一気読み
第一話
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第二話
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第三話
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最終話
1 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 15:59:54.38 ID:ilYztGwp0
ブランコも、滑り台も、シーソーも、全てが茜色に染まる夕方の公園。
砂場で小さな女の子が、男の子に囲まれていた。
「やーい、ちんこちんこ!」
「ちんこじゃないもん!つんこだもん!」
ああ、これは
「ちんこがなんか喋ってんぞ!」
わたしが
「うるせぇよちんこ!」
小さかったころの記憶だ
「うう…」
「こいつ泣いてんぞ!」
「やーい、泣き虫ちんこ!」
小さなわたしはランドセルを蹴られた。まだ新しい真っ赤なランドセルに、大きな靴跡がついた。
わたしは、ただただ泣く。
男の子がもう一度わたしのランドセルを蹴ろうとしたとき、入口から大きな声が聞こえた。
2 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:00:54.96 ID:ilYztGwp0
「やめるお!!」
その場にいた全員が入口のほうを見る。
ちょっと太った男の子が、ベンチを飛び越え、空き缶を蹴飛ばし、
夕日を浴びて輝く鉄棒をくぐりぬけ、あっという間にわたしの前に来た。
(#^ω^)「ツンをいじめるなお!!」
「うわー、ブーンがきたぞ!」
「にげろー!」
わらわらと逃げていくいじめっ子なんてみもせず、
ブーンはポケットからハンカチを出して、わたしのランドセルについた靴跡を落としてくれた。
( ^ω^)「ツン大丈夫かお?」
ξ;;)ξ「うん……うん……」
よかったお、と言って笑った彼の顔が、脳裏に焼き付き離れない。
4 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:02:03.59 ID:ilYztGwp0
耳をつんざくような目覚まし時計の音がわたしの耳に飛び込む。
ξ゚听)ξ「…夢か」
人の夢と書いて儚い。睡眠時間に対して夢を見れる時間は少なすぎる、なんてことを思いつつ、
わたしは学校に行く支度をはじめた。
わたしの通うVIP中学は、山の上にある普通の学校。
ほんとうに普通過ぎて、はっきり言っていいところが見つからない。
しいていうなら緑が豊かなところ……とか?まあ、これは山の上にある建物全てに言えることなのだけど。
わたしも、そんなどこにでもありそうな学校に通う普通の学生な訳で。
今は三年生ということもあって、受験に頭を悩ませている。
そんなことを言ってる間に、学校についた。
二階の右のベランダからつーが手を振っている。
わたしも軽く手を振り替えして、駆け足で下駄箱に向かった。
5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:03:00.79 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「買っておいたよー セセラで良かったよね?」
ξ゚听)ξ「うん、ありがとー」
つーはわたしにリップクリームをくれた。昨日、無くなるから
新しいのを買いに行くといったつーに、ついでにお願いしておいたのだ。
つーはポーチから爪楊枝を取り出すと、リップクリームのスティックをだしはじめた。
スティックを全てだすと、そこに先程の爪楊枝を使い、何かを器用に書きはじめる。
ξ゚听)ξ「何してるの?」
(*゚∀゚)「リップクリームのスティックに好きな人と
自分のイニシャルを書いて使い切ると、両思いになるのよ
……できた!」
ξ゚听)ξ「好きな人出来たの!?」
(*゚∀゚)「三組のビロードくん、かわいくない?」
ξ゚听)ξ「……」
いつも思うのだけど、同じ歳の男子をかわいいという女子の気持ちはわからない。
わたしが返事に困っていると、教室のドアが勢いよく開いた。
7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:04:33.68 ID:ilYztGwp0
( ><)「おはようございます!」
(*゚∀゚)「あ!」
噂をすればなんとやら。なんともタイミングよく、つーいわく”かわいい”ビロード君がやって来た。
ビロード君は入ってくるなりつかつかと教室を進み、ある女子の席の前で止まった。
( ><)「ちんぽっぽちゃん!僕と付き合ってほしいんです!」
(*‘ω‘ *)「ぽ?」
わたしはつーの顔を見れず、シャーペンの芯の跡が着いた床を見ながら言った。
ξ゚听)ξ「リップクリーム…交換しようか?」
(*゚∀゚)「ありがとう…」
8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:06:07.17 ID:ilYztGwp0
退屈な授業も終わって、ようやく昼食の時間になった。
もうさっきのことなど頭にないのかすっかり元気になったつーの机に向かおうとしたわたしの目に、
窓の外を見て一人で食事をとるブーンの姿が写った。
( 'ω`)「……」
もくもくと、何も喋らずに箸をすすめるブーン。
その動きは機械的で、彼の色鮮やかでおいしそうなおべんとうも何故だか色あせて見える。
ξ゚听)ξ(……)
(*゚∀゚)「ツンー 早くー!」
わたしはブーンから目をそらし、つーと彼女の双子の妹、しぃのもとにむかい、お弁当を食べることにした。
11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:07:29.68 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「ねぇ聞いてよツン、しぃったらさ、こないだあたしが買い物に誘ったら
ギコとデートだからって断ってきたんだよ」
紙パックに入ったコーヒー牛乳を飲みながらつーが言う。
(;゚ー゚)「ちょっと!デートなんかじゃないってば」
これは嘘。しぃが焦ってるときはたいてい嘘をついてるときだ。
ξ゚听)ξ「どうだか」
(;゚ー゚)「ツンまで!」
(*゚∀゚)「だいたいあんたたち、誰が見たってラブラブなのにどうして付き合わないのさ」
(*゚-゚)「ギコ君とはそんなんじゃないよ……」
これもうそ。これはなんとなく直感で。
しぃは、客観的にみてすごく可愛い。
肌は雪みたいに白くて、目は大きなアーモンド型。唇なんて桜みたいに淡い桃色。
顔はちっちゃくて背もちっちゃい。おまけに性格までいいんだから、男にモテないわけがない。
実際、しぃは周りが嫉妬しちゃうほどモテモテだ。
14 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:10:15.55 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「そんなんじゃないならどんなよ!」
つーもその”周り”の中の一人。
彼女だって見た目はほとんどしぃと変わらない美少女なのに、
性格があまりにも違いすぎるため、男受けはさっぱりだ。
明るくてクラスの中心タイプな彼女は一昔前ならモテていただろうに、今の時代じゃ
彼女のポジションは男にうざがられるだけだ。
まあ、わたしもあまり人のことは言えないけど。
(*゚-゚)「それは……」
しぃは下を向き、口ごもる。
ああ、またこの流れだ。わたしは心の中でため息をついた。
17 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:11:32.02 ID:ilYztGwp0
つーがギコの話を出し、しぃはそれをはぐらかす。
だけどつーはしぃにしつこくギコの話をふる。しぃ困る。
毎日のように続くこの流れに、わたしはうんざりしていた。
ギコの話をしつこくふるつーもうざいけど、しぃもなかなかなうざい。
ギコのこと、好きなら好きって言えばいいのに。わたしはしぃのはっきりしないところが大嫌い。
この流れがこのまま続くと姉妹喧嘩になる。
喧嘩において、第三者ほど辛いことはない。仕方なく私は流れを変えるのだ。
m9ξ゚听)ξ「あ、ねぇあれみて!」
(*゚∀゚)「ん?」
ξ゚听)ξ「オワタチャック全開」
(*゚ー゚)(*゚∀゚)「きめぇwwwwwwwww」
19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:12:44.76 ID:ilYztGwp0
わたしがするのはこれだけのこと。
これだけのことで彼女達の流れはオワタ先生の下着についてに変わるのだ。
__ちょっと破れてるね。色合い、きもい!つー、あれパパと色違いじゃない?マジで?あれはない。
赤と黒のしましま模様のトランクスを見ながら思う。なんて、なんて単純なの。
30 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:25:13.41 ID:ilYztGwp0
チャイム「きんこんかんこーん」
先生「はーいみなさんさようなら」
みなさん「さようなら」
あれ?これは
( ^ω^)「ツン、新しいゲーム買ったお!うちにきてやるお!」
ξ゚听)ξ「しょうがないわね、一緒にやってあげるわよ」
たしかわたしが小学四年生の時だ。
33 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:26:28.19 ID:ilYztGwp0
(;^ω^)「アーッ!ジョゼット、ゴキブリ食べちゃらめえぇぇ!!」
ξ゚听)ξ「猫は……そう!なげるのよ!」
わたしもブーンも楽しそうにゲームをやってる。64、すごく懐かしい。
ξ゚听)ξ「これ、難しいわ。ほかのにしましょう」
( ^ω^)「おっおっ」
この頃は楽しかった。ほんとうに楽しかったんだ。
少し前から、男の子たちのわたしにたいするいじめは無くなっていた。
わたしは毎日、日が暮れるまでブーンと遊んだ。
ブーンの家で。公園で。私の家で。
こんな日々がずっと続くと思っていた。
34 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:27:53.47 ID:ilYztGwp0
(;^ω^)「もうすぐお食事会がはじまっちゃうお!」
ξ#゚听)ξ「わかってるわよ!ピカチュウ!十万ボルト!!」
~(@^w^@)~「ピカチュ?」
とぼけるネズミ。そういえばこんなゲームあったっけ。
(;^ω^)「ツン!お食事会!」
ξ#゚听)ξ「んあー!この馬鹿!電気ネズミ!」
~(#^w^)~「ピカチュ!」
電気ネズミという単語に反応し、ピカチュウは般若のような形相でこちらを睨みつけてきた。
あ、怒ってる、と思う間もなく……
37 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:29:14.09 ID:ilYztGwp0
ξ゚听)ξ「ぎゃあ!」
ビガヂュウの十万ボルトでわたしは跳ね起きた。
あの地獄耳ネズミ、悪口だけは聞こえてやがる。ってそうじゃなくて。
ξ゚听)ξ「なんだ、夢か…」
昨日といい今日といい、どうしてブーンの夢ばかり見るのだろう。
時計を見ればまだ6時半。いつもより30分早く起きてしまった。
もっと寝たいと思うけど、体はそうは思わないらしい、バッチリ目は覚めていた。
ここで無理してもう一度寝ると、次起きたときはめちゃくちゃ眠くなる。なんでだろう。
とりあえずわたしは顔を洗い、学校にいく支度を始めた。
38 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:30:28.79 ID:ilYztGwp0
ξ゚听)ξ「いっちばんのり!」
朝早く学校に来るのは、なかなか気持ちがいい。
誰もいないガランとした教室。
外ではハンドボール部とサッカー部が、体育館ではバスケ部とバレー部が、今日も朝練に励んでいる。
こんな早くからご苦労なこった。ちなみにわたしは美術部。いわゆる幽霊部員である。まあ、基本だよね。
ξ゚听)ξ「暑いなー」
五月の初めなのに、最近の暑さは異様だ。
地球温暖化を感じつつも、窓を開けてカーテンを閉める。
風でカーテンはすぐめくれちゃうけど、なんとなくいつもこうする。
みんなが来るまでは、まだそこそこ時間がある。
せっかく一人なんだし、わたしはあれをやることにした。
40 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:32:39.20 ID:ilYztGwp0
ξ゚听)ξ「長岡…」
わたしはクラスの中心格とも呼べる男子、長岡の席の前に立つ。
彼はその明るい性格からか男女問わず人気だ。
でも
ξ#゚听)ξ「死ね!このっ!おっぱいおっぱいうるせぇんだよ!」
わたしは彼が大嫌いだ。
机を蹴り、思い付くかぎりの汚い言葉を叫ぶ。死ね、死ね、死ね、死ね…
ξ゚ー゚)ξ「ふぅ」
10分くらいそうしていたら、さすがに足が疲れてきた。
幼稚だとは思うけれど、これをするとすっきりする。でも物に当たるのは良くないかな?
わたしは曲がった長岡の席を直し、自分の席に戻った。
彼のことは大嫌いだけど、死ねとまでは思わない。
わたしはボギャブラリーが豊富じゃないから、彼にたいして相応しい言葉が出てこないのだ。
うざい以上死ね未満。思いつかないから、死ねを選んだ。
結局はわたしも単純だ。
70 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:03:11.34 ID:ilYztGwp0
つーがくるまで何しようかな。そういえば今日は英語の単語テストがあったっけ。よし、その勉強をしよう。
ξ゚听)ξ「目置く 目置く 目置く・・・」
単語をノートに書きながら言う。英語の勉強の基本だ。
昨晩知った目置くと言うと発音の良いミルクに聞こえるという情報は、なかなか役に立つ。
さて、次は
ξ゚听)ξ「エレジィ エレジィ エレ」
(;^ω^)「お」
お?
ドアが開いていた。困ったような顔で鞄を持ったまま立っているブーン。
聞かれてた。今の絶対、聞かれてた。
気まずい沈黙の後、ブーンは席に着いた。
71 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:04:46.28 ID:ilYztGwp0
なんかイライラする。聞かれてた、聞かれてた、聞かれてた!
教室でブツブツ独り言を言いいながら勉強する姿を見られてた!
別にブーンが悪いわけじゃない。
ただ、なんとなくむかつく。ブーンと同じ場所にいたくない。
席から立ち教室から出ると、入り口で朝練が終わったサッカー部とすれ違った。
長岡の姿が目に入り、わざと聞こえるように舌打ちをする。
_
( ゚∀゚)「んだ?あいつ、感じわりー。おっぱいちっちぇーくせに」
(’e’)「朝からブスに会っちったよ。いこーぜ」
ブスはどっちだ、この老け顔!
イライライライラ
何も考えなくても、足はどんどん勝手に進んでくれる。今はそれが有難かった。
73 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:05:50.92 ID:ilYztGwp0
ξ#゚听)ξ「はぁー」
昇降口の横にある中庭につくと、足は動かなくなった。
そのままわたしは地面に座る。
ここはわたしのお気に入りの場所。
緑に包まれた空間にポツンとある、水の出ない噴水。
横に繋がっている池には小さな鯉が泳いでいる。
やっぱりここは好きだ。
ξ゚听)ξ「すぅー はぁー すぅー はぁー 」
大きく深呼吸をすると、イライラは治まった。
わたしの気持ちもだいぶ落ち着いてきた。
わかってる、ブーンは、悪くない。
長岡やサッカー部だって、わたしが舌打ちをしたから、あんな酷いことを言ったのだ。
わかってる、悪いのはわたし。
わかってはいるけど……
体のどこかから、またイライラが湧いてきた。
74 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:07:10.46 ID:ilYztGwp0
ξ゚听)ξ「わたし、ばかみたい……」
勝手に怒って、勝手にイライラして。
ほんとうに、ばかみたい。
35分を知らせるチャイムが鳴ったから、わたしは教室に戻ることにした。
40分までに教室に入らないと遅刻になっちゃうのだ。
昇降口に向かって歩く。少し、後ろを振り返ってみる。
緑の中で泳ぐ鯉。ずっと中庭に居たかった。
75 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:08:48.40 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「ツンー、テストどうだった?…うわっ、顔こわいよ」
昼食の時間。わたしの顔はこわいらしい。
夢の中ので見たピカチュウの顔と、どっちがこわいかな。
ξ゚听)ξ「普通、普通。つー、自信ありげじゃん。良かったの?」
(*゚∀゚)「えへへ、まぁね」
ξ゚听)ξ「いいなーw」
普通なんてうそ。ほんとは全然だめだった。
一時間目の国語も、二時間目の社会も、まったく頭に入ってない。
ξ゚听)ξ「だいたいさー、モナ先の発音わかりにくいんだよね」
(*゚∀゚)「あるあるw」
ごめん、モナー先生。本当はただの良い訳。
つーと雑談をしていると、しぃがやってきた。三人そろってお昼ごはん
77 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:10:20.71 ID:ilYztGwp0
ふと思う。
この子達といたって楽しくないのに、どうしてわたしは一緒にいるんだろう。
どうして…… 本当は、わかっている。でも心のどこかで認めたくないんだ。
それを認めたら、わたしはここにいる大勢のクラスメイトと同じになってしまう。
そんなのは嫌だ。
__この子達といて、楽しくないわけじゃない。
心の中でつぶやく。その声は、まったく感情がこもっていなかった。
帰り学活で返ってきた単語のテストは、ミルクしか書けていなかった。
つーがテストを片手に笑いながらこっちに来る。
点数は、折って隠した。
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