1 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:38:17.02 ID:w6l7mQUD0
我家の家族構成。
綺麗でちょっと天然ボケな母さん、優しくて笑顔がダンディーな父さん。
明るくて笑顔が可愛い妹。それで私。
……あと、害虫が一匹。
ゴキよりもヤスデよりもクモよりも蛞蝓よりも厄介な、害虫が。
3 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:38:38.13 ID:w6l7mQUD0
J('ー`)し「じゃあカーチャン達行ってくるけど……ドクオ」
締め切られた扉に向かって話しかける母さん。
「いい」
扉の向こうから、二言ボソリと声がする。
(*゚ー゚)「お兄ちゃんも一緒に行こうよぅ……」
「……」
妹のしぃも声をかける、が今度は返事が無い。
5 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:03.72 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「父さんが車で待っている。行こう」
私はしぃの小さな手を引いて、玄関へと向かった。
母さんも「そうね」と言い、名残惜しそうに扉の前を後にする。
( ´_ゝ`)「……ドクオはやっぱり来ないのか? 」
父さんは、さっきまでふかしていたタバコを灰皿に押し当て聞いた。
J('ー`)し「ええ。誘ってはみたんだけど」
母さんは助手席。私はしぃをチャイルドシートに乗せ、
後部座席に座る。
( ´_ゝ`)「そうか」
それだけ言うと父さんは母さんにキーを受け取り、エンジンをかけた。
重苦しい空気が流れる中、車は小さく振動し、やがて発車した。
6 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:33.49 ID:w6l7mQUD0
4月12日。今日はしぃの誕生日。
私達家族4人は近所のファミリーレストランへと向かっていた。
(*゚ー゚)「何食べようかな! ねぇ、クーちゃんは何食べるの? ねぇ、」
川 ゚ -゚)「ん、そうだな……」
しぃはニコニコと満面の笑みを浮かべて、何を食べるか考えている。
もうドクオの事は脳内から消え去っているようだ。
川 ゚ -゚)「いかすみパスタにしようかな」
(*゚ー゚)「じゃあさ、じゃあさ、しぃはいちごのあまいやつ! 」
7 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:39:54.87 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「……いちごパフェ? 」
(*゚ー゚)「ぱふぇじゃないの! あまいやつ! 」
ちいさな手をふにふにさせて、何かを表現しているが
私には何を伝えたいのかよくわからない。
( ´_ゝ`)「さ、ついたぞ」
そうこうしている内に車は小さなファミリーレストランの
小さな駐車場に駐車していた。
8 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:40:20.50 ID:w6l7mQUD0
家族と出かける時、大抵ドクオはいない。
いつからかは分らない。
北海道に旅行に行った時も、ドクオだけいなかった。
沖縄に行ったときも、映画を見に行った時も、当たり前にいなかった。
9 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:40:41.16 ID:w6l7mQUD0
(*゚ー゚)「クーちゃんのおいししそうだな!
ねぇ、ひとくちちょうだいよ、いいでしょ?ねぇ」
しぃがほっぺにたっぷりと生クリームをつけ、私のパスタをねだる。
川 ゚ -゚)「わかったから口を拭け。だらしない」
私は綺麗にたたまれたおしぼりで
しぃの口についた生クリームを拭った。
J('ー`)し「ふふ、クーったら。しぃのお母さんみたい」
( ´_ゝ`)「しぃの母親はお前だろう」
10 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:06.26 ID:w6l7mQUD0
その通り。
私はしぃの母親ではない。ただの世話好きな姉だ。
(*゚ー゚)「ねぇクーちゃん、コーラおかわりー」
川 ゚ -゚)「……」
しぃは私をお姉ちゃんと呼ばない。
川 ゚ -゚)「ちょっと待っていろ」
別にお姉ちゃんと呼んで欲しいわけでもないし
クーちゃん、という呼び名に不満があるわけでもないから良いけど。
私は、しぃが飲み干したグラスを片手にドリンクバーへと向かった。
12 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:26.95 ID:w6l7mQUD0
(;^ω^)「……」
ドリンクバーには先客が居た。
若いピザ男。神妙な、でもどこかふざけた表情。
グラスを片手に指を空中に彷徨わせ、うーん、うーんと唸っている。
……このピザ、さては。
川 ゚ -゚)「どうかしたか」
(;^ω^)「え、あっ、これ、やり方がよく分らんもんで……」
……やっぱり。
川 ゚ -゚)「ここにコップを置いて、このボタンを押す」
私はしぃのコップを置き、ジュースを入れて見せた。
男はおおっ、と興奮した声をあげる。
13 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:41:47.67 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「止めるときはどうしたらいいんだお? 」
川 ゚ -゚)「何も押さなくていい。自動的に止まる」
( ^ω^)「科学の進歩スゴスwwwwwww」
大の男がドリンクバーの前できゃっきゃとはしゃぐ姿は滑稽で
私は呆れると同時に少し吹き出しそうになった。
( ^ω^)「ん? ……」
川 ゚ -゚)「? 」
男は注ぎ終わったアイスコーヒーを手に
まじまじとこちらを見つめ、またうーんと唸る。
川 ゚ -゚)「氷はここだ。ガムシロップはこれ」
( ^ω^)「いや、そうじゃなくて。
君、どこかで僕に会った事ないかお? 」
14 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:42:12.51 ID:w6l7mQUD0
川 ゚ -゚)「……ナンパ? 」
(;^ω^)「そ、そんなんじゃないお。
僕にはツンっていう大切な人が居て……」
男の顔をじっと見てみる。
口角が異常に上がっていて、愛想の良い印象を与える。
……こんな知り合いいたっけ?
15 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:42:40.79 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「ショボンおまたー」
(´・ω・`)「遅い」
ショボンはかなりイライラした様子で
グラスの氷をストローでコツコツと突付いている。
( ^ω^)「めんごめんごwwwwww
どりんくばあ?の使い方が分らなかったもんでwwww」
(´・ω・`)「……君は本当に機械が苦手だからね。
そんな事だろうと思った」
( ^ω^)「でもこうやってアイスコーヒー持ってこれたお」
僕は自慢げに先ほど注いだアイスコーヒーをテーブルに置いた。
16 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:01.66 ID:w6l7mQUD0
(´・ω・`)「……一人で出来たの? 」
( ^ω^)「可愛い女の子に手伝ってもらったおwwww」
(´・ω・`)「ふーん」
ショボンは興味なさそうにアイスコーヒーにガムシロップを入れ
小さな銀色のスプーンでカチャカチャとかきまぜた。
( ^ω^)「可愛さという点ではツンに負けるけどwwww」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「そうそう、この間ツンと遊園地に行ったとき……」
(´・ω・`)「……ツンとは上手く行ってるんだね」
18 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:23.32 ID:w6l7mQUD0
僕が飛び切りの笑顔で始めようとしたお惚気話を
ショボンが遮る。
( ^ω^)「そりゃあもうwwww毎日ラブラブだおー」
(´・ω・`)「そう……」
ショボンの表情が険しくなった気がした。
……嫉妬?
まさか、ショボンはツンの事が好きだったのか……
いや、それともまさか……
(;^ω^)「まさかショボン、僕の事g
(´・ω・`)「ドクオとはどう? 」
19 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:43:46.81 ID:w6l7mQUD0
( ^ω^)「ドクオ? 」
ふいに出てきた懐かしい名前に
一瞬どういう表情をしていいか分らなくなる。
(´・ω・`)「連絡はとれた? 」
( ^ω^)「まだメール帰って来ないお」
(´・ω・`)「そう。……何してるんだろうね、今頃」
何もしていないんだろうね。ショボンが付け加える。
( ^ω^)「今度家に行ってみるお。ショボンも行くお? 」
(´・ω・`)「……会ってくれるかな? 」
21 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:09.02 ID:w6l7mQUD0
会ってくれないだろうけど、何もしないなんてできない。
(´・ω・`)「もうドクオの話はやめようか」
すこしの間の後ショボンが、ボツリとつぶやく様に言う。
自分からドクオの話を振ったんじゃないか、と言いかけてやめた。
もうドクオの話はいい。正直したくない。
でも、気になることが一つ。
( ^ω^)「ショボン、ドクオはどうしt
(´・ω・`)「ブーン、今日もツンと約束あるんだろう?」
ショボンは少し残っていたアイスコーヒーを飲みきると、席を立った。
(´・ω・`)「そろそろ出よう」
22 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:38.59 ID:w6l7mQUD0
この時、ドクオは想像もしていなかった。
自分の事を心配してくれる友達がいることも
家族を乗せた車が、もうすぐ家に到着しようとしている事も。
『もしもし、ドクオ?どうだ?』
('A`)「……白ばっか」
『白ktkrwwwwwwおkおkwwww』
俺は受話器を持ったまま、タンスを物色していた。
全く、色気の無いもんばっかりだ。
17にもなってこんなフリルのパンツ履いてるとはね。
兄ちゃんは情けないよ。
23 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:44:59.32 ID:w6l7mQUD0
『でさ、あれはある? 』
('A`)「……あれ?」
『じらすなよwwww』
('A`)「……あー、アレね。ちょっと待てよ」
アレ はこの引き出しじゃないみたいだ。
俺はすぐ下の小さな引き出しを開けた。
('A`)「あぁ、あったわ」
『kkkkkwsk』
受話器越しの男の息が荒くなる。
おぇ、気持ち悪ぃ。
「 気 持 ち 悪 い の は お 前 だ 」
24 名前:運動員(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 01:45:20.24 ID:w6l7mQUD0
『……ドクオ? 』
『おーい、ドクオ? 』
『どうした? 』
『……』ガチャッ
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「……」
25 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:45:44.73 ID:w6l7mQUD0
俺は今、自分より何歳も年下の妹の前で正座をしている。
川 ゚ -゚)「電話の男は誰だ」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「 言 え 」
俺の妹って実はアレか?刑事だったのか?
するどい眼光と口調はまるで刑事ドラマのそれの様だ。
('A`)「友達」
川 ゚ -゚)「ほう、良い友達を持ったな」
26 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:05.64 ID:w6l7mQUD0
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「で、そのお友達と私の部屋で何を? 」
('A`)「世間話を少々」
川 ゚ -゚)「そうか。
私の部屋で私の洋服ダンスの前で
私の下着を漁りながら……世間話を? 」
('∀`)「うん、あ、あはは……」
川 ゚ -゚)「笑うな、笑顔が気持ち悪い」
あー、死にたい。
27 名前:運動員(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:27.24 ID:w6l7mQUD0
よくあるドラマなら俺はこの後ボコボコにされて、場面が切り替わる。
川 ゚ -゚)「もういい。
……出ていけ。きもい。顔も見たくない」
そんなのはドラマやエロゲーや小説だけ。
現実
俺に向けられるのは愛のお仕置きではなく、冷ややかな軽蔑の視線だ。
('A`)「すいませんでした」
俺は深く深くお辞儀をした後、自分の部屋に戻った。
久しぶりに泣きそうになった。
28 名前:(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 01:46:48.06 ID:w6l7mQUD0
ケンカするほど仲が良いとはよく言ったもので。
俺も随分昔には妹とケンカしていた。ケンカできていた。
今?話もしなけりゃ目も合わせません。
部屋に戻った俺は付けっ放しのパソコンの前に座った。
「さっきはすまなかった。妹が光臨したもので」
俺がそう打ち込むと、すぐに新しいレスがつく。
『ちょwwwwドクオオワタwwwww』
「……お前、楽しんでない? 」
35 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:01:45.82 ID:YJ3ARZgC0
『そんなことねーよwwwwで、例のアレは? 』
「OK、抜かりはない」
『超GJwwwwwすぐ送ってくれwwww』
俺はさっきちゃっかり持って来ていた妹の下着を
ポケットから取り出し……
('A`)「……あれ? 」
ない。おかしいな。確かにポケットに入れたはずなんだけど。
……落とした?……
36 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:06.53 ID:YJ3ARZgC0
川 ゚ -゚)「……害虫め」
……ヤツは、私が何も知らないとでも思ってるんだろうか?
全く、どこまで……人に迷惑をかけるんだ、あれは。
川 ゚ -゚)「洗いなおそう」
アレが触ったと思われる下着を全てカゴに入れ、
洗濯機に放り込む。
ぐわん、ぐわんと唸る洗濯機をボーっと見つめ
私は少し昔のことを思い出していた。
37 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:35.69 ID:YJ3ARZgC0
それは、可愛らしいピンクのカーディガン。
川 ゚ -゚)「……なんだ? これは」
近所のデパートの袋に包装されている。
サイズは少し大きめだけど、生地もしっかりしていて
安物ではなさそうだ。
('∀`)「こ、高校の合格祝い。バイト代で買ったんだ」
ドクオは照れくさそうに頬をかく。
38 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:02:56.49 ID:YJ3ARZgC0
川 ゚ -゚)「……これ、安物では無いだろう? 」
('∀`)「そうでもねぇよwww」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「あ、でも俺流行とか分んないからさ……
ダサくてアレなら着なくていいから」
川 ゚ -゚)「……ううん、とても可愛い。
嬉しいよ、ありがとう。お兄ちゃん」
('∀`)「へ、へへwwww」
ピンクは好きじゃないし、デザインも流行とだいぶずれている。
でも、本当に嬉しかった。
私はそのちょっとダサいカーディガンを毎日学校に着ていった。
袖に穴があいて、ほつれも出てきて、ボロボロになって。
でも、母さんに止められるまで、ずっと毎日着てた。
39 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:03:22.85 ID:YJ3ARZgC0
その頃はドクオが大好きだったな。
恋愛感情でも性的な意味でもなく、人間として
兄として家族として大好きだった。
お兄ちゃん、なんて普通に呼んで慕ってたり。
……今?今は……
川 ゚ -゚)(……おっと、明日は月曜か……
確か小テストがあったな。復習しなきゃ)
40 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:04:55.70 ID:YJ3ARZgC0
月曜ってのはなんでこんなに欝なんだろうね。
俺はニートだけど。
いや、ニートだからこそってのはあると思うんだ。
みんな、休みも終わって働いたり学校行ったりって時に
俺はエンドレスでお休みってわけだ。
これはニートにしかわかんないんだろうね。
社会人に言ったら鼻で笑われるか嫉妬されそうだ。
『なんだドクオ? なんかいつもに増して欝っぽいな』
お、分かってくれるかい?俺のたった一人の友人。
「分かる? やっぱ月曜はウツダシノウ」
42 名前:空気コテ(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 02:05:30.29 ID:YJ3ARZgC0
『あるあr……あるあるwwww』
この男も引きこもりでニート。俺の意見に賛同してくれている。
『家族誰もいない家に一人でポツーンと取り残される感じなwww』
あるある。俺は俺自身とチャットしている錯覚に陥る。
……こう、昨日まではワイワイしてた家がこう静まり返ってさ
俺のPCの音しかしないってのは、どうもな……。
俺がそう打ち込んで、発言しようとした時だった。
('A`)「!? 」
43 名前:空気コテ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 02:06:06.23 ID:YJ3ARZgC0
扉を、トントンと叩く音。反射的に振り返る。
か、勘弁してくれよ……
だってこの家には俺しかいないはずなんだぜ?
('A`)「だ、誰かいるのか」
恐る恐る、問いかける。
「おにいちゃんー」
……お兄ちゃん?
今この家で俺をお兄ちゃんと呼ぶ妹は一人しかいない。
そーっとドアを開け、声の主を確認する。
(*゚ー゚)「……」
('A`)「……しぃ?」
102 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:01:29.88 ID:Hb6IuElO0
('A`)「幼稚園は? 」
(*゚ー゚)「おやすみ」
('A`)「……そう」
(*゚ー゚)「お兄ちゃん何してたの? 」
('A`)「パソコン」
(*゚ー゚)「お兄ちゃんごはん食べたの? 」
('A`)「いらない」
(*゚ー゚)「お兄ちゃん学校いかないの? 」
('A`)「学校って年でもないからね」
(*゚ー゚)「ふーん……」
103 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:01.39 ID:Hb6IuElO0
しぃは何をするでもなく、じっと俺の隣で
PCの画面を見つめている。
……そこに居られると、出来ることが狭まるんだよね。
かといって「出て行け」とも言えない。
……ん?
そういやしぃ、幼稚園の制服着てるじゃん。
('A`)「しぃ、正直に言いなさい。幼稚園はどうしたの? 」
俺は出来るだけの優しい口調で問いかけた。
(*゚ー゚)「……帰ってきた」
104 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:28.99 ID:Hb6IuElO0
('A`)「……はぁ? 」
そりゃ、
幼稚園から家までは子供でも歩いてこれない距離じゃないけど。
(*゚ー゚)「だって、きもちわるいんだもん」
おいおい、仮病かよ。流石俺の妹だぜ。
('A`)「しぃ、ズル休みはいけないんだぞ。
クーちゃんに怒られるぜ? 」
(*゚ー゚)「……」
('A`)「……幼稚園に帰りなさい」
(*゚ー゚)「……ぷっ」
105 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:02:49.93 ID:Hb6IuElO0
('A`)「? 」
しぃが突然、何の脈絡も無く噴出した。
(*゚ー゚)「ほんと、どーしよーもないね。アンタ」
('A`)「……は? 」
口調が、目つきが、仕草が、ほんの数秒前とはまるで別人だ。
(*゚ー゚)「ズル休みはいけないんだぞ だって。
どの口が言うんだろうねー、そんな事」
そう言って、ケラケラと笑ってみせる。
('A`)「な、に言って……」
107 名前:天の声(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/14(土) 23:03:17.46 ID:Hb6IuElO0
(*゚ー゚)「あれ? 焦ってるー? 」
なんだこれ?誰お前?
脳が正常に稼動していない。お陰で何も言葉が出てこない。
('A`)「どうしたのお前……へ、変だぞ」
(*゚ー゚)「あー、そっかぁ」
しぃがわざとらしく首をうーんと傾けて、考えている仕草をする。
(*゚ー゚)「お兄ちゃんの中での【しぃ】がブッ壊れたんだもんねぇー
そりゃショックだよねー」
109 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:03:49.38 ID:Hb6IuElO0
しぃは「ブッ壊れた」なんて汚い言葉は使わなかった。
少なくとも、今までは。
(*゚ー゚)「でもさぁ、私だって私を演じるの大変だったんだよー? 」
('A`)「ちょ、ちょっと待ってくれ、」
(*゚ー゚)「こんなふーに、ばかっぽーくお喋りするのさぁ」
ふふっ、と笑い、俺のベットの上にちょこんと座る。
('A`)「ま、まさかお前サイ……」
俺自身、自分が何を言っているのかよくわからない。
(*゚ー゚)「ネウロ乙www
私はサイじゃないし、赤い箱も作らない。
これが素。んで、今迄が……可愛いお面? 」
112 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:04:22.16 ID:Hb6IuElO0
そ、そうか。いや、そうなんだ。え、あ、うん。
俺は戸惑いながらも、何とか理解し、冷静になることを勤める。
例えば接待ゴルフの時、自分はプロ級の腕前だとしたら。
勿論、全力どころか、手加減し、下手なフリをする。
所謂、空気を読むって事。そうしないと場の空気も悪くなるし
自分自身の立場も悪くなる。そうでしょ?
しぃの言葉に、あぁなるほどね・と妙に納得してしまう。
('A`)「じゃあ何で今、俺に本性を明かすんだ? 」
(*゚ー゚)「騙す意味ないから。
あんた騙して取り入っても得無いしね」
113 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:04:55.11 ID:Hb6IuElO0
なるほどね。悲しいかな、納得してしまう。
(*゚ー゚)「あと、話したいことあるし。
私その為に幼稚園オサボリしちゃったんだよねー」
('A`)「へ? 」
ギシ、とベットがきしむ。しぃがそろそろと俺に近づいてくる。
(*゚ー゚)「私ね、ずっとお兄ちゃんの事好きだったんだー」
……は?
(*゚ー゚)「……」
しぃが俺の手を取り、その手を思いっきり……
115 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:05:30.77 ID:Hb6IuElO0
(;'A`)「いってええええええええ!!! 」
180度に捻った。いや、180度は言い過ぎか。
でも衝撃はそのくらいの勢いで痛かった。日本語でおk、俺。
(*゚ー゚)「また騙されたwwwwバッカじゃないの?www」
悶え苦しむ俺の横で、ケタケタと笑い転げるしぃ。
(#'A`)「て、てめええええ」
(*゚ー゚)「あ、私に手、出していいのかな?
あること無いこと言っちゃうよ? www」
(#'A`)「……」
117 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:06:05.29 ID:Hb6IuElO0
(*゚ー゚)「で。その事も踏まえてなんだけど。
ちょーっと聞きたいことがあって、ね」
こいつ、俺に脅迫してんのか?
('A`)「な、何だよ」
何5歳児に脅迫されてどもってんだよ俺。
(*゚ー゚)「友達、いるでしょ? 」
言い終わった後、急にもじもじしだすしぃ。
('A`)「……いないけど」
(*゚ー゚)「む・か・し! 」
118 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:06:33.43 ID:Hb6IuElO0
昔?……
ふっと、何人かの(ごく少数だが)顔が思い浮かぶ。
('A`)「……いた、ね」
(*゚ー゚)「その中にかっこいいひと、いたでしょ?」
('A`)「……は? 」
俺の友達にイケメンなんていないぞ。っていうか何が言いたいんだよ?
(*゚ー゚)「家に遊びに来てたじゃない! 」
家? 家に来てたのは……ブーンと、あとショボン。
……たまにツンも来ていたかな。そのくらいだ。
(*゚ー゚)「ほら、綺麗な顔の、少女漫画の王子様みたいな人」
少女漫画の王子様……。
('A`)「あぁ、ショボンの事か……」
119 名前:天の声(新潟県)[] 投稿日:2007/04/14(土) 23:07:12.64 ID:Hb6IuElO0
ショボンは確かに綺麗な顔をしている。
女の子みたい、とか、お人形さんみたい、とよく
女子にからかわれて嫌がっていたっけな。
(*゚ー゚)「ショボン様っていうんだ……」
('A`)「ショボン様……」
(*゚ー゚)「ねぇ、今はもうお友達じゃないの? 」
鋭い質問だ。俺は口を噤む。
(*゚ー゚)「今すぐ連絡とって? お家に来てもらってよ 」
('A`)「無理だよ」
(*゚ー゚)「どうして? 」
('A`)「もう友達じゃないから」
151 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:16:21.78 ID:dz3SADdA0
俺ははっきりそう言い切った後、不思議な事に
自分で言った言葉にショックを受けていた。
も う 、 友 達 じ ゃ な い
歩み寄ってきた友人達を突き離したのは俺だ。
それなのに、なんでだろう。
(*゚ー゚)「分かった」
しぃはすっくりと立ち上がり、ベットからぴょんと飛び降りる。
(*゚ー゚)「要はアンタ嫌われたんでしょ?
そんな陰気で気持ち悪い性格じゃ無理ないよね」
……何も言い返せない。
彼らは俺を嫌ってくれてるんだろうか?
嫌ってくれているなら、その方がいい。俺も楽だ。
(*゚ー゚)「……そうやって一生引きこもってればいいじゃん」
152 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:16:47.53 ID:dz3SADdA0
あ、懐かしい。まだ捨ててなかったんだ。
クロゼットの奥、奥の奥。目立つピンクのカーディガン。
川 ゚ -゚)「……」
当時はまだ着れる、まだ着れると言い張っていたけど
今見るとやっぱり……
川 ゚ -゚)「ボロボロだ」
これに固執してたそう当時の自分がなんだかおかしくって
私は少し笑った後、それを元の場所に仕舞った。
ピンポーン
153 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:17:08.72 ID:dz3SADdA0
家中に電子音が響き渡る。来客だ。
川 ゚ -゚)「はいはい」
母父は共働きだから両方不在。しぃは幼児、ドクオは……うん。
そんなわけで、電話・来客の対応はもっぱら私の仕事だ。
川 ゚ -゚)「どなたですかー」
言いながらドアスコープを覗く。
「あ、ドクオ君の友達です」
若い男。10代後半から20代前半といったところか。
身なりも清潔で、顔も爽やか好青年。
これがドクオの友達?
川 ゚ -゚)「ちょっと待ってください」
154 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:17:29.29 ID:dz3SADdA0
川 ゚ -゚)「……あのー、すいません」
「はい」
川 ゚ -゚)「誰かは知りませんが、僕には友達なんていません。
頼むから帰ってください。
……だそうです」
私はさっきドクオに言付けられた事をそのまま……
というわけにはいかないので少し丁寧に変換して伝えた。
「……」
男は少し黙った後、そうですか。と言い、落ち込んだ様子で
家の前から去ろうとした。
155 名前:候補者(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 02:18:19.45 ID:dz3SADdA0
川 ゚ -゚)「あ、あの、ちょっと待ってください」
私は慌てて内鍵を外し、男のいる外に出た。
無用心だけど、悪い人には見えないし……
川 ゚ -゚)「ドk……いや、お兄ちゃんの、お友達なんですよね」
(´・ω・`)「あ、はい」
男の顔はドアスコープで見るよりずっと色白で
なんというか、綺麗だった。
川 ゚ -゚)「もしよろしければ、少し話を聞かせてくれませんか? 」
(´・ω・`)「……」
男は、参ったな。という顔をして、目線を逸らした。
川 ゚ -゚)「お願いします」
188 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:57:22.29 ID:lyCsn9AS0
それは、私が高校に入学してすぐだったと思う。
ある日を境にドクオは一日中部屋に篭りきりになって
バイトも大学にも行かなくなってしまった。
原因は分らない。
母さんや父さんが何を聞いても何も答えなかったらしい。
勉強についていけなくなったのか、それともイジメ?
なにかトラブルに巻き込まれてしまったんだろうか?
(´・ω・`)「そんな大袈裟なもんじゃない。ただの失恋だよ」
川 ゚ -゚)「はい? 」
男が軽く言い放った一言に、私はわが耳を疑った。
189 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:57:53.60 ID:lyCsn9AS0
(´・ω・`)「うん、傍目から見るとただの失恋なんだけどね」
あんまり意外だったので、返す言葉を失う。
(´・ω・`)「本人にしてみたら〔大きな裏切り〕だったんだろ」
うんうん、とひとりで頷く男。
「もうちょっと詳しく」と言おうとして、止める。
川 ゚ -゚)「あの、私はクーです。
失礼ですがお名前をお聞きしても? 」
(´・ω・`)「あ、あぁ。僕はショボン」
ショボンと名乗る男は、最初の渋りはどこへいったのかと
思うほどあっさり、原因を明かした。
190 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:58:19.25 ID:lyCsn9AS0
ここVIP公園は、最近整備されたばかりなので全体的に綺麗。
ショボンさんと私は入り口付近のベンチに腰を下ろした。
家で話しても良かったんだけど、私からしたら知らない男だし
ドクオにも話を聞かれる恐れがある。
(´・ω・`)「久しぶりだな、この公園。
ドクオ達とよく来たんだよ」
私に話しているんだろうか?だが目線はこちらではなく公園。
懐かしそうに見回している。
(´・ω・`)「ドクオは元気にしてる? 」
川 ゚ -゚)「……元気ですよ」
191 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:58:43.39 ID:lyCsn9AS0
(´・ω・`)「そう、今は何してるの? 」
何もしていないんですよね、これが。
(´・ω・`)「うん、分ってる。聞いてみただけ」
どうやらショボンさんはドクオをよく理解しているようだ。
川 ゚ -゚)「あの、失恋ってさっき
……おっしゃったじゃないですか」
(´・ω・`)「うん」
川 ゚ -゚)「その、相手の女性っていうか……えっと、」
慎重に、言葉を探す。
国語の成績は良いんだけど。いざって時に出てこない。
192 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:59:05.00 ID:lyCsn9AS0
(´・ω・`)「ふふ」
そんな私を見て、ショボンさんは柔らかく笑う。
(´・ω・`)「君、ドクオに似てる」
川 ゚ -゚)「え? 」
そんなの、初めて言われた。
……そんなはずないのに。
(´・ω・`)「あれ?失礼だったかな」
川 ゚ -゚)「あ、いえ……そういうんじゃないんですけど。
あまり言われないので」
不思議なことに、嫌悪感は無い。むしろ少し……
194 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15:59:48.42 ID:lyCsn9AS0
川 ゚ -゚)「そんな事より、その……
お兄ちゃんの好きになった女性ってのは? 」
(´・ω・`)「良い子だよ。
可愛いし、男子女子みんなの憧れの的みたいな人だったね」
川 ゚ -゚)「あぁ……」
なるほどね。学校のアイドルに一方的に惚れちまったってわけ。
そりゃそうか。なら不思議は無い。
んで、一方的に失恋して学校やめちゃったと。
川 ゚ -゚)「……なんというろくでもない男」
(´・ω・`)「いや、無理も無いよ。
ツンは少し思わせぶりなところがあるから」
ツン?それは女性の名前だろうか。
何となく、どこかで聞いたことがあるような気がする。
川 ゚ -゚)「じゃあ……裏切りっていうのh
「クーちゃーん! 」
195 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 16:00:32.01 ID:lyCsn9AS0
核心的な質問を、誰かの呼び声が邪魔する。
(*゚ー゚)「クーちゃん、何してるのー? 」
川 ゚ -゚)「しぃ? 」
突然現れたしぃが、私とショボンの間にちょこんと座る。
川 ゚ -゚)「全く、勝手にうろちょろしちゃダメじゃないか。
ドクオみたいな不審者に襲われたらどうする? 」
私が一喝すると、ショボンさんがまぁまぁ、となだめる。
(´・ω・`)「こちらは妹さん? 」
(*゚ー゚)「しいでーす。おにいちゃんはー? 」
196 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 16:00:52.90 ID:lyCsn9AS0
(´・ω・`)「僕はショボン。よろしくね」
(*゚ー゚)「えへへ」
川 ゚ -゚)「っていうかしぃ、
カギ閉めたはずなのにどうやって家から出てきたんだ? 」
(*゚ー゚)「お兄ちゃんにあけてもらったー」
ド ク オ め ぇ ……
(*゚ー゚)「ねぇねぇ、何のお話してたのー? 」
198 名前:知事候補(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 16:02:13.81 ID:lyCsn9AS0
幼児ならではの無邪気な質問と笑顔に
私とショボンさんは顔を見合わせる。
川 ゚ -゚)「なんでもないんだよ」
(´・ω・`)「うん。ちょっと子供には聞かせられないよね」
……それはちょっと変な意味に捉えられる恐れが。
(*゚ー゚)「わかったー!デートのおやくそくでしょー? 」
(´・ω・`)「そんなんじゃないよ」
ショボンはニコニコと愛想よくしぃの相手をしてくれている。
悪い人じゃなさそうだ。本当に。
(*゚ー゚)「ずるーい。しぃも一緒にいくー」
256 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:32:39.65 ID:HqbVNJJV0
しぃは頬をぷくっと膨らませ、すねてみせる。
その表情はビックリするくらい愛らしくて
私はそういう趣味じゃないけど思わずキュンとしてしまった。
……いかん、思わずデレッとしてしまった。
川 ゚ -゚)「それじゃ、私たちは帰ります」
しぃがいては、私の聞きたい話は聞けそうにないし
それならショボンさんとここにいる意味は無くなる。
しぃの手を握り、ベンチから下りる。
(´・ω・`)「そうだね。いや、何も話せなくてすまない」
何も話せなくて?……とんでもない。
詳しく聞かなくてもよくわかったよ。
「ドクオがどんなにダメか」って事をね。
ありがとう、ショボンさん。
257 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:33:04.25 ID:HqbVNJJV0
友達?……誰だろう。
大方ブーンだろうけど、いや、ショボンか?……どっちでもいいや。
正直、怖い。
もし今どっちかに会って、喋ったりしたらやっぱり
「友達って良いな」って思ったりするだろう。
そしてまた前みたいにみんなで仲良く……
……やめよう。こんな事考えても無意味だし、空しいだけだ。
('A`)「はぁ……」
胸いっぱいに詰まったモヤモヤをため息にして大気中に吐き出す。
「タメ息つくと幸せ逃げてくよー? 」
259 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:33:55.50 ID:HqbVNJJV0
……悪魔が来た。
(*゚ー゚)「どーしたの?暗い顔しちゃって」
('A`)「……お前は随分とご機嫌だね」
いつのまにか室内にいたしぃが、部屋の壁にもたれかかって
俺とは対照的に、やたらと明るい表情でいる。
(*゚ー゚)「まーね。ショボン様とお喋りしちゃったんだー」
ショボンと?そうか、さっき来たのはショボンだったんだ。
('A`)「それを自慢しに来たわけ?」
悪いが今は他人の自慢話を聞ける心境じゃない。
260 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:34:24.06 ID:HqbVNJJV0
(*゚ー゚)「そんなわけないじゃん。
おにいちゃんにおねがいがあるのー」
しぃが 可愛い仮面 を被る。
ちょっと前なら「なぁにしぃちゃん、なんでも言ってご覧」
とか言っちゃってたかもしれないけど、今は違う。
その笑顔の仮面が、ただ恐ろしい。
('A`)「な、何だよ、お、おねがいって」
だからどもんなって、俺。
261 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:35:00.69 ID:HqbVNJJV0
(*゚ー゚)「VIPワールドに行きたいなー」
……VIPワールドってのは、うちの市唯一の遊園地。
つまり、遊園地に連れてけってこと?
なにそれ?今までのはツンデレ?これなんてエロゲ?
(*゚ー゚)「あ、勘違いしないでよゴキブリ。
もちろんアンタと2人じゃないからね? 」
('A`)「ゴキ……じゃあ誰と……」
しぃが急にもじもじしだした。顔は耳まで真っ赤になっている。
('A`)「……ショボン?」
263 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:36:00.84 ID:HqbVNJJV0
(*゚ー゚)「……」
黙って、こくんと頷く。
('A`)「……悪いが諦めな。ショボンとは二度と遊ばないし
俺は遊園地なんk」
(*゚ー゚)「あっ、もしもしー」
いつのまにかしぃは誰かと電話をし始めた。
俺 の ケ ー タ イ で だ 。
('A`)「ちょ、お、おま、」
(*゚ー゚)「はい、はい、お兄ちゃんがどーしても
ショボンさんとゆーえんちにいきたいってゆったんです」
通話相手はショボンなようです。なんつーか、こいつ最悪だ。
264 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:36:41.22 ID:HqbVNJJV0
(*゚ー゚)「はーい、日曜日楽しみにしてまーす」
放心状態の俺をよそに、通話を終えたしぃは
ケータイを床にポイッと投げ捨て、微笑む。
(*゚ー゚)「今度の日曜、楽しみだねぇ」
('A`)「……」
その瞬間、俺はもういい加減に切れた。
ふざけんなよ。なんで俺がお前みたいなクソガキの
言いなりにならなきゃいけねぇんだ。
俺は引きこもりだぞ?外に出られるわけがないだろうが!?
まして遊園地!?そんな人オンザ人みたいなとこ行ったら
発狂しちまうわボケが!
265 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:37:05.78 ID:HqbVNJJV0
……みたいな内容の事を、ものすごく柔らかい表現で
お子様にも分り易いように、かつ簡潔にしぃに伝える。
(*゚ー゚)「……」
しぃはしばらくだまった後、その場にしゃがみこみ
足を崩した。
(*゚ー゚)「……ねぇお兄ちゃんさぁ、ちょっと想像して見てよ」
笑顔。だが目は笑っていない。
('A`)「……」
266 名前:バンドマン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 01:37:34.58 ID:HqbVNJJV0
(*゚ー゚)「もし、私が今『助けてー』って大声上げたら……」
……え?
(*゚ー゚)「こんなふーに、服ちょっと乱したりして……」
スカートを少しめくり、シャツのボタンを2、3個外す。
(*゚ー゚)「クーちゃんが飛んできてさ、
そしたら私涙目で言うんだ……」
お兄ちゃんが『お医者さんごっこ』しようって
言ってきて……しぃの身体を……
(;'A`)「……」
2 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:47:19.89 ID:z1UZ8CD50
そんな事になったらアレだ。
今ちょっと混乱していて状況理解できてないけど、これだけは言える。
俺、終わる。
(*゚ー゚)「でね、もう一回聞くけど。
遊園地、行 く よ ね ? 」
この時、俺が見たしぃの笑顔は最高に可愛くて、
最高に恐ろしかった。
3 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:47:50.73 ID:z1UZ8CD50
VIPランドは市内にある。とはいえ、決して近い距離ではない。
引きこもりの俺にとっては、Lv上げもろくにしていない状態で
ラスボスのいる城に乗り込むくらい不安で、大冒険だ。
それにショボンと会うのは久しぶり。
引きこもりになってからは一度も会っていない。
何の気なしに、鏡の前に立って見る。
髪は伸ばしっぱなしでボサボサ。肌はガサガサでボロボロ。
目は赤く充血しているし、Lかってくらい濃いクマまである。
なにこれ?これが俺?なんか俺、……やばくね?
4 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:48:17.87 ID:z1UZ8CD50
落ち着け、落ち着け。
肌と目はどうにもならない。
だが髪をサッパリさせれば印象もグッと変わるはずだ。
近所の床屋に行こう。もう多少ダサくても仕方ない。
この髪型はどう考えても不審者だ。
適当な服に着替え、原チャのカギをポケットに入r……
……あ、そういやこないだkumazonで買物したばっかだ。
【盗撮盗聴完全マニュアル】
DVD付きで税込み19000円。なかなか興味深かった。
5 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:48:44.60 ID:z1UZ8CD50
そんなことより、だ。
俺は慌ててサイフを確認する。
1000円札が一枚。500円硬貨が1枚、1円玉が2枚。
合計、1502円。
('A`)「これはひどい」
中学生だってもっと持ってるだろ……常識的に考えて。
さて、どうしたもんか……
A クーに借りる
B しぃに借りる
C カーチャンに借りる
6 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:49:05.12 ID:z1UZ8CD50
まずBはない。そもそもしぃはまだ小遣いを貰っていない筈。
Cはどうだろう。いやいや、給料日前で苦しいと言っていたし
こないだ貰ったばっかだし、無理だ。
('A`)「ってことで、頼む。金を貸してくれ」
川 ゚ -゚)「黙れ小僧」
選択肢が全て消滅した。
部屋に戻り、もう一度鏡の中の自分を見つめる。
('A`)「やっぱ……これじゃだめだよな……」
歩いてるだけで通報されそうな見事な不審者ヘアー。
これじゃあアレだ。床屋すら行けないわ。
絶望する俺の視界の端っこに、鋭利な刃物が写る。
うん、ハサミだ。
7 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:49:38.24 ID:z1UZ8CD50
……ん?
……これ、自分で切っちゃえばよくね?
我ながら名案。思わず笑みがこぼれる。
これなら金が無い&外出たくないっていう問題が
全て解決しちゃうじゃないか。
だが俺が手にしているはさみは、髪を切るそれじゃない。
紙を切るハサミだ。
('∀`)(紙と髪wwww俺うめぇwwwww)
それに髪を切ったことなんかないし、そんな技術有るはずが無い。
でも、勢いは止まらない。
8 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:49:59.18 ID:z1UZ8CD50
少し大きめの鏡を机に設置し、床に新聞紙を2、3枚敷く。
少しずつ切ってけば大丈夫だろ。
DQNな美容師も居るくらいだ。俺に出来ないはずがない。
失敗したらその時はプロの人に直してもらえば良いしね。
鏡と髪をにらめっこして、そろそろとハサミを入れる。
('A`)「あ、あ……? おかしいな」
いかん。いきなり切りすぎた。
('A`)「あれ? なんで? ちょ、なにこれ」
はらり、はらりと新聞の上に落ちていく俺の毛達。
もっさりと積もっていく黒い雪。
9 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:50:20.35 ID:z1UZ8CD50
俺のセルフカットは、結果から言えば【大失敗】に終わった。
長さは左右バラバラで、ちぐはぐ。
毛先はあっち向いたりこっち向いたりの大騒ぎ。
こうして、堂本剛顔負けの、新しすぎる髪型が完成したのだった。
('A`)(もうダメだ……俺、死ぬしかない。
こんな頭じゃ床屋どころか部屋からすら出れないよママ)
床屋「ちょwwwwお客さん自分で切っちゃったんすかwwサーセンww」
こんな事言われたら、泣いちゃうかもしれない。
10 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:50:41.76 ID:z1UZ8CD50
ドクオが急に、「金を貸してくれ」と言ってきた。
遊園地に行くから髪を切りたい。だが金が無い。……だそうだ。
「金を貸せ」
その言葉に反応して、有無を言わさず拒否してしまったが……
川 ゚ -゚)(まぁ……散髪代程度なら……
貸してやらんこともなかったかな……)
12 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:51:13.56 ID:z1UZ8CD50
私は少し後悔していると同時に、何だか嬉しかった。
髪を切りに行く、友人と遊園地に行く。
それは当たり前の、ごく日常的なこと。
昔のドクオは当たり前に出来ていた。
今のドクオはそれが出来なくなっていた。
だから私は
ドクオがまた、私の大好きなお兄ちゃんに戻りつつあるのかも。
そんな期待をしてしまっていた……のかもしれない。
15 名前:タレント(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 01:52:37.31 ID:z1UZ8CD50
川 ゚ -゚)「ドクオ、さっきはすまなかったな……
これ、使っt……
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「……」
新聞の上の散らばった毛、ハサミ、鏡、ドクオの頭。涙目。
コンマ何秒かで全てを把握した。
私は5千円札をスッとテーブルの上に置くと
ごめん。とだけ言って部屋を出て行った。
96 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:23:25.80 ID:gqAHm8wf0
(´・ω・`)「……と、いうわけなんだよ」
( ^ω^)「なるほどー。
ひろゆきとうまい棒の関係が手に取るように分ったお」
ブーンは、ふむふむと相槌をうち、僕の話を聞いている。
本当に理解しているのかは疑問だけど、まぁいいか。
(´・ω・`)「ところでブーン、今日はバイト休みかい? 」
( ^ω^)「これからだおwwwマンドクセwww」
時計を見る。午後7時30分ジャスト。
97 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:23:47.01 ID:gqAHm8wf0
(´・ω・`)「大変でしょ。深夜のコンビニバイトって」
( ^ω^)「そうでもないお?
朝昼は遊んだりゲームやったり好きにできるしwww」
(´・ω・`)「君さ、いつ寝てるの? 」
( ^ω^)「……さぁ? 」
ブーンはビールには手をつけず、つまみの枝豆ばかり食べている。
飲まないなら注文するなよな。金払うのは僕なんだから。
( ^ω^)「あ、餃子2人前追加でー」
98 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:24:11.85 ID:gqAHm8wf0
(´・ω・`)「まだ食べるの? もう晩御飯は食べたんでしょ? 」
ぐっと親指を突き出し、「余裕」という表情のブーン。
君はそんなに食べるからピザるんだよ。全く。
( ^ω^)「ところで、ショボン土曜は暇かお? 」
(´・ω・`)「仕事」
( ^ω^)「なんだおー。
久々にお家に遊びに行こうと思ったのに」
(´・ω・`)「嫌だよ。ブーンが来ると部屋が散らかるからね」
(;^ω^)「ひどいおwwwwwじゃあ日曜はどうだお? 」
99 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:24:44.35 ID:gqAHm8wf0
(´・ω・`)「嫌だってば。それに日曜は予定があるんだ」
「予定?」ブーンが枝豆をつまみながら聞き返す。
(´・ω・`)「うん。VIPワールドにね」
( ^ω^)「デートかおwwwwwwウラヤマシスwwww」
(´・ω・`)「君にはツンがいるじゃない」
( ^ω^)「そうだおねwwwwフヒヒヒwwww」
呑んでも居ないのに顔は急激に真っ赤になり、
枝豆を食べるスピードも速くなる。分り易い男だ。
本当に、ツンの事が大好きで仕方ないんだな。
ツンの話になると笑っちゃうくらいご機嫌になるから困る。
微笑ましいような、でもドクオの事を考えると複雑だ。
100 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:25:23.80 ID:gqAHm8wf0
そういえばドクオ、何で急に遊園地になんか誘ってきたんだろう。
しかも妹も同伴って。
でも、てっきり引きこもってるもんだと思っていたけど
違うみたいだ。少し安心した。
でもブーンは誘われていない。って事は
やっぱり、完璧にツンの事を忘れて立ち直ったわけじゃないんだろう。
そんな事をボーっと考えていると、2人前の餃子が到着した。
101 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:25:50.20 ID:gqAHm8wf0
(*゚ー゚)「きゃはははははwwwwwwwwww」
人を指差して笑うと、地獄に落ちるってバーチャンが言ってた。
それならバーチャン。今すぐこの憎たらしいクソガキを
どうか地獄に落としてやってください。
(*゚ー゚)「なにそwwwれwwwwwそのww髪型wwww」
しぃが涙目でゲラゲラと笑いながら、俺の頭をわしゃわしゃとかき乱す。
('A`)「やめてくれ……触るな……」
死にたい、本当に本心からそう思う。
(*゚ー゚)「まぁまぁwwwwそんな落ち込むなってwwwww
個性的でいいと思うよwwww私はwwwプッwww」
一方こちらのおっしゃってる事がちっとも本心とは思えないのは
俺が卑屈だからでしょうか?
102 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:26:12.78 ID:gqAHm8wf0
( ><)「あ、い、いらっしゃいです」
近所の、ヘアサロンわかんないです。
クーに謝られ、しぃに爆笑され、髪も心もあと肌もボロボロな俺は
そこに行かざるを得なかった。
( ><)「あ、あの。どういった髪型に……」
戸惑った様子の美容師が、準備をしながら聞く。
('A`)「整えてください」
その一言だけ。俺の望みはそれだけだ。
美容師も大体状況は察したようで、少し考えた後その注文を聞き入れた。
103 名前:留学生(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 02:26:53.80 ID:gqAHm8wf0
数十分後、俺の髪はだいぶ短く、薄くなった。
……正直、似合ってない。
美容師は、「極端に短いとこがだいぶあったので
それに合わせるとどうしてもこの長さにせざるを得なかったんです」
そう言い訳のように言った。
('A`)「あ、でも、前よりはだいぶ良いです……うん」
俺は自分に言い聞かせる。
店を出ると、4月の冷たい風が頭皮に吹き
一度大きくくしゃみをすると、家へ向かって歩き出した。
152 名前:キャプテン(新潟県) : 2007/04/19(木) 00:34:27.76 ID:UI/mhXhB0
X DAY前日の夜。
俺は、そりゃあもうすごい勢いで猛烈に緊張していた。
どうしようどうしようどうしよう怖い怖い怖い
わけのわからない不安に襲われる。
【ジリリリリリリリリ】
(;'A`)「う、うわっ!! 」
落ち着こうぜ俺。ただの携帯の着信音だ。
すべり落ちたイスに座りなおし、ケータイを開く。
153 名前:キャプテン(新潟県) : 2007/04/19(木) 00:34:58.19 ID:UI/mhXhB0
('A`)「も、もしもし」
『もしもし、ドクオ?』
懐かしい。ショボンの、少し高くて柔らかい声だ。
緊張やらなんちゃらで、俺は少し泣きそうになってしまう。
('A`)「うん、何? 」
『何って。明日だろう? 』
('A`)「あっ、あぁ、そうだったね」
さも今思い出しましたよ。みたいな言い方をしてみる。
小さな見栄みたいなもんだ。
『忘れてたの?僕は結構楽しみにしてたのにな』
('∀`)「あ、はは……」
これは人間関係から逃げてた報いかな?
脳から「これを喋れ」って指令が全然伝わってこない。
154 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:35:19.41 ID:UI/mhXhB0
『じゃあ、明日VIP駅前に9時ね。寝坊するなよ? 』
('A`)「把握した」
『それじゃあ、おやすみ』
('A`)「え? 」
『え? 』
('A`)「あ、いや……何も聞かないんだな、と」
『あぁ……うん』
('A`)「……ごめん」
ショボンは何にも聞かないでくれて
なにもかもがそのまんまで
それがたまらなく、申し訳なかった。
155 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:35:40.02 ID:UI/mhXhB0
川 ゚ -゚)「……なに? しぃも行くだと? 」
(*゚ー゚)「うん、そうだよー
お兄ちゃんのお友達と3人でいくのー」
川 ゚ -゚)「聞いてない……友達と行くとしか聞いてないぞ」
騙したな、あのゴキブリめ。
私の大切な可愛い可愛いしぃをお前なんかに任せて
もし万が一の事があったらどうするつもりだ。
(*゚ー゚)「ク、クー……ちゃん?」
川 ゚ -゚)「私も行く! 私も行くぞ……! 」
158 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:36:17.15 ID:UI/mhXhB0
翌朝、遂にX DAYはやってきた。
('A`)「さて、そろそろ行くか」
(*゚ー゚)ノ「はぁーい♪」
川 ゚ -゚)「うむ」
('A`)「……」
朝になって突然、クーが一緒に行くと言い出した。
どういう事かはよくわからないが、1人も2人も変わらないし
情けないけどクーがいてくれれば心強い。
結局、兄妹総出で遊園地に向かう事になった。
159 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:37:59.70 ID:UI/mhXhB0
本日は晴天なり。絶好のお出かけ日和。
さんさんと照りつける太陽が、俺を嘲笑っている気がする。
川 ゚ -゚)「おいドクオ? 顔色悪いぞ」
(*゚ー゚)「アハハー、本当だぁー」
VIP駅までバスで10分。
今日は日曜。晴天って事も手伝ってか、バスの車内は満席で
俺の座る席は無く、俺1人だけ立っている事になった。
('A`)「平気だよ。ちょっと……貧血なだけだ」
嘘。実を言うと、昨日は結局一睡も出来なかった。
160 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:38:20.74 ID:UI/mhXhB0
緊張と不安とで、どうしても眠れなくて
パソコンつけてネットやってオナニーしてVIPやって……
で、結局眠れなかった。
だから俺今日倒れちゃうかもしれないけどその時は
優しく介抱して欲しい。
川 ゚ -゚)「……席変わるか? 」
クーが心配そうに俺を見上げ、立ち上がろうとする。
('A`)「ク、クー……」
でも、そのとき俺は見てしまった、
クーの背後の、悪魔の鋭い視線を。
161 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:38:49.80 ID:UI/mhXhB0
('A`)「い、いいです。平気だ」
川 ゚ -゚)「……そうか? 」
座りたい。そんで思いっきり眠りたい。
もう足もフラフラだし、あ、やべ、意識朦朧としてきた……
(*゚ー゚)「お兄ちゃんがんばれぇ〜」
(#'A`)「……」
川 ゚ -゚)「しぃは優しい子だなぁ……。よしよし」
しぃの頭をなでなでするクー。へへへと笑うしぃ。
あぁダメだ……殺意が……
162 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:39:11.99 ID:UI/mhXhB0
『次はーVIP駅前ー、VIP駅前です。お降りの方はー
いろんな意味で落ちそうになってた時、アナウンスでハッと我に返る。
VIP駅前のバス乗り場から、VIPワールド直行バスが出ている。
だからショボンとはバス乗り場で待ち合わせをした。
とはいえバス乗り場も広いし、これだけ人がいるt
(*゚ー゚)「あっ! 」
しぃがバスを降りるなり全力でどこかに駆け出した。
('A`)川 ゚ -゚)「しぃ!? 」
それを追いかけ、同じ方向に走り出すクー。
164 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:39:52.96 ID:UI/mhXhB0
('A`)「あ、オイ……」
それらを追いかける気力なんかあるわけない俺。
よたよたと、傍のベンチへと倒れこむように座る。
('A`)「……うぇ……」
眠気のおまけに吐き気までする。きっと緊張からくるもんだろう。
一方で冷静な俺が言う。
……クーかショボンかの携帯に連絡しなきゃ。
ポケットから携帯を取り出し、アドレス帳を起動s
('A`)「あ、電池切れた……」
165 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:40:34.33 ID:UI/mhXhB0
ご臨終した携帯様をポケットに埋葬し、ため息を一度つく。
ポカポカの太陽、時折吹く冷たい風が心地よく……
「ちょっと、ドクオ? 」
……クー……?誰かが俺を呼んでいる。
あ、なんかかっこいいな、このセリフ。
「ドクオでしょ? ねぇ? 」
……この声は……
ξ゚听)ξ「……ちょっと、大丈夫? 」
166 名前:キャプテン(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00:41:18.72 ID:UI/mhXhB0
じわり、じわりと視界が晴れてくる。
くるくると綺麗に巻かれた髪、パッチリとした目、白くて綺麗な肌、
甘い匂い。何もかもが懐かしくて、全然変わっていなくて。
相変わらず、すっげー可愛い。
('A`)「……ツン」
ξ゚听)ξ「こんなところでどうしたのよ? 大丈夫なの? 」
俺はなんとか起き上がり、目をゴシゴシとする。
起き上がった事で出来たスペースに、ツンが品良く腰を降ろす。
ξ゚听)ξ「ねぇ、ドクオ? 」
ツンがくいくいと俺の服の袖を引く。
2 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:32:33.98 ID:w53TQg6w0
俺は反射的に、その手を振り払った。
ξ゚听)ξ「ご、ごめん……」
面食らった顔で、慌てて手を離すツン。
そのまま、うつむいて黙り込んでしまった。
('A`)「あ、……ごめん、ちょっと……体調悪くて」
誰に対してかよくわからないフォローを入れる俺。
ξ゚听)ξ「そう……大丈夫なの?
なんだか……随分痩せたんじゃない? 」
('A`)「平気だよ。
……それより、公衆電話ってどの辺にあったっけ?」
ξ゚听)ξ「電話? 携帯は持ってないの? 」
3 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:32:55.11 ID:w53TQg6w0
('A`)「電池切れ」
ξ゚听)ξ「じゃあ私の携帯でよかったら……」
小さな白いカバンを開いて、携帯を探すツン。
ξ゚听)ξ「あ……、家に忘れてきちゃったみたい」
('A`)「……公衆電話探す。じゃあ、」
正直、ツンとはもう一秒も一緒に居たくない。
最近じゃもう夢に登場しなくなってきたんだ。
ふっと思い出すこともあまりなくなってきたし
顔だって、もう忘れかけてた。だから……
フラリと立ち上がった俺の腕を、ツンがグイと引く。
4 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:33:16.46 ID:w53TQg6w0
ξ;゚听)ξ「だってアンタ、フラフラじゃない……
み、道とかで倒れたりして
それで車に轢かれたりしたら……」
('A`)「ねーよ」
ξ゚听)ξ「あっ、確かドクオの携帯、枝湯よね?
私ね、最近この辺りに引っ越したの。それでね……」
(;'A`)「ちょ、っとまて……」
ξ゚听)ξ「どうしてよ? 」
5 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:33:36.65 ID:w53TQg6w0
(;'A`)「知らない男家に入れるとかは……ダメだろ」
ξ゚听)ξ「ドクオは知らない男じゃないわ。友達じゃない」
だとしたら余計ダメなんだよ。
(;'A`)「ブーンに怒られるぞ」
ξ゚听)ξ「どうして? 」
いやどうしてって……
7 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:34:01.38 ID:w53TQg6w0
ξ゚听)ξ「ドクオだったら大丈夫よ。
ブーンだって怒らないわ」
サラリと傷つく事を言ってのけるね。お前は。
ξ゚听)ξ「さっ、いきましょう」
抵抗する俺の手を取り、ぎゅっと握るツン。
ツンの手は細くて、白くて、冷たくて、小さくて
それがあんまり心地よかったから
脳が発した『離せ』って命令を、俺はあっさりシカトしてしまった。
8 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:34:31.43 ID:w53TQg6w0
ξ゚听)ξ「どうぞー。散らかってるからあんま見ないでねー」
ツンの住むマンションは、駅から徒歩10分もかからない距離にあった。
大きくは無いけど新築っぽいし、いいお値段がしそうだ。
さすが、お嬢様ってかんじか。
('A`)「おじゃまします」
部屋に入るなり鼻をふわりと刺激する甘い匂い。
広くはないけど決して狭くも無く、高そうな家具が並ぶお部屋。
ツンはここで生活してるんだ。
そう考えて少し興奮した自分が情けなくて、やるせなくなる。
ξ゚听)ξ「充電器そのあたりに刺さってるから」
('A`)「すまんね」
9 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:35:02.15 ID:w53TQg6w0
ご臨終した携帯が、赤いランプを灯し息を吹きかえらせる。
携帯の画面に表示される時刻はもう昼。
俺どんだけ駅前で寝てたんだよ……
……さて、可愛い妹達はどうしてるだろう?
ショボンとは合流してるんだろうか。
数回の呼び出し音の後、俺の耳には聞きなれたクーの声と
騒がしい音が飛び込んできた。
('A`)「もしもし」
『もしもし、ドクオか? 今どこだ? 』
('A`)「そらこっちのセリフだよ。今どこだよ? 」
10 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:35:26.57 ID:w53TQg6w0
『今か? 今はVIPワールドだぞ』
……はい?
『いやね、しぃが急に走り出しちゃっただろ?
それで追いかけた先に2人がいてだね』
……
『そこに丁度VIPワールド行きのバスが来たもんだから
ま、いいか。乗っちゃおって事で……』
('A`)「……俺の事は忘れてた・と」
『そういう事になるな』
11 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:35:57.85 ID:w53TQg6w0
いやいや……ちょっとまてよ……
少しはさ、探してくれてもいいんじゃないか?
それとも何か?俺ってそんな存在薄いか?
いてもいなくてもいい的なポジションなのか?
('A`)「……そいじゃ俺、帰ります。おじゃましました」
ξ;゚听)ξ「え?」
体調が悪いのも単なる寝不足と緊張で、今は普通。
電話も済んだ。俺がもうここにいる意味は無い。
ξ゚听)ξ「ちょっと待ちなさいよドクオ」
('A`)「それじゃ、ブーンと仲良くな」
ツンの静止も聞かず心にも無い事を言って、部屋を出ようとする俺。
ξ゚听)ξ「……」
靴を履こうと玄関で屈んだとき、頭に激痛が走る。
ξ#゚听)ξ「待てって言ってるでしょっ! 」
12 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:36:18.52 ID:w53TQg6w0
ツンが俺の後頭部に思いっきりビンタを食らわせたのだ。
(;'A`)「い、いてて……なにすr
ξ#゚听)ξ「いつもそうやって逃げ出すんだから!!
残された方の気持ち、考えたことあるの!? 」
(;'A`)「ツ、ツン? ちょっと落ち着k
ξ#゚听)ξ「気に食わないことがあるなら直接いってよね!」
(;'A`)「気に食わないとかじゃn
ξ#゚听)ξ「じゃあなんなの!?どうして……――」
13 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:36:50.32 ID:w53TQg6w0
ツンは怒っている。
それは、今俺が帰ろうとしていることもある。
でも一番は、俺が急にみんなの前から消えたことだ。
('A`)「……ごめん」
ξ゚听)ξ「……謝ってほしいんじゃないわよ。
理由を聞いてるの」
急に冷静になったツンは涙目で、返す言葉に詰まる。
('A`)「……」
14 名前:運送業(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 02:37:12.27 ID:w53TQg6w0
ξ゚听)ξ「ねぇ、なんとか言いなさいよ……
ずっと、心配してたんだから……私も、ブーンも」
('∀`)「ふっ……はは……」
私も、ブーンもか。
なんか急にバカバカしくなってきた。
ξ゚听)ξ「……な、なにが可笑しいのよ」
('∀`)「そんなに知りたい?……じゃあ教えてやるよ」
このモヤモヤは怒りなのか、悲しみなのか、嫉妬だろうか
俺は泣きたいのか、それとも怒鳴り散らしたいのか。
自分でも良くわからなくなっていた。
46 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:22:59.20 ID:zvK8LLz60
(´・ω・`)「それで、ドクオはここには来ないの? 」
川 ゚ -゚)「ひとりでバス乗って合流したらって言ったんですけど
マンドクセから家帰るって」
(´・ω・`)「そう。ドクオらしいや」
日曜のVIPワールドはやっぱり大混雑で
家族連れやらカップルやらで溢れ帰っていた。
人気のアトラクションはどれも何時間待ちの大行列。
仕方ないので人気の無い安全なアトラクションを選び時間を潰し
園内のファーストフードで昼ごはんを食べていた。
(*゚ー゚)「しぃが勝手にはしったからだよね……
おにいちゃんにごめんなさいしないとだよね……」
(´・ω・`)「いや、ドクオは人ごみが苦手だからね。
こんな所に来たら失神しちゃうかもしれない」
川 ゚ -゚)「確かに」
47 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:23:24.35 ID:zvK8LLz60
ドクオは今頃家に帰っている頃だろうか?
久しぶりに友人に会うのを楽しみにしていただろうに
……やっぱり置いていったのは可哀想だったかな。
(*゚ー゚)「ねぇねぇ、シェイクもたべたいなー 」
川 ゚ -゚)「ふふっ……いいよ」
(*゚ー゚)「わーい! クーちゃん大好きー! 」
川 ゚ -゚)「今注文してくるからちょっと待ってな」
クーはひとり席を立ち、サイフを手にレジへ。
レジは行列が出来ていて、注文するだけだがだいぶ時間がかかりそうだ。
(*゚ー゚)「まだかなまだかなー」
足をパタパタさせて、クーの到着を待つしぃ。
48 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:23:46.01 ID:zvK8LLz60
(´・ω・`)「ねぇ、しぃちゃん。
ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
(*゚ー゚)「えっ? うん、なぁに? 」
しぃがはた、と足を止めショボンの方をじっと見つめる。
(´・ω・`)「お兄ちゃんさ、何のお仕事してる? 」
(*゚ー゚)「おしごと? ずっとお家にいるよ? 」
……やっぱり。
49 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:24:09.36 ID:zvK8LLz60
(*゚ー゚)「ショボンさんもずっとお家にいるの? 」
(´・ω・`)「僕は……仕事してるかな 」
(*゚ー゚)「そうなんだー。えらいんだねー」
この子の中では、仕事してる=えらいらしい。将来が心配だ。
(*゚ー゚)「じゃあさ、彼女とかはいるのー? 」
(´・ω・`)「彼女? 」
(*゚ー゚)「お付き合いしてるひと! 」
(´・ω・`)「いないね」
(*゚ー゚)「じゃあさ、どんな女の子がタイプなのー? 」
50 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:24:30.02 ID:zvK8LLz60
(´・ω・`)「女の子……あんまり興味がなくって」
(*゚ー゚)「えっー!じゃあ男の人が好きなの!? 」
しぃが放った大声に、周りの席の客が一斉にこちらを見る。
(´・ω・`)「はははwwそういうんじゃないんだけどww」
ショボンはケラケラと笑っている。だがしぃの顔は真剣だ。
(*゚ー゚)「どうしてー? ショボンさんかっこいいのにー! 」
(´・ω・`)「だからそういうんじゃないってばwww」
川 ゚ -゚)「なんの話だ? 随分楽しそうだな」
51 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:24:50.60 ID:zvK8LLz60
(*゚ー゚)「あのねクーちゃん、ショボンさんっt
しぃが何かを言いかけたとき、クーの携帯が音をたてた。
川 ゚ -゚)「電話だ。ちょっとすまん」
――父さんから電話なんて珍しいな。
私は席を立つと、少し離れたところで通話を始めた。
川 ゚ -゚)「もしもし」
『もしもし、クーか? 今どこにいる? 』
川 ゚ -゚)「今はVIPワールドだ。どうかしたのか? 」
『ドクオもしぃも一緒か? 』
川 ゚ -゚)「しぃは一緒だがドクオは違う」
52 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:25:21.43 ID:zvK8LLz60
『そうか……じゃあ、今日は早めに帰ってきてくれ』
川 ゚ -゚)「……?わかった」
何か様子が変だった。暗くて、今にも泣きそうな。
何かあったんだろうか?
まさか、事故、とか……
どうしようもない不安が、体中を支配してゆく。
川 ゚ -゚)「あの、すいません。私たち急用が出来て」
(*゚ー゚)「え? 」
(´・ω・`)「……何かあったの? 」
川 ゚ -゚)「わかんないんですけど、急に父さんから電話で……
心配なので……」
(*゚ー゚)「おとうさんどうかしたの? 」
(´・ω・`)「……それじゃあ今日はもう帰ろうか」
川 ゚ -゚)「……すいません」
53 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:25:42.24 ID:zvK8LLz60
( ´_ゝ`)「……ドクオはもう大人だから
一人でやっていけるだろう」
J('ー`)し「でもドクオは引きこもりだし……やっていけるかしら」
( ´_ゝ`)「やっていってもらうしかない。アルバイトでもなんでも」
J('ー`)し「……そうよね」
家に帰ると、父さんと母さんが喋っている声が聞えてきた。
ドクオはまだ帰ってないのか、靴が無い。
……ともあれ、二人とも無事みたいで、ホッとした。
J('ー`)し「じゃあしぃとクーは……? 」
( ´_ゝ`)「……クーには転校してもらって……」
何の話をしてるんだ?よく聞き取れない。
54 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:26:03.78 ID:zvK8LLz60
川 ゚ -゚)「ただいま」
2人がいるリビングに、そっと顔を出す。
(*゚ー゚)「おとうさんとお母さんお仕事はー? 」
J('ー`)し「あっ、あら、おかえりなさい。早かったのね」
( ´_ゝ`)「今日はお休みだったんだよ。日曜じゃないか」
慌てた様子で、笑顔を作る母さんと父さん。
川 ゚ -゚)「でも朝はいなかったよな」
J('ー`)し「ちょっとお出かけしてたの。ねぇお父さん? 」
55 名前:下着ドロ(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 16:26:27.86 ID:zvK8LLz60
( ´_ゝ`)「あぁ。その通りだ」
怪しい。どこにお出かけしてたんだよ。
J('ー`)し「しぃ、ちょっといらっしゃい。
お母さんと公園に行きましょうね」
母さんが、しぃの手を引いて部屋を出て行く。
川 ゚ -゚)「しぃが居ては都合の悪い話があるのか? 」
私は父さんの前の席に座り、まっすぐ目を見つめた。
( ´_ゝ`)「あぁ……」
父さんはその目を逸らし、タバコに火をつけ
言いづらそうにポツリと呟いた。
( ´_ゝ`)「父さんの会社、倒産した」
2 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:39:21.56 ID:OH0nYECx0
このモヤモヤはどうしたら晴れる?
わからない。でも……。ごめん、ツン。俺、抑えられそうに無い。
ξ゚听)ξ「っ!? 」
ツンの細い手を掴み、無理やりに腕の中へ引き入れる。
ξ///)ξ「ちょっとドクオ!! ふざけないで! 」
必死に抵抗してるみたいだけど、その力は強くない。
俺の力も強くないけど、ツンよりは上回っているので
腕の中に引き止めておくことが出来ている。
('A`)「ふざけてない」
ξ゚听)ξ「じゃあ何でっ……」
ツンの抵抗が弱まった。そのままの姿勢で、床に押し倒す。
あー、俺このままツンを犯しちゃうんだろうか。
こんなことなら朝風呂入ってくりゃよかった。
3 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:40:39.43 ID:OH0nYECx0
ξ゚听)ξ「やだ……やめ……お願い……」
可愛い。可愛すぎるだろ。涙目萌え〜ってか。
今迄レイプもんとかって敬遠してたけど結構いいもんだな。
('A`)「家に入れたってことはそういう事なんだろ? 」
あ、コレどっかで聞いたことあるな。一回言ってみたかったんだよな。
ξ゚听)ξ「ちが……違う……信じてたのに……バカ……」
ツンの目からボロボロと涙がこぼれる。ズキ、と良心が痛む。
でも、今更止められない。
真っ白のシャツを、一つ一つ外していく。
白くて透けそうな肌が、甘い匂いが、息遣いが
理性と良心をブチ壊す。
ξ゚听)ξ「ブーン、ブーン……やだ……ブーン……」
顔に手を当てて、泣きながらブーンの名前を呼ぶツン。
4 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:41:06.49 ID:OH0nYECx0
( ^ω^)「ドクオー!! 一緒に昼飯食うおー! 」
('A`)「おー、行くか」
俺とブーンは、小中高と同じ学校だった。
性格も、学力も、趣味も、何もかもが違ったけれど
何故かずっと友達だった。
中学の時俺がDQNに「キモイ」とか言って苛められた時も
しばらく不登校になってた時も、当たり前にずっと友達だった。
大学も同じとこに入って、ショボンも友達になって
それからは3人でつるむようになって
(´・ω・`)「じゃあさ、今日は学食で食べようか
僕さ、バイトの子にタダ券貰っちゃったんだ」
( ^ω^)「GJwwwwwさすがショボンだおwwww」
5 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:41:45.36 ID:OH0nYECx0
('A`)「じゃあ俺サバみそー」
( ^ω^)「じゃあ僕みそラーメーン」
(´・ω・`)「じゃあ僕はピラフにしよっと」
校内でも遊ぶときも飲むときも、ずっと3人一緒。
俺はこの2人しか友達が居ないからアレだけど
ショボンとブーンはどうしてずっと俺らと一緒にいるんだ?
そう聞いたことがあった。
ブーンは、「楽しいからだお」と答えて
ショボンは、「友達がいないから」と答えた。
6 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:42:13.04 ID:OH0nYECx0
もうさ、俺らずーっとこんなかんじで男3人仲良しってのも
悪くねーかな、とか思ってた矢先
ξ゚听)ξ「ドクオ!? アンタドクオでしょ!? 」
('A`)「……は?」
学食で、特Aランチ(一番高いやつ)を手に俺達の前に現れた
くるくるカールのお嬢様。
( ^ω^)「ドドドクオ、こんな可愛い友達がいたのかお!? 」
('A`)「……知らねーよ」
(´・ω・`)「君もなかなかスミに置けないねぇ 」
('A`)「知らんってば」
7 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:42:36.52 ID:OH0nYECx0
ξ゚听)ξ「私よ! 津出! 小さい頃よく遊んだじゃない! 」
彼女曰く、俺とは同じ幼稚園だったらしい。
ツンちゃんドッくんと呼び合う程の中だっらしく
覚えてない、というとガックリとうなだれた。
だって覚えてるわけ無いだろう。常識的に考えて。
( ^ω^)「まぁまぁ、そんな落ち込まないでwww
僕らとご飯食べようおwww」
ξ#゚听)ξ「ピザは黙ってて! 私食事は一人で摂るの! 」
( ^ω^)「あうあう……でもみんなで食べたほうが楽しいお? 」
ξ*゚听)ξ「う、うるさいわね! 余計なお世話よ!
でも、どうしてもっていうなら……」
(´・ω・`)「どうぞ」
すっとイスを引いて、ニッコリと笑うショボン。
ただニコニコしているブーン。サバみそを食ってる俺。
8 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:43:10.14 ID:OH0nYECx0
大学ってのは意外にヒマなもんで
サークルにも入ってない、彼女いない、友達少ないって俺は
キャンパスライフって奴を湯水のように垂れ流していた。
学校か3人で遊ぶ時以外はずっと家にいるもんだから
家族(主にクー)に異常に心配されだして。
(´・ω・`)「じゃあさ、バイトでもしたら」
('A`)「バイトなぁ……」
( ^ω^)「おっおっ、ドクオにバイトなんか出来んのかお」
(#'A`)「……」
ブーンのその一言に奮い立った俺は
とりあえずバイトをしてみる事に決めた。
肉体労働はイヤだし、つーか力ないし、体力ないし
あと接客もイヤだってことで、始めたのがピザの宅配だった。
9 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:43:31.43 ID:OH0nYECx0
(`・ω・´)「うん、じゃあ明日から来てくれる? 」
求人広告見て、履歴書送って、電話かかってきて
一言二言喋って即採用。どんだけ人手足りてねーんだよってな。
実際人手は足りてなかったらしく、俺は初日から
即戦力として借り出される事になった。
('A`)「西村ピザでーす」
( ^^ω)「ごくろうさまだホマ」
('A`)「西村ピザでーす」
从 ゚∀从「おせーよ殺すぞwwwwヒャハハハwww」
('A`)「西村ピザでーす」
(-_-)「……」
10 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:43:53.13 ID:OH0nYECx0
ホント、色んな人がいるな。
ねぎらいの言葉をいかけてくれる人、イチャモンを付けてくる人
酔っ払い、DQN(なんか漏れそうになった)、寝起き。
('A`)「西村ピザでーす」
ξ゚听)ξ「はーい」
……あと、ツンデレ。
ξ゚听)ξ「あら、ドクオじゃない」
('A`)「ベーコンピザSサイズ一枚でよろしかったでしょうか。
980円になります」
ξ゚听)ξ「ねぇアンタ、ピザ屋でバイトしてたの? 」
('A`)「丁度お預かりします。サイン頂けますか」
11 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:44:18.54 ID:OH0nYECx0
ξ゚听)ξ「ちょっと? 」
('A`)「ありあとしたー。またどーぞ」
ξ゚听)ξ「こらっ、ちょっと待ちなさいよっ!」
('A`)「あのさ、俺勤務中だから。手離してくれ」
ξ゚听)ξ「ヤだ。ちょっと話して行きなさいよ」
この時、ツンは相当なホームシックだったらしく
大学でも友達が出来なくて、寂しい思いをしていたらしい。
('A`)「わかった。わかったから離して」
ξ゚听)ξ「ヤだっていってるでしょ」
12 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:44:39.08 ID:OH0nYECx0
この時、無理にでも帰っておけば良かった。
その後2時間生い立ちやら、こないだ見た映画の話まで
どーでもいいような話を聞かされ、挙句。
ξ゚听)ξ「……ってか、ドクオバイト中でしょ?
いつまでここにいる気? 」
……ねーよ。なんなんだよ、この女。
で、危うくクビになりかけたけど
土下座して、いろいろ褒めちぎって、病気の妹がいるとまで言って
なんとかそれは免れた。
13 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:45:22.69 ID:OH0nYECx0
( ^ω^)「2時間!? それはひどいwwww」
('A`)「だろ? お陰で酷い目にあったぜ……」
(´・ω・`)「へー。君って意外とお喋りなんだね」
ξ///)ξ「そっ、そんな事無いわよっ」
( ^ω^)「僕もツンといっぱいお喋りしたいおwwww」
ξ*゚听)ξ「ちょっ、何呼び捨てにしてんのよピザッ」
(;^ω^)「いいかげんピザはやめてお。
ブーンって呼んでくれおー」
ξ///)ξ「へ、変な名前ねっ! でもっ、どうしてもっていうならっ」
(´・ω・`)「あははー、ツンデレだー」
('A`)「あのさ
何、馴染んでんの? 」
(´・ω・`)( ^ω^)ξ゚听)ξ「へ? 」
14 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:45:59.82 ID:OH0nYECx0
この頃からツンも含めた4人で過ごすことが多くなってきていた。
最初こそ反発や違和感もあったけど(俺だけだが)
それもなくなってきて、いつからか4人でいる事が当たり前になってた。
ξ゚听)ξ「それスゴイじゃない」
(´・ω・`)「うんスゴイね。VIP高って言ったら名門じゃないか」
( ^ω^)「あのアホでオナニーくらいしか趣味が無い
ドクオにそんな妹がいるとはびっくりだおwwww」
('A`)「……何も言い返せない……」
俺が2年になった年の春。妹がVIP高校に合格した。
地元では結構有名な進学校で、倍率もかなり高い。
だからこそ俺は鼻高々で、すれ違う人すれ違う人に自慢して回ってた。
ξ゚听)ξ「それで、合格祝いは何あげるかは決めたの? 」
15 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:46:30.75 ID:OH0nYECx0
合格祝い?そんなもん全然考えてなかった。
('A`)「あー……そうだな、やってもいいかな」
ξ゚听)ξ「じゃあうちのお店に来なさいよ」
( ^ω^)「うちのおみせ? 」
ξ゚听)ξ「うん。Loungeっていうんだけど」
(´・ω・`)('A`)「ナ、ナンダッテー」
( ^ω^)「? 」
Loungeといえば、ブランドとかお洒落とか
そういうのに疎い俺でも知ってる超有名ブランド。
そこの日本支社の代表取締役が、ツンのパパだ、という。
なるほど道理で。
毎日特Aランチで髪はクルクルで喋り方も今の子っぽくないはずだ。
16 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:46:56.25 ID:OH0nYECx0
('A`)「でも俺金ねぇしな……」
ξ゚听)ξ「アラ、まけるわよ? 」
いや「まけるわよ」って。野菜か魚じゃあるまいし。
VIP駅南口にある、白と黒を基調としたオシャレなビル。
品の良い照明に照れされた「Lounge」の白いロゴ。
客層は10代後半から20代前半の女の子ばかりで
ツンは馴染んでいるけど、どうみても俺は浮いている。
ξ゚听)ξ「あっ、このマフラー可愛いわよ。どうかしら? 」
ツンが白いマフラーを差し出す。
('A`)「妹さ、マフラーとか苦手なんだよな。
首がかゆくなるらしくて」
17 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:47:18.67 ID:OH0nYECx0
ξ゚听)ξ「だとしたらお財布とか、アクセとか……」
('A`)「サイフは愛用してる奴があるし
アクセサリーはマフラーと同じ理由で付けてない」
ξ゚听)ξ「そう、難しいわね」
そんな事より高すぎる、値段が。
……ちょっと混乱の余り倒置法になってしまった。
さっきツンが見せてきたマフラーだって、0の数が半端じゃなかった。
まけてくれるって言ったって、たかが知れてる。
('A`)「……そうだ、VISCOへ行こう」
ξ゚听)ξ「え? 」
18 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:49:12.65 ID:OH0nYECx0
逃げるようにLoungeから出て、表通りへ。
ξ゚听)ξ「ちょっとドクオ、どこ行くのよ」
('A`)「VISCOだよ。デパート。知らない? 」
ξ゚听)ξ「……知らないわ」
VISCOを知らないとは。まさに住む世界が違うってか。
ξ゚听)ξ「わー、広い。いろんなお店があるのねー」
('A`)「……マジで来た事無いの?
彼氏とか、友達とかと」
19 名前:栄養士(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 02:49:33.09 ID:OH0nYECx0
いや、彼氏とデパートはないか。
ξ゚听)ξ「カッ、カレシなんかいないわよっ!
……友達だって……いないし……いたことないし……」
('A`)「そうか……」
「今は俺らが友達だろ?」
……なんて言えたらカッコいいんだろうな。
ξ゚听)ξ「……あ、あのクツかわいー」
('A`)「あ、おい。待てって」
……言えるワケねぇよ。
2 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:55:53.55 ID:m011UWCk0
ξ゚听)ξ「ねぇちょっと見てよドクオ!
このパンプス1万円切ってるわよ! 信じられる? 」
('A`)「よくわかんねーけど、そんな安いか?
俺が今履いてる奴だって5千円しなかったぜ? 」
ξ゚听)ξ「え……それ大丈夫? 歩いてる途中で破けたりしない? 」
('A`)「ケンカ売ってる? 」
ツンはVISCOを存分に楽しんでいるようで
にこにこしながら、あっちへ行ったりこっちへいったりしている。
時々庶民をバカにするような発言をしたりするが
それは悪意があるものではなく本人はいたって真剣。
だからこちらもそれに腹を立てるわけにもいかず
握りこぶしをポケットの中に収め、ツンの言葉を受け流していた。
3 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:56:47.19 ID:m011UWCk0
('A`)「なぁツン、このカーディガンどうかな」
ξ゚听)ξ「ちょっ、ダサs
……い、いいんじゃない? 」
(;'A`)「……やっぱださいかな、これ」
ξ;゚听)ξ「いいじゃない! プレゼントは気持ちよ?
それに着なくても雑巾とかにリメイクすれば使えるし……」
('A`)「雑巾……そんな酷いか……」
俺はファッションセンスに関しては定評がある。
もちろん、マイナスな意味でだ。
自覚は無いし、自分ではまともだと思っている。
だがしかし、今までに「これはひどい」と何回言われたか
分らないからこれはもう認めざるを得ない。
ショボンに言われるならともかく、ブーンにまで言われるんだから
相当酷いんだと思う。
4 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:57:08.63 ID:m011UWCk0
('A`)「ま、でもマンドクセしこれでいいや」
ξ゚听)ξ「そう……」
('A`)「え、何その顔? 」
ξ゚听)ξ「えっ、いや、なんでもないわよ」
お値段は少々高めだったけど、クーにプレゼントなんかしたことないし
これからもしないと思うから、少し奮発してやろう。
ξ゚听)ξ「喜んでくれると良いわね。妹さん」
('∀`)「あ、あぁ……」
5 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:57:43.88 ID:m011UWCk0
ツンとVISCOで過ごした一日は、そりゃー楽しかった。
勿論態度には出さないけど、一緒にいるだけでワクワクしてきて
ブーンやショボンと居る時とは違う心地よさみたいなものを感じていた。
(´・ω・`)「それツンに恋してるね。完全に」
ショボンの唐突な一言に、口に含んだテキーラを盛大に吹いた。
(*'A`)「バカかwwwwねーよwwwww」
(´・ω・`)「っていうか、薄々気づいてはいたんだよ。
なんかツンといる時ソワソワしてるし」
(*'A`)「そ、そわそわ? 」
(´・ω・`)「ツンの事話すときやたら嬉しそうだし」
(*'A`)「……」
6 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:58:06.86 ID:m011UWCk0
こんな簡単に好きになっていいのか?
っていうか、俺なんかが人好きになっていいのか?
訴えられたりしないか?逮捕されたりしないか?
ツンは、迷惑に思わないだろうか?
('A`)「……はぁ……」
……もし、俺がイケメンだったら
どんなネガディブな妄想を広げても、結局はそこに通じる。
そんな自分が大嫌いだ。
7 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:58:27.55 ID:m011UWCk0
ξ゚听)ξ「……はぁ……」
( ^ω^)「お? ツンどうしたお? タメ息なんかついて」
(´・ω・`)「何かあった? 」
今日も相変わらず、俺ら4人は学食で仲良く昼飯を食べていた。
ただ一つ違うのは、ツンが元気が無いと言うこと。
ξ゚听)ξ「……なんでもない」
いくら聞いても、何も答えない。
俺は興味ないフリしてたけど内心は気になって気になって。
('A`)「……話したら楽になるかもよ」
ξ゚听)ξ「いい。みんなには関係ないの」
8 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:58:48.28 ID:m011UWCk0
(;^ω^)「ちょwww関係なくないおwww
僕たちは友達だお?」
ξ*゚听)ξ「ブ、ブーン……」
('A`)「……」
友達だろ?
俺が言えなかった言葉を、いとも簡単に言ってのけたブーンが
すごく大きく、輝いて見えた。
ξ*゚听)ξ「……うん、ごめんね。みんな。
実はね、進路の事で悩んでて……」
9 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01:59:15.65 ID:m011UWCk0
それから数日も立たないうちに、ツンとブーンが付き合いだした。
ブーンとツンからほぼ同時に報告メールが来て
頭の中真っ白。っていうより、砂嵐。もう何も考えられない。
とりあえずおめでとう とだけ書いて返信した。
( ^ω^)「ありがとうだおwwwwドクオのおかげだおwwww」
ξ*゚听)ξ「確かにそうね。私がドクオと幼馴染じゃなかったら
こんなことにはならなかっただろうし」
俺のおかげ、か。
じゃあ俺とブーンが友達じゃなかったら?
ブーンがいなかったら?
……何考えてんだよ、俺。最低だ。
こんな俺を、ツンが好きになってくれるわけないわな。
10 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02:00:00.15 ID:m011UWCk0
('A`)(あー、欝ダ……
オナニーでもして寝るか……)
こないだ借りた盗撮モンのエロDVDをデッキに入れた。
ブラウン管の中で、男と女が動物みたいにギシギシアンアン悶えている。
今頃、ツンとブーンもこんな風にしてんのか。
俺は一人で自分を慰めてるときに、ツンとブーンは愛し合ってるのか。
ツンは俺のことなんか好きなわけなくて
俺のこの気持ちは迷惑なだけで、報われることは無くて。
明日も学校で会って、その時は普通に接しなきゃいけないんだ。
忘れなきゃいけない。忘れる。忘れろ。忘れられるさ。
カンタンだ。自分にこう言い聞かせりゃいい。
('A`)「ツンは、お前のことなんか好きじゃない
そして、ブーンは大切な友達だ」
11 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02:00:21.73 ID:m011UWCk0
そう、ツンは俺の事なんか好きじゃない。
ブーンだけを愛していて、ブーンだけを見てる。
……だったら俺、何してんだ?
ξ゚听)ξ「……ド、クオ?……」
('A`)「……ごめ……何やってんだ俺……」
頭に昇ってた血が、サーっと引いていくのが分る。
何て事してるんだ俺。最低だ。最低だ。最低だ。
俺はツンの部屋を飛び出した。
ツンが小さな声で呼び止める。
でも、振り返ることなんかできるわけない。
12 名前:ゲーデル(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02:00:42.80 ID:m011UWCk0
('A`)「はぁっ……はぁ……はぁ……はは……は……」
ただ走った。何で走っているかは、自分でも分らない。
全力疾走なんて何年ぶりだよ。足いてーし横腹も痛い。
おかげで、目からも汗が出てきやがる。
拭っても拭っても、汗は止まらない。
ダメだな。俺、逃げてばっかだ。
2 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:46:48.46 ID:Jyj197d/0(17)
( ´_ゝ`)「……あれ?」
川 ゚ -゚)「……」
( ´_ゝ`)「クー?」
川 ゚ -゚)「……」
( ´_ゝ`)「すいませんでした。もうしません」
川 ゚ -゚)「……分ればいい。詳しく聞かせろ」
(;´_ゝ`)「あ、うん……実はな……」
父さんの勤めていた、通信機器メーカーVIPは
社員数100人にも満たない、いわゆる中小企業。
ここ数年は、そこそこ上手く行っていて安定した状態にあった。
だが、それに調子をこいた幹部たちがSNSに手を出し大失敗。
多額の負債と社員を抱えたまま、倒産となった。
3 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:48:13.95 ID:Jyj197d/0(17)
( ´_ゝ`)「と、いうわけで……」
川 ゚ -゚)「……で、これからどうするんだよ」
母さんだって働いてはいるけど稼ぎは少ない。
どう考えても家族5人を養っていけるとは思えない。
私の学費だって居るし、これからしぃだって小学校に入学するってのに。
( ´_ゝ`)「まぁまぁ、父さんだって何も考えてないわけじゃない」
川 ゚ -゚)「疑わしいな」
( ´_ゝ`)「父さんの実家には行ったことあるよな? 」
川 ゚ -゚)「サイタマの? 」
( ´_ゝ`)「うん。そこに皆で引っ越そうと思ってる」
4 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:48:57.38 ID:Jyj197d/0(17)
サイタマの実家は、ボロいけど大きかった。
今は祖母と祖父と叔父さん(父さんの弟)だけなので
4人くらい増えても構わない、だそうだ。
そこで、弟さんの会社を手伝わせてもらうらしい。
……って事は、私は転校する事になるのか。
あぁ、折角VIP高校に入学できたってのに。
( ´_ゝ`)「だから、クーには転校してもらう。すまないね」
川 ゚ -゚)「……仕方ないさ」
「随分クールだな」そう言って父さんは少し笑った。
('A`)「どういう事だよ、それ」
5 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:49:23.91 ID:Jyj197d/0(17)
川 ゚ -゚)「お、ドクオおかえr
突然後ろから聞えた不機嫌な声。
ドクオが今帰宅したらしく、ドアの前に立ちすくんでいる。
( ´_ゝ`)「もっかい説明すんのマンドクセ
どこから聞いてたか産業で」
('A`)「サイタマ
みんなで
引越し」
( ´_ゝ`)「あぁそう」
6 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:49:45.61 ID:Jyj197d/0(17)
(;'A`)「よ、よくわかんねーけど
俺はイヤだからな!
だ、第一クーだってVIP高校g
川 ゚ -゚)「私のことは気にしなくていい」
( ´_ゝ`)「良いってさ」
('A`)「……な、なんだよ……お、俺はここにいるぞ……」
( ´_ゝ`)「ここ社宅だから無理だね」
(;'A`)「……」
( ´_ゝ`)「あとさ、お前は連れて行くつもりないから」
父さんがポツリと言った一言にリビングはシーンと静まり返る。
7 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:50:07.77 ID:Jyj197d/0(17)
川 ゚ -゚)「どういう事だ」
( ´_ゝ`)「だってそんな余裕ないし。
それにサイタマの田舎ってさ、結構世間体厳しいのよ」
(;'A`)「……だ、だからって……俺だけ置いていくのかよ……」
( ´_ゝ`)「自分が〔イヤだからな〕って言ったじゃん」
川 ゚ -゚)「……ふむ。言った」
(;'A`)「……クーおま……」
8 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:50:35.99 ID:Jyj197d/0(17)
確かに俺はニートだし、一日中家にいるのに
家の手伝いもしない、ゴミクズ以下の存在、まさに害虫だけど。
……いかん、自分で言って欝ってきた。
でもだからって……俺だけ置いていくなんて酷すぎやしないか?
( ´_ゝ`)「酷くは無いだろ……常識的に考えて……
だってドクオお前もういい年だぜ? 」
('A`)「……っ……」
( ´_ゝ`)「それにそうやって普通に外出れてるし
働けない体とは言わせないよ」
('A`)「……」
何も言い返せません。
9 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:51:04.09 ID:Jyj197d/0(17)
というわけで、俺、働かなきゃいけなくなりました。
今は、失恋とかレイプ未遂とか
……そんな事を考えている場合じゃないのです。
何しろ、生死の危機なのです。
はい、死のう死のうって言ってるけど、実際死にたくなんかありません。
ゴキブリの様にしぶとく生きる事に執着しております。
まずは、アルバイトを探さなきゃいけません。あと住むところも。
どう考えても、一人じゃ無理です。のたれ死ぬのがオチです。
でも父さんはあてになりません。彼は鬼です。俺を捨てる気です。
クーもダメ。あれは鬼の子です。
だとしたら、頼れるのは一人。
『やぁ、ドクオか』
('A`)「ショボン……」
10 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:51:29.48 ID:Jyj197d/0(17)
('A`)「今日はごめんな。急に……その、合流できなくて。
妹たちの相手までさせて」
『いいよいいよ。僕も楽しかったし』
あぁ、いい奴だショボン。俺、今ならお前の連帯保証人になっていい。
('A`)「でさ、相談があるんだよ」
『何? 』
('A`)「なんかいいバイト知らね? 」
『バイト? 唐突だね』
('A`)「楽で、儲かって、尚且つモテるかんじの」
『んなもんないよ』
12 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:51:52.56 ID:Jyj197d/0(17)
('A`)「ですよねー。
あ、あと住むトコも探してるんだが」
『どうしたの? ついにスポンサーに見放された? 』
('A`)「うん、そんなとこ。
俺置いてサイタマに引っ越すんだとさ」
『わー、寂しくなるね』
('A`)「ま、家族とかウゼーと思ってたし? 」
どう見ても強がりです。実際家族大好きです。
13 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:52:13.84 ID:Jyj197d/0(17)
しぃだって、裏は悪魔の様だけど可愛い妹です。
トーチャンもカーチャンも、こんなに立派に、……立派ではないけど
育ててくれました。感謝してます。
クーだって……
……クー、せっかくVIP高校に入学できたのに
転校する事になるんだな。
あんな風にクールに振舞っていたけど、実際は悔しいんだろう。
あの子はそういう子だ。
血の繋がりはないけど、何年も兄ちゃんやってきたんだ。
14 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:52:38.47 ID:Jyj197d/0(17)
最近の気象は異常。要は異常気象。
この日もとても暖かくて、中には半袖Tシャツを着てる人までいる。
俺はというと、結構な厚着。結構浮いてるが、気にしない。
(´・ω・`)「やぁ、久し振りだね。ドクオ」
そんな俺に近づいてくる、爽やか美青年。
あぁ、若さが眩しいよ。同じ年とは思えないね。
('A`)「ひ、久し振り」
(´・ω・`)「ん、少し痩せた? 」
「ツンにも言われた」そう言い掛けて止める。
名前を呼びたくない。口に出すのが怖かった。
適当に「そんなことないよ」とだけ言っておく。
15 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:53:03.60 ID:Jyj197d/0(17)
今日は、ショボンとマンション(アパート?)の契約に来た。
バイトまで紹介してもらったし、まるで保護者みたいだ。
しばらくショボンには足向けて寝れないな。
契約も面接も終わり、俺は一息つく。
これでなんとか生きていけそうだ……。
時計を見ると、もう昼過ぎだ。道理で腹が減った。
俺とショボンは、そこにあったパスタが上手いと評判の店に入った。
('A`)「ふー……。なんかごめんな、ショボン」
(´・ω・`)「ううん、いいよ。
なんか困ったことあったらいつでも連絡してきてよ」
ショボンの優しさに感動しつつ、いかすみパスタを頬張る。
俺の大好物だ。
16 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:53:53.31 ID:Jyj197d/0(17)
(´・ω・`)「ところでさ、最近ツンと会った? 」
(;'A`)「え!? あってないよ!? 」
身体がビクンッってなったから、フォークを皿の上に落としてしまった。
カチャン、という音が静かな店内に響く。
(´・ω・`)「そう……」
(;'A`)「……ど、どうかしたの? 」
(´・ω・`)「なんでもないよ。気にしないで」
何で急にツンの話なんだ?何で会ったとか聞くんだ?
何がなんでもないんだ?
17 名前:ご意見番(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:54:38.31 ID:Jyj197d/0(17)
頭の中で質問がこんがらがって、まとめるのに時間がかかる。
('A`)「……なんかあったのか? 」
なんとか落ち着いて、もう一度聞いてみる。
(´・ω・`)「……」
ただ、黙るショボン。
('A`)「……なぁ、ショボン」
話を促す。
(´・ω・`)「……うん、……ツンがね、昨日……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……飛び降りて……マンションの屋上から……」
82 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:48:28.54 ID:G2CFQout0
しばらく、ショボンの言ったことが理解できずにいた。
飛び降りて?マンションの屋上から?
それってどういう事だ?つ、つまり、じs
(´・ω・`)「命に別状は無いから安心して欲しい。
今は意識もはっきりしているらしいし」
(; A )「……」
俺のせいだ。俺のせいだ。俺のせいだ。
俺があんな酷い事をしたからツンは。俺が……
手が小刻みに震え、額から一筋の汗が流れる。
83 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:49:01.44 ID:G2CFQout0
(´・ω・`)「昨日僕は仕事でね。残業で会社にいたんだけど……」
……夕方の7時くらいかな。仕事も一通り終わって
そろそろ帰ろうかなって時に、携帯が鳴ったんだ。
(´・ω・`)「はいもしもし」
『ショボ、ツンが、し、s、死んじゃ、しss』
公衆電話からだったからね。最初は誰かと思ったよ。
かなり焦ってるみたいで、何を言ってるかまるで分らなかったし。
『今、つ、ツンのお母さんから、電話で、病院で』
(´・ω・`)「……ブーンかい? ツンがどうかしたの? 」
84 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:49:24.57 ID:G2CFQout0
ブーンから聞かされた内容が内容だったから
会社を飛び出して急いで病院に向かったよ。
( ´ω`)「……ショボン」
(´・ω・`)「ブーン。ツンは? 」
( ´ω`)「……大丈夫らしいお」
説明する気力もないくらい、ぐったりとしていてね。
助かったとはいえ、自殺した
という事事態にショックを受けているみたいだった。
( ´ω`)「……僕、気づかなかったんだお……
ツンが、自殺する程の何かを抱えてたって……」
(´・ω・`)「うん」
( ´ω`)「情けないことに、今も分らないお……
いくら考えても、分らない……何も……」
85 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:49:46.50 ID:G2CFQout0
(´・ω・`)「ブーン、あんまり思いつめちゃダメだよ」
( ´ω`)「……」
ブーンは握り締めていた携帯を開いて、僕に見せた。
差出人はツン。2時間くらい前に送信されたメールだ。
('A`)「い、遺書メールって事か? 」
(´・ω・`)「うーん……」
86 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:50:08.56 ID:G2CFQout0
内容を聞くのが怖い。
だってそこには、俺への恨みだけが詰まっているんだ。
耳をふさぎたくなる。
( ´ω`)「……これ、どういう意味だと思うお? 」
(´・ω・`)「分らない」
( ´ω`)「僕もだお」
ブーンは、携帯を握ったまま頭を抱えた。
87 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:51:19.59 ID:G2CFQout0
件名 なし
本文 ドクオ、ごめんなさい。
私が居なければよかったんだね。
私が全部壊したんだよね。
('A`)「……壊した……全部……」
(´・ω・`)「意味、解かるかいドクオ」
解からない。わかるはず無いだろ。
なんでお前が謝るんだよ。何を壊したって言うんだよ。
居なければ良かったなんて……
88 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:51:40.42 ID:G2CFQout0
( ^ω^)「おっ、ツン。おはおだお」
ξ゚听)ξ「……ブーン」
ツンが目を覚ましたら、僕は出来るだけの笑顔で迎える。
そう決めたが、僕の笑顔は不自然じゃないかと
少し心配になる。
( ^ω^)「身体は痛くないかお? 」
ξ゚听)ξ「大丈夫よ」
( ^ω^)「よかったお! あっ、テレビ見るかお? 」
ξ゚听)ξ「いい」
89 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:52:27.33 ID:G2CFQout0
( ^ω^)「今は朝の9時だから、特種やってるお?
ツン、オズラさん好きだおー? 」
ξ゚听)ξ「……」
ツンは虚ろな目で外を見つめている。
元気なわけは無いけど、でも、
( ^ω^)「ツン見るおwwwwあまたつーってwww」
少しでも笑って欲しい。
それはツンの為ではなく、自分が安心する為だ。
もう自殺なんかしない。そう思わせて欲しい。
何も聞かないから、だから笑ってくれよ、ツン。
90 名前:ダンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 01:53:02.08 ID:G2CFQout0
ξ゚听)ξ「……ブーン悪いけど、出て行ってくれるかしら」
( ^ω^)「なんでだおwwwツンと一緒に特種見たいおwwww」
ξ゚听)ξ「……もうイヤ。うんざりよ……」
( ^ω^)「おっおっ? wwww」
ξ゚听)ξ「……別れましょ、ブーン」
( ^ω^)「お……」
来るときに頭にぽつりと落ちた雨の雫は
いつのまにか、どしゃぶりの雨へと姿を変えて
僕とツンのいる病室の窓を、冷たく叩いていた。
158 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:45:57.66 ID:NodJHoCo0
ツンに病室を追い出された。
でも家に帰る気にもなれないから
しばらく待合室の外のベンチに座っている事にする。
売店でコーヒー牛乳と菓子パンを買って、
頬張りながら、ツンのメールをじっと眺めた。
考えても分らないだろうけど、考えずにはいられない。
どうしてツンは死を選んだんだろう。
どうして急に冷たくなったんだろう。
どうしてドクオなんだろう。
どうして急に別れるなんて言い出すんだよ。
……ダメだ。涙出そうになる。
159 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:46:20.70 ID:NodJHoCo0
でも、ツンが最後に遺そうとした言葉。
そこに登場したドクオ。
ドクオは少なからず何か知っている筈だ。
僕は飲み終わった空の牛乳パックとパンのゴミを捨てると
外に出て、携帯を開いた。
今までは何回電話してもメールしても連絡がつかなかったけど
今日は何故か、出る気がした。
『はい』
160 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:46:42.34 ID:NodJHoCo0
(;^ω^)「ドクオ、かお」
『うん』
やっぱり、出た。
( ^ω^)「久し振りだお。元気だったかお? 」
『あぁ』
昔話や聞きたいことも色々あるけれど、今はそんな場合ではない。
( ^ω^)「ツンの事だけど」
161 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:47:05.89 ID:NodJHoCo0
『うん、ショボンに聞いた』
( ^ω^)「そうかお、お見舞いには来ないのかお」
『いけないよ』
( ^ω^)「どうしてだお? 」
黙るドクオ。
( ^ω^)「何か、来れない理由があるんじゃないのかお」
『忙しいんだ、引越しとか……あるからさ』
162 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:47:26.54 ID:NodJHoCo0
( ^ω^)「ドクオ、引っ越すのかお? 」
『うん』
( ^ω^)「引越し手伝うお」
『いいよ。見られたくないもんもあるし』
( ^ω^)「ならいいお。
ドクオの家の傍に、カフェVIPってあったおね?
そこで待ってるお」
一方的に言い切って、断られる前に電話を切る。
163 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:47:49.33 ID:NodJHoCo0
上品なBGM、寡黙なマスター、コーヒー豆の匂い。
客は老人と、浪人生っぽい(失礼か)若い男が一人。
ドクオはまだ来ていないのか。
空いている適当な席にすわり、コーヒーを注文する。
今日はバイトも休みだ。来るまで何時間でも粘ってやるぞ。
('A`)「よう」
(;^ω^)「うおう! 早いお! 」
(;'A`)「家この辺だから当然だろ」
164 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:48:09.96 ID:NodJHoCo0
( ^ω^)「そ、そうだけど。
もしかしたら来ないかなって」
('A`)「俺も来るつもりなかったよ」
ドクオもコーヒーを注文し、僕の前の席に座った。
('A`)「聞きたいことがあるんだろ?
俺も、話したいことがある」
( ^ω^)「……分ってると思うけど、ツンの事だお。
ドクオ、何か知らないかお」
('A`)「奇遇だな。俺の話したい事がまさにそれなんだ」
165 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:48:50.85 ID:NodJHoCo0
俺は、一度深呼吸をすると全てを話し始めた。
あの日してしまった事、そして、自分の気持ちと考えを
出来るだけ冷静に、そして出来るだけ分り易く。
('A`)「ブーン、すまん。だから俺のせいなんだ」
( ^ω^)「……知らなかったお……ドクオが……」
ブーンは、ただただ愕然としていた。
一度に全てを知ってしまったから
それを受け止められずにいるみたいだ。
俺は、もう一度「ごめん」と言って頭を下げた。
166 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:49:23.85 ID:NodJHoCo0
(;^ω^)「ぼ、僕に謝ってもらっても仕方ないお」
落ち着くためか、熱いコーヒーをすすり
こくりと喉を鳴らすブーン。
殴られたり、下手したら刺されたりすっかな、と
覚悟していたけど、意外と冷静で、少し安心した。
( ^ω^)「僕、さっきツンと会っていたんだお」
('A`)「へ? 」
( ^ω^)「全然元気なくて、白々しい位冷たくて」
('A`)「うん」
( ´ω`)「……」
急に、がっくりと肩を落とす。いや、最初から元気は無かったけど。
('A`)「どうかしたか」
167 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:49:51.50 ID:NodJHoCo0
( ´ω`)「それで、僕、ツンに振られちゃったんだお」
('A`)「なんで? 」
( ´ω`)「急にツンが……わけわからんお……」
('A`)「……」
……あ、そうか……、そういう事……。
('A`)「なぁブーン、ツンのいる病院って? 」
( ´ω`)「え?あぁ。VIP大学病院だお」
('A`)「俺、謝らなきゃ」
(;^ω^)「お? 」
169 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:50:12.40 ID:NodJHoCo0
ツンが壊した≠ニ考えてるのは、きっと俺らの友情。
自分がいなければ、俺らはずっと仲良し3人組で居れた。
そう気づいてしまったんだろ?
今、ようやく分ったよ。
だから、ブーンに別れようなんて言ったんだろ?
確かにその通りだ。
お前が居なければ俺たち3人は今も友達だっただろう。
でもツン、お前一個大きなこと忘れてるよ。
俺が言える立場じゃないのは分ってるけど、聞いてくれ。
ツン、お前は……――
170 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:50:46.07 ID:NodJHoCo0
川 ゚ -゚)「ふぅ……」
私は、すっかり何もなくなってしまった部屋を見て
一度大きくため息をついた。
こことももうお別れか。
狭い狭いと文句を垂らしていた部屋がなんだか広く感じて
どうしようもなく愛しく、寂しく感じられる。
なんだかんだで、私はこの部屋に、この家に
この家族に居心地の良さを感じていたんだな。
柄にも無く、しんみりとしてみる。
171 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:51:12.78 ID:NodJHoCo0
そういえば、ドクオは今頃どうしているんだろう。
友達の協力で新しい家とバイトを見つけたらしいが
あの害虫が何かに寄生せずに生きていけるんだろうか?
川 ゚ -゚)「……」
ドクオの部屋もダンボールが3つ程残っているだけで
私の部屋と同じ様に、殆ど何も無くなっていた。
あんなに汚かった部屋が、いつのまにやら……
今はもうドクオはこの家にはいない
少し躊躇しつつも、部屋に足を踏み入れる。
2 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:01:28.20 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「……案外、広かったんだな」
特に何をするでもなく、壁にもたれかかりそのままペタりと座る。
母さんがしたのか、フローリングはショールームの様に綺麗で
直に座っても何の抵抗も無い。
あぁ、なんか落ち着く。
あんなに毛嫌いしていた害虫の部屋だってのに。
自分でも不思議だ。
川 ゚ -゚)「む? 」
3 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:12.81 ID:zCVeieUV0
ぐっと足を伸ばした先にある、一つの小さなダンボール。
他は全部しっかりガムテープで止めてあるのに
それは口を半開きにしている。
川 ゚ -゚)「……」
見て……いいよな?うん、いいだろ見るくらい。
だって口開いてるし、まるで見てくださいと言わんばかりの
雰囲気をかもしだしているし。
そろそろとダンボールの口に手を伸ばし……
(;'A`)「その箱に触るなああああああああああああ」
川 ゚ -゚)「WHATS!」
突如私の前に高速でスライディングしてくる何か。
(;'A`)「クー、何やってるんだよお前は! 」
4 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:34.59 ID:zCVeieUV0
ものすごい早いなドクオ。シューマッハもびっくりだ
川 ゚ -゚)「そりゃあこっちのセリフだ。何してるんだ?」
(;'A`)「に、荷物取りに来たんだよ!
お前は何で人の部屋に!? 」
ドクオはスライディングしたままの体制で
その段ボールを抱えたままキッとこちらを睨みつけている。
川 ゚ -゚)「何となく、寂しくてな」
(;'A`)「そ、そうか……みんなは? 」
川 ゚ -゚)「スーパーで買物をしている。
長旅になるから」
5 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:55.54 ID:zCVeieUV0
(;'A`)「長旅? 」
……あ、そうか。今日だったか。
川 ゚ -゚)「勿論、見送りには来てくれるよな? 」
('A`)「あぁー……、すまん。
俺これから約束あるんだ……VIP公園で花見をね」
川 ゚ -゚)「そうか。なら仕方ない」
正直、見送りなんかしたら家族が恋しくなりそうで怖い。
泣いちゃったりするかもしれないし。
俺一応クールなキャラだからね……。あ、すいませんでした。
6 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:03:20.75 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「ところでさ、何が入ってるんだ? それ」
(;'A`)「ちょ、ちょっとしたしゅ、趣味のさ、うん」
川 ゚ -゚)「趣味?……まぁいい」
危なかった。危うく見られるとこだったぜ。
俺のマニアック過ぎる趣味を全て詰めこんだ宝箱を。
……なんか今も狙われている気がするが……。
川 ゚ -゚)「なぁ、ドクオ」
(;'A`)「へ? 」
川 ゚ -゚)「お前、一人でやっていけるのか? 」
(;'A`)「だ、大丈夫だよ……」
俺はそのダンボールから離れて
取りに来た物をカバンの中に詰め込む。
川 ゚ -゚)「ゴミ出しとか炊事とか掃除とか
ちゃんとやるんだぞ。いいな? 」
(;'A`)「……お前なぁ」
カーチャンかよ、お前は。
7 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:03:41.30 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「それに、ちゃんと毎日風呂に入るんだぞ?
バイトも、サボらずちゃんといk……
('A`)「分ったよ。分ったから。
お前も頑張れよ。それじゃ」
川 ゚ -゚)「あぁ……」
俺はダンボールを脇に抱え、重くなったカバンを持ち上げた。
重いな。部屋まで運べそうも無いや。
金は勿体無いけどタクシー呼ぶか。
川 ゚ -゚)「……なぁドクオ。私、やっていけるかな」
('A`)「え? 」
さっきとはまるで違う、らしくない弱気な声に
くるりと振り返る。
9 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:04:18.63 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「向こうは知らない人ばかりで
愛想だってよくないし……
知らない人ばかりで、ずっと一人ぼっちで……」
伸ばしていた足を折りたたみ、膝に顎を乗せるクー。
('A`)「……大丈夫だよ。すぐに慣れるさ」
何て言って励ましていいか分らない。
クーがこんな風に弱音を吐くなんて初めてかもしれない。
だから俺は、当然なんでもない事しか言えない。
川 ゚ -゚)「そうだよな……すまん」
クーはすっと立ち上がって、力なくにこりと笑う。
10 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:04:39.09 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「ドクオ、頑張れよ。それじゃ」
('A`)「ちょっと待って」
もしかしてクー、お前は
('A`)「お前サイタマなんか行きたくなんじゃないか?」
川 ゚ -゚)「え? 」
部屋を出て行こうとしたクーはきょとんとして立ち止まる。
川 ゚ -゚)「行きたくないよ。
だったらどうだっていうんだ? 」
11 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:03.52 ID:zCVeieUV0
クーが、あんまり素直に答えたから
やっぱり俺は何て言っていいか分らなくなる。
('A`)「じゃあさ、残ればいいじゃないか」
川 ゚ -゚)「……え? 」
え?何言ってるんだ俺は。
('A`)「あ、いや、あのさ。
俺の部屋狭いけど、その、VIP高から近いし」
自分の言ったことに話を合わせる。勿論、そんな事言うつもりは
無かったし、今だってない。
けど、それも悪くないかもしれない。
川 ゚ -゚)「それはつまり、いっしょに暮らそうっていう事か? 」
('∀`)「そう……いうk」
川 ゚ -゚)「だが断る」
12 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:24.15 ID:zCVeieUV0
(;'A`)「ちょ、おま、返事はえーよ」
いや、俺なんかと住むのは嫌なのは分ってるけど
でももう少し悩むとかさ、そういう素振りだけでも
見せて欲しかったかな、うん。
川 ゚ -゚)「バイトのお前に私が養えるとは思えないしな。
気持ちは有り難いが」
あぁ、そういう事ね。情けないがその通りです。
川 ゚ -゚)「そんな事よりドクオ。
お前これから花見なんだろ? 行かなくていいのか? 」
('A`)「あ、うん。じゃあ、な」
妹に気を使わせてどうするんだよ、おいおい。
14 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:44.83 ID:zCVeieUV0
俺は一度降ろした荷物をもう一回抱えて
今度こそ部屋を出ようと……
川 ゚ -゚)「4年後だ」
('A`)「え? 」
川 ゚ -゚)「私は向こうの大学を卒業する。
それまでに就職して一人前になってろ」
クーはにこりと笑う。
俺は意味が分らなくて、しばらくきょとんとしていた。
('A`)「……どういう」
川 ゚ -゚)「そしたら、サイタマまで迎えに来い。いいな? 」
49 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:50:36.77 ID:eJW0yecD0(16)
……
あー、参ったな。めんどくせぇ約束だ。
4年後までに就職して、しかも妹を養わなきゃいけないだと?
冗談じゃねぇぞ。
( ^ω^)「それじゃあ皆さん、カンパーイ」
(´・ω・`)ξ゚听)ξ('A`)「かんぱーい」
VIP公園は桜満開。
ツンの持ってきたシートの上に座り、掛け声と共にコップを空に掲げる。
中身はジュース。ツンとブーンは酒が飲めないからね。
( ^ω^)「じゃあ僕うたいまーす! 」
(´・ω・`)ξ゚听)ξ('A`)「やめい」
50 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:57:07.12 ID:eJW0yecD0(16)
( ^ω^)「なんでだおwww
花見って言ったらカラオケだおwwww」
なんでこのピザはアルコールを摂っていないくせに
いきなりこんな元気いっぱいなんだよ。
(´・ω・`)「カラオケとは、歌を歌う際に、またはメロディパート(主 旋律)を
担う楽器を演奏する際に、生演奏ではなく事前に録音された伴奏を
再生することにより演奏を再現することをいう。
よって君のはカラオケではないね」
('A`)「wiki乙」
ξ゚听)ξ「ショボンったら相変わらずね」
ショボンもだけど、ホント、みんな相変わらずだ。
あんな事があったってすぐ、こうやってみんなで花見なんて
あの頃に戻ったみたいで、なんだか不思議な感覚だ。
52 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:57:27.66 ID:eJW0yecD0(16)
('A`)「つーかツン大丈夫なのかよ」
ξ゚听)ξ「平気よ。
ちょっと打撲してちょっと骨折っちゃっただけだもん」
いやいや、それ結構な大怪我だぜ?
よく病院も外出許可だしたもんだよ。
( ^ω^)「もし痛かったりなんかしたりしたら
すぐ僕に知らせてお? 」
心配そうにツンの顔を覗き込むブーン。
アツアツだね、畜生め。
53 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:57:51.38 ID:eJW0yecD0(16)
そういえば、俺らが友達になって初めての花見の時は
ブーンがベロンベロンに酔っ払って裸踊りしようとして
それを俺が何とか食い止めたんだっけ。
しかもそんな光景を見てたツンが泣き出すしで
そりゃもうカオスになってっけな。
ショボンはただケラケラ笑ってるだけだったし。
(´・ω・`)「あぁ……そんな事もあったね。懐かしいね」
ξ゚听)ξ「そうね。楽しかったわ」
( ^ω^)「……楽しかったお」
('A`)「……」
54 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:58:11.92 ID:eJW0yecD0(16)
( ^ω^)「……戻ろうお。あの頃に」
('A`)「え? 」
( ^ω^)「楽しかったお。今だって楽しいお。
4人は友達なんだお。だから明日も遊ぶんだお。
カンタンだお」
(´・ω・`)「ブーン」
ショボンがブーンの肩をポンと叩く。
55 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:58:35.24 ID:eJW0yecD0(16)
( ´ω`)「な、なんでだお? だって……だって……」
ごめんなブーン。
俺だって、また前みたいに戻れたらいいなって
本当に本心からそう思ってるんだぜ?
( ^ω^)「だったら……」
でも、無理なんだ。
情け無いことにさ、俺まだツンの事が好きでさ。
(´・ω・`)ξ゚听)ξ( ^ω^)「……」
だから、ムカつくんだよ。嫉妬するんだよ。
今だって、ブーンとツンが目合わせるだけで
死にたくなるくらい腹が立つんだ。
56 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:59:05.36 ID:eJW0yecD0(16)
ξ゚听)ξ「……」
おいおいツン、そんな顔しないでくれよ。
あ、またお前自分が居なけりゃとか思ってるんじゃないよな?
ξ゚听)ξ「……そんな事」
そうか、だったらいいや。
( ´ω`)「じゃあ、もう僕らは友達には戻れないのかお……」
もしかしたら、そうなるかもしれない。けど
('A`)「あ、あのさ」
「ん? 」「え? 」「お? 」
3人がそれぞれの声を出しこちらを見る。
('A`)「俺、好きな人作るから
……って言い方したら変だけどさ」
57 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:59:27.89 ID:eJW0yecD0(16)
何年後になるかはわからないけどきっと出来る……筈だ。
だから、さ。
('A`)「だから、きっといつか。
お前らに紹介出来るような女が表れたら。
そしたら……」
ξ゚ー゚)ξ「……そうね」
(´・ω・`)「ふふっ、いつになるやら」
( ^ω^)「……わかったお。僕、待ってるお」
あぁ、お前らならそういってくれると思ってたよ。
だから大好きなんですよ。
58 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:00:52.88 ID:eJW0yecD0(16)
4年ってのはあっという間だ。
代わり映えの無い毎日を過ごしていると
2秒か3秒かってくらいの勢いで過ぎ去っていく。
で、俺。
今はバイトが終わって、VIP公園にいる。
右手には求人情報誌。左手には缶コーヒー。
('A`)「……」
就職ってのは選ばなきゃ簡単に出来ると思ってたけど
そんな甘いもんじゃねーんだな。
実際、1年くらいずっと探しているわけだが。
今もこうやってバイト生活ってわけだ。
60 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:02:35.60 ID:eJW0yecD0(16)
クーもこんな約束覚えてるわけないんだけど……
っていうかあんな約束本気なわけねぇしな。
('A`)(何かもうどうでもいいや。
就職なんかくそくらえだ……)
缶コーヒーの空缶と情報誌をゴミ箱にぶん投げる。
カツン、といい音がして、缶だけが弾き飛ぶ。
マンドクセと呟いて律儀に拾いに行く俺。
――で、いつ迎えに来てくれるんだ?
('A`)「悪いね、もう諦めたよ」
――何だよ、待ってたのに
('A`)「はは、それはすまんね」
――いいよ。私が行くから
('A`)「……? 」
61 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:02:56.06 ID:eJW0yecD0(16)
(´・ω・`)「……遅いね」
ξ゚听)ξ「……遅いわね」
( ^ω^)「……遅いお」
(´・ω・`)「やっぱり、ウソ、なんじゃないかな」
ξ゚听)ξ「ちょっとショボン。
ドクオを疑うなんてどうかしてるわ! 」
( ^ω^)「そ、そうだおショボン。
ドクオは……ウ、ウソをつくような男じゃ……」
(´・ω・`)「あのさ、もしウソでも
つまり、ドクオが一人で来ても、さ」
ξ゚听)ξ「わっ、わかってるわ」
( ^ω^)「う、うん」
62 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:04:14.26 ID:eJW0yecD0(16)
すまん。随分遅くなってしまった。
でも俺がこうやって連絡するとすぐ飛んできてくれるんだから
やっぱり待っててくれてたんだな。嬉しいよ、俺は。
恋人?好きな人?
そんなもんまだ出来てないよ。ごめんね。
でも俺はウソはつかないぜ?
('A`)「よう」
63 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:04:44.99 ID:eJW0yecD0(16)
( ^ω^)「おっ……? 」
俺はちゃんと女の子を連れてきたぜ?
それも2人もだ。
ξ゚听)ξ「? こちらどなた? 」
(*゚ー゚)「しいでーす! 」
川 ゚ -゚)「クーです。どうも」
('∀`)「あ……あはは、妹達です」
65 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:05:28.05 ID:eJW0yecD0(16)
ξ゚听)ξ「あ、あら。そうなの」
( ^ω^)「妹はねーわwwww約束と違うおwww」
まぁそういうなって。こっちだって苦肉の策なんすから。
(´・ω・`)「まぁいいじゃない。
人数が多いほうが楽しいじゃないか」
(*゚ー゚)「えへへーショボンさん大好きー」
まぁしぃまでくっついてきたのは予想外だったけど。
67 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:06:19.84 ID:eJW0yecD0(16)
( ^ω^)「そうだおね! クーちゃん可愛いからおkwwww」
ξ#゚听)ξ「ブ ー ン ?」
('∀`)「ははは」
ほら、俺今全然嫉妬していない。
純粋に、2人の幸せ願ってやれてる。
だいぶ時間かかったし、長いこと待たせたけど。
でも俺さ、今なら戻れる気がするんだ。
( ^ω^)「そいじゃあみなさんで、カンパーイ」
('∀`)ξ゚听)ξ(*゚ー゚)川 ゚ -゚)「かんぱーい! 」
68 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:06:55.94 ID:eJW0yecD0(16)
ドクオ、最近チャットこねぇな。
ログインして待っててみるんだけど、全然来ない。
バイト始めたとか言ってたかな。
充実してんのかな……。
つーか俺の事覚えてるのかな。
パンツ、まだ届かないんだぜ。
(,,゚Д゚)「……俺も働こ……」
おわり
87 名前:べっぴん(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22:53:58.86 ID:t3mBZXOK0
やべえ
>>67を見てくれ。かんぱーいってとこだ
(´・ω・`)がいない
それではありがとうございました
88 名前:ミトコンドリア(樺太)[] 投稿日:2007/04/27(金) 22:56:46.19 ID:QLuKtzNfO
ちょwwwwww
【関連】
一気読み
第一話
-
第二話
-
第三話
-
第四話
-
第五話
-
第六話
-
第七話
-
第八話
-
第九話
-
第十話
第十一話
-
最終話