ下の小さな引き出しを開けた。
('A`)「あぁ、あったわ」
『kkkkkwsk』
受話器越しの男の息が荒くなる。
おぇ、気持ち悪ぃ。
「 気 持 ち 悪 い の は お 前 だ 」
24 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:45:20.24 ID:w6l7mQUD0
『……ドクオ? 』
『おーい、ドクオ? 』
『どうした? 』
『……』ガチャッ
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「……」
25 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:45:44.73 ID:w6l7mQUD0
俺は今、自分より何歳も年下の妹の前で正座をしている。
川 ゚ -゚)「電話の男は誰だ」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「 言 え 」
俺の妹って実はアレか?刑事だったのか?
するどい眼光と口調はまるで刑事ドラマのそれの様だ。
('A`)「友達」
川 ゚ -゚)「ほう、良い友達を持ったな」
26 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:05.64 ID:w6l7mQUD0
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「で、そのお友達と私の部屋で何を? 」
('A`)「世間話を少々」
川 ゚ -゚)「そうか。
私の部屋で私の洋服ダンスの前で
私の下着を漁りながら……世間話を? 」
('∀`)「うん、あ、あはは……」
川 ゚ -゚)「笑うな、笑顔が気持ち悪い」
あー、死にたい。
27 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:27.24 ID:w6l7mQUD0
よくあるドラマなら俺はこの後ボコボコにされて、場面が切り替わる。
川 ゚ -゚)「もういい。
……出ていけ。きもい。顔も見たくない」
そんなのはドラマやエロゲーや小説だけ。
現実
俺に向けられるのは愛のお仕置きではなく、冷ややかな軽蔑の視線だ。
('A`)「すいませんでした」
俺は深く深くお辞儀をした後、自分の部屋に戻った。
久しぶりに泣きそうになった。
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