( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 一気読み〜

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1 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 15:59:54.38 ID:ilYztGwp0
ブランコも、滑り台も、シーソーも、全てが茜色に染まる夕方の公園。
砂場で小さな女の子が、男の子に囲まれていた。

「やーい、ちんこちんこ!」

「ちんこじゃないもん!つんこだもん!」

ああ、これは

「ちんこがなんか喋ってんぞ!」

わたしが

「うるせぇよちんこ!」

小さかったころの記憶だ

「うう…」

「こいつ泣いてんぞ!」

「やーい、泣き虫ちんこ!」

小さなわたしはランドセルを蹴られた。まだ新しい真っ赤なランドセルに、大きな靴跡がついた。
わたしは、ただただ泣く。
男の子がもう一度わたしのランドセルを蹴ろうとしたとき、入口から大きな声が聞こえた。


2 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:00:54.96 ID:ilYztGwp0
「やめるお!!」

その場にいた全員が入口のほうを見る。
ちょっと太った男の子が、ベンチを飛び越え、空き缶を蹴飛ばし、
夕日を浴びて輝く鉄棒をくぐりぬけ、あっという間にわたしの前に来た。

(#^ω^)「ツンをいじめるなお!!」


「うわー、ブーンがきたぞ!」

「にげろー!」

わらわらと逃げていくいじめっ子なんてみもせず、
ブーンはポケットからハンカチを出して、わたしのランドセルについた靴跡を落としてくれた。

( ^ω^)「ツン大丈夫かお?」

ξ;;)ξ「うん……うん……」


よかったお、と言って笑った彼の顔が、脳裏に焼き付き離れない。


4 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:02:03.59 ID:ilYztGwp0



耳をつんざくような目覚まし時計の音がわたしの耳に飛び込む。


ξ゚听)ξ「…夢か」


人の夢と書いて儚い。睡眠時間に対して夢を見れる時間は少なすぎる、なんてことを思いつつ、
わたしは学校に行く支度をはじめた。

わたしの通うVIP中学は、山の上にある普通の学校。
ほんとうに普通過ぎて、はっきり言っていいところが見つからない。
しいていうなら緑が豊かなところ……とか?まあ、これは山の上にある建物全てに言えることなのだけど。
わたしも、そんなどこにでもありそうな学校に通う普通の学生な訳で。
今は三年生ということもあって、受験に頭を悩ませている。

そんなことを言ってる間に、学校についた。
二階の右のベランダからつーが手を振っている。
わたしも軽く手を振り替えして、駆け足で下駄箱に向かった。


5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:03:00.79 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「買っておいたよー セセラで良かったよね?」

ξ゚听)ξ「うん、ありがとー」

つーはわたしにリップクリームをくれた。昨日、無くなるから
新しいのを買いに行くといったつーに、ついでにお願いしておいたのだ。
つーはポーチから爪楊枝を取り出すと、リップクリームのスティックをだしはじめた。
スティックを全てだすと、そこに先程の爪楊枝を使い、何かを器用に書きはじめる。

ξ゚听)ξ「何してるの?」

(*゚∀゚)「リップクリームのスティックに好きな人と
     自分のイニシャルを書いて使い切ると、両思いになるのよ
     ……できた!」

ξ゚听)ξ「好きな人出来たの!?」

(*゚∀゚)「三組のビロードくん、かわいくない?」

ξ゚听)ξ「……」

いつも思うのだけど、同じ歳の男子をかわいいという女子の気持ちはわからない。
わたしが返事に困っていると、教室のドアが勢いよく開いた。


7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:04:33.68 ID:ilYztGwp0
( ><)「おはようございます!」

(*゚∀゚)「あ!」

噂をすればなんとやら。なんともタイミングよく、つーいわく”かわいい”ビロード君がやって来た。
ビロード君は入ってくるなりつかつかと教室を進み、ある女子の席の前で止まった。


( ><)「ちんぽっぽちゃん!僕と付き合ってほしいんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽ?」


わたしはつーの顔を見れず、シャーペンの芯の跡が着いた床を見ながら言った。


ξ゚听)ξ「リップクリーム…交換しようか?」

(*゚∀゚)「ありがとう…」


8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:06:07.17 ID:ilYztGwp0


退屈な授業も終わって、ようやく昼食の時間になった。
もうさっきのことなど頭にないのかすっかり元気になったつーの机に向かおうとしたわたしの目に、
窓の外を見て一人で食事をとるブーンの姿が写った。


( 'ω`)「……」


もくもくと、何も喋らずに箸をすすめるブーン。
その動きは機械的で、彼の色鮮やかでおいしそうなおべんとうも何故だか色あせて見える。


ξ゚听)ξ(……)

(*゚∀゚)「ツンー 早くー!」


わたしはブーンから目をそらし、つーと彼女の双子の妹、しぃのもとにむかい、お弁当を食べることにした。


11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:07:29.68 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「ねぇ聞いてよツン、しぃったらさ、こないだあたしが買い物に誘ったら
     ギコとデートだからって断ってきたんだよ」

紙パックに入ったコーヒー牛乳を飲みながらつーが言う。

(;゚ー゚)「ちょっと!デートなんかじゃないってば」

これは嘘。しぃが焦ってるときはたいてい嘘をついてるときだ。

ξ゚听)ξ「どうだか」

(;゚ー゚)「ツンまで!」

(*゚∀゚)「だいたいあんたたち、誰が見たってラブラブなのにどうして付き合わないのさ」

(*゚-゚)「ギコ君とはそんなんじゃないよ……」

これもうそ。これはなんとなく直感で。
しぃは、客観的にみてすごく可愛い。
肌は雪みたいに白くて、目は大きなアーモンド型。唇なんて桜みたいに淡い桃色。
顔はちっちゃくて背もちっちゃい。おまけに性格までいいんだから、男にモテないわけがない。
実際、しぃは周りが嫉妬しちゃうほどモテモテだ。


14 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:10:15.55 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「そんなんじゃないならどんなよ!」

つーもその”周り”の中の一人。
彼女だって見た目はほとんどしぃと変わらない美少女なのに、
性格があまりにも違いすぎるため、男受けはさっぱりだ。
明るくてクラスの中心タイプな彼女は一昔前ならモテていただろうに、今の時代じゃ
彼女のポジションは男にうざがられるだけだ。
まあ、わたしもあまり人のことは言えないけど。


(*゚-゚)「それは……」


しぃは下を向き、口ごもる。
ああ、またこの流れだ。わたしは心の中でため息をついた。


17 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:11:32.02 ID:ilYztGwp0
つーがギコの話を出し、しぃはそれをはぐらかす。
だけどつーはしぃにしつこくギコの話をふる。しぃ困る。


毎日のように続くこの流れに、わたしはうんざりしていた。
ギコの話をしつこくふるつーもうざいけど、しぃもなかなかなうざい。
ギコのこと、好きなら好きって言えばいいのに。わたしはしぃのはっきりしないところが大嫌い。

この流れがこのまま続くと姉妹喧嘩になる。
喧嘩において、第三者ほど辛いことはない。仕方なく私は流れを変えるのだ。



m9ξ゚听)ξ「あ、ねぇあれみて!」

(*゚∀゚)「ん?」

ξ゚听)ξ「オワタチャック全開」

(*゚ー゚)(*゚∀゚)「きめぇwwwwwwwww」


19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:12:44.76 ID:ilYztGwp0

わたしがするのはこれだけのこと。
これだけのことで彼女達の流れはオワタ先生の下着についてに変わるのだ。


__ちょっと破れてるね。色合い、きもい!つー、あれパパと色違いじゃない?マジで?あれはない。


赤と黒のしましま模様のトランクスを見ながら思う。なんて、なんて単純なの。


30 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:25:13.41 ID:ilYztGwp0



チャイム「きんこんかんこーん」


先生「はーいみなさんさようなら」

みなさん「さようなら」

あれ?これは

( ^ω^)「ツン、新しいゲーム買ったお!うちにきてやるお!」

ξ゚听)ξ「しょうがないわね、一緒にやってあげるわよ」


たしかわたしが小学四年生の時だ。


33 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:26:28.19 ID:ilYztGwp0


(;^ω^)「アーッ!ジョゼット、ゴキブリ食べちゃらめえぇぇ!!」

ξ゚听)ξ「猫は……そう!なげるのよ!」

わたしもブーンも楽しそうにゲームをやってる。64、すごく懐かしい。


ξ゚听)ξ「これ、難しいわ。ほかのにしましょう」

( ^ω^)「おっおっ」


この頃は楽しかった。ほんとうに楽しかったんだ。
少し前から、男の子たちのわたしにたいするいじめは無くなっていた。
わたしは毎日、日が暮れるまでブーンと遊んだ。
ブーンの家で。公園で。私の家で。

こんな日々がずっと続くと思っていた。



34 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:27:53.47 ID:ilYztGwp0
(;^ω^)「もうすぐお食事会がはじまっちゃうお!」

ξ#゚听)ξ「わかってるわよ!ピカチュウ!十万ボルト!!」

~(@^w^@)~「ピカチュ?」


とぼけるネズミ。そういえばこんなゲームあったっけ。

(;^ω^)「ツン!お食事会!」
ξ#゚听)ξ「んあー!この馬鹿!電気ネズミ!」

~(#^w^)~「ピカチュ!」


電気ネズミという単語に反応し、ピカチュウは般若のような形相でこちらを睨みつけてきた。
あ、怒ってる、と思う間もなく……


37 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:29:14.09 ID:ilYztGwp0



ξ゚听)ξ「ぎゃあ!」

ビガヂュウの十万ボルトでわたしは跳ね起きた。
あの地獄耳ネズミ、悪口だけは聞こえてやがる。ってそうじゃなくて。

ξ゚听)ξ「なんだ、夢か…」

昨日といい今日といい、どうしてブーンの夢ばかり見るのだろう。
時計を見ればまだ6時半。いつもより30分早く起きてしまった。
もっと寝たいと思うけど、体はそうは思わないらしい、バッチリ目は覚めていた。
ここで無理してもう一度寝ると、次起きたときはめちゃくちゃ眠くなる。なんでだろう。

とりあえずわたしは顔を洗い、学校にいく支度を始めた。



38 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:30:28.79 ID:ilYztGwp0


ξ゚听)ξ「いっちばんのり!」

朝早く学校に来るのは、なかなか気持ちがいい。
誰もいないガランとした教室。
外ではハンドボール部とサッカー部が、体育館ではバスケ部とバレー部が、今日も朝練に励んでいる。
こんな早くからご苦労なこった。ちなみにわたしは美術部。いわゆる幽霊部員である。まあ、基本だよね。


ξ゚听)ξ「暑いなー」

五月の初めなのに、最近の暑さは異様だ。
地球温暖化を感じつつも、窓を開けてカーテンを閉める。
風でカーテンはすぐめくれちゃうけど、なんとなくいつもこうする。

みんなが来るまでは、まだそこそこ時間がある。
せっかく一人なんだし、わたしはあれをやることにした。


40 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 16:32:39.20 ID:ilYztGwp0

ξ゚听)ξ「長岡…」

わたしはクラスの中心格とも呼べる男子、長岡の席の前に立つ。
彼はその明るい性格からか男女問わず人気だ。
でも


ξ#゚听)ξ「死ね!このっ!おっぱいおっぱいうるせぇんだよ!」


わたしは彼が大嫌いだ。

机を蹴り、思い付くかぎりの汚い言葉を叫ぶ。死ね、死ね、死ね、死ね…


ξ゚ー゚)ξ「ふぅ」


10分くらいそうしていたら、さすがに足が疲れてきた。
幼稚だとは思うけれど、これをするとすっきりする。でも物に当たるのは良くないかな?
わたしは曲がった長岡の席を直し、自分の席に戻った。

彼のことは大嫌いだけど、死ねとまでは思わない。
わたしはボギャブラリーが豊富じゃないから、彼にたいして相応しい言葉が出てこないのだ。
うざい以上死ね未満。思いつかないから、死ねを選んだ。
結局はわたしも単純だ。


70 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:03:11.34 ID:ilYztGwp0
つーがくるまで何しようかな。そういえば今日は英語の単語テストがあったっけ。よし、その勉強をしよう。

ξ゚听)ξ「目置く 目置く 目置く・・・」

単語をノートに書きながら言う。英語の勉強の基本だ。
昨晩知った目置くと言うと発音の良いミルクに聞こえるという情報は、なかなか役に立つ。
さて、次は

ξ゚听)ξ「エレジィ エレジィ エレ」


(;^ω^)「お」


お?

ドアが開いていた。困ったような顔で鞄を持ったまま立っているブーン。
聞かれてた。今の絶対、聞かれてた。


気まずい沈黙の後、ブーンは席に着いた。


71 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:04:46.28 ID:ilYztGwp0
なんかイライラする。聞かれてた、聞かれてた、聞かれてた!
教室でブツブツ独り言を言いいながら勉強する姿を見られてた!

別にブーンが悪いわけじゃない。
ただ、なんとなくむかつく。ブーンと同じ場所にいたくない。

席から立ち教室から出ると、入り口で朝練が終わったサッカー部とすれ違った。
長岡の姿が目に入り、わざと聞こえるように舌打ちをする。

_
( ゚∀゚)「んだ?あいつ、感じわりー。おっぱいちっちぇーくせに」

(’e’)「朝からブスに会っちったよ。いこーぜ」


ブスはどっちだ、この老け顔!

イライライライラ

何も考えなくても、足はどんどん勝手に進んでくれる。今はそれが有難かった。


73 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:05:50.92 ID:ilYztGwp0



ξ#゚听)ξ「はぁー」

昇降口の横にある中庭につくと、足は動かなくなった。
そのままわたしは地面に座る。

ここはわたしのお気に入りの場所。
緑に包まれた空間にポツンとある、水の出ない噴水。
横に繋がっている池には小さな鯉が泳いでいる。
やっぱりここは好きだ。


ξ゚听)ξ「すぅー はぁー すぅー はぁー 」

大きく深呼吸をすると、イライラは治まった。
わたしの気持ちもだいぶ落ち着いてきた。

わかってる、ブーンは、悪くない。
長岡やサッカー部だって、わたしが舌打ちをしたから、あんな酷いことを言ったのだ。
わかってる、悪いのはわたし。
わかってはいるけど……

体のどこかから、またイライラが湧いてきた。


74 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:07:10.46 ID:ilYztGwp0
ξ゚听)ξ「わたし、ばかみたい……」


勝手に怒って、勝手にイライラして。
ほんとうに、ばかみたい。


35分を知らせるチャイムが鳴ったから、わたしは教室に戻ることにした。
40分までに教室に入らないと遅刻になっちゃうのだ。

昇降口に向かって歩く。少し、後ろを振り返ってみる。
緑の中で泳ぐ鯉。ずっと中庭に居たかった。



75 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:08:48.40 ID:ilYztGwp0
(*゚∀゚)「ツンー、テストどうだった?…うわっ、顔こわいよ」

昼食の時間。わたしの顔はこわいらしい。
夢の中ので見たピカチュウの顔と、どっちがこわいかな。

ξ゚听)ξ「普通、普通。つー、自信ありげじゃん。良かったの?」

(*゚∀゚)「えへへ、まぁね」

ξ゚听)ξ「いいなーw」


普通なんてうそ。ほんとは全然だめだった。
一時間目の国語も、二時間目の社会も、まったく頭に入ってない。

ξ゚听)ξ「だいたいさー、モナ先の発音わかりにくいんだよね」

(*゚∀゚)「あるあるw」

ごめん、モナー先生。本当はただの良い訳。
つーと雑談をしていると、しぃがやってきた。三人そろってお昼ごはん


77 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 1 :2007/05/05(土) 18:10:20.71 ID:ilYztGwp0
ふと思う。
この子達といたって楽しくないのに、どうしてわたしは一緒にいるんだろう。
どうして…… 本当は、わかっている。でも心のどこかで認めたくないんだ。
それを認めたら、わたしはここにいる大勢のクラスメイトと同じになってしまう。 そんなのは嫌だ。

__この子達といて、楽しくないわけじゃない。

心の中でつぶやく。その声は、まったく感情がこもっていなかった。



帰り学活で返ってきた単語のテストは、ミルクしか書けていなかった。
つーがテストを片手に笑いながらこっちに来る。
点数は、折って隠した。


2 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:52:03.73 ID:NapV5mxv0

( ^ω^)「ツン、今日も64やるお!」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったわよ」


まぶしい太陽の下、ランドセルを背負いながら走る男の子と女の子。

忘れるわけがない。これは、わたしが小学六年生のころの記憶だ。



ξ゚听)ξ「ねぇ、今日はほかのことやらない。ブーンと遊ぶと、ゲームばっかりじゃない」


ある日、放課後の教室でわたしはブーンに言った。
べつに、ほんとうに他のことがやりたかったわけじゃない。
軽い気持ちで、なんとなく言ったのだ。


3 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:52:29.53 ID:NapV5mxv0
( ^ω^)「ほかのこと……?ツンは他に何かやりたいことがあるのかお?」

ξ゚听)ξ「そういう訳じゃないけど……」

( ^ω^)「だったらいいじゃないかお。今日もゲームするお」


相変わらずマイペースなブーンに少しカチンときたけれど、それくらいは気にしない。



__気にしない、はずだった。


4 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:53:07.94 ID:NapV5mxv0
「デレさんかわいそー」


ξ;゚听)ξ「え?」


男の子の、声が聞こえた。
ブーンは気づいてないのか、ランドセルに教科書を詰め込んでいる。


( ・∀・)「いまどき64しかもってないようなやつと、ゲームなんてやりたくないよな」

( ^Д^)「なぁ、今日俺んちでPS2やろーぜ!」

/ ,' 3 「やろやろw」




5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:53:29.31 ID:NapV5mxv0
教室の端で、男の子3人組のグループが、わたしたちを馬鹿にするかのようにこっちを見ていた。
いや、正しくはわたしたちじゃない、ブーンだ。彼らの目にははっきりとブーンの姿が映っていた。


その時わたしは、怒りを感じるべきだったのであろう。
大事な友達を馬鹿にされて悔しい、そう思うべきだったんだろう。


だけどわたしは、恥ずかしいと思った。

男の子に馬鹿にされているブーンと一緒にいるのが、恥ずかしいと思ってしまった。


6 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:54:23.41 ID:NapV5mxv0
( ^ω^)「おまたせだおー。帰るお!」

ξ////)ξ「うん」

( ^ω^)「お?どうしたお?ツン、お顔が真っ赤だおwww」

ξ////)ξ「べ、べつに何でもないわよ!早く帰るわよ!」


わたしはブーンの返事を待たず、男の子達の視線から逃げるように教室から飛び出した。
背中にぶつかるブーンの声。ツンデレだおー。

うるさいうるさい。そんなんじゃない。何も、わかってないくせに!




この日からわたしは、周りの、わたしとブーンを見る目が気になってしょうがなくなってしまった。


7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:55:08.75 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「やっぱり、夢か……」


聞きなれた目覚まし時計の音で目を覚ます。
またブーンの夢だ。明日も見るのだろうか。
明日は、明日は見たくない。
だって、このまま続くと明日見る夢は……


ξ゚听)ξ「……やめよ」


考えていてもしょうがない、見るときは見る。それだけだ。
わたしはぼんやりする頭をなんとか働かせて、学校に行く支度をはじめた。

スクバに教科書やペンケースを詰め込み、制服に着替える。


8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:55:38.07 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「リップクリーム、リップクリームッと……」


リップクリームは学校ではあまり使わないけれど、朝と夜は必ずぬる。
カサカサの唇になりませんように、という願いを込めて。

ジャニーズの宣伝で大人気のセセラ。
スティックをのばすと、下のほうにアルファベットが彫ってあるのが見えた。
TとB。つーとビロード君か。つーがこのリップクリームを使う前に彼女の恋は終わった。
イニシャルのおまじないはまったく効果がないのかもしれない。


ξ゚听)ξ「いってきまーす」


母はパートで朝から出かけている。
父も仕事で、わたしが起きるころには家には誰もいない。
空っぽの家にわたしの声はむなしく響く。なんだか朝から気分が沈んだ。


9 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:56:03.08 ID:NapV5mxv0


教室に入るなり始まるつーのマシンガントーク。


(*゚∀゚)「おはよー!ねえねえ昨日のMステみた!?」

ξ゚听)ξ「みたみたー」


ほんとは見てない。


(*゚∀゚)「やっぱKAT-TUNやばいよね!」

ξ゚听)ξ「ねーw仁が帰って来たもんね!」


カツーンだかケツーンだか知らないけど、つーはジャニーズに夢中だ。
いわゆる仁担というもので、春魂とやらにも行くらしい。
春魂っていうのは、春のコンサートのこと。どうでもいいけど。


10 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:56:43.89 ID:NapV5mxv0
(*゚∀゚)「あ、一時間め保体だ!着替え行こー」

ξ゚听)ξ「うんっ」


保体はわたしの嫌いな科目の一つ。
隣にいるつーはごぼうみたいに細い足なのに、50メートルは女子トップだ。
しぃは遅いのに、なんでだろう。ちなみにわたしも遅い。しぃほどじゃないけどね。




ξ゚听)ξ「えいっ!」


バランスを崩さず綺麗に着地。
うん、我ながらなかなか。誰も並んでいないから、もう一度やろう。


11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:57:47.32 ID:NapV5mxv0
今、授業では器械をやっている。自分でいうのも何だけど、わたしは平均台が得意。
V字バランスもスキップもターンもなんでもこいだ。
平均台をやってる時はすごく楽しい。自分が一番輝いている瞬間だと思える。

この気持ちはまるで


ξ゚听)ξ(まるで……ブーンと遊んでたころみたい?)


まさか、と思った瞬間だった。
一瞬にしてわたしの世界が変わりだす。
ジェットコースターに乗ったときよりも早く視界が回る。
お尻の下には何もない。わたしを支えてくれるはずの平均台が、ない。

何が起こったかわからないまま、わたしはマットに落ちた。


12 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:58:22.36 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「ひでぶっ!」


右半身に痛みが走る。
ほっぺはジンジン熱く、右腕は全体重がのしかかり重くて痛くてしょうがない。
まぁ、マットとキスしなかっただけマシか。
痛む体を引きずって、なんとか壁際まで歩く。

平均台から落ちた、ださい!体よりも、周りの視線が痛かった。
もう絶対にV字バランスをする時は、他の事を考えない


13 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 12:58:47.10 ID:NapV5mxv0
(;゚∀゚)「ツン、へーきー?」

ξ゚听)ξ「うん、なんとかー」


跳び箱からつーがやってきた。わたしを心配そうに見る。
つーのこういうところは好き。
ほんとうにわたしのことを心配してくれているのが、目を見ればわかる。


(;゚∀゚)「保健室行く?ついてこーか?」

ξ゚ー゚)ξ「自分でいけるよ、ありがと」


こういうところは嫌い。
これはわたしを心配して言ってるんじゃない。
ついていけば、授業がサボれるから言ってるのだ。やっぱり目を見ればわかる。

体育館から出る時、長岡が笑いながらわたしを見ていた。


ブーンが、心配そうにわたしを見ていた。


14 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:00:10.52 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「あ、これ……」


保健室へと続く一階の廊下。一階なんて、あまり来ない。
けど、たまに来てみると良い収穫があったりする。
今日もあった。


ξ゚听)ξ「ビロード君の絵?」


図書室の壁に貼ってある、わたしの背よりも大きなキャンバスに描かれた油絵。
森の中で、どこかで見たことあるような少女が微笑んでいる。その横には小さな泉。
ビロード君って、絵がうまいんだ。でも、それより右下にあるビロードのサイン。


15 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:00:37.16 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「イニシャル、Vなんだ」


おまじないも効かない訳だ。

つーは彼のイニシャルを間違えていた。
仮にも、気になる人なのに。

気になる人?つーは彼のことが好きだったのだろうか?
好きな人の、イニシャルも知らないの?


ξ゚听)ξ「好きって……なんだろう」


こんなこと、初めて考えた。


17 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:01:23.27 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「ペニサスせんせー」


保健室のドアをたたく。コンコン、反応なし。
よくみると、電気が点いてない。これはまさか!


('、`*川『先生はいません♪怪我をした人は職員室の先生に診てもらってね』


ひっくり返ったドアプレート。ちょっぴり泣きたくなった。
保健室の先生って、どうしてこうも居ない時が多いんだ?
怪我をした人は職員室の先生に診てもらってね。実際に職員室に行く生徒なんていない。


18 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:02:00.50 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「どうしようかな」


実は、体はもうあまり痛くなかった。
平均台から落ちるなんてそんなもん。跳び箱から落ちるほうが辛い。
でもこのまま体育館に戻るのは嫌だ。なんとなく、一度出ると戻りづらい。

授業が終わるまで、あと三十分。始まってからまだ十五分しかたっていない。
もう一度つぶやく、どうしようかな。

不意に、背中に暖かい陽光を感じて振り返る。
窓の外が眩しい。今日は良い天気、というより暑い。
涼しいところに行きたい気分だ。涼しいところといったら、あそこしか思いつかない。


19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:02:34.24 ID:NapV5mxv0
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ」

こんにちは、噴水。こんにちは、鯉。
やっぱり中庭は良い。真上に太陽はあるけれど、木々が影をつくっているので暑くない。
池の中を気持ちよさそうに泳ぐ鯉も、とても涼しげ。 ここはわたしのまほろばだ。

ごろりと地面に寝転がり、目を閉じる。
授業が終わるまで、ここで眠るのも悪くない。


ξ゚听)ξ「……眠り?」


パチンと目を開く。眠っちゃだめだ。
眠ってしまえば、夢を見る。今度、見る夢はきっと……


20 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:03:10.87 ID:NapV5mxv0
ξ#゚听)ξ「もうっ!」


これじゃ朝の繰り返しだ。見るときは見るんだ。


自分に言い聞かせても、やっぱりだめだった。

一度気になったら止まらない。
明日、夢を見る。明日、夢を見る。明日、夢を見る。


ξ゚听)ξ「……」


中庭の悪いところ、見つけた。
ここにいると、妙に感傷的になってしまう。

やっぱりここはわたしのまほろばじゃないのかも。なんか、ちょっと違う。

居心地の悪さを感じ、わたしは中庭を後にした。
さっきまでは、あんなに好きだったのに。今はこの場所に居たくなかった。


21 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:03:44.75 ID:NapV5mxv0


ξ゚听)ξ「そうだ 京都、行こう!」


じゃなくて。


ξ゚听)ξ「そうだ 屋上、行こう!」


屋上。わたしがもっとも青春を感じる単語だ。
学生なら誰もが憧れる場所だと思う。
自由に出入りできる学校もあるみたいだけど、うちの学校は立ち入り禁止。

立ち入り禁止、なんだけど……


22 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:04:15.93 ID:NapV5mxv0
ξ;゚听)ξ「ふぅ、はぁはぁ、ふぅ」


わたしたちの教室は二階にある。二階はラッキーな場所だ。

教室の窓から出てベランダを一番奥、養護クラスの方まで進むと、大きな緑の屋根がある。
ベランダから屋根に飛び降りて、この屋根を上ると屋上に着くのだ!
屋根は防水用にゴム素材のカバーをかぶっているから、登りやすい。


ξ゚听)ξ「ついた!」


屋上にはあっさりと着いた。実はここに来るのは初めて。

綺麗な青空の下、広い屋上にわたしだけ。
なんだかすごく気分が良い。歌でも歌いたくなった。いや、歌わないけど。


24 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:05:10.42 ID:NapV5mxv0
ξ゚听)ξ「あおいそらー」


なんとなく叫んでみる。綺麗な空。
見ていると、嫌なことをすべて忘れられそう。


ξ゚听)ξ「あおいそらっ」


大声で叫ぶ。心の中のもやもやを振り払うように。


ξ;凵G)ξ「あおい……そらっ……!」


わかっている。

こんなの、嫌なことから逃げるための、現実逃避でしかないこと。

大声で叫んでも、心にあるもやもやは消えないこと。


25 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 2 :2007/05/06(日) 13:05:43.26 ID:NapV5mxv0
ξ;凵G)ξ「うっ……うっ……」


涙が止まらなかった。
明日がこわい。夢を見るのがこわい。見たくない。

どうすれば逃げられる?どうすれば、見ないですむ?


ξ;凵G)ξ「明日なんて……来なければいい……」


涙が奏でる水色の調べ。
一粒、一粒、落ちるたびに、わたしの胸に沈んでいく。

ほんとうにこわいのは、明日なの?


涙は止まらない。

美しい、大きな空を見て思う。


ここもわたしのまほろばじゃない、と。


2 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:02:37.63 ID:rFuknVND0
⌒*(・ω・)*⌒「デレさんの喋りかたって変わってるよね。古風?っていうか」

⌒*(・∀・)*⌒「おばさんくさいよねー」

ξ゚听)ξ「……」

⌒*(・∀・)*⌒「あ、きこえてた?ごめんね!」


从'ー'从「デレさんと内藤君、また一緒にいるよ〜」

从 ゚∀从「男と女なのにな」

从'ー'从「変なの〜」

ξ゚听)ξ「……」


( ∵) 「……」

ξ゚听)ξ「……」


3 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:03:04.91 ID:rFuknVND0
これは、もう六年生も終わるころだ。

わたしだって馬鹿じゃない。
わたしとブーンがクラスで浮いてることくらい理解できた。


( ^ω^)「お?ツンどうしたお?元気ないおwwww」

ξ゚听)ξ「別に」

( ^ω^)「元気出すおw笑ってwww笑ってwww君の笑顔が見たぁいwwww」

ξ゚听)ξ「ブーン」

( ^ω^)「お?」



ξ゚听)ξ「もうやめましょう、一緒に遊ぶの」


5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:03:43.88 ID:rFuknVND0
(;^ω^)「ツン、どうしたんだお?いきなり」

ξ゚听)ξ「いきなりじゃないわ。前から思ってたの。変よ、わたし達だけクラスで浮いてる」

(;^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「バイバイ」


ツンどうして!!待って!

後ろから聞こえる声は無視した。
わたしは自分の思いを一方的にぶつけて彼の元から去った


6 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:04:30.53 ID:rFuknVND0
ξ;凵G)ξ「……」


帰り道、一人で泣いた。
いつもならブーンと一緒に帰る道。
だけどわたしは世間体を気にして、彼との友情を捨てたんだ。

全部、ぜんぶわたしが悪い。
ばかなツン。
泣くくらいなら世間体なんて気にしないで、ブーンと仲良くしてればよかったのに。


ξ;凵G)ξ「ブーン……ごめん……」




その日以来、わたしとブーンが一緒に遊ぶことは無かった。


7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:05:15.21 ID:rFuknVND0


7時。目覚ましが鳴る。わたしは起きる。
いつもと何も変わらない朝。


ξ゚听)ξ「ただの夢じゃん」


嫌だ嫌だと言っていても、結局は見てしまった夢。
けれども、嫌なことというのは終わってしまえばなんでもない。
どうしてこんな小さなことを嫌がっていたんだ?と思うほど。

あんな夢、もう昔のことだ。


8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:05:51.59 ID:rFuknVND0

ξ゚听)ξ「……雨か」


昨日はあんなに晴れてたのにね。

雨の日は好きだ。
傘を差していると、すれ違う人に顔を見られないですむ。
顔を見られるのは、あまり好きじゃない。

それに、

__雨がふった後には、虹がかかるんだお。


ξ゚听)ξ「っ!」


まただ。最近のわたしはだめだ。
すぐにブーンのことを思い出してしまう。
忘れようとしてるのに。


9 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:06:26.88 ID:rFuknVND0
ξ;凵G)ξ「学校に行く支度しなきゃ」

ξ;凵G)ξ「……あれ?」


リップクリームをぬる指に、冷たい何かが垂れてきた。
わたし、泣いてる。

おかしいな、こんなに泣き虫だったっけ。

わたし、ほんとうにだめだ。


今日は学校を休もう。
わたしは涙でぬれた指でつーへのメールを打った。


10 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:07:36.30 ID:rFuknVND0


ξ゚听)ξ「味噌ラーメンうめぇ」


涙がすっかり乾くころにはお腹が空いていた。
とりあえず味噌ラーメンを食べる。ラーメンは好きだ。


ξ゚听)ξ「ここでポイント!」


スープは、とっておく!


ξ゚听)ξ「ごちそうさま」



11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:08:18.98 ID:rFuknVND0
ここからが重要だ。
先ほどとっておいたスープ、これを鍋に入れて、中火にかける。
ぶくぶくいうほど熱くなったら、白米を投入。茶碗に一杯ぐらいね。
スープとご飯がよく混ざったら、といた卵をダイビング!
ここからが注意だ。卵を入れたら、もう絶対にかき混ぜちゃいけない。
蓋をして、しばらく煮込むのだ。卵の硬さはお好みで。
味が薄い場合は、醤油を入れても良い。
味噌スープに醤油でも、意外といけるんだよ。


ξ゚听)ξ「できたぁ〜」


熱々のうちにどうぞ。冷めてもおいしいけどね!


12 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:08:58.67 ID:rFuknVND0

おじやを食べながら思う。何しよう。

わたしはずる休みのプロだ。
両親が働きに出ている子は、大抵そうだと思う。
親が居ないと休みやすいのだ。

いつもならゲームをするけれど、今日は何となくそんな気にならない。
漫画でも読もうかな。

ごろごろもぐもぐだらだら

ねっころがって、おじやを食べながら漫画を読む。BGMはテレビ。
実に楽だ。ずるやすみは素晴らしい。


13 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:09:38.10 ID:rFuknVND0

ξ゚听)ξ「じょーじあさくらぁー最高ー!」


誰も家に居ないと、変なこと口走りたくなるよね。



ξ゚听)ξ「ふぅ……」


漫画は読み終えた。いいともは終わった。おじやも完食。
また暇になってしまった。


ξ゚听)ξ「お昼寝でもしようかな」


どうせもうあの夢は見てしまったんだ。
これ以上悪い夢なんて、ない。

目を閉じると、すぐに睡魔はやってくる。こんにちは。
冷たいフローリングの床の上、わたしは眠りに落ちた。


14 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:10:22.33 ID:rFuknVND0


制服を着た、たくさんの生徒。
幼さの残る顔には、期待と不安の色が浮かんでいる。


\(^o^)/「今からみんなには自己紹介をしてもらうよー」


先生の一言で教室の空気は変わる。

__やだー。何言おう?

ざわついたまま、出席番号1番の男子が喋りだす。


( ´_ゝ`) 「VIP小学校からきた兄者と言います。入りたい部活はパソコン部、趣味は……」


どうしよう。わたしの番なんて、あっという間にきちゃう。


15 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:11:10.75 ID:rFuknVND0
わたしが話すことを考えている間にも時間はどんどん過ぎていく。
前の席の男子が口を開いた。


( ゚∀゚)「ジョルジュ長岡です。VIP小学校からきました、好きなものはおっぱい!」


好きなものはおっぱい。女子も男子も笑い出す。
ごめん、ぜんぜん面白くない。


\(^o^)/「次ー、デレさんだよー」


きてしまった。わたしの番。


ξ゚听)ξ「ラウンジ小学校からきた、デレ つんこです」


震える声で一生懸命言った名前。


( ゚∀゚)「ちんこじゃん!」


16 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:11:55.55 ID:rFuknVND0
前の席の男子、長岡がちんこと言った瞬間、クラスメイトは一斉に笑い出した。

ショックだった。自分の名前のこと、気にしてるのに。
それ以上に、目の前にいる男子に対して怒りが沸いた。
なんなのこいつ。初対面でいきなり。

長岡のことは、今でも嫌いなままだ。



それからの学校生活は、まぁそれなりのものだった。
わたしには友達ができた。そう、つーとしぃ。
女の子の友達は初めてだから、すごく嬉しかった。

でも、毎日どこか楽しくなかった。
小学校のほうが、楽しかったよ。

ブーンとは違うクラスだった。
しぃから聞いた話によると、彼は友達が出来なかったらしい。
別にいじめられていたわけではないが、いつも一人でクラスでも浮いていたとか。


17 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:12:49.03 ID:rFuknVND0


_赤や緑の菊の花びら 指さして思うことは
__ただ1つだけ そう1つだけど
___”つかれてるんなら やめれば…”


携帯からするかわいい歌声で目が覚めた。
aikoの設定はつーかしぃ。どっちだろう。


『具合レ£平気?
 〃ノ冫ヵゞレヽTょレヽ`⊂01囚τ〃±ゐUヵゝッT=∋』


読みにくいギャル文字、つーだった。
わたしのことを心配してくれるのは嬉しいけど、どうしても下の文章が気になる。
1人で寂しかったよ。


19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:13:43.14 ID:rFuknVND0
つーはいい子だ。わかってる。
いい子だけど、悪いところもある。これもわかってる。
そしてわたしは、彼女の悪いところばかり見てしまう。
わたしは嫌な子だ。


ξ゚听)ξ 「わかってる」


わかってるけどどうにもならないことが今のわたしには多すぎる。
そもそも、何がわかってるんだ?
ほんとうは、何もわかってないんじゃないか?

一つがわからなくなると、すべてがわからなくなる
わからない。わたしは何がしたいのか。


20 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:14:19.65 ID:rFuknVND0
ξ;凵G)ξ「どうすればいいの…」


勝手に出た声にぎょっとした。かすれてる。わたし、また泣いてる。

泣き虫なんて大嫌いだ。
泣けば、誰かが心配してくれると思ってる。
誰かが助けてくれると思ってる。
わたしだってきっとそうだ。
こうやって泣いてれば、神様が同情してくれて、またブーンと仲良くできると思ってる。
幼い頃のように、ブーンが助けに来てくれると思ってる。
ブーンがわたしと仲良くしたいと思っているはずがないのに、心の隅で期待しているのだ。


ξ;凵G)ξ「馬鹿で泣き虫で妄想家のツン」


あんたなんて、大嫌い。


21 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:14:59.71 ID:rFuknVND0


ξ゚听)ξ「……」


夜、眠れなかった。お昼寝をすると必ず眠れなくなる。
でも、ちゃんと寝ないと朝起きれなくなっちゃう。
さすがに明日は学校に行かないとね。


ξ゚听)ξ「わたしには落ち着きが足りないなぁ」


さっきは感情が爆発して泣いてしまった。
人は一度泣き出すと、冷静に物事を考えることが出来なくなってしまう。


今のわたしがやるべきことは、泣くことじゃない。
それだけはわかる。ではわたしは何をすればいいんだろう。


23 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:15:32.36 ID:rFuknVND0
悩みを並べてみる。わたしの悩みって何だっけ。

まず、ブーンと仲良くしたいってこと。
前から思っていたことだけど、特に最近はその気持ちが強かった。
でもこれはきっと無理だ。ブーンがわたしと仲良くしたいと思うはずがないから。

次は、つー達との関係。別に嫌いな訳でもないけど、一緒にいたい訳でもない。
でも、わたしの都合で彼女たちから離れていくというのはあまりにも勝手だ。


24 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 3 :2007/05/07(月) 19:16:11.65 ID:rFuknVND0

なんだ、これだけか。
並べてみたら簡単。たった二つしかなかった。


ξ゚听)ξ「結局、なんの解決にもなってないのにね……」


ぷよぷよのように簡単に、並べて消えてくれれば良いのに。

オワニモ、と小さな声で呟いた後で、悩みが二つしかなかったことを思い出した。


3 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 22:54:30.57 ID:Amn07e5X0
「わかってるお」


ブーン?


「ツンは僕とは違うんだお」


ここは、見慣れたブーンの部屋だ。見慣れたはずなのに、どこか懐かしくてたまらない。
アニメのキャラのフィギア、よくわからないポスター。片付けてない64。
最後に遊びに来た時と、何も変わっていなかった。
それが、なんだかとても嬉しい。


( ;ω;)「僕なんかとは…」


ベッドの上で、ブーンは泣いていた。これはいつの事だ?
ブーンが制服を着ているから、中学になってからという事ことは分かる。
わたしはぼんやりとブーンをみていた。
ブーンが、次の言葉を発するまでは。


( ;ω;)「ツンは楽しそうだお。僕が話しかけても、きっと迷惑だお


5 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 22:56:26.07 ID:Amn07e5X0



い ま な ん て い っ た ?





6 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 22:57:45.16 ID:Amn07e5X0
( ;ω;)「……」

ξ゚听)ξ「  !」


違う!
大きな声で叫んだつもりなのに、わたしの口から声が出ることはなかった。
違う、違う、ブーン、違う。違うの。


ξ;凵G)ξ「  !」

( ;ω;)「僕とツンはもう、住む世界が違うんだお……」

ξ;凵G)ξ「   」


叫んでも、叫んでも出るのは涙だけ。
意味がないとは分かっていても、わたしは叫ぶのをやめられなかった。


7 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 22:58:35.30 ID:Amn07e5X0


ξ;凵G)ξ「違う!」


やっと声が出たと思ったら、そこはもうブーンの部屋じゃなかった。
ここがどこだかはすぐ分かる。わたしの部屋だ。

ああ、これは夢だっけ。
体を動かそうとして気づく。体がない。


ξ゚听)ξ「    ?」


あれ?と言ったつもりだったのに、またもや声は出なかった。
そして気づく。目の前に、わたしがいる。


ξ;凵G)ξ「違う!違う……こんなんじゃない……」


わたしは枕を壁にたたきつけ、ぬいぐるみをなぐる。


8 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 22:59:26.43 ID:Amn07e5X0

思い出した。これは、一年前のわたしだ。
わたしがぼーっとしてる間も、昔のわたしは暴れている。
今のわたしはいわゆる透明人間だ。透明人間、意外と不便。


ξ;凵G)ξ「っ!」


わたしの暴走は、次第にエスカレートした。
壁に貼ったaikoのポスターをはさみでぐちゃぐちゃに切り、CDを半分に折って割りだす。
aikoが無くなったらYUKI、スピッツと、飽きることなくCDを割る。
破片が足の裏や手のひらに刺さり血が流れるが気にしない。
CDを全て割るとペンケースからコンパスを出し、壁に向かって投げる。
それは壁に刺さらず落ちて、掛け布団に刺さった。

どうしてこんなにわたしが荒れているか。
今でもはっきり覚えてる。つーとの大喧嘩だ。
あれはほんとうに酷かった。しぃがいなかったら、仲直りなんて出来なかったと思う


9 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:00:09.51 ID:Amn07e5X0
きかっけはとても些細なことだったが、わたしもつーもお互い気が強かったから、謝る気は無かった。
喧嘩したまま何日も過ぎ、ついに事件は起きてしまった。

昼食の時間、しぃと三人でいたときの事。
しぃが居たにもかかわらず、つーとわたしの口喧嘩は始まった。
ご飯の食べ方、生活態度、ノートのとり方……くだらない喧嘩は続く。
そして、呆れ顔のしぃの横で、わたしの態度に腹を立てたつーが大声で言ったのだ。


(#゚O゚)「あんたの名前、気持ち悪いのよ!!」


教室の、時間が止まった。

一呼吸置いて、あふれ出す音。
長岡たち、サッカー部の笑い声。
つーを叱り付けるしぃの怒鳴り声。
女子の、わたしを哀れむ、しかし、どこか現状を楽しんでいるヒソヒソ声。


10 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:00:55.45 ID:Amn07e5X0
ショックだった。長岡に名前を馬鹿にされたときの、何十倍も悲しかった。
つーのことは、友達だと思ってた。すくなくともそう信じていた。
つーはわたしの名前を、ずっと気持ち悪いと思っていたのだろうか。

わたしは泣きながら教室を飛び出し、そのまま家へ走った。
そのまま感情に身を任せ、今に至る。


どれくらい経っただろう。
ボロボロになった部屋で、ようやくわたしは動きを止めた。
急に静かになった部屋に響く嗚咽。昔のわたしがしゃくりあげるたびに、わたしの胸は痛んだ。


ξ;凵G)ξ「どうして……なんで……わたしだけ……」


そうだね。どうして、いつだってあなたは悲しんでいるの。


11 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:01:36.92 ID:Amn07e5X0

ξ;凵G)ξ「喋り方だって直したっ!目立つこと、何もしてないのに……なのにっ!」


もういいよ。見てられない。
ほんとうに、どうしてわたしだけ苦しまなければならなかったんだろう。


ξ゚ー゚)ξ「もういいよ」


さっきまで出なかった声。不思議と、出せるようになっていた。


ξ゚ー゚)ξ「もういい」


多分、わたしの声は、目の前のわたしには届いていないだろう。
だけど、わたしは言葉を続けた。


12 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:03:54.59 ID:Amn07e5X0

ξ;ー;)ξ「もう……悲しまなくていいよ」


ねぇ、その子そんなに良い友達じゃないよ。
悲しんでまで、傷ついてまで仲良くしなくても良いよ。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔に触れる。
きっと今のわたしも同じような顔なのだろう。
体なんて無いけど、触れる気がした。


ξ;ー;)ξ「泣かないで……」


13 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:05:11.33 ID:Amn07e5X0


ξ゚听)ξ「……」


急に目が覚めた。時計を見ると、まだ6時。
まぁ、昨日たくさんお昼寝したからこんなものか。

それより何より、わたしは頭が痛くてしょうがなかった。
鈍器で思い切り打たれたような痛み。
夢のせいだ。夢が全部悪いんだ、きっと。

夢に出てきたブーンは、確かにわたしに話しかけたがっていた。
夢に出てきたわたしは、確かに一年前のわたしだった。


ξ゚听)ξ「うーむ」


所詮は夢。夢だけど……もしもあれがブーンの本当の気持ちだったら……?

だとしたら、この間の朝、英語の練習中の時だって、ブーンはわたしに話しかけてくれようとしたんじゃ……


15 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:06:08.23 ID:Amn07e5X0
ξ゚听)ξ「やめやめ」


わたしの悪い癖。何でもかんでもすぐに自分の良いようにとる。
何だかわたしは、毎朝考え事をしてはやめてるような。


ξ゚听)ξ「まぁいいや」


学校の準備をするために、リップクリームをぬり、ポケットにしまう。
リップクリームをぬってる間って、何となく好き。


ξ゚听)ξ「いってきまーす」


元気よくドアを開ける。今日もがんばらないとね。


16 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:06:59.75 ID:Amn07e5X0

(*゚∀゚)「ツン、体力ないなぁ。もう疲れたの?」

ξ;゚听)ξ「うん……ちょっと休むね」

(*゚∀゚)「はいはいw早くおいでよー」


保体は器械から陸上へ変わった。陸上は苦手。
1000メートルなんて、絶対走れないって。半分もいかないうちにダウンする。
1500メートルを走りきる男子なんて、化け物だと思う。

ヒラヒラと手を振りわたしの前から走り去るつー。
今朝あんな夢を見たからか、なんとなく距離を置きたくなってしまう。


18 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:09:57.07 ID:Amn07e5X0
ξ゚听)ξ「……暑いな」


ぎらぎらと照りつける太陽。ほんとうに暑い。汗が止まらない。

相変わらず頭は痛い。



ξ゚听)ξ「さぼっちゃおうか」


言って訂正。さぼるんじゃない、休むんだ。
頭が痛いし、なによりこっちの方がしっくりくる。


ξ゚听)ξ「休んじゃおうか」


そうしましょ。


19 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:10:57.72 ID:Amn07e5X0


一週間に二回も一階に来るなんて思わなかった。
でもよく考えると昇降口は一階にあるし、二階に行くには一階を通ってる。
まぁそういう意味で言ったんじゃないけど。

図書室の壁のビロード君の絵。
窓から見えるわたしの大好きだった場所。


いろんなものを通り過ぎて、保健室に着いた。
扉にかかったプレートは、ひっくり返っている。

('、`*川『先生はいません♪怪我をした人は職員室の先生に診てもらってね』

またか。でも、違和感。


ξ゚听)ξ「電気、点いてる……?」


誰かいるのか。まぁ、人がいてもちょっと休むくらい平気だろう。
そう考えてドアを開けた。それが間違いだった。


20 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:11:58.12 ID:Amn07e5X0




( ^ω^)「お……」




ブーンが、いた。



少しの沈黙。反射的にドアを閉める。

頭は叫ぶ。ドアを開けろ!ブーンと話せ!仲直りするチャンスだ!

だけど体は止まらない。
勝手に彼から逃げるためか、保健室の逆を向き走り出す。
嫌だ。なんでこんなことしなきゃならないんだ。
たまたま保健室で会っただけなのに。ブーンと話したいと思うのに。
なのに、なんでブーンから逃げちゃうんだ。


22 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:12:50.45 ID:Amn07e5X0
( ^ω^)「ツン!」


ブーンの声が背中にぶつかった。わたしを呼ぶ声、久しぶりに聞いた。
しかし体が止まることはない。なおもブーンは叫んだ。



( ^ω^)「ツンどうして!!待って!!」



ブーンの言葉は鎖のようにわたしに絡みついてきた。
体がもつれて倒れてしまう。感じるデジャヴ。あの時と同じ言葉。


(;^ω^)「だいじょうぶかお?」


後から走ってきてくれたのか、横にブーンが立っていた。
起き上がろうとして、体の痛みに気付く。



23 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:14:39.95 ID:Amn07e5X0

ξ゚听)ξ「痛い」

(;^ω^)「怪我しちゃったのかお?」


ブーンはわたしの手をとり立たせてくれた。

どうして、どうして優しくしてくれるの。今まで話しかけてこなかったのに。


ξ゚听)ξ「痛い!」

(;^ω^)「お?」

ξ;凵G)ξ「痛い痛いっ痛い!」


思わずブーンの手を振り払った。
小さな子供が駄々をこねるように地面に転がる。



24 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:15:26.41 ID:Amn07e5X0
痛い痛い痛い痛い痛い!!

ブーンは心配そうにわたしを見る。
でも、その度にわたしの心は痛むんだ。

ほんとうに痛いのは、体なんかじゃない。心だ。


ξ;凵G)ξ「いたいっ痛い!!」

(;^ω^)「ツン、だいじょうぶかお?」

ξ;凵G)ξ「大丈夫なんかじゃないっ!ばかっ!死んじゃえっ!!」

(;^ω^)「ツン……」

ξ;凵G)ξ「うぅ……痛いっ、痛いよぉ!」


口から出る酷い言葉。瞳から溢れる涙。

そのまましばらく泣いていた。
ブーンはずっとわたしの傍にいてくれた。


26 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:16:30.29 ID:Amn07e5X0


( ^ω^)「もう大丈夫かお?」

ξう听)ξ「うん」


保健室のソファーの上。わたしとブーンが並んで座っている。
どうしてこんな状況になっているんだろう。
ちょっと前まで、わたしとブーンは口も聞かなかったのに。


( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「な、なに?」


久しぶりにブーンと話す。声が裏返ってしまった。


( ^ω^)「ツンは僕の事、嫌いかお?」

ξ゚听)ξ「そんな事ない!」


悲しそうなブーンの表情に、思わず声を荒げる。


28 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:18:07.89 ID:Amn07e5X0
( ^ω^)「僕は、ツンは僕のこと嫌いなんだと思ったお」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「それで、僕なんかといちゃつまんなくて、話しかけたら迷惑だと思ってたお」

ξ゚听)ξ「うん……」

( ^ω^)「でも、昨日夢にツンが出てきたんだお。夢の中でツンは泣いてたお」

ξ゚听)ξ「うん」

( ^ω^)「それだけだお」

ξ゚听)ξ「そ、そう」


ちょっと拍子抜けした。
夢にわたしが出てきた。泣いてた。だから何だっていうんだ。

でもブーンの話を聞いて、少なくともブーンはわたしが嫌いじゃないということは分かった。

わたしもブーンと話したい。
今なら話しても平気。そんな気がした。


29 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:18:59.66 ID:Amn07e5X0
ξ゚听)ξ「あ、あのね」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「わたしもブーンに嫌われてると思ってた。だって、あんな酷いことしちゃったから」

( ^ω^)「気にしてないお」


少しブーンが焦った。どうやらこれは嘘らしい。
しぃと同じく、ブーンも嘘をつくと焦るタイプ。

ξ゚听)ξ「ブーンの話を聞いて安心したの。あぁ、ブーンはわたしのこと嫌いじゃないんだって」

( ^ω^)「当たり前だお」

ξ゚听)ξ「なんていうか……話しかけてくれて、嬉しかった」

( ^ω^)「おっ」


何だかこの会話がひどく悲しかった。三年間は、どうやら短くないらしい。
わたしとブーンは前のように話さなかった。どこか他人のように、距離を置いていた。


30 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:19:56.33 ID:Amn07e5X0

( ^ω^)「それじゃツン、お大事に……」

ξ゚听)ξ「あ、うん」


立ち上がるブーン。急に、わたしの心は冷えていった。
わたしたち、これで終わりなの?
何を話すこともない、ただのクラスメイトに戻っていくのだろうか。


ξ゚听)ξ「待って!」


気付いたら声を上げていた。振り向いてこっちを見るブーン。
ポケットに入れたリップクリームに手を伸ばし、祈るような気持ちでにぎる。
少しだけでいい、勇気をください。


31 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:20:53.53 ID:Amn07e5X0

ξ゚听)ξ「ブーンは、学校楽しい?わたしは、つまんないよ!」

( ^ω^)「お……」

ξ゚听)ξ「ブーンと遊んでた頃のほうが楽しかったよ!」


一気に大きな声でまくしたてる。少し疲れた。
わたしを見ていたブーンも口を開く。


( ^ω^)「ブーンも……ツンと遊んでた頃のほうが楽しかったお」

ξ゚听)ξ「じゃぁ!また遊ぼうよ!」

( ^ω^)「でも、ツンには友達がいるお!ブーンがいちゃ迷惑なんだお!」

ξ゚听)ξ「違うよ!」


夢と違う、今度は言えた。


32 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:21:54.25 ID:Amn07e5X0
ξ゚听)ξ「違うよ、わたし、一人が怖かったの。だから、つーたちと一緒にいたの」

ξ;凵G)ξ「わたしは卑怯者なの!」


ほんとうの気持ち。わたしの都合でつーたちと離れるのは勝手だなんて、ただの良い訳なんだ。
ただほんとうは、一人になるのが怖かっただけ。ブーンは、ずっと一人を耐えていたというのに。


ξ;凵G)ξ「ブーン、ごめん……」

( ;ω;)「ツン!」


わたしは泣いていた。ブーンも、泣いていた。


33 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:23:11.49 ID:Amn07e5X0
( ;ω;)「ツン、ごめんお。気付いてあげられなくてごめんお」

ξ;凵G)ξ「ブーン」

( ;ω;)「また、遊ぼうお。小学校の頃みたいに、ブーンの家で64するお」

ξ;凵G)ξ「ブーン!」


嬉しいと思う。こうして共に泣けることが。
また、彼と遊ぶことが出来るのが。

授業終了のチャイムがなったって、わたしたちは泣くことをやめなかった。


34 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:24:28.27 ID:Amn07e5X0




ξ゚听)ξ「あんたがぼーっとしてるから、ワドルディに置いてかれちゃったじゃない」 ( ^ω^)「すまんこ」 真夏のように暑い五月。わたしはブーンと遊んでいる。手には、64。


ξ゚听)ξ「何で体力1しか減ってないのにマキシムトマト出すかなぁ……」

( ^ω^)「アドレーヌ空気嫁」


疲れてきたからブーンと操作をかわる。ブーンはゲームがうまい。
オレンジジュースを飲みながら、ブーンのゲームを見る。


36 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:25:43.88 ID:Amn07e5X0

ξ゚听)ξ「そこクリスタルあるよ」

( ^ω^)「thx」


窓から入る蚊。何のためらいもなく潰す。
血を吸われる前に殺さないと。

ブーンのベッドの上に転がる。楽だ。わたしの家にいるより落ち着く。


ξ゚听)ξ「あ」

( ^ω^)「どうかしたのかお?」



37 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:27:12.40 ID:Amn07e5X0

ふと気付く。
ブーンの家に流れる穏やかな時間。これを作り出しているのは、ブーンとわたし。
二人でいるから、この時間があるのだ。わたしはここに、必要なんだ。


ξ゚ー゚)ξ「……何でもない」


どうして今までこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。
わたしはこの時間が好きだ。そして、それを生み出してくれるブーンも。
けれど今はこのままで良い。彼と一緒に遊べるのならば、ここがわたしのまほろばだ。

目を閉じて思う。片付けなければいけない悩みは、まだたくさんある。
けれども、ブーンと二人なら、きっと何とかなるはずだ。


( ^ω^)「ツンー、ボス倒しておー」

ξ゚听)ξ「はいはい」


ブーンののんきな声が、耳に優しい。


38 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:28:27.98 ID:Amn07e5X0






TとBが彫られたリップクリーム。なくなるまでは、まだまだ時間がかかりそうです。








    〜 ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです おしまい 〜



40 :ξ゚听)ξツンのリップクリームのようです 最終話 :2007/05/14(月) 23:31:07.97 ID:Amn07e5X0
以上で投下終了です。

まとめてくださったまとめサイトさん、
支援や乙を下さった方、絵を描いてくれた方、そして読んでくれた方。
ほんとうに、ありがとうございました。

拙い文章ですが、
また次回作品を書くことがあったら、よろしくおねがいします。

最後にもう一度、ありがとうございました。




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一気読み
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