( ^ω^)ブーン系小説完結作品集('A`) 〜( ^ω^)ブーンが半年病のようです 一気読み〜

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当サイトはブーン系小説の完結作品集 です。 読み物系は嫌いって方はご退場ください


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1 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:10:47.88 ID:4V7XNvxn0
西日のさす中、数日間部屋に引きこもっている青年がいる。
彼は自分の余命を把握していた。
後半年で自分が死ぬという現実に耐えられず毛布をかぶりじっと座っている。
青年はずっと自分の世界に閉じこもり、必死で自我を保とうとしている。
そのときノックの音と女性の声が聞こえた。

川 ゜-゚)「クーです。本日よりあなたのカウンセラーとして雇われました。」



( ^ω^)ブーンが余命半年のようです


3 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:13:27.23 ID:4V7XNvxn0
人口が100億人に達したときそれは突然起こった。
100億人目の人類が生まれたとともに、ある病が人々を襲った。
突然に血液中の成分が変化し、現在の医学では判別はできるのだが
治療法のない病気が世界中に広まった。
病気と言ったら少し語弊がある。表現するのなら現象が丁度いい。
現象がおきて初期のころ、権威ある学者はこの現象に対し、人類が増えすぎそれを抑止す
るための現象であると発表した。

患った者は個人差はあるものの体は健康のまま大体半年ぐらいで死に至る。
その病気は突然襲い掛かり、老若男女の間に区別はない。
検査は体液、排泄物でできるが感染することはなかった。
また治る希望がほんの少しでもある癌とは違い、治療法も、進行を遅らせるすべもなかった。
決められたスケジュールのように、病気にあがらうこともなく死を待つだけ。
人は希望があればそこに活路を見出す。無期懲役の囚人だろうといつか出れる日を夢見て。
しかし死刑が確定している囚人は毎日を悔やんで過ごす。毎朝看守の足音におびえる。


5 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:14:49.61 ID:4V7XNvxn0
電車の中のいつもの日常、変わらぬ面面。
大学の帰り、電車の中で現象の記事を書いた吊りポスターを見ながらブーンが口を開いた。

( ^ω^)「テラコワスだお。」

('A`) 「だな、でも大丈夫だろう。確率的には0.00001%だぜ。車に轢かれるよか
    低いぞ。」

(´・ω・`) 「そうだね。でももし罹った場合なんだけど、皆はどうする?
       大学の健康診断の時に調べてるって言うじゃない。」

( ^ω^)「おっおっ、そうなのかお、知らんかったお。」

('A`) 「ただの噂だろ。でもそうだな、もし俺が半年病になったならソープに行って
     筆下ろしを頼むかな。」
ドクオがそう言うと三人はげらげらと笑った。
こんな日常がいつまでも続くと思って、自分が罹るなんて想像しても現実味がなかった。


6 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:16:25.23 ID:4V7XNvxn0
現象が全世界に広まって3年経ったが、人類が暮らすのにさほど支障はなかった。
半年病と名付けられた現象だが、患う確率は低く、いまだに10万人しか発病していない。
確率は0.00001%と低く、誰もが気にせず暮らしていた。
しかし問題は発病した後だった。発病がわかった患者の一部が人生を悲観し欲望のままに
行動するものがいた。
あるものは女性を犯し、あるものは駅前で無差別に殺人をし、あるものは道ずれにと飛行
機をハイジャックし無理矢理墜落させた。
一番大事を起こしたのが、総合商社の役員だった。彼は国の発展のために日夜努力し続けていた。
食品、エネルギー、金属、その他もろもろを輸出し輸入しているその商社は国のシステム
として不可欠のものとして存在している。
商社が無くなれば2週間ももたないといわれているのがこの国の現状だ。


7 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:20:40.31 ID:4V7XNvxn0
ところが国の発展に貢献してきた彼が、今度は国を潰そうとした。
なんと、書類を巧妙にいじり会社を法律上倒産させてしまったのだ。
国が傾くような一大事ではあったが、ことの大きさに政府はすぐさま特例として倒産を無効にした。
数時間ではあったが国は大混乱に陥り、潰れた会社はすべて併せ100社以上にのぼり、大損害をこうむることになった。

このようなこともあり半年病患者に病名を告げるかどうかで問題になったが
結局病気とされていたので本人が望めば告げることとなった。


8 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:23:47.09 ID:4V7XNvxn0
大きな事件があってから、民衆に騒がれ議会は苦し紛れにある法案を提出した。
半年病を告げた患者にはカウンセラーをつけること。
単純なことではあったが効果はあった。
その後、半年病の患者のうち犯罪者になるものが半分以下になり、カウンセラーの地位が比較的向上した。


9 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:27:39.57 ID:4V7XNvxn0

ある日のこと、大学の掲示板にブーンの名前が貼られている。
至急、学生室へ来るようにと。
大学がブーンを呼び出しているが、覚えのないブーンは疑問に思いながら学生室へ向かう。

学生室につたブーンが職員に名前を名乗り、用件を聞こうとした。
その職員はあまり口をきかずブーンを応接室へと案内する。
ブーンは学生室を出る際、気のせいだろうか周りの目が哀れみの目を向けているように感じていた。
応接室に案内されたブーンは座るよう促され高級そうなソファに腰を下ろす。

( ^ω^)(なんかヤバスだお。もしかして留年でもしたかお?)

そんな不安をするブーンに理事長が沈痛な面持ちでプリントを見せながら話をはじめる。


11 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:32:27.13 ID:4V7XNvxn0

/ ,' 3 「これなんだがね。君は健康診断のアンケートで、半年病に罹ったら告げてほしいと答えたね。」

(;^ω^)「はいですお。」

脇から汗が流れるブーン。
ブーンは緊張するといつもここから汗が出る。

/ ,' 3「これを見てほしい。」

理事長が封筒から紙を出す。
医者の診断書だ。
病名にはこう書いてある。



半年病


14 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:36:34.68 ID:4V7XNvxn0

理解した瞬間からブーンは半年後に死刑を処される囚人と同じになった。
違うのは自分は自由で期限は半年ということ。
ブーンの頭の中で世界がゆがんだ。
ブーンには今見えるものすべてが歪んで見える。
理事長がなにを言ったか考えることができないまま応接室を出ていき
そのまますぐ駅へと歩こうとした。

歩いているブーンを見つけドクオが声をかける。

('A`)「おいブーン、飯食ってこうぜ。」

それを無視しブーンは足を速める。無視というより言葉が理解できなかった。

(;'A`)「シカトかよ…」


16 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:42:27.97 ID:4V7XNvxn0
電車の中で受け取った診断書を何度も確認した。
ブーンはとにかく家へと帰りたかった。
家へ帰ればカーチャンがいて、
ご飯があって、トーチャンが帰ってきて
皆でテレビを見ながらご飯を食べるいつもの日常がある。
そこにさえ行けば、こんな非現実的なことなくなってしまう。
そう考えていた。


家に着き、夕飯の支度をしているカーチャンに診断書を見せ話すと
罹った本人よりも先に現実を受け止め、そして泣いた。
そんなカーチャンを見たブーンは漠然とこれが現実と思い部屋に入った。
現実は覆らない。宣告された死刑も覆らない。そう思った。


17 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:44:34.65 ID:4V7XNvxn0

一週間後、ブーンの部屋は荒れていた。
地震がきたわけでも、二人組みの泥棒がくるから罠を仕掛け戦ったわけでもない。
ブーンが怒りに任せて暴れたからだ。




20 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 02:53:00.51 ID:4V7XNvxn0
告げられた翌日、ブーンはその日1日中寝ていた。何もやる気がなく、ただ寝ていた。
とにかく時間が経てばそれでよかった。
考え事をしようにもただ自分の境遇を呪うしかなかったから。

そして夕方、トーチャンとカーチャンとブーンで夕飯を食べながらのことだった。
気まずい夕食。ブーンにかける言葉が見つからない。
必死で今までの日常を演出しようとする。
だが、もう日常へは戻れない。その矛盾した思いのため
口を開き話しかける相手は必然とブーンではなくなる。

(`・ω・´)「まさか、ブーンがかかるとはな。」

J( 'ー`)し 「まさかね。あたしもまだ信じれなくて……」


27 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:00:57.65 ID:4V7XNvxn0
トーチャンとカーチャンが互いに慰めあっている。
例えるなら病人ではなく、その親に子供が病気になってつらいだろうと心配するような慰さめ方。
残されたものを悲しむ悲しみ方。
ブーンを置いてけぼりにお互いの伴侶を心配をしている両親。
頭が働いていなかったが、これまでの経験上すぐさま話の意味を理解した。
瞬間、頭に血が昇った。

( ;ω;)「何でお前らが泣いてんだお、死ぬのは僕なんだお!
      お前ら今、僕の死を悲しむんじゃなくて自分たちの立場を悲しんでたお
      息子が半年病になってかわいそうって、僕じゃなくお互いに言い合ってたお
      お互いに息子が半年病になってかわいそうだよなって言い合ってたお
      僕が死ぬより、残された家族のほうがかわいそうだって言いたいのかお
      ふざけてんのかお!一番慰めるべきは僕じゃないのかお?」


30 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:07:31.58 ID:4V7XNvxn0
ブーンは慰めてほしいとは思っていなかった。
自分が死に向かうようでも、そんなのはみっともない弱い感情だと思ったから。
ただ、自分が両親にどれだけ必要とされているかは知りたかった。
死に向かう自分がどれだけ大切に思われているのかを知りたかった。
死に対して少しでも安らかな気持ちで迎えたいと思っていた。
だが期待がはずれ、その怒りから親を怒鳴り散らし力任せに食卓をひっくり返した。
突然のことに驚いた二人は何もできずただおろおろするだけ。
そんな親に見抜きもせずすぐさま自室へと篭り、自分の人生と世の中をうらみはじめた。


31 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:10:04.26 ID:4V7XNvxn0
ブーンは部屋から出ることなく
そのまま1週間が過ぎ、法律の通りカウンセラーがブーンのもとにやってきた。

川 ゚ -゚)「クーです。本日よりあなたのカウンセラーとして雇われました。」

ブーンはカウンセラーが来ることは忘れていたので、突然の訪問に驚くとともに
もしかしたら自分を救ってくれるかもしれないと思い、返事をする。

( ´ω`)「カウンセラーですかお。僕にそんなものは必要ないですお。」

わざと、そっけなく言い相手の出方をうかがう。
だが、ブーンの期待を裏切る返事が返ってきた。

川 ゚ -゚)「そうですか、では私は帰ります。また明日、この時間にもう一度きます。」


34 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:15:10.14 ID:4V7XNvxn0
ブーンは1人でいるうちに1週間前とは違い誰かに慰めてほしいと考えるようになっていた。
そして半年病に罹った自分をどこまで甘やかしてくれるのか試してもみたかった。
しかし相手は優しい言葉をかけて自分を慰めてくれるだろうと思っていたのに反し、
冷たい声で別れを告げると帰っていった。
誰かと接していたくなっていたブーンは明日を心待ちにした。
半年病に罹ってから明日を待つなんてはじめてのことだった。

次の日同じ時間にクーが来てノックを鳴らす。

川 ゚ -゚)「カウンセラーのクーです。昨日は帰れといわれたので帰りましたが今日は何かお話をするつもりはありませんか。」


36 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:19:47.78 ID:4V7XNvxn0

ブーンは心が躍った。とにかく人と接したいと思っていた。

( ´ω`)「中に入ってくれお。何でもいいから話がしたいお。」

部屋の中に招き入れるブーン。

川 ゚ -゚)「失礼します。」

入ってきたのは、黒く長い髪がよく似合う綺麗な女性だった。
散らかっている部屋の適当なところに腰掛けブーンと向き合うクー。
2、3分の気まずい沈黙の後ブーンが自己紹介をする。

( ´ω`)「初めまして、ブーンですお」

沈黙の間ずっとブーンを見ていたクーが返事を返す。

川 ゚ -゚)「初めまして、カウンセラーのクーだ。
悩みがあったら聞くが、解決できるかどうかはわからん。
でも話すことにより楽になることもある。
急に話せといっても無理かもしれんが、今思っていることを私に話してみろ。」


38 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:22:14.77 ID:4V7XNvxn0

直接向かい合ったためか口調が変わるクー。
そんなクーに戸惑いながらもブーンは生気のない声で話し始めた。

( ´ω`)「とにかく今は誰かと話がしたいお。何か喋っていないとずっと死ぬことばかり考えて頭がおかしくなりそうだお。」


川 ゚ -゚)「そうか、じゃあたっぷり話すがいい。私はブーン君の話を聞いてみたい。」

クーが興味深々そうな顔をする。それを見て少しブーンはうれしくなる。
だが、話せといわれても急に話題を見つけれるのは難しい。ブーンは正直に答えた。

( ´ω`)「そういわれても、急には話せないお。」

川 ゚ -゚)「じゃあ、質問する。なぜ話せない?」

冷たいようだが、さっきと表情が変わらないところをみると、単純に知りたいだけのようだ。

( ´ω`)「何でだろうお。クーさんのことをよく知らないし共通の話題がないんだお。」

いつもはふざけた会話をしているが、久しぶりの話し相手にいくらか素直になるブーン。
相手に帰られたくないというのもあった。


40 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:25:49.94 ID:4V7XNvxn0

川゜-゚)「そうか。では共通の話題がないということは、何かしら共通するところがあればいいんだな。」

そういい少し考える。

川゜-゚)「話題についてはどうだろう。なぜ人は話すと思う。」

突拍子もないことを言うクー。しかしブーンはつい、そのことを考え込み始めた。
そんなことを考えたこともなかったブーンは黙り、自分なりの答えを探す。
そして、少しづつ言葉にして紡ぎだす。

( ^ω^)「いままでのことを考えたけど、話すというのは相手に理解してもらいたいと
        いう願望だと思うお。自分の考えを相手に伝えるために話すと思うお。」

川゜-゚)「なるほど。今君は私に話すということを話した。
     そしてはじめに誰かに話したいと言っていたな。
     それはブーン君が考えていることを誰かに理解してほしいと感じたからだな。」

( ^ω^)「そうだお。僕の考えを話したかったからだお。」

川゜-゚)「じゃあ、なんで理解してほしいと思った」


41 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:29:41.35 ID:4V7XNvxn0

ブーンの考えを引きずり出そうとするクー。
そして会話の中で故意に出さなかった言葉をブーンは思い出さなければならなくなった。

( ;ω;)「おっおっ、僕は半年病に罹ったお。
      そしてトーチャンとカーチャンに話したけど僕になんて声をかけようか
      迷うだけで僕のことを理解しようとしないんだお。
      腫れ物に触る扱いなんだお。だから部屋に篭ってたお。
      死ぬのは怖いお。でも誰にも理解されないのも怖いお。」

泣きながら話すブーン。しかしこの一週間誰かに話したかったことを話せた。
それだけで、少しは楽になる。
自分を理解してくれる相手がいれば、自分を必要としてくれると思えるから。


42 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 03:31:00.04 ID:4V7XNvxn0

川 ゚ー゚)「大丈夫だ。私は君のような人の気持ちを理解しようとするためこの職業についた。
     だから、変な勘ぐりはしなくていい。私は君の話したことに論理性があれば
     その気持ちを理解したい。」

そういい泣いてるブーンの頭を軽くなでる。
子供をあやすような行動だが、ブーンは素直にそれを受け入れた。


65 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:05:15.56 ID:4V7XNvxn0
頭から手を離し、泣き止んだブーンに告げる。

川゜-゚)「はっきり言おう。ブーン君は半年後に死ぬ。
これは悪意でもなんでもない。
辛いだろうがまずそのことを事実として認識してくれ。」

半年病と判明してから初めて人の口から聞いた。
友達同士で言う「死ね」とはまったく違う言葉。
しかし1週間ずっと死ぬことを考えていたブーンは
それを受け入れる土壌が偶然にもできていた。
自分よりも不幸な人はいないと思い込んでいたため死は当然のことと思った。

( ;ω;)「はいですお。」

涙目ながらも返事をする。
思いのほかしっかりした返事だったのでクーは少し驚く。
そして、その驚きは喜びへと変わった。
これならしっかりした話ができると。


66 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:06:58.30 ID:4V7XNvxn0
川 ゚ -゚)「ではそろそろ私は帰る。また明日同じ時間に来ればいいかな?」

心を開きかけたときに帰る宣言をするクー。
ようやく自分を理解してくれそうだとおもったブーンはもう少し一緒にいたかった。
けれども、女性を引き止めるのも少々かっこ悪い気がしたのでただ頷く。
これはクーの作戦であった。
一番楽しいとき、一番心を開いたときにわかれるというのは
相手を想う気持ちが大きくなる。
クーはまず自分をブーンにとって必要なものにしなければいけないと判断した。

川 ゚ -゚)「そうだ。忘れるとこだった。ブーン君にこれをあげよう。」

鞄の中から、黒く立派なカバーのついたものを出す。
日記だった。それも高級な。
それを見たブーンは黙って受け取る。


68 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:12:37.96 ID:4V7XNvxn0
日記を見つめるブーンに説明する。
話を聞いて成る程と思うがある疑問を口にする。

( ^ω^)「でも僕は日記なんて書いたことないですお。
      なにを書けばいいんですかお?」

川 ゚ -゚)「君の好きなように書いたらいい。」

と言い少し黙るクー。そして言葉を変える。

川 ゚ -゚)「いや、好きに書けといわれても困るな。
     そうだなとにかく、その日1日で一番思い出せることを書いてみろ。
     そしてそれに自分の意見を書き込んでみろ。
     それだけでいい。それと書いてはいけないなんてことは何一つないから
     書きたいと思ったこと、整理したい考え事、自分の気持ち、なんでも書けばいい。
     そして自分の気持ちに嘘をつかず書けばいい。」

ブーンはそれを聞きとにかくやってみようと思った。
頭の中だけで考えるだけじゃなく、考えを独立させるということに興味を持ったから。

川 ゚ -゚)「それじゃ。また明日。」

それだけいい部屋を後にする。


69 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:15:58.22 ID:4V7XNvxn0
午後六時、ブーンは早速日記を書き始めた。
半年病のこと、そしてそれに対する自分の気持ち。
クーのこと、今日話した内容。そして、なんでそんなことを話したかの理由。
自分の立場、小さいころの夢、宇宙の成り立ち、親に対する思い。
すべてに誰が見ても納得できるようにと心がけて書いた。
本を読むのが好きだったし、論理的に考えるということと数学が得意なブーンにはこの作業は向いていた。
そして書けば書くほど、頭の中が整理されていくのがわかった。
気づけば十数ページにみっちり書いていた。
そして何か充実感を得たブーンはふと眠くなり布団に入った。


71 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:18:55.90 ID:4V7XNvxn0
ブーンが日記を書き始めるのと同時ぐらいに
クーはトーチャンとカーチャンに話をした。

川 ゚ -゚)「ブーン君は今半年病を自分で認めている最中です。
     話によると、まだご両親はブーン君にきちんと親として
     どう思っているかを言ってませんね。
     息子さんが半年病なのは事実です。ですからまず頼れる存在である
     お二人がブーン君をどう思っているのかを言ってあげてください。
     そんなことを言うのは照れくさいと思うかもしれませんが、
     ブーン君が死んでからは何も言えなくなります。」

トーチャンとカーチャンでも死や半年病といった単語を発しなかったのに対し
平然と口にするクー。
だがそれを認めなければ事態は何も変わらない。
トーチャンが一言わかったといい、カーチャンはそれに頷いた。

川 ゚ -゚)「当事者でない私がえらそうに言って申し訳ありません。
     では私は帰ります。」

それだけいい、玄関で見送られながら帰っていった。


72 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:20:16.16 ID:4V7XNvxn0

次の日昼過ぎぐらいにトーチャンとカーチャンがブーンの部屋の前まで来た。
引きこもったブーンと話し合うのはこれがはじめてであった。

(`・ω・´)「ブーン起きてるか。」

扉は開けず話しかける。
中からブーンの声が聞こえた。

( ^ω^)「起きてるお。」

久しぶりの親子の会話、二人とも少し照れた。



75 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:24:51.48 ID:4V7XNvxn0

(`・ω・´)「そのままでいいからとにかく私の話を聞いてくれ。
     お前が半年病に罹ったと聞いたときどうすればいいかわからなかったよ。
     そんなこと想像したことはあったが、それは私にとって都合よい想像だったよ。
     しかしそれが現実に起きてその事態に向き合うことが私は怖かった。
     都合のいい想像と違い何もかもうまくいかないんだからな。
     ブーン聞いてくれ。私はそのときこう思ってしまったよ。
     面倒くさいことになったな、って。
     今までの日常をなんで壊すんだって感じたよ。
     お前に対して怒りまで感じたよ。
     今思うとずいぶん自分勝手な話だと思う。
     だが本当にそう感じたんだ。」

トーチャン話が続く中、ブーンは冷静だった。
トーチャンの声はしっかりしているものの、自分を責めるような声だった。
それに昨日、日記に書いたことにトーチャンのことがあり、
ブーンが考え想像したトーチャンの気持ちとほとんど一緒だった。


76 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:27:44.20 ID:4V7XNvxn0

(`・ω・´)「だがお前が部屋に篭ってから考えたんだ。
      これが現実なんだってな。」

一呼吸おき、自分に言うかのようにまた話し始める。


(`・ω・´)「お前は後半年後にいなくなるんだ。
     私はそのときああすればよかったこうすればよかったと思いたくない。
     あわよくばお前に感謝されたいとも思ってるよ
     だけど、いまのままじゃ絶対にそんなことにはならない。
     でも行動しなきゃ何もかわらないと知ったよ。
     自分勝手さは変わらないが、お前のために何かしてやりたいんだ。
     だからブーン、してほしいことがあったらなんでもいい
     私たちに言ってくれ。
     いまさら遅いが、お前にはこの家の子でよかったと思ってほしいんだ。
     お前が死に向かうことでようやくそれがわかったよ。」


77 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 15:29:10.16 ID:4V7XNvxn0

ここまで言い、扉の前から離れていった。
ブーンはその言葉を聞いている途中で泣いていたが、
布団にくるまり嗚咽の声を隠していた。
そんなことまでは想像していなかったから。
だが、嬉しかった。ついに自分を認めてくれた気がした。
半年病になった自分を受け入れてくれた気がした。


93 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:05:54.25 ID:4V7XNvxn0
立派な手帳を開けるとそこには文字の羅列があった。

               ( ^ω^)

おいすー。余命○○のブーンだお。
まじでやっかいだお、後○○で死んでしまうなんて。
こんな軽い口調だけど内心びくびくだお。でもこの書き方だととても書きやすいんだお。
実際は怖くてしょうがないお。
でもこう書くと他人事のように思えてペンが進むんだお。
現実逃避キタコレ。
ところで今日は、何で音楽を聴くか考えてみたお。
唐突なのはごめんちゃい。
ブーンは音楽聴くのは好きだお。
大声で歌ってカーチャンに聞かれたこともあったお。
ものすごい恥ずかしかったお。
歌ってる途中で何か言ってくれればよかったのに。
まじファックだお。ファックファックマザーファック。


94 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:08:39.06 ID:4V7XNvxn0
話が脱線したお。
音楽を聴いた後なんとなく気持ちいいんだお。
自分がドラマの主人公になったかの様な気分になるお。
でもそこで考えたお。音楽を聴いてる途中と終わった後の違いはなんだろうって。
ところでブーンは富士山に登ったことがないお。
多分これから登ることはないんだお。
だってブーンは死ぬからだお。
怖いお、怖いお、死にたくない、死にたくないお
誰か助けてお、怖いお、怖いお、助けてくれお


95 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:10:38.29 ID:4V7XNvxn0
また脱線したお。
富士山なんだけど登る人は何で登るのかな?
登ること自体が楽しい?見える景色が美しいから?
なんとなく音楽聴くことに似てるお。
このことが気になってしょうがないお。
だからブーンは登ってみることにしたお。
頂上はいけないけど、やってみることにしたお。


96 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:15:52.52 ID:4V7XNvxn0
トーチャンの話を聞いて1週間がたった。
今ではもう普通の日常に戻ったようだ。
ただ変わったことは夕方にクーが訪ねてくることと、大学を休んでること。


川 ゚ -゚)「おじゃまします。ブーン君のカウンセリングに来ました。」

毎日同じ時間に聞こえる声。
今日こそ、ある話をクーに認めてもらおうとする。

( ^ω^)「きたお、早速部屋へいくお。」


97 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:20:13.09 ID:4V7XNvxn0
自分の部屋へと急かすブーン。
そこにカーチャンの声が聞こえてきた。

J( 'ー`)し  「ブーン、クーさんに変なことしちゃだめよ。」

( ^ω^)「ちょwwしねーお。」

まだちょっと、会話にぎこちなさが残っているが1週間前と比べて
だいぶ意思の疎通ができている。
軽口を叩いた後ブーンとクーが部屋に入る。

川 ゚ -゚)「さて、今日もあの話かな?」

( ^ω^)「そうだお、早く認めてほしいお。」


99 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:25:08.04 ID:4V7XNvxn0

あの話とは数日前のカウンセリングで話したこと。

川 ゚ -゚)「ブーン君、君は小さいころ何か夢はなかったか?」

それはこの一言から始まった。
半年病の人間にできることは限られる。
しかし、半年という期間はある程度のわがままが許される期間でもある。
家族を含め自分以外の皆が自分のやることに反対をしない。
無論、他人に迷惑をかけないという前提条件で。
だから、半年病患者は小さいころ夢だったことを叶えようとする人が多い
残された時間を有意義に使うため。
残る悔いを少しでも減らすため。

小さいころの夢を覚えていたブーンは率直に話す。

( ^ω^)「小さいころ僕は空を飛びたかったお。
       パイロットになりたかったお。」


100 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:28:11.20 ID:4V7XNvxn0
そうは言ったものの、子供みたいな夢だなと思い顔を赤くした。
普通なら笑うだろう。その子供臭い夢を。しかしクーはまじめに言った。
川 ゚ -゚)「そうか、パイロットか。
     何でパイロットになりたいと思った。」

笑う素振りをまったく見せず、追求してきた。
そのときブーンは思った。
この人は自分のやること、考えていることを笑ったり嘲笑したりしないと。
だからこそ自分はこの人に何でも喋るのだと。
それがわかってブーンは嬉しかった。
本物の理解者が現れた。正確には理解しようとするもの。
それ以来クーにはなんでも喋るようになった。


101 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:31:23.17 ID:4V7XNvxn0
川 ゚ -゚)「さて、また空を飛びたいという話しか?」

( ^ω^)「そうだお。諦め切れないお。」

ブーンは空を飛ぶのが夢だった。
小さい頃、空を飛ぶ機械を見ていつか絶対に乗るんだと誓ったりもした。

川 ゚ -゚)「前も話したがそれは不可能に近い。
     ブーン君も知っているだろう。
     ジャンボジェットをハイジャックして数百人道ずれにした話を。」

そう、半年病患者が事件を起こしてから世間は事故に過敏になった。
特に飛行機。いつあの惨劇が繰り返されるかもしれない。
人は少数では弱者に優しいが、多数になると途端に冷たくなる。
もっとも、これは仕方のないことだ。秤にかけたら誰しも多数の人間を守ろうとする。


102 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:33:56.31 ID:4V7XNvxn0

ブーンはネットで飛行機免許取得について調べていたが
どこも半年病患者はお断りだった。
ウルトラライトプレーンというスポーツ要素的な航空機もあったが
これもまた半年病患者はお断り。
クーに諦めろと言われているがどうしても諦められない。
しかし、腹は立たない。
クーの言うことはいつも現実的ですべてブーンのためだから。



103 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:38:11.03 ID:4V7XNvxn0

( ^ω^)「大丈夫だお。考えが変わったお。
     なんで、空を飛びたいかをこの2、3日考えてたお
     たしかに僕は空を飛ぶことに憧れてたお。
     でもそれはスタート地点だったんだお。
     僕は空を飛ぶ飛行機を見て素直にすごいと思ったお。
     こんな感動を与えてくれる人はすごいと思ったお。
     僕は飛行機に乗って他の人に自分のような感動を与えたかったんだお。」

ブーンは自分でも恥ずかしいことを言ってるなと感じている。
けど相手がクーなら何でも話せた。
どんな馬鹿げたことでも話の筋さえ通っていれば
子供っぽいだの、考えが浅いだの言わず一緒に考えてくれた。



105 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:41:22.63 ID:4V7XNvxn0

クーは話を聞き頷く

川 ゚ -゚)「成る程。それなら問題はないな。
    でもどうやって実現させる?」

あくまでも現実的な話をするクー。
むしろ現実的に話してくれないとブーンの夢は前に進まない。
そのことをよく知っているのでブーンは
どうやって実現するかの青写真を日記に書いていた。

( ^ω^)「これを見てくれお。」


106 名前: 映画館経営(愛知県)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:43:37.83 ID:4V7XNvxn0
そう言って日記のあるページを見せる。
クーはそれを熟読する。そして口元を緩ませこう言った。

川 ゚ ー゚)「いいじゃないか。
      これなら、君の夢は叶うんじゃないか。」

日記を見てクーのOKがでる。
ブーンはより現実的なものとするためクーと計画を練りこむ。


140 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:26:29.16 ID:sHzD4bnL0
('A`) 「何だブーンのやつ。ショボン家来いって。」

(´・ω・`)「さあでも、今まで携帯にも出なかったし何か考えがあるんじゃないの。」

('A`) 「サプライズパーティーか?そいつは楽しみだな」

ショボン家で待つ二人。
この家は大きなガレージがある。
ブーンが呼び出したのはそのため。
少し時間が立ち暇をもてあますドクオの携帯が震えた。

( ^ω^)}「おいすー。今着いたお。
      ガレージのほうに来てくれお。」

用件だけ伝えるとすぐに電話をきる。
これからすることに緊張していた。
今日伝えるのだ。自分の夢を、そして半年病を。
もしかしたら残念な結果に終わるかもしれない。
でも、行動しなければ結果は出ない。
どうせ死ぬんだ、やらなければ。


141 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:31:32.80 ID:sHzD4bnL0

('A`) 「よお、久しぶりだな。」

(´・ω・`)「やあ、久しぶり。
     ちょっとやつれた?」

( ^ω^)「おいすー、久しぶりだお。」

簡単な挨拶をしてガレージ内に入る三人。
ショボンがスイッチを押し照明をつける。

('A`) 「まったく何の用なんだよ。この前俺をシカトしたくせに。
    そういう悪い子は地獄へいっちゃうぞ。」

軽口を叩くドクオ。しかし15分後には彼はそのことを後悔する。

( ^ω^)「今日は重要な話があるお。
       まずこれを見てほしいお。」

そういって持参のノートパソコンの電源を入れある動画を見せる。



142 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:34:06.40 ID:sHzD4bnL0

(´・ω・`)「なんだ、鳥人間コンテストじゃないか。
     それがどうかしたの。」

('A`)  「それか、そういやここ数年見てねぇな。
     なんか詰まんなくなっちまったんだよな
     同じようなものばっかり出てさ。」

思い思いのことを口にする二人。
この動画を見せ終わった後ブーンが演説調で喋りだす。

( ^ω^)「ドクオの言った通り最近の鳥人間コンテストは面白くないお。
      僕は空を飛ぶのが小さい頃の夢だったけど
      最近は鳥コンを見てもぜんぜん心が動かないお。」

ブーンがくるくると歩き回り数秒の沈黙の後また喋りだす。


143 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:37:15.21 ID:sHzD4bnL0

( ^ω^)「なぜ心が動かないか?
      はいショボン君、答えて。」

(´・ω・`)「やっぱりドックンの言う通りじゃないの。
     同じような機体ばっかだし
     常連チームが出てるだけだもん。」

ここまで言ってドクオとショボンは気づき始め
ブーンがこれから言うことの予想が大方ついた。

( ^ω^)「その通り。
      初期のころは空を飛びたいものが集まるお祭りだったお。
      それが今では常連による記録を伸ばすだけの大会になってしまったお。
      それが悪いとは言わない。限界に挑戦することは決して悪くない。
      でも、面白くないんだお。ドキドキ感がなくなったんだお。
      飛びそうにない機体が飛んだり、飛びたいと思ってる人が飛べなかったりと
      そんな人を応援したりすることがないんだお。
      そんな感動がなくなってしまったんだお。」


146 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:43:01.95 ID:sHzD4bnL0

また黙り持ってきた鞄から大き目の紙を取り出し
そして、その紙を広げ宣言する

( ^ω^)「しかーし、その感動を取り戻すため」


少し間をおき、息を吸い込む


( ^ω^)「僕たちでチーム組んで出場するお。」


取り出した紙は、空と飛行機の絵。大会出場用紙だ。
絵本に書いてあるような郷愁を誘う絵だった。
ブーンはさらにもう一枚紙を取り出す。
自分で書いた飛行機のデザインだ。
これもまたレトロチックで郷愁を誘うデザインだった。
飛行機の絵に文字が小さく書いてある。
ホライゾン号と。


147 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:47:31.75 ID:sHzD4bnL0

突然のブーンの宣言に驚くドクオ。

(;'A`)  「マジかよブーン。」

しかしそれは突然やってきた。

('∀`)  「ぶひょほほほほほほほ
     マジですかブーンさん出場しようっての?
     恥かくだけじゃねーの。」

誰だって笑うだろう。
ただの明るい、いじられキャラだったブーンが急に熱く語り始めたのだから。
ショボンもつられて笑いそうになりながら喋る。

(´・ω・`)「ド、ドックン。笑ったらだめだよう。」

('∀`)  「お前も半笑いじゃねーか
     こらえてんの丸わかりだぞ。
     あの絵見ろよ。レトロチックすぎんだろ。」

ブーンは黙ってそれを見ている。
これぐらいのことは予想していた。
ドクオとショボンの性格上まず間違いなかった。
だが予想通りということはブーンにとって都合がいい。



149 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:49:32.47 ID:sHzD4bnL0

ひとしきり笑った後、少し申し訳なさそうな顔をするショボン。
ドクオから反省のそぶりはまったく見られない。
二人を説得するため、また鞄から封筒を取りだす。
半年病の診断書だ。

( ^ω^)「これ見てくれお。」

診断書をみてドクオが口を開く。

(;'A`)   「これは笑えんぞブーン。」

さっきまで大笑いしていたのが嘘のようだ。
ドクオはこの診断書が本物かどうか判断がつかない。
しかし、ブーンが語っていたのはこれが原因だとしたらありえる話だ。
だが、急に見せられても信じるのは難しい。
むしろ信じたくない、さっきまで大笑いしていたから。
だから、ドクオは半年病自体を冗談にしようとする。

(;・ω・`)「そうだよブーン。これはやりすぎだよ。」

ショボンも同じだ。日常を守るため、冗談にしようとする。
二人はブーンの真意をはかろうと顔を見つめた。


150 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:52:35.32 ID:sHzD4bnL0

( ^ω^)「本当なんだお……」

一言だけ告げるブーン。
二人は診断書を見ても本物としか思えない。
またブーンの顔を見ても本当のようにしか見えない。

沈黙が支配する中ブーンが話し始める。

( ^ω^)「僕は半年病にかかったお。
      発覚したのはドクオを無視した日だお。
      いままで、連絡しなかったのは申し訳ない。
      でも、自分が死ぬなんてなかなか受け入れられなかったんだお。」


152 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:56:55.65 ID:sHzD4bnL0

ドクオとショボンは黙って話を聞き続ける。

( ^ω^)「僕は死ぬんだお。間違いないお。
      でも時間はまだあるお。その時間を使って夢を叶えたいんだお。
      けど僕は叶えられないお。だって今度の鳥コンは半年以上先だお。
      僕はその時もう、ここにはいないお。
      だからといって諦めるたくないんだお。やってみたいんだお。
      二人にお願いするお。一緒に僕の夢をかなえてくれお。」

淡々と話すブーン。
人はこういった話に弱い。条件反射的に涙を流す。
ショボンはもう泣いていた。

(´;ω;`)「わかったよ、手伝うよ。
     ブーンの夢をかなえるよ。」


153 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 13:59:18.93 ID:sHzD4bnL0

簡単に同意するショボン。
泣いているショボンに対し冷静なドクオが話す。

('A`)  「あー、ブーン。
     お前それが脅迫に近い行為ってわかってる?」

いつも冷めているドクオが、この日はより冷たい口調で言った。

(´;ω;`)「ドクオ、そんな言い方はないよ。」

('A`)  「いや、お前はちょっと黙ってろ。
     普通そんなもん見せられちゃ断れねぇだろ
     今のショボンみたいによ。
     そのへんがわかってんのか、って聞きたいんだよ。」


154 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 14:02:02.97 ID:sHzD4bnL0

その通りだった。
半年病の診断書を見せるのは、黄門様の印籠を見せるのと同じ効果だ。
ドクオの言葉にブーンは自分の言葉をぶつける。

( ^ω^)「わかってるお。
      これさえ見せれば大概の人は僕のわがままを聞いてくれるお。
      だって死にいく人の頼みなんて断れないお。
      でも、僕は別にドクオが断ってもかまわないお。
      半年病じゃなかったら多分ドクオは断ってるお。
      だから僕に遠慮する必要はないお。」

半年病と発覚したときとは較べものにならないくらいの意見を言うブーン。


156 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 14:04:12.58 ID:sHzD4bnL0
ドクオはそれを聞いてから話し出した。

('A`)  「いや、それがわかってりゃいいんだよ。
     チーム組んでからことあるごとに
     半年病を理由にわがまま言われちゃなにもできなくなるからな。」

(´;ω;`)「ドックンそれじゃ…」

('∀`)  「ああ、面白そうじゃねぇか。
     実は俺こういうのに憧れてたんだ。
     でも、いつも斜に構えてっとなんだか自分からやろうって
     言い出せなかったんだ。」

二人の了解が取れる。
ブーンはまず第一段階を登ったと感じた。


158 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 14:07:54.51 ID:sHzD4bnL0

('A`)  「あと、もう少し言うとあれだかんな、今、俺笑ったけどな
     ブーンが半年病に罹ってくれて嬉しいってワケじゃないんだ。
     半年病はきっかけに過ぎない。
     自分じゃ言い出せなかった、こんなチャンスくれたことが嬉しいんだ。
     ありがとなブーン。」

照れくさそうに言うドクオ。
チームがここに結成され、喜ぶブーンとショボン。
ただドクオがある部分に突っ込む。

('A`)  「ところで金はどうするんだ。とりあえず金がなくちゃ話にならんだろ。」


159 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 14:11:30.34 ID:sHzD4bnL0

当然の話、お金がなければ何も買えない。
お金がなくて買えるのは同情ぐらい。
しかし、お金に関して心配はなかった。
トーチャンがブーンに二百万円を渡していた。

( ^ω^)「それは心配ないお。トーチャンが好きに使えって、くれたお金があるお。
       二百万円あるから多分大丈夫だお。」

('A`)  「そうか、ま、十分だろうなそれだけありゃ。
     それともう一つ。機体の名前それで行くのか。」

ブーンが描いた絵についてドクオが聞く。

( ^ω^)「そうだお。ホライゾン、希望って意味だお。」

(;'A`)  「直球過ぎてなんか微妙だろそれ。」

ドクオが個人的な感想をつげる。

(;^ω^)「だめかお?」


160 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 14:12:54.17 ID:sHzD4bnL0

死にゆくブーンにとってこの名前はあまり変えたくなかった。
なぜなら、死が確定しているブーンの、心の支えであり希望だから。
そこへ、会話に入ってこなかったショボンがペンを持ってきて
ホライゾンと書いてある左に、文字を付け足す。




内藤ホライゾン



そのシュールさにブーンとドクオが爆笑する。

('∀`)  「なんだよこれ
     意味わかんねぇよ。」

( ^ω^)「おっおっおっ
      でもなんか語呂がいいお、気に入ったお。」

(´・ω・`)「何で笑うの?
     かっこいいのに。」

こうしてブーン達がはその日、夜遅くまで今後どうするかを語りあった。


170 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 15:10:35.07 ID:sHzD4bnL0

数日前、ブーン家。

クーからのOKサインが出てからブーンはトーチャンにある頼み事をした。
それは、お金をくれということ。
ブーンが夢をかなえるのにはまとまったお金が必要だ。
だが、学生であるブーンにはそれほど蓄えはない。
親に迷惑をかけたくないブーンだったが、クーに諭されお金をせびる事にした。

( ^ω^)「トーチャン話があるお。」

新聞を読んでいたトーチャンがブーンのほうを見て話す。

(`・ω・´)「ん、なんだい。」

もじもじしながらブーンがお願い事をする。

( ^ω^)「あの、いいにくいんだけど…
      お金が欲しいお。
      クーさんと話し合って、ある夢を叶えたくなったお。
      でもそのためにはお金が必要だお。
      僕んちにどれだけ余裕があるか知らないけど
      よかったら少し僕にくれないかお。」


171 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 15:12:33.09 ID:sHzD4bnL0

ストレートに切り出す。
だがトーチャンは顔色を変えず席を立っていった。
カーチャンは何も言わず食器を洗っている。
ブーンは言い方をまずったかなと思うと同時に
親孝行もしていないのにお金をせびる自分がみっともなくなった。

1、2分後、トーチャンが分厚い封筒を持ってきた。

(`・ω・´)「この中に二百万ある。
      私と母さんの老後を考えても余分と思える
      我が家の貯金がこの中に入っている。
      私の条件を聞いてくれたらこれをあげよう。」

こうゆうときが来るのを予想してトーチャンが用意していたようだ。
ただブーンは条件というのが気になった。
しかしトーチャンが難癖をつけて渡さないという考えはなかった。



172 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 15:16:08.06 ID:sHzD4bnL0

( ^ω^)「条件って何だお?」

(`・ω・´)「条件というのは簡単だ。約束すること、それだけだ。
      一つ、人に奢ったりしないこと
      二百万は学生にとっては大金だろう。
      ブーンが心細いのをいい事にたかり始めるかしれん。
      また、お前が、病気だからといって
      人に媚びるような人間にはなって欲しくない。」

(`・ω・´)「二つ、私にその夢を聞かせること。
     その夢がなんでもいいが、やっぱり気になるじゃないか。
     笑ったりしないから教えておくれ。」

簡単な条件だった。一つ目はブーンがしっかりしていればそれでいい。
ブーンは自信があった。トーチャンの言うように人に媚びないという自信が。
それにカウンセリングの効果もあり、だいぶ落ち着いてしっかりとしてきたブーンは
トーチャンの言いたいことがよくわかった。
自分が半年病だということをよく理解していた。

二つ目は親に話すのは恥ずかしかったがクーに言ったことをそのまんま伝えた。
それを聞いたトーチャンは微笑んで封筒をブーンに渡した。
ブーンが喜んで部屋へと戻る。どうやら計画を練るようだ。


173 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 15:17:38.71 ID:sHzD4bnL0

カーチャンと二人きりになったリビングでトーチャンが話し出した。

(`・ω・´)「聞いてたかカーさん。
      小さい頃と変わってなかったなあ。」

J( 'ー`)し 「そうね、でもあの子らしいじゃないの。」

(`・ω・´)「そうなんだがなあ。
      どうも少し青臭いような気もするんだがなあ。
      感動を与えるんだ、って。」

J( 'ー`)し 「あら、そんなこと言って。あなたがブーンより
      3、4歳上のときにこう言ったの覚えてる?
      俺はこの仕事で、俺に関わる人を皆幸せにするんだ、って。
      ブーンのこと少し青臭いっているなら、
      あの頃のあなたはどれくらい青臭いんでしたっけねぇ。」

トーチャンが思い出したくない過去を振り返り恥ずかしげな顔をしている。

(;`・ω・´)「いやまあそんなことも言ったけど、それは若気の至りというものじゃないか。」

J( 'ー`)し 「あらあら、顔がまっかですよ。
      でも、あなたその時頑張ってたじゃないですか。
      あたしはそこに惹かれたんですけどもね。」

いきなりの言葉にお茶をむせ返させるトーチャン。


175 名前: 鉱夫(愛知県)[] 投稿日:2007/03/14(水) 15:19:31.06 ID:sHzD4bnL0
そして誰に言うわけでもなく喋り始めた。

(`・ω・´)「そういえば、いつからかなあ。
     そんな青臭い夢を忘れたのって。
     なつかしいな。でももうあの頃にはもどれないんだよなあ。」

J( 'ー`)し 「いまからでも青臭くなればいいじゃないですか。
      やってみなけりゃ何も始まりませんよ。
      あの二百万円だって本当はハーレー買うつもりだったんでしょ。
      青春を取り戻す気満々じゃない。」

(;`・ω・´)「なんで知ってんの?黙ってたのに。」

J( 'ー`)し   「だってあなたいつも車からバイクが見えると
         ものほしそうな目してたじゃないですか。
          誰でもわかりますよ。」

そういってブーン家の夜は更けていった。
トーチャンは翌日カーチャンからニヤニヤされっぱなしだったのをブーンは見ていた。


3 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:15:28.40 ID:f6unWRrT0
クーの日記

今日もカウンセリングに行ったがブーン君は自分の立場をよく認識しているようだ。
今までの経験上、死を迎えるにあたってそれを受け入れるまでの期間が短いように思える。
だが、単純にブーン君の精神構造が死を受け入れやすい形をしているのかもしれない。
死を思い恐怖しても拒否することはしていないようだ。
半年病の印籠的効果をよく理解していて
使っていい場面とそうでない場面での使い分けが上手い。
不思議だ。なぜそうなったのだろう。興味深い。
しかし彼なら私の考えを理解してくれるような気がする。
理解しないまでも理解しようとする心があると思う。
だが、まだ話さなくてもいいだろう。人によっては私の話を悪とするものもいる。
また半年病に次ぐ印籠的効果が出てしまう。あまり半年病患者には話したくない。
結局それは甘えになってしまう気がするから。
それと気になるのがブーン君の自慰行為だ。
部屋のゴミ箱にそれらしきものは見つからない。
性的に不能になった場合さらに自分を卑下する可能性がある。
ブーン君は大丈夫だろうか。



4 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:16:31.53 ID:f6unWRrT0

チームが結成されて一週間がたった。
この間に大体の方針や機体の構造が決まり
あとは、実際に飛ぶための揚力計算や強度計算、機体の製作をするだけだ。
他にもチーム内でのルールも出来上がった。
集まりは二日に一回。来れない場合は必ず連絡すること。
機体の制作費二百万はブーンが管理し、材料を買ってきたときに
レシートと交換すること。
この二つが主なルールとなった。
特に不満の声は出ず三人はルールを守ると約束しあった。



5 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:17:37.28 ID:f6unWRrT0

三人の大学は工学系だったので工作機械や
計算などは教授に質問すれば大抵のことが解決した。
一番大きかったのはCADが学内で使用できたことだった。
CADはコンピューターを使って三次元の図面を描き
応力計算や流体の計算がシミュレーションできるものだ。
これにより機体の設計が比較的簡単となった。



6 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:19:45.88 ID:f6unWRrT0

大学内、そろそろ一日の授業が終わり学生が帰宅するころ
ある二人が今後の予定を話し合っていた。

('A`)  「ショボン、俺ちょっと教授に揚力計算のこと聞いてくるわ。
     だから遅れるってブーンに伝えといてくれ。」

(´・ω・`)「わかったよ、じゃあ僕は先に帰ってブーンの手伝いしているね。」

ブーンは無駄な学費を親に負担させたくないと思い大学を辞めた。
そのため施設を使用できない。
代わりにガレージで今できる作業を行っている。
ドクオが計算でわからない部分を教授に聞きに行き、ショボンは駅へ歩いていった。



9 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:22:46.77 ID:f6unWRrT0

流体が専門の教授の部屋へ行きノックするドクオ。
彼はこんな風に質問をしに行くのは初めてだったので少し緊張していた。
部屋の中からどうぞという声が聞こえる。

('A`)  「失礼します。今日はちょっと質問があってきました。」

そう言いドクオは部屋の中に入る。

( ・∀・)「じゃあそこに座って。
     質問って何かな?」

('A`)  「実はこれの計算法なんですけど…」

翼の断面図を見せながら質問をする。
本職であるモララー教授がすぐに、飛行機の翼断面だと気づく。
そしてなぜ生徒がこんなものを持ってきたのかが気になり率直に尋ねる。

( ・∀・)「これは、飛行機の翼断面だね。
     僕の授業じゃこんなことやってないけど
     何でこんなものもってきたの?」

('A`)  「いえ、ちょっとあれでして…」


11 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:24:54.78 ID:f6unWRrT0

ドクオは答えをはぐらかそうとする。
飛行機を作るなんて恥ずかしくて言いたくなかった。
多分笑われるだろうから。自分がブーンにしたように。

( ・∀・)「気になるね。なんで?」

あくまで答えを求めようとするモララー教授。
説明をしなければ教えてくれそうにない雰囲気の中
ドクオは俯きながら話した。

('A`)  「いや、あの実は僕、鳥人間コンテストに出場しようと思いまして
     それで、揚力計算でわからないところがあったんで聞きにきたんです。」

恥ずかしそうに話す。


12 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:26:37.53 ID:f6unWRrT0

しかしモララー教授はドクオを見ながら、微笑んでいる。

( ・∀・)「そういうことなら、早く言いたまえよ。
     なんか楽しそうじゃないか。どれ、どこがわかんないんだ?」

モララー教授が急に嬉しそうに話す。
じつはそんなものだ。
自分が恥ずかしがっていても相手からすれば
羨ましいことかもしれない。
このときはまさにそれだった。
誰しも目標に向かっている人を笑いはしないだろう。
さらに、それが道理にかなった方法だったら。
そんなことに気づきながらもまだ少し恥ずかしそうにドクオは質問をする。
それと大人は、実は青年のそんな青臭いようなことが大好きだった。



14 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:30:10.05 ID:f6unWRrT0

ショボン家のガレージではブーン、ショボン、クーの三人がいた。
クーはカウンセリングのためきているのだが、つい飛行機が気になって
長居してしまう。
もうショボンもドクオもクーに慣れていた。

理系ではないクーだがどうやって飛ぶか興味があるらしく
作業をしているブーンによく質問をしていた。
ショボンはパソコンで計算値を確認している。



15 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:31:56.35 ID:f6unWRrT0

川 ゚ -゚)「なあブーン君、これはどうやって操縦するんだ?」

基本的なことを聞いてくるクー。
ブーンはこんなクーに教えるのが楽しいらしく作業を中断して教えだす。

( ^ω^)「こんなふうにする予定だお。」

図面を取り出しクーに見せる。
しかし、図面の読み方を知らないクーは理解できない。

川 ゚ -゚)「すまんがよくわからん。」

クーはストレートに言う。
ブーンは教えたいらしく、その辺を見渡し説明できるようなものを探した。


16 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:34:12.63 ID:f6unWRrT0

そして、自転車を持ってきてクーに説明する。

( ^ω^)「これみてお。ペダルを回すとタイヤが回るお。
      これのちっちゃいのを二個作って昇降舵と尾翼を動かすんだお。」

と言って簡単な説明をする。
実物の例を見せたほうがイメージしやすくクーも納得する。

川 ゚ -゚)「なるほど、それをここに付けるわけか。
     そうなると、映画で見たような操縦桿はないんだな。」

飲み込みが早く、一歩先を答えとして出す。
ブーンは説明のしがいがあるなと満足して作業に戻る。



18 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:37:58.69 ID:f6unWRrT0

ドクオがやってきた。
何故か小汚いコンポセットを抱えている。

('A`)  「ういーす。サボってんじゃねぇぞ。」

挨拶をしてコンポセットを下ろす。
さらにドクオの鞄からレンタルの袋が見える。

(´・ω・`)「ドックン何それ?」

('A`)  「なにってコンポセットだろうが。
      ガレージ内が寂しいから拾って持ってきたんだよ。」

(´・ω・`)「いやそうじゃなくて、それ昨日僕が捨てたの。」

('A`;) 「そうなの?」

(´・ω・`)「まだ使えるけど、古いから捨てたんだよ。」

('A`;) 「まあいいじゃねぇの使えるんなら。」

('∀`)  「とりあえずいいもん持ってきたんだよ。
      コンセント借りるぞ。」

笑顔でコンセントにプラグを差し込むドクオ。
レンタルの袋からCDを取り出しコンポに入れる。
歯医者のドリルのような音を出しながら起動するコンポ。
そこから誰もが知っている曲が流れ出す。


19 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:39:34.26 ID:f6unWRrT0

('∀`)  「いいだろこれ。この場所にぴったりだろ。」

ドクオが笑顔のまま同意を求める。
誰もが好きな曲。多分嫌いな人はいないんじゃないだろうか。
そしてそれは、この場にぴったりだった。
ベースのソロから始まるメロディーが特徴的な曲。








〜When the night has come〜

コンポから流れるのはスタンドバイミー。
もちろん、名画スタンドバイミーの主題歌。
この映画を見た人はこんな冒険に憧れたんじゃないだろうか。
一生の思い出に残るような出来事に。


21 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:42:14.29 ID:f6unWRrT0

皆作業を中断して曲に聞き入る。
サビのダーリンダーリンとスタンドバイミーを歌う部分だけ
クーを除く三人が熱唱しだす。

決して上手くはない。けど三人はその瞬間が楽しかった。
憧れていた、映画のように思い出に残る出来事。
それを経験中の三人はその曲が無性に気に入った。

( ^ω^)「おっおっ、いいお気に入ったお。」

('∀`)  「だろだろ。」

(´・ω・`)「なんか映画の中に入った気分だよ。」

('∀`)  「だろだろ。」

皆が満足したその後、ドクオが質問してきた計算式に値をあてはめ、
数値を出したとこでこの日は解散にした。
スタンドバイミーはずっとリピート再生だった。



24 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:49:42.44 ID:f6unWRrT0

何か目標に向かっていると時が経つのは早い。
でも振り返って見るとまだこんな日か、とも思う。
ただ変わったことはブーンが半年病になったこと、それと
ドクオとショボンが教授たちと仲良くなったこと。
校内を歩いている二人を見つけるといつも声をかけてくるようになった。
特にモララー教授。

( ・∀・)「おい、ドクオ君ショボン君待ちたまえ。お昼はもう食べたかね。
     よかったら一緒に食べようじゃないか。」

狙っているのか同じ曜日に声をかける。
しかし、お昼代を出してくれるので二人は喜んでついていく。



26 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:52:49.75 ID:f6unWRrT0

( ・∀・)「どうだね、あれから。
     どこまで進んだ?」

話すのはもっぱら飛行機のことばかり。
というか教授も参加したいようだ。

('A`)  「そうですね、後は翼の製作とプロペラの製作ぐらいですかね。」

進行状況を伝えるドクオ。
モララー教授には製作係としてのブーンの存在を教えていた。
けど、半年病のことは言わなかった。
言ったら多分、義憤にかられて手伝いだそうとすると思ったからだ。
手伝ってくれる分にはかまわないのだが、
教授という立場がガレージ内の関係を壊してしまうようにみえた。
対等な立場だからどんな意見も言い合えたが
教授の意見となると、どうしても権威が付きまとう。
そんなふうだから三人で話し合って
わからないところだけを教授に聞きに行くようにしていた。



27 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:55:46.40 ID:f6unWRrT0

( ・∀・)「そうか、プロペラ製作は難しいそうだからな。気をつけたまえよ。
     あのライト兄弟もプロペラが一番苦労していたと言っていたよ。」

教授というのは総じて子供っぽい。
モララー教授は結構な飛行機マニアらしくいろんな話をしてくれた。
そして、それが役立つときもあったし、眠くなるような話もあった。
ただ、いつも別れ際に羨ましそうな顔をするため二人は少し心が痛んだ。



28 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:57:28.25 ID:f6unWRrT0

ある日の集まりのない日。ブーンは自宅でクーを待っていた。
いつもの時間にクーが来る。
実はこのころブーンはクーに恋心を抱いていた。
カウンセリングを受けているうちに
クーの考え方や性格、自分自身に厳しいところ、それに話の論理性に惹かれた。
ブーンはこんな聡明な女性がいるんだと知った。
しかしブーンは悩んでいた。言っていいものか。
印籠的効果でクーを悩ませるだけじゃないか。



29 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 15:58:23.33 ID:f6unWRrT0

悩んでいるうちにクーがきた。いつもの言葉。

川 ゚ -゚)「おじゃまします、ブーン君のカウンセリングに来ました。」

もう慣れたものでクーはそのままブーンの部屋へと向かう。
一応ノックをして確かめる。

川 ゚ -゚)「やあブーン君、入るぞ。」

ブーンの返事があるまでクーはその場で待っている。
一度ブーンがトイレに入っていて返事がないときでも
十分ほど待っていたことがあった。
それ以来ブーンはクーが来る時間には部屋で待ったいるようになった。
ブーンがどうぞと声を出しなかに招く。



30 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:00:47.38 ID:f6unWRrT0

川 ゚ -゚)「こんにちは。今日はだいぶ顔色がいいな。
     睡眠を取っている顔をしている。」

クーは一度も調子はどうだと尋ねたことはなかった。
受け取り側がどんなふうにでもとれる質問をきらっていたからだ。
ただこのころブーンは不眠症になっていた。
寝る前にどうしても死を考えてしまうから。
自分は何者だ、自分はいったい何なんだと考え
もうすぐ来る死を思い起こし恐怖に襲われるからだ。
だから寝る前はいつも睡眠薬を服用する。



31 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:02:36.08 ID:f6unWRrT0

( ^ω^)「こんにちわですお。」

挨拶をしてクーを座るように促す。

川 ゚ -゚)「さて今日は何の話をする?」

ここ最近ブーンとクーはよく死について語りあっていた。
お互いに自分が考える死の定義などを話し合い
矛盾した所や、何でそう考えるかを教えあい
理解しあおうとしていた。


32 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:08:36.93 ID:f6unWRrT0

( ^ω^)「今日は自分の意識についてですお。」

ブーンは話す内容を前もって考えておいた。
考えていたというより日記に書いた疑問を話すようになっていた。

川 ゚ -゚)「ほう、それはどういうことかな?」

( ^ω^)「死がせまってきてよく考えるんですお。
      僕が死んだら意識はどこに行くのかって
      パソコンのデータを消すようにまったくなくなるのか
      それともどこかに残るのかって。」

川 ゚ -゚)「ふむそうだな。私は、まったくなくなると思うんだがな。
     やっぱり人間も一種の機械と考えるとブーン君が言ったみたいに
     データを消したときのようにまったくなくなってしまうと考えるな。」

( ^ω^)「そうですかお。」

ブーンは少し悲しそうな顔をする。


33 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:09:35.52 ID:f6unWRrT0

そしてクーが続ける。

川 ゚ -゚)「だがな、こうも考えるよ。
     私は意識というものは自分は何者だと考えるところにあると思う。
     確かに死んだらブーン君の意識はなくなるだろう。
     しかし、もしどこかで誰かが自分は何者だろうって考えたらそれは
     ブーン君になるんじゃないかな。」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

川 ゚ -゚)「例えば二人の少年がいたとしよう。
     太郎君が自分は何者だろうと考え、次郎君は考えなかった。
     このとき太郎君が死ねば太郎君は存在しない。
     だけど、次郎君も自分は何者だろうと考え始めたら
     それは太郎君と同じになるんじゃないのかなって。」



34 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:11:36.93 ID:f6unWRrT0

ブーンはよくわからない顔をしている。

川 ゚ -゚)「つまり、自分は何者だろうと考えたら
     その考えを持つものは皆同じ存在になると考えているんだ。
     同じ時間、同じ考え、同じ疑問を持っているんだからな。
     答えがあるかわからないが探しているならば道は一緒のはずだろう。」

ブーンは話に聞き入った。そんな考え方もあるんだなと。
そして確信する、やっぱり自分はクーのことが好きなんだと。

( ^ω^)「僕は自分は何者だろうと考えているお。
      クーさんもそう考えているなら同じ存在ってことかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな、そうなる。自分は何者だろうって考えた瞬間
     新しい意識ができるからな。その意識が共通だったら同じ存在だろう。
     このことを考えた瞬間、私は君でそして一つの存在になる。
     本当にそうかはわからないが、同じ空間を生きているならば
     その生きている人の数だけ意識があるわけだからな。」



35 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:12:34.81 ID:f6unWRrT0

こんな会話を繰り返しているとブーンは安心する。
自分が死んでも意識を受け継ぐ人がいると思えるから。
クーは自分の考えを言っているだけだがそれでもブーンはそれに救われていた。
またクーも、自分の話を理解しようとするブーンに興味を抱いていた。

川 ゚ -゚)「ブーン君は珍しいな。私の話を理解しようとするものは
     半年病患者の中にはいなかったのに。」

そう言うとブーンは照れた。
クーのことが好きだから理解しようとしているのに
その下心と思えるものを褒められたのだから。
もっとクーを知りたいブーンは質問した。

( ^ω^)「そうですかお。
なんで半年病患者には理解しようとする人が
いなかったんですかお?」



37 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:15:59.99 ID:f6unWRrT0

話そうかどうか少し迷い、ブーンなら大丈夫だろうと思い話し始める。

川 ゚ -゚)「そうだな、これは偏見のように思うんだがやっぱり
     死の恐怖が関係していると思う。
     誰だって恐怖からは逃げたい。ましてや死だ。
     宣告された恐怖から考える余裕がなくなるだろう。
     そうなると、わかりやすく都合のいい解釈を求めると思うんだ。」


38 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:19:00.89 ID:f6unWRrT0

( ^ω^)「例えば?」

ブーンはさらに深く聞こうとする。

川 ゚ -゚)「実際に統計があるんだが、この国の半年病患者のうち40%が新興宗教に入っているんだ。
    ただその宗教ではお金を払って壷だの掛け軸だのを買えば
    天国へいけると言われるんだ。
    この国で暮らしていればお金で買えるものがほとんどだと誰もが思っている。
    そしてお金さえ払えばなんでもできると考えているんだな。
    その結果、お金さえ払えば天国へいけると思い込み大金をつぎ込むんだ。
    大金をかけて安心したいんだろうな。これで大丈夫って。
それまでの経験上からお金を払うという行為を信じてるんだろうな。
    もっとも、患者自体が少ないからこのことは問題視されてはいないけどな。」



39 名前: 商人(愛知県)[] 投稿日:2007/03/15(木) 16:19:54.47 ID:f6unWRrT0

言い終え時計を見る。

川 ゚ -゚)「おっと、そろそろ時間だ私はもう帰ろう。」

クーはいつも話が盛り上がったところで帰る。
ただブーンは引き止めることはしない。
もし帰る理由を聞いてそれが夕飯の時間だからと言われたら
落ち込むからだ。
自分は夕飯以下なのかと思ってしまうから。

クーが帰った後、今日聞いたことを日記にまとめ自分の意見を書き入れた。
そこであることに気づいた。
まだクーが何でカウンセラーになったのか聞いていなかった。
忘れないように書きとめ今度聞いてみようと思った。
しかし、それが後日ブーンにとって辛い体験となる。


95 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:50:23.33 ID:Dx4RVTjx0

ブーンが死ぬ何日か前ついに飛行機が完成した。
しかし、プロペラは力の伝達効率が悪くまだ製作を繰り返している。
ただ、グライダーのように自動車で引っ張り飛ばすことは可能だった。
そこで、せめてブーンに少しでも空を飛ばしてやろうと考えたドクオとショボンが
軽トラックを借りてきて広い場所で飛ばそうと企画していた。



96 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:54:31.43 ID:Dx4RVTjx0

三人が集まりのある日、ドクオとショボンが朝早くからガレージに集合し
飛行機を分解していた。

(´・ω・`)「ねえねえドックン、これどうやってはずすの?」

飛行機を作るのに必要な計算をしていたショボンは
いまいち実作業になれていなかった。
一方ドクオは図面を描くことを担当していたので構造は熟知している。

('A`) 「ここは先にこのボルトはずすんだよ。
    気をつけろよ、強度が弱い部分もあるからな。」

そう言いながら分解を進める二人。
それでも二人は浮き浮きしていた。
自分たちが作った飛行機が初めて空を飛ぶ。
その瞬間を今日見れるのだと。
こんなふうに目標に向かっていくのは初めてだった。
だからこそ余計に楽しくなっていた。
分解をしながらドクオはそう考えていた。


97 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 14:57:06.22 ID:Dx4RVTjx0

('A`) 「しっかしブーンのやつしっかり作ってんな。
    寸法値がかなりの精度だぞこれ。」

寸法値通りに自作するのは根気のいる作業だ。
工学系の二人にはその苦労がよくわかっていた。
それは、そこまでブーンが空に憧れていたということだ。
ただ、ドクオには心配もあった。
この飛行機、飛ばないんじゃないかなと。
確かにブーンの夢は感動を与えることだった。
でも、空を飛びたいに決まっている。
そんなことはよくわかっていた。
ブーンを空に飛ばしてやりたい。しかし失敗したらもうほとんど時間がない。



98 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 16:04:59.38 ID:Dx4RVTjx0

('A`) 「なあショボン、これ本当に飛ぶかな?」

ドクオは不安を口にし、ショボンと共有しようとする。
だがショボンは不安な素振りはまったく見せず言った。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。計算上は30〜40キロほどで飛べるよ。」

確かに何度も計算した。シミュレーションもやった。
それでもドクオは心配だった。
ショボンから、もしかしたら飛べないかもしれないねと聞きたかった。
そうすれば、ブーンを飛ばせなかったとき自分一人でなく
二人の責任になると思ったから。
しかしドクオはそのことに気づいてなかった。
ただただ不安だった。
ブーンから責められるんじゃないかなと。

('A`) 「そうか、でも不安なんだよ。
    ブーンを飛ばせなかったら、あいつどんな顔するかなって。」

まだ同意を求めるドクオ。
それはしょうがないことに思えた。
人が一人死ぬ。
それも一緒にやってきた友達が。
わかっていたことだ。
今まで抑えてきたのにその瞬間が迫るとやはり現実なんだなと実感する。


99 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:00:15.17 ID:Dx4RVTjx0

(´・ω・`)「飛べなかったらそれはそれでしょうがないじゃん。
     ブーンは僕たちを責めないよ。僕たちは三人でやってきたんだ。
     計算をしたのは僕、図面を描いたのはドクオ、作ったのはブーン。
     でも、どれも三人で納得しながらやってきたじゃない。」

一人がずっとその作業をやってきたわけじゃない。
お互いを手伝い合い、意見を言い合い作ってきた。
ショボンはそのことの意味をよく知っていた。
失敗しても連帯責任だからと甘えるわけじゃない。
そんなショボンの言葉にドクオは少し不安が柔らいだ。

('A`) 「そうだな、飛べなかったらやり直すだけだ。
    直し終わったとき、そのときブーンはいないかもしれないけどな。」


100 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:03:03.89 ID:Dx4RVTjx0

その日は晴天。雲がぷかりぷかりと浮かぶ綺麗な空だった。
ブーンが集合時間にやってきた。
分解作業はもう終わっている。
軽トラに積み込み早くも運転席に乗っている二人。

('A`) 「よお。今日はこいつをテスト飛行させに行くぞ。」

ブーンがガレージに入ってくるなり予定を伝えるドクオ。
しかしブーンは軽トラと分解された飛行機を見てすぐ理解する。

( ^ω^)「まじかお、今日いくのかお。」

ブーンにはテスト飛行のことを伝えていなかったのでびっくりする。
だがすぐに満面の笑みに変わった。
これからすることへの期待。
三人が半年近くかけて作ったものの成果を試す期待。
いい笑顔だった。
目の下のくまと、死の不安に怯え表情をのぞけば。


101 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:09:32.20 ID:Dx4RVTjx0

(´・ω・`)「ほら早く乗って。荷台しか空いてないけど。」

('A`) 「特等席だぜ、わざわざ真ん中に機体の座席を置いたんだ。」

ショボンとドクオが急かす。かなり楽しみのようだ。
ブーンが荷台に積んである飛行機の座席部分に座る。
これから空を飛ぶという期待に胸を膨らませ。
しかし、そこでブーンが二人にあるお願いをする。

( ^ω^)「ごめん、ちょっと待ってほしいお。
      空を飛ぶとこクーさんにも見せたいお。」

ブーンはガレージによく顔を出していたクーにも見せたいと思った。
また、空を飛ぶかっこいいと思える姿を見てもらいたかった。
別に急ぐわけでもない。今日は一日晴れの予報だ。
二人がブーンを急かしていたのはただ早く飛ばしてみたいから。


102 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:10:29.18 ID:Dx4RVTjx0

ブーンがクーの携帯に電話をかけ了解をとる。
クーがくるまでに一時間ほどかかるようだ。
ドクオがその間にドンキヘ行って
映画に出てくるような飛行服を買おうと言う。
安っぽいものでも雰囲気は大事だ。
三人はドンキに行きそれっぽい服とそれっぽい帽子を買った。
ついでにとバイク用だがゴーグルも買った。
ほかにもいろいろ買いガレージへと戻っていった。

ガレージの外にクーが立っていた。

川 ゚ -゚)「おはよう、ついに飛ばすんだな。」

簡単な挨拶を済ませ軽トラに乗り込む四人。
ショボンがドンキで買ったステッカーを軽トラに貼る。
そのステッカーはこう書かれていた。
最大積載量夢いっぱい。
荷台に飛行機とブーンとクーを乗せ出発していく。
ショボンがクーと席を替わろうとするがドクオがそれを察知し止める。



103 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:14:31.79 ID:Dx4RVTjx0

道路を走っているときブーンはご機嫌で飛行機の座席に座っていた。
それだけでも空を飛んでいる気がした。
交差点を曲がる度にブーンは子共みたいなことを言っている。

( ^ω^)「右旋回だお、次は左旋回。ブーン
      敵機発見、赤信号を破壊だお。ダッダッダッダ。」

まるで飛行機の模型を持って走り回る子共のようだった。
そんなブーンを見てクーが笑っている。
それに気づいて我にかえるブーン。
照れくさいのか、それとも恥ずかしいのか
弁解がましくクーに話す。

(;^ω^)「いやこれは、男の子ならみんなやるお。
      ていうかやりたくなるお。ねえドクオ、ショボン。」



104 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:18:31.12 ID:Dx4RVTjx0

ブーンが車内にいる二人に話しかける。
だが二人は聞こえないふりをして黙っている。
耳を真っ赤にし俯いているブーンにクーが声をかける。

川 ゚ ー゚)「面白そうだな、ちょっと私にも代わってくれないか。」

笑いながらクーが言う。
ブーンは席を代わりはじめる。
ここに座れば絶対にやりたくなるはずだと思ったから。

信号待ちのわずかな時間に席を交替する。
信号が青になってからけいと軽トラが進みだす。
クーが飛行機の座席に座っている。
だがブーンのやったようにはしゃぐことはない。



106 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:21:54.11 ID:Dx4RVTjx0

川 ゚ -゚)「なかなかいいもんだな。空を飛ぶってのはこんな感じなのかな。」

素直な感想を述べる。
とても冷静だ。ブーンはさっきの行動を思い返し赤面した。
だが、クーにも先ほどやったことを薦めた。
そうすればもっと空を飛んでる気持ちになれると言って。
それに頷きクーが声をあげる。

川 ゚ -゚)「右旋回だ、次はターン。
     私から逃げられると思うなよ。
     それ信号機破壊だ。」



107 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:23:03.44 ID:Dx4RVTjx0

映画で見た台詞を真似る。
クーの声はまだまだ続く。

川 ゚ -゚)「このヘナチョコが。
     帰ってママにキスしてもらいな。」

クーが自分の世界に入り込む。
それを見てブーンが笑う。
その笑い声でクーが現実に帰ってきた。

川 ゚ -゚)「悪くないな。確かに臨場感が増したよ。」

ブーンが自分の気持ちをわかってくれたと思い笑う。

川 ゚ -゚)「なんで笑う。
     ブーン君がやれと言ったんじゃないか。
     そんなに笑ったら恥ずかしいじゃないか。」

その一言で車内の二人も笑い出す。
さっきまで大声で叫んでいた者と同一人物とは思えないギャップに。


109 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:27:40.55 ID:Dx4RVTjx0

出発して一時間ほどで目的地に到着した。
ピクニックコースが近い川沿いの道だ。
本来車は乗り入れ禁止だがそこには目を瞑り
長い直線の道へと入っていく。
車から降りて三人が飛行機を組み立て始める。
今回はブーンがいるので作業が早かった。
組みあがった飛行機を見て感に浸る三人。
早速ドンキで買ってきた飛行服っぽいものを着る。
順番に思い思いのポーズで飛行機と写真を撮っていく。
最後にクーを入れて四人で写真を撮った。
そしてロープで軽トラと飛行機を繋げる。



110 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:33:25.28 ID:Dx4RVTjx0

('A`) 「ついにこの時がきたな。」

ドクオが緊張のためタバコを何本も吸っていた。
ブーンもショボンもクーも緊張していた。

ドクオが運転席に乗り込む。
ショボンは外から携帯電話でブーンに指示を出す役目。
目的地に着いてから少し時間が経っていたためギャラリーがいる。
それが三人を余計に緊張させた。

('A`) 「そろそろ飛ばすぞ。ロープのフックをうまく外せよ。」


111 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:34:27.91 ID:Dx4RVTjx0

ブーンに軽く注意をして軽トラをゆっくり走らせる。
ロープのテンションがあがり引っ張られる飛行機。
そして徐々に軽トラを加速させていく。
時速37キロになった瞬間、飛行機が浮かび始めた。

(´・ω・`)「ブーン、昇降舵のレバー回して。
     ゆっくり高度を上げていって。」

飛行機が少しずつ地面から離れていく。
五メートルほど上昇したところでまた指示を出す。

(´・ω・`)「ブーン、フックを外して。そのままその姿勢を保って。」

フックがはずれ、よたよたと滑空する飛行機。
ギャラリーが歓声を上げる。
ドクオが軽トラを端によせ強引に止める。
急いでドアを開け飛行機を見ようとする。
ちょうどそのときドクオの上をブーンが飛んでいった。
はじめて見る真下からの機体。
興奮を隠し切れず叫びだす。

('∀`)  「いけぇ、ブーン!!
     どうだ気持ちは?最高か?」



112 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:35:35.64 ID:Dx4RVTjx0

( ゜ω゜)「ふぉおおおおおお。」

初めて見る景色。
ブーンにとって最初で最後のフライト。
フックを外して機体を安定させてから
ドクオとショボン、ギャラリーそしてクーに手を振る。

その後、飛行機は乱暴に着地した。
軽トラでドクオが迎えに行く。

('∀`)  「どうだったブーン、飛べたな、飛べたな。」

誰かが通報したらしくパトカーがやってきた。
エンジンは積んでいないので航空法にはひっかからず
クーを含め四人がその場で厳重注意を受けた。
そして、その日の新聞に小さくブーンたちのことが載った。
お騒がせ少年、ギャラリーの応援のなか飛行機を飛ばす、と。



113 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:36:31.00 ID:Dx4RVTjx0

帰り道、今度はドクオとショボンが荷台に乗った。
往きでやったように、二人が座席に座り叫んでいる。
軽トラは笑いと充実感を積んで走っていった。



115 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:39:45.72 ID:Dx4RVTjx0

翌日、ブーンが自宅でクーを待っている。
クーがいつもの時間にいつもの声で部屋へと入ってくる。

川 ゚ -゚)「さて今日は何の話をする?」

その日は、昨日の興奮が冷めないブーンが空を飛んだときの話をする。
その熱っぽい口調を見てクーが羨ましそうに言う。

川 ゚ -゚)「いいな、私も飛んでみたいもんだ。」

ブーンは空を飛んだときの興奮をしゃべり続ける。
だが、急に声のトーンが下がった。

( ´ω`)「でも、もうすぐ僕は死んでしまいますお。
     もっともっとあんな気持ちを味わい続けたいですお。」

( ;ω;)「いやだお、いやだお、死にたくないお。
       まだ生きていたいお。もっと生きていたいお。」

ブーンが突然泣き出す。明るく振舞っていても死が目前に迫っている。
そんな状態で落ち着いてなどいられない。
クーの前でかっこ悪いところを見せたくなかったがどうしようもない。
心臓の奥から冷たい液体があふれ出してくる。



116 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:42:05.52 ID:Dx4RVTjx0

川 ゚ -゚)「落ち着きたまえブーン君。」

一言だけ言う。
クーにかっこ悪いところを見せたと思い
泣きながらもブーンは黙る。
これ以上かっこ悪いところ見せてたまるかと。
心臓にがんばって蓋をする。

川 ゚ -゚)「半年間ブーン君を見てきたが、ブーン君はとても立派だったぞ。
     確実に死が迫っている恐怖のなか、自分のしたいことを見つけ
     それに向かって努力してきた。普通そんなことはできないぞ。
     私はとても立派なことだと思う。」

ブーンを褒める。
慰めでもなんでもなく、クーは思ったことを正直に伝えた。

( ;ω;)「そうですかお。」

川 ゚ -゚)「ああ、君は私が見てきた男性の中で一番かっこいいぞ。」



117 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:48:09.32 ID:Dx4RVTjx0

そう言ったあと、ブーンがクーにお願いをする。
今まで恥ずかしくて言えなかったこと。
拒否されるのがこわかったこと。

( ;ω;)「お願いがあるお、少しでいいから僕を抱いて甘やかしてくれお。」

クーは無言でブーンの近くにより向かい合って座った。
そしてブーンの頭を自分の胸に押し付けた。

川 ゚ -゚)「こんな感じでいいか。」

クーの行動に拒否の感情が見つからなかったので
ブーンはそのままの状態で泣いた。
心臓の音が心地いい。
自分の心臓とはまったく違うものみたいに思えた。




118 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:49:46.81 ID:Dx4RVTjx0

ブーンがまだ聞いてなかったことを、抱きつきながら聞く。

( ;ω;)「そういえば、なんでクーさんはカウンセラーになったんだお?」

ほんの一瞬間クーの体がこわばった。
それを敏感に感じ取るブーン。
聞いてはいけなかったかなと思う。
だがクーが話し始めた。

川 ゚ -゚)「そうだな。私がカウンセラーになった理由か。」

クーにはカウンセラーになった理由があった。
でもそれを誰かに話したことはなかった。
理解してもらえないだろうし、しようともしないと考えたから。
それに説明する過程で相手が自分に引け目を感じると思うような内容だったから。
しかし、ブーンなら理解しようとするんじゃないかという期待もあった。
誰かに理解してもらいたいという感情もあった。
半年間つきあってきて多分ブーンならわかってくれると思ってた。
だから話した。



119 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:53:17.42 ID:Dx4RVTjx0

川 ゚ -゚)「私はな、人間を知りたいんだ。
     何でそんな感情になるのか、何でそんな考えになるのか
     自分では自分のことしかわからないからな。」

ここまではブーンもおとなしく聞いていた。
だが、ある疑問を口にしてからそれはおこった。

( ;ω;)「わかったお。でも何で半年病患者なんですかお?」

単純な疑問だった。
なぜ普通のカウンセラーではなく半年病のカウンセラーなのか。
患者が恐怖に耐え切れずに、また健康な体のクーを嫉妬して
襲い掛かる可能性もあるのに。
クーの体がまた少しこわばった。

川 ゚ -゚)「それはな半年病患者のほうが都合がいいからだ。
    確実に迫る死の中、健康体で死の実感をできず
    亡くなっていく人の心の動きが一番身近で見れるからな。
    体は健康なのだからその分、心の葛藤が激しいんだ。
    私はそんな人の心の葛藤を分解して知りたいんだ。」



120 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:55:24.09 ID:Dx4RVTjx0

何事も簡潔に結論から話すクーの癖があだになった。
誰もがこの話をここまで聞いたら半年病患者を利用しているのかと
思える内容だ。
自分の疑問のために、人の死に向かう葛藤を喜んでいるようにも思える。
ブーンも同じように思った。
自分はクーに利用されていただけだと。
いままでのどんな話もクーが自分のためだけに行ってきたのだと。
クーに抱きついていたブーンだが、途端にクーの体が汚らしいものに思え
体を乱暴に引き離す。


122 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:59:05.16 ID:Dx4RVTjx0

( ;ω;)「ふざけるなお。僕はお前の疑問に答えるために半年病になったんじゃないお。
      僕は死にたくないお。なのにお前はそんな人の心で楽しんでるのかお。
      今まで話したことは全部、お前の楽しみだって言いたいのかお。」

大声で言い募るブーン。
クーは言い方がまずかったかと思い話を続けようとする。
ここから先は誰にも言ったことがない話。
誰も理解してくれないと決め付けていた話

川 ゚ -゚)「いやブーン君それは違うぞ。
     私は昔、だん…」

初めて人に話そうと思ったがクーの言葉をブーンがさえぎる。

( ;ω;)「何がちがうんだお、言い訳なんて聞きたくないお。
      出てけ、ここから出てけぇ!!」


123 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 16:02:22.06 ID:Dx4RVTjx0

信じていた相手から裏切られたと思うと、もうその相手の顔も見たくなかった。
ましてや恋心まで抱いていた。
そんな自分が情けなく思いブーンは怒鳴った。

川;゚ -゚)「話を聞いてくれブーン君。私は…」

クーは必死でわかってもらおうとする。
ブーンの前でこんな顔をするのこれまでに一回もない。
だが、怒りと失望感で興奮しているブーンは気づかない。
なおも出てけと怒鳴る。
もうそれしか言わないと決めたように。

川;゚ -゚)「わかった、とりあえず今日は帰ろう。
     いつでもいい、落ち着いたら連絡をくれ。」

( ;ω;)「早く出てけぇ!!」

クーが帰っていった。ブーンは見送りもしない。
一人になった部屋で半年病が発覚したときのように
怒りにまかせて物にあたりまくった。



124 名前: 自衛官(愛知県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 16:03:03.29 ID:Dx4RVTjx0

( ;ω;)「信じてたのに、信頼していたのに、信用していたのに。」

大声でわめき散らす。
そしてブーンが薬瓶を壁に投げつける。
粉々になり中の錠剤が床に散らばった。
睡眠薬だ。
それを手でかき集め口に入れる。
ガラス片も混じっていたがお構いなしに噛んで胃に流し込む。
もうどうなってもよかった。どうせあと一週間もあれば自分は死ぬ。
そのままブーンは睡眠薬が効いてくるまで暴れ続けた。


162 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:03:11.97 ID:IJhAbRmk0

その後四日間ブーンは眠り続けた。
買い物から帰ってきたカーチャンが倒れているブーンを見つけ救急車を呼んだのだ。


ブーンが目を覚ます一日前。
ガレージにドクオとショボンがいた。
ドクオは黙々とプロペラを作っていながら、ただブーンが来るのを待っていた。
木を削る音以外何も聞こえない。
先にその空間を壊したのはドクオだった。

('A`) 「ブーンのヤツ連絡もないな。
    死んじまったなら親が連絡くれるはずなんだけどな。」

ドクオの言葉に返事はない。
今、ショボンは何もしていない。
ただいつも座るポジションでじっと目をつぶっている。
ショボンはブーンに対して怒りの感情を育てていた。




163 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:05:57.99 ID:IJhAbRmk0

('A`) 「空を飛んだ日からこないな。」

ドクオが呟く。
その声にはまったくと言っていいほど張りがない。
まるで切れたピアノ線のように。

('A`) 「なあ、そろそろ出場募集の期限がくるんだけどどうする?」

ドクオが話しかけるがショボンは何も言わない。
だが真剣な表情をしている。
自分の信じるものを守るかのような表情を。
また少し時間がたった。
ショボンが急に立ち上がりドクオに向かい宣言した。

(´・ω・`)「僕はもう降りるよ。」



164 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:07:35.63 ID:IJhAbRmk0

突然だった。

('A`;) 「おま、どうした?」

(´・ω・`)「ドックン、何でこの計画をやろうとしたか覚えている?」

急に降りると言い出したショボンがドクオに尋ねる。

('A`;) 「そらお前、ブーンの夢を叶える為だろ。」

ブーンが計画を持ち出したときのことを思い出す。
あの日のことは二人ともよく覚えている。
急に計画を話したブーン。
それを笑う二人。
そしてその後、笑ったことの後悔。
人生の中で一番後悔したことを聞いたら二人はこのことを言うだろう。



165 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:09:13.72 ID:IJhAbRmk0

(´・ω・`)「そうだよ。ブーンの夢をかなえるためだよ。
     そのために僕は自分の時間を犠牲にしてやってきた。」

('A`♯) 「お前、犠牲って自分から参加したんじゃねぇか。」

ドクオがショボンの言葉に怒る。
ショボンが時間を犠牲にして、なんて恩着せがましい言い方をしたから。
ドクオは一度もそんなことを思わなかった。
そんなことを思わないためにも参加するときブーンに厳しいことを言った。
自分にも厳しくなるために。

(´・ω・`)「僕はブーンが夢を叶えたいって言ったから参加したんだよ。
     目標はコンテストに出て感動を取り戻すことだったんじゃないの。
     ブーンがそれをしたいって言うから参加したんだよ。
     そのため、いろんなルールを決めたしそれを守ってきた。
     でもブーンは空を飛んだ日から来ないんだよ。
     もう満足したから来ないと僕たちに思われてもしょうがないよ。
     それにもし、そうだったらブーンの言った夢はただ空を飛びたいだけじゃんか。
     そのために僕らは利用されただけなんだよ。ブーンのわがままに。
     やってるときは犠牲だなんて思わなかったよ。
     でもそうとしか思えないから言ってるんだよ。」


166 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:10:56.27 ID:IJhAbRmk0

('A`♯) 「でもあいつだって半年病で苦しんでんだぜ。
     ちょっとぐらい許してやろうって思わないのかよ。」

ブーンに言ったことと矛盾しているがそれがドクオの本心だった。
半年病の甘えは見せるなといったが、実際は少しぐらいならいいと思ってた。

(´・ω・`)「思うよ。でもね、僕が参加した理由はブーンの夢をかなえるためだよ。
     あの時、僕は別に目標を持っていなかった。少し半年病のブーンが羨ましいと思ったよ。
     僕も半年病になれば目標がもてるのかなって。
     半年で死んでもそれならいいじゃんって思ったよ。
     だけどね、そんな情けない自分が嫌だったよ。
     そんな気持ちを抱いたからブーンを手伝おうって思ったよ。
     けど、ブーンはもう来ないじゃないか。
     僕の目標はブーンの夢を叶えることだったんだ。
     ブーンがもう夢を叶えたっていうなら僕はもうやる必要はないよ。」



167 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:11:28.84 ID:IJhAbRmk0

そう言ってガレージから出て行こうとした。
ドクオはショボンを思いとどませる言葉がなかった。
ショボンの言うことは筋が通っていた。

('A`) 「わかったよ。でも俺はブーンのためと自分のためでもあった。
    言っただろ。こんなドラマチックなことやってみたかったって。
    俺の目標はまだ終わってないんだ。
    だからそれまでこのガレージ貸してくんねぇかな。」

(´・ω・`)「それはいいよ。でも僕は手伝わないからね。」

そう言い外へ出て行くショボン。
ドクオは一人では広いガレージでプロペラを削り始めた。


168 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:17:40.25 ID:IJhAbRmk0

病室でブーンが起きたときトーチャンとカーチャンが横にいた。
意識は、はっきりしていなかったが、そのことがブーンには疎ましかった。
信じていたクーに裏切られた、だから信じていた親にも裏切られるんじゃないかと。
ブーンの意識がはっきりしないいままトーチャンが怒鳴った。

(`・ω・´)「ふざけるな!!
      お前は一秒でも長く生きるんだよ。
      それを何だ。自分から死のうとして。
      確かにお前はもう長くない。
      だからって私たちに黙って死んで言いわけないだろ!!
      もういい、いくぞカーサン。」

それだけいい一人で病室から出て行った。
今のブーンにはその言葉もどうでもよかった。
どうせ裏切るんだ。どうせ自分のためだ、と考えていた。
カーチャンはまだ座っていた。
そしてブーンに伝える。

J( 'ー`)し 「ブーン、お父さんはね、四日間ずっとここにいたのよ。」

どれだけ心配しているかを言わず行動だけを伝えるカーチャン。
しかし、もうそんなこともどうでもいい。

( ´ω`)「どうせ自己満足のためだお。」


169 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:22:29.68 ID:IJhAbRmk0

もうすべてがどうでもよかった。
明日死ぬかもしれない。
なにをしてもどうせ死ぬ。
いっそ早く死んでしまいたいくらいだった。

J( 'ー`)し 「クーさんがこれを渡してくれって言ってわよ。
     申し訳ないことしたって。」

カーチャンが封筒を渡そうとするがブーンは見向きもしない。
見る気もない。どうせ自分を弁護するための言葉があるだけだ。
そんなもの見たくもない。
カーチャンが仕方なく封筒を置いていき、最後にこう伝えた。

J( 'ー`)し 「さっきね、クーさんが申し訳ないことしたって言ったけど
     それはあなたに対してじゃないわよ。
     結果として私たちに迷惑をかけたことを謝ったの。
     あなたにはとりあえず読んで欲しいって言ってたわよ。」

そう言ってカーチャンも出て行った。


170 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:24:49.48 ID:IJhAbRmk0

封筒が机の上においてある。
何時間かして、やることのないブーンは見てみる気になった。
どれだけばかばかしいことが書いてあるのだろう。
ブーンはまだ信じ切れていなかった。自分のクーに対する思いを。
実は、まだもしかしたらとは思っていた。
しかし、あれだけ言った手前そんな感情が起こるのを否定したかった。
もしクーが自分を本当に裏切ったのならどれだけクーを憎めるだろう。
そのほうが楽だ。
ただブーンは勘違いをしていた。裏切られたと思っているが信じたのはブーン自信だ。
自分の感情がはっきりしないいままのブーンは
手紙を見てやっぱり自分を裏切ったんだなと確認したくなった。



171 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:31:04.04 ID:IJhAbRmk0

ブーン君へ。
私は今のところブーン君に対して謝るつもりはない。
あの時は確かに結論を急いだため誤解を生じさせたと思う。
だが最後まで私の話を聞いてはくれないだろうか。
私は昔、レイプされたことがあるんだ。

数人の男性によって無理矢理体を辱められた。
とても悔しかったよ。なんでこんなことするんだって。
だけども一番辛かったのは自分の気持ちだったんだ。
私は抵抗したよ。嫌だった。知らない男と急に性行為するなんて。
相手のことはその時も今も許せないよ。
そして自分も。

無理矢理、性行為をされているとき私の体は快感を覚えていたよ。
自分では感じたくないのにどうしても感じてしまうんだよ。
人間のメカニズムかもしれない。
でも自分の感情では最低のことをされているのに
自分の尊厳が貶められてるのにどうしても感じてしまうんだ。
どうしようもなかったよ。

自分では本当に嫌がっているのかもわからなくなった。
とても惨めな気持ちにさせられた。
いや、自分から惨めな気持ちになったんだ。
行為が終わったあと私は警察にいけなかったよ。
少しでも快感を覚えていたから。
自分が悪いと思いながらはいけなかったよ。


172 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:33:58.93 ID:IJhAbRmk0

でもそこで私は考えを変えたんだ。
いやそう思い込もうとした。私はただ男性と性行為をしただけなんだって。
それ以来かな。こんな性格になったのは。
ただ誰にも話せなかったよ。

ブーン君の半年病と似ている。
人にしゃべったらその相手はただ沈黙するだけかなって。
そして私を慰める言葉をかけるだけなんだって。そう思っていた。
でも誰かに理解して欲しかったんだ。

見せ掛けの優しさじゃなく、きちんと私の気持ちを分解してもらいたかったんだ。
だから私はカウンセラーになった。
人の気持ちを分解することで、私のあのときの気持ちも分解できるんじゃないかと。
また少しでも自分の気持ちを理解してもらいたいと。

さっき書いたとおり半年病患者なら私の気持ちと似ているんじゃないかと思ったよ。
特に身に起こったことを伝えるときに発生する印籠的効果が。
だが私は不安だったんだ。

ブーン君に話しても印籠的効果で、ただ私に対して腫れ物に触るように接するかと思うと。
ブーン君が初めて私と話したときと似ているようになるんじゃないかと。
私もブーン君が言ったように誰かに理解されたいんだ。認めて欲しいんだ。
きちんと論理的根拠に基づいて。


173 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:36:33.49 ID:IJhAbRmk0

私がこのことを誰かに伝えるのは初めてだ。
半年間だがブーン君の論理を重んじる性格はよくわかっているつもりだ。
ブーン君なら私の話を聞いて気持ちを分解してくれると思ったんだよ。
ブーン君と話していて君は論理的に間違っていなかったらちきんと認めてくれた。
だから、私がカウンセラーになった理由を話そうとした。
話す順番が下手でブーン君の怒りをかっただけだったがね。
私はブーン君に理解して欲しいと思っているよ。
ブーン君は私と話して楽しいと言っていたが、私も楽しかったよ。
この手紙を読んで、もしまだ私と話をしてくれるならメールをくれないか。
今すぐ話し合わなくてもいい。
まずブーン君がすることは多分ドクオ君とショボン君のとこに行くことだと思う。
私はブーン君が理解してくれようとする姿勢があるだけで嬉しいんだ。
私を理解したいと思ったらメールをくれないか。
メールは間違いのないようにブーン君の夢である【内藤ホライゾン】と打ってくれないか。
私はブーン君の性格を信じている。
これを読んでそのメールを打ってくれたのなら、ブーン君は私を理解しようとしてくれるんだなと信じるよ。
長くなってすまない、ではさよならだ。



174 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:37:14.27 ID:IJhAbRmk0

ブーンはその手紙を読み終えすぐさまメールをクーに送った。


クーさんと話がしたいです。
一時間後××公園にきてください。
内藤ホライゾン。


それだけ打ってすぐに病室を飛び出した。
なに、自分は半年病。しかも賞味期限ギリギリだ。
病院を抜け出したって誰も咎められることはないだろう。
そう思いブーンはひたすら家へと走った。


175 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:39:03.25 ID:IJhAbRmk0

家へと入りすぐさまトーチャンとカーチャンに言う。

( ^ω^)「さっきはごめんだお。
      僕はもうすぐ死ぬお。
      でもこれだけは言いたいんだお。
      産んでくれてありがとう。
      トーチャンとカーチャンの息子で本当によかったと思うお。」

びっくりするトーチャンとカーチャン。
なにを言おうか迷っている。
だがブーンにはすることがある。
それをしなければいけない。
使命感に駆られつつトーチャンとカーチャンに別れを告げる。

( ^ω^)「僕はすることがあるから出かけるお。
      今まで本当ありがとうだお。」


176 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:43:15.69 ID:IJhAbRmk0

そう言って出かけていくブーン。
呆然とするトーチャンだったがすぐに自分の息子を見送ろうと玄関まで走った。
ブーンはもうすでに見えないとこまで走っていった。
だがトーチャンは大声で叫んだ。

(`・ω・´)「病院ではひどいこと言ってすまなかった!
     こっちこそ、お前が産まれてきて本当によかったぞ。
     ありがとうなー!

     私たちのことは心配するなお前の好きにやってこーい!」

カーチャンがさらに叫ぶ。

J( 'ー`)し 「ブーーン!産まれてきてありがとー!
        自分に正直にねー!」

そう言って二人は家へと戻った。
ブーンに聞こえたかどうかはわからない。
でもどうしても言っておきたかった。
二人はブーンが犯罪行為をするとはまったく思わなかった。
そんなことするはずがないとブーンを信じていた。



177 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:44:35.87 ID:IJhAbRmk0

ブーンがショボン家のガレージに着く。
明かりがまだ点いている。
中に入るとドクオがプロペラを削っていた。

( ^ω^)「おいすー、久しぶりだお。」

ドクオがブーンに気づき破顔する。
何か理由があったんだ。だからこれないんだ。
そう思っていたがやはり心細かった。

('∀`)  「どうしたブーン。何かあったのか?」

もうすぐ死んでいくといってもどうしても笑顔になってしまう。
それだけ嬉しかった。

( ^ω^)「すまんお。ちょっと半年病のせいで四日意識がなかったんだお。」


ブーンは嘘をつく。
そういった方がドクオに心配をかけなくていい。


178 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:47:40.11 ID:IJhAbRmk0

('∀`)  「ところでお前まだ忘れてねぇよな。
     お前の夢。」

( ^ω^)「もちろんだお。後は頼んだお」

ショボンがいないのに気づきドクオに居場所を尋ねる。

( ^ω^)「ショボンはどこかお?」

ドクオは家にいるとだけ伝えた。
昨日のショボンが降りた話はしなかった。
ブーンは夢を忘れてなかった不可抗力でこれなかったんだ。
わざわざ心配させることはないという配慮だった。
玄関の前まで行きインターホンを鳴らすブーン。

( ^ω^)「ショボーンいるかおー?」


179 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:48:21.60 ID:IJhAbRmk0

インターホンからショボンの声が出てくる。

(´・ω・`)「なに?」

( ^ω^)「僕の夢頼んだお。
      勝手だけどお願いするお。」

それだけいい走って行った。

(;´・ω・`)「えっ、ちょっと待ってすぐでてくから…」

それだけいい走って行った。
ドクオが玄関に来たときにはブーンはいなかった。
ちょうどショボンもでてきたときだった。

('∀`)  「あいつはお前を裏切ってなかったよ、もう聞いたか?」

すぐにショボンは理解した。
ドクオの笑顔と言葉で。
そして二人は一緒に大声で叫んだ。

(´・ω・`('∀`)「まかしとけー!すんげえ感動を与えてやるよー!」



180 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:50:36.11 ID:IJhAbRmk0

クーにメールを送って一時間を少し回ったときブーンが公園に到着した。
すでにクーはきていた。
クーが何か言おうとする前にブーンがしゃべりだした。

( ^ω^)「クーさん話があるお。
      僕はクーさんのことが好きだお。
      僕は半年病で明日にも死ぬかもしれないお。
      でも伝えたいんだお。
      僕はクーさんのことが好きだお。
      もっとクーさんのことを知りたいし
      理解したいし、理解されたいお。
      別に付き合ってくれって行ってるわけじゃないお。
      ただ伝えたいんだお。」

そこまで早口に伝えるブーン。
クーはいつもの調子のままで話す。

川 ゚ -゚)「そうか手紙を読んでくれたな。ありがとう。
     ところで、どう思う私のことを。」


181 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:52:50.76 ID:IJhAbRmk0

クーは自分の口からあの単語は発したくないらしく
微妙な質問をする。
それを敏感に読み取りブーンが答えだす。

( ^ω^)「クーさんはそのままでいいお。
      レイプされようがなんだろうがクーさんはそこに存在しているお。
      クーさんは自分を理解して欲しいって思ってるお
      そして僕はクーさんを理解したいと思ってるお。
      クーさんも同じだお。
      僕に理解されたいと思ってるし
      僕を理解したいと思ってるお。
      でもお互い、理解したかなんて確認しようがないお。
      でもそれでいいお。ふたりで理解しあうお。
      その姿勢が大事だお。
      僕は、クーさんの話が論理的におかしくない限り絶対拒否しないお。」

傍から聞いたら勝手で無茶な話だと思うだろう。
しかし、手紙を読んだブーンはその答えが一番だと確信していた。



182 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:55:46.80 ID:IJhAbRmk0

川 ゚ー゚)「そうか、ありがとう。
      私もブーン君のことが好きだよ。
      私もブーン君のことを理解したいし
      理解されたい。でももう時間がない。
      だがそれだけで十分だよ。
      半年間、君と話しているから、君の考えは少しはわかる。
      ブーン君がなにを言いたいかが本当に嬉しいよ。」

お互い相手の考えをよく知っていた。
だから言葉は少なくとも相手の言いたいことがよくわかった。

川 ゚ー゚)「どうだブーン君抱きあってみないか。」

そう言ってクーがブーンに近寄る。
そして二人が力強く抱きしめあう。
幸せな時間だった。
だがここでハプニングが起きた。


183 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:57:08.72 ID:IJhAbRmk0

川 ゚ー゚)「ブーン君、勃起しているぞ。」

(;^ω^)「すいませんお。つい愚息が。」

川 ゚ー゚)「ブーン君は確かここ数ヶ月、自慰行為をしていなかったな。」

ブーンはもう何を言われてもそれが間違っていなければクーに対しては素直でいれた。
わかっている。
クーは自分のことを笑おうとしているんじゃない。
自分のことを知って理解したいんだと。
だから答えた。

(;^ω^)「はいですお。半年病になってから僕は勃ちませんでしたお。」

クーが勃起しているブーンに問う。

川 ゚ー゚)「ブーン君。君は私としたいか。」



184 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:58:19.27 ID:IJhAbRmk0

したい。絶対したい。
しかしここでブーンは考えた。
したいと言えば間違いなく自分を受け入れるだろう。
でもここでしたら、もうすぐ死んでいく自分をクーに強く印象付けて
悲しませるだけじゃないだろうか。
でもしたい。クーとしたい。
好きな人としたい。
ブーンがそんな葛藤をしているときクーが話し始める。

川 ゚ー゚)「大丈夫だブーン君。私が君としたいんだ。
     君が死んだら私は悲しい。
     でもああすればよかったなんて思いたくないんだ。
     それに私が君に何かしてあげたいんだ。
     この気持ちを理解してくれないか。
     ブーン君が死んでも私は君を忘れないだろう。
     でも、君にとらわれることはない。
     君を思う気持ちは間違いないさ。
     君を好きって言ったのに誰かを好きになって
     君を思う気持ちが嘘だったなんて思わない。
     それで誰かを好きになってはいけないなんて思わないさ。」



186 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 06:59:30.00 ID:IJhAbRmk0

クーが自分の気持ちを話す。
ブーンは嬉しかった。
でも心配だった。この先のクーが。
そうは言っても自分にとらわれるんじゃないかと。
自惚れのようだが本当にそう思っていた。

川 ゚ー゚)「なにを迷っている。私としたいんだろ。
     もし私がこの先誰かを好きになったらこう言うさ。
     私には好きな人がいる。
     でも、もうその人は死んでしまった。
     私はその人を忘れることはできない。
     それでもいいなら私と理解しあおうと。
     こう言って理解しようとしないものはこっちから願い下げだ。」

その言葉を聞いてブーンは決心した。
クーとしよう。
二人はそのまま近くのホテルに入っていきそこで交わった。
ブーンは童貞だとカミングアウトしたが
クーはそうかと笑っただけだった。



187 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:00:55.20 ID:IJhAbRmk0

行為が終わってからブーンが甘えたいと言い出した。
後ろから抱きつかせてくれと。
クーはそれを了承しベッドに座る。
そしてブーンが後ろから抱きつく。

( ^ω^)「もっとこうしていたいお。」

ブーンの声が少し震えている。
その震えた声を聞いたクーはお腹にあるブーンの手を包み言った。

川 ゚ー゚)「いいさ、そのままで。
     男性は行為が終わった後眠くなるんだろう。
     このまま寝てくれればいいさ。」

ブーンが口元を上げる。
その顔にはこれまでない複雑な表情をしていた。
ただ、喜びの感情だけはクーに伝わった。

( ^ω^)「いや、このままがいいですお。」



189 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:03:18.08 ID:IJhAbRmk0

そう言ってブーンは抱きついたまま目をつむる。
クーに抱きついた感覚だけをかみ締めるように。
無言の充実した時間の中ブーンはつい眠ってしまった。
穏やかな寝息が聞こえてくる。

川 ゚ー゚)「なあブーン君寝てしまったか?」

寝ているブーンからは返事がない。
クーはブーンを起こさないように抱きつかれたままでいる。
さらに二十分程時間がたった。
クーは自分の背中によりかかっているものに喋りだす。

川 ゚ー゚)「なあ、人間の感情ってなんなんだろうな。
      不思議なものだよな。
      半年病になったからブーン君は私と出会った。
      私はブーン君と出会えて本当に嬉しいよ。
      自分を理解してくれるものが現れたんだからな。
      もっと君と一緒にいたかった。
      でも、もし半年病じゃなかったら君は私と理解しあっただろうか。
      死に立ち向かうことで君はなにかを学んだんだろうか。」


190 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:05:27.38 ID:IJhAbRmk0

返事はない。
クーはそれでも続ける。
目から涙を流して。

川;ー;)「なんとか言ったらどうなんだ。
     無茶なことだとはわかっているよ。
     でも答えてくれないか。
     何で人は涙を流すんだろうな。
     また、話し合おうじゃないか。
     頼むから答えてくれよ。
     なあ、ブーン君。」

クーに返事はない。
もうクーの声の届くところにブーンはいない。
すでに、ねむってしまった。
ブーンはこれからずっと自分で立つことはない。


191 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:08:08.32 ID:IJhAbRmk0

ガレージ内。すべてが完成した飛行機を前にドクオとショボンがいる。
コンテストに応募し出場資格を取って、あることについて二人が相談している。
議題は誰が乗るか。

(´・ω・`)「そのことで話があるんだけど。」

ショボンが提案しようとする。
だがドクオも考えがあるらしくポケットから何かを探している。

('A`) 「なあここは後腐れのないようこいつで決めようや。」

ドクオが取り出したのはコイン。
これで勝ったほうが決めようというのだ。
文句なしの一回勝負。
これならいいかとショボンは考えた。
結局どちらかの主張を取り入れなければいけない。
なら公平な方法で決めたほうがいい。
ショボンは自分の提案にドクオが乗る自信があったが
ここはコイントスで決めることにした。



192 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:12:10.06 ID:IJhAbRmk0

('A`) 「じゃあいくぜ。恨みっこなしだ。」

コインを真上にはじき左の手の甲に載せると同時にそれを右手で隠した。

('A`) 「さあどっちだ、ショボンに決めさせてやるよ。」

そういうドクオにはある勝算があった。
日ごろ神様の類を信じないがこの日だけは信じていた。

(´・ω・`)「じゃあ表。」

('∀`)  「じゃあ俺は裏というわけだな。」

なぜか勝利を確信するドクオ。
何度もいいんだなと確認をする。
そんな彼を見てイカサマでもしたかと考えたが実行するとは思えなかった。
ドクオがショボンの不思議そうな顔を見て話し出す。



193 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:14:09.54 ID:IJhAbRmk0

('∀`)  「なあショボン、ライト兄弟が初めて空を飛んだとき
どっちが先に飛んだか知っているか。
弟なんだよな、コイントスに勝ってさ。」

(´・ω・`)「それぐらい知ってるよ、でもそれがどうかしたの。」

('∀`)  「俺思うんだ。もし神様がいたら絶対ここは裏なんだ。
     間違いないんだ。
     だって初めて空を飛んだときのコイントスも裏だったんだ。
     じゃあ初めて空を飛ぶときの俺らのコイントスももちろん…」

(;´・ω・`)「やっぱやめて、僕が裏に…」

慌てて取り消そうとするショボン。
ドクオはもう遅いと言い右手を開けた。



194 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:15:54.60 ID:IJhAbRmk0

大会当日。ブーンが飛んだ日のように空を飛ぶにはいい天気だった。
自分たちの順番が来るまで他のチームを観察するドクオとショボン。
例年通りのチームばかりだなと思う。違うのは二人の機体。
ライトフライヤー号を思わせるような旧式のレトロチックなデザイン。
流線型の多い中でそれは見事に浮いていた。

('A`) 「やっぱ神様なんていねぇのな。あそこは裏を出すべきだろう。」

ドクオが搭乗者を決めるコイントスをまだ愚痴愚痴言う。
それでもショボンは腹は立たなかった。

('A`) 「でも俺と同じ考えしてたなんてな。」

そうどちらが勝っても結果は一緒だった。
ショボンがコイントスに勝利したあとすぐさまクーに電話したのだ。

川 ゚ -゚)「いいのか私で?
     今ならまだ変更はきくぞ。」


195 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:19:46.10 ID:IJhAbRmk0

一週間前、クーに電話があった。
ショボンから。飛行機に乗らないかという話だ。
一度断ったものの二人に強引に押されて出場することになった。

('A`) 「いいんですよ。俺らがでるよりそっちのほうが。」

(´・ω・`)「そうですよ。クーさんに出て欲しいんですよ。」

二人が申し訳なさそうにするクーに言葉をかける。
それを聞いてしょうがないなと思いつつ一応言っておく。

川 ゚ -゚)「そうか飛びたくなったらいつでも言ってくれ。」

少し時間がたち何機かが飛んでいった。
予定調和の大会だ。
どの機体が飛ぶかなんて大概わかっている。
そうは思いつつもまじかで見るこのお祭りに三人は興奮していた。


196 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:22:30.53 ID:IJhAbRmk0

三人がスタートの練習をしていると一人の男が近づいてきた。

( ゚∀゚)「やあ、こんにちわ。俺ジョルジュって言います。」

挨拶をしてきた男。
ジョルジュと名乗る男に三人が適当に返事を返す。
ジョルジュは三人の機体を見ながら言った。

( ゚∀゚)「これ、だいぶ前に新聞に載ったヤツですよね。
     いいなあ、俺んとこは大人数だから触らしてもくんねーんだよな。
     しょうがないっちゃしょうがないけど、やっぱこういうのいいよな。」

独り言なのか話しかけてるのか曖昧な言葉に
なんて返事をしようか迷っていると、ジョルジュは自分のチームに戻っていった。
ジョルジュのチームのほうを見ると彼はチームは大会記録保持の常連チームだった。



197 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:24:53.21 ID:IJhAbRmk0

そしてついに出番がきた。
ブーンが夢を叶えたいといっていたこの舞台。
三人はそこに機体を運んでいく。
それを見る、もう飛び終わりギャラリーとなった参加者。
ギャラリーの視線の中には嘲笑と羨望の眼差しがあった。
最終調整に入る三人。ドクオとショボンは念入りに作業を行う。
そうしたなか、お笑い芸人のリポーターがやってきた。

( ^Д^)「これで飛ぶんですか。大丈夫ですか。」

受け取りようによっては失礼にも感じる台詞だ。
三人は心配ではなく自分たちを馬鹿にしていることがすぐにわかる。
芸人はカメラも回っているのでよく口がすべるようだ。


198 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:25:47.09 ID:IJhAbRmk0

( ^Д^)「めずらしいですね、こんな機体で飛ぼうなんて。
      記録出せますかねえ。」

どうやら、三人を馬鹿にするスタンスのようだ。
適当にあしらっていると、もう少し絡めと指示が出たようで
また話しかけてくる。

( ^Д^)「いやぁー、初期のころみたいですね。
     あの頃は飛ばずに落ちる機体が多かったですからね。」

なんとか三人と絡もうとするが返事がこない。
少しいらついた芸人が言い出す。

(♯^Д^)「いやぁーたいへんですねぇ。
      落ちたらどうしますか?」

三人はいい加減腹が立ってきた。
そんな時、ドクオが黙ってろよと目配せをする。
二人はそれに答える。
ドクオが急に立ち上がり伸びをした。
そしてきわめて自然にタバコを出し火をつけた。


199 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:26:45.46 ID:IJhAbRmk0

それを見て慌てて芸人が注意する。

(;^Д^)「ちょっとここは禁煙ですよ。
     なにやってんですか。」

ドクオはああそうかと言ってタバコを咥えたまんま携帯灰皿を探した。
自分の思い通りにいかない事に不満だった芸人が皮肉を言い始める。

(♯^Д^)「早く消してくださいよ。
     常識ないんですか、まったく。
     何しにきたんですか?
     まあそんな機体で記録出そうとしてるんですから
     いい意味で常識はずれなんでしょうね。」

まるで記録を出すことが目的のような口ぶりだった。
というよりもこの芸人はそう思っていた。
飛んで当たり前。この大会は記録を伸ばすための大会だと。
そしてドクオが携帯灰皿にタバコを押し付けながら言った。

('A`) 「サーセン。自分ら空を飛ぶという夢を叶えにきたんで。」

そういうと芸人は言葉につまり何も言わずどこかへ行ってしまった。
余程悔しかったらしく歩き方がそれをあらわしていた。
そのときもカメラは回り続けていた。



203 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:30:14.12 ID:IJhAbRmk0

そしてついにスタートのとき。
向かい風でちょうどよい速さだった。
クーが機体に写真を貼り付ける。
四人で飛行機の前で撮った写真だ。
一人だけやたらとやつれて見える。
そのときは誰も気づかなかったが今見ると明らかにういている。
写真を貼ってからショボンがスイッチを押す。
スピーカつきのカセットプレイヤーのボタン。
これにはあの曲が入っている。

クーがペダルを回しプロペラを回転させる。
それと同時にアナウンサーの声が聞こえた。

「エントリー番号**番。内藤ホライゾン号です。」

スタートのサイレンが鳴り機体を押す。
自分ができる最大の力を込めてドクオとショボンが押す。
そしてプラットフォームから機体が落ちた。


204 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:31:56.18 ID:IJhAbRmk0

時間がコマ送りのように流れる。
水面5メートルまで落ちたとき、四人が絶叫した。

('A`(´・ω・`川 ゚ -゚)「あがれーーーー!!」

その声はプラットフォームの上から、機体の上から、そして解説席から聞こえた。
クーが昇降蛇を操作する。
水面まで後2メートル、皆が落ちると思ったとき、機首があがった。

('A`(´・ω・`)「飛んでるよ飛んでるよ。」

二人がはしゃぐ。まるで子供みたいに。
そしてそれと同時に空を飛ぶ飛行機のプレーヤーから音楽がなり始めた。



205 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:33:27.72 ID:IJhAbRmk0

〜When the night has come
   And the land is dark〜

スタンドバイミーだ。
ボートから機体を写している映像が会場で流れる。
まるで映画だった。
古めかしい機体、それを漕ぐ女性、曲の持つムード。
すべてが完璧のように思えた。
飛行機はまだ飛んでいる。
落ちそうのようだがなかなか落ちない。



207 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:35:54.42 ID:IJhAbRmk0

クーが途中からスピーカにあわせ歌いだす。

川 ゚ -゚)「オァザマウンテイン
      ショルダクランボウトゥザシィ」

川 ;-;)「アイウォンクライ
      アイウォンクライ
       ノォアァイウォンシェアザティア」

川 つ–;)「ジャスタロンァズ
       ユスタァンド
         スタンバイミー」

割れ気味のスピーカーだったがそれがまたいい味を出していた。
そして2分50秒、曲が終わると同時に着水した。



208 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:37:19.51 ID:IJhAbRmk0

川 ;-;)「ブーン君、君の夢はやっておいたぞ。
     これで感動する人がいるかはわからないがすべてやったぞ。」

機体から降りる前にそう言葉を発する。
大会のボートに乗ったクーが沈む機体をずっと見ている。
機体は湖へと沈んでいった。



210 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:38:24.30 ID:IJhAbRmk0

その日の夜優勝したチームがホテルで騒いでいた。
ジョルジュの所属するチームだ。
だがジョルジュを入れて二人が浮かない顔をしていた。
そして騒ぎの中、誰かが内藤ホライゾン号を馬鹿にしだした。

「あんなんで飛ぼうなんて馬鹿だよなぁ。」

「そうだよな、何勘違いしてんだか。」

笑い声まで聞こえる。
そんな雰囲気に嫌気が差したジョルジュは
ウィスキービンを持って外にでた。
少し歩き、今日大会のあった湖のほとりで一人ごちている。

( ゚∀゚)「あいつらこそ、なに勘違いしてんだよ。
    この大会は空を飛びたいやつらが本気で飛ぼうってもんじゃないのかよ。
    そういう馬鹿げたお祭りじゃないのかよ。
    俺だって記録なんかどうでもいいから飛びたかったよ。くそ。」



211 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:39:00.93 ID:IJhAbRmk0

人数が多ければその分空を飛べる確率がへる。
しかしその事実を直視せずチームに所属していたのは自分だった。
ジョルジュはそんな自分が情けなくなった。
もしかしたら飛ばせてくれるかもと淡い期待をいだいて
先輩たちの言うことを頑張って聞いてきた自分が。

( ゚∀゚)「くそ、やめちまおうかな。」

そう言ってウィスキーを飲む。
ジョルジュは後ろから誰かがやってきたのに気づき振り返る。

( ゚∀゚)「なんだお前か松本。聞いてたのかよ?」

松本と呼ばれた男は黙ってジョルジュの隣に座った。
二人は黙って星を見ている。


214 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:40:52.94 ID:IJhAbRmk0

そして松本が独り言のように喋りだした。

( ・ω・)「俺も辞めようと思うんだチーム。」

黙っているジョルジュにさらに喋りだす。

( ・ω・)「何で俺チームに入ったか考えたら空飛びたかったからなんだよね。
    だけど飛べる人少しだけじゃん。そんなの意味ないって言ったら
    言いすぎだけど、やっぱり俺空飛びたいんだよね。」

( ・ω・)「今日のさ、あれ見て思ったんだよ。
    別にチームじゃなくても空飛んでるやつがいるって。
    プラットホームで言ってたじゃん。
    空を飛ぶためにきたって。だから俺辞めようと思うんだよね。」



215 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:41:53.96 ID:IJhAbRmk0

ジョルジュは考えてた。こいつと組もうか。
そしたら飛べるんじゃないかと。
松本も同じ考えだろう。言うことからそう思った
目標ができて喜ぶジョルジュが言う。

( ゚∀゚)「よし、お前俺と組め。
     記録じゃなくて記憶を残しにまたここにくんぞ。」

松本はやはりその言葉を待っていたようだ。
ジョルジュにすぐ賛同した。

( ・ω・)「しゃあねえで組んでやんよ。
    だけど足ひっぱんなよ。そうなったらぼっこぼこにしてやんよ。」

そう言ってその場でチームを組んだ二人。
その夜はウィスキー片手に話し合った。
くだらない事ばかりだったけど笑いあった。
そして二時間話して決まったのは機体の名前だけ。
それはボッコス長岡号



216 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:42:48.42 ID:IJhAbRmk0

ブーンが死んで目標を終えた後、皆日常に戻った。

( ・∀・)「やあ、見たよテレビ。かっこよかったじゃないの。
     ドクオ君の台詞すごくいかしていたよ。」

モララー教授がドクオに言い去っていった。
ドクオはなんであんな台詞を言ったのだろうと今でも恥ずかしがっていた。
ショボンもかっこよかったと言うけれども、自分ではそうは思えなかった。
校内を歩いているとバンド募集のポスターがある。
文化祭で出場するバンドの募集だ。

('A`) 「文化祭か。つまんねんだよなこれ。」

(´・ω・`)「そうだよね、なんか観客を楽しませることしないんだよね。」


218 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:44:04.65 ID:IJhAbRmk0

二人は日常に戻っていた。
だが以前と違うのは心構えだった。

('A`) 「俺らが出て笑わせてやっかショボン。」

(´・ω・`)「でも楽器なんてできないよ。」

('A`) 「練習すればいいじゃん。それに目標は笑わせることだぜ。
     ちょっとぐらい下手でもいいんじゃね。」

(´・ω・`)「それもそうだね。じゃあまたガレージに集合ね。」


219 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:44:51.89 ID:IJhAbRmk0

(`・ω・´)「当社を志望した動機は?」

( ><)「はい、僕は自分の夢をかなえるためです。
     僕は大勢の人を幸せにしたいんです。
     そのために努力したいんです。」

会社の面接試験官になったトーチャン。
さっきやったビロードのことが忘れられない。
昔の自分と似ていると思ったし、ブーンにも似ていた。
周りが反対するなかトーチャンはビロードの面接結果を押した。

周りが少しだけ変わった。
ブーンのせいかもしれないし違うかもしれない。
でも確実に何人かの心は変わっていった。



220 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:45:56.21 ID:IJhAbRmk0

おいすー、今日もやってまいりましたブーンの日記の時間。
今日は何から書こうかお。いつもはここで迷うブーンですが今日は決まっておりますお。
そう今日は初めて空を飛んだお。イーヤッフゥーーー。
すごい気持ちがよかったお。全部初めて見る景色だったお。
雲も空も人も道路も全部新しかったお。ギャラリーに子供がいたから手を振ったお。
あの子絶対何年経っても忘れないお。ていうか忘れないでおくれお。忘れんなよクソガキだお。
でもなんであんな気持ちになったんだろう。最近は感情の起伏があまりなかったからかお。
明日クーさんに聞いてみるお。
ところで最近よく思うんだお。半年病にならなかったらどうなってたんだって。
半年病になったからこそ自分を見つめることができたし空を飛ぶことができたお。
そう考えるとよかった気もするけど、でもやっぱ生きていたいお。
不思議だお、何もないときはただ生きていればよかったのに
半年病になってから夢を叶えたいと思ったお。


221 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:46:15.96 ID:IJhAbRmk0

ああそういうことかお。そんな簡単なことかお。やればよかったんだお。
いつもブーンはなにかを言い訳にしてやらなかったお。
自分がわがままになるのが怖かったんだお。
でもドクオとショボンはブーンのわがままに付き合ってくれて楽しそうだったお。
案外そんなもんかもしれないお。ああもっと生きていたいお。
ブーンの夢はどうなるだろうかお。気になるお。
だけど、どうせ結果はわからないお。死ぬからじゃなくて確かめようがないんだお。
ブーンはもうすぐ死ぬお。だけどいつ死ぬかわからないお。
だから毎日こっから先のこと書いてるお。
トーチャンカーチャンクーさんドクオショボンに皆皆ありがとうだお。
じゃあ明日の朝起きられることを祈って睡眠薬飲むお。
みんなみんな、バイブー。



224 名前: 電話交換手(愛知県)[] 投稿日:2007/03/17(土) 07:49:02.71 ID:IJhAbRmk0
やあ (´・ω・`)

ようこそ、バーボンハウスへ。

このお話はサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。


うん、「終わり」なんだ。済まない。

仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。


でも、このお話を見たとき、君が、きっと言葉では言い表せない

「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。

そんな気持ちになってくれたら僕は嬉しいよ。

そう思って、このお話を作ったんだ。



じゃあ、さよならしようか。




( ^ω^)ブーンが半年病のようです     〜終わり〜




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( ^ω^)ブーンが星降る夜に成長するようです
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第一話 - 第二話 - 第三話 - 第四話 - 第五話 - 第六話 - 第七話 - 最終話

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