243 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/12(月) 15:01:41.61 ID:Zhpyg8s20
《第四話 そうして――?》
【side-B】
起きてみるとそこは見覚えのない天井だった。ってこれはベタか。
( ´ω`)「んお……」
('A`)「起きたかブーン」
( ^ω^)「……ドクオ?」
('A`)「おう」
薄暗い天井。頭上を漂う煙草の煙。どことなくアンダーグラウンドな雰囲気のここは――
( ^ω^)「バーボン、ハウス?」
('A`)「正解」
ドクオの声。
のろい動作で僕は起き上がる。段々と全ての感覚が戻りつつあった。
しなやかな皮の感触があって、さっきまで僕が沈んでいたソファーなのだと実感した。
さして役目を果たして内容に思う空調ファンの駆動音と、プラスチック出来た観葉植物の緑。
そして気付く。
( ^ω^)「今、何時だお?」
('A`)「あ? 夜の7時だけど」
( ゜ω゜)「会社……!!」
立ち上がろうとすればドクオの手が僕の両腕を押える。
244 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/12(月) 15:02:00.97 ID:Zhpyg8s20
('A`)「もちつけ。連絡ならショボンがしてくれたよ」
( ^ω^)「お」
拍子抜けして、ソファーに再度沈む。安心した所為か、後ろ首が痛んだ。無意識にそれを擦る。
('A`)「お、わり。痛むか」
まさかあの程度で気絶するとは思わなんだ。からからとドクオが笑う。
ん?
現在進行形で擦りながら、僕は浮かび上がって来た理論をもう一度咀嚼してみる。
痛む延髄と、僕が今まで気絶していた事の因果関係。
記憶を失う前に感じたリアルな痛み。そして目の前で平謝りするドクオ。
イコール?
( ゜ω゜)「バッ、馬鹿、もー馬鹿ですかおぉぉぉおお!? 下手すりゃ死ぬちゅーねん!!」
アイデンティーティーでもある語尾すらかなぐり捨て、
泡を飛ばしながら僕はドクオを見やった。涙が出てくる。
('A`)「だから悪いって言ってるじゃーん」
じゃーん、じゃねーお。じわりと広がった涙腺に下唇を噛む。
245 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/12(月) 15:03:12.47 ID:Zhpyg8s20
('A`)「で、だ。ブーン」
( ^ω^)「お?」
('A`)「聞かせてもらおうか、なんで泣いてたのかをな」
あー、もう本当。涙が出てくる。
/
255 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/12(月) 17:34:35.95 ID:ndFHJSTO0
('A`)「ブーン」
全て説明し終えて、気の抜けた僕の方へドクオの手が伸びる。また例の延髄チョップかお!?
ほぼ条件反射で、両腕を使ってガードする。結局、ドクオの手は――
('A`)「バーロー」
ぐしゃり、と。無遠慮に配慮無しに、頭を手のミキサーでかき回される。
ワックスで整えた髪が無造作ヘヤーになっていく。バーローはどっちだ。
('A`)「道はいくらでもある。違うか?」
銘柄の分からない煙草の香りと、アルコールの匂い。
体重をかけるごとに沈んでいくソファーに移る僕自身の体温。
( ^ω^)「僕、は――」
('A`)「一つじゃないさ。道は一つじゃない」
ドクオは僕に語りかける。
ただ静かに、二年前と同じように背中を押してくれる。
的確な答えをくれない所がドクオらしく、最高に意地悪だ。
256 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/12(月) 17:35:16.80 ID:ndFHJSTO0
( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「どれを選ぶかはお前次第じゃねぇか、ブーン」
再度頭をかき回される。常に意志薄弱としたドクオは、こういうとき無駄に大人びるから困る。
('A`)「おい口に出てんぞ」
( ^ω^)「おっwwwww」
ごめん。ありがとう。
僕は起き上がり、ソファーに深く腰掛けた。
天井を仰げば、這うように漂う煙が見える。
やり直せないわけじゃない。道はいくらでもある――そのどれを選ぶかは、僕次第、か。
どうやら僕は、もう一度ツンに逢わなければならないらしい。
《第四話 そうして――?》 終
第五話へ続く
【関連】
ブーン編から -
一気読み
第一話 -
第二話 -
第三話
-
第四話【side-T】 -
第四話【side-B】 -
第五話【side-B】