28 名前:(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:48.06 ID:w6l7mQUD0
ケンカするほど仲が良いとはよく言ったもので。
俺も随分昔には妹とケンカしていた。ケンカできていた。
今?話もしなけりゃ目も合わせません。
部屋に戻った俺は付けっ放しのパソコンの前に座った。
「さっきはすまなかった。妹が光臨したもので」
俺がそう打ち込むと、すぐに新しいレスがつく。
『ちょwwwwドクオオワタwwwww』
「……お前、楽しんでない? 」
35 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:01:45.82 ID:YJ3ARZgC0
『そんなことねーよwwwwで、例のアレは? 』
「OK、抜かりはない」
『超GJwwwwwすぐ送ってくれwwww』
俺はさっきちゃっかり持って来ていた妹の下着を
ポケットから取り出し……
('A`)「……あれ? 」
ない。おかしいな。確かにポケットに入れたはずなんだけど。
……落とした?……
36 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:06.53 ID:YJ3ARZgC0
川 ゚ -゚)「……害虫め」
……ヤツは、私が何も知らないとでも思ってるんだろうか?
全く、どこまで……人に迷惑をかけるんだ、あれは。
川 ゚ -゚)「洗いなおそう」
アレが触ったと思われる下着を全てカゴに入れ、
洗濯機に放り込む。
ぐわん、ぐわんと唸る洗濯機をボーっと見つめ
私は少し昔のことを思い出していた。
37 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:35.69 ID:YJ3ARZgC0
それは、可愛らしいピンクのカーディガン。
川 ゚ -゚)「……なんだ? これは」
近所のデパートの袋に包装されている。
サイズは少し大きめだけど、生地もしっかりしていて
安物ではなさそうだ。
('∀`)「こ、高校の合格祝い。バイト代で買ったんだ」
ドクオは照れくさそうに頬をかく。
38 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:56.49 ID:YJ3ARZgC0
川 ゚ -゚)「……これ、安物では無いだろう? 」
('∀`)「そうでもねぇよwww」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「あ、でも俺流行とか分んないからさ……
ダサくてアレなら着なくていいから」
川 ゚ -゚)「……ううん、とても可愛い。
嬉しいよ、ありがとう。お兄ちゃん」
('∀`)「へ、へへwwww」
ピンクは好きじゃないし、デザインも流行とだいぶずれている。
でも、本当に嬉しかった。
私はそのちょっとダサいカーディガンを毎日学校に着ていった。
袖に穴があいて、ほつれも出てきて、ボロボロになって。
でも、母さんに止められるまで、ずっと毎日着てた。
39 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:03:22.85 ID:YJ3ARZgC0
その頃はドクオが大好きだったな。
恋愛感情でも性的な意味でもなく、人間として
兄として家族として大好きだった。
お兄ちゃん、なんて普通に呼んで慕ってたり。
……今?今は……
川 ゚ -゚)(……おっと、明日は月曜か……
確か小テストがあったな。復習しなきゃ)
40 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:04:55.70 ID:YJ3ARZgC0
月曜ってのはなんでこんなに欝なんだろうね。
俺はニートだけど。
いや、ニートだからこそってのはあると思うんだ。
みんな、休みも終わって働いたり学校行ったりって時に
俺はエンドレスでお休みってわけだ。
これはニートにしかわかんないんだろうね。
社会人に言ったら鼻で笑われるか嫉妬されそうだ。
『なんだドクオ? なんかいつもに増して欝っぽいな』
お、分かってくれるかい?俺のたった一人の友人。
「分かる? やっぱ月曜はウツダシノウ」
42 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:05:30.29 ID:YJ3ARZgC0
『あるあr……あるあるwwww』
この男も引きこもりでニート。俺の意見に賛同してくれている。
『家族誰もいない家に一人でポツーンと取り残される感じなwww』
あるある。俺は俺自身とチャットしている錯覚に陥る。
……こう、昨日まではワイワイしてた家がこう静まり返ってさ
俺のPCの音しかしないってのは、どうもな……。
俺がそう打ち込んで、発言しようとした時だった。
('A`)「!? 」
43 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:06:06.23 ID:YJ3ARZgC0
扉を、トントンと叩く音。反射的に振り返る。
か、勘弁してくれよ……
だってこの家には俺しかいないはずなんだぜ?
('A`)「だ、誰かいるのか」
恐る恐る、問いかける。
「おにいちゃんー」
……お兄ちゃん?
今この家で俺をお兄ちゃんと呼ぶ妹は一人しかいない。
そーっとドアを開け、声の主を確認する。
(*゚ー゚)「……」
('A`)「……しぃ?」
102 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:01:29.88 ID:Hb6IuElO0
('A`)「幼稚園は? 」
(*゚ー゚)「おやすみ」
('A`)「……そう」
(*゚ー゚)「お兄ちゃん何してたの? 」
('A`)「パソコン」
(*゚ー゚)「お兄ちゃんごはん食べたの? 」
('A`)「いらない」
(*゚ー゚)「お兄ちゃん学校いかないの? 」
('A`)「学校って年でもないからね」
(*゚ー゚)「ふーん……」
103 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:01.39 ID:Hb6IuElO0
しぃは何をするでもなく、じっと俺の隣で
PCの画面を見つめている。
……そこに居られると、出来ることが狭まるんだよね。
かといって「出て行け」とも言えない。
……ん?
そういやしぃ、幼稚園の制服着てるじゃん。
('A`)「しぃ、正直に言いなさい。幼稚園はどうしたの? 」
俺は出来るだけの優しい口調で問いかけた。
(*゚ー゚)「……帰ってきた」
104 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:28.99 ID:Hb6IuElO0
('A`)「……はぁ? 」
そりゃ、
幼稚園から家までは子供でも歩いてこれない距離じゃないけど。
(*゚ー゚)「だって、きもちわるいんだもん」
おいおい、仮病かよ。流石俺の妹だぜ。
('A`)「しぃ、ズル休みはいけないんだぞ。
クーちゃんに怒られるぜ? 」
(*゚ー゚)「……」
('A`)「……幼稚園に帰りなさい」
(*゚ー゚)「……ぷっ」
105 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:49.93 ID:Hb6IuElO0
('A`)「? 」
しぃが突然、何の脈絡も無く噴出した。
(*゚ー゚)「ほんと、どーしよーもないね。アンタ」
('A`)「……は? 」
口調が、目つきが、仕草が、ほんの数秒前とはまるで別人だ。
(*゚ー゚)「ズル休みはいけないんだぞ だって。
どの口が言うんだろうねー、そんな事」
そう言って、ケラケラと笑ってみせる。
('A`)「な、に言って……」
107 名前:天の声(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 23:03:17.46 ID:Hb6IuElO0
(*゚ー゚)「あれ? 焦ってるー? 」
なんだこれ?誰お前?
脳が正常に稼動していない。お陰で何も言葉が出てこない。
('A`)「どうしたのお前……へ、変だぞ」
(*゚ー゚)「あー、そっかぁ」
しぃがわざとらしく首をうーんと傾けて、考えている仕草をする。
(*゚ー゚)「お兄ちゃんの中での【しぃ】がブッ壊れたんだもんねぇー
そりゃショックだよねー」
109 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:03:49.38 ID:Hb6IuElO0
しぃは「ブッ壊れた」なんて汚い言葉は使わなかった。
少なくとも、今までは。
(*゚ー゚)「でもさぁ、私だって私を演じるの大変だったんだよー? 」
('A`)「ちょ、ちょっと待ってくれ、」
(*゚ー゚)「こんなふーに、ばかっぽーくお喋りするのさぁ」
ふふっ、と笑い、俺のベットの上にちょこんと座る。
('A`)「ま、まさかお前サイ……」
俺自身、自分が何を言っているのかよくわからない。
(*゚ー゚)「ネウロ乙www
私はサイじゃないし、赤い箱も作らない。
これが素。んで、今迄が……可愛いお面? 」
112 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:04:22.16 ID:Hb6IuElO0
そ、そうか。いや、そうなんだ。え、あ、うん。
俺は戸惑いながらも、何とか理解し、冷静になることを勤める。
例えば接待ゴルフの時、自分はプロ級の腕前だとしたら。
勿論、全力どころか、手加減し、下手なフリをする。
所謂、空気を読むって事。そうしないと場の空気も悪くなるし
自分自身の立場も悪くなる。そうでしょ?
しぃの言葉に、あぁなるほどね・と妙に納得してしまう。
('A`)「じゃあ何で今、俺に本性を明かすんだ? 」
(*゚ー゚)「騙す意味ないから。
あんた騙して取り入っても得無いしね」
113 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:04:55.11 ID:Hb6IuElO0
なるほどね。悲しいかな、納得してしまう。
(*゚ー゚)「あと、話したいことあるし。
私その為に幼稚園オサボリしちゃったんだよねー」
('A`)「へ? 」
ギシ、とベットがきしむ。しぃがそろそろと俺に近づいてくる。
(*゚ー゚)「私ね、ずっとお兄ちゃんの事好きだったんだー」
……は?
(*゚ー゚)「……」
しぃが俺の手を取り、その手を思いっきり……
115 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:05:30.77 ID:Hb6IuElO0
(;'A`)「いってええええええええ!!! 」
180度に捻った。いや、180度は言い過ぎか。
でも衝撃はそのくらいの勢いで痛かった。日本語でおk、俺。
(*゚ー゚)「また騙されたwwwwバッカじゃないの?www」
悶え苦しむ俺の横で、ケタケタと笑い転げるしぃ。
(#'A`)「て、てめええええ」
(*゚ー゚)「あ、私に手、出していいのかな?
あること無いこと言っちゃうよ? www」
(#'A`)「……」
117 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:06:05.29 ID:Hb6IuElO0
(*゚ー゚)「で。その事も踏まえてなんだけど。
ちょーっと聞きたいことがあって、ね」
こいつ、俺に脅迫してんのか?
('A`)「な、何だよ」
何5歳児に脅迫されてどもってんだよ俺。
(*゚ー゚)「友達、いるでしょ? 」
言い終わった後、急にもじもじしだすしぃ。
('A`)「……いないけど」
(*゚ー゚)「む・か・し! 」
118 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:06:33.43 ID:Hb6IuElO0
昔?……
ふっと、何人かの(ごく少数だが)顔が思い浮かぶ。
('A`)「……いた、ね」
(*゚ー゚)「その中にかっこいいひと、いたでしょ?」
('A`)「……は? 」
俺の友達にイケメンなんていないぞ。っていうか何が言いたいんだよ?
(*゚ー゚)「家に遊びに来てたじゃない! 」
家? 家に来てたのは……ブーンと、あとショボン。
……たまにツンも来ていたかな。そのくらいだ。
(*゚ー゚)「ほら、綺麗な顔の、少女漫画の王子様みたいな人」
少女漫画の王子様……。
('A`)「あぁ、ショボンの事か……」
119 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:07:12.64 ID:Hb6IuElO0
ショボンは確かに綺麗な顔をしている。
女の子みたい、とか、お人形さんみたい、とよく
女子にからかわれて嫌がっていたっけな。
(*゚ー゚)「ショボン様っていうんだ……」
('A`)「ショボン様……」
(*゚ー゚)「ねぇ、今はもうお友達じゃないの? 」
鋭い質問だ。俺は口を噤む。
(*゚ー゚)「今すぐ連絡とって? お家に来てもらってよ 」
('A`)「無理だよ」
(*゚ー゚)「どうして? 」
('A`)「もう友達じゃないから」
151 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:16:21.78 ID:dz3SADdA0
俺ははっきりそう言い切った後、不思議な事に
自分で言った言葉にショックを受けていた。
も う 、 友 達 じ ゃ な い
歩み寄ってきた友人達を突き離したのは俺だ。
それなのに、なんでだろう。
(*゚ー゚)「分かった」
しぃはすっくりと立ち上がり、ベットからぴょんと飛び降りる。
(*゚ー゚)「要はアンタ嫌われたんでしょ?
そんな陰気で気持ち悪い性格じゃ無理ないよね」
……何も言い返せない。
彼らは俺を嫌ってくれてるんだろうか?
嫌ってくれているなら、その方がいい。俺も楽だ。
(*゚ー゚)「……そうやって一生引きこもってればいいじゃん」
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