( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2〜

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2 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:52:03.73 ID:NapV5mxv0

( ^ω^)「ツン、今日も64やるお!」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったわよ」


まぶしい太陽の下、ランドセルを背負いながら走る男の子と女の子。

忘れるわけがない。これは、わたしが小学六年生のころの記憶だ。



ξ゚听)ξ「ねぇ、今日はほかのことやらない。ブーンと遊ぶと、ゲームばっかりじゃない」


ある日、放課後の教室でわたしはブーンに言った。
べつに、ほんとうに他のことがやりたかったわけじゃない。
軽い気持ちで、なんとなく言ったのだ。


3 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:52:29.53 ID:NapV5mxv0
( ^ω^)「ほかのこと……?ツンは他に何かやりたいことがあるのかお?」

ξ゚听)ξ「そういう訳じゃないけど……」

( ^ω^)「だったらいいじゃないかお。今日もゲームするお」


相変わらずマイペースなブーンに少しカチンときたけれど、それくらいは気にしない。



__気にしない、はずだった。


4 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:53:07.94 ID:NapV5mxv0
「デレさんかわいそー」


ξ;゚听)ξ「え?」


男の子の、声が聞こえた。
ブーンは気づいてないのか、ランドセルに教科書を詰め込んでいる。


( ・∀・)「いまどき64しかもってないようなやつと、ゲームなんてやりたくないよな」

( ^Д^)「なぁ、今日俺んちでPS2やろーぜ!」

/ ,' 3 「やろやろw」




5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:53:29.31 ID:NapV5mxv0
教室の端で、男の子3人組のグループが、わたしたちを馬鹿にするかのようにこっちを見ていた。
いや、正しくはわたしたちじゃない、ブーンだ。彼らの目にははっきりとブーンの姿が映っていた。


その時わたしは、怒りを感じるべきだったのであろう。
大事な友達を馬鹿にされて悔しい、そう思うべきだったんだろう。


だけどわたしは、恥ずかしいと思った。

男の子に馬鹿にされているブーンと一緒にいるのが、恥ずかしいと思ってしまった。


6 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:54:23.41 ID:NapV5mxv0
( ^ω^)「おまたせだおー。帰るお!」

ξ////)ξ「うん」

( ^ω^)「お?どうしたお?ツン、お顔が真っ赤だおwww」

ξ////)ξ「べ、べつに何でもないわよ!早く帰るわよ!」


わたしはブーンの返事を待たず、男の子達の視線から逃げるように教室から飛び出した。
背中にぶつかるブーンの声。ツンデレだおー。

うるさいうるさい。そんなんじゃない。何も、わかってないくせに!




この日からわたしは、周りの、わたしとブーンを見る目が気になってしょうがなくなってしまった。


7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:55:08.75 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「やっぱり、夢か……」


聞きなれた目覚まし時計の音で目を覚ます。
またブーンの夢だ。明日も見るのだろうか。
明日は、明日は見たくない。
だって、このまま続くと明日見る夢は……


ξ゚听)ξ「……やめよ」


考えていてもしょうがない、見るときは見る。それだけだ。
わたしはぼんやりする頭をなんとか働かせて、学校に行く支度をはじめた。

スクバに教科書やペンケースを詰め込み、制服に着替える。


8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:55:38.07 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「リップクリーム、リップクリームッと……」


リップクリームは学校ではあまり使わないけれど、朝と夜は必ずぬる。
カサカサの唇になりませんように、という願いを込めて。

ジャニーズの宣伝で大人気のセセラ。
スティックをのばすと、下のほうにアルファベットが彫ってあるのが見えた。
TとB。つーとビロード君か。つーがこのリップクリームを使う前に彼女の恋は終わった。
イニシャルのおまじないはまったく効果がないのかもしれない。


ξ゚听)ξ「いってきまーす」


母はパートで朝から出かけている。
父も仕事で、わたしが起きるころには家には誰もいない。
空っぽの家にわたしの声はむなしく響く。なんだか朝から気分が沈んだ。


9 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:56:03.08 ID:NapV5mxv0


教室に入るなり始まるつーのマシンガントーク。


(*゚∀゚)「おはよー!ねえねえ昨日のMステみた!?」

ξ゚听)ξ「みたみたー」


ほんとは見てない。


(*゚∀゚)「やっぱKAT-TUNやばいよね!」

ξ゚听)ξ「ねーw仁が帰って来たもんね!」


カツーンだかケツーンだか知らないけど、つーはジャニーズに夢中だ。
いわゆる仁担というもので、春魂とやらにも行くらしい。
春魂っていうのは、春のコンサートのこと。どうでもいいけど。


10 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:56:43.89 ID:NapV5mxv0
(*゚∀゚)「あ、一時間め保体だ!着替え行こー」

ξ゚听)ξ「うんっ」


保体はわたしの嫌いな科目の一つ。
隣にいるつーはごぼうみたいに細い足なのに、50メートルは女子トップだ。
しぃは遅いのに、なんでだろう。ちなみにわたしも遅い。しぃほどじゃないけどね。




ξ゚听)ξ「えいっ!」


バランスを崩さず綺麗に着地。
うん、我ながらなかなか。誰も並んでいないから、もう一度やろう。


11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:57:47.32 ID:NapV5mxv0
今、授業では器械をやっている。自分でいうのも何だけど、わたしは平均台が得意。
V字バランスもスキップもターンもなんでもこいだ。
平均台をやってる時はすごく楽しい。自分が一番輝いている瞬間だと思える。

この気持ちはまるで


ξ゚听)ξ(まるで……ブーンと遊んでたころみたい?)


まさか、と思った瞬間だった。
一瞬にしてわたしの世界が変わりだす。
ジェットコースターに乗ったときよりも早く視界が回る。
お尻の下には何もない。わたしを支えてくれるはずの平均台が、ない。

何が起こったかわからないまま、わたしはマットに落ちた。


12 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:58:22.36 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「ひでぶっ!」


右半身に痛みが走る。
ほっぺはジンジン熱く、右腕は全体重がのしかかり重くて痛くてしょうがない。
まぁ、マットとキスしなかっただけマシか。
痛む体を引きずって、なんとか壁際まで歩く。

平均台から落ちた、ださい!体よりも、周りの視線が痛かった。
もう絶対にV字バランスをする時は、他の事を考えない


13 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:58:47.10 ID:NapV5mxv0
(;゚∀゚)「ツン、へーきー?」

ξ゚听)ξ「うん、なんとかー」


跳び箱からつーがやってきた。わたしを心配そうに見る。
つーのこういうところは好き。
ほんとうにわたしのことを心配してくれているのが、目を見ればわかる。


(;゚∀゚)「保健室行く?ついてこーか?」

ξ゚ー゚)ξ「自分でいけるよ、ありがと」


こういうところは嫌い。
これはわたしを心配して言ってるんじゃない。
ついていけば、授業がサボれるから言ってるのだ。やっぱり目を見ればわかる。

体育館から出る時、長岡が笑いながらわたしを見ていた。


ブーンが、心配そうにわたしを見ていた。


14 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:00:10.52 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「あ、これ……」


保健室へと続く一階の廊下。一階なんて、あまり来ない。
けど、たまに来てみると良い収穫があったりする。
今日もあった。


ξ゚听)ξ「ビロード君の絵?」


図書室の壁に貼ってある、わたしの背よりも大きなキャンバスに描かれた油絵。
森の中で、どこかで見たことあるような少女が微笑んでいる。その横には小さな泉。
ビロード君って、絵がうまいんだ。でも、それより右下にあるビロードのサイン。


15 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:00:37.16 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「イニシャル、Vなんだ」


おまじないも効かない訳だ。

つーは彼のイニシャルを間違えていた。
仮にも、気になる人なのに。

気になる人?つーは彼のことが好きだったのだろうか?
好きな人の、イニシャルも知らないの?


ξ゚听)ξ「好きって……なんだろう」


こんなこと、初めて考えた。


17 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:01:23.27 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「ペニサスせんせー」


保健室のドアをたたく。コンコン、反応なし。
よくみると、電気が点いてない。これはまさか!


('、`*川『先生はいません♪怪我をした人は職員室の先生に診てもらってね』


ひっくり返ったドアプレート。ちょっぴり泣きたくなった。
保健室の先生って、どうしてこうも居ない時が多いんだ?
怪我をした人は職員室の先生に診てもらってね。実際に職員室に行く生徒なんていない。


18 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:02:00.50 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「どうしようかな」


実は、体はもうあまり痛くなかった。
平均台から落ちるなんてそんなもん。跳び箱から落ちるほうが辛い。
でもこのまま体育館に戻るのは嫌だ。なんとなく、一度出ると戻りづらい。

授業が終わるまで、あと三十分。始まってからまだ十五分しかたっていない。
もう一度つぶやく、どうしようかな。

不意に、背中に暖かい陽光を感じて振り返る。
窓の外が眩しい。今日は良い天気、というより暑い。
涼しいところに行きたい気分だ。涼しいところといったら、あそこしか思いつかない。


19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:02:34.24 ID:NapV5mxv0
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ」

こんにちは、噴水。こんにちは、鯉。
やっぱり中庭は良い。真上に太陽はあるけれど、木々が影をつくっているので暑くない。
池の中を気持ちよさそうに泳ぐ鯉も、とても涼しげ。 ここはわたしのまほろばだ。

ごろりと地面に寝転がり、目を閉じる。
授業が終わるまで、ここで眠るのも悪くない。


ξ゚听)ξ「……眠り?」


パチンと目を開く。眠っちゃだめだ。
眠ってしまえば、夢を見る。今度、見る夢はきっと……


20 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:03:10.87 ID:NapV5mxv0
ξ#゚听)ξ「もうっ!」


これじゃ朝の繰り返しだ。見るときは見るんだ。


自分に言い聞かせても、やっぱりだめだった。

一度気になったら止まらない。
明日、夢を見る。明日、夢を見る。明日、夢を見る。


ξ゚听)ξ「……」


中庭の悪いところ、見つけた。
ここにいると、妙に感傷的になってしまう。

やっぱりここはわたしのまほろばじゃないのかも。なんか、ちょっと違う。

居心地の悪さを感じ、わたしは中庭を後にした。
さっきまでは、あんなに好きだったのに。今はこの場所に居たくなかった。


21 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:03:44.75 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「そうだ 京都、行こう!」


じゃなくて。


ξ゚听)ξ「そうだ 屋上、行こう!」


屋上。わたしがもっとも青春を感じる単語だ。
学生なら誰もが憧れる場所だと思う。
自由に出入りできる学校もあるみたいだけど、うちの学校は立ち入り禁止。

立ち入り禁止、なんだけど……


22 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:04:15.93 ID:NapV5mxv0
ξ;゚听)ξ「ふぅ、はぁはぁ、ふぅ」


わたしたちの教室は二階にある。二階はラッキーな場所だ。

教室の窓から出てベランダを一番奥、養護クラスの方まで進むと、大きな緑の屋根がある。
ベランダから屋根に飛び降りて、この屋根を上ると屋上に着くのだ!
屋根は防水用にゴム素材のカバーをかぶっているから、登りやすい。


ξ゚听)ξ「ついた!」


屋上にはあっさりと着いた。実はここに来るのは初めて。

綺麗な青空の下、広い屋上にわたしだけ。
なんだかすごく気分が良い。歌でも歌いたくなった。いや、歌わないけど。


24 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:05:10.42 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「あおいそらー」


なんとなく叫んでみる。綺麗な空。
見ていると、嫌なことをすべて忘れられそう。


ξ゚听)ξ「あおいそらっ」


大声で叫ぶ。心の中のもやもやを振り払うように。


ξ;凵G)ξ「あおい……そらっ……!」


わかっている。

こんなの、嫌なことから逃げるための、現実逃避でしかないこと。

大声で叫んでも、心にあるもやもやは消えないこと。


25 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:05:43.26 ID:NapV5mxv0
ξ;凵G)ξ「うっ……うっ……」


涙が止まらなかった。
明日がこわい。夢を見るのがこわい。見たくない。

どうすれば逃げられる?どうすれば、見ないですむ?


ξ;凵G)ξ「明日なんて……来なければいい……」


涙が奏でる水色の調べ。
一粒、一粒、落ちるたびに、わたしの胸に沈んでいく。

ほんとうにこわいのは、明日なの?


涙は止まらない。

美しい、大きな空を見て思う。


ここもわたしのまほろばじゃない、と。




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