( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜ミ,,゚Д゚彡ギコは体験学習をするようです 前編〜

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6 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:41:55.23 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「やべぇ! 遅刻だ!」


なんでもない、いつもの一日。
寝坊した俺は慌てて制服を着込み、家を飛び出した。

道を走りながら、急いで荷物の確認をする。

スパイク、タオル、練習着。
携帯に財布、折りたたみ傘。

よし、全部入ってるな、おk。

天気予報通り、空は灰色の雲で覆いつくされていた。

――あぁ、昨日の内に買っといて良かったぜ


そんな事を考えていると、一匹の野良猫が あ ら わ れ た。
毛を逆立て、牙を剥いて俺に向かってきやがる。


7 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:43:39.25 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「なんだ? このヌコ、妙にうるせぇな」

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!ギコーン!」

(,, ゚Д゚)「あんましヌコは好きじゃないんだよな……」

薄い茶色の猫。
通学途中の俺は、道を塞ぐ物体にたじろいでいた。

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!ギコーン!」

(,, ゚Д゚)「気持悪ぃ鳴き声だなwwwwそんなんじゃ一生野良のまま……」

ミ,,゚Д゚彡「ギ、ギコーン!!ギコーーン!!!」

なんか、うるせぇな。猫にむかついた俺は、一喝した。

(,,#゚Д゚)「るっせぇぞゴルァ! 黙ってろ!
俺は今からサッカー部の練習に行かなきゃいけねーんだよ!」

ミ,,゚Д゚彡「……!」


9 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:45:13.68 ID:HtStuKcJO
今日は日曜日。強豪である俺達VIP高校サッカー部。
朝から練習が入っている程力を入れている。
自分で言うのもなんだが、俺こそチームのエースストライカー。
キャプテンだって務めている。だるいけど。

(,,;゚Д゚)「くっそ、ただでさえ遅刻しそうってのに……
ええぃ、どけ! 踏み潰すぞゴルァ!!」

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!ギコーン!ギコーン……」

何かを訴えるような鳴き声。
悪ぃな、今の俺には邪魔な声にしか聞こえない。
怒り心頭に達したので、猫の脇腹辺りを蹴り飛ばす。
猫は痛そうに倒れ、その隙に俺は道を通った。

(,, ゚Д゚)「ったくよ、最初から邪魔しなきゃよかったんだぜ?」


10 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:45:38.30 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「ギコーン!」

捨て台詞を吐いてから、日頃鍛えた両足で地を駆ける。
野良猫はずっと俺の背中を眺めてた。

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン……ギコーン」

ほんやくコンニャクでもないと理解出来ない鳴き声。
いや、とりあえず人間にはわかるはずがないよな。

??「おぉ、よしよし……ひどい事をされたモナね」

しかし、この男は返事を返した。
何者だろうか。少なくとも常人とは考えにくい。

ミ,,゚Д゚彡「ギコーン……」

??「大丈夫大丈夫。あの子にはわからせてあげるモナ
……しっかりと、『体験学習』ってやつをさせてやるから、安心しろモナ」


11 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:46:33.37 ID:HtStuKcJO
猫は片足を引きずりながら歩いていき、近くの路地裏に姿を消す。
それを見送ると、謎の人物は声を荒げた。

??「ったく……言葉がわからないならまだしも、蹴るとは。
全くもって、不快極まりないモナ!」

いつの間にか取り出した杖を振り回し、一言。

??「ちちんぷいぷい、モナモナモナーコ。
ギコに『体験学習』の洗礼を喰らわせろーモナ!」

光の筋が道の奥へ飛んでいった。



……そこで、俺の意識も飛んでいった。




ミ,,゚Д゚彡ギコは体験学習をするようです


12 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:47:57.07 ID:HtStuKcJO
――――
―――
――


ミ,,゚Д゚彡あ

ミ,,゚Д゚彡「…………やべ、遅刻するわ」

意味はわからないが、そう思った。
だが、立ち上がろうとすると何故かふらつく。

ミ,,゚Д゚彡「あ、あれ?」

倒れるのを防ぐため、ぐっと手を付く。
そこに目をやると、毛むくじゃらのか細い腕が見えた。

ミ,,;゚Д゚彡「mjd?」


13 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:48:31.82 ID:HtStuKcJO
なんだこれ?
ゲーセンの体感マシーンにでも乗ったか?

まるまんま、猫じゃねぇか。

ミ,,゚Д゚彡「この毛…………から……だ。
体が猫になってる! なんで!? あーいとぅいまてーんじゃ済まねぇぞ!」

この体でどうやってボールを蹴ればいい?
この足でどう歩けばいい?意味がわからん。

ミ,,゚Д゚彡「そ、そんな事どうでもいい。
なん、なんでこんな事になっちまったんだ!
俺はこんな世界を妄想してねぇぞ! 現実にすんじゃねえ!」


14 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:49:00.52 ID:HtStuKcJO
混乱する頭で状況把握を始める。
俺は何故この状況になったかを考えて、その案を産業にまとめた。

ミ,,゚Д゚彡「・夢に間違いないでしょう
      ・どう考えても今では判断材料が足りません
      ・うひょひょ!女の子のパンツが見放題!」

ミ,,゚Д゚彡「三つ目はどうみても案じゃありません。本当に(ry」


なんで俺が猫になってんだ?
なんで俺がこんな状況に置かれてんだ?
とりあえず今わかっている事を整理するしかない。


15 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:49:54.82 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「ま、まずはここが路地裏の道路で……
俺は茶色い猫になって横になってやがった。
打ち切りとか、夢オチとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。
もっと恐ろしい予感がするぜ…………」

そこまで独り言を言い終わると、目の前を中学生が通る。
三人組で、少しDQNくさい感じだが、声をかける事にした。
それぐらいしか万年成績表オール2の俺には思い付かなかった訳だな。


ミ,,゚Д゚彡「なぁ、こっちを見てくれ。俺をどう思う?」


頼む。『すごく……人間です……』と言ってくれ。
……しかし、返って来た答えに俺は耳を疑った。


16 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:50:47.84 ID:HtStuKcJO
中学生A「ギコーン!! だってよwwwwキモイwwww」

中学生B「うあ、こっち来たこっち来たwwwww」

ミ,,#゚Д゚彡「ちょ……逃げんな!てめぇらなんかコメントしやがれ!」

くそ、なんで逃げんだよ。俺は逃げ惑う中学生を追った。
すると諦めたのか、一人の中学生が石を持って近付いて来る。

ミ,,゚Д゚彡「な、なんだよ。やっと話が通じたか…………」

中学生C「悪霊退散!悪霊退散!」

ミ,,゚Д゚彡「は!?…………
って、ちょwww石投げんな、いて、ゴルァ! やめろ!」

中学生A「やれやれwwwwぶっ潰せwwwww」

中学生B「顔に当たったら10点で体に当たったら5点なww」


身の危険を感じた俺は、通路に逃げ込む。
最近の中学生はこんなに手荒なのか……せちがらい世の中だぜ

ミ,,゚Д゚彡「ちぃ!一時撤退してやんよ!」

ギコ は にげだした!


17 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:52:59.08 ID:HtStuKcJO
四足歩行で、走る。走る。
案外速いもんだ、と考えてる内に空き地についた。

ミ,,゚Д゚彡「はぁ、はぁ…………一体なんなんだ……」

言葉が通じない。
何を言っても『ギコーン』と聞こえるらしい。
とりあえず夢じゃない。

ミ,,゚Д゚彡「十分過ぎる情報だぞゴルァ…………」

深い絶望に浸り、うなだれる。
頭を抱えている姿で周りを見渡すと、また人間が通った。

ミ,,゚Д゚彡(あれ?…………あいつら見たことある……)


18 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:53:44.89 ID:HtStuKcJO
ギャルA「でさぁ〜今日宿題忘れりんこしちゃって〜」

ギャルB「マジバロスなんだけど〜ww休日に学校とかまぢだるい〜w」

見覚えのある真っ黒い顔。
聞き覚えのある緩んだ声。
視界に入るだけでイライラする存在。

ミ,,゚Д゚彡「あいつら、同じクラスのDQN女どもじゃねぇか……」

俺は願った。必死に願った。

ミ,,゚Д゚彡。o O(こっちくんなこっちくんなこっちくんなこっちくんなこっちくんな
こっちくんなこっちくんなこっちくんなこっちくんなこっちくんな……)

ギャルA「あー! ちょー可愛いー猫見つけりんこ!」

ギャルB「まぢだ〜wwww暇だし遊んでやるかぁwww」


ミ,,゚Д゚彡「ついに/(^o^)\ミツカタ」


19 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:54:20.68 ID:HtStuKcJO
反抗したらまた危険が身に迫るかもしれない。
仕方なく猫をかぶる事にした。(←ウマい!座布団一枚!)


ミ,,゚Д゚彡「ニャ、ニャーン」

ギャルA「やだ〜wwwキモーイwwwww」

ギャルB「ギコーン!とか何様のつもり〜?wwww」

ミ,,゚Д゚彡。o O(そうだ!俺の言葉は「ギコーン」にしか聞こえないんだ……
で、でもここは我慢しなきゃ。我慢我慢……もちつけ俺……)

ギャルA「実は〜、さっきの食べ残しあるりんこなんだよね〜w
このキモイ猫にあげたら喜ぶかな?wwww」

ギャルB「マジ鬼才あらわるなんですけどぉ〜!
ところでぇー、食べ残しってなに〜??」

ギャルA「これこれ〜ww」

なんて事だ。奴が落書きだらけのバッグから取り出したのは……


20 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:55:01.46 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「どうみてもポッキーです。本当に(ry」

普通猫にチョコをあげるもんなのか?
しかもドロドロに溶けてるし……食える訳がない。

ギャルA「喜びまくりんこ〜wwwwうれぴーwww」

ギャルB「早く食って!早く!美味いよ!」

頭沸いてんじゃねーの?お前ら。
地べたにポッキー放り投げといて何言ってんだ。
溶けたチョコに砂がまとわりついて闇鍋状態だろうが。

俺は無意識に立ち上がり、ポッキーを踏み潰した。

ミ,,゚Д゚彡「舐めんじゃねぇ!(グシャ」

ギャルA「ちょwww二足歩行ktkrwwwww」

ギャルB「三次元ニャースktkrwwwwwうぇうぇwww」

ミ,,#゚Д゚彡「さっさと自分の星にけぇれ!(←悟空風に」


21 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:56:53.63 ID:HtStuKcJO
ミ,,;゚Д゚彡「はぁー、はぁー、やっと帰ったか……」

なんとか修羅場を脱した俺。
どっと疲労感を感じ、その場に倒れ込む。

ミ,,゚Д゚彡「やべ……眠いぞ……」

あれ?猫に天敵っているのかな。
もしいるなら俺死んじまうだろ……状況的に考えて……

ミ,,-Д-彡「……あー……眠い……眠…………」


苦闘も空しく、睡魔に負けて夢の世界に旅立った俺。
……これが夢ならもっとよかったんだけどな。

その場所で見た夢は、どこかぬくもりを感じた。
……何か懐かしいような、いい匂いがした気もする。



ミ* ゚ー゚彡「もー……こんなとこで寝てるし……」

まだ朝だったが、頬の毛を撫でる一陣の風は暖かかった。


22 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:58:53.60 ID:HtStuKcJO

すぅ、すぅ。

歯の隙間から漏れるようなわずかな吐息。
それが俺の後頭部に定期的にふきかかる。

ミ,, Д 彡「くすぐったいぞ……ゴルァ……」

半分だけ目が覚めた状態。
精神的には起きているのだが、肉体は言うことを聞かない。
まるで、そのままじっとしてろと言うように。

ミ,, Д 彡(誰かが後ろにいる……同じ猫だ……)

人間と喋れなかった俺が、猫と意思疎通出来るのか?
仮に相手が女だったらどうする?戦えないじゃねぇか……
頭で意見を左右させていると、後ろから声が聞こえてきた。

ミ* -、-彡「んぅ……ギコくぅん…………」


      ん?


ミ,,゚Д゚彡「寝言でギコくんって……sneg?」


23 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 17:59:38.29 ID:HtStuKcJO
間違いなく聞こえた。

俺の名前を呼ぶ声が。

聞き覚えのある柔らかい声。


ミ,,゚Д゚彡「しぃ!!!」

ミ*;゚ー゚彡「ふぇ!」

しぃの条件反射によって繰り出された平手をかわす。
叩かれても肉球だから痛くないけど……まぁいいか。

ミ,,゚Д゚彡「なんでお前が猫になってんだよ!」

ミ* ゚ー゚彡「ふぁ……もぉ。まだ全然寝てないよー。
……それに、ギコ君だって猫になってるじゃない」


24 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:00:33.96 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「そ、そりゃあそうだけどよ……なんか感じないか?」

ミ* ゚ー゚彡「なんか感じるかって?…………うーん?
…………あ、そうだ! 視点が低いから、なんか新鮮な感じ!」

そうだった。コイツは天然を地でいく女。
まともに喋ろうとした俺がバカだった。

『なんで俺がギコってわかったの?』とか聞こうとしたけど、
どうせ、雰囲気で!とかギコ君の事ならなんでもわかるよ!とか言うんだろう。

ミ,,゚Д゚彡「もうどうでもいいか。とりあえず、近況報告だゴルァ!」

ミ* ゚ー゚彡「え? 昨日一緒に帰った時にも話したじゃない。」

ミ,,#゚Д゚彡「猫 に な っ て か ら の 近 況 だ!」


25 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:01:47.40 ID:HtStuKcJO

……………………


ミ,,゚Д゚彡「ふーん。じゃあ俺とあんまり変わんねぇな」

ミ* ゚ー゚彡「案外、みんながみんな猫になったのかもよ?
猫パラダイス! って感じでwwwwww」

電波少女とはこの事。いちいちコイツの発言に構ってたら日が暮れる。

ミ,,゚Д゚彡「実はな、さっき寝てる間に頭がやっと冷えた。
そこで……考えた。人間の俺達はどうしてると思う」

ミ* ゚ー゚彡「そんなのわかんないよー。ジョウシキ的に考えて。」

ジョウシキ的に考えられてしまった。
ちっ、この状況を脱する頭脳としては期待出来そうにないな……

ミ,,゚Д゚彡「わからないのはわかってんだよ。だから確認するんだ。
……あー、最終手段のつもりだったけど……これしかないな」

「なになに最終手段って!?」じゃねぇよバカ。
ちょっとは予想ぐらいしてくれたら嬉しかったんだけどな。


ミ,,゚Д゚彡「VIP高校に行くんだ」


26 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:02:36.32 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「あ、あれ?」

空き地から学校までは歩いて10分程。
平日はいつもしぃと一緒に通っているから、歩き慣れたもんだ。

ミ* ゚ー゚彡「ん〜?ギコ君、なんか顔が真っ青だよ?」

ミ,,゚Д゚彡「だ、だってよ……!」

いない。誰もいない。
今日が記憶通りならサッカー部の練習があるはず。
ランニングでも行ってるのかと思ったが、違う。
ランニングのルートは俺の通学路も通っているからだ。

ミ,,゚Д゚彡「きょ、今日は何月だ!?何日だ!何曜日だ!!」

ミ* ゚ー゚彡「ちょっ、ギコ君てば! 落ち着いてよ!」

しぃの静止の声さえも耳に入らずに混乱していた俺。
ただひたすらに叫んでいたら、さっきのギャルが玄関から出てきた。


28 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:05:39.46 ID:HtStuKcJO
ギャルA「まじ美術部とか死ねりんこ〜www超インドアーwwww」

ギャルB「それウチも思ったwwww存在が痛いよねwww」

VIP高校の生徒なら今の会話で疑問が浮かぶ。
美術部の学校での活動は、顧問の都合で土曜日にしか行われないからだ。

ミ* ゚ー゚彡「あれ? 今日は日曜日かと思ったけど」

しぃが猫になったのを確認したのは朝起きた瞬間。
テニス部の校外試合があったはずだが、猫になってたから諦めたらしい。
丁度よく布団に隠れていたから、誰にも見つからなかったと言っていた。

ミ,,゚Д゚彡「なんで……曜日が違うんだ……?」

もし……平成19年じゃなかったら死ぬしかない。マジデ。
確認するべく、校舎の中へ侵入を試みる事にした。

薄茶色の猫と真っ白い猫二匹。
全くもって怪しい事この上ないだろうな……気をつけねぇと。


29 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:06:16.54 ID:HtStuKcJO
ミ* ゚ー゚彡「とりあえず今日の日付を確認してくるねー」

玄関を通るなり、しぃは自分の教室に走り出した。
どうみてもその行動は死亡フラグだろ……常識的に考えて。

ミ,,゚Д゚彡「っ、待てしぃ!」

急いでしぃの腕を引っ張って引き戻す。

――はずだった。


ミ*;゚ー゚彡「ふゃ!」

ミ,,゚Д゚彡「ゴルァ!?」

しっかりと掴めずに、揃いも揃って転んでしまった。
気まずい空気が俺達二人……もとい二匹を覆いつくす。


30 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:06:57.60 ID:HtStuKcJO
ミ* ゚ー゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「あ、あの、これは」

仰向けになったしぃを見下すような格好の俺。
よくよく考えてみたら、目の前にいるのは真っ裸のしぃだぞ?

……あ?しぃはしぃでも猫じゃねえかって?
ふっ、安心しろ俺の理性。俺の脳内ではすでにしぃの裸体を補完してある。
俺が触っている部分は猫のおっぱいじゃない。しぃのおっぱいだ。



  _   ∩
ミ,,゚Д゚彡ミ おっぱい!おっぱい!
  ⊂彡   しぃのおっぱい!おっぱい!





31 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:08:18.37 ID:HtStuKcJO
ミ# ゚ー゚彡=つ≡つ「殺劇舞荒拳!!!」

ニニ⊃Д゚彡.'。°. <モルスァ…………



ミ# ゚ー゚彡「もう! ギコ君なんか知らないから!」

さっさと玄関を出て、外に出ていってしまったしぃ。
急いでカレンダーを引き千切ってから、しぃを追いかけた。

ミ,,゚Д゚彡。o O(やっぱり、今日は平成19年で合ってる。
だけど、今日が土曜日って事は…………)

何かがずれてる。

俺達の記憶かもしれないし、勘違いなのかもしれない。
時間がずれてると考えるのが一番簡単だが、現実離れし過ぎている。

もう、深く考えるのはしたくなかった。


33 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:10:32.10 ID:HtStuKcJO
ミ,,゚Д゚彡「しぃ、待ってくれ」

ミ* ゚‐゚彡「何が」

ミ,,゚Д゚彡「おっぱい触って悪かったって……ごめん」

ミ* ゚‐゚彡「…………」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫、小さくたって関係ないさ。
世の中にはつるぺたとか妹とか痴女ってジャンルがあって」

ミ# ゚‐゚彡「何か言ったか小僧」

フサ「なんでもありません、生きててすいませんでした」

猫だから、走るのは早いけど歩くと距離が長い。
すでに昼を回って、もうすぐ夕方と言ってもおかしくない時間だ。



34 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:11:44.42 ID:HtStuKcJO
ミ* ゚‐゚彡「ちょっと休憩しよ」

ミ,,゚Д゚彡「あ、ああ」

うわちゃー、これはしぃの怒りフラグ。
どうみても目つきが鋭すぎです本当にありがとうございました。

ミ* ゚‐゚彡「……ギコくん」

ミ,,゚Д゚彡「あ、ああ? 何?」

ミ* ゚‐゚彡「ギコ君は、どうしたいの? これから」


これから。そりゃ、人間に戻って……それからサッカーしたいな。
そんな事聞いてどうするんだろうか。
よくわからないが、一応返答だけはしておいた。


ミ,,゚Д゚彡「そりゃ、元に戻っていつも通りの生活を……」

ミ# ゚‐゚彡「違う!」

ミ,,゚Д゚彡「!」


35 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:13:28.57 ID:HtStuKcJO
ミ* ゚ -゚彡「ギコ君は、私の事おちょくってばかりじゃん!
家に遊びに行ったって何もして来ないし!
そういう話、したってすぐにはぐらかして話題を変えるし!」

ミ,,゚Д゚彡「……っ」

ミ* ゚ -゚彡「何を問いかけても流されて!
さっきだってそうだよ! 犯したかったらヤればいいじゃん!」

なんかそれは違う気がするけど…………
でも、しぃはこういう時、優しく言葉をかければ大丈夫。
たまーにこんな感じでキレるけど…………

ミ,,゚Д゚彡「わかったよ。お前の言いたい事はわかった。
でもな、お前の気持ちはわかってるつもりだよ。だっt」

こんな感じで優しーく論してあげれば…………

ミ* ゚ー゚彡「もう……!」

ミ# ゚ー゚彡「聞きたくないよ!」

ミ,,;゚Д゚彡「……あれ?」


36 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:14:41.84 ID:HtStuKcJO
ミ* ゚ー゚彡「わかってるんだよ。ギコ君がどう思ってるかぐらい。」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

ミ* ゚ー゚彡「いつもいつも、何を考えているのかも最近わかった」

ミ* ゚ー゚彡「ギコ君、頭いいもんね?
先を考えて発言するの、すごく得意でさ…………
あの時も、そうやって偽って慰めてくれてたんだよね……?」


あの時?


ミ,,゚Д゚彡「な、あの時って何の事だゴルァ!
お前、今日はなんかおかしいぞ? 猫になったからか?」

しぃはため息まじりに顔を伏せる。
再び顔を上げた時には、頬に一筋の線がつたっていた。

ミ* ゚ー゚彡「あの時、ね……私がギコ君本気で、好きになった記念日なんだよ……?」

しぃはそう言って話し出す。
毎日偽ってばかりだった俺が、初めて本音を吐いた日。
俺が、しぃを好きになった日。


その『記念日』の事を、話し始めた。


37 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:17:54.36 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「ゴルァー! 気合い入れねぇとラウンジに勝てないぞ!?」

女A「キャー! ギコくぅーん!」
女B「カッコいいー! こっち向いてーwwwww」
女C「あははははは!可哀想なギコ君!
そんなに一生懸命球蹴りして面白いのかな?かな?」


(* ゚ー゚)「…………はぁ」

ギコ君は、女の子達から凄まじい人気だった。
バレンタインデーは毎回10個はくだらない数をもらってる。
クリスマスなんか、プレゼントを上げる女の子で教室がいっぱいになる。

女A「あ、あの! これ受け取ってください!」

(,, ゚Д゚)「お、ありがとうな。」


(* ゚ー゚)「…………」

私は、まわりに紛れて黄色い声援をあげられなかった。
彼を。ギコ君を、心のどこかで好きになってたと思うから。


38 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:18:35.88 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「っしゃぁ!」

またギコ君は点を入れた。
どれだけ凄いのかはよくわからないけど、とりあえず凄いらしい。

みんなはグラウンドの外からギコ君に声援をあげている。
私は、というと、いつも通りにこの場所から見つめているだけ。

窓際にある彼の机に座って、教室から放課後の練習を見る。
それだけで、私の心はギコ君でいっぱいになった。

(* ゚ー゚)「ギコ、君」

呟く私の後ろから、予期せぬ返事が返ってくる。

*(‘‘)*「なぁに?」

(*;゚ー゚)「ひゃっ!」

私は驚くと、反射で手を出してしまう。
でもこの親友にはお見通し。片手で弾かれてしまった。


39 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:19:18.30 ID:HtStuKcJO
*(‘‘)*「いつも危ないなぁ、しぃは」

(* ゚ー゚)「ヘリカルも、私の性格知ってて後ろから声かけるんでしょ!」

*(‘‘)*「窓際の誰かさんの席に座ってる女の子には、
クラスの代表として制裁を喰らわせなきゃなぁーってw」

(*;゚ー゚)「んもぉ……」

ヘリカルは、小さい頃からの幼なじみってやつ。
ギコ君や私とは幼稚園から一緒で、一番仲のいい娘だった。
私がギコ君を意識し始めた時も、親身になって話を聞いてくれたし。

*(‘‘)*「またギコ君眺めてたの?」

そんなわかりきった問いには答えません。
そんな風に知らんぷりをしてると、ヘリカルは含み笑いをしてた。



40 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:20:38.12 ID:HtStuKcJO

*(‘‘)*「明日はギコ君の誕生日かぁー。
あっ、一部の女子しか知らない情報だったけど、口が滑っちゃった」

(* ゚ー゚)「……へ?」

*(‘‘)*「さ、今日はもう帰るね。
因みに、情報網を駆使した結果、ギコ君はチョコは嫌い。
代わりにクッキーみたいなのは好きらしいからー」

(* ゚ー゚)「ヘリカル……」

*(‘‘)*「独り言喋り過ぎた。先、帰るねー」

ここまでしてくれた親友に、何も言わずに帰せるか。
お礼はしっかりしないと、運が向いて来ないし。

(* ゚ー゚)「ヘリカル!」

*(‘‘)*「ん?」

(*^ー^)「……ありがと!」


振り向きもせずに。
ただそこで立ち止まって。
ヘリカルは一言だけの返事をした。


*(‘‘)*「どういたしまして」


41 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:21:52.07 ID:HtStuKcJO
(*;゚ー゚)「できた!」

自称パティシエの私。
バレンタインデーに特訓をした結果、料理だけは上手くなった、と思う。

(* ゚ー゚)「綺麗にラッピングして……」

後は学校に行って、呼び出した後に渡すだけ。
細かい情報網だったらしく、学校に行っても
誕生日の事を口に出す女の子はいなかった。

(* ゚ー゚)。o O(チャンスじゃない?これ!)

wktkが止まらない私は、授業にも身が入らなかった。

頭にあるのはただ一人、ギコ君の事。
頭にあるのはただ一つ、クッキーの事。


(* ゚ー゚)「頑張るぞ」


つまらない授業からくる眠さで閉じかけの瞼。
強引にほっぺたを叩き、軽く眠気を覚ました。


43 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:24:49.18 ID:HtStuKcJO
(* ゚ー゚)「……あぁ」

放課後。ギコ君を情けなくもヘリカルに呼び出してもらった。
場所は体育館裏。なんとも陳腐でセオリーな場所。

(* ゚ー゚)。o O(ギコ君、来てくれるかな……)

ギコ君の性格上、来ない訳がないんだ。
だけど、それでも不安になっちゃうのが私。

(* ゚ー゚)。o O(あれ? なんか騒がしいけど……)

なんでだろうか。誰かが凄い剣幕で誰かを叱ってる。
その誰かは謝って……あれ、こっちに向かって来て……

(,, ゚Д゚)「すいませんしたぁ! すぐに戻るんで!」

(*;゚ー゚)「……!」

叱られてたのは、ギコ君だった。



44 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:26:46.39 ID:HtStuKcJO
(,, ゚Д゚)「あ、しぃ。待たせて悪かったな」

(*;゚ー゚)「う、ううん。私こそ忙しいのに呼び出しちゃって」

気にしないでいい、と私を慰めるギコ君。
本当は私がギコ君に声をかけなくちゃいけなかったのに。

(* ゚ー゚)「あ、あの、今日は」

(,, ゚Д゚)「誕生日だぜ、ゴルァ!」

空気を柔らかくするように、わざとおどけた感じで喋る。
そんなギコ君も、ひっくるめて好きだった。

(* ゚ー゚)「うん、だから、これ、持ってきた……ん」


あれ?


(*;゚ー゚)「……ゴソゴソ」


クッキー……





(*;゚ー゚)「……忘れた」


45 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:27:21.12 ID:HtStuKcJO
必死にカバンの中をまさぐる私に、ギコ君が声をかけた。

(,, ゚Д゚)「あれ? もしかして、無くしちゃった、とか……」

(* ゚ー゚)「ううん、違うの。忘れて来ちゃって……」

(,, ゚Д゚)「ぇ…………」

頭がパニックに陥ってしまった。
何を考えていいのかわからない。
謝る? 取りに行く?

せっかくギコ君に近付けるチャンスだったのに。
せっかくギコ君が無理して来てくれたのに。

(* ;ー;)「ふぇぇ…………」

また私は泣いてしまった。
何かあるとすぐに泣いてしまう、悪い癖だった。


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前編 - 後編

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