170 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:50:46.07 ID:NodJHoCo0
川 ゚ -゚)「ふぅ……」
私は、すっかり何もなくなってしまった部屋を見て
一度大きくため息をついた。
こことももうお別れか。
狭い狭いと文句を垂らしていた部屋がなんだか広く感じて
どうしようもなく愛しく、寂しく感じられる。
なんだかんだで、私はこの部屋に、この家に
この家族に居心地の良さを感じていたんだな。
柄にも無く、しんみりとしてみる。
171 名前:新宿在住(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 01:51:12.78 ID:NodJHoCo0
そういえば、ドクオは今頃どうしているんだろう。
友達の協力で新しい家とバイトを見つけたらしいが
あの害虫が何かに寄生せずに生きていけるんだろうか?
川 ゚ -゚)「……」
ドクオの部屋もダンボールが3つ程残っているだけで
私の部屋と同じ様に、殆ど何も無くなっていた。
あんなに汚かった部屋が、いつのまにやら……
今はもうドクオはこの家にはいない
少し躊躇しつつも、部屋に足を踏み入れる。
2 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:01:28.20 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「……案外、広かったんだな」
特に何をするでもなく、壁にもたれかかりそのままペタりと座る。
母さんがしたのか、フローリングはショールームの様に綺麗で
直に座っても何の抵抗も無い。
あぁ、なんか落ち着く。
あんなに毛嫌いしていた害虫の部屋だってのに。
自分でも不思議だ。
川 ゚ -゚)「む? 」
3 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:12.81 ID:zCVeieUV0
ぐっと足を伸ばした先にある、一つの小さなダンボール。
他は全部しっかりガムテープで止めてあるのに
それは口を半開きにしている。
川 ゚ -゚)「……」
見て……いいよな?うん、いいだろ見るくらい。
だって口開いてるし、まるで見てくださいと言わんばかりの
雰囲気をかもしだしているし。
そろそろとダンボールの口に手を伸ばし……
(;'A`)「その箱に触るなああああああああああああ」
川 ゚ -゚)「WHATS!」
突如私の前に高速でスライディングしてくる何か。
(;'A`)「クー、何やってるんだよお前は! 」
4 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:34.59 ID:zCVeieUV0
ものすごい早いなドクオ。シューマッハもびっくりだ
川 ゚ -゚)「そりゃあこっちのセリフだ。何してるんだ?」
(;'A`)「に、荷物取りに来たんだよ!
お前は何で人の部屋に!? 」
ドクオはスライディングしたままの体制で
その段ボールを抱えたままキッとこちらを睨みつけている。
川 ゚ -゚)「何となく、寂しくてな」
(;'A`)「そ、そうか……みんなは? 」
川 ゚ -゚)「スーパーで買物をしている。
長旅になるから」
5 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:02:55.54 ID:zCVeieUV0
(;'A`)「長旅? 」
……あ、そうか。今日だったか。
川 ゚ -゚)「勿論、見送りには来てくれるよな? 」
('A`)「あぁー……、すまん。
俺これから約束あるんだ……VIP公園で花見をね」
川 ゚ -゚)「そうか。なら仕方ない」
正直、見送りなんかしたら家族が恋しくなりそうで怖い。
泣いちゃったりするかもしれないし。
俺一応クールなキャラだからね……。あ、すいませんでした。
6 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:03:20.75 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「ところでさ、何が入ってるんだ? それ」
(;'A`)「ちょ、ちょっとしたしゅ、趣味のさ、うん」
川 ゚ -゚)「趣味?……まぁいい」
危なかった。危うく見られるとこだったぜ。
俺のマニアック過ぎる趣味を全て詰めこんだ宝箱を。
……なんか今も狙われている気がするが……。
川 ゚ -゚)「なぁ、ドクオ」
(;'A`)「へ? 」
川 ゚ -゚)「お前、一人でやっていけるのか? 」
(;'A`)「だ、大丈夫だよ……」
俺はそのダンボールから離れて
取りに来た物をカバンの中に詰め込む。
川 ゚ -゚)「ゴミ出しとか炊事とか掃除とか
ちゃんとやるんだぞ。いいな? 」
(;'A`)「……お前なぁ」
カーチャンかよ、お前は。
7 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:03:41.30 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「それに、ちゃんと毎日風呂に入るんだぞ?
バイトも、サボらずちゃんといk……
('A`)「分ったよ。分ったから。
お前も頑張れよ。それじゃ」
川 ゚ -゚)「あぁ……」
俺はダンボールを脇に抱え、重くなったカバンを持ち上げた。
重いな。部屋まで運べそうも無いや。
金は勿体無いけどタクシー呼ぶか。
川 ゚ -゚)「……なぁドクオ。私、やっていけるかな」
('A`)「え? 」
さっきとはまるで違う、らしくない弱気な声に
くるりと振り返る。
9 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:04:18.63 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「向こうは知らない人ばかりで
愛想だってよくないし……
知らない人ばかりで、ずっと一人ぼっちで……」
伸ばしていた足を折りたたみ、膝に顎を乗せるクー。
('A`)「……大丈夫だよ。すぐに慣れるさ」
何て言って励ましていいか分らない。
クーがこんな風に弱音を吐くなんて初めてかもしれない。
だから俺は、当然なんでもない事しか言えない。
川 ゚ -゚)「そうだよな……すまん」
クーはすっと立ち上がって、力なくにこりと笑う。
10 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:04:39.09 ID:zCVeieUV0
川 ゚ -゚)「ドクオ、頑張れよ。それじゃ」
('A`)「ちょっと待って」
もしかしてクー、お前は
('A`)「お前サイタマなんか行きたくなんじゃないか?」
川 ゚ -゚)「え? 」
部屋を出て行こうとしたクーはきょとんとして立ち止まる。
川 ゚ -゚)「行きたくないよ。
だったらどうだっていうんだ? 」
11 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:03.52 ID:zCVeieUV0
クーが、あんまり素直に答えたから
やっぱり俺は何て言っていいか分らなくなる。
('A`)「じゃあさ、残ればいいじゃないか」
川 ゚ -゚)「……え? 」
え?何言ってるんだ俺は。
('A`)「あ、いや、あのさ。
俺の部屋狭いけど、その、VIP高から近いし」
自分の言ったことに話を合わせる。勿論、そんな事言うつもりは
無かったし、今だってない。
けど、それも悪くないかもしれない。
川 ゚ -゚)「それはつまり、いっしょに暮らそうっていう事か? 」
('∀`)「そう……いうk」
川 ゚ -゚)「だが断る」
12 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:24.15 ID:zCVeieUV0
(;'A`)「ちょ、おま、返事はえーよ」
いや、俺なんかと住むのは嫌なのは分ってるけど
でももう少し悩むとかさ、そういう素振りだけでも
見せて欲しかったかな、うん。
川 ゚ -゚)「バイトのお前に私が養えるとは思えないしな。
気持ちは有り難いが」
あぁ、そういう事ね。情けないがその通りです。
川 ゚ -゚)「そんな事よりドクオ。
お前これから花見なんだろ? 行かなくていいのか? 」
('A`)「あ、うん。じゃあ、な」
妹に気を使わせてどうするんだよ、おいおい。
14 名前:アナウンサー(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 18:05:44.83 ID:zCVeieUV0
俺は一度降ろした荷物をもう一回抱えて
今度こそ部屋を出ようと……
川 ゚ -゚)「4年後だ」
('A`)「え? 」
川 ゚ -゚)「私は向こうの大学を卒業する。
それまでに就職して一人前になってろ」
クーはにこりと笑う。
俺は意味が分らなくて、しばらくきょとんとしていた。
('A`)「……どういう」
川 ゚ -゚)「そしたら、サイタマまで迎えに来い。いいな? 」
49 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:50:36.77 ID:eJW0yecD0(16)
……
あー、参ったな。めんどくせぇ約束だ。
4年後までに就職して、しかも妹を養わなきゃいけないだと?
冗談じゃねぇぞ。
( ^ω^)「それじゃあ皆さん、カンパーイ」
(´・ω・`)ξ゚听)ξ('A`)「かんぱーい」
VIP公園は桜満開。
ツンの持ってきたシートの上に座り、掛け声と共にコップを空に掲げる。
中身はジュース。ツンとブーンは酒が飲めないからね。
( ^ω^)「じゃあ僕うたいまーす! 」
(´・ω・`)ξ゚听)ξ('A`)「やめい」
50 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:57:07.12 ID:eJW0yecD0(16)
( ^ω^)「なんでだおwww
花見って言ったらカラオケだおwwww」
なんでこのピザはアルコールを摂っていないくせに
いきなりこんな元気いっぱいなんだよ。
(´・ω・`)「カラオケとは、歌を歌う際に、またはメロディパート(主 旋律)を
担う楽器を演奏する際に、生演奏ではなく事前に録音された伴奏を
再生することにより演奏を再現することをいう。
よって君のはカラオケではないね」
('A`)「wiki乙」
ξ゚听)ξ「ショボンったら相変わらずね」
ショボンもだけど、ホント、みんな相変わらずだ。
あんな事があったってすぐ、こうやってみんなで花見なんて
あの頃に戻ったみたいで、なんだか不思議な感覚だ。
52 名前:作家(新潟県)[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21:57:27.66 ID:eJW0yecD0(16)
('A`)「つーかツン大丈夫なのかよ」
ξ゚听)ξ「平気よ。
ちょっと打撲してちょっと骨折っちゃっただけだもん」
いやいや、それ結構な大怪我だぜ?
よく病院も外出許可だしたもんだよ。
( ^ω^)「もし痛かったりなんかしたりしたら
すぐ僕に知らせてお? 」
心配そうにツンの顔を覗き込むブーン。
アツアツだね、畜生め。
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第十一話
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